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カテゴリ:国債( 829 )

税収見込みの引き下げによる赤字国債増発でも揺るがない国債市場の理由

 政府は今年度の税収見込みを当初と比べ1兆9000億円程度引き下げる方向で調整しているとNHKが報じた。今年度の税収について、当初は前年度のおよそ56兆3000億円から57兆6000億円余りに増えると見込んでいた。しかし、円高の影響で法人税収が落ち込んでいることなどから、政府は今年度1年間の税収見込みを当初と比べ1兆9000億円程度引き下げ、55兆円台後半とする方向で調整を進めているとしている。

 また読売新聞によると今年4~10月の国の税収は19兆4777億円に止まった。リーマン・ショック直後の2009年以来7年ぶりに前年同期を下回ったことになる。これは円高により輸出企業の業績が振るわず、法人税収が6822億円と3割減少した要因が大きいとしている。

 いずれにしても今年度の税収が当初の見込みから大きく減少するであろうことは確かである。今後、より精緻に税収の減少額を見積もった上で、それを補填するために赤字国債の追加の発行額を決めることになる。

 国債の追加発行となれば国債需給に影響を与えかねず、債券市場では売り要因となってもおかしくはない。しかし、2兆円規模の追加発行といえども、いまの債券市場ではほとんど悪材料視されることはない。

 その要因のひとつが、日銀の異次元緩和によって国債の年間発行額の9割も日銀が購入しているためである。需給面で2兆円といえど、この発行額に市場が脅威することは今はない。さらに何かしらの要因で長期金利が上昇した際には、それを日銀はコントロールしようとしている。国債への信認が維持されている以上は、そう簡単に長期金利は上昇しづらい状況にある。

 そしてもうひとつの要因もある。それは発行側である財務省は、国債発行においてかなりの前倒し発行を行っているため、2兆円程度の発行でも新規の国債発行額を増やさずとも調整が可能となっている。来年度の国債発行計画とも絡んでくるが、いずれにしても2兆円規模の国債発行額の修正が、今後の国債の市中発行額に大きく影響することは考えづらい。

 以上のことから今年度の税収見込みの下方修正が債券市場を揺るがすようなことはないとみられる。しかし、日本の財政事情が決して良いわけではないのもご承知の通り。ある意味、それを危惧すべき警報装置が国債の価格形成にあってしかるべきであるが、それが日銀の金融政策やそもそも物価そのものが上がっていないという事実などによって、警報装置が働いていない状態ともなっている。

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by nihonkokusai | 2016-12-07 09:45 | 国債 | Comments(0)

来年度の国債発行額は減額か、国債で気にすべきリスク

 財務省において25日に国債市場特別参加者会合が、28日には国債投資家懇談会がそれぞれ開催され、財務省のサイトでその議事要旨が公表されている。

 今回の会合の目的のひとつは来年度の国債発行計画に関わるものとなり、財務省からは以下の説明があった。

 発行規模について借換債(除く復興借換債)は、平成29年度概算要求ベースでは104.6兆円と、今年度の当初計画額の109.0兆円より約4.4兆円低い。新規財源債(建設・特例国債)は、予算編成過程で決まるが、発行総額は今年度から減額される見通しとなっている。

 これについていわゆるディーラーからは、2年債及び5年債を中心に減額余地があるとし、超長期債については減額するのであれば20年債、10年債については先物の受渡適格銘柄であるため、できれば減額は最低限に留めてほしいといった意見が出ていた。

 投資家からも、減額するのであればマイナス利回りとなっている中短期ゾーンにしてほしいとしている。ただし、担保需要があるため、あまり大きく減額されてほしくはないとの意見もあった。30年債及び40年債の増額を希望するとの意見もあった。

 これを見る限り、減額は2年、5年を中心に一部の超長期債含めて調整が行われると思われる。ただし、これによって債券市場が大きく変動することは考えづらい。すでに日銀が年間発行額の9割を購入している以上、需給バランスが崩れるとすれば日銀次第ともなる。

