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カテゴリ:国債( 805 )

異常な国債利回りのツケ

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 いまから13年前の2003年6月に国債市場ではある異変が起きていた。債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け6月11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。

 この相場上昇過程において、目立ったのがメガバンクの一角や地銀を含めた銀行主体の債券買いであった。銀行などがポジションのリスク管理に使っているバリュー・アット・リスク(VAR)の仕組み上、変動値幅が少ないことでそのリスク許容度がかなり広がりをみせていた。株価の低迷にともなって債券での収益拡大の狙いもあり、必要以上にポジションを積み上げ、異常なほどの超低金利を演出した。

 しかし、これもいわゆる債券バブルに近いものとなった。6月17日に日経平均株価が9000円台を回復し、この日実施された20年国債の利率が1%割れのクーポンとなったことにより、大手投資家などが超長期国債の購入を手控えた。これをきっかけにして、債券相場が急落したのである。いわゆるVARショックであった。

 それから13年経って6月28日に30年債利回りは0.050%、20年債利回りは0.040%、そして29日に10年債利回りはマイナス0.240%まで低下し、過去最低を更新した。

 20年国債の利率は6月23日に入札されたもので0.2%に低下している。40年国債の利回りが28日に0.05%にまで低下していたことで、この利回り水準が続けば日本の国債の利率はすべて0.1%に引き下げられてしまうことになる。

 2003年6月の国債急落のきっかけは大手投資家がこの異常な低金利の水準では運用出来ないとして購入を手控えたためであるが、いまは国内大手投資家が購入せずとも日銀が大量に国債を吸い上げてしまうため、ここまでの利回り低下が生じている。

 もし2003年の債券市場関係者が今回の国債利回りの水準を見たら、冗談としか思えないのではなかろうか。2003年6月の日経平均は9000円台、ドル円は120円近辺、消費者物価指数(除く生鮮)は前年比マイナス0.4%となっていた。ここにきて日経平均は下げたとはいえ15000円台、ドル円は102円台、直近の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比マイナス0.3%となっていた。当時の人に何も説明がなければ、いや説明をしたとしても、現在の金利水準を納得してもらうことはできないのではなかろうか。

 つまりこの利回り水準でも致し方ないと思ってしまっていることの方が、やや麻痺してしまっているとも言えまいか。日銀がその目的はさておき、これほどの国債を買い入れて国債利回りが大きく低下している事実に対し、本来は驚愕すべきことであり、それによるツケはいずれ支払わなければならないことになるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-06-30 09:32 | 国債 | Comments(0)

市場参加者による国債への懸念

 6月24日に開催された国債市場特別参加者会合(第66回)議事要旨が公表された。このなかの「最近の国債市場の状況と今後の見通し」に関する参加者の意見からいくつかピックアップしてみたい。ちなみに国債市場特別参加者とは、少し前に話題となった日本版のプライマリー・ディーラーである。

 たとえば、このまま円高が進めば日銀が追加緩和するとの見方が強まり、更なるイールドカーブのフラット化の圧力が掛かるとの見方があるが、それにも限度があり、ゼロ%が1つの目安ではないかとの指摘があった。28日に20年債の利回りは0.04%にまで低下しゼロに接近していたが、超長期債の利回りのマイナス化までは現状は想定しづらいというところか。

 複数の出席者が指摘していたのが、国債市場の流動性の低下である。これにより国債による価格発見メカニズム自体が失われていくことも懸念され、さらに流動性の低下はまとまった額の売りが出ると、一時的に金利が急上昇する可能性は絶えずあるとの指摘があった。更に下記のような指摘もあった。

 「仮に、日本銀行が2%の物価目標を引き下げるようなことになれば、金融政策の出口につながり、大きな金利上昇となるリスクを孕んでいるのではないか。」

 ただ、物価目標がいつまでたっても達成できないかといって、日銀による大量の国債買入もいつまでも継続できるものでもない。日銀の国債買入での未達が連続して発生するような事態が起きる懸念があり、いずれ何らかのかたちでテーパリングを行う必要が出てくると思われる。しかし、その際には物価目標を柔軟なものにするといった対応が取られる可能性がある。

