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カテゴリ:日銀( 1062 )

企業の景況感は横ばい、物価見通しは低迷

 10月3日に発表された日銀短観(9月調査)では、大企業・製造業DIがプラス6となり、2期連続での横ばいとなった。景気の先行きについても、プラス6ポイントと横ばいとなっていた。大企業の非製造業はプラス18ポイントと前回を1ポイント下回り、3期連続での悪化となった。

 大企業全産業ベースの2016年度の設備投資計画は前年度比6.3%増となり、前期に比べ0.1ポイントの上方修正となった。

 2016年度の大企業・製造業の想定為替レートは107円92銭。最近のドル円は少し戻して102円台となってはいるが、企業の想定レートからはかなり低い位置にいる。

 日銀短観の大企業・製造業DIのトレンド変化と日経平均のトレンド変化が重なることは過去何度かあった。短観の大企業・製造業DIが3期連続で同じということは、今年に入りトレンド変化がないということになる。あらためて今年に入っての日経平均の推移を確認してみると、16000円から17000円あたりを中心に方向感に乏しい展開が続いている。

 設備投資についても力強さを欠く。円高もあり、たとえば自動車は足元プラス8ポイントと熊本地震の影響もあった前回からは大きく回復していたものの、先行きはプラス3に落ち込むとの予想となっている。

 4日に発表された短観の「企業の物価見通し」によると、全規模全産業の1年後の消費者物価指数をイメージした見通しは平均で前年比0.6%上昇と前回調査の0.7%から0.1ポイント下振れした。8月の消費者物価指数(除く生鮮食料品)が前年同月比マイナス0.5%となっていることが影響していると思われる。

 日銀がマイナス金利政策まで導入しても結局、民間の期待インフレ率は動かせなかった。日銀は9月の会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、オーバーシュート型コミットメントと呼ぶ政策を打ち出したが、「オーバーシュート型コミットメントは現実的な目標設定でなく、予想物価上昇率を引き上げる効果も期待できない」(「金融政策決定会合における主な意見」より)のではなかろうか。短観全体を見渡しても景気の力強さは感じられず、物価観だけが引き上げられるようなことは想像できない。

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by nihonkokusai | 2016-10-05 09:40 | 日銀 | Comments(0)

日銀は長期国債と超長期国債の買入を減額

 9月30日に日銀は国債買入をオファーした。対象は国庫短期証券と残存5年超10年以下、10年超25年以下、25年超。このうち残存5年超10年以下の買入予定額を4100億円とし前回の4300億円から200億円減額した。

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を導入し、今後の金融政策の調節目標をマネタリーベースから長短金利に変更した。短期金利については、日銀当座預金のうち政策金利残高かかるマイナス0.1%が目標となり、長期金利(10年国債の利回り)については概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行うとした。

 買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。買入対象については引き続き幅広い銘柄とし、平均残存期間の定めは廃止するとした。

 あくまで80兆円は目処であり、増減の可能性はある。これはつまり減ることもあるということであり、平均残存期間の定めは廃止することで、長いものを一定量買う必要はなくなった。目先については、超長期ゾーンの買入を減額することで、イールドカーブをコントロールし、スティープニング(より長い金利を高くすること)を狙った政策と捉えられた。

 市場では月末の夕方、つまり9月30日の5時に公表される「当面の長期国債買入れの運営について」で、超長期債の減額があるだろうと予想していた。ところがそれを待たずに日銀は残存5年超10年以下の国債の買入をいきなり減額するという手段に出た。この日の10年国債の利回りはマイナス0.090%に低下していた。そして数日前にはマイナス0.095%にまとまった売りが入るなどしていた。

 日銀の長期金利の操作目標についてはある程度の幅があると予想されており、市場はそのレンジを見定めようとしていた。その下限がマイナス0.1%であろうとの認識であったが、それが日銀が国債の買い入れを減額することで裏付けられた格好となった。しかし、なぜ夕方の「当面の長期国債買入れの運営について」にて減額を示して、10月から実施とするのではなく9月中に実施したのであろうか(このため、当面の長期国債買入れの運営についてで、残存5年超10年以下は前回、つまり当日減額された買入の金額からは修正はされない数字となっており、少し紛らわしいものとなっていた)。

