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カテゴリ:日銀( 1069 )

日銀の岩田副総裁の進化発言と黒田総裁の本意

 10月27日の参院財政金融委員会に日銀の黒田総裁と岩田副総裁が呼ばれた。ここでのやりとりがなかなか面白い。

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を決定した。総括的な検証の結果、フレームワークを変更し、政策の軸足を「量」から「金利」に転換したのである。それまで岩田副総裁は量を増やすことにより、物価上昇を促せるとの説明をしてきたが、この点に関して質問が出た。

 これについて岩田副総裁は、長期金利の操作目標の実現には多額の国債買い入れが不可欠であり、量の面を重視していることに変わりはないとの見解を示した(ロイター)。

 長期金利を金融政策で操作できるのであろうかという前提はさておき、日銀は新ためて次元の違う金融政策を導入したわけではあるが、長期金利操作の前提に「多額の国債買い入れが不可欠」なのかどうかは疑問である。むろん長期金利をファンダメンタルズと乖離しても押さえつけるには量が必要かもしれないが、物価が前年比マイナスとなっているなかで、多額の国債買い入れが不可欠とは考えづらい。

 岩田副総裁はこれまで量の効果を強調してきたが、長期金利操作の実現可能性とともに「私の考えも進化してきた」と語った。「進化」というよりも、説き伏せられた感もある。日銀は軸足を金利に戻さざるを得なくなったが、量があった上でのものということを前提に話しを進めたことにより、いわゆる原田審議委員などを含めたリフレ派も今回の政策に賛成した格好となった。しかし、それが進化であるのかどうか。

 27日の参院財政金融委員会で黒田総裁は、長期金利を現行ゼロ%程度としている操作目標の水準に維持するために国債を売る必要が出てくるとは思っていないと語った(ロイター)。日銀が保有国債を売る必要が出てくるという場面は、長期金利がさらに低下してしまうことであるが、それに対して売りオペで対処することは当然ながら考えづらい。そもそもそれほど金利が低下する前提条件が見当たらない。長期金利のマイナス0.3%はさすがにオーバーシュートであったことは市場参加者も認識していると思われる。

 黒田総裁は直ちに長短金利の操作目標を変えることはないとの認識を示したそうだが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の背景には、低下し過ぎた金利の調整(イールドカーブのフラット化)があったわけであり、外部環境に大きな変化でもない限り、金融機関から批判も強まった長短金利の深掘りはむしろ避けたいはずである。黒田総裁は「超長期の金利がもう少し上がってもおかしくない」と語ったようで、これがある意味本音部分であると思われる。

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by nihonkokusai | 2016-10-29 10:10 | 日銀 | Comments(0)

日銀の枠組み変更で追加緩和はむしろ困難に

 25日に毎日新聞は、日銀が31日から2日間開く金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送る方向となったと伝えている。物価上昇率の見通しは下方修正する方針だが、9月の前回会合で導入した新たな政策の効果を見極める必要があるとの意見が優勢となっているそうである。

 21日に日銀の黒田総裁は衆院財務金融委員会に出席し、物価目標の達成時期が後ずれする可能性を示唆した一方、追加緩和には慎重な姿勢を示した。

 31日から11月1日にかけて開かれる金融政策決定会合では、「経済・物価情勢の展望」、いわゆる「展望レポート」も発表される。ここで物価目標の達成時期について現在の「2017年度中」を2018年度以降に先送りするとみられている。先送りするのであれば、追加緩和をするのではとの思惑が海外投資家などを中心に一部に出ていたようである。

 その期待が裏切られ、ほとんど動きのなかった債券先物が21日から24日にかけて下落した。下落したと言っても先物で20銭程度なので、誤差範疇ではある。それでも久しぶりに動いたことも確かであり、24日は現物債の中期債が売られて、超長期債はしっかりしていた。中期債の売りは、追加緩和期待で買っていた海外投資家が一部売ってきたとの見方もあった。

