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カテゴリ:国債( 819 )

日銀の総括的な検証が世界の国債市場を動揺させたきっかけに

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合では総括的な検証の結果が公表される。日銀としては2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することの「ベネフィット」は大変大きいとしており(黒田総裁)、その旗を降ろすことは考えられず、量・質・金利の3つの次元による金融緩和政策に限界はないというのが引き続き建前としてある。

 そのための戦術策も練ってくる可能性があるが、それよりも戦略そのものを練り直すことが大きな主題となるのではなかろうか。9月5日のきさらぎ会での黒田総裁の講演「金融緩和政策の「総括的な検証」」においては「ベネフィット」と「コスト」との表現が使われている。これまでは「ベネフィット」ばかりが強調されていたが、今回は「コスト」との表現が使われていた。

 「マイナス金利が金融機関の収益に与える影響が相対的に大きい」とのコメントに加え、黒田総裁はマイナス金利が「経済活動に悪影響を及ぼす可能性には留意する必要があります。」と指摘している。

 ただし、マイナス金利政策の撤回などは考えられず、その代わりに日銀が取る手段のひとつに結果として国債のイールドカーブのスティープ化を促す可能性が存在すると市場参加者は読んだようである。マイナス金利政策決定後の国債のイールドカーブの急低下は日銀の想定以上であったことで、ここに修正を加えマイナス金利政策などによるコストを軽減させることが検証のひとつの目的となっている可能性があると。

 イールドカーブのスティープ化は利ざやを大きくすることで銀行の収益を改善させる。10年債利回りあたりまで利回りがプラスとなれば国債を使った運用も一息つける。長期、超長期債に投資家の売買が戻り、少しでも国債の流動性を回復させうる。日銀がこのようなことを目的としているのであれば、金融政策だけで物価目標達成は可能との認識から、そこには金融機関を含めて民間の活力をもり立てる必要があることで、債券市場の流動性を含めて認識をあらためつつあるように思われる。

 注意すべきことは日銀は今回、イールドカーブも自在に探れるかのような認識を示していたことである。日銀の金融政策で債券市場が自在にコントロールされているわけではなく、あくまで市場参加者の相場観と日銀の政策の方向性が合っていたということでしかないとの見方もできよう。ここに乖離が生じると債券市場が波乱含みの様相となるリスクも当然存在する。

 すでに日本のイールドカーブは9月に入りスティープ化が進んでいる。これにより10年債利回りはマイナス0.010%をつけ、ゼロ%まであと少しというところまで利回りが回復した。そんな状況下、ここにきて今度は欧州の国債利回りが上昇し、日本よりも一足先にドイツの10年債利回りが9日にプラスに回復していた。

 8日のECB理事会では金融政策の現状維持を決定。ドラギ総裁は会合後の会見で、資産買入れ策の期限延長について議論しなかったと説明した。市場では来年3月までの資産買入の時期を延長するのではとの期待が一部にあった。ドラギ総裁は資産買入れの円滑な実施を確実にするための選択肢を検討するよう指示したとも発言しており、これの意味するところは、ECBの国債買入についても限界が見えており、何かしら買入対象の変更等を行わなければ期間延長も難しくなっているのではとの見方もできる。

 これを受けてドイツなど欧州の国債が売られていたところに、9日にボストン連銀のローゼングレン総裁が利上げを長く待ち過ぎれば米経済が過熱する恐れがあるとの指摘したことで、9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性が意識されて欧米市場に動揺が走った。9日のニューヨーク株式市場でダウ平均は大きく下落し394ドル安となった。リスク回避の動きが強まったのであれば通常、国債は買われるが、今回は欧米の国債が大きく売られたことで市場が動揺した格好となった。

 FRBの利上げについてはイエレン議長やフッシャー副議長などの発言内容からは正常化路線は継続しており、それで年内利上げの可能性が高いと読むなら12月ではなく9月の可能性の方が高いとみるべきではなかろうか。今月発表の経済指標が意識されて9月にもし利上げしをなかったならば、12月はその間の経済指標がすべて予想以上にでもならない限り余計無理なものとなる。11月の大統領選挙結果次第では政治圧力を受ける懸念もある。これはトランプ氏でもクリントン氏でも同様であり、12日にはそのクリントン氏に近いとされるブレイナードFRB理事の講演がある。ブレイナード理事は利上げ慎重派であるが、その発言次第では市場がさらに利上げを織り込みにくる可能性もある。ただし、その市場の動揺が大きすぎる懸念もあり、このあたりどうバランスを取ってくるのかにも注目したい。

 ここにきての日本と欧米の国債市場が動意を見せてきた背景には、日銀の総括的な検証に対する思惑による進み過ぎたイールドカーブの修正があった。それは結局日銀の追加緩和に対する限界も示すことになり、それはECBも同様であることが意識された。FRBの正常化路線に変更はないはずが、市場は早期利上げに懐疑的な見方をしていただけに、日欧の長期金利の上昇もあって、米債利回りも上昇圧力を強める格好となった。