 10月4日には10年国債の入札も控えており、タイミングからも9月30日当日の国債買入で減額を示す必要性があったのか。それとも日銀が得意とするところのサプライズを狙ったのかはわからない。少なくともこれで長期金利の誘導目標の下限は示されたことは確かである。

 ちなみに超長期債の買入については、10年超25年以下が一回あたり2000億円から1900億円に、25年超が1200億円から1100億円に減額される。ほかの年限での修正はなく(5年超10年債は9月30日にすでに減額済み)、これは見方を変えればテーパリングということになるが、市場はあまり動揺は示していない。日銀にとってはしてやったりといったところなのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-04 09:37 | 日銀 | Comments(0)

日銀は長期金利(国債価格)を操作できるのか

 日銀は9月21日の金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の新しい枠組みの導入を決めた。これは長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで資金供給拡大を継続する「オーバーシュート型コミットメント」が柱となる。

 日銀が量的・質的緩和政策を2013年4月に決定した際、「量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更」するとした。今回の日銀の枠組み変更で「金融市場調節方針は、長短金利の操作についての方針を示すこととする」とあり、これから日銀の操作目標は長短金利となる。つまり量から金利に戻ったことになる。

 日銀は従来、「期間が長い金利の形成は、なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましい」として長期金利の操作はできないというのが前提にあったはずである。しかし、今回日銀が長期金利、つまりそれは国債の価格ともなるが、それを金融市場調節の操作目標に置いた。これとは極めて異例である。これについて日銀の黒田総裁は9月26日の講演後の会見に次のように指摘した。

 「短期の、例えば当座預金の政策金利のマイナス0.1%は、完全にコントロールできる世界で、それが短期金利に大きな影響を与えるわけですが、長期金利の方は操作目標であって、完全にコントロールできるものではないわけです。ただ、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の経験、それから各国の量的金融緩和の経験から言っても、長期の債券を買うことによって長期の金利に影響を与えられることは分っているわけですし、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで、イールドカーブに非常に大きな影響を与えられたということも、その通りです」

 長期金利は目標に据えたものの、完全にコントロールできるものではないとしており、これはつまり今回の長期金利の誘導目標のゼロ%というのは、かなりの幅を持ったものと言えよう。ただし、日銀は量的・質的緩和によりイールドカーブを引き下げ、マイナス金利政策によりさらに大きく引き下げられたことで、イールドカーブ操作に自信を持ったことも確かではなかろうか。

 日銀は長期金利が上昇した場合などには、例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。固定利回り方式による国債買入の場合には、買入予定総額に上限を設定しないことがあるともしている。長期金利が大きく上昇するような場合には、それを日銀は無制限の国債買入で押さえ込むことも予想される。

 いまのところ長期金利が大きく動くことは考えづらい。上昇よりも低下していく可能性を意識していた方が良いかも知れない。しかし、何かのきっかけで長期金利が大きく上昇した際には無制限の買入でそれを阻止できるのかは疑問である。

 日銀は本来コントロールはできないとしていたものを操作目標に置いた。これはあらためて国債市場に対する挑戦とも言えよう。果たして国債市場はいつまで素直に日銀に従っていくのか。これは時間とともにさらに国債の流動性を低下させることにもなりかねず、いずれその反動が起きることもありうる。日本の国債市場は新たな局面を迎えつつある。

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by nihonkokusai | 2016-10-02 11:42 | 日銀 | Comments(0)

金融政策は万能ではない

 日銀の黒田総裁は30日、カナダ銀行・日本銀行共催ワークショップの挨拶で「多くの中央銀行が各々に与えられた責務を果たすために、様々な課題に直面しているということ、そして、中央銀行が万能ではないということもまた事実です」と述べた。

 これについて私はあえて異を唱えたい。中央銀行はその業務のほとんどを占める日銀ネットなどの金融インフラや銀行の銀行としては万能であるべきである。ただし、金融政策については万能ではない。これはまさか異次元緩和から3年以上経過してやっとわかったことではないと思いたいが、金融政策は万能ではないことを前提に行うべきであり、後戻りできないほど深追いすべきものではない。しかし、それを日銀は少しやり過ぎた。それには金融政策は万能であるとの思い込みが前提にあったためではなかったのか。

 30日に20、21日に開催された「金融政策決定会合における主な意見」が公表された。このなかの金融政策運営に関する意見の総論では、「金融政策の新しい枠組みを採用し、必要な施策をしっかりと進めていくことが適切である」とあった。何故、あれだけのことをしておきながら「新しい枠組みを採用」しなければいけなかったのか。