 そして、複数の参加者からレポ取引に関わる課税の面での指摘があった。現在、国内金融機関と海外ヘッジファンドとのレポ取引は非課税措置の適用対象外であり、このことは海外ヘッジファンドが日本の金融機関とレポ取引を行う上での制約になっている。海外ヘッジファンドはマイナス金利の下で日本国債に非常に関心を高め、こうした投資家を日本のマーケットに呼び込み日本国債の取引量を回復させる必要があるのではとの指摘である。

 日本の国債市場を大きく動かしている市場参加者は日銀トレードを行っている日銀と業者を除くと、いわゆる投資家は海外投資家が中心となっている。マイナス金利の日本国債を購入できる海外の投資家や、イールド・カーブの裁定取引をしている海外ヘッジファンドなどであり、さらに海外投資家を呼び込み流動性を少しでも向上させる必要性はあるかもしれない。

 そして、日本の信用力を保つことに向けたしっかりとしたコミットメントが必要との指摘もあったが、やはりここが一番重要なポイントかではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-06-29 09:47 | 国債 | Comments(0)

3月末時点での日本国債の保有者

 日銀は6月17日に資金循環統計(1~3月期速報値)を発表した。これによると個人の金融資産は昨年末時点で約1706兆円となり、過去最高を更新した昨年末の約1740兆円から減少した。個人の金融資産の内訳は「現金・預金」が前年比1.3%増の約894兆円、「株式等」が9.9%減の約153兆円、「投資信託」は3.7%減の約92兆円となっていた。年初からの原油安などを背景としたリスク回避の動きによる株安の影響を受けたものと見られる。

 この資金循環統計を基に国債(短期債除く)の保有者別の内訳を算出してみた。

保有者        国債残高 シェア 前期比増減 単位 億円、%
中央銀行 3,171,186 33.2 287,770
保険・年金基金 2,448,288 25.6 132,495
預金取扱機関 2,323,088 24.3 35,877
公的年金  524,955 5.5 5,660
海外      508,201 5.3 30,168
家計       137,556 1.4 1,589
その他      437,221 4.6 -42,788
合計     9,550,495 100.0 450,771

 2015年12月末(確報値)に比べ、国債(短期債除く)の残高は約45兆円増加し、約955兆円となった。このうち日銀が317兆円と約33%を占め、民間の保険・年金が約245兆円で25.6%、次が銀行など民間預金取扱機関が約232兆円の24.3%となった。

 12月末(確報値)に比べて大きく増加したのは、大量に国債を買い入れている日銀で約29兆円の増加となった。次いで保険・年金の約13兆円増となっていた。9月末に比べて大きく減少したのが、ディーラー・ブローカーで他の業態は増加となっているところが多かった。日銀は1月29日にマイナス金利政策を導入し、2月9日には10年債利回りもマイナスとなるなど国債は買い進まれており、その結果がこの数字にも表れたとみられる。

 短期債を含めた国債全体の数字でみると残高は約1075兆円となり、日銀が約364兆円で33.9%のシェアとなっていた。そして海外勢の残高は約110兆円と短期債を含めると国債全体の10.2%のシェアとなり、前回に続いて10%を超えた。

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by nihonkokusai | 2016-06-18 08:33 | 国債 | Comments(0)

日本国債格下げの懸念

 日本国内の大手格付け会社、格付投資情報センター(R&I)は、政府が消費税率の引き上げを再延期することで財政再建に対する不透明感が高まったとして、日本国債の信用度を示す格付けの方向性を、これまでの「安定的」から将来的に引き下げる可能性がある「ネガティブ」に改めた(6月6日のNHKニュース)。

 安倍首相が消費増税の再延期を表明したことに対し、海外の大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは直ちに日本の財政が悪化することはないとして当面、日本国債の格付けを見直すことはないという見解を示していた。これに対してムーディーズは財政再建の目標達成に対する疑念が強まったとして、格付けを評価する際にマイナスの要因になるという見解を示していた。

 海外格付け会社は意外と冷静に見ているなと思っていたが、国内格付け会社による見通し変更は意外感もあった。とはいえ、格付け会社がこのような警告を発することは必要かと思われる。いまのところ日銀の大量の国債買入により需給はタイトとなっており、国債への信認も維持されていることで、日本の10年国債利回りが過去最低を更新するなどしている。

