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カテゴリ:日銀( 1069 )

日銀が目標CPIを総合からコアに変えたことで興味深い事態に

 2016年11月の消費者物価指数が27日に公表されたが、この数字がなかなか面白いことになっている。

 11月の消費者物価指数の「総合」は前年同月比でプラス0.5%、「生鮮食品を除く総合(コア)」で同マイナス0.4%、「食料及びエネルギーを除く総合(コアコア)」で同プラス0.1%となった。参考までに27日に日銀が発表した基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)によると、消費者物価指数の「除く生鮮食品・エネルギー(新コアコア)」は11月がプラス0.2%と、10月のプラス0.3%からプラス幅が縮小していた。

 コア指数の低迷は11月は前年比でみてまだ原油価格が下落していたこともあり、その影響でガソリン代や電気代が下がっていたことや、携帯電話・スマートフォンの値下がりが影響したようである。為替でみても1年前に比べると円高となっており、その影響も出ていたものとみられる。

 ただし、注意すべきは11月の消費者物価指数の「総合」の方で、こちらはプラス0.5%と10月の前年比プラス0.1%、9月のマイナス0.5%から大きく改善しているのである。

 何を言っているのか、物価指数はコアもしくは日銀のコアコアをみるべきであり、変動の激しい生鮮食料品を加えた総合では、その新鮮野菜の値上がりの影響が大きいため、こちらはあくまで参考程度ではないか、との声もあるかもしれない。

 ところが日銀が2013年1月に置いた2%の物価目標、さらには同年4月の量的質的緩和政策で置いた目標とする物価は「除く生鮮」ではなく「総合」であったのである。これは2014年8月の決定会合議事要旨でも「物価安定の目標は、消費者物価の総合指数で定義している」との記述があった。ただし、展望レポートの予想物価については基調的な物価の動きを比較的よく表している「除く生鮮食品」指数を用いているとの指摘があった。

 ところがである。2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀は何気なくこの目標とする物価を総合からコアに置き換えている。

 黒田総裁は決定会合後の会見で、「次に、「オーバーシュート型コミットメント」について説明します。日本銀行は、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという新しいコミットメントを導入しました。」と述べていたのである。何故、このタイミングで変更していたのか。

 もともと展望レポートでコアを使っていたのであれば、物価目標もコアが適切であろうと思われていた。それを意識して目標値の変更であったのかもしれないが、ここでもし変えていなければ、日銀が目標とする物価が大きく違ってくることになる。9月に変えなければ目標物価は総合のプラス0.5%となる、しかし変えたことでマイナス0.4%となってしまうことになる。

 総合のままであれば2%に向けて上昇しつつあるという解釈ともなろう。日銀の大量の国債買入やイールドカーブ操作で「野菜」の値段が上がったわけではないが、効果を発揮したと解釈するかもしれない。我々消費者としても野菜やガソリン価格の上昇で、実感としては物価は上がっているとの認識も強いのではなかろうか。

 ところが日銀は目標の物価をコアに修正したことで、いまだマイナス0.4%と水面下にいることになる。これはこれで日銀の金融政策が当初予定した効果を発揮していないとの解釈ともなるが、長期金利もこれで簡単には跳ね上がることもないということにもなるのか。

 ただし、今後はコアを含めて物価の基調は上昇していくことが予想される。トランプラリーによるドル円の回復等による影響が来年1月以降に出てくる。その際に日銀は物価上昇に応じた長期金利の上昇も封じ込めるのか。それとも長期金利の目標を引き上げて、いわゆる利上げを決定してくるのか、このあたりも今後の注目点となる。

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by nihonkokusai | 2016-12-29 09:58 | 日銀 | Comments(0)

日銀の長期金利操作目標の引き上げはありうるのか

 12月20日の日銀の金融政策決定会合では、賛成多数で金融政策の現状維持を決定した。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、資産買入れ方針ともに7対2での賛成多数となったが、いずれも木内委員と佐藤委員が反対した。