 「金融緩和政策のパラダイムシフトとして適切なものであると考える」ともあるが、異次元緩和そのものがパラダイムシフトを狙っていたのではなかったのか、それは結局、失敗したということになるのか。

 「新しい枠組みでは、その有効性や副作用を不断に確認し、2%目標の実現に必要であれば、枠組みの修正も含め、柔軟に対応すべき」との意見もあり、このあたりが今回の長短金利操作付き量的・質的金融緩和(QQE+YCC)の本来の狙いと思われる。特に「副作用」や「柔軟」がキーワードとなろう。

 「潜在成長率を引き上げてこそ、自然利子率が上昇し、名目金利体系も正常化する。そうした観点からも政府による成長力強化の取り組みが重要である」

 アベノミクスは日銀の大胆な緩和以外にあと2本の矢があったように思っていたが、どうやら元々なかったようだ。

 「マイナス金利と国債買入れによって、イールドカーブ全般に影響を与えることが確認できた。今後は金融機関収益にも配慮しつつ、目標とする長期金利の水準を決めて、イールドカーブをコントロールすることが考えられる」

 イールドカーブは大胆な金融政策で急激にフラット化してコントロールできることが実証されたとの認識のようだが、コントロールできることがわかったので、それではスティープ化させて物価目標達成させるというのであれば、いったいフラットニングとスティープニングのどちらが効果があるというのか。そもそもイールドカーブの形状でどのようにして物価が動かせるというのであろうか。

「イールドカーブ・コントロールを中心とする新しい枠組みは、従来の枠組みに比べて、経済・物価・金融情勢の変化に応じてより柔軟に対応することが可能であり、政策の持続性も高まるものと考えられる。」

 イールドカーブ・コントロールの目的は物価目標達成に向けてというよりも、金融機関への配慮とともに政策の持続性が目的であるというのであれば、それはそれで納得できる。しかし、そのように主張もできないのであろう。

 「毎回の金融政策決定会合で設定する長期金利の操作目標を実現するため、国債買入れ額が増減することは当然生じうるが、こうした金額の変化が政策的なインプリケーションを持つものではないということは、しっかり説明していく必要がある」

 政策的なインプリケーション(意味合い)以外の何ものでもないと思う。

 「ゼロ%程度という 10 年金利の操作目標は、次回会合までの調節方針であり、長期金利を将来にわたってペッグする趣旨ではない。毎回の会合で最適なカーブの形状を判断していく」

 ということは、決定会合毎に長期金利の操作目標が変化するのかもしれない。それが追加緩和とかの政策変更といえるものになるのかも興味深い。

 「現状程度の国債買入れを続けるなかでは、期間10年までの金利を新たなフォワードガイダンスのもと、マイナス圏で長期間固定することになりかねず、金融仲介機能への影響が懸念される」

 イールドカーブのスティープ化は金融機関の運用面に配慮したものとみているが、長期金利をゼロ程度にすると、それより短い金利はマイナスで長期間にわたり固定されてしまうリスクがある。これはその通りだと思う。

 「イールドカーブ・コントロールのもとで、狙い通りに国債買入れペースが低下して、政策の持続性が高まるかは不確実であり、長期金利上昇などを受けて逆に買入れペースが高まるリスクが相応にある。また、指値による国債買入れオペなどの導入は、市場機能を著しく損ねる恐れがある異例の措置である」

 今回のフレームワークの修正が緩和に前向きな姿勢を維持したままでのものであるため、今後はこのような矛盾が出てくるであろうこともたしかである。

 「金融政策には効果が現れるまでにラグがあることを踏まえると、実際に2%を超えるまで金融緩和を続けるというのは、極めて強いコミットメントである。」

 そもそも異次元緩和からもう3年以上も経過しており、タイムラグどころではないと思うが。

 「オーバーシュート型コミットメントは現実的な目標設定でなく、予想物価上昇率を引き上げる効果も期待できない」

 その通りである。金融政策は万能ではない。

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by nihonkokusai | 2016-10-01 11:24 | 日銀 | Comments(0)