 その日銀の政策含めて、最近の国債市場の状況と今後の見通しについては、日銀のイールドカーブ・コントロールとトランプ相場に関する意見が多く出ていた。

「日本銀行は市中発行額の9割程度を買い占めており、少なくとも操作対象にしている10年債の金利はある程度グリップできる。」

 たぶん市場参加者の間ではこういった認識が強いかと思われるが、下記のような指摘もあった。

 「歴史を紐解いても長期国債というものは、国民の長期的な老後の備えである年金を運用する大きな受け皿として、社会的な意味合いを持っていたはずである。そのように考えると、金融政策によって金利を極端に下げることは、現段階では主に金融仲介機関に問題を発生させている状況だが、本質的には国民社会全体に影響が及ぶものではないかと考えている。」

 いずれ国民社会全体に影響が及ぶ可能性は年金運用に止まらずあると思われる。さらに投資家からは下記のような意見も出ていた。

 「金利が上がってくれば国債を購入するニーズは出てくるという声も聞かれているが、生保は大手も含めて、貯蓄性商品の販売を取りやめている。そうすると、運用資金が入らないことや時間の経過により負債のデュレーションが短くなるため、数年後に金利が上昇したとしても超長期ゾーンの国債を購入する需要が元に戻るという話にはならないと思う。その点について、市場参加者はもう少し危機感を持った方がよいのではないか。」

 現実に日本の金利が急上昇するという前提での予想は立てづらいものの、日銀による異常な緩和政策が国債を軸で行われた結果、異次元緩和以前に比べ債券への投資環境に変化が出ていることには注意すべきと思われる。

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by nihonkokusai | 2016-12-01 09:58 | 国債 | Comments(0)

トランプショックでイタリアの国債が売られた理由

 欧州の信用不安が吹き荒れていたころ、イタリアの10年債利回りは危険水域とされた7%を上回る場面があった。しかし、欧州の信用不安の後退により、イタリアの10年債利回りは2012年あたりからじりじりと低下した。

 ECBによる積極的な緩和策、特に2015年1月に国債買い入れ型の量的緩和策の実施を決定比したことで、イタリア国債はさらに買い進まれる格好となった。

 今年に入ってからの英国の国民投票でのEU離脱決定もあり、イタリア国債は安全資産として買い進まれた。今年8月にイタリアの10年債利回りは1%近くまで低下した。

 しかし、英国のEU離脱決定による金融市場の混乱は一時的なものとなり、イタリアの10年債利回りは1%近辺で推移していたが、9月あたりからじりじりと上昇しはじめた。当初はリスクオフの反動となっていたが、ECBのテーパリング観測や原油先物の上昇もあってイタリアの10年債利回りは上昇ピッチを強めた格好となった。

 そして11月に入り、8日の米大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けて、欧州の国債は総じて急落した。特にイタリアの10年債利回りの上昇が目立ち、あっさりと2%台に乗せてきたのである。

 イタリアの国債がここにきて大きく売られた要因としては、米国大統領選挙でトランプ氏が勝利したことで、米国で物価上昇観測が強まり、米国債が下落したこともある。それに加えて政治的な問題も絡んでいた。

 イタリア政府は憲法改正の是非を問う国民投票を12月4日に実施する。憲法の改正案は上院議会の議員定数の削減や権限の縮小など首相の権限の強化につながる内容となっている。レンツィ首相は憲法改正はイタリア政治に必要な安定をもたらすと主張、否決された場合には辞任する意向を表明していた。

 世論調査では、改正反対派が優勢となっている上に、トランプ氏の勝利によってレンツィ首相を取り巻く環境に変化も生じた。イタリアでもレンツィ政権の打倒を目指すポピュリストの運動は勢いを増しつつあるとされ、12月4日の国民投票では憲法改正が否決され、レンツィ首相が辞任するのではないかとの観測が強まった。2017年の早い時期に総選挙実施となる可能性も指摘されている。