 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)に反対した理由として、佐藤委員は、短期政策金利をマイナス0.1%、10年金利の目標をゼロ%程度とすることは期間10年までの金利をマイナス圏で固定することにつながりかねず、金融仲介機能に悪影響を及ぼすとして反対した。木内委員は、国債市場や金融仲介機能の安定の観点から、短期政策金利はプラス0.1%が妥当であり、長期金利操作目標は国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあるとして反対した(以上、金融政策決定会合の公表文より引用)。

 黒田総裁は20日の会見で、金利目標は「毎回の決定会合で議論される」との原則を述べつつ、「2%目標への距離はまだ遠く、具体的に議論するのは時期尚早」と発言した。トランプ相場による円安を背景に来年1月に物価見通しを引き上げる可能性も示唆した(ロイター)。

 意外に思われるかもしれないが、すでに日銀の金融政策の方向性は緩和のさらなる深入り方向ではない。9月に決定した長短金利操作付き量的質的緩和は、マイナス金利への金融機関からの批判等を受けて決定したものである。マイナス金利の深掘りは避けた上、超長期の金利上昇を促すという政策であり、この時点で日銀は総裁が何と言おうと、金融政策に関しては依然として緩和状態にあるものの、方向性としては中立の立場に転じたことになる。ここに円安株高、米金利高をともなったトランプ相場が加わって、長期金利目標の引き上げについては「時期尚早」という表現になった。

 さらに今回の会見で黒田総裁は、長期金利目標を「ゼロ%程度」ではなく、「0.1%」や「1%」と言い間違いをしていた。もちろんあまり細かいミスをつつく必要はなく、私も同じ立場なら言い間違いをした可能性がある。それはそれで0.1%とか1%が意識されていた裏返しとも言えよう。憶測とはなってしまうが、10年金利の目標をゼロ%程度という程度はマイナス0.1%からプラス0.1%という市場の認識は案外妥当性のあるものではなかろうか。

 金利目標は「毎回の決定会合で議論される」ものであり、それがたとえば10年金利の目標を実勢の長期金利の動向を睨んで、0.5%とか1.0%に引き上げることも予想される。ただしそれが意味することは「利上げ」であるということで、これは完全に日銀が方向転換をした上、FRBと同様の正常化に向けて一歩進めたと市場では捉えられる可能性がある。そうなると外為市場では円高となる懸念があり、日銀としては利上げと捉えられかねない10年金利の目標の上方修正は、よほど物価の上昇でもない限りは難しいことも確かである。

 それでも市場での長期金利上昇圧力を受けて、日銀が長期金利の目標値を引き上げざるを得ない、もしくは程度の範疇を拡げるようなことをしてくる可能性がある。この水準で長期金利が抑えられれば、日米の長期金利の格差が拡大し円安ドル高圧力となる。日銀の国債買入を利用しての長期金利操作は当面は可能かもしれない。それでも海外の長期金利の動向や足元の物価景気動向など次第では日本の長期金利にさらなる上昇圧力が加わる可能性がある。それを果たしてテクニカルな国債買入(指し値オペ)等で抑えられるのか。そのあたりの市場と日銀の駆け引きが今後行われる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-12-22 10:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀は異次元化した金融政策の縺れを解けるのか

 市場では12月13、14日のFOMCを注目しているが、19、20日の日銀の金融政策決定会合にはさほど関心がないようである。

 12月8日のECB理事会では予定通り、資産買入プログラムの延長を行った。その結果は妥協の産物ともいえる600億ユーロに減額しての9か月延長となった。これは少なくとも時間稼ぎのために延長せざるを得ない、ただし、ドイツなどは延長ならば減額をとの主張となり、結果としての妥協案が賛成多数で決定された。

 13、14日のFOMCでは昨年12月の利上げ決定時のように全会一致に近いかたちで0.25%の利上げを決定してくると予想される。毎年12月恒例の利上げみたいなかたちとなってしまうが、今後は利上げペースを少し速める可能性もある。