日銀の長期金利のターゲットの範囲とは」

 日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を決定した9月21日に長期金利は一時プラスに転じてプラス0.005%に上昇した。しかし、その後は買いが入り28日にはマイナス0.090%とマイナス0.1%近くまで低下した。

 長短金利操作付き量的・質的金融緩和の柱のひとつイールドカーブ・コントロールとは、短期金利と長期金利にそれぞれ目標値を設定し、その目標値に誘導するものとなる。このうち短期金利は、日銀当座預金のうち政策金利残高に適用されるマイナス0.1%となり、長期金利については10年国債金利で概ね現状程度(ゼロ%程度)としている。

 日銀は短期金利は操作できても、長期金利については市場が決めるものとの見方をしており、今回の長期金利の目標値についても厳格には操作はできないとのスタンスを取っている。ただし、国債買入を柔軟に行うことである程度イールドカーブの修正は可能との認識とみられる。

 日銀は長期金利が上昇した場合などには例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。固定利回り方式による国債買入の場合には、買入予定総額に上限を設定しないことがあるとしている。つまり長期金利が大きく上昇するような場合には、それを日銀は無制限の国債買入で押さえ込むことも予想される。長期金利が想定以上に低下した際には、上記のような歯止めは持っていない。

 日銀は長期金利は目標に据えたものの、完全にコントロールできるものではないとしており、これはつまり今回の長期金利の誘導目標のゼロ%というのはかなりの幅を持ったものといえる。それがどの程度の幅であるのかははっきり示されてはいないが、すでに長期金利がマイナス0.1%近くに低下している以上、この水準はまだ許容圏内という認識になろうか。

 ただし、28日に10年国債の利回りがマイナス0.090%に低下した際、日本相互証券の画面にはマイナス0.095%に100億円が4本を含め都合600億円ものまとまった売りが入ったそうである。ここにきて流動性が低下したこともあり、600億円という売りは異常に大きいものであった。これがどれだけ日銀の意図を意識したものかはわからないが、かなり意識された売り物となっていた可能性がある。

 ただし、いずれにしてもあまり具体的な誘導目標は日銀も持ってはいないのではなかろうか。29日の日経新聞の経済教室で、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の概要を策定した中心人物のひとりとみられる日銀の内田企画局長は、「程度」で許容される長期金利の変動幅について「あまり広いと政策目的を実現できないし、あまり狭いと市場機能への影響が大きいので、実際の市場調節を通じて適切な「相場観」を作っていければと思っている」としている。28日の10年国債の動向をみる限り、いまのところ下限はマイナス0.1%程度に置いている可能性がある。上限はプラス0.1%あたりとの見方もあるが、せいぜいゼロ%あたりとの見方も出ている。

 足元の金利は短期金利なので日銀の操作範疇であるが、長期金利については直接誘導するというよりも、超長期債の利回りの居所次第の面もある。つまり短期金利と超長期債の利回りがある程度のターゲットになり、そのカーブを結ぶ途中の長期金利の居所が決まるような形となる可能性もある。その意味では30日に発表される「当面の長期国債買入れの運営について」での超長期債の買入の動向が焦点になってくるものと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-09-29 09:53 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁の発言の矛盾点

 9月21日の黒田日銀総裁の会見内容と26日の黒田総裁の講演要旨が日銀のサイトにアップされた。ここから黒田日銀総裁の発言内容について確認してみたい。

 イールドカーブ・コントロールに関して、「「総括的な検証」で示した通り、「量的・質的金融緩和」は、経済・物価の好転をもたらし、その結果、日本経済は、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなりました。その主たるメカニズムは、実質金利低下の効果です。これを長短金利の操作によって追求する「イールドカーブ・コントロール」を、新たな政策枠組みの中心に据えることとしました。」としている(黒田総裁会見より)。

 消費者物価指数の前年比マイナスが続く状態で「デフレではない」と主張することに矛盾はないのか。「デフレではない」とするのであれば、出口政策に何故転じないのか。実質金利の低下の効果を長短金利の操作によって追求することがどのようにしたらできるのか、などの疑問が浮かび上がる。

 「イールドカーブ・コントロールを中心とする新しい枠組みでは、マネタリーベースや国債保有残高の増加ペースを操作目標とする従来の枠組みに比べて、経済・物価・金融情勢の変化に応じてより柔軟に対応することが可能です。結果として、政策の持続性も高まるものと考えています。」(黒田総裁会見より)