 リーマン・ショック、欧州の信用不安などにより異常なまでに押し下げられていた日米欧の長期金利が、ここにきて流れが変わろうとしている。その大きなきっかけとなった要因として、日銀の総括的な検証への思惑があったことも確かではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-09-11 09:57 | 国債 | Comments(0)

江戸時代のヘリコプターマネー、荻原重秀のデフレ対策

 8月14日付けの日経新聞朝刊の特集記事「敗戦後、失われた預金(日本国債) 」のなかにヘリコプターマネーに類する政策を行ったとして江戸時代の荻原重秀の名前が出ていた。荻原重秀がどのような政策を行ったのかについて振り返ってみたい。

 1639年に幕府はポルトガル船の入港を禁止し、いわゆる鎖国に入ったのだが、これにより日本の貿易高は減るどころかむしろ増加した。ライバルのポルトガルが日本市場から撤退し、これによりオランダは世界最初の株式会社である東インド会社を経由した日本との貿易で大きな収益をあげ、17世紀に欧州での繁栄を築き上げた。

 ポルトガルは日本の銀を介在してのアジアでの三角貿易を行っていたが、オランダも同様に中国で購入した生糸などを日本に持ち込み、それを銀と交換していた。これにより大量の生糸が日本に流入するとともに、大量の銀が海外に流出した。またオランダはインドとの貿易に金を使っていたことで、オランダ経由で大量の金も流出していった。

 幕府は金銀の流出を防ぐために、金や銀の輸出禁止などの政策を打ち出したものの、国内に生糸や砂糖などの輸入品への需要が強く、国産品では対応できず、結局、その対価として金銀を用いらざるをえず、金銀は流出し続けた。

 日本の金銀の流出先としては、貨幣の材料として銀を必要としていた中国だけでなく、インドなどにも流れ、また金貨についてはインドネシアのバタフィア(現在のジャカルタ)で日本の小判がそのまま流通していた。さらにオランダ本国でもホーランド州の刻印の打たれた日本の金貨が使われていた。

 金銀の流出制限のため幕府は1685年に貞享例を施行し、貿易額そのものを規制した。また、元禄の改鋳などにより金銀の質を低下させたことから、貿易の支払いに対しては、金銀に変わり、次第に俵物と呼ばれる加工食品とともに銅が使われるようになったのである。

 金銀の海外流出とともに日本国内の金銀の産出量が低下した。米の生産高の向上や流通機構の整備などにより、国内経済が発展し貨幣需要が強まったものの、通貨供給量が増えなかったこともあり、米価は上昇せずデフレ圧力が強まった。

 五代将軍綱吉は豪奢な生活を送っていたことに加え、寺社や湯島聖堂などを建立するとともに、明暦の大火や各地で発生した風水害などにより、慢性的な赤字を続けていた財政がさらに厳しくなり、幕府は1695年に貨幣の改鋳に踏み切った。

 将軍綱吉は勘定吟味役の荻原重秀に幕府の財政の立直しを命じ、荻原重秀はそれまで流通していた慶長小判(金の含有率84-87%)から、大きさこそ変わらないものの金の含有率を約57%に引き下げた元禄小判を発行した。また銀貨の品位も80%から64%に引き下げられた。

 しかし、金銀貨の品位引き下げが均衡を欠いていたことから、銀貨の対金貨相場が高騰し、一般物価も上昇した。このため1706年以降、銀貨が4回に渡り改鋳され、1711年の改鋳により銀貨の品位は20%と元禄銀貨の3分の1にまで引き下げられた。金貨については1710年以降、品位を84%に引き上げたものの量目を約2分の1にとどめ、純金含有量が元禄小判をさらに下回る宝永小判を発行した。

 これらの改鋳により幕府の財政は潤ったものの、これにより通貨の混乱とともに物価の急騰を招き、庶民の生活にも影響が出たのである。荻原重秀に関してはインフレを引き起こしたといった批判とともに、デフレ経済の脱却を成功させ元禄時代の好景気を迎えたとの見方もあり、評価は分かれている。また、荻原重秀は著作を残していないが、「貨幣は国家が造る所、瓦礫を以てこれに代えるといえども、まさに行うべし」と述べたとも伝えられている。藩札などの紙幣も発行されていたことで、貨幣の発行には信用の裏づけがあればたとえ瓦でも石でも良いとする、現在の管理通貨制度の本質を当時すでに見抜いていた人物でもあったとされる。

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by nihonkokusai | 2016-08-14 07:08 | 国債 | Comments(0)