 これに対して日銀の金融政策決定会合に関しては、市場の注目度がそれほど高くはない。日銀は動かないであろうとの予想がこの背景にある。

 日銀の金融政策はアベノミクスと歩調を合わせるため、2013年4月の量的・質的緩和でかなり無理矢理な政策を実施することを強いられた。当初はうまくいっているかにも見えたが、量で物価を動かすことには所詮、無理があった。それを2014年10月の量的・質的緩和の拡大でさらに政策を深入りさせてしまった。

 それでも物価が動かない。しかし買い入れる国債の量には限界あり、昨年12月に補完措置で買入枠の拡大を図る。ところが買入の増額は行わず、今年1月にはマイナス金利政策という手段を講じた。しかし、マイナス金利政策は金融機関からの非難を浴びることとなり、深掘りはもってのほかとなり、長い金利の回復を意識した長短金利操作付き量的・質的緩和という、もはやすべての政策を継ぎ接ぎしたものを打ち出してきた。しかも本来、操作はできないという前提の長期金利操作を加えるという手段を加えてきたのである。

 現状はトランプ相場に助けられ、日銀が本来目指していたとも思われる円安株高が生じた。原油価格についても底を打った格好となった。国債の買い入れ額については、すでに80兆円は厳格な目標となっておらず、このままのペースでもステルス・テーパリングという格好となる。しかし、そんなことは表だっては言えないのも現在の日銀であり、相場の地合が変わっても前向きの姿勢は維持しなければならない。ただし、何もしないでも日米の長期金利の格差は拡大し、それは円安の動きをさらに促すことにはなる。

 このまま日本の物価も前年比マイナスからプラスに転じることになれば、少なくともこれ以上の金融緩和は実質的に困難になっている日銀にとって、何をしなくても済む環境となる。そうしたなかで、今後少しずつでも日銀は金融政策の縺れを解いていけるのかも課題となろう。市場はすでに過剰な金融緩和に期待するようなこともなくなっている。それが効果より副作用をもたらしかねないことにも気が付きつつあるためであろう。

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by nihonkokusai | 2016-12-13 09:29 | 日銀 | Comments(0)

日本の物価はいまだ前年比マイナスの理由

 25日に公表された10月の全国消費者物価指数は、総合が前年同月比プラス0.1%と前月のマイナス0.5%からプラスに転じた。これは生鮮野菜の値上がりが大きく影響し、宿泊料の上昇も寄与した。

 日銀が物価目標としている生鮮食品を除く総合指数は前年同月比マイナス0.4%となり、前月のマイナス0.5%からはマイナス幅は縮小しているが、いまだマイナスを脱していない。マイナス0.4%という水準は日銀が量的質的緩和を決定した月である2013年4月のマイナス0.4%と変わりはない。

 下落に寄与したのはガソリンなどエネルギー価格であるが、その下落幅が縮小しており、マイナス幅は縮小している。WTI先物の価格を1年前と比べるとすでに上回ってきており、今後エネルギー価格は前年比でみるとプラスに寄与してくると予想される。

 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は、前年同月比プラス0.2%となっている。日銀が独自に公表している基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)によると、総合(除く生鮮食品・エネルギー)は 9月の0.2から10月は0.3となっている。

 原油価格の下落の影響は次第に後退するとみられ、消費者物価指数(除く生鮮)はいずれプラスに転じてこよう。もちろんこれは日銀の金融緩和の成果ではなく、原油価格の動向など外部環境の変化によるものである。

 日銀は物価の基調はしっかりしていると主張するが、前年比ゼロ近傍で日銀の物価目標たる消費者物価が推移している以上はその主張は正しくはないということになる。もともと日本の消費者物価指数は帰属家賃などの影響で上がりづらい面があるとともに、原油価格や為替市場動向に大きく左右される。