 これらがここにきてのイタリア国債の下落の背景にある。もちろんイタリア国債だけが売られているわけではなく、欧米の国債が全般に売られているなか、別途材料も出ていたイタリア国債の下落ピッチが目立った格好である。しかし、12月のイタリアの国民投票が欧州の債券市場の不透明要因として認識される可能性もあるため、今後のイタリアの政治動向も注意しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2016-11-23 10:10 | 国債 | Comments(0)

欧米の金利上昇とそれによる日本国債への影響

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 欧米市場の地合いが明らかに変わりつつある。米国市場では発表される経済指標が予想を上回るものも多くなり、12月のFOMCでの利上げ観測が高まっている。市場の7割程度が利上げをすると予想してくると、政策変更の可能性が高まるとも言われているが、その数字に近づいている。11月の米大統領選が近づいているが、クリントン候補が優位となっていることで、いわゆるトランプショックに備える必要性も後退しつつある。

 米長期金利は27日に1.87%まで上昇してきた。12月に利上げが実施されるとの見込みがさらに強まれば、米長期金利は2%台をつけてくることも十分予想される。

 欧州の長期金利も上昇している。これは米利上げ観測とそれによる米長期金利の上昇に影響されている側面もあるが、イングランド銀行のカーニー総裁の発言も影響している。ポンド安による物価への影響を無視できなくなり、イングランド銀行の追加緩和観測が後退し、場合によると出口を探る方向に向きを帰る可能性も出てきた。27日に発表された英国の7~9月GDPは前期比プラス0.5%と予想を上回る伸びとなり、これも英国債の利回りの上昇要因となった。

 英国の長期金利も8月につけた0.5%あたりから上昇しており、27日に1.25%をつけている。英国のEU離脱による金融市場の混乱もあって英国債は一時、相関の強かった米国債とは違った動きをしていたが、再び米国債と似たような動きとなりつつある。

 ECBのドラギ総裁も追加緩和一辺倒の姿勢に変化が見られるようになってきた。ECBは日銀の金融政策についてかなり研究しているとされるが、今年に入ってから、ころころと変わる日銀の政策の原因やその効果等も認識しているとすれば、そのような結果が出たとしても不思議ではない。

 ドイツの10年債利回りも一時のマイナスからプラス0.17%まで上昇してきた。

 この欧米の金利上昇の背景には、市場の物価への見方の変化もある。そのひとつの要因が原油価格の動向である。OPECの減産合意などを受けてWTIは50ドルを突破して52ドル台まで上昇した。ただし、ここにきてOPECの足並みが揃うのかとの疑念も生じ、WTIは目先ダブルトップを形成し、戻り売りが出やすい状況にある。果たしてこのまま原油価格が上昇し続けることができるのかはいまのところ不透明であるものの、再び30ドル台に戻るようなことも考えづらい。

 英国のEU離脱による経済や金融市場の混乱は一時的なものとなり、米国大統領選挙も波乱要因とならず、英国を中心にデフレへの懸念もいったん後退しつつある。すでに異常な金融政策を続ける理由もなくなってきており、それがカーニー総裁だけでなくドラギ総裁の発言からもにじみ出てきている。

 実は日銀もすでに積極的な緩和姿勢からは変化してきている。正確には変化せざるをえなかったわけではあるが、それでもECBやイングランド銀行に先んじて、金融緩和の深掘りに躊躇し始めた。ただし、その結果としてイールドカーブコントロールという不可思議な政策が取られることになり、日本の国債市場の流動性はさらに低下した。このため日本の長期金利はいかにも誘導されているかに見える。しかし、外部環境が変化の度合いを増してきた際に、果たして日本の長期金利がおとなしいままとなるのかどうか。本当の意味での日銀のイールドカーブコントロールがこれから試される。

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by nihonkokusai | 2016-10-28 09:56 | 国債 | Comments(0)