 ただし、日銀は9月にフレームワークを大きく変更してしまったことで、むしろ追加緩和には動きづらくなったとの見方もできることに注意すべきである。一部の海外投資家などはさておき、国内の市場関係者の多くは日銀はそう簡単に追加緩和はできなくなったとの認識が強くなっているのではなかろうか。

 なぜ日銀は9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策に変更し、操作目標を「量」から再び「金利」に戻したのか。

 昨年12月に日銀は補完措置を決定したが、これは国債買入の量の限界を示すものとなった。このことは1月の決定会合でマイナス金利を導入したことからも明らかである。量から替えてマイナス金利の深掘りを追加緩和手段にしようとした。ところがマイナス金利の弊害が出て、金融機関からの批判も相次ぎ、その深掘りも困難となってきたのである。

 9月の総括的な検証など待たずとも、量の拡大が物価の上昇に寄与してこなかったことは明らかな上、マイナス金利による国債のイールドカーブの急速なフラット化は、資金運用にも悪影響を与えることとなった。量も動かせず、マイナス金利の深掘りも困難となり、金融機関からの批判に対処するために、捻り出された手段がイールドカーブコントロールとなったとみられる。

 物価がいっこうに上がらない限り、日銀は退路を閉ざされていることもあり、前向きの姿勢を示さざるを得ないため「オーバーシュート型コミットメント」を持ってきた。目標を多少引き上げようが、そもそも物価が金融政策で動いていない以上は、あまり意味はない。これで追加緩和の可能性が強まったとは受け取れない。

 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は追加緩和の余地を拡げたわけでもなく、むしろ量と金利の限界を示すものとなり、これはつまり余程のことがない限り、日銀が追加緩和を行うことが困難となった見ざるを得ない。そしてもし仮に追加緩和として長短金利をさらに深掘りしても、それがもたらすプラス効果は何でも良いから「追加緩和をした」との事実からの一時的な円安・株高程度ではなかろうか。実態経済には負の効果のほうが大きくなる懸念すらある。

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by nihonkokusai | 2016-10-26 09:44 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁挨拶文から追加緩和の文字が消えた

 10月17日に日銀の支店長会議が開かれた。総裁の挨拶要旨が日銀のサイトにアップされた。この挨拶文はかなり簡潔にまとめられているので、9月21日に決定された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によって何が変わったのか、前回と比較するとわかりやすい。

 (1)の「わが国の景気は」の部分と(2)「物価面をみると」、(3)の「わが国の金融システムは」については、一字一句変わっていない。景気と物価の見方が変わっていないのに、何故フレームワークを変えなければいけなかったのかという疑問については、とりあえず置いておきたい(ここは結構、大きなポイントではあるが)。

 変化があったのは、最後の(4)の部分である。7月のものと今回のものを比較してみたい。

7月の支店長会議挨拶
(4)日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる。

10月の支店長会議挨拶
(4)金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。

 2%の「物価安定の目標」の実現を目指し必要な時点まで行う政策が、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に変わった。これはフレームワークの変更があったため当然ながら名称が変わった。

 そのあとの文章も大きく変わっている。「経済・物価のリスク要因を点検し」が「経済・物価・金融情勢を踏まえ」に変化しており、「リスク」という文字がなくなっている。

 10月に加えられた部分に「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。」がある。

 物価目標が消費者物価指数(総合)から、消費者物価指数(除く生鮮食品)に変わっただけでなく、「安定的に2%を超えるまで」とした。ただし、マネタリーベースの拡大「方針」を続けるとなっており、なぜか「方針」がついている。さらに「物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため」として、こちらもなぜか「モメンタム(勢い)」という言葉を使っている。

 そして大きな違いといえるのが、7月にあった「追加的な金融緩和措置を講じる」がなくなり、「必要な政策の調整を行う」に変わったことである。つまり、7月の総裁挨拶では緩和方向しか示されない片道切符であったものが、10月は双方向を意識した文章となっている。だから「リスク」という文字もなくしたものと思われる。