日銀の国債買入縮小で何が起きるのか

 日銀は9月20、21日の金融政策決定会合において、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現する観点から、量的・質的金融緩和・マイナス金利付き量的・質的金融緩和のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行う。総括の内容とそれを前提としたフレームワークの変更があるのかどうかもわからないが、国債の買い入れを柔軟なものとするのではとの観測がある。

 9日の産経新聞は、緩和の縮小(テーパリング)とみなされる購入量の大幅減少は避けるが、現在年80兆円の買い入れ額を「70兆~90兆円」などと幅を設ける案などが浮上しているという。

 テーパリングという言葉は、米国の中央銀行にあたるFRBが2013年12月に決定した毎月の「国債買入額の減少」を意味する。日銀は現在、長期国債については保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行っている。これに関して日銀の木内審議委員は講演で下記のような発言をしている。

 「日本銀行が、政府の発行額相当分を市中から購入するだけでは、残高増加目標を達成するのが難しくなってきていることを示唆しており、目標に届かない分は、金融機関から償還前の長期国債を購入する必要性が高まっていると考えられます。まさにこのようなタイミングで、金融機関の国債売却のインセンティブを下げるようなマイナス金利が導入されたことを十分に認識しておく必要があると思います。」

 「私は、国債買入れ(長期国債保有残高の増加ペース)を減額することで、国債市場の安定を確保しつつ、効果と副作用のバランスを改善させることができると考えています。一方、日本銀行が長期国債の保有残高を削減しなければ、政策効果の減少に繋がる実質長期金利の上昇を回避することは可能であり、これまで獲得してきた効果をしっかりと確保することができると考えています。こうした考えのもと、私は、昨年4月から、国債買入れの減額を提案しています。」

 FRBのテーパリングは異常な金融緩和策からの出口政策を意味し、テーパリング終了後、昨年12月に次のステップとなる利上げを決定している。このようにテーパリングは緩和策の反対、引き締め政策と映るため、日銀としてはテーパリングを9月に決定するようなことは避けるであろう。しかし、買入額の数字に幅を設けることで、国債買入そのものも柔軟に対応できるようにするという手段は検討される可能性はある。しかし、これは実質テーパリングとなるのではないかとの批判が出ることも予想される。

 一方、このようなタイミングでテーパリングを日銀が決定すればデフレからの脱却がさらに困難になるとの意見があるようだが、異次元緩和で物価目標の達成どころか消費者物価指数は前年比マイナスに沈む中、金融緩和や引き締めでむしろ物価が簡単に動かせるわけではないことも明らかになっており、あまりこの意見には説得力はない。

 ただし、日銀のテーパリングは金融市場に直接影響を与える可能性がある。2013年6月19日のFOMC後の記者会見において、当時のバーナンキ議長は、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせる(つまりテーパリング)のが適当と見ていると述べた。これをきっかけに米国の株式や債券が大きく下落し、これは「バーナンキ・ショック」と呼ばれた。同様の事態が東京市場で起きる懸念はある。

 最も注意すべきことは、日本の債券市場は日銀の国債買入の減額をタブー視していたという歴史が存在するということである。これにはいろいろな要因が重なってのものと思われるが、そのひとつが1998年末の資金運用部ショックと呼ばれる国債価格の急落である。これは日銀ではないが資金運用部の国債買入減額がひとつのきっかけとなっていた。

 日銀は2006年に量的緩和政策とゼロ金利政策を解除したが、その際には国債の買い入れ額は維持している(テーパリングはしていない)。それ以前に速水総裁時代は量的緩和として国債の買い入れ増額を何度か決めていたものの、福井総裁時代は量を増やしても国債の買い入れ額には手を付けていなかった。これは国債買入の減額が難しいことを認識していたからであろう。

 白川総裁時代でも国債買入には慎重となり、2010年10月に決めた包括緩和政策では別枠で国債買入を増額するとしたが、少し待てば償還されて減額も容易な中期債に限っていた。しかし、黒田総裁はそんなタブーは完全に無視して巨額の国債買入と買い入れる国債の年限も思い切って長期化していた。これによりむしろテーパリングをさらに困難にさせたともいえる。

 日銀が自発的にテーパリングを行うとすれば物価目標が達成した結果ということになろうが、果たして物価目標は達成できるのか。このままずるずると巨額の国債買入を続けていると、いずれ国内投資家からの保有国債の引きはがしにも限界がくる。そのときに、しかたなく日銀がテーパリングを行うことになれば、市場は大きく動揺することも予想される。何度も繰り返すが日銀は今まで国債買入の額を減らした経験はない。米国でテーパリングが成功したからといって日本でも問題ないとは言い切れない。かなりうまく市場との対話を進めない限り、日銀のテーパリングにより長期金利が飛び跳ねる危険性もあるのである。

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by nihonkokusai | 2016-08-13 09:56 | 国債 | Comments(0)

