牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:日銀( 1099 )

日銀の金融政策では反対意見に耳を傾けることも必要では

 「一人の委員は、2%の「物価安定の目標」は金融政策の自由度を奪っていると指摘したうえで、これを中長期の目標へと柔軟化しつつ、金融政策の正常化に向けた道筋として、将来の政策金利引き上げに関わる経済条件を示していくことが適当であると述べた」

 これは 6月15、16日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨に記述されていたものである。その内容からみて、金融政策決定会合において長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、資産買入れ方針と両方で反対票を投じていた佐藤健裕委員、もしくは木内登英委員による発言とみられる。

 木内委員は今年2月の山梨での公演で以下のように述べていたことで、上記の発言は木内委員のものではなかろうか。

 「2%の「物価安定の目標」は中長期的に目指す目標とし、2%の「物価安定の目標」と整合的な強い経済の実現を政府や企業とともに目指すための一種の象徴として位置付けることが良いと私は考えています。」

 7月1日にカナダ銀行が7年ぶりの利上げを決定し、正常化に向けて舵を切ったFRBに追随した最初の中央銀行となった。さらにイングランド銀行やECB、スウェーデン中銀(リクスバンク)などが緩和バイアスを解除し、利上げもしくはテーパリングを模索しようとしている。

 しかし、英国など除いて総じて物価指数は2%に届いていない。これは正常化を進めている米国も含まれる、それにも関わらず何故、正常化に踏み出すのか。

 ECBのメルシュECB専務理事は「状況が正常化する中で、非伝統的政策が引き続き必要になる可能性は低い」と発言していた。百年に一度とされる世界の危機的状況は後退してきており、過剰とも言える金融緩和策を修正する必要があり、金利もファンダメンタルに即した水準に戻る必要性がある。このために正常化を進めようとしている。そのためには物価目標に固執せず柔軟な対応が必要との認識ではなかろうか。

 しかし、日銀は2%の物価目標に固執するあまり、欧米の中央銀行のような柔軟な対応が取りづらくなっているようにも思われる。木内委員の意見はあくまで少数派の意見ではあるものの、その意見にも耳を傾けることも必要ではなかろうか。

 その木内委員と佐藤委員は7月23日に審議委員の任期を終えた。あらたに片岡剛士氏と鈴木人司氏が審議委員に就任した。

 日銀の金融政策決定会合では必ずしも全員一致で決定する必要はなく、むしろ反対意見も重要なものとなり、その反対意見が今後の金融政策の道筋を作ることもありうる。このあたりも是非、政策委員の方々には考慮願いたいと思う。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-31 10:05 | 日銀 | Comments(0)

日銀はそろそろ軌道修正を決断すべきでは

 7月28日に発表された6月の全国消費者物価指数は総合で前年比プラス0.4%、生鮮食料品を除く総合(コア)で前年比プラス0.4%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)で前年比ゼロ%となった。これは3つとも5月の数字と同じとなった。

 電気代の上昇幅が拡大したほか、都市ガス代がプラスに転じたものの、ガソリンなどの上昇幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅は0.01ポイント縮小。生鮮食品を除く食料により総合の上昇幅が0.01ポイント拡大し、家庭用耐久財により総合の上昇幅が0.01ポイント拡大していた。

 先行指標となる東京都区部の7月のCPIは総合が前年比プラス0.1%、コアが前年比プラス0.2%、コアコアは前年比マイナス0.1%となっていた。

 日銀の物価目標であるところの全国コアCPIの前年比は今年1月にプラスに転じたあと、プラス圏を維持しているが、目標値の2%にはまだかなり距離があり、日銀も前回の展望レポートで物価目標の達成時期を2019年度頃に先送りしている。

 その日銀はコアCPIや日銀版コアコアCPIなど値動きの大きな品目を除去した指数の方が、日本経済の潜在的な供給力に対する需要の過不足を示し、景気の良し悪しを反映するとされる需給ギャップの動きと連動する度合いが大きいとしていた(日銀のレポートより)。

 しかし、コアコアをみると6月の全国の指数でゼロ%、7月の東京都区部はマイナスとなっており、日銀の物価目標からはさらに遠ざかることになる。

 しかもこの数字は2013年4月に量的・質的緩和政策を決定し、その後、マネタリーベースは増加し続けているだけでなく、マイナス金利政策や長期金利操作まで加えた結果である。日銀の金融政策が物価の押し上げには寄与していないことは、これをみても明らかであろう。