 しかし、日銀の大量の国債買入により日本国債は価格発見機能を失いつつあることも確かである。それにより日本国債に対するリスクも覆い隠されている。しかし、それが突如として顕在化する懸念は存在する。禁じ手とされるヘリコプターマネー論も出てきているなど今後、日本国債のリスクが増加してくる懸念はありうる。

 ムーディーズが1998年にはじめて日本国債の格付けを引き下げて以降、スタンダード&プアーズも含め海外格付け会社は幾度も日本国債を格下げしてきた。しかし、日本国内の格付け会社が動いたのは2011年12月であり、このときはR&Iが日本の外貨建て・自国通貨建て発行体格付けをAAAからAA+に引き下げた。しかし、これ以降はR&Iによる格下げはなく、現在R&Iの日本国債の格付けは上から二番目のAA+である。

 海外格付け会社による日本のソブリン格付けは、ムーディーズがA1でアウトルックは安定的、スタンダード&プアーズ(S&P)がA+でアウトルックは安定的、フィッチがAでアウトルックはやはり安定的となっている。

 これと比較してR&Iによる日本国債の格付けはまだ高いともみられ、その意味では格下げ余地はあるとの見方もできる。しかし、それでも日本の格付け会社が見通しを変更というのは海外の格付け会社の見通し変更に較べて重みもある。米国の格付け会社のS&Pが2011年8月に米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げたときも市場に動揺が走った。

 日本の国債市場は格下げに対してほとんど動揺せず、というのがアノマリーと化しており、今回のR&Iの見通し変更の反応も同様であった、しかし、国内の格付け会社が懸念を示したという事実はまったく無視してはいけないであろう。今後の日本国債に対する格下げの可能性は意識しておく必要があろう。

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by nihonkokusai | 2016-06-13 09:59 | 国債 | Comments(0)

世界的な国債バブルによるリスク

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 10日のドイツの10年債利回りは一時0.009%まで低下し過去最低を更新した。英国のEU残留か離脱を問う国民投票を23日に控え、リスク回避の動きも出たとみられる。また、日本の国債などは10年以上のものまで利回りがマイナス化しており、比較的安全性の高い国債でプラス利回りのものが物色されていた面もあろう。

 10日の東京市場でも日本相互証券で10年債利回りがマイナス0.155%まで低下しており、今年3月18日と4月20日、21日に付けていたマイナス0.135%を下回って、いわゆる長期金利が過去最低を更新した。

 9日に日銀の中曽副総裁は講演で、下記のように発言していた(日銀サイトの講演内容より引用)。

 「金融市場に対しては、日本銀行が大量の国債買入れを継続するもとで、国債市場の需給はきわめてタイトになっており、そうした状況でマイナス金利政策を行うことは、国債市場に攪乱的な影響を与え、市場の流動性や機能度に大きなダメージを与えるのではないかという意見があることも承知しています。」

 「国債市場は、本来、市場参加者の経済成長率見通しや物価観を映し出す鏡です。過去に例のない大規模な金融緩和によって国債市場が大きな影響を受けることは間違いありませんので、そうした鏡が曇ることのないよう、国債市場の流動性や機能度がどのように変化するかという点については、引き続き、注意深く点検していきたいと考えています。」

 果たして国債は市場参加者の経済成長率見通しや物価観を映し出す鏡となっているのであろうか。国債はその信認が維持される限りは、中央銀行の金融政策に素直に反応してくる面がある。特に政策金利がゼロ近辺となり、非伝統的な金融手段が講じられると中央銀行が国債を大量に買い入れるという手段が用いられた。これで需給面がタイトとなり、ここにマイナス金利政策まで打ち出して、国債のイールドカーブがこれでもかと押し下げられた。

 中央銀行がここまで力任せに金利引き下げを行っているのは何のためなのか。日銀やECBはデフレ脱却やデフレ懸念の払拭と言うが、異次元緩和をしても物価目標はいっこうに達成する見込みはない。市場もさすがに金融緩和による物価の浮上効果について疑問を抱きつつある。