 これは日銀の新政策が緩和だけでなく、引き締め方向にも転じる可能性を意識したものに変えたとの見方もできる。そもそも中央銀行の金融政策は金融緩和と金融引締の片方だけ行うものではない。両方向を意識したという、あたり前の文章に戻しただけとも言えよう。ただ、これは日銀の緩和に向けた前傾姿勢が微妙に変化しつつあることも意味している可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-10-18 09:24 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債利回り操作はスラスターに過ぎない

 日銀の黒田総裁はブルッキングス研究所における講演で、イールドカーブコントロールに関して次のような発言をしている。

 「日本銀行は既に、きわめて多額の国債買入れを行っていること、そして、これとマイナス金利政策の組み合わせによって、ある程度、長期金利を操作することができているということです。」

 日銀の国債保有額は全体の4割に及ぶ。国債の利回り形成には需給バランスの影響が大きいことはたしかである。ただし、それは400兆円というストックによる影響ではなく、毎月10兆円近い国債を買い入れているフローの面が大きい。

 年度の国債発行額のほとんどを日銀が買い入れることで、日銀の国債買入そのものが国債市場の流動性を低下させ、国債買入の金額を多少増減することで、国債の利回り形成に影響を与える。現状、日本国債は日銀の金融政策と国債買入動向を見ながら形成されていると言えることは確かである。

 しかしながらこれは日本国債に対し他の変動要因がさほど大きく関わっていないことも影響している。国債は景気や物価の体温計とされており、その機能が日銀の買入により失われたとの見方もある。しかし景気回復が緩やかな上、物価は前年比マイナスとなっているなどしており、これが長期金利の上昇を抑制している面がある。FRBが出口政策を取っているにも関わらず米長期金利が1%台で推移するなど、海外要因も円債にはフォローとなっている。

 さらに中国など新興国への懸念、原油安、英国のEU離脱問題等々、大きなイベントが起きるたび、それらは金利にとっては低下圧力になるものがほとんどとなっていた。つまり日銀が押さえつけなくても、金利は上がりづらい環境となっており、年限別の国債の買い入れを少し減少するだけで、その年限の国債が売られるなどの微調整があたかも可能な状況となっている。

 これはあくまで金利のバイアスが下方に掛かりやすいことが影響しており、このため日銀の買入の微調整で金利が少し修正されるという、人工衛星のスラスターのような軌道の微調整は可能となっている。

 この債券市場を取り巻く地合がこのまま半永久的に低下圧力のみということは考えづらい。金利が低下するイベントばかり起きる保証もない。スラスターでは修正できないイベントが起きたときに日銀はどうするのか。

 残念ながら相場の世界には無限の力は存在しない。日銀が仮にその力を利用するとなれば、当然ながら等価交換で大きなものを失う可能性がある。それは信用という日本国債にとっての最後の拠り所となるものとなることも意識しておく必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-10-17 18:37 | 日銀 | Comments(0)

日銀の原田審議委員は何故、新政策に賛成票を投じたのか

 日銀の原田審議委員は10月13日に松本市で講演を行った。リフレ派の代表格ともされる原田氏であっただけに、政策目標を量から金利に変えてしまった9月21日の金融政策決定会合での「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の議長案に賛成票を投じたのかという点が注目された。

 日銀の政策委員にはリフレ派とされる委員が少なくとも3名存在する。岩田副総裁と原田審議委員、そして櫻井審議委員である。岩田副総裁は執行部であり、立場上反対票を投じることは難しい(過去に執行部内で反対票が投じられた事例は存在するが)。そして櫻井委員は自らこの新しいフレームワークの変更をインタビューではじめて示唆した立場となっており、反対票は投じずらい状況にあった。しかし何故、残りの原田委員も賛成していたのかが注目されたのである。

 原田委員の講演と会見の内容が日銀のサイトにアップされているが、そこから量を見限って金利の政策に賛成票を投じた本当の理由を探ることは難しい。しかし、会見の内容からはある程度推測できる部分も存在した。