中国が日本国債の保有高を増加させている背景とは

 中国による日本国債への投資が大きく増加している。23日付けの日経新聞によると、中国から日本国内への証券投資は今年1月から最新データの8月までで8兆9000億円の買い越しとなった(財務省の対内証券投資より)。増加しているのは満期までの期間が1年以下と短い国庫短期証券などの国債が中心となっているようである。

 これに対して「MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES」によると、中国の米国債保有高は年初に比べ8月の保有高は530万ドル減少しており、中国は米国債の保有高を減少させて日本国債の保有高を大きく増加させた格好となっている。

 金利の動きからみて、特段に日本国債が有利になっていたわけではなく、短期ゾーンではマイナス金利が続いていた。米債も利回りが7月まで低下傾向にあり、むしろ米国債を保有していたほうが有利であったはずである。

 日経新聞では中国には人民元の国際化に向け、ドルの一極集中を弱めたいとの考えがあるとの指摘があり、今回の米国債から日本国債へのシフトはそのような思惑が働いていた可能性がある。

 FRBはいずれ利上げするであろうとの読みや日銀は緩和政策を続けざるを得ないとの読みもあったかもしれない。しかし、日本国債は短期債主体に購入していることから、金利の先行きを睨んだものというよりも、ポートフォリオのリバランス、さらには単純に利益を追求していた可能性もある。

 日本国債の10年以下の国債の金利はマイナスとなっているが、海外投資家は中短期債主体に積極的に購入している。これはドルを円に替えるだけで一定のプレミアムが得られるためであり、多少のマイナス金利であっても利益が出る。これを短期債で行えば、期間によるリスクも低いことで一定の利益も確定できる。これを使って、中国の外貨準備を運用する中国人民銀行が結果としてポートフォリオのリバランスを狙っていた可能性もある。

 米国債から日本国債へのシフトについて、何かしら政治的な意図があるのかまではわからないが、結果として中国はドル集中、米国債集中型から一部を円、日本国債の保有増となっている。ちなみに8月の米国債保有高は中国が依然としてトップながらも1兆1851億ドルと日本の1兆1440億ドルに近づいている。いずれ逆転する可能性もあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-25 09:39 | 国債 | Comments(0)

9月の国債売買高は一時的に回復

 10月20日に日本証券業協会は9月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

9月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -1139(536、-1823、231)
地方銀行 4960(279、3693、1330)
信託銀行 -2730(-5501、1528、2917)
農林系金融機関 -3488(-2067、355、50)
第二地銀協加盟行 1354(745、361、210)
信用金庫 284(47、973、-174)
その他金融機関 1200(-140、770、937)
生保・損保 -3297(-2915、900、72)
投資信託 -1741(-566、959、-1474)
官公庁共済組合 -20(-97、0、62)
事業法人 -626(-71、1、0)
その他法人 -423(-188、202、-6)
外国人 -27674(-3320、-4283、-19310)
個人 767(4、37、6)
その他 11292(12552、-4253、7667)
債券ディーラー -862(81、117、-965)

 9月の国債を中心とした債券売買を見るにあたって注意すべきことは、9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において総括的な検証を行い、何かしらのフレームワークの変更があるとの見方が強まっているなかでの売買であったことである。

 海外投資家の売買高が今年3月以来の高い水準となっていたのは、マイナス金利の深掘りを含めた何らかの追加緩和の可能性も意識してのものと思われる。その海外投資家は中期債を中心に2兆7674億円の買い越しとなった。海外投資家の買い越しは27か月連続となる。

 日銀は21日に総括的な検証の結果を発表するとともに、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。今回の場合は、イールドカーブをフラット化させるのではなくスティープ化させようとのものとなった。

 イールドカーブのスティープ化に寄与したとみられる投資家を探してみると、超長期債を大きく売り越していたのは「その他」となっていた。「その他」にはゆうちょ銀行やかんぽ生命、年金積立金管理運用(GPIF)などが含まれている。