 それ以上に注意すべきはここに至る過程にある。昔のように政策金利を引き上げたり引き下げたりしていた時代であれば問題はなかったと思われるが、いまは違う。

 世界的な金融経済危機を二度に渡り経験した際の非常時の対応の延長線上にいまがある。つまり世界的な危機があっての非常事態のための金融政策であったはずである。ところが状況が改善に向かっても、デフレ脱却という名目でそこからさらに金融緩和の度を深めるようなことをしているのがいまの日銀とECB等である。その結果として、ファンダメンタルズから乖離した国債の利回りが形成されていると言えまいか。

 これが株や地価ならばバブルということがわかろうが、債券の価値は利回りで示されるためわかりづらい。債券の価格と利回りは逆に動く。つまり国債の価格は異常なまでに上昇している。さらに、バブルの状態にあるなかで、中央銀行による大量の国債買入とマイナス金利政策は国債の流動性を低下させ、いずれ国債市場が大きな影響を受ける懸念を強めさせている。

 現在の日米欧の長期金利は、物価の前年比などでみると違和感はないとの見方もできるかもしれない。しかし、必ずしも長期金利と物価が常に連動しているわけでもない(上記グラフも参照)。長期金利がマイナスにあるというのは、異常な状況であるのは確かであり、これが実態経済や世界的な危機の度合いと整合性があるかといえば疑問を感じざるを得ない。この乖離がいずれ修正される事態はやってこよう。

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by nihonkokusai | 2016-06-12 10:33 | 国債 | Comments(0)

メガバンクのプライマリー・ディーラー資格返上

 8日の日経新聞に「三菱UFJ銀、国債離れ 入札の特別資格返上へ」という記事が掲載され、債券市場関係者を中心に衝撃が走った。これによると、三菱東京UFJ銀行は国債の入札に特別な条件で参加できる資格を国に返す方向で調整に入ったそうである。記事には「今回は財務省も資格の返上を受け入れる見通し」ともあった。

 国債市場特別参加者制度とは日本版のプライマリー・ディーラー制度のことであり、一定の応札(発行予定額の4%)・落札責任が課されるが、国債市場特別参加者会合への参加資格や定率公募入札や買入消却入札への参加資格といった特別の資格が与えられる制度である。国債の入札はこの国債市場特別参加者(5月2日現在22社)を中心に行われるが、入札資格については246の金融機関が有している。

 国債市場特別参加者の資格返上は過去になかったわけではないが、外資系金融機関に限られた。国内金融機関としては初の返上となる上に、かつては日本の国債市場の方向性を決めていたとも言われた三菱東京UFJ銀行であっただけに、債券市場関係者は驚いたものとみられる。

 ただし、系列の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券は資格を維持するようである。三菱東京UFJ銀行もかつては国債の落札額が大きかったが、ここにきては減少していた。三菱東京UFJ銀行の資格返上で、国債市場における業者の存在感が大きく低下するというわけではない。

 そもそも業者と呼ばれる金融機関は主に証券会社を指すものである。しかし、国債市場における銀行の存在は極めて大きく、1985年に東証に日本初の金融先物取引である長期国債先物(債券先物)が上場された際にも、銀行には特別会員として売買の参加資格が与えられていた。銀行の証券子会社の設立等もあったが、国債市場特別参加者としても銀行本体は参加していたのである。

 国債市場特別参加者22社のなかで銀行は、三菱東京UFJ銀行と三井住友銀行、みずほ銀行が参加している。銀行は自ら大量の国債を保有しており(だいぶ減ってはいるが)、業者というよりも投資家としての存在感の方が大きい。その投資家としては、日銀の異次元緩和とマイナス金利政策により、国債の保有額を大きく減少させていた。特にマイナス金利により、銀行が主に保有している中長期の国債利回りがマイナスとなってしまい、国債での運用がしづらい状況にある。つまり今回の三菱東京UFJ銀行の動きは投資家としての日本国債離れが意識されるものとなる。他の2つのメガバンクが追随したとしてもおかしくはない。

 今回の動きは日本の国債市場が日銀トレードをしている業者と日銀、それにマイナス金利で運用可能な海外投資家だけとなってしまう懸念をより強めさせるものとなる。国債市場の流動性の低下とともに、将来の日銀の出口政策をより困難にさせかねないものとなる。いくら投資家は押し目買いを待っていると期待しても、国債市場の参加者の偏りは何かしらをきっかけとした国債の価格変動リスクを大きくさせかねないと思われる。