 2013年4月の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比マイナス0.4%となっていたが、それが1年後の2014年4月にプラス1.5%にまで上昇した。これは2012年10月頃の原油先物価格が90ドル近辺、ドル円が80円割れとなっていたものが、1年後の2013年10月にそれぞれ100ドル、100円近辺上昇した影響が大きい。

 ドル円はその後も上昇し2015年には一時120円台をつけるが、原油先物は2015年に50ドル割れまで下落する。この原油価格の下落が消費者物価指数の前年比を押し下げた。結果を見る限り、日本の消費者物価指数は主に原油価格の動向に左右されがちで、そこに為替による影響もありうるといったところか。

 そこにどれだけ日銀の金融政策の余地がありうるのか。もちろん賃金が抑えられ、消費が上向かないなどの上昇抑制要因もあろう。しかしそれが日銀の金融政策で変えられるものではない。まったく効果がないとは言わないが、金融政策はあくまでその補助的な役割でしかないはずである。

 大胆な金融政策でも物価は変えられないし、世界も変えられない。金融政策はあくまで金融市場の不安を取り除くといった役割程度の認識とすべきで、過度の期待は禁物ではないかと思われる。

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by nihonkokusai | 2016-11-30 09:48 | 日銀 | Comments(0)

トランプ効果で金融緩和の影響度が強まることも

 9月21日に日銀が金融政策決定会合で決定した金融緩和強化のための新しい枠組み「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で日銀はいったい何をしようとしているのか。米大統領選挙でのトランプ氏の勝利が金融市場を取り巻く環境が大きく変化しつつあり、これを踏まえて考えてみたい。

 日銀は9月21日に金融緩和の「総括的な検証」を行っている。このなかで、2%の物価目標が実現していない理由を指摘している。当初は「予想物価上昇率の引き上げ」と「名目金利の引き下げ」による実質金利の引き下げが経済を刺激し、物価が上がるというメカニズムが働いたとした。それにより実施1年後には消費者物価は1.5%に上がったと結論づけた。

 物価の上昇基調は2013年4月の量的・質的緩和の決定のタイミングですぐに上向きはじめたように見える。タイムラグもなしに上向いたのは、大胆な金融緩和による予想物価上昇率が引き上げられたというよりも、外部要因によるものとの説明のほうが適切ではなかった。急激な円安と消費増税前の駆け込み需要等の要因で説明すべきではないのか。

 事実、日銀は物価が下がった要因について、2014年夏以降の原油価格の下落と消費税率の引き上げ後の需要の弱さ、2015年夏以降の新興国経済の減速とそれを受けた世界的な金融市場の不安定化という逆風を指摘し、この外部要因で実際の物価上昇率が低下してしまったとしている。それならば物価の上昇も外部要因で説明すべきものではないのか。

 つまり日銀による大胆な金融緩和だけで物価が動かせるものではない。金融政策はあくまで経済や物価の悪化を食い止めるための金融市場を通じた環境作りでしかなく、金融政策そのものが景気や物価を動かすものではない。

 ただし、この環境が変化すると金融政策の影響度が強まることも考えられる。金融政策ではなく外部環境がもしデフレ脱却の方向に向かいつつなれば、金融政策がそれを加速させることになる。ここにきての円安や米国株式市場の上昇もあっての東京株式市場の上昇は、それを予感させるものとなる。

 環境が変わると日銀の金融政策の影響にも変化が出てくる。金利については無理に引き下げても、実体経済に上向きの力がなければ生かされない。ところが実態経済に上向きの力が加われば、それに応じた金利上昇が予想されるが、それを日銀のイールドカーブ・コントロールで押さえつけることとなる。

 いわゆる「金融抑圧」や「高圧経済(high-pressure economy)」といった状況を強めることが予想される。実体経済に即した金利形成を阻害する形だが、それは景気そのものの回復力を強めることも予想される。しかし、これはなかなか危険な賭ともなりうる。

 日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で「イールドカーブ・コントロール」とともに、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」も打ち出している。つまり2%が見えるまでは、「金融抑圧」や「高圧経済」を続けるということでもある。