 原油価格の下落や消費増税による影響で上昇が抑制されているとの見方もおかしい。ここにきての物価上昇はその原油価格の下落が止まり反発してきたことが影響している。前回の消費増税は2014年4月であり、それによる直接的な影響は1年後になくなる。間接的な影響が仮に残っていたとしても、それは具体的に立証できるものではない。むしろここにきての景気の底堅さなどからは、すでに消費増税による物価への影響はほとんど無視できるものとなっているのではなかろうか。

 日本の物価が上がらないのは何故か。それは日銀の金融緩和が物足りなかったわけではないことをこの4年で日銀は明らかにした格好となった。それであれば、非常時の対応とすべき異次元緩和の修正をそろそろ加えてもおかしくはないのではなかろうか。市場による過剰反応が恐いこととは理解できなくもないが、異常な政策が潜在的な副作用を高めていることも確かで、それが債券市場の機能不全等に現れている。日銀はそろそろ軌道修正を決断すべきではないかと思う。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-30 12:41 | 日銀 | Comments(0)

日銀の5年超10年以下の国債買入減額に市場は動揺せず

 日銀は7月24日の国債買入で、5年超10年以下の買入予定額を前回の5000億円から300億円減額し4700億円とした。今回はこの5年超10年以下の国債買入額の変遷を確認してみたい。

 2016年当初は5年超10年以下の毎回の買入額が4500億円程度であったものが、7月に4300億円に減額した。この時期に世界の長期金利が過去最低を更新するなどしており、7月6日には日本の20年債利回りも一時マイナスとなった。この金利低下のペースをダウンさせる意味もあっての減額であり、超長期ゾーンも同時に減額していた。

 そして2016年9月30日にも残存5年超10年以下の買入予定額を4100億円とし前回の4300億円から200億円減額した。この日の10年国債の利回りはマイナス0.090%に低下していた。そして数日前にはマイナス0.095%にまとまった売りが入るなどしていた。日銀の長期金利の操作目標についてはある程度の幅があると予想されており、市場はそのレンジを見定めようとしていた。その下限がマイナス0.1%であろうとの認識であったが、それが日銀が国債の買い入れを減額することで裏付けられた格好となった。

 今年1月27日に日銀は残存5年超10年以下の買入予定額を4500億円と400億円増額させてきた。これは25日の国債買入での中期ゾーンスキップの代わりに、5年超10年以下を増額したとも見えた。中期ゾーンの国債買入の減額による影響を抑えるために長期ゾーンの買入を増やしたとも捉えられた。

 しかし、1月末に発表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」で残存5年超10年以下の買入予定額の2月初回買入は4100億円と元に戻されていた。

 ところが、2月3日には残存5年超10年以下の買入予定額を4500億円に戻していた。この際に市場は日銀のイールドカーブコントロールによる長期金利の居所を改めて探りに来ていた。2月2日の14時前に市場は日銀が想定するとみていた長期金利の上限の0.100%を試しにいった。2日の10年債利回りは0.115%まで上昇していた。

 これに対し3日に日銀は残存5年超10年以下の買入予定額を4500億円に増額したものの、市場は元に戻しただけとの読みとなった。ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認していると解釈され、債券先物が大きく売られることになった。この急激な利回り上昇を受けて、日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に指し値オペをオファーした。残存期間5年超10年以下の固定利回格差は0.006%。この結果10年利付国債345回の買入利回りは、0.110%となった。

 日銀は今月7日、欧米の国債が売られ10年債利回りが0.105%まで上昇したのに対し、5年超10年以下の額を4500億円から5000億円に増額、指し値オペもオファーした。

 その後欧米の長期金利の上昇は落ち着いたことから、5年超10年以下の買入予定額を4700億円に減額し再調整した。ただし減額は300億円に止め、来月の国債買入予定発表日である28日での減額も避けるなど、市場にも配した格好となった。実際に債券市場は以前のように細かい修正に大きく反応するようなことはなくなり、今回の減額による影響はほとんどなかった。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-26 10:00 | 日銀 | Comments(0)