 都銀は1139億円の買い越し。長期債主体に買い越しとなったが、9月21日に10年債利回りが一時プラスに転じる場面があったが、長期債が売られた場面で押し目買いを入れてきたとみられる。

 国債の投資家別売買高(一覧)での全体合計の国債売買高でみてみると、9月は216兆335億円となっており、8月の189兆9590億円から大きく増加した。日銀のフレームワーク変更の思惑によるイールドカーブのスティープ化を受けて、売買高が一時的に回復したとみられる。

 都銀の国債売買高は8月は1兆7326億円と、データがある2004年4月からでは過去最低水準となっていた。しかし、9月は3兆6046億円と回復した。ただし、10兆円を超える月が普通にあった状態から比べれば決して多い数字ではない。

 問題は9月21日の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の決定以降の国債の売買高となろう。日銀のイールドカーブコントロールが奏功しているというより、投資家は国債売買そのものを手控え、売買高は大きく減少している。それを象徴するのが10月19日の債券市場であった。債券先物は2014年8月18日以来となる日中値幅4銭、そして10年債カレントのこの日、2015年9月24日以来の出合いなしとなっていた。10月の公社債の売買高は大きく減少するであろうと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-10-22 11:34 | 国債 | Comments(0)

サウジアラビアの海外での巨額の国債発行の理由

 サウジアラビアは国際金融資本市場で初の国債発行を行い、175億ドルを調達した。ドル建てで5年債が55億ドル、10年債も55億ドル、30年債が65億ドルの3本建て。5年債が米国債に対してプラス135ベーシスポイント(約2.6%)、10年債がプラス165bp(約3.4%)、30年債が210bp(約4.6%)となる。

 今回の起債は新興国で最大だったアルゼンチンの165億ドルを上回った。格付け会社のフィッチ・レーティングスの格付けは最高から4番目の「AA-」となっていたが、発行額の3倍以上の600億ドルを超える投資家の引き合いがあったとされる。大型起債ではあったがサウジアラビアというネームも好感された上に、比較的利回りも高いことで日本の投資家を含めて需要があったのではないかと推測される。

 サウジアラビアがこれほど巨額の国債を発行しなければならないのは、当然ながら原油安が影響した。歳入の大半を原油に頼るサウジは原油安の影響から、2016年予算で3262億リヤル(約9兆円)の財政赤字に陥る見込みとされている。

 今回の国債発行で調達した資金は財政赤字を穴埋めするだけでなく、ムハンマド副皇太子が主導する「脱石油」改革の柱として成長分野にも投じるとされる(日経新聞)。

 サウジはすでに国内では国債を発行しており、財政赤字には銀行からの借り入れ、外貨準備の取り崩しでしのいでいたものの、国内金融機関の資金では限界があり、今回の海外での巨額の国債発行となったものとみられる。日欧米の長期金利が低位で推移していたことも手伝っての需要も意識されていたのではないかと思われる。

 原油先物市場では19日に一時WTIが52ドル台をつけるなど、ここにきて上昇基調となっている。この背景には予想外のOPECの減産合意があったが、サウジアラビアが減産に同意したのは、少しでも原油価格を上昇させて今回の起債を成功させようとの意図もあったとされる(日経新聞)。

 WTIの日足などをみると原油価格は底打ちし、下方トレンドが終了し反発局面となっている。このまま上昇トレンドを形成するのか。それともレンジ相場となるのか。OPECは決して一枚岩ではなく、イランとサウジの対立も解消されたわけではないことを考えれば、レンジ相場となる可能性が高いのではなかろうか。

 国際政治のなかでオイルマネーをもとに大きな影響力を持っていた中東ではあるが、原油価格の下落がこの状況を大きく変えつつある。原油価格の下落は、世界的な物価の押し下げ要因ともなっている。今回のサウジによる国際市場での大型起債は、あらためて世界的な資金の流れの変化も意識されるものとなろう。

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by nihonkokusai | 2016-10-21 09:43 | 国債 | Comments(0)