 「ポジティブなショックがあった時に、例えば10年物金利について考えると、当然金利が上がるわけです。金利が上がるようなショックがあった時に金利をゼロに止めようとすることは、良いことがあった時にそれを更に拡大するような金融政策を行うことになりますので、これは金融緩和の強化です」

 「良いことがあった時」とは景気や物価にとってプラスの材料が出て長期金利が上がっても、イールドカーブコントロールによって長期金利はゼロ%に維持されることで、緩和効果が強まるとの説明である。それでは「悪いことがあった時」に長期金利が上昇したらどうするのか。それが本当にコントロールできるのかは指摘されていない。

 「ネガティブなショックで金利が下がるケースを考えてみます。仮に日本の輸出を急減させるようなショックがあれば、何もしなければ金利は下がります。金利が下がる時にこれをゼロに止めようとすれば、買入額を減らすことになりますが、これは金融を引き締めることになります。そうではなく、ネガティブなショックがあった時には、技術的にちょうど80兆円のペースになるかは分かりませんが、80兆円をめどに買入れを進め、その結果、金利が下がってもそのままにするということです。」

 何かしら世界的なリスクが強まり長期金利がさらに低下してしまう際には、相応の買入額の減額はせずに「概ね」80兆円を維持させることで金利低下を食い止めることはせず、それを放置する。いずれにしても善し悪しにかかわらず何らかのショックがあっても、金融緩和はむしろ深掘りされることになり、それを原田委員は納得したために、賛成票を投じたとも言えるのか。どうやら日銀の実務面での執行部の説得が功を奏したといったように感じられる。さらに原田委員は次のような名言も残していた。

 「リフレ派は量を重視するのだから量を重視しないような政策には反対すべきだ、というご質問についてです。まず、リフレ派という言葉ですが、デフレから脱却して、日本経済を成長軌道に乗せるために、2%の「物価安定の目標」を設定し、その達成を目指すのがリフレ派であると私は考えています。その意味では日本銀行は皆リフレ派ですし、政府において経済政策に関係している方々も、全てリフレ派です。」

 「2%の「物価安定の目標」を達成する必要がないというご意見の方は、ごく少数であり、敢えて言えば、異端の経済政策を標榜している方々ではないかと思います。」

 ここで注意すべき言葉は「日本銀行は皆リフレ派」というところではなかろうか。量とかに関わらずインフレターゲット目標を達成するのがリフレ派というのであれば、日銀だけでなく欧米の中央銀行も政府も皆、確かにリフレ派といえる。

 しかし、問題はそのインフレターゲットをどのように達成するのかという「手段」であったはず。私も原田委員の言うところの異端の経済政策を標榜している者に含まれてしまうかも知れないが、少なくともフリーランチ政策で物価を上げることはできない。そのフリーランチ政策(減税含めた財政拡大と債務拡大対処のための日銀の国債引き受け等のミックス政策)の効果とともに、それによる国債や円の信用の毀損の可能性を危惧しているのが、原田委員の言うところの「異端者」となるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2016-10-17 09:29 | 日銀 | Comments(0)

日銀はサイト内の国債に関する記述を「動かせる」に変更か

 11日付けの毎日新聞によると「日銀が9月の金融政策決定会合で、長期金利を操作する新たな政策の枠組みを導入したにもかかわらず、公式ホームページ(HP)で長期金利の誘導は困難とする矛盾した説明が記載されているとして、改訂することを決めた」そうである。

 日銀のサイト内の「金融政策の概要」のなかに「長期金利の決まり方……将来の「予想」が大事」というコーナーがある。

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/expchokinri.htm/

 すでにこのコーナーの最初には次のような注意書きがあった。

 「※以下の内容については、直近の改訂から相応の時間が経過しているため、現在、アップデートした上で、「教えて!にちぎん」に統合する方向で改訂中です。」

 直近の改訂から相応の時間が経過しているためにアップデートするとしている。これがアップされたのは2000年9月、その後2006年1月に改定されており、10年以上改定されておらず、相応の時間が経過していることは確かである。しかしその間、長期金利つまり裏返すと国債の価格形成に相応の変化が果たしてあったであろうか。いずれ改定されてしまうので、もし確認したい方は早めにチェックすることをお勧めしたい。