日本国債は危なくないのか

 すでに廃刊となってしまっているが、私が文春新書から「日本国債は危なくない」という本を出させていただいたのが2002年9月20日のことであった。この2002年9月20日は日本の国債の歴史において大きな出来事があった日であった。この日の10年国債入札において、10年国債入札として初めての「札割れ」が発生したのである。なんと「日本国債は危なくない」という本の発売日当日に日本国債は危機を迎えたのである。

 当時の10年国債の発行額は一回当たり1兆8000億円であった。その75%の1兆3500億円が競争入札となっていたが、入札予定額1兆3500億円に対して、このときの業者の応札額は1兆1852億円しかなく「未達」が発生した。ただし、当時の10年国債には国債引受シンジケート団が存在し、入札予定額に満たない分はシ団のシェアによって割り振りされるため、当初予定された発行額の1兆8000億円の発行は可能となり、実質発行額が予定発行額に満たない「未達」ではなく「札割れ」との表現になった。

 この入札日の前の9月18日に日銀の速水総裁は、金融システム安定化策としても日銀が直接に金融機関から株を買い取ることを発表した。これを受けて、債券先物が急落し1999年6月11日以来のストップ安をつけたのである。なぜ、日銀が株を買い取ることで債券が売られるのか。その最も大きな理由は、国債に対しての信用に影響が及ぶと思われたためである。日銀がリスクのあるものを買い込んで、日銀券の信用力の裏づけとなる日銀の資産を劣化させれば通貨、つまり円が大きく売られる可能性がある。日本の通貨に対する信用がなくなれば、国債に対する信用にも当然ながら影響を及ぼすためなのである。

 実際に日銀の株買い取りが発表された直後には、円安が進んだ。ところが、日経平均などが上昇したことで、円は反転買い進まれたのである。つまり通貨に対しての信用が失われるとの思惑は一時的であった。それにもかかわらず、債券は売り込まれてしまった。このときの債券の下落の大きな要因は相場の急ピッチの上昇にあったと言える。債券相場は乱高下を繰り返し、かなりのポジションを抱えていた金融機関は身動きがとれなくなってきた。また9月決算も影響してか、積極的に10年国債を買えるところが限られてきた。そんななかでの10年国債入札であったために、札割れが発生したものと思われる。

 またこのときの10年国債の入札は休日前に実施するという異例の事態であったことも影響していた。10年国債の入札は、慣行上、三連続営業日の真ん中に実施される。しかし、今回は三連休が続いたことなどからスケジュールから三連続営業日の真ん中の日の入札が行えなかった。以前もスケジュールにより休日前に実施されたケースもあったが三連休の前日というものはなかった。しかも、この日は政府のデフレ対策が発表されることになったなど、業者・投資家ともポジションを取りにくかったことも確かであった。

 10年国債の入札で札割れが発生したことで、債券先物は再び前日比1円以上も下落したが、それほどパニック的な売りとはならなかった。このときの札割れは特殊要因が重なったためとの認識であったと思われる。

 その後、国債引受シンジケート団は廃止されており、もし仮に今後同様の事態が発生した場合には「札割れ」ではなく「未達」となる。しかし、いまのところ国債の入札における未達の可能性は小さい。これは元々国債への投資家ニーズがあったにも関わらず、強引に日銀が国債を買い入れており、国債の需給が非常にタイトになっているためである。

 その日銀が市場から国債を買い上げる手段が国債買入オペレーションとなる。債券市場関係者が注目しているのは国債の入札時の未達というよりも、日銀の国債買入における未達の方となっている。

この未達が9日に英国で発生した。イングランド銀行は残存15年超の国債を11億7000万ポンド買い入れる予定であったが、金融機関などからの応札額は11億1800万ポンドにとどまり、予定額に達しなかったのである。

イングランド銀行は4日の金融政策委員会で、年0.5%と過去最低の水準となっている政策金利をさらに引き下げて年0.25%とするとともに、英国債を対象とする資産買入プログラムの規模を600億ポンド増額し4350億ポンドとし、さらに100億ポンド規模の投資適格級社債購入プログラムを決定した。このあらたな国債買入プログラムのもとに行われた国債買入で、早くもつまづいた格好となった。

ただし、英国債はこれにより国債需給のタイトさが意識されてむしろ買い進まれた。英国の10年債利回りは一時0.56%台と過去最低を更新したのである。しかしもし日本で日銀の国債買入での未達が発生すると違った反応を起こす可能性が高い。

日銀の国債買入の未達が頻繁に発生するようなことになると、その対策として日銀が国債買入の額を縮小するなどの対応が取られる可能性がある。これを市場は国債買入額の減少、いわばテーパリングと意識して国債が売られる懸念があるためである。