 なぜ政策目標をこのタイミングで変更したのかといえば、最後の「政策の持続性」が意図されたことは確かであろう。結局、量と質で勝負できなかったので、昔の金利のスタイルに戻した格好となった。

 「次に、「オーバーシュート型コミットメント」について説明します。日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという新しいコミットメントを導入しました。」(黒田総裁会見より)

 ここで注意すべきところは「生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」というところで、何気に物価目標をこれまでの総合から、いわゆるベンチマークのコア指数に変更している。もともと日銀の展望レポートでの物価の予想数字もコアであったことでコアに変更したのであろうが唐突な変更でもあった。

 「金融政策には効果が現れるまでにラグがあることを踏まえると、実際に 2%を超えるまで金融緩和を続ける、というのは極めて強いコミットメントです。」(黒田総裁会見より)

 さてここで26日の総裁の講演内容を確認すると興味深い指摘がある。

 「当初「量的・質的金融緩和」は想定通りあるいは想定以上に大きな効果を発揮しました。消費者物価は2014年4月には1.5%まで上昇し、予想物価上昇率も明確に改善しました。」(黒田総裁の講演要旨より)

 消費者物価指数は異次元緩和を導入した2013年4月あたりをボトムに前年比はプラスに転じ、2014年4月には1.5%まで上昇した。金融政策には効果が現れるまでに「タイムラグがある」としながら、まるで即時効果があったような指摘に矛盾がなかろうか。

 消費増税が開始される2014年4月までの物価の上昇の要因は、欧州の信用不安の後退にともなうリスクオフの巻き戻しによる円安株高、さらに消費増税に向けての駆け込み需要と便乗値上げの動きなどが重なったものではなかったろうか。このあたりの分析は本来日銀が最も得意としているところだけに、このタイミングの物価上昇を無理矢理に異次元緩和の成果とするのは、その後の物価の落ち込み理由の分析を含め、日銀の説明にはかなり無理が生じることになる。

 「この間の経験で分かったことは、わが国における予想物価上昇率の形成は、過去の実績に引きずられる傾向が強いということです。」(黒田総裁の講演要旨より)

 これについてはいろいろと解釈も出てこようが、これで仮に物価の低迷を説明するとなれば、異次元緩和でもそのように予想の引き上げはできなかったことになる。今後についても足元の物価が前年比マイナスの状態となっている以上、「フォワード・ルッキングな予想形成」を一段と強化することは、かなり困難ということにもならないであろうか。

 「マイナス金利導入後はさらに低下し、特に長めの年限の金利低下が顕著です。このマイナス金利と国債買入れを適切に組み合わせれば、2%の「物価安定の目標」の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促していくことができると判断しました。」(黒田総裁の講演要旨より)

 これが今回の最大の矛盾点というか、良くわからないところである。マイナス金利導入後の長期金利の急低下を成果とするのであれば、何故その目標値をマイナスではなくゼロとしたのか。そもそもイールドカーブの形成がどのように物価に働きかけるのか。日銀が動かせるのは金利である以上、金利を操作したいのはわかるが、そこから物価にどのように波及するのか、その波及経路が明確にされていない。

 「貸出金利は、厳しい競争環境の中でトレンドとして低下してきましたが、マイナス金利の導入によって低下幅が大きくなっています。また、長期金利や超長期金利の過度な低下は、保険や年金などの運用利回りを低下させるほか、企業における退職給付債務の増加などにもつながっています。こうした現象が、直接的にマクロ経済に及ぼす影響はそれほど大きくないと考えられますが、将来における広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性もあります。」

 今回のイールドカーブ・コントロールの目的はここにあったと見ざるを得ない。マイナス金利と低下し過ぎた国債利回りにより、国内の金融機関は悪影響を受けた。さらに国債市場の機能低下も指摘されている。これはイールドカーブをスティープニングさせることで少しでも解消に向かうことが期待されることになる。今回の日銀の政策効果はさておき、あまりに国債の利回りに低下圧力を加えてしまったことで、それにブレーキを掛けたということになり、それにより政策の持続性も高めることが目的となろう。つまりそれで物価がより上がりやすくなるわけではないことで、説明に矛盾が生じているように思われる。

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by nihonkokusai | 2016-09-28 10:10 | 日銀 | Comments(0)