 実際に外部環境に本当の意味で変化が生じているのかどうかは、今後の経済物価指標等を確認する必要はある。金融政策では物は動かせなくても、その動きを加速させる要因ともなりうることで、今後の外部環境の変化にも注意しておく必要がある。

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by nihonkokusai | 2016-11-29 09:59 | 日銀 | Comments(0)

日銀による初の国債の指し値オペの目的は何だっのか

 日銀は11月は17日に初の国債の指し値オペをオファーした。この目的は何かと問われれば、トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇の抑制となる。

 日経QUICKニュース社の取材に答えた日銀の金融市場局の担当者は、指し値オペの実施を初めて通知したことについて「短中期の金利の急速な上昇を踏まえたもの」とした。

 黒田日銀総裁は17日午前の参院財政金融委員会で、米金利の上昇につれて日本の金利に上昇圧力がかかる中、長短金利を操作目標としたイールドカーブ・コントロール政策の下では、日本の金利上昇を容認することはないと語った(ロイター)。

 日銀が17日は20年国債の入札日であるにも関わらず、異例の国債買入、しかも初の国債の指し値オペをオファーした背景には16日の債券相場の動きがあった。10年債利回りは16日の引け後にプラス0.035%まで上昇し、2年債利回りはマイナス0.095%、5年債利回りはマイナス0.040%に上昇したのである。

 日銀によるオペの指し値が、2年利付国債370回の買入利回りで-0.090%、5年利付国債129回の買入利回りは-0.040%とまさに16日に売り込まれた水準であったことからもそれが伺える。

 それでは何故、「長短金利」操作をうたった日銀が「中期」の金利の抑制に動いたのか。これは長期は0.035%まで上昇したとはいえ、概ねゼロ%という水準に近いことで動きづらい面があった可能性がある。それよりも16日の債券市場でまとまった売りが中期ゾーンに入り、中期ゾーンの利回り上昇に対して日銀が意識した可能性がある。

 当然ながらこの中期ゾーンの売りの要因なり売り手を探るため、日銀は市場関係者にヒアリングを実施した事も考えられる(通常でも意見交換はあると見られるが特に念入りに)。その結果、指し値水準から見ても16日の段階で17日中には初の国債の指し値オペを実施することを決めていたのではないかと思われる。国会に出席する黒田総裁の耳にも事前に入れておいたはずである。

 これにより日銀のイールドカーブコントロールが試される。17日の初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識されることとなった。

 米金利はそれ以降も上昇基調となり、今後さらに上昇する事態も考えられる。また、16日の中期債の売り手が国内投資家ではなく海外投資家の可能性もある。日銀は無制限に買い入れるとしているが、海外の金利動向次第では、日本の長期金利形成が歪なものとなる可能性もある。為替介入でも自国通貨安を食い止めることに無理はあった。このようなことをもし日銀が続けるとなれば、いずれ日銀は市場参加者と立ち向かうことにもなりかねない。

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by nihonkokusai | 2016-11-28 09:54 | 日銀 | Comments(0)

金融市場のトランプ現象による日銀への影響

 11月8日の米大統領選挙における予想を覆してのトランプ候補の勝利を受けて、世界の金融市場の景色が変わった。21日の米国株式市場ではダウ平均、ナスダック、S&P500種株価指数の3指数そろっての過去最高値更新となった。ドルも上昇し、ドル円は一時112円台に乗せてきた。さらに米国債は売られ、米10年債利回りは2.3%台に上昇した。

 この背景にはトランプ氏の経済政策への期待がある。積極的な財政政策や規制緩和等を推し進めるとの期待を背景に、物価の上昇や財政赤字の拡大なども予想されることで、株やドルは買われ、米長期金利は上昇した。物価上昇観測はFRBの正常化の後押しともなる。このため12月のFOMCでの利上げ観測が強まり、市場は来年の再利上げも視野に入れつつある。これも米長期金利やドルを上昇させた要因となった。