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by nihonkokusai | 2016-06-09 09:33 | 国債 | Comments(0)

ヘリコプターマネーの危険性

 6月7日の日経新聞の経済教室は「ヘリコプターマネーの是非」として、ヘリコプターマネー推進派のアデア・ターナー元英金融サービス機構(FSA)長官による論説が掲載された。

 ターナー氏は、日本では公的債務の一部の「マネタイゼーション(財政ファイナンス)」がもはや避けられない状況だと指摘している。日本の政策当局は、長年の物価低迷と公的債務の増加に対して万策尽きたようにみえるが、政府と中央銀行が弾切れになることはないと指摘した。それは、米国の経済学者、ミルトン・フリードマンの名高い「ヘリコプターマネー」作戦はいつでも可能だからだそうである。

 そのヘリコプターマネー作戦は2つあるそうで、「第1は、中央銀行が紙幣を増発して将来拡大する財政赤字を直接ファイナンスする方法だ。第2は、中央銀行が既発債を買い入れ、バランスシート上に無利子永久債として計上し事実上消却する方法だ。」

 日銀はすでに国債発行残高の3割を保有している。実質的に財政ファイナンスに近い状況と言えなくはない。ただし、財政法第5条では「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」とある。もし本当に第1のヘリマネをするには、この財政法を修正するなりする必要がある。

 第2のヘリマネについては、日銀のバランスシート上の反対側にある負債の部を考慮するとかなり無理な話となる。つまり、日銀の資産となる国債の反対側にある負債が日銀券なり日銀の当座預金となる。国債を永久債として償却すると、決済などのために日銀の当座預金として積み上げてある民間金融機関の預金も消滅することになる。決済が機能しなくなるだけでなく、結果として我々の預貯金も消滅するということになる。

 さらにターナー氏は下記のような指摘もしている。

 「日本の公的債務残高から政府資産および準政府機関が保有する国債を差し引いた純債務は、国際通貨基金(IMF)の標準的な定義に従うとGDP比128%になる。このうち約半分(GDP比66%)は現在日銀が保有しており、日銀は政府の影響下にある。よって日銀を含む統合政府ベースではこの債務は存在しないので、本当の意味での純債務はGDP比62%となる。」

 政府資産に関しては証券化等の手段を含めてもすべて売却が可能となるのかといった問題もあるが、そこの部分はさておき、準政府機関が保有する国債や政府の影響下にあるとする日銀が保有する政府債務は存在しないような見立てとなっている。しかし、日銀のバランスシートなどを考えるとこれもおかしいであろう。

 日本では戦後に預金封鎖ということが起きた。新円切り替えと同時に国民の預金を封鎖しそれにより政府債務の削減を図った。ハイパーインフレも手伝ってあっさりと政府の巨額債務をなくしてしまった荒技である。

 ターナー氏も指摘しているように巨額の財政赤字を無制限に引き受けたら大幅インフレは避けられない。だからインフレ率に応じて引き締めることをルール化する必要があるとしているが、そんなルールは通用しなくなる。だから財政法で日銀の国債引き受けが禁じられているのである。

 ターナー氏は金融政策の手段としてヘリコプターマネーを持ってきたように思われるものの、日本の巨額の政府債務はヘリコプターマネーによりハイパーインフレを引き起こし、国民の預金を使って国民の負担により債務を返済すべしと暗に提示しているようにすら思えるのである。

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by nihonkokusai | 2016-06-08 09:26 | 国債 | Comments(0)

プライマリーバランスを均衡化させる必要性

 これだけ大量に発行されている国債が円滑に消化されているのは日銀が大量に購入していることもありますが、国債への信認が維持されているという点が重要です。

 国債の信用を維持するために必要とみられる政策のひとつが、基礎的財政収支の均衡、さらにその黒字化に向けての政府の姿勢です。基礎的財政収支とはプライマリーバランスとも呼ばれます。プライマリーバランスとは、国債費関連を除いた基礎的財政収支のことで、国債の利払いと償還費(国債費)を除いた歳出と、国債発行収入を除いた歳入についての財政収支です。プライマリーバランスがプラス(またはマイナス)の場合には、プライマリーバランスの黒字(または赤字)と表現します。