日銀の枠組み変更のポイントは消えたマネタリーベース目標値にあり

 日銀は9月21日の金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の新しい枠組みの導入を決めた。これは長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで資金供給拡大を継続する「オーバーシュート型コミットメント」が柱となる。

 今回の枠組みの変更により、重要な数字がまるでなかったもののように消え去っている。ここに今回の日銀の枠組み修正の目的が浮かび上がる。

 日銀が異次元緩和と呼ばれた量的・質的緩和政策を2013年4月に決定した際、「量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更」するとした。このときから日銀の金融政策の操作目標が「マネタリーベース」となっていた(もし試験に出たらマネタリーベース書かないと不正解)。ところがである。今回の日銀の枠組み変更には「マネタリーベースの目標値」がなくなっているのである。その代わりに今回からは「金融市場調節方針は、長短金利の操作についての方針を示すこととする」とあり、これから日銀の操作目標を問われる問題が出たら長短金利となろう。さらにマネタリーベースについては今回以下の指摘もあった。

 「マネタリーベースの残高は、上記イールドカーブ・コントロールのもとで短期的には変動しうるが、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。この方針により、あと1年強で、マネタリーベースの対名目GDP比率は100%(約500兆円)を超える見込みである(現在、日本は約80%、米国・ユーロエリアは約20%)」

 日銀は今回の修正でマネタリーベースの目標数値を示して、そこまで増やしていくという政策を軌道修正した。マネタリーベースの拡大方針を継続するとしながら、短期的には変動しうるとし、絶対に増やすとは言っていない。さらにマネタリーベースの対名目GDP比率は100%を超えてしまうリスクまでわざわざ表記している。

 いいやそんなことはない、今回日銀は、「フォワード・ルッキングな期待形成」を強めるため、オーバーシュート型コミットメントを採用しているのではないか、との反論もあろう。しかし物価目標を達成するまでマネタリーベースの拡大方針を継続すると約束するとしながら具体的な数字は外している。オーバーシュート型コミットメントは、2年で2%の物価目標達成ができなかったため、その具体的な期間を明記せずにするために行った修正との見方ができる。つまりマネタリーベースは減らさなければ良いとも言えるものである。決してオーバーシュート型などではないのではなかろうか。このマネタリーベースの拡大方針の継続とオーバーシュート型コミットメントの採用は前向きの姿勢を示す意味とともに、いわゆるリフレ派の政策委員を納得させるための手段でもあったようにも思われる。

 今回日銀は長期国債の買入れについて、その買入れ額については概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営するとした。買入対象については引き続き幅広い銘柄とし、平均残存期間の定めは廃止するとしている。ここにも大きな重要な修正が隠されていた。

 これが何を意味するのか。「平均残存期間の定めは廃止する」ことで買い入れる国債についてはかなりフレキシブルな対応が可能となる。2013年4月の異次元緩和では「長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長する」ことも大きなポイントとなっていた。以前の日銀が中短期債ばかり買い入れており、それでは効果がないとのリフレ派の主張を取り入れた政策であったが、そこから距離を置くことになる。

 さらに国債の買入れ額については「概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ」とした。マネタリーベースの増加目標が今回外されていることにより、国債買入れの額についてもあくまで「めど」としたことで、概ね裁量の余地が広がることになる。年限の縛りもなくしたことで、これにはあと2年程度とされる国債買入の限界時期を延ばそうとの意図があるのではなかろうか。

 もうひとつの注目ポイントがマイナス金利政策の修正にある。今回日銀は今年1月に決定した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とマイナス金利政策という表現を変えている。短期金利はマイナス0.1%という金利に置かれているため操作目標には残っている。しかし、この短期金利の操作というより、日銀はイールドカーブ・コントロールとの表現に変えているように、長期金利のゼロ%を意識したものと言えよう。追加緩和となれば、長短金利のどちらかか、もしくは両方の目標値を下げることも手段としては予想されるが、これはよほどのことがない限りは行わないはなかろうか。今回のマイナス金利をタイトルから外したのは、金融機関などによる批判を受けてのものとみて良いのではないか。その意味で今後のマイナス金利の深掘りの可能性は低下したとみている。

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by nihonkokusai | 2016-09-25 12:35 | 日銀 | Comments(0)

日銀が長期金利を目標に据えた理由

 日銀が何故にこれまで「なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましい」としてきた長期金利を「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によって金融政策の目標に据えたのか。