 ただし、トランプ氏から具体的な政策が公表されているわけではない。いまのところ大統領着任初日に大統領特別命令でTPPからの撤退を発令すると宣言した程度となっている。

 具体的な政策が打ち出されずともトランプ氏の登場で金融市場の潮目が変化したのは、期待感だけでなく、そちらの方向に向けたエネルギーが蓄積されていたともいえる。これは2012年11月あたりからの日本でのアベノミクスと呼ばれた現象とも似ている。

 米国金融市場の影響は、当然ながら日本の金融市場にも影響を与えた。急速な円安と米株高を受けて東京株式市場は上昇基調となり、日経平均は18000円台を回復した。トランプ氏の勝利で一時的に日経平均は16000円近くまで下落したが、すぐに17000円程度に切り返し、そこからじりじりと上昇してきた格好となった。

 トランプ現象は日本の債券市場にも影響を与えた。円安株高も要因ではあるが、それ以上にFRBの追加緩和観測も手伝っての米長期金利の上昇により、日本の国債利回りも上昇した。今年1月の日銀のマイナス金利政策の導入決定を受けて、日本国債の利回りは一時20年債までマイナスとなった。超長期ゾーンはプラス金利を回復した。しかし、10年債利回りは9月の日銀による長短金利操作付き量的・質的金融緩和の決定で一時的にプラスになる場面もあったがマイナスが継続していた。ところがトランプ候補の勝利とそれによる米長期金利の上昇を背景に、11月15日に日本の10年債利回りはプラスに転じたのである。

 中期ゾーンの金利も上昇したが、これに対して日銀は17日に中期債を対象とした初の国債指し値オペを実施した(応札額はゼロ)。日銀の目的が水準を意識したものなのか、それとも利回り上昇ピッチを警戒したものかは不透明ながら、これで中期ゾーンの利回り上昇はいったん抑えられた。しかし、超長期債を中心に利回り上昇は続いている。

 日銀にとって円安株高は願ったり叶ったりとなる。原油先物はOPECの生産調整を巡って下落する場面もあったが、再びWTIは50ドル台に迫るなど、原油価格の底打ちもあって日本の物価も今後はマイナスを脱してくる可能性も出ている。

 ただし、イールドカーブコントロールを打ち出した以上は、国債利回りの上昇についてはあまり容認できないところでもあろう。しかし、米国の長期金利の上昇やドル高を背景に海外投資家の円債への巨額投資に今後変化が起きる可能性もある。日本の国債利回りが今後さらに上昇圧力が強まれば、日銀が無理矢理それを押さえつけるような事態になることも予想される。

 今後はマイナス金利政策そのものの意味も問われよう。すでに債券市場は需給バランスなどでかなり歪なものとなっているが、それがさらに歪になってしまうこともありある。日銀はそろそろ正常化路線に戻れとまでは言わないまでも、マイナス金利政策あたりは撤回することも視野に入れる必要もあるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-11-24 09:20 | 日銀 | Comments(0)

QQE+YCC政策はPPAPの日銀版か

 全世界から注目されたPPAP(ペンパイナップルアップルペン)であるが、実はこれ新たな日銀の金融政策(QQE+YCC)の比喩ではないのかという気がする。

 日銀には量的緩和手段があり、質的緩和政策があった。これを足して量的・質的緩和ができた。そして日銀には短期金利操作があり、ここに長期金利操作も加えて長短金利操作ができた。両方足してPPAPならぬQQE+YCC、「長短金利操作付き量的・質的緩和」ができあがったという具合である。

 そのQQE+YCCができあがるまでの過程が、9月20、21日に開催された金融政策決定会合の議事要旨から垣間見ることができる。

 この前提には執行部による「量的・質的金融緩和」導入以降の3年間の経済・物価動向と政策効果について分析」、いわゆる「総括的な検証」があった。その結果としてまず出てきたのが、「予想物価上昇率の形成において、依然として「適合的な期待形成」の役割が相対的に大きいことを踏まえ、フォワード・ルッキングな期待形成を強める手段を導入する必要がある」という点である。