個人向け国債の販売が好調、その理由とは

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 7日の日経新聞によると、財務省が6日発表した2016年4~9月期(年度上期)の個人向け国債の応募額は1兆6293億円と前年同期に比べて52%増えたそうである。年度上期での増加は3年ぶりで、比較可能な2011年度以降で最高の応募額となった。

 日銀は今年1月の金融政策決定会合でマイナス金利政策を導入した結果、長期金利でもある10年国債の利回りばかりか、一時20年国債の利回りまでマイナスとなるなど、国債の利回りは軒並み低下した。

 日銀のマイナス金利政策によって銀行預金の金利も下がり、さすがに預金金利のマイナス化はなかったものの、定期預金金利が軒並み0.01%となった。

 それにも関わらず、なぜ個人向け国債の販売が好調なのかといえば、個人向け国債には最低保証金利の0.05%が存在しているからである。個人向け国債の金利はゼロ%になることはないことを示すために、ほぼ最低の金利として置いたはずの最低保証金利が、ほかの金利が軒並み引き下がってしまったことで、相対的に優位に立ってしまったということになる。

 参考までに、通常の利付き国債の利率も最低が0.1%となっている。それならば個人向け国債より有利ではないかと思われるかもしれない。ところが通常の国債は価格が変化する。10月4日の10年国債の入札では、利率は0.1%であったが、発行価格は101円59銭となっていた。それが10年後に100円で償還されることで、利回りはマイナス0.058%となる。個人向け国債は債券でありながら、この価格が常に償還価格の100円に維持されているものと考えても良い。

 つまり個人向け国債は1年間の売却出来ない期間があるものの、それを過ぎれば財務省が額面で買い取ってくれるのである。このため元本割れのリスクがない。ちなみに個人向け国債は個人しか保有できないため、個人向け国債を販売した証券会社などは自己で保有することはできないので、そのまま財務省が買い取る形となっている。

 個人向け国債の3つの種類、3年固定、5年固定、10年変動のうち10年変動タイプはもうひとつ利点が存在する。3年固定、5年固定は直近では0.05%の利率となり、償還までその利率が維持される。ところが10年変動は0.05%が保証されている上に、もし市場で売買されている通常の10年国債の利回りが上昇すると、10年変動の利子も引き上がる仕組みとなっている(半年のラグはあるが)。

 今後10年間も、いまのような異常な金利が続くはずはない、金利の上昇はありうるとみているのであれば、10年変動はなかなか魅力的な金融商品となる。しかも政府が元本を保証している。10月発行分を含め、特に10年変動分の販売額が大きいのはこのような理由も考えられるのである。

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by nihonkokusai | 2016-10-08 09:40 | 国債 | Comments(0)

イタリアで初の50年国債発行、日本での可能性は

 イタリア政府は10月4日に初めてとなる50年債を50億ユーロ相当発行した。2067年償還の50年債に対する応募は185億ドル余りに上り、応募者利回りは2.85%で決まったそうである(WSJの記事より引用)。

 イタリアの格付けはムーディーズで「Baa2」、S&Pは「BBBマイナス」となっており、投機的水準(いわゆるジャンク債)の一歩手前にある。そういった国が50年もの長い期間の国債を発行するのは極めて異例ともいえる。

 イタリアが50年という長い期間の国債を発行できるのは、いくつかの要因が絡んでいる。ギリシャを発端とした欧州の信用不安により、当事国のギリシャだけでなく、ポルトガルやスペイン、イタリアの国債も下落した。イタリアの10年債利回りは一時危険ラインとされた7%を超える場面もあった。しかし、その欧州の信用不安は関係各国の努力もあり、次第に収まった。

 金融市場の沈静化に効果があったのがECBによる積極的な金融緩和策であった。これによりイタリアの長期金利は、1%台にまで低下した。欧州だけではなく、日本の中央銀行である日銀も、欧州の信用リスク後退など関係なく、アベノミクスというものの登場で、異常ともいえる金融緩和策を講じた。その結果、日本の10年債利回りがマイナスとなった。この日本の投資家だけでなく、金利の低下に運用が厳しくなった世界の投資家は、少しでも高い利回りの国債を求めるようになり、それがイタリアでの50年国債の発行を容易にさせた面もある。