 これにはいろいろと複雑な要因が絡んでいると思われる。これまで日銀は大胆な国債買入などにより量の拡大で、人々の物価予想に影響を与えて、物価目標を達成しようとした。しかし、今回発表された「総括的な検証」で示されたように原油安など外部要因によって目標が達成できなかったとした。しかし、現実には金融政策の量によって物価を動かすことにそもそも無理があった。

 その量についても限界が見えてきた。金融機関の保有国債を引きはがして日銀が買い入れるにも限界がある。そこで取った手段がマイナス金利政策であったが、長期金利までもがマイナスとなってしまい、国債での資金運用が難しくなった。日銀の金融政策に対する金融機関からの批判的な声が強まった。さらに危惧されたのは国債の流動性の低下であった。これらを解消するために取られた手段が今回の長期金利を政策目標に据えることであったと思われる。

 この一番の目的は日銀の金融政策の目標を量から金利に変えることであった。これにより、量つまりマネタリーベース目標による制約を受けることがなくなり、国債の買い入れについて柔軟な対応が可能となった。さらに日銀が長期金利をも政策目標に置くとの思惑だけで長期金利を上昇させることとなり、それ以上に超長期と呼ばれる20年を超える国債の利回りが大きく上昇することとなった。これで金融機関の資産運用で国債が活用できるようになる。長短金利差を大きくすることで利ざやを稼ぐことができるため、金融機関にとってもこれは良い環境となる。

 今回の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の目的は、このような金融機関や国債市場への配慮、さらには量に縛られた政策から脱することで、大胆な金融緩和政策をもう少し長く続けさせようとしたものである。これはつまり今後の追加緩和はよほどのことがない限り難しくなるとも言える。

 ただし、金融政策で動かせないとした長期金利を本当に動かせるのか。国債の利回りは景気や物価、需給バランスなどで動くが、何かしらのきっかけで長期金利が大きく変動した際に日銀は対処できるのか、といった疑問もある。もし日銀が誘導できるとしたならばそれはそれで国債が官製相場となってしまうリスクもあり、国債市場の機能がむしろ失われるリスクも存在するのである。

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by nihonkokusai | 2016-09-24 11:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀の検証の目的に金融機関との関係改善も

 日銀は4月と10月に金融システムレポートを出しているが、このなかに「金利上昇に伴う円債時価の変動」という表がある。ここに金利が上昇した際の金融機関の保有国債における評価上の損失額の推計値が示されている。

 直近の金融システムレポートによると金利が1%上昇した際の金融機関全体の損失推定額は7.1兆円となっている。ただし、この推計にあたっては金利のパラレルシフトを想定している。つまり、短いところから超長期の国債まで全体が1%上昇するという前提となっている。

 7月6日に20年国債の利回りはマイナス0.005%をつけて初めてマイナスを記録した。しかし、ここから今度は超長期の金利は上昇し始め、9月12日に0.475%と0.5%に接近した。7月6日から0.5%もの金利上昇となっていたが、特にこれは問題視されてはいない。もちろん長期債が買い進まれるなかにあって、運用難のなか超長期債を購入し、評価損を抱えてしまった金融機関もいたとみられるが、それよりもこの金利の上昇と言うか、復活を喜んでいる金融機関の方が多かったのではなかろうか。

 黒田総裁はマイナス金利の導入に際してはこれまでの収益の蓄積があることや、マイナス金利を三層構造にするなどして「マイナス金利は金融機関の収益に悪影響与えていない」という主張をしていた。ところが9月5日の講演で黒田総裁はマイナス金利政策について「金融機関の収益に与える影響が相対的に大きい」と述べ、コストつまりは副作用について踏み込んだ発言をしていた。

 マイナス金利政策に対しては今年4月に三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が、銀行にとっては「短期的効果は明らかにネガティブだ」と述べていた。さらに三菱東京UFJ銀行は、国債市場特別参加者」(プライマリー・ディーラー)の資格を国に返上したが、これも日銀のマイナス金利を含めた国債政策による影響との見方もできる。

 これがいったい何を意味しているのか。事はかなり重大であると言わざるを得ない。日銀の金融政策は当然ながら金融機関のために行っているものではないが、金融市場つまりは金融機関を通じて効果を発揮しようとするものである。日銀の金融政策は当たり前だが金融機関なしには成り立たない。