 つまり我々が物価は上がるぞとの期待を強めさせなければ、物価は上がらないとの認識による。それは異次元緩和の前提ではなかったかとの議論はさておいて、ここにまず「オーバーシュート型コミットメント」を導入すべしとの意見が出ていた。しかし、これはあくまで新たな政策方針にリフレ派を含めた賛同者を募ることが目的であったように思われる。QQE+YCC政策で注目を浴びたのはYCCの方であった。

 「(多くの委員は)本年1月に導入したマイナス金利政策の組み合わせによって、イールドカーブ全体にわたり金利水準を引き下げられることが確認できており、イールドカーブ・コントロールは可能であるとの見解を示した」

 「(別の委員は)この半年、相応に長期金利をコントロールできてきたのは事実であり、また、国債買入れ1単位当たりの金利引き下げ効果が状況によって変わってくるのであれば、イールドカーブをコントロールしていく発想は自然である旨述べた。」

 前者の意見がYCC、つまりイールドカーブコントロールが可能との前提にある。興味深いのは後者で、国債買入の微調整でイールドカーブコントロールが可能との認識である。

 この点については疑問を呈さざるを得ない。そもそも日銀は極端に量を増やせば、物価は上がるとした。ところがそれは外部要因によって妨げられたと結論づけた。ならば同様に長期金利も当然ながら外部要因によっても動く。いまはあくまで長期金利は低位安定できる外部環境が存在し、他に注目材料が見当たらないことで、日銀の国債買入によって一喜一憂し、その結果として微調整が可能となっている。

 QQE+YCCはPPAPをまるで地でやっているかのごとくの政策ともいえる。単純にいろいろなものを組み合わせてはいるが、いったいそれは何なのか。どのような意味があるのか。どのような効果があるのか。残念ながらそのあたりについては今回の議事要旨からも浮かび上がらない。

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by nihonkokusai | 2016-11-08 09:43 | 日銀 | Comments(0)

日銀のイールドカーブコントロールの手法

 日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和の柱のひとつイールドカーブコントロールとは、短期金利と長期金利にそれぞれ目標値を設定し、その目標値に誘導するものである。

 長期金利が上昇した場合などには例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。固定利回り方式による国債買入の場合には、買入予定総額に上限を設定しないことがあるとしている。つまり長期金利が大きく上昇するような場合には、それを日銀は無制限の国債買入で押さえ込むことも予想される。長期金利が想定以上に低下した際には、上記のような歯止めは持っていない。

 ただし、このイールドカーブのコントロールは国債買入の増減によっても行うようである。9月30日に日銀は残存5年超10年以下の国債の買入をいきなり減額するという手段に出た。この日の夕方に発表される「長期国債買い入れの運営方針」で減額を発表すると思われたが、5年超10年以下についてはそれに先んじた。そして「長期国債買い入れの運営方針」では、10年超25年以下と25年超について減額が発表された。もちろん5年超10年以下はすでに減額され、その減額された金額でオファーされることとなる。この背景には、超長期国債の利回りをもう少し上昇させようとの日銀の意図が働いていた可能性がある。

 ところが10月31日が日銀の金融政策決定会合初日であったため月末ではなく11月1日の夕方5時に発表された「長期国債買い入れの運営方針」では、一回当たりの買入額は残存5年超10年以下、10年超25年以下、25年超を含めてすべて現状維持となった。

 今回も長いところを中心に減額されるのではないかとの見方もあった。大手生保などからはこの程度の超長期債の金利でも運用は難しいとのコメントもあったことで、もう少し超長期債の金利引き上げもありうるかと思われた。しかし、日銀は毎月のように減額してしまうとテーパリングと認識されるのを避けるためか、今回は現状維持とした。