海外の中央銀行の日銀当座預金口座にマイナス金利を適用

日銀は日本銀行法第41条に基づき、外国の中央銀行等や国際機関との間で、これらの先による円貨資産の運用や円資金の調達に協力するため、預り金業務、債券等保管業務、国債買取り等業務を行っている(日銀サイトの「教えて!にちぎん」より引用)。

外貨準備を運用する目的で、海外の中央銀行は日銀にも円建ての当座預金口座を開いている。合計で93口座あるそうで、全ての口座の預金残高の合計は13兆6000億円(3月末時点)となっている(日経新聞の記事より引用)。

日銀はこれまで、海外中銀の預金に利子はつけていなかった。しかし、6月5日以降は、それぞれの海外中銀の預金の一定額を超える預け入り金について、現金担保付き債券貸借(レポ)金利から算出する短期の実勢金利から0.05%を引いた利率を付けることにした。現在この短期金利はマイナス圏で推移しており、その結果、この付利金利もマイナス金利となる。

欧州中央銀行(ECB)も海外中銀の預金口座にマイナス金利を適用しており、日銀もこれに習った格好となるが、何故このタイミングではじめたのであろうか。システムなどの対応に時間が掛かった可能性もある。

ちなみに日銀が2016年1月に決定したマイナス金利政策におけるマイナス金利適用に際しても、金融機関の日銀当座預金の一部にマイナス金利が適用される仕組みとなっている。民間金融機関が日銀に預けている当座預金残高を年平均残高となる「基礎残高」、所要準備額と貸出支援制度などの利用額に基礎残高の一定割合となるマクロ加算額を加えた「マクロ加算残高」、当座預金残高から上記の2つの残高を除いた「政策金利残高」の3段階に分類し、このうちの「政策金利残高」の部分にマイナス金利が適用される格好となっている。

海外中銀の当座預金口座にマイナス金利を適用することによる影響としては、マイナス金利の適用を嫌って一部の資金が日銀の当座預金から流出する可能性はある。しかし、中銀預金などによる日銀への資金の預け入れは、資金運用というよりも必要に応じてのものとなっているとみられる。たとえば日銀が外国の中央銀行等との間で行う通貨スワップ取引の決済などにも預り金口座が利用されるなどしている。

このため今回の海外中銀の当座預金口座の一部にマイナス金利を付利することにより、日銀の当座預金から資金が大きく流出するような事態が生じることはないとみられる。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-17 16:59 | 日銀 | Comments(0)

日銀のスタンスに変化なし、日銀支店長会議総裁挨拶より

7月10日の日銀支店長会議での黒田総裁の挨拶が日銀のサイトにアップされた。これを前回4月の支店長会議の挨拶文と比較してみたい。

「わが国の景気は、緩やかな拡大に転じつつある。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる(7月)」

「わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。先行きについては、緩やかな拡大に転じていくと考えられる(4月)」

足元の景気判断は「緩やかな回復基調を続けている」から「緩やかな拡大に転じつつある」に上方修正している。これは3日に発表された日銀短観などを確認してのものとみられる。短観の業況判断指数(DI)は全規模全産業でプラス12となり、2014年3月調査と並び、リーマン・ショック後で最高となったように、企業の景況感の回復に広がりが出ていることが示されていた。

「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台前半となっている。先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(7月)」

「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについては、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(4月)」

消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、4月は「0%程度」であったものが、7月は「0%台前半」に多少の上方修正となっている。直近に発表された5月のコアCPIは前年比で4月の0.3%から0.4%となっていたことなどを反映か。

4月にはあった「エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと」が除かれている。あらたな段階に移行したということであろうか。「プラス幅の拡大基調を続け」ても、さすがに2%には届かないとの予想が多いことも確かではあるが。

「わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある(7月)」

「わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある(4月)」

安定していないと困ることも確かである。

「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(7月)」

「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(4月)」

こちらもまったく文面はまったく変えていない。欧米の中央銀行がECBを含めて、緩和バイアスの解除を模索しているが、日銀は2%という身の丈に合わない物価目標を掲げ、しかもそれを金融緩和でなんとかしようとするあまり、自らを縛りつけてしまい、戻るに戻れなくなってしまっている。この状況が変わるには何かしらのショックが生じるか、何かの弾みで物価が2%をワンタッチするようなことがなければ難しいのであろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-11 09:50 | 日銀 | Comments(0)

日銀は長期金利の上昇に対し指し値オペで阻止、これは何のため?