いずれ日銀の国債買入には限界が来、いうのが市場参加者の共通認識である。日銀は国債残高の三分の一しか買っておらず、あと三分の二も残っているといった乱暴な意見もあるようだが、金融市場でこれだけ巨額な資産は存在しておらず、しかも安全資産と認識されているものでもある。ほかの代替金融商品に変えろといわれても、安全性を兼ね備え日銀担保にも使える巨額な金融商品は存在しない。国債の年間発行額をほぼ日銀に吸い上げられる今の状況は、かなり限度に近いものともいえる。

7月29日の金融政策決定会合後の日本の国債市場でのプチバブルの崩壊もあり、日本国債はここにきて調整局面を迎えたが、これはあくまで買われ過ぎた反動であった。しかし、それでも国債利回りの上昇は急激で他市場にも影響を与えうることも示され、あらためて国債の価格変動リスクも意識された。いまのところは国債の信用リスクに至る懸念はヘリマネが実施されるようなことにならない限りは小さいが、今後の日銀の国債買入の状況次第ではこの価格変動リスクが意識される可能性はある。すぐに来る危機ではないかも知れないが、これも注意すべきものとなる。

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by nihonkokusai | 2016-08-11 10:38 | 国債 | Comments(0)

日本国債の価格変動リスクが意識」

 9月の日銀金融政策決定会合に向けて日本国債の価格変動リスクが意識されつつある。7月29日の日銀金融政策決定会合では追加緩和が決定されたが、その内容は声明文のタイトルが示すように「金融緩和の強化について」となった。このタイトルは白川総裁以前の日銀が使っていたものであった。これは黒田総裁になってからの大胆なサプライズな金融政策から、元の逐次投入型の金融政策に戻すことを意味しているとの見方もできよう。

 これにより、ここからさらに大胆な国債買入増額やマイナス金利の深掘りの可能性が後退したと言える。今回の金融緩和の強化では日銀の政策目標となっているマネタリーベースの増額は据え置かれた。それにも関わらず追加緩和という言葉を使う以上は、フレームワークそのものの変化も意味しよう。

 しかし、それでも黒田総裁は強気の姿勢は崩しておらず、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現する観点から、次回の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」・「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとでの経済・物価動向や政策効果について総括的な検証を行うこととし、議長はその準備を執行部に指示した。

 この総括とはどのようなものになるのか。この解釈を巡っては、さらに大胆な緩和を可能にさせる環境作りとの見方も一部にある一方、現実に量や金利での勝負は諦め、以前の日銀のフレキシブルな緩和方式に改めるのではとの見方もある。

 いずれにしても市場が期待したようなヘリコプターマネーという究極のリフレ策の実験場に日本がなる可能性は後退した。特に海外投資家によるヘリマネへの期待は強かったが、それがなくなったことにより、7月29日以降の日本国債の急落へと繋がることになる。

 今回の日本の債券市場の急激な調整は、2003年6月のVARショックと呼ばれる債券相場の急落と似ている。VARショックでは日銀の量的緩和を背景にメガバンク主体に買い仕掛けが入ってその反動が起きた。今回買いを仕掛けたのはヘリマネ期待の海外投資家と国債をより高く日銀に売却しようとした業者が主力であったとみられる。だからこそ8月2日の10年国債の入札結果がさらなる急落の引き金ともなったといえる。

 ヘリマネが決定されて国債の信認が毀損されるとの認識で日本国債が急落するのであればともかく、ヘリマネがなかったことで嫌気されて急落というパターンであり、これはあくまで相場が過熱しすぎた反動といったことになろう。

 それでもこの日本国債の急落をきっかけにこれまでの上昇相場を支えてきたパターンが崩れる可能性が出てきた。もしここからボラタイルな相場が継続するようなことになれば、海外投資家が日本国債のポジションを減らす可能性もありうる。また、業者にとっては日銀トレードがやりにくくなり、日本国債の参加者がさらに減少してくる懸念もある。

 もちろん国債の利回りが上昇すれば、これまで買い控えていた国内投資家も出てこよう。それもある程度相場が落ち着かないと難しい。

 いずれにしても9月の金融政策決定会合向けては今後もいろいろな憶測が飛び交うとみられ、それに国債が一喜一憂してくることも予想される。日銀も表面上は強気の姿勢を示しても、国債市場の動揺をみていずれ出口戦略も必要であることを認識してくるのではなかろうか。その意味ではある程度の日本国債の水準訂正はむしろ必要であるとも考えられる。

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by nihonkokusai | 2016-08-06 13:13 | 国債 | Comments(0)

日本国債が急落した背景

 7月29日の日銀金融政策決定会合の結果を受けて、債券市場の流れに変化が生じた。日銀の金融緩和に対する異常な期待感で買われていたものが、結果は追加緩和はあったものの予想されていたものより小粒(ETFの6兆円は決して小さな金額ではないが)であったことで、利益確定売りに押された。その後も売りは止まらず、日本国債は久しぶりの急落局面を迎えることとなった。

