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カテゴリ:日銀( 1071 )

中国の国債先物市場に異変が生じた理由とは

 中国の国債先物市場に昨年10月あたりから異変が起きているとロイターが報じている。昨年11月の5年債と10年債の先物の取引高は8200億元と前月から倍増。さらに12月は過去最高の1兆7700億元へと2倍に増えて、わずか3か月間で4倍に膨れ上がった。1月も旧正月の連休があったにもかかわらず、約1兆2000億元と高水準を維持しているという。


 現在のかたちでのデリバティブ、つまり金融派生商品が登場したのは米国のシカゴにおいてである。ニクソン・ショックを経て、1972年にシカゴ商業取引所(CME)で通貨先物取引が開始された。1975年にはシカゴ商品取引所で初めて金利先物が上場され、こののち金融の世界にもデリバティブ取引が世界的に広がって行くことになる。シカゴで始まった先物取引は、江戸時代における日本の大阪(大坂)の堂島における米の先物市場が参考にされたとされる。


 1985年10月に日本において戦後初の金融先物市場として東京証券取引所に上場したのも長期国債先物(債券先物)取引であった。米国に続いて英国そして日本、ドイツ、フランスなどの先進国が国債先物を相次いで導入することとなった。1998年のアジア通貨危機後は、危機によって損害を被った韓国やシンガポール、香港、台湾などの国・地域で国債先物取引が次々と導入される。


 中国も1992年に国債先物取引を導入していた。しかし、市場環境の整備が十分でなかったことなどから、1995年2月23日に上海証券取引所で巨額の決済不履行が発生し、取引が停止に追い込まれた。この事件は先物の対象銘柄番号から「327事件」と呼ばれた。


 その後の中国の国債発行額は年々増加し、規模はアジアで2番目となってきた。市場も整備され、1996年以降は中国において金利の市場化に向けた改革も進展した。このため中国金融先物取引所(中金所)は国債先物取引を2013年9月6日に再開したのである。


 再開したものの、中国の国債利回りが低迷していたことでヘッジの需要は弱く、商いがさほど盛り上がってはいなかった。ところが昨年、中国政府が金融政策を引き締めに転換し、中国の国債利回りが3年ぶりに底を打った格好となったことで、国債先物の取引も盛り上がってきた。


 ただし、この中国の商いの急激な増加の主役は個人とされる。日本の債券先物取引は1985年のスタート当初こそ個人の参加がみられたが、現在はほとんど個人は参加していない。個人向けの債券先物のミニ取引も低迷している。それに対し中国では個人が投機的な目的で参入し、その分、価格変動も大きくなっているものとみられる。


 個人が債券先物取引に参入することは決して悪いことではなく、債券先物取引の裾野を拡げるためにも必要と思う。しかし、個人が先導して国債先物取引を行っているというのは、やや危うい面も感じざるを得ない。



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by nihonkokusai | 2017-02-11 10:57 | 日銀 | Comments(0)

日銀が国債残高の4割を保有する意味はあるのか

 日銀が保有する国債の残高が1月31日現在、358兆1977億円となり(日本銀行が保有する国債の銘柄別残高の合計数字)、1月末時点の国債の発行残高、約894兆3357億円に占める日銀の保有割合は初めて4割を超えた。着実に日銀が保有する国債残高は増え続けている。いずれ発行残高の5割を越える日もくるかもしれない。これがいったい何かを示すのかをあらためて考えてみたい。


 そもそも日銀が2013年4月に量的・質的金融緩和を導入する直前の2013年3月末は11%程度に過ぎなかった国債の保有割合が、4年足らずの間に40%にも増えてしまっている。日銀は何のために、これほどの国債を購入したのか。しなければいけなかったのか。


 それは物価を上げるためではなかったのか。しかし、その物価は上がるどころか前年比マイナスという水面下にいる。これは日銀の国債買入が少なすぎたから、というわけはなかろう。結論から言えば、日銀がいくら異次元の国債買入をしようとも物価は動かせなかった。結果として日銀の大量の国債残高が残り、長期金利を操作するという手段に追い込まれた。これにより国債買入の額を減らすに減らせない状況に追い込まれてしまった。


 それだけではない。金融市場における中核的な存在であったはずの国債の流動性を日銀は低下せしめた。年間発行額のほとんどを日銀が買ってしまうため、一般に出回る国債の量が急減した。


 ところが異常な金融緩和を続けなければいけない状況にいま日本が陥っているわけでもない。日銀は無理矢理に国債の利回りを押さえつけているが、これでいったい何をしたいのかがわからない状況になりつつある。もし日本の長期金利を抑えれば、日米金利差が拡大して円安になり、円安により物価に刺激を与えようとのシナリオであれば、今度はトランプ政権が黙ってないであろう。