 プライマリーバランスが均衡すれば、毎年度の税収等によって、過去の借入に対する元利払いを除いた毎年度の歳出を賄うこととなります。プライマリーバランスが均衡し、その上で金利と名目成長率がほぼ同じとなればあらたな借金は増えないことになります。つまり税収以内で一般歳出を補うということになります。しかし、現在のように一般歳出が税収より大きくなると税収に加えて国債の発行による収入を充てることになるため、プライマリーバランスが赤字の状態が続きます。

 今後は少子高齢化が進むと予想されており、税収の伸びもそれほど期待できないため、さらに財政赤字幅が増加する懸念もあります。プライマリーバランスを保つためには大幅な歳出カットとともに、消費税などの増税による歳出歳入改革が必要とされます。しかし、それでもプライマリーバランスを均衡化するのは並大抵のことではありません。

 そこまでしても、何故プライマリーバランスを均衡させる必要があるのでしょうか。膨大な日本の国債残高はいずれ国民の税金で返していかなければいけません。しかし、現在の国債残高をすべて短期間に返済することは現実的に不可能です。

 ただし、日本政府に対する信認が続く限りは国債を最終的に償還せずに借り換えの繰り返しである程度赤字財政を維持していくことは可能です。この持続可能性のことを「サステナビリティ」と呼びます。

 国の財政赤字を維持可能とさせるためにはプライマリーバランスを黒字化させ、国債残高そのものを減少させていく必要があるのです。政府は2020年度の基礎的財政収支の黒字化を目指すこととしています。この目標の達成は難しいとの指摘もありますが目標に向けての政策を維持することにより、日本国債への信認は維持されていくものと思われます。そのためにも妙な理屈をこねて延期するのではなく、消費増税は予定通りに実施するべきです。国債の信任は積み上げるのはたいへんですが、崩れ出すと速いことも認識する必要があります。

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by nihonkokusai | 2016-05-29 16:29 | 国債 | Comments(0)

海外投資家の国債売買シェアの拡大のリスク

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 5月17日の日経新聞朝刊に「国債購入、海外勢27%に」との記事が掲載された。これは日本証券業協会が毎月20日に公表している公社債投資家別売買高のなかの国債投資家別売買高(一覧)を元に算出したものであろうと思い、早速検証してみた。たしかに2016年3月の外国人による国債の買い付け額(短期債含む)は金額で29兆5446億円となり、全体の買い付け額109兆4686億円の約27%を占めていた。

 国債買い付け額では債券ディーラーがほぼ5割近くを占めており、投資家別ではトップとなるがこちらのシェアはあまり大きな変化がない。それに対していわゆる本来の意味での投資家のシェアは2012年4月あたりから大きな変化を見せていた。

 2012年4月の都銀の国債買い付け額のシェアは17.6%、それに対して外国人は11.7%となっていた。しかし、ここが都銀のシェアのピークとなり、その後10%も割り込んだ。量的・質的緩和の拡大があった2014年10月にいったん10%まで戻すが、そこから再び減少し、直近の2016年3月は2.4%にまで低下している。

 これに対して外国人は2015年3月に20%を超えて、2016年3月に27%まで上昇している。国債全体の買い付け額から債券ディーラーの分を除いて計算し直すと52%のシェアとなっており、その影響力の大きさがわかる。

 代表的な投資家のひとつとして信託銀行のシェアも確認したところ、こちらも2013年2月に10%を超えるシェアであったのが、2015年10月には2.6%まで低下し、2016年3月は4.2%となっている。いずれにしても外国人の日本国債における売買シェアが2015年3月に20%を超えてから急激に上昇していることは確かである。

 国債の買い付け額全体でみると、それほど落ち込んでいるわけではない。国債の流動性は維持されているように見える。大量に国債が発行されており、それが債券ディーラーを通じて投資家と売買されているが、ただし投資家のシェアが様変わりしている。

 過去において債券相場が大きく揺れ動いたときなどメガバンクや信託銀行を通じた年金などが大きな売買をしていたことが多かった。いわばメガバンクなどが債券相場を動かしていたと言えたが、その存在がどうやら外国人投資家に移行してきたようである。