 これは決定会合に向けて国債が買い進まれていた反動とも言えた。今回の債券相場の上昇において買われていたのが債券先物と中期債が主体となっていた。

 超長期債については英国のEU離脱による余波により、すでに7月6日に20年債利回りがマイナスとなったところでボトムアウトしていた。国内投資家のニーズが引いたのである。

 また10年債利回りがボトムアウトしたのは7月8日にマイナス0.3%台に乗せたところとなった。ただし、その後の10年債の下落基調は比較的緩やかなものとなっていた。

 そして少し遅れて7月27日に2年債利回りと5年債利回りがそれぞれマイナス0.370%、5年債がマイナス0.380%をつけてボトムアウトした。29日の日銀金融政策決定会合への過剰な期待感が背景にあったものとみられる。

 債券先物に関しては前後場だけでは7月27日の154円ちょうどが高値となった。その日のナイトセッションで154円01銭を付けており、これがいまのところの過去最高値ということになる。債券先物もここでピークアウトした。

 7月28日に債券先物9月限は153円65銭まで下落し、20銭安の153円80銭で引けた。高値警戒もあったが日銀の政策変更への思惑による調整売りともいえよう。

 そして日銀の金融政策決定会合二日目の29日の会合結果を受け、過剰な期待感を抱いていたむきの梯子が外された格好となり、債券先物は152円44銭まで急落し、1円20銭安の152円60銭で引けた。10年債利回りもこの日、マイナス0.170%に上昇(マイナス幅を縮小)していた。

 この一連の流れからみて誰が仕掛けていたのは明白ではなかろうか。少なくとも日本の本来の投資家は20年債がマイナス金利をつけた段階で誰も手を出さなくなっていたように思う。それでも中期債や債券先物が買い進まれていたのは、マイナス金利でも中期債が購入可能な海外投資家と業者ということになろう。特に海外投資家がヘリコプターマネーを期待し、日銀の大胆な追加緩和を予想して買い仕掛けていた可能性が高い。だからこそ29日の先物や10年債、5年債、2年債の下げが厳しかったと言えよう。

 これにより債券市場の地合いが変化した。8月1日の債券先物は寄り付きこそしっかりとなったが、2日の10年国債の入札も控えていることもあり、152円12銭まで下落し、36銭安の152円24銭で引けた。そして2日には10年国債入札が低調な結果となったことも手伝い、債券先物は一時150円66銭まで急落したのである。10年債利回りはマイナス0.025%とゼロ%に接近した。現物債はこの長期債と中期債が大きく下落した。

 債券先物の152円割れは英国EU離脱をきめる国民投票のあった日以来、また151円割れは3月16日以来となった。英国のEU離脱によるリスクオフに日銀の追加緩和期待も乗っかっての上昇相場に転機が訪れ、元の水準以下にまで戻った格好となった。

 この日本国債の急落は2日の欧米の国債売りを招くなどの影響も与えることとなった。日本国債の動きが海外市場にも影響を与えるのは最近では珍しい。

 今後日銀がどう動いてくるのか。特に国債については、量も金利面でも日銀はその深掘りには躊躇しつつあるように思われる。フレームワークの変更があるとすれば、国債をこのまま買い進めることができる環境とは異なってくることも予想される。海外投資家がこのあたりをどのように判断してくるのか。今後の動きは要注目と思われる。

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by nihonkokusai | 2016-08-03 09:56 | 国債 | Comments(0)

日本でも50年国債の発行を検討?

 日本でも50年国債の発行が検討されているとWSJが伝えた。この記事によると「その詳細は安倍政権が経済対策の一環として公表される可能性がある」そうである。国債は現在、最長は40年国債であるが、これは財務省主導で発行されたものである。ところが今回の50年国債は、WSJの記事をみる限り官邸主導の気配がある。もしそうであればヘリコプターマネーを意識したものとの憶測が出てくる可能性もあろう。財務省はこの50年国債の発行を検討しているとの報道を否定した。

 ただし、50年国債については、たとえば2006年の「国の債務管理の在り方に関する懇談会」の資料のなかでも大きくスペースを割いての説明もあった。財務省はいずれ50年国債の発行を目指していたことは確かであろう。ただし、直近の国債市場特別参加者会合では触れられていないなど、今回のことはやや唐突感もあったことも確かである。

 少し古い資料ながら、2006年の「国の債務管理の在り方に関する懇談会」の資料を基にして海外の50年以上国債発行についてみてみたい。

 フランスでは、オランダにおける年金基金の制度改正など年金に関する制度改革などにともなって、超長期債のニーズ増大に応えることを目的とし、2005年2月に50年固定利付債をシンジケート方式にて発行した。発行額は60億ユーロ。