 日銀は昨年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和政策の決定により、調節目標をマネタリーベースから金利に差し替えている。それにもかかわらず保有残高の増加額年間約80兆円というめどの数字を残してしまったために、本来削減すべき国債残高を削減できずにいる。いや削減しようとしたが、市場参加者との意志の疎通がうまく行かず、その結果、指し値オペなど含めて、余計に買わざるを得ない状況に追い込まれてしまった。


 日銀はそろそろ腹をくくって、多少の円高となろうが、マイナス金利政策を止めて、80兆円という目処の数字も取り除き、ファンダメンタルに即した長短金利の居所を修正する方針に改めるべきではなかろうか。あくまでこれは引き締め策ではなく、異次元緩和を通常次元に戻す調整として行えば良いのではなかろうか。そうでもしないと今後は矛盾がどんどん拡がるばかりとなりかねない。



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by nihonkokusai | 2017-02-10 09:43 | 日銀 | Comments(0)

日銀の政策委員はイールドカーブ・コントロールをどう考えているのか

 日銀は8日に金融政策決定会合における主な意見(1月31日、2月1日開催分)を公表した。このなかの金融政策運営に関する意見において次のようなものがあった。

 「日本は2%の物価安定目標からほど遠い位置にあるので、米国の金利が上がっても、短期金利をマイナス0.1%に、10年物国債金利を0%程度に維持する形で、イールドカーブ・コントロールを続けるべきである。」

 短期金利をマイナスにし、長期金利をゼロに押さえ込めば何故、物価目標を達成できるのか。この意見のキーは「米国の金利が上がっても」という箇所にあろう。つまり日米の金利差を拡大させることで、「円安」効果を狙っている事を示している。これを知ったらトランプ氏がゴルフ場で文句を言ってきそうである。

 「わが国の経済・物価情勢は着実に改善しているが、海外経済を巡る不確実性等も踏まえると、早急な政策変更には慎重であるべきである。当面は、現行の枠組みの下で、粘り強くその効果を見守ることが肝要である。」

 「早急な政策変更」とは何であろうか。文脈から察するにこれは追加緩和よりも引き締め転換を意識したものとみられる。つまり長期金利には上昇圧力が掛かっているが、長期金利の目標水準の引き上げといった「早急な政策変更」は当面、避けるべきとの意見であろう。これはつまりその分、潜在的な利上げ圧力が加わりつつあるとの見方ともなる。

 「米国長期金利の上昇などを受けて、日本銀行が長期金利の操作目標を引き上げるのではないかとの憶測も聞かれるが、2%の物価安定目標にはまだ距離があるため、現在の方針を堅持することが何より重要である。」

 ここではっきり「長期金利の操作目標を引き上げ」と言及している。物価安定目標にはまだ距離があるためにそれは避けるべきというのは、日米の長期金利差が意識されていることになる。

 「現行の金融政策の枠組みは所期の効果を発揮している 。オペレーションの柔軟な調整等、その運用についても市場は冷静に受け止めている。」

 現行の金融政策の枠組みは所期の効果を発揮していないし(物価はマイナス)、オペレーションの柔軟な調整等、その運用についても市場は冷静に受け止めておらず、慌てた日銀は3日、指し値オペ実施に追い込まれているのだが。

 「グローバルな市場の不透明感が高いもと、些細なことでレベル感は大きく変わり得るものであり、そうした時にイールドカーブのコントローラビリティに対する市場の疑念が高まりかねない。執行部に一定の裁量を持たせ、肌理細かな調節運営を引き続き行うことが重要である。」

 前半部分には同意であるが、執行部に一定の裁量を持たせ、肌理細かな調節運営を行おうとした結果が、ここにきての国債買入を巡るゴタゴタの要因となっている。債券市場のマインドを読みながら、しっかり対話を行った上で、適切な調節運営が求められるが、それがうまくいっているようには思えない。

 「イールドカーブ・コントロールのもとでは、国債買入れオペの金額やタイミング、回数などは実務的に決定され、日々のオペ運営によって先行きの政策スタンスを示すことはないことを、改めてはっきりと説明していくことが重要である。」

 金融政策のスタンスそのものは政策委員が決定することである。ただし、国債買入の継続性に問題も生じ、それに対してテーパリングと映らないよう、金利の上昇圧力が強まる環境のなか、買入額の縮小を図るという、なかなか困難な対応を日銀の執行部に求めているようであるが、それには限界があることも露見しつつある。

 「日本銀行は、短期金利だけでなく、長期金利についても、 2%の物価安定目標を安定的に実現するために操作を行っている。このため、物価が低位で推移するもとで、米国長期金利が大幅に上昇すると、長期金利目標を実現するための金利操作は一層困難度合いが高まる。この点からも、イールドカーブ・コントロールの枠組みを見直すメリットは大きい。資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを秩序だって段階的に低下させていくことが、政策の持続性と市場の安定性を高める。」

 これが正論であると思う。しかし、これはどう考えても緩和策の修正に映ってしまうため、それが建前上できないところにいまの日銀の金融政策の矛盾点がある。  「10年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は適度にスティープであるべきと思う。また、理論的には、国債買入れの進捗とともにストック効果から金利低下圧力がかかるので、金融調節方針と整合的なイールドカーブ実現のためには、市場の反応を慎重に探りつつ減額を模索していけばよい。経済・物価情勢の改善を先取りして長期金利が上昇する場合、市場追随で政策を調整していくのがプルーデントな政策運営と思う。なお、短国買入れについては、市場動向を慎重に見極めつつ一段の減額を模索すべきである。」

 こちらについても同意である。この2つの意見は木内委員と佐藤委員の意見と思われるが、このふたりの委員は7月で任期満了となる。こういった正論から日銀はさらに遠ざかってしまうのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-02-09 09:49 | 日銀 | Comments(0)

日銀が懸念しているのはトランプリスクか

 日銀は1月31日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定した。1月25日の国債買入で予想された中期ゾーンの買入をスキップし、27日には5年超10年以下の国債買入を前回の4100億円から4500億円に増額するなどし、「保有残高の増加額年間約80兆円」というめどの数字を修正、もしくは削除してくるのではとの見方があったが、それは今回見送られた。

 すでに日銀は金融政策の調節目標をマネタリーベースという量から、長短金利という金利に変更しており、国債買入額の「80兆円」という数字にあまり意味はない。むしろ来年度の国債発行額の減少や、物価等のファンダメンタルズの好転による長い金利の上昇に伴う国債への国内投資家ニーズの増加を考慮すると、80兆円という買入はかなり困難になることが予想される。それでも外為市場や株式市場への影響等も考慮するとなかなかこの数字を下ろすことはできないようである。ただし、国債買入における調整は今後も継続されるとみられ、日銀の国債買入はかなり柔軟なものとなるであろうと予想される。

 日銀は31日に展望レポートも公表した。ここでは2016年度と2017年度の経済成長率見通しをそれぞれ上方修正した。2016年は前回10月発表分の1.0%から1.4%に、2017年度は同1.3%から1.5%に上方修正した。また消費者物価指数(除く生鮮食品)の見通しは2016年度分は10月のマイナス0.1%からマイナス0.2%に下方修正したが、ここにきてのコアCPIの足元数値を確認してのものとみられる。2017年度については1.5%という強気の数字を維持している。ただし、2月のコアCPIあたりからプラスに転じると予想されており、1.5%と言う数字はさすがに高いとみられるが一時的にそれに近い数字となることもありうるか。しかし、今後の見通しについては展望レポートで日銀は次のようなリスクも指摘していた。

 「経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい。物価の見通しについては、海外経済や中長期的な予想物価上昇率の動向を中心に、下振れリスクの方が大きい。」

 海外の懸念材料とは、具体的な名前は出してはいないが、いわゆるトランプ米国大統領の登場とトランプ大統領による保護主義的な政策への懸念が挙げられよう。さらには保護主義的な政策がフランスやドイツの選挙などを通じて拡大する懸念を示しているのではないかと予想される。たしかに今年の経済や物価のリスクとして、これは意識せざるを得ないとみられる。

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by nihonkokusai | 2017-02-05 16:14 | 日銀 | Comments(0)

債券市場のマインド読めず、失敗を繰り返す日銀

 2月2日に実施された10年国債の入札は最低落札価格100円07銭、平均落札価格100円12銭と最低落札価格は少し予想を下回り、テールは5銭と前回の3銭からやや流れた。応札倍率は3.62倍と前回の3.59倍を上回るが、結果はやや低調との見方となった。ただし、あくまで「やや」低調であり、それほど悪い結果ではなかった。

 しかし、10年債の0.1%近辺での投資家ニーズは長い年限の国債と比較して割高となっており(日銀の長期金利ターゲットで特に長期金利が押さえつけられた影響)、それほど盛り上がらなかったようである。それに加えて、日銀の国債買入対応として入札する業者も、日銀の今後の国債買入に向けた対応等がトランプ政権のプレッシャーも伴って(円安誘導ととられる政策が取りづらくなる)読み切れていなかったようである。

 ここで市場は日銀のイールドカーブコントロールによる長期金利の居所を改めて探りに来た。日銀のオペタイムは午前が10時10分、そして午後は14時となる。このため、14時前に市場は日銀が想定するとみていた長期金利の上限、0.100%を試しにいったのである。しかし14時に、一部期待したようなオペレーションは入らず、その結果、2日の10年債利回りは0.115%まで上昇した。

 そこであらためて注目されたのが、3日の10時10分の日銀による国債買入のオファーとなった。長期金利が0.1%という節目を越えたことで、日銀がどのような対応を行うのかが焦点となった。

 3日の10時10分の日銀の国債買入のオファーは、国庫短期証券買入1兆円、国債買入(残存期間1年以下)700億円、国債買入(残存期間5年超10年以下)4500億円となった。

 これをみて外為市場ではドル円が113円台にまで一時上昇したが、これは31日に発表された日銀の「当面の長期国債等の買入れの運営について」で5年超10年以下を4100億円としていたが、それがこの日のオペでは4500億円に再び増額したため、アルゴが単純に日本の長期金利低下による円安として反応したのではとの観測があった。これは見方を間違えていた。債券市場関係者の反応は債券先物をみるとわかるとおり、「売り」であった(長期金利で言えば上昇)。

 債券市場関係者が「売り」で反応した理由は、5年超10年以下のところの増額が前回と同様の400億円にとどまったこと(最大5300億円まで、つまり1200億円増まで可能)、さらに金利を抑えたいのであれば、ここは普通に超長期ゾーンをオファーすべきところ、それがなかったことによるとみられる。指し値オペについては、非常手段との認識でないとみられていたが、それでも多少の警戒があり、現実には指し値オペもなかったことで債券先物を売りやすくさせた面もあったのかもしれない。個人的にも予想していたのは5年超10年以下の400億円増額プラス超長期の国債買入程度であった。しかし、それを行っても日銀はある程度の長期金利の上昇を容認しているとの認識のもとで、10年債利回りが跳ね上がる可能性は十分にあるとみていた。

 つまり昨日の10時10分の日銀の国債買入の中身をみて、超長期も入らず、5年超10年以下も400億円の増額に止めたことで、ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められ、債券先物が大きく売られることになった。債券先物は昨年12月16日につけた149円38銭も下回ったことで、あらためて下値模索の様相となった。10年債利回りは一時0.150%に上昇したが、この長期金利の上昇には別の伏線もあった、3日に公表された金融政策決定会合議事要旨(12月19・20日分)には、国債買入れの運営について下記のような意見があったのである

 「複数の委員は、市場では、「ゼロ%程度」との長期金利操作目標の上限・下限をそれぞれ+0.1%・-0.1%とする見方があることを指摘したうえで、そうした画一的な基準を設けることは適当ではないとの認識を示した」

 この複数の委員は単純に考えると佐藤・木内委員にみえるが、2人の委員だけでなく日銀の意向とも言えるものではないのかと市場はやや疑心暗鬼ともなっていたとみられる。日銀の想定している長期金利のターゲットの上限はプラス0.1%と厳密に置いているわけではないということを、日銀はオペレーションで示してきたのではないのか。それが10年債利回りの0.150%までの上昇に繋がったとの見方もできなくなかった。      

 この際に私は当日14時の指し値オペの可能性について質問を受けた。しかし、上記のことから想定されるのは、日銀はある程度の10年債利回りの上昇は黙認する可能性であり、その仮定の上で「ない」だろうと答えていたが、知り合いの市場関係者などから話しを聞くと、いや「ありうる」との答えが返ってきていた。

 なぜありうるのか、その理由を考えてみると、日銀はもしかすると400億円程度の増額で長期金利の上昇にブレーキを掛けられると信じていたのかもしれない(状況を考えるとそれはかなり債券市場の地合の読み方を間違えたともいえる)。もし日銀が読み間違えていたのであれば、10年債利回りの0.15%までの上昇は想定以上のピッチとなる上、ここで歯止めを掛けておかないと、0.200%あたりまで簡単に上昇するリスクが生ずる。それならば後場、14時のオペタイムでの0.150%での指し値オペの可能性は考えられるということになる。

 結果として日銀は通常のオペタイムではなく12時半というイレギュラーな時間帯に新「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。11月17日に初めて実施された指し値オペは実勢利回りが指し値よりも低下したため応札額がゼロとなり、いわば空砲であった。しかし、今回の国債買入は、対象が残存期間5年超10年以下の固定利回較差は0.006%(前日の引け値対比)となり、10年利付国債345回でみた買入利回りは0.110%となった。前場の10年債利回りの引け水準が0.140%近辺となっていたので、今度は空砲ではない。

 ここにいくつか問題点があった。ひとつは時間帯である。なぜ通常の14時でなく12時半だったのか。後場始まって何も手を打たずば、すぐにでも10年債利回りが0.200%あたりまで利回りが急上昇してしまうのを避けたいがため、後場いちで手を打ったのか。それとも黒田日銀特有のサプライズ狙いなのか、黒田総裁が国会に出席する予定の関係等も噂されたが、ようするに慌てたようである。それならば何故、朝方に手を打たなかったのかと言う疑問も沸く(あの程度の国債買入の調整でおとなしくなると思っていたのか、となれば読み間違えとなる)

 そしてなぜオペの水準を10年345回でみた0.110%にしたのかと言う疑問も残る。0.100%では決定会合議事要旨の内容と異なることにもなるが、それでも妙な刻みである。前日の引け0.115%を意識したのか。なぜ0.150%あたりにしなかったのか。0.150%であれば空砲となってしまうからかもしれないが、0.110%だと前場の国債買入の5年超10年以下の買入をした業者は、ここで日銀に売らず、指し値オペで入れたほうが儲かったこととなる。ちなみに指し値オペの応札額は7239億円となっていた。

 指し値オペの実施中、なかなか面白い現象が起きていた。業者間でのポジション調整の場でもある日本相互証券での10年345回の板で、0.110%のビッドが次々と打たれ一時オファーとなっていたのである。手数料等を考えると日本相互証券で0.110%で売らずとも日銀の指し値オペで売ったほうが費用は少ないはずなのにである。

 結果として3日の指し値オペは奏功し、10年債利回りは0.1%を割り込むこととなった。しかし、これで済むとは思われない。今後もこのようなドタバタが繰り返されることも予想される。日銀の相場の読みのまずさも露見してしまったことで、市場参加者は今後さらに日銀の国債買入オペが読みづらくなってしまった。そもそも長短金利操作付き量的・質的緩和という名前の長さからもわかるとおり、何でもくっつけてしまった日銀の金融政策は債券市場を蔑ろにした。そして長期金利はコントロールできると豪語した日銀だが、その市場マインドすら読めない日銀が果たして今後も的確に長期金利をコントロールできるのかという疑問を残すこととなった。

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by nihonkokusai | 2017-02-04 15:22 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入の減額は継続か

 日銀は1月31日の金融政策決定会合では、金融政策について賛成多数で現状維持を決定した。今回も長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)と資産買入れ方針それぞれに、佐藤委員と木内委員が反対した。両委員とも今年7月が任期満了となる。総裁の後任人事の行方が取りざたされているが、個人的には佐藤・木内委員の後任の方が少し心配である(ここにリフレ派を入れるとかなりややっこしくなる)。

 それはさておき、注目された「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ」との文言は削減も修正もされなかった。すでに調節目標が量から金利に移行しており、形骸化した数字で現実からも乖離しつつあるが、簡単には外せないとの認識かとみられる。なぜかこれについての質問も総裁会見では一回程度しか出なかった(何故だろう)。

 そしてもうひとつ注目された夕方公表の「当面の長期国債等の買入れの運営について」であったが、こちらもまったく変更はなかった。いや1か所だけあった。それは5年超10 年以下の「1月最終回」分が4500億円となっていたことである。これが2月初回では4100億円と元に戻されている。つまりこれから伺えることは5年超10年以下の400億円の増額は一時的な金利上昇(もしくはその懸念)に対応するものであったといえることである。

 1月の日銀の国債買入で最も注意すべきことは、当然ながら1年超5年以下が1回分スキップされていたことである(金額は8200億円分もあった)。それは昨年12月の段階で1年超5年以下の回数表示をそれまでの6回程度から5~7回程度と修正されていたことから、用意周到に準備されていたことも伺える。つまり日銀としては金融政策については手をつけず、さらに画餅となっている80兆円という数字も変更せずに、国債買入のペースを今後の需給を睨んで調節してきた格好となる。

 当然ながら金融政策は企画局が立案し決定会合で政策委員が決定する形式となっているが、日々の国債買入については金融市場局の仕事となる。金融政策の範疇を超えないところでの必要な調整を行うことが求められ、その結果が1月の中期ゾーンの買入スキップということになったのではなかろうか。

 ところがここにあらたな不透明要因が現れてきた。米国のトランプ大統領である。トランプ大統領は31日にホワイトハウスでの製薬会社幹部との会合で、中国や日本が市場で何年も通貨安誘導を繰り広げ米国はばかをみていると発言。資金供給と通貨安誘導で有利な立場にあるとも主張し、日銀の量的緩和政策などを念頭に置いて批判した可能性が出てきた。

 過去の歴史を見ても日本は米国の圧力を無視できない。その意味では、実勢にあった買入の量の調節はやりやすくなったとも言えるのかもしれない。次回会合でトランプ氏の意向を反映し、80兆円という数字を取り除き、国債買入については今後減額する用意があるといった意向を示すことも可能になるためである。ただし、トランプ氏の問題はそんなところにあるものではないことも確かではある。

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by nihonkokusai | 2017-02-02 09:57 | 日銀 | Comments(0)

追い風受けた日銀の金融政策の行方

 1月30日から31日にかけて今年最初の日銀金融政策決定会合が開かれる。この会合では経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートも同時に発表される。

 黒田総裁は12月26日の講演で、「日本経済は、これまでは、いわばグローバル経済の「逆風」の中で奮闘してきましたが、世界経済が新たなフェーズに入る中で、これからは「追い風」を受けてさらに前進していくことが可能な状況になってきていると思っています。」と強気の姿勢を示した。これを受けて展望レポートでは経済成長率や物価の見通しを引き上げる可能性も指摘されている。

 黒田総裁の指摘した「追い風」とは、いわゆるトランプ相場と呼ばれた円安・株高の流れを意識したものと思われる。もちろんこの背景にある百年に一度とされた大きな金融経済危機からの脱却も考慮に入れてのものとなろう。

 しかし、トランプラリーと呼ばれた動きはいったん調整局面を迎えた。それを先導した米長期金利の上昇やドル高、さらには米国株式市場の上昇の動きは昨年12月半ばあたりで一服し、その後は反動安となった。この調整の動きがどの程度続くのか。それとも単なる調整ではなく、実際のトランプ氏の大統領就任でピークアウトしてしまった可能性も全くないとは言えない。

 今後の米国経済の動向はトランプ政権の政策も大きく関わってくるであろうことは確かで、アメリカ・ファーストと呼ぶ、自国優先主義の政策が米国経済、しいては世界経済にとってどのような影響を及ぼすのか。市場はこのような保護主義的な政策に対してはリスク要因と捉えている。

 それでもトランプ政権の政策の目標は米国の雇用環境をさらに良くしようとさせようとするものであり、ここにきての米国の消費者物価指数の上昇もあり、物価がFRBの想定以上のピッチで上昇する可能性がある。そうなれば年内の複数回の利上げを可能性にさせよう。

 トランプラリーの反動は一時的なものとなり、米長期金利が3%に向けて上昇してくればドル円も再度上昇基調に転じることも予想される。日本の消費者物価も円安や原油価格の上昇を背景にいずれプラスに転じてこよう。そうなると日銀の物価目標に向けて、フォローの風が再び吹く可能性はある。

 それは日本の長期金利にとって上昇要因ともなるが、果たして日銀はゼロ%程度という長期金利の目標をそのまま維持し続けるられるのか。このあたりも今後の日銀の金融政策の動向をみる上でも注目要因となる。

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by nihonkokusai | 2017-01-31 08:42 | 日銀 | Comments(0)

日銀による国債買入の調整が債券市場参加者を疑心暗鬼にさせている

 25日の日銀の国債買入での中期ゾーンのスキップが、債券市場参加者を疑心暗鬼にさせつつある。日銀が何故スキップをしたのか、その理由が明確に見えてこないためである。

 25日夕方のロイターの記事によると、日銀幹部は同日のオペの内容について「最近のオペの結果や国債市場の需給環境を勘案して決めた」と語ったそうである。また、オペ運営に関して「国債買入オペの金額・タイミング・回数は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すために適切に対応する」と述べたとされる。

 27日の10時10分に日銀は国債買入をオファーした。国庫短期証券、1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下。1年超3年以下、3年超5年以下は予想通りで、金額も前回と同じ4000億円、4200億円。これで中期ゾーンの買入は今月5回目となる。

 スケジュール上、30日は2年国債入札があり、31日は日銀の金融政策決定会合の結果の出る日であり、両日に中期ゾーンの国債買入がオファーされる可能性は極めて薄い。これによって今月の中期ゾーンの買入は5回に止まり、12月までの6回から1回分スキップされる。

 ところが27日の国債買入では「5年超10年以下」について金額を23日のオペで4100億円となっていたものを4500億円と400億円増額させた。これを市場は好感し、債券先物は149円90銭台から150円台に上昇し、ドル円も115円台に乗せてきた。

 これは25日の国債買入での中期ゾーンスキップの代わりに、5年超10年以下を増額したとみえなくもない。これはこれでむしろ中期は1回スキップされるとの見方が強まることになる。参考までに月ベースに直すと中期ゾーン1回分のスキップは8200億円の削減、5年超10年以下は400億円6回で2400億円増とトータルでは減額となる。

参考、日銀サイトの「国債買入」
https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_f/index.htm/
参考、日銀サイトのオペレーション(日次公表分)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_o.htm

 25日の債券市場は日銀の中期ゾーンの買入スキップを受けて売られたが、押し目買いが入り少し戻していた。ところが25日の米国市場でダウ平均は壁となっていた2万ドルを突破し、米10年債利回りも2.5%台に上昇した。これを受けて26日の円債は下落し、10年債利回りも0.085%と25日つけた0.080%を上回った。20年債は0.660%、30年債は0.840%、そして40年債利回りは1%台に乗せていた。

 このあたりも意識して27日に日銀は微調整というか金額としてスキップ分の多少の穴埋めと長期金利の0.1%も意識しての5年超10年以下での増額を行ったのであろうか。このゾーンは先物にも直結するので、先物の買い戻しを誘うことも意識したのかもしれない。

 しかし、これでまた市場関係者は余計に混乱しつつあるのではなかろうか。いったい日銀は何をしたいのか、何を考えているのかと。

 日銀が何をしたいのかは、昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和の決定である程度、明らかになっている。量では物価が動かない、マイナス金利は副作用のほうが意識されている。そこで量から金利に操作対象を戻して、なおかつ長期金利を操作目標に加えた。

 本来であればマネタリーベースとともに巨額の国債買入についても修正を加えるべきであった。米国の金利上昇やその背景にある物価の上昇等を考慮すれば、日銀のマイナス金利政策そのものが時代遅れのものとなる。来年度の国債発行額の減少や日本の国債の利回り回復傾向による国債への投資家ニーズの回復も予想され、巨額の国債買入継続が難しくなることが予想される。それらを考慮した結果が中期ゾーンのスキップの本心だとしても、日銀としては為替市場などへの影響も意識され、緩和に前向き姿勢も崩せない。できることならマイナス金利政策もやめて、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとするとの文面も削除すべきであろうが、利上げやテーパリングとみられる可能性があり、それが為替市場にも影響が出ることを恐れて踏み込めない。

 これが結果としての27日での5年超10年以下の400億円の増額の調整理由ではないかとも予想される。看板は下ろせないが先行きを考えると出来る範囲で調整を入れざるを得ない。しかし、それが市場参加者との意思疎通を余計に悪くさせる要因ともなっているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2017-01-28 10:36 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入オペが債券市場を揺るがした理由

 1月25日の10時10分、日銀は国債買入をオファーした。内容は残存期間10年超25年以下を1900億円、残存期間25年超を1100億円、物価連動債を250億円となった。債券市場参加者はこれを確認して驚き、債券を売り急いだ。

 債券先物は150円を割り込み、149円85銭まで下落した。10年債利回りは0.080%と昨年12月19日以来の水準に上昇し、5年債利回りもマイナス0.095%、2年債利回りもマイナス0.195%をつけ、20年債利回りは0.655%、30年債利回りは0.830%、40年債利回りは0.995%に上昇したのである。10年債利回りは前日24日の引けが0.040%であったので一気に倍になった格好である。

 いったい何が起きたのか。これは毎日、日銀のオペに対応している参加者でないと即座には反応できないものであったかと思う。私はこの時間帯は昼のコラムを書いている。値動きも途中で確認はしているので、25日のこの動きにびっくりしたが、どうしてなのかはすぐには理解できなかった。

 少し時間が掛かってしまったが、次第にその理由がはっきりしはじめた。そのひとつが10年超25年以下の1900億円、残存期間25年超の1100億円という金額にあった。ここにきて超長期債の利回りが上昇してきており、12月に日銀が国債買入増額に踏み切った前の水準に上昇していたことで、一部に増額の期待があったようなのである。急激な利回り上昇ではなかったことで、増額はないと自分では思い込んでいたが、その増額期待が裏切られた格好となったようである。

 しかし、主因はこれとは違うところにあった。25日の日銀の国債買入の市場参加者の予想は、そもそも残存10年超25年以下と残存期間25年超に加えて「1年超3年以下」、「3年超5年以下」も含まれていたのである。もちろん市場の事前予想通りに日銀が買入を行うわけではなく、多少ずれることはままある。しかし、ここにカレンダーの問題があった。

 1年超3年以下と3年超5年以下は一応セットとなっており、1月はすでに4回の買入が実施されていた。12月には6回実施されており、1月も当然6回あると市場参加者は読んでいた。26日以降のカレンダーをみると27日に1年超3年以下、3年超5年以下を含めた買入が予想されているが、もう25日の買入でスキップされたことで、残り一日が見つからない状態となってしまったのである。

 これが月初めや月半ばであれば、調整が利くかもしれないが、1月も押し迫っている上に26日には流動性供給入札、30日には2年国債入札、30~31日は日銀の金融政策決定会合が予定されていたことで、市場参加者が、えっとなったのである。通常、利付国債の入札日や決定会合当日には日銀は国債買入をオファーしない。ただし、流動性供給入札日や決定会合初日にはオファーの例はあった。このため26日の可能性はあったが流動性供給入札が予定されているだけでなく、中期ゾーンの買入を2日続けて行ったケースは過去ない。現実に26日に日銀は国債買入を見送った。

 27日に中期ゾーンを含めて、予定通り実施されるとして、30日には2年国債入札、31日は決定会合の結果が出る日で中期ゾーンの買入オファーの可能性は極めて薄い。つまり、日銀は1月の1年超3年以下、3年超5年以下の買入を1回スキップするのではとの観測が強まったことで、25日の10時10分過ぎに債券が大きく売られたのである。

 1年超3年以下は一回当たり4000億円、3年超5年以下は同4200億円程度の買入を行っているので、1回分と言えども合計8200億円の買入額が12月と比べて減額となってしまう。年間にすれば8200億円の12か月分、つまり10兆円規模となる。これはテーパリングなのではないかとの観測が出てもいたしかたない。

 日銀はこれまで国債利回りの上昇に対して、指し値オペや小幅の増額などで調整を行っていたが、今回は何もしないことによって大きな金額の調整を行おうとしているのか。

 何故日銀は中期債の買入を1回スキップするのか(本当にするのかは31日までわからない)。その前兆といえるものは確かにあった。日銀は12月30日に公表された当面の長期国債等の買入れの運営についての1月分から、それまでの中期ゾーンの買入を「6回程度」から「5~7回程度」に修正していた。これは5回もありうるということを事前に示していたのかもしれない。

 今回のスキップの理由としては2年債利回りの低下なども指摘されているが、それほど急激に低下していたわけではない。ただしその裏側には中期ゾーンへの海外投資家などからの強い需要もあったことになり、市場に流通する中期債がタイトとなっていた。日銀の巨額の買入が続き、いずれ今後のオペでの札割れリスクもあって、少しペースを落とそうとしたのかもしれない。

 日銀は昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和の決定において、操作対象をマネタリーベースという「量」から、長期と短期の「金利」に戻している。しかし、いわゆるリフレ派と呼ばれる委員の賛同を得る必要もあってか、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」とともに、国債買入についての量を保有残高の増加額年間約80兆円をめどとするとして80兆円という数字を残している。ただし、あくまで「めど」であり、いまのペースでも80兆円は大きく割り込み70兆円台になると予想されている。ここでもし今後中期の回数を月5回とすると60兆円台となってしまう。

 来年度の国債発行額は中期ゾーンを含めて減額されることもあり、国債の利回りも超長期債主体に上昇しつつある。日銀にとっては巨額の国債買入を継続するのは次第に困難になることが予想される。そのため事前に手を打ったとの見方もできる。そうであれば、もしかすると31日の日銀の金融政策決定会合では、「買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ」との部分が削除もしくは修正される可能性がありうるということなのであろうか(問題はリフレ派委員を説得できるかとなるのだが)。

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by nihonkokusai | 2017-01-27 09:57 | 日銀 | Comments(0)

トランプ政権登場による日銀の金融政策への影響

 トランプ新米大統領の政策が如何なるものなのかは、いまだはっきりしていない面はあるが、選挙期間中からスローガンとしていた「アメリカ・ファースト」と呼ぶ自国優先主義、反グローバリゼーションを強く打ち出してくることが予想される。トランプ大統領は早速、TPPから「永久に離脱する」とした大統領令に署名した。

 トランプ氏は大統領選後初の会見で貿易赤字の相手国として、中国とメキシコとともに日本の名前を挙げていた。これに対して麻生財務相は13日の閣議後会見で「日本やメキシコよりドイツの方が(米国の赤字は)上ではないか。なぜドイツが出ていないのか」と疑問を呈した。

 日本政府は2月上旬の日米首脳会談開催を目指し、安倍首相の訪米に麻生副総理兼財務相が同行する方向で調整を進めている。麻生氏の同行は米側からの要請によるものとされる。

 果たして麻生氏の同行を米国が何故要請したのかはわからない。あの独特のスタイル(服装)をトランプ氏が気に入ったからというわけではないと思うが、貿易赤字の相手国として日本が意識されている可能性は十分ありうる。

 財務省が発表した2016年通年の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4兆741億円の黒字だった。貿易黒字は東日本大震災前の2010年以来6年ぶり。対米黒字額は6兆8347億円の黒字となり、2年ぶりに減少したものの、巨額の黒字であることに変わりはない。

 次期財務長官に指名され承認待ちのスティーブ・ムニューチン氏は、過度に強いドルは経済に短期的にマイナスの影響を与える可能性があると発言するなど、トランプ政権はドル安政策は取らないまでもドル高に対して警戒していることも確かであろう。

 そうなると日本が円安政策を進めるようなことは今後、かなり困難となりかねない。米国がドル安誘導をすることはないとしても、日本の円安誘導と取られかねない政策もしづらくなる。

 ドル円は日米金利差だけで動くものではないが、ここにきて日米の長期金利のスプレッドに連動するような動きとなっている。トランプ政権は国内雇用を改善させようとしており、米国の物価上昇もあり、FRBは年内複数回の利上げの可能性がある。米長期金利は上昇基調にいったん調整が入ったものの、FRBの利上げが可能となれば、いずれ3%に向けて上昇していくとみられる。

 そんななか、果たして日銀は長短金利操作付き量的・質的緩和政策で、特に長期金利をゼロ%近辺で抑え続けられるのか。

 25日の日銀の国債買入では、一部に期待があった超長期債の買入増額は見送られた。さらに中期の買入も予想されたが、それが見送られたことで、債券先物は久しぶりに大きく売られる場面があった。40年債利回りは1%近くまで利回りが上昇した。

 日銀にとってトランプ政権の登場は、結果として出口政策を取らざるを得ない状況に向かわせることになるのかもしれない。消費者物価もプラスに改善することも予想され、外部環境もそれを促すのではなかろうか。追加緩和手段に乏しく、今後の国債買入についても限界が意識されるなか、長短金利操作付き量的・質的緩和政策を取らざるを得なくなった日銀にとっても、これはむしろ好都合かもしれない。問題はそれをどのようにしてスムーズに進められるのかとなり、市場参加者との対話も重視されることになる。

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by nihonkokusai | 2017-01-26 09:53 | 日銀 | Comments(0)
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