 これまでの日銀の金融政策についてはメガバンクがそれを支援するような格好となっていた。日銀の量的・質的緩和についてもメガバンクは国債残高を落とし、それにより日銀が国債を買い入れる余地を作っていたともいえる。しかし、マイナス金利の導入で日銀と大手金融機関に亀裂が走ってしまった。

 今回の日銀の総括的な検証の目的のひとつは、この金融機関との関係改善にあるのではないかとも思われる。大胆な緩和策の限界が意識されるなか、金融機関との関係改善を図るためのひとつの手段として国債のイールドカーブの修正が意識されたのではないかと思われるのである。

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by nihonkokusai | 2016-09-21 09:48 | 日銀 | Comments(0)

全銀協会長が日銀のマイナス金利政策を牽制

 全国銀行協会の國部毅会長は15日の記者会見で日銀が行う金融緩和策の総括的な検証に関連して、「マイナス金利政策は現状では効果が出ていない」としてマイナス金利の幅の拡大には極めて慎重であるべきだという考えを示した。

 國部会長は「特にマイナス金利政策を検証することが重要だ。金融の現場から見れば、住宅ローン金利などは低下しているが、前向きな投資は増えておらず、現状では効果が出ていない」とし、その上で、國部会長は「マイナス金利の深堀りによってさらに金利が下がれば、銀行の収益が圧迫されて金融仲介機能が低下し、実体経済にも悪影響を及ぼしかねない」と述べた(NHKのニュースより引用)。

 今回の日銀の総括的な検証にあたっては、市場に対してはサプライズを止めることで市場との対話を進める姿勢に転じたように見受けられる。金融機関に対してもイールドカーブのスティープ化により長短金利差の拡大を促すことで、金融機関の収益にも配慮する姿勢を示すことで、マイナス金利の深掘りについても理解を得ようとしているように思われる。

 ところが肝心の銀行業界の國部毅会長(三井住友銀行頭取)から、マイナス金利の深掘りについて釘を刺すような発言が、このタイミングで出てきた。

 日銀の総括的な検証の目的は、いうまでもなく物価目標が達成できていない理由を洗い出すとともに、その上で追加緩和手段を模索することになると思われる。

 しかし、これには大きな矛盾が存在する。結論から言えばリフレ政策を取り入れた大胆な金融緩和策で物価を動かすことはできなかったことは誰の目にも明らかである。日銀としてはその理由を金融緩和の波及経路の阻害要因に求め、それを基に緩和手段に間違いはなかったとして、あらたな追加緩和手段を提示することが総括の目的とみられるが、これもかなり無理がある。

 本来であれば、大胆な緩和手段そのものに対する大胆な検証が必要なはずであるが、負けを認めるわけにはいかない状況下、日銀としては撤退ではなく転進の方向を探ることも目的になっているように思われる。

 量・質・金利の三次元でさらに前進するように見せるための手段としては、特に今年に入り執行部が検討し決定会合で導入されたマイナス金利政策を推し進めざるを得なかった面があろう。そこで苦肉の策として出されたものがイールドカーブのスティープ化とマイナス金利の深掘りのセットであったと予想される。

 これについては金融機関との対話がそれなりに進められていたのではないかとみていたが、どうやらそうでもなかったようである。少なくとも三井住友銀行頭取でもある全国銀行協会の國部毅会長とは対話が出来ていなかったように見受けられる。

 日銀がマイナス金利の深掘りをせざるをえないのであれば、マクロ加算分を増やすなり、階層を増やすとか、銀行にとってのセーフティーネットを増やして極力悪影響が出ないよう工夫してくるのではと予想していたが、いまのところそのような観測も出ていない。

 仮に日銀執行部がセーフティーネットを考えていたとしても國部毅会長には伝わっていなかったのか、そもそも三層方式を変更するつもりもなかったのか、修正したとしても銀行の収益はいずれにしても悪化するとの見通しを全国銀行協会がしていたのか、このあたりはわからない。

 今回の國部会長の発言は、21日の総括とそれによる追加緩和手段の模索に対して、少なからず影響を与える可能性がある。いずれにしても日銀にとっては無理を通せば道理が引っ込むような状況にあることも代わりはない。

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by nihonkokusai | 2016-09-18 10:31 | 日銀 | Comments(0)
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