 イギリスでは「利払負担の軽減」を目的として、2005年5月に50年固定利付債を入札方式にて発行している。発行額は25 億ポンド(約0.53兆円)。さらに9月には50年物価連動債をシンジケート方式にて発行。その後、それぞれリオープンを行っている。また、2006年5 月には40年固定利付債を入札方式にて発行しており、発行額は22.5 億ポンド。

 50年以上の国債は、他にポーランドで50年債、スイスでも50年債、中国では100年債が発行されている。

 もし50年債発行の可能性があるのであれば、50年ではなく60年債の発行が望ましい。国債(建設国債と赤字国債)には60年償還ルールがあるため、60年国債ならば借換債の発行をしなくても済むためである。しかし、その前に30年国債や40年国債の流通市場を整備するのが先決かとも思われるのだが。

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by nihonkokusai | 2016-07-27 13:39 | 国債 | Comments(0)

日本では何故、永久国債は発行できないのか

 バーナンキ前FRB議長が今月11日から12日にかけて、安倍首相や黒田日銀総裁と会談したことで、市場ではヘリコプターマネーへの思惑が出ていた。そのヘリコプターマネーについては人によって解釈が異なるが、今回について言えば「政府が市場性のない永久国債を発行し、これを日銀が直接全額引き受ける」との認識で捉えられていたかと思われる。

 日銀による国債の直接引き受けは、高橋財政による日銀の国債引き受けが結果として戦後のハイパーインフレの大きな要因とされたことで戦後に制定された財政法の五条で「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない」として禁止されている。

 しかし、「但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」との抜け道も用意されている。実際に過去、この但し書きにより、日銀が保有している国債が満期償還を迎えると、1年間に限って現金償還を延長し、現金の代わりに短期国債を発行し、それを日銀が引き受けるという手段をとっていた時期が存在した。むろんだから日銀による国債の直接引き受けは実質的に可能であり、しても良いと言っているわけではないが、絶対にできないものではない。

 そして今回のヘリコプターマネーとされる解釈にはもうひとつの障壁が存在する。それが永久国債(コンソル債)である。かつて英国では、国債はこの償還期限のないコンソル債が主体であった時期があったぐらいにそれほど特殊な債券ではない。ただし、この永久国債を日本で発行しようとしても簡単にはできない。それは国債には当然ながら発行するために関係する法律が存在しているためである。建設国債は財政法、赤字国債は発行するたびに特別法を制定して特例により発行されている。さらに下記のような償還の仕組みも存在している。

 一般会計の各年度の歳出財源を賄うために発行される国債(つまり建設国債と赤字国債)の償還は、すべて国債整理基金を通じて行われている。国債整理基金に関する法律である特別会計法の第四十二条には、「国債(一般会計の負担に属する公債及び借入金(政令で定めるものを除く。)に限る。以下この項及び次項において同じ。)の償還に充てるために繰り入れるべき金額は、前年度期首における国債の総額の百分の一・六に相当する金額とする。」とある。

 何のことかわかりにくいが、要するに建設国債と赤字国債は60年かけて償還されるという「60年償還ルール」が存在している。

 1965年度に戦後初めて発行された国債(特例国債、7年債)は、その満期が到来する1972年度に全額現金償還されたが、1966年度以降に発行された建設国債については、発行時の償還期限にかかわらず、すべて60年かけて償還される仕組みが導入された。これは公共事業によって建設された物の平均的な効用発揮期間、つまり使用に耐えられる期間が、概ね60年と考えられたためである。これが国債の60年償還ルールと呼ばれるものである。これに基づいて発行される国債が借換国債もしくは借換債と呼ばれている。

 1985年からは建設国債だけでなく特例国債(赤字国債)にも借換債の発行が認められることになった。これは1970年代後半から国債の大量発行が続き、1972年に国債発行の中心となるものの年限が7年から10年に延長されており、1970年代後半の10年後には大量の国債償還・借換えに対応する必要が出てきた。この際に厳しい財政事情のもとでそれを現金償還するとなれば、極端な歳出カットが求められることになるため、特例国債についても借換債の発行を行わざるを得なくなったためである。

 このため、歳出財源を賄うための国債として永久国債を発行しようとするとこの60年償還ルールに引っかかってしまうのである。もちろんこれについても新たな法律を作ってそれを発行根拠法とした上で新たな国債として永久国債を発行するなりといった手段もあり、絶対に無理というわけではない。しかし、それには法律を制定するなりの手続きが必要となり、簡単には発行できるものではないし、それは日銀の仕事でもないのである。

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by nihonkokusai | 2016-07-22 10:00 | 国債 | Comments(0)