 もちろん国債残高の三割を保有する日銀とその日銀とオペを通じてトレードしている業者、つまり債券ディーラーの存在感も大きい。ただ、今後日本の債券相場を大きく動かすであろう存在として比較的足の速い投資家といえる海外投資家が浮かび上がってきた。高値圏での膠着感が強まる日本の債券相場ではあるが、こういったところにも新たなリスクが存在しているように思われる。

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by nihonkokusai | 2016-05-23 10:00 | 国債 | Comments(0)

安全第一、いまこそ国債?

 財務省の個人向け国債の販売が順調なようである。4月募集(5月発行)の個人向け国債三本合計の募集額は2749億円と3月募集分の4003億円よりは減少したものの、2000億円を超える販売額を維持している。昨年11月募集(12月発行)の729億円に比べて、だいぶ回復しつつある。

 なぜ個人向け国債の販売が回復してきたのかといえば、日銀のマイナス金利政策によるところが大きいといえる。すでに銀行の定期預金の金利よりも、個人向け国債の最低保証金利(プラス0.05%)の方が高い状況となっている。個人向け国債は1年間換金できないものの、国が発行しているものであり信用度は高い。さらに債券固有のリスクであるところの流動性リスクや価格変動リスクもないあたりがあらためて評価されたものとみられる。

 この個人向け国債の今年のキャッチフレーズは、「安全第一 いまこそ コクサイ」である。これは見方によれば日銀の大胆で異次元な金融緩和のひとつのキャッチフレーズ「ポートフォリオリバランスの促進」と相反するものとも言えなくもない。

 日銀は「安全」な国債を大量に買い占め、日銀以外の投資家の投資行動を安全な国債から他のリスクの高い商品に移行させようとしている。この施策は日銀ばかりでない。我々の大事な年金を預かり運用しているGPIFや、ほぼ国債で運用していたゆうちょ銀行なども同様である。

 結果論として日銀のマイナス金利政策により、期間10年を越す国債の利回りがマイナスとなってしまっており、国債を買うと損失を発生してしまう事態になっており、投資家にとって安全性よりも少しでもプラスとなる金融商品に手を出さざるを得ない状況に陥ってしまっているのも事実である。しかし、これは政府の意向も含めて強制的に株や海外金融資産に日本の投資資金を振り向け、株高や円安を招くことも意識した政策ともいえる。

 個人にとっても預貯金金利はほとんどゼロ%に近いものとなっている。かといって株などのリスク商品や、外国債に資金を振り向けたくも、そのリスクに見合ったリターンが得られるのかは不透明であろう。リスク資産についてはそのリスクをしっかり把握できない限りは手を出すべきものではないと私は考えている。たとえば為替動向にしてもプロですら先行きを見通せるわけではない。

 だからこそ「安全第一 いまこそ コクサイ」となっているのかもしれない。ただし、個人向け国債についても一般の方にどれだけ理解されているのかは疑問である。たとえば10年変動タイプの販売額が一時期低迷していたことからも明らかである。これは期間が長い、いっこうに国債利回りが上がらないといった面もあろうが、利子の設定がやや難解であった面もあったかもしれない。

 しかし、ここにきては10年変動の販売額が多くなっている。4月募集分も3年固定は302億円、5年固定は851億円に対して10年変動は1596億円となっている。これは私がこのコラムや新聞、雑誌などで個人向け国債の10年固定の良さをアピールしたから、と言いたいところであるが、そんなに影響力があるわけではないので、証券会社などで顧客に10年変動の持つ潜在的な魅力がアピールされてそれが理解されているのではなかろうか。

 3年固定と5年固定の利子は3年間、5年間変わらないが、もし何かのきっかけで長期金利が上がり出すと10年変動の利子はそれに応じて増える仕組みとなっている。しかも、1年経過すると財務省が額面で買い取ってくれることは3年固定、5年固定と同じである。最低保障利子が今後も維持される限り、個人向け国債(特に10年変動)はいまこそ買いであると思う。

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by nihonkokusai | 2016-05-12 09:54 | 国債 | Comments(0)
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