 ここでは短期金利について、基本的にその時点の金融政策の影響下にあるとしている。そして、長期金利については、「その時点の金融政策の影響も受けはしますが、それとは別の次元で、長期資金の需要・供給の市場メカニズムの中で決まるという色合いが強く、その際、将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移などについての予想が大切な役割を演ずる、という特徴があります。」

 特に改定する必要性はない文章と思われるが、「その時点の金融政策の影響を大きく受けやすい」あたりに修正されるのであろうか。金融政策では動かせないとしていたはずの長期金利に対して、「動かすことは可能」との認識に変更してくる可能性がある。

 「長期金利は、今後の長期間にわたるインフレ、デフレや短期の金利に関する予想(金融の専門家は「予想」の代わりに「期待」という言い方をします)などに大きく左右されます。「インフレ期待は長期金利を高くする」、「物価安定期待は長期金利を低くする」、「設備投資の期待収益率が上がれば長期金利も上がる」ということです。」

 どのような専門家が「期待」という言葉を使うのかは知らないが、現在の国債のマイナス金利が、前年比マイナスとなっている物価そのものに影響されているとみても間違いではないのではなかろうか。もし日銀の異次元緩和で物価が上がると市場参加者が「期待」すれば、長期金利は上がったはずである。それが上がらなかったのは日銀が長期金利を押さえつけたというよりも、そもそもそんな期待はなかったと見た方が正しかったように思われる。このあたりどのように改訂されるのかも興味深い。

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by nihonkokusai | 2016-10-13 09:26 | 日銀 | Comments(0)

過去の中央銀行によるイールドカーブ・コントロールの事例

 日銀が9月、新たに採用した政策のひとつイールドカーブ・コントロールは、米金融当局が第二次世界大戦中から1950年代初頭にかけて活用したのと同様の政策ではないかとの見方がある。

 真珠湾攻撃から2週間以内に財務省とFRBは金利安定を目指すことに合意したとされる。1942年2月の財務省と連銀の会議で財務省が2.5%を金利の上限として国債を調達し、連銀がそれに協力することを約束した。ただし、それが公にされることはなかったようだが、2.5%が国債の利回りの上限として市場参加者も意識することとなった。この政策は預金準備率の操作とFRBによる国債買入によって行われた。(「財務省・連銀によるアコードの検証」富田俊基氏のレポートより引用)。

 この低金利政策は第二次世界大戦後のアコードの締結まで続けられた。戦後、国債の利払いコストを抑えさらに利上げによる国債価格の下落を回避しようとした米財務省と、インフレ抑制のために金融引き締めを主張するFRBとの対立が激化した。このため1951年にトルーマン大統領の調停により、財務省とFRBとの間で「アコード」が成立し、国債管理政策と金融政策が分離された。これによって低金利政策は廃止されたのである。

 米国の第二次世界大戦中のイールドカーブ・コントロールを今回、日銀は自らの政策において参考にした可能性はある。ただし当時の米国の長期金利抑制政策は戦争遂行のために組み入れられたものであった。

 しかし、今回の日銀のイールドカーブ・コントロールは、日銀による大量の国債買入により国債市場の流動性が低下しているなか、日銀の国債買入の調節で国債の利回りが変化しうることを利用して、むしろ国債の利回りを引き上げることが当初の目的となっていた。その点に大きな違いがある。

 国債の利回りを低位に維持していたのは米国ばかりでなく、戦中の日本も同様の政策を取っていた。戦後も1977年頃までは国債の利回りは低位に抑えられていた。国債は銀行や証券会社などで構成された引受シ団と大蔵省資金運用部が引き受けていた。市中消化されるのはごく一部で、ほとんどがシ団メンバーの金融機関が保有した。シ団の引き受けた国債の市場売却は事実上自粛され、国債の利率も低く抑えられていた。ただし銀行が保有する国債の大半は、日銀の買いオペで吸い上げられていたのである。