6月は日本国債の売買高が回復

 7月20日に日本証券業協会は6月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

5月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 1174(-235、-1726、3328)
地方銀行 5659(1430、4568、448)
信託銀行 -2612(670、-893、-3296)
農林系金融機関 188(144、326、0)
第二地銀協加盟行 923(204、465、10)
信用金庫 608(477、1437、-318)
その他金融機関 -562(175、143、-1)
生保・損保 -4453(-3902、126、801)
投資信託 -1202(-303、34、-283)
官公庁共済組合 -131(68、-1、0)
事業法人 -255(83、-144、53)
その他法人 2(19、199、14)
外国人 -22166(-394、-7896、-12515)
個人 489(42、41、9)
その他 12670(2591、2840、12089)
債券ディーラー 393(103、323、28)

 都銀はそれほど金額は大きくはないが再び売り越しに転じた。今回、その他を除くと売り越しトップは地銀となっていた。長期ゾーンを中心に外していたようである。海外投資家は中期ゾーンを主体に引き続き大幅買い越しとなった。長期債も買い越しとなり、超長期債も金額は大きくはないが買い越しとなった。

 国債の投資家別売買高(一覧)での合計の国債売買高でみてみると、先月発表された2016年5月分の国債売買高は162兆1940億円となり、統計のある2004年4月以降最低となっていた。しかし、6月は201兆7760億円とかなり回復していた。6月は英国のEU離脱により市場ではリスク回避の動きを強め、日本国債も買い進まれていたことで売買高が膨れた面もあった可能性もある。売買高の低迷が一時的であったのかどうか、もう少し見極める必要もありそうである。

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by nihonkokusai | 2016-07-21 09:49 | 国債 | Comments(0)

ヘリマネの高橋財政時と現在の国債市場が酷似

 高橋財政のリスクとしては、財政拡大の主因が軍事費であったことに加え、日銀による国債引受があった。これについて高橋是清は「一時の便法」と称していたが、それはある意味、パンドラの箱を開けてしまったとも言える。デフレからの脱却期であれば、その弊害は見えていなかったが、経済が回復するとそのリスクが拡大することになる。つまり、日銀による国債の売りオペを行って過剰流動性を吸収しても、国債発行による財政拡大が続けば信用膨張が進んでしまう。これを抑制しようにも金融引き締め政策の実行が著しく困難となるのである。

 高橋是清蔵相は当初、「日本国民の通貨に対する信用は非常に強固なものがある」ため「通貨の信用ということについてはあまり気にする必要はない」という理由で公債漸減主義は考えていなかった。しかし、その後日銀の深井副総裁の度重なる進言と、第一次世界大戦後におけるドイツ・インレーションに関する調査物を読んで、その心境に変化が生じたとされると、当時の大蔵省理財局国債課長であった西村淳一郎が回顧録で述べていたそうです。

 ここはアベノミクスと比較する意味においても非常に重要なポイントとなる。日本の通貨や国債に対する信用は非常に強固との認識は当時の高橋是清だけでなく、現在の日本の為政者も持っていると思われる。これが現在も財政健全化といいながらも巨額の国債発行を続けているひとつの理由になっていよう。

 ここで気になったのが、高橋是清が「ドイツ・インレーションに関する調査物」を読んでいたことであった。第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行し、ライヒスバンクに引き取らせるという手法となっていた。中央銀行として1875年に設立されたライヒスバンクは、全額民間出資ながら、ドイツ帝国の行政府としての位置づけで、国からの強い影響力があった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われることになる。

 高橋是清の考案した日銀引受による国債発行は、市中公募と異なり発行額や発行条件が市場動向に左右されなくなる。日銀の国債引受方式による大量の資金供給で、金利そのものの引き下げも目的としていた。同時に財政負担の軽減を目的に発行する国債の利率の引き下げを計ることも重要な目的となっていた。金融緩和策とともに、国債の発行条件の引き下げにより、金利の先安予想が強まり、国債価格の上昇予想を背景にして、国債の売りオペを通じての市中消化を円滑に行うことが可能となった。つまり、これは金利の引き上げを行うことはかなり困難になることを意味しており、その好循環が途切れるとすべての歯車がうまく回らなくなることも意味する。1935年に入るとそれまで順調となっていた売りオペによる円滑な市中消化が変調をきたしはじめた(拙著「聞け! 是清の警告」から一部引用)。

 このあたりの状況はいまの日本国債を取り巻く環境に酷似してはいまいか。むしろ日銀のマイナス金利により当時よりもさらにエスカレートしている。政府は国債のマイナス金利化により国債を発行すればするほど利益が生み出されている。そして、日銀の意地元緩和、ではなく異次元緩和は緩和方向の一方通行と化しており、ブレーキが掛けられないような状況に陥っている。いずれ近いうちに日銀の国債買入が変調を来す懸念がある。ここでもし、ヘリコプターマネなど導入しようものなら、その行き着く先は過去の歴史を見れば明らかであろう。

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by nihonkokusai | 2016-07-15 09:59 | 国債 | Comments(0)
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