7月7日に日本の10年国債利回り(長期金利)は0.105%に上昇した。これを受けて日銀は指し値オペを実施し、これ以上の長期金利の上昇を阻止した。なぜ日本の長期金利が上昇し、それをどうして日銀が押さえ込む必要があったのか。

まずは日本の長期金利上昇の背景から見てみたい。

27日にポルトガルで開催された欧州中央銀行(ECB)の年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための利上げの可能性を指摘した。

FRBが正常化に向けた歩みを進めるなか、英国の中央銀行であるイングランド銀行も利上げに向けた討議を進めるとし、カナダ銀行(中央銀行)も利上げの可能性を指摘するなど、欧米の中央銀行が正常化に向けた動きをみせはじめた。そのなかにあって正常化とは距離があるとみられたECBも緩和バイアス解除を意識させる動きを見せ始めたのである。

6日に公表された6月のECB理事会の議事要旨では、必要に応じて資産買い入れを拡大するとの従来の文言について当局者が削除することを協議していたことが明らかになった。これに伴う市場の混乱を強く警戒し、行動を急がない公算が大きいとも指摘してはいたが、ECBの方向性は追加緩和にはないことがはっきり示された。

欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を切りつつあり、これを受けて欧州の国債利回りが上昇し、FRBが利上げを行っても反応の鈍かった米国債利回りも欧州国債の利回り上昇を受けてあらためて上昇しはじめた。

ECB理事会の議事要旨の内容受けて、7月6日のドイツの10年債利回りは0.56%に上昇した。6月22日には0.25%近辺にいたことから、そこから倍以上の利回り上昇となった。フランスの10年債利回り0.91%と6月26日には0.60%近辺にいたがこちらも大きく上昇している。英国の10年債利回りも1.31%と6月20日頃は1%近辺にいたがそこから0.3%程度の上昇となっていた。

この欧州の国債の売りは米国債にも波及し、米10年債利回りは6日に2.36%に上昇した。米10年債利回りも6月26日に2.13%近辺におり、ここから欧州の国債利回りと一緒大きく上昇していた。

この海外での金利上昇を受けて7日の日本の10年債利回りは0.105%に上昇した。これにどう日銀が対処するのかが注目された。

今年2月3日に債券市場では日銀の長期金利コントロールのゼロ%の範囲を探るような動きを見せ、通常の国債買入での増額がなかったことを確認後、10年債利回りは0.150%まで上昇した。これに対し日銀は変則的な時間帯の12時半に(オペタイムは午前は10時10分、午後は通常14時)指し値オペを実施した。その水準が10年債利回りの0.110%となっていた。

7日に10年債利回りは2月3日の指し値オペの水準に接近したことで、日銀は10時10分という通常の時間帯で予定通りに長期と超長期ゾーンのオペをオファーし、その際に5年超10年以下のオファー額をこれまでの4500億円から5000億円に増額した。市場はこの増額はある程度予測していたようである。指し値オペについては見方は可能性は薄いかとの見方が強かった。

ところが日銀は通常のオペと同時に固定利回り方式での残存期間5年超10年以下の国債買入もオファーした。つまり伝家の宝刀といえる「指し値オペ」である。その水準は10年利付国債347回の買入利回りで0.110%となった。つまり2月3日と同水準である。日銀としては0.110%が絶対防衛ラインということを示した格好となった。。

7日の10年債利回りで0.110%はつけていたわけではなく、今回は2月3日のように実弾ではなかった(3日の10年債利回り水準は0.140%近辺となっていた)。通常オペで増額した上にストッパーを入れてきた格好である。ただし、利回り水準がそこまで上がっていなかったため、今回は2月3日のように応札する業者はいなかった。今回はまさに来るなら来い的なオペレーションといえた。

これを受けて10年債利回りはいったん0.085%に低下した。しかし市場も慣れてきたのか、昨年11月や今年2月の指し値オペほどのインパクトはなかった。ただし、外為市場ではこれをみて日銀と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いが意識されて、ドル円は一時114円台をつけていた。

しかし、欧米の中央銀行が緩和バイアス解除に向かうなか、頑なに異次元緩和に固執する日銀の姿のほうが異様にみえる。長期金利をここで止めて、どのようにして物価が上がるというのであろうか。債券市場の機能喪失と引き換えに長期金利コントロール含めた異常な緩和策を進める日銀に対して、疑問を感じる人達も次第に増えつつあるように思われる。