 いずれにしてもイールドカーブ・コントロールが過去行われていたのは国債市場がそれほど大きくなく整備されていない頃のことであった。果たして同様の政策が現代の中央銀行に可能なのか。これもひとつの壮大な実験のように私には思われる。

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by nihonkokusai | 2016-10-09 11:49 | 日銀 | Comments(0)

企業の景況感は横ばい、物価見通しは低迷

 10月3日に発表された日銀短観(9月調査)では、大企業・製造業DIがプラス6となり、2期連続での横ばいとなった。景気の先行きについても、プラス6ポイントと横ばいとなっていた。大企業の非製造業はプラス18ポイントと前回を1ポイント下回り、3期連続での悪化となった。

 大企業全産業ベースの2016年度の設備投資計画は前年度比6.3%増となり、前期に比べ0.1ポイントの上方修正となった。

 2016年度の大企業・製造業の想定為替レートは107円92銭。最近のドル円は少し戻して102円台となってはいるが、企業の想定レートからはかなり低い位置にいる。

 日銀短観の大企業・製造業DIのトレンド変化と日経平均のトレンド変化が重なることは過去何度かあった。短観の大企業・製造業DIが3期連続で同じということは、今年に入りトレンド変化がないということになる。あらためて今年に入っての日経平均の推移を確認してみると、16000円から17000円あたりを中心に方向感に乏しい展開が続いている。

 設備投資についても力強さを欠く。円高もあり、たとえば自動車は足元プラス8ポイントと熊本地震の影響もあった前回からは大きく回復していたものの、先行きはプラス3に落ち込むとの予想となっている。

 4日に発表された短観の「企業の物価見通し」によると、全規模全産業の1年後の消費者物価指数をイメージした見通しは平均で前年比0.6%上昇と前回調査の0.7%から0.1ポイント下振れした。8月の消費者物価指数(除く生鮮食料品)が前年同月比マイナス0.5%となっていることが影響していると思われる。

 日銀がマイナス金利政策まで導入しても結局、民間の期待インフレ率は動かせなかった。日銀は9月の会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、オーバーシュート型コミットメントと呼ぶ政策を打ち出したが、「オーバーシュート型コミットメントは現実的な目標設定でなく、予想物価上昇率を引き上げる効果も期待できない」(「金融政策決定会合における主な意見」より)のではなかろうか。短観全体を見渡しても景気の力強さは感じられず、物価観だけが引き上げられるようなことは想像できない。

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by nihonkokusai | 2016-10-05 09:40 | 日銀 | Comments(0)

日銀は長期国債と超長期国債の買入を減額

 9月30日に日銀は国債買入をオファーした。対象は国庫短期証券と残存5年超10年以下、10年超25年以下、25年超。このうち残存5年超10年以下の買入予定額を4100億円とし前回の4300億円から200億円減額した。

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策を導入し、今後の金融政策の調節目標をマネタリーベースから長短金利に変更した。短期金利については、日銀当座預金のうち政策金利残高かかるマイナス0.1%が目標となり、長期金利(10年国債の利回り)については概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行うとした。

 買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。買入対象については引き続き幅広い銘柄とし、平均残存期間の定めは廃止するとした。

 あくまで80兆円は目処であり、増減の可能性はある。これはつまり減ることもあるということであり、平均残存期間の定めは廃止することで、長いものを一定量買う必要はなくなった。目先については、超長期ゾーンの買入を減額することで、イールドカーブをコントロールし、スティープニング(より長い金利を高くすること)を狙った政策と捉えられた。

 市場では月末の夕方、つまり9月30日の5時に公表される「当面の長期国債買入れの運営について」で、超長期債の減額があるだろうと予想していた。ところがそれを待たずに日銀は残存5年超10年以下の国債の買入をいきなり減額するという手段に出た。この日の10年国債の利回りはマイナス0.090%に低下していた。そして数日前にはマイナス0.095%にまとまった売りが入るなどしていた。