 50年を超える国債発行は2005年2月にフランスが発行し、イギリスも同年5月に発行した。ほかにポーランドやスイスも50年債を発行していた。今年に入りベルギーとスペインも初の50年債を発行し、フランスも新たに50年債を発行した。またアイルランドとベルギーは私募で100年債を発行したそうである。

 日本での最長の国債は40年債である。少し前に日本でも50年国債の発行が検討されていると伝えられたが、検討はされていたかもしれないが、その後特に発表はない。この際にはいわゆるヘリコプターマネー論議のなかでのものとなっており、日銀の引き受けを前提としたようなかたちで日本の財務省が50年国債を発行することは考えづらい。しかも40年国債の流動性が、それでなくても日銀の買入により落ちていることで、少しでも超長期債の流動性を高めることが先決であろう。

 とはいえ低金利のうちに、しかも投資家ニーズが旺盛なうちに、なるべく長めの期間の国債を発行することは利払い負担の軽減ともなる。いずれ日本でも50年国債や、60年償還ルールのもと、借換債の発行を必要としない60年国債の発行が検討されることもあるかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-07 09:59 | 国債 | Comments(0)

6月末時点での日本国債の保有者

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 日銀は9月26日に資金循環統計(4~6月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は6月末時点で約1746兆円となり、3月末の約1752兆円から減少した。個人の金融資産の内訳は「現金・預金」が前年比1.2%増の約920兆円、「株式等」が16.6%減の約144兆円、「投資信託」は11.7%減の約87兆円となっていた。英国のEU離脱観測によるリスク回避の動きなどにより円高株安の影響を受けたとみられる。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。残高トップの日銀の国債保有残高は344兆8685億円となり、34.9%のシェアとなった。前期比(確定値)からは27兆7499億円の増加。残高2位の保険・年金基金は251兆73億円(25.4%)、6兆4714億円増。残高3位は預金取扱機関(都銀や地銀など)で226兆5625億円(22.9%)、6兆3594億円減。前回の5位から4位に上がったのが海外投資家で54兆6763億円(5.5%)、3兆7258億円増。5位が公的年金の52兆3919億円(5.3%)、23億円減。6位が家計の13兆9796億円(1.4%)、2240億円増。その他が43兆9514億円(4.5%)、4427億円減となっていた。

 2016年3月末(確報値)に比べ、国債(短期債除く)の残高は約32兆円増加し、約987兆円となった。このうち日銀が約345兆円と35%を占め、民間の保険・年金が約252兆円で25%、次が銀行など民間預金取扱機関の約227兆円の23%となった。

 3月末(確報値)に比べて大きく増加したのは、大量に国債を買い入れている日銀で約28兆円の増加となった。次いで保険・年金の約6兆円増となっていた。3月末に比べて大きく減少したのが国内銀行の約4.9兆円減と中小企業金融機関等(ゆうちょ銀行含む)の約1.6兆円減となり、他の業態は概ね増加となっているところが多かった。

 日銀は1月29日にマイナス金利政策を導入し、2月9日には10年債利回りもマイナスとなり、7月にはマイナス0.3%まで低下していた。この期間(4月から6月)も国債は買い進まれていたが、日銀が淡々と買入オペで国債を購入し続けるなか、生保などはプラス利回りの国債を中心に購入し続けていたとみられる。それに対して銀行などはマイナス利回りでの運用は難しくなり、国債の残高を減らしていたものとみられる。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1105兆円となり、日銀が約398兆円で36.0%のシェアとなっていた。そして海外勢の残高は約111兆円と短期債を含めると国債全体の10.0%のシェアとなっていた。

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by nihonkokusai | 2016-09-27 10:00 | 国債 | Comments(0)
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