今回日銀が0.110%で指し値オペを入れたのは、2月3日の同水準とすることで長期金利のコントロール範囲の上限は0.110%であることを市場に意識させようとしたものとみられる。むしろここで行動を取らなければ市場は日銀も緩和バイアス解除を意識しているのではと勘ぐってしまうことを恐れた可能性もある。しかし、これはつまり日銀だけが正常化に向けた動きから取り残されることになる。

日銀が物価目標を達成していない以上は当然だ、とのご意見もあるかもしれない。しかし、日銀は異次元緩和で物価そのものを簡単に動かせないことを4年以上掛けて証明してしまった。欧米の物価も目標値に届いていないケースもあれど、2%近くにいることは確かである。ただし、これは欧米の中央銀行の金融政策に負うところというよりも、そもそも欧米の物価は2%近くに収斂しやすく性質がある。それが日本の消費者物価指数では2%ではなくゼロ近傍にある点に大きな違いが存在する。

デフレ脱却云々の前にこういった物価指標の性格も意識しなければならず、少なくとも日銀が長期金利を0.110%に押さえつければ、消費者物価指数が2%に上昇するという理屈はどう成り立つというのであろうか。これにより債券市場の価格発見機能はますます失われ、取引量の減少や既存の市場参加者の退出という形で機能度の低下に繋がっている。海外の長期金利の上昇ばかりでなく、3日の日銀短観などをみても本来、ある程度上昇するのが自然に見える長期金利を無理矢理抑えて、日銀はいったい何をしたいのか。あらためて問いたい。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-08 09:57 | 日銀 | Comments(0)

日銀の政策リスクは出口にあるのではなく出口がないこと

6月30日に発表された5月の日本の消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となった。日銀の物価目標となっている生鮮食料品を除く総合(コア)でも前年比プラス0.4%となっていた。ちなみに生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)と、エネルギーまで除いてしまうと前年比プラスゼロ%となっていた。

日銀は原油先物の下落による物価低下圧力を意識するあまり、基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)として消費者物価指数の「除く生鮮食品・エネルギー(新コアコア)」を独自に算出しているが、原油価格の上昇分が反映されるようなことになると、むしろ原油価格が回復すると、前年比では上昇幅が失われてしまう結果となる。

これをみるまでもなく、日本の消費者物価指数はエネルギー価格に影響を受けやすい。もちろん外為市場の動向の影響も受ける。それらの影響を除いてしまうと結局はゼロ近傍に収斂しやすい性質を持っていると見ざるを得ない。

日銀は1999年にゼロ金利政策、2001年に量的緩和政策、2006年にいったん量的緩和とゼロ金利政策を解除するが、2010年に包括緩和政策、2013年にはこれまでの緩和策は踏み込み不足とばかりに量的・質的緩和、2014年にはその拡大、2016年2月にはマイナス金利政策も加え、9月には長期金利操作も加えて、長短金利操作付き量的・質的緩和政策を打ち出してきた。

その間の消費者物価指数の変遷をみると、途中の上げ下げはあったものの、ほぼコアCPIの前年比はゼロ近傍で推移している。特に2013年の量的・質的緩和導入以降、マネタリーベスや日銀の国債保有額は大きく増え続けているが、それがCPIに影響しているとは考えられない。

物価は上がらなくても雇用環境は改善され、景気も回復基調を続けていることでアベノミクスは成功しているとの意見もある。しかし、アベノミクスの唯一の柱というべき日銀の異次元緩和は物価に影響を与えていない。物価改善ありきでの景気回復ではなかったのか。国民にとっては物価が上がらずに景気や雇用が改善してくれたほうがありがたい。ここには賃金が上がらないという問題も出てこようが、金融政策で賃金がどうにかなるものでもあるまい。

欧米の中央銀行が出口に向かいはじめているなか、日銀は2%の物価目標達成という看板を掲げてしまったことにより、身動きがとれなくなっている。物価目標を達成した際に日銀の財務状態が心配だとの意見もある。しかし、そもそも金融政策で物価は簡単に動かせないことを見事に証明してしまったが、それも認めることは当然できず、とにかく付け加えられるものを付け加えてしまったバベルの塔のような政策を続けて行くしかないということにリスクはあるまいか。日銀の政策リスクは出口にあるのではなく、出口がないことにある。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-02 10:35 | 日銀 | Comments(0)