 日銀の長期金利の操作目標についてはある程度の幅があると予想されており、市場はそのレンジを見定めようとしていた。その下限がマイナス0.1%であろうとの認識であったが、それが日銀が国債の買い入れを減額することで裏付けられた格好となった。しかし、なぜ夕方の「当面の長期国債買入れの運営について」にて減額を示して、10月から実施とするのではなく9月中に実施したのであろうか(このため、当面の長期国債買入れの運営についてで、残存5年超10年以下は前回、つまり当日減額された買入の金額からは修正はされない数字となっており、少し紛らわしいものとなっていた)。

 10月4日には10年国債の入札も控えており、タイミングからも9月30日当日の国債買入で減額を示す必要性があったのか。それとも日銀が得意とするところのサプライズを狙ったのかはわからない。少なくともこれで長期金利の誘導目標の下限は示されたことは確かである。

 ちなみに超長期債の買入については、10年超25年以下が一回あたり2000億円から1900億円に、25年超が1200億円から1100億円に減額される。ほかの年限での修正はなく(5年超10年債は9月30日にすでに減額済み)、これは見方を変えればテーパリングということになるが、市場はあまり動揺は示していない。日銀にとってはしてやったりといったところなのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-04 09:37 | 日銀 | Comments(0)

日銀は長期金利(国債価格)を操作できるのか

 日銀は9月21日の金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の新しい枠組みの導入を決めた。これは長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」と消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで資金供給拡大を継続する「オーバーシュート型コミットメント」が柱となる。

 日銀が量的・質的緩和政策を2013年4月に決定した際、「量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更」するとした。今回の日銀の枠組み変更で「金融市場調節方針は、長短金利の操作についての方針を示すこととする」とあり、これから日銀の操作目標は長短金利となる。つまり量から金利に戻ったことになる。

 日銀は従来、「期間が長い金利の形成は、なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましい」として長期金利の操作はできないというのが前提にあったはずである。しかし、今回日銀が長期金利、つまりそれは国債の価格ともなるが、それを金融市場調節の操作目標に置いた。これとは極めて異例である。これについて日銀の黒田総裁は9月26日の講演後の会見に次のように指摘した。

 「短期の、例えば当座預金の政策金利のマイナス0.1%は、完全にコントロールできる世界で、それが短期金利に大きな影響を与えるわけですが、長期金利の方は操作目標であって、完全にコントロールできるものではないわけです。ただ、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の経験、それから各国の量的金融緩和の経験から言っても、長期の債券を買うことによって長期の金利に影響を与えられることは分っているわけですし、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで、イールドカーブに非常に大きな影響を与えられたということも、その通りです」

 長期金利は目標に据えたものの、完全にコントロールできるものではないとしており、これはつまり今回の長期金利の誘導目標のゼロ%というのは、かなりの幅を持ったものと言えよう。ただし、日銀は量的・質的緩和によりイールドカーブを引き下げ、マイナス金利政策によりさらに大きく引き下げられたことで、イールドカーブ操作に自信を持ったことも確かではなかろうか。

 日銀は長期金利が上昇した場合などには、例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。固定利回り方式による国債買入の場合には、買入予定総額に上限を設定しないことがあるともしている。長期金利が大きく上昇するような場合には、それを日銀は無制限の国債買入で押さえ込むことも予想される。

 いまのところ長期金利が大きく動くことは考えづらい。上昇よりも低下していく可能性を意識していた方が良いかも知れない。しかし、何かのきっかけで長期金利が大きく上昇した際には無制限の買入でそれを阻止できるのかは疑問である。

 日銀は本来コントロールはできないとしていたものを操作目標に置いた。これはあらためて国債市場に対する挑戦とも言えよう。果たして国債市場はいつまで素直に日銀に従っていくのか。これは時間とともにさらに国債の流動性を低下させることにもなりかねず、いずれその反動が起きることもありうる。日本の国債市場は新たな局面を迎えつつある。

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by nihonkokusai | 2016-10-02 11:42 | 日銀 | Comments(0)
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