 今後も日銀はイールドカーブの微調整は、この国債買入の金額の増減によって行ってくることも予想される。ただし、過去の中央銀行の歴史上はじめてともいえるイールドカーブコントロールはまだ始まったばかりでもあり、日銀としてもこのあたり手探り状態にあるのかもしれない。今回は物価目標達成時期を先送りした展望レポートの発表もあったことで、こちらの変更は据え置いた可能性もある。

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by nihonkokusai | 2016-11-06 11:04 | 日銀 | Comments(0)

日銀の異次元緩和の敗北とその後始末

 11月1日の日銀金融政策決定会合は予想通りの現状維持となった。予想通りというのは、すでに黒田総裁が国会などで事前に今回の会合での変更なしを示唆していたことで、その通りになったということである。

 今回は決定会合終了のタイミングで日銀のサイトにアクセスが集中することもなかった。日銀は9月の会合後のアクセス集中を踏まえてサーバーを増強するとしているが、まだ増強はされていない。つまりそれだけ株式市場や外為市場を含め、金融市場の関心が低かったということにもなる。

 これはある意味、日銀の戦術が功を奏した格好となる。日銀は黒田総裁となってからサプライズ緩和を繰り返してきた。まったく自慢にならないが、黒田総裁となってからは、私も事前予想を悉く外してしまった。2013年4月の量的・質的緩和も総裁の就任直後なので無理があると思ったが、補佐役がしっかり準備をしていた。2014年10月の量的・質的緩和の拡大も、このタイミングで来るかなと疑問であったが、後で振り返ると絶妙なタイミングであった(物価を上げるためという意味でなく他の要因で)。今年のマイナス金利政策についても、ないと見ていたが、総裁自ら否定していたものを決定するという離れ業を行った。

 市場はこのようなサプライズに慣らされ、緩和期待が常に発生するなど、市場は金融決定会合の度に神経質となってしまった。これを反省してか、日銀は事前に市場に織り込ませ、サプライズ政策は取らない姿勢にあらためてきた。今回の会合からそれが奏功した格好となった。

 サプライズなき結果とはなったが、その意味するところは、サプライズを含めたこれまでの異次元緩和政策が修正されつつあるということでもある。結論から言えば、異次元緩和によって物価に影響を与えて、それを引き上げることができなかったという事実がそこにある。

 1日の黒田総裁の会見では、なぜ物価が上がらなかったのかとの説明に対して、デフレマインドがこびりついた状態では簡単にインフレ期待が出ないことや、原油価格の下落、中国など新興国経済の減速、消費増税による消費マインドの後退等を指摘していた。しかし、これは言い訳にしか過ぎない。

 2013年4月の量的・質的緩和政策決定のタイミングで、消費者物価指数はマイナスから1年かけてプラス1.5%に上昇した。これを緩和の効果とするのは無理がある。そもそも金融緩和が効果を発揮するまでにタイムラグがあると日銀も以前から指摘していたはずである。しかも、2014年4月の消費増税のタイミングから物価が前年比で低下したのは、消費増税だけの影響ではない。消費増税がなければ物価は上がっていたとの指摘があるが、むしろなぜ短期間の間に物価が上がったのかとの要因を分析したほうが良い。日銀の金融緩和以外の影響が大きかったからこそ、物価の上げ下げがあったと見る方が素直ではなかろうか。

 しかしすでに日銀は異次元緩和によって国債を400兆円も保有し、巨額の買入はまだまだ続いている。いまさらこれを止めるわけにも簡単にはいかないようである。これにより債券市場は機能停止状態に陥ってしまった。

 それでも日銀はあらためて現状を見据え、これ以上の深入りを避けるとともに、異常ともいえる国債買入の規模縮小を図るべきではなかろうか。日銀の異次元緩和は結果として物価を上げられなかった以上は、敗北したと言っても過言ではない。次はこの後始末を行うことを考える必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-11-03 10:13 | 日銀 | Comments(0)
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