日銀がいつになっても物価目標の2%を達成できない理由

今回、日本と米国の消費者物価指数のデータをエクセルに入れそれぞれを比較するグラフを作成してみた。日米ともにコアと呼ばれる指数で比較した。注意すべき点として、日本のコアCPIは値動きの大きな生鮮食料品を除いたものであり、米国のコアCPIは食品とエネルギーを除いたものであるという違いがある。また、日銀とFRBの物価目標は、日銀がコアCPIそのものであるのに対し、FRBはPCEデフレーターであるという違いもある。

ここではあくまで日米の物価の動きのクセのようなものを見るために比較してみたのである。手元のデータが2004年1月以降であったため、もっと長いスパンの分析とはならなかったが、それでも過去13年以上のデータの比較となった。

これにより一目瞭然なのが、米国のコアCPIが2004年から2017年にかけて、途中の上げ下げはあってもいずれ前年比で2%あたりに収斂するというものであった。これに対し日本ではゼロ近傍に収斂していることがわかる。

データを見ると、2004年1月から2017年4月までの日本のコアCPI前年比は最大値でプラス2.4%、最低値でマイナス2.4%、平均は前年比0.0%となっていた。それに対して米国は最大値でプラス2.9%、最低値でプラス0.6%、平均値で1.93%とほぼ2%となっていた。念のため、これは無理矢理数字を揃えたいので2004年以降にしたわけではない。

日銀が政府の意向も汲んで物価目標をCPIの前年比で2%に設定したのが2013年1月であり、同年4月に量的・質的緩和を決定し、2年程度で物価目標を達成するとした。しかし、その目標は達成されずゼロ近傍にいるのは何故なのか。  

それは中央銀行の金融政策に関わらず、原油価格や外為市場などの動向により多少の上げ下げはあっても日本の場合はコアCPIはゼロ近傍に収斂してしまう性質がある。それは米国では2%であった。つまり、そもそも設定目標に無理があったのではなかろうか。2006年に日銀が量的緩和政策の解除にあたって条件としたのが、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるとしていたが、この数字こそ今振り返っても適切であったように思われる。

だからこそ長きにわたるデフレを退治するため日本の物価の水準を無理矢理にでも2%に引き上げて欧米並みにすべきという意見もある。しかし、そもそも日本の消費者物価指数は帰属家賃等もあり、簡単には水準修正は難しいし、一時的に上昇下降してもゼロ近傍に収斂してしまう。それを日銀のマネタリーベースの増加とか長期金利の低下で動かせるものではない。

2008年あたりから2017年にかけては日銀の緩和策が実験場のように矢継ぎ早に打ち出されたが、このグラフを見ても、消費者物価指数が金融政策によって動いたような兆候はない。この間の消費者物価指数の動きは、むしろ原油価格や為替市場の動きによって説明が付きそうである。日銀にとって物価目標の達成はいつになっても見通せないのは、国債の買い入れなどでは物価は簡単に引き上げられない上に、現在のゼロ%近くの低成長下では物価もゼロ近傍に収斂してしまうためであろう。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-07-01 12:31 | 日銀 | Comments(0)

日銀の正常化が困難を極める原因のひとつがアベノミクス

米国の中央銀行にあたるFRBは正常化に向けた歩みを着々と進め、カナダの中央銀行も利上げが視野に入りつつある。イングランド銀行では利上げ推進派が3名に増え、こちらもいずれかのタイミングで利上げを決定する可能性が出てきた。ちなみにイングランド銀行は議長である総裁が少数派となることもあるなど、空気など読まずに本当に意味での多数決で金融政策が決定されることがありうる。ECBもひとまず追加緩和に傾斜する姿勢を中立に戻している。

日銀も表向きは物価目標が達成できないことで強力な緩和を推し進めるという姿勢は維持しているものの、政策目標を量から金利に戻したことでステルステーパリングを行うなど、実際には少しブレーキを掛けている。

それでも欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を取りつつある中、このままだと日銀だけが取り残されることも予想される。そのためか、ここにきて日銀の出口戦略に対する関心も高くなってきている。しかし、日銀は物価目標達成のためにリフレ政策を取ってしまったことで、自ら退路を塞ぎ、正常化に向けて舵を取るには多くの障壁を作ってしまった。

リーマン・ショックに代表される米国の金融機関の経営危機が世界的なリスクを増大させ、そのあとギリシャの財政問題がユーロというシステムの危機を迎え、それぞれ百年に一度という世界の金融経済危機を迎えた。それに対処するには最終的に中央銀行の金融政策に依存せざるを得なかった。

当時のFRBのバーナンキ議長やECBのドラギ総裁なども、日銀が試していた量的緩和政策などの非伝統政策に追い込まれたというより、壮大な実験を自ら試したかったこともあったのかもしれない。そう簡単にオペなどで売れないであろう長い期間の国債の買い入れ等を主体とした非伝統的手段を打ち出した。それらが結果的に市場の不安感を後退させて、百年に一度のリスクは沈静化していった。

そのようなタイミングで出来たのが、世界的なリスクに対応するため、ではなく長く続くデフレ脱却を掲げたアベノミクスである。デフレは日銀の金融政策の踏み込みの甘さが原因として、リフレ派の主張を取り入れたのがアベノミクスであった。

危機対応ではなくデフレ対応の大胆な金融緩和を柱としたアベノミクスは、そのタイミングがたまたま世界的な金融危機の後退期にあたり、それが急激な円高の巻き戻しを呼び、急速な株高を誘発した。円安効果と世界的なリスクの後退、原油価格の高止まり、消費増税前の駆け込み需要なども加わり、一時的に物価も上昇しコアCPIは前年比プラス1.5%まで上昇した。しかし1年後の円安効果が剥落するなどして、CPIは再びゼロ近傍となってしまった。

あのタイミングで日銀が嫌っていたはずのリフレ政策を時の政権が強制的に打ち出したことで、円安などによる一時的な物価上昇は起きたが、それは日銀が長い期間の国債を大量に購入した結果によるものではなかった。ヘッジファンドなどの仕掛けによるポジション調整が円高トレンドを変えさせた影響が大きかった。だから物価上昇が長続きしなかった。

日銀の異次元緩和で物価目標達成が可能という前提に問題があったことを証明するのに4年以上の歳月が必要となった。しかし、それは当然日銀も現政権も認めることはしないであろう。実はそれが日銀が正常化を困難とする大きな足かせとなってしまっているのである。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-06-20 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀の物価目標達成までにはまだかなりの距離が存在

5月26日に公表された4月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となり7か月連続のプラスとなった。日銀の物価目標ともなっている生鮮食品を除く総合は前年比プラス0.3%となり、こちらは4か月連続の上昇となった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比変わらず。

寄与度をみてみると、原油価格の底打ちによる影響が引き続き大きいようである。ガソリンなどの上昇幅が縮小したものの,電気代がプラスに転じ都市ガス代などの下落幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅が寄与していた。

全国消費者物価指数の先行指標とされる5月の東京都区部の指数は、除く生鮮で前年比0.1%の上昇となり、2015年12月以来のプラスとなった。電気代やエアコンなど家庭用耐久財の上昇、携帯電話機のマイナス幅縮小が寄与した。

このように日本の消費者物価指数は原油価格の底打ちの影響によって、やっと前年比プラスに転じてきている。しかし、欧米の物価指数に比べてもかなり低い水準にあるといえる。

いまでも日銀の異次元緩和は継続されており、日銀のバランスシートは膨らみ続け、市場から異常ともいえる大量の国債の買い入れを続けている。日銀はこれによって物価目標を達成するとしていたが、いっこうに達成する気配はない。

日銀は物価目標の達成時期を延期し続け、さらに質的・量的緩和の拡大やマイナス金利の導入、長期金利を政策目標に据えたりと手を変え品を変え、次元が入り組んだ妙な金融政策を打ち立ててしまっている。これが物価に直接影響していないことは、どう見ても明らかではなかろうか。

いまのところ国債価格が急落するといった副作用が出ているわけではない。だから効果の有無はおいといて、異常な政策を日銀は続けているわけだが、効果が出ない以上は効果が出るかもしれない新たな手段(財政政策含む)を講じるのではなく、いったん異常な政策そのものを後退させて、将来のリスクを摘む必要もあるのではなかろうか。それを本来警告するはずの長期金利の機能を日銀自ら摘み取ってしまっていることも確かではあるのだが。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-30 09:46 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー