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カテゴリ:日銀( 1069 )

透明性を高めることでスムーズな国債買入減額を可能にさせた日銀

日銀は2月末に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」から、国債買入の日程を示した。市場の注目度の高い1年超5年以下の中期ゾーン(1年超3年以下、3年超5年以下)と5年超10年以下の長期ゾーン、そして10年超の超長期ゾーン(10年超25年以下、25年超)の3つのゾーンの買入オファー日を事前に公表することとした。

これまでは国債買入についてはそれぞれのゾーンの回数だけを示していた。このため、いつどのゾーンの買入がオファーされるのかは、市場参加者が過去のオファーの例などを参考に予想するほかなかった。日銀の金融政策決定会合の日と利付国債入札日は入らないとか、同じゾーンを2日続けてオファーはないといったことが暗黙の了解とされ、それを除いた日でゾーン毎の日程を予想していたのである。

昨年12月末の「当面の長期国債等の買入れの運営について」で予想回数に幅を持たせたあたりから、市場参加者は何かしら日銀の意図があるのではないかと疑心暗鬼になった。中期ゾーンが6回程度から5~7回程度に、長期ゾーンが6回程度から5~7回程度に、超長期ゾーンが5回程度から4~6回程度とされたのである。「程度」という言葉があるため、特に大きな変更ではないとの見方もあったが、これはやはり目的があったことが後でわかる。

それがわかったのが1月25日の日銀の国債買入であった。この日の市場参加者の予想は超長期ゾーンに加えて中期ゾーンも含まれていた。もちろん市場の事前予想通りに日銀が買入を行うわけではなく、多少ずれることはままある。しかし、ここにカレンダーの問題があった。

中期ゾーンは1月はすでに4回の買入が実施されていた。12月には6回実施されており、1月も当然6回あると市場参加者は読んでいた。26日以降のカレンダーをみると27日に中期ゾーンを含めた買入が予想されているが、もう一日が見つからない状態となってしまったのである。

26日には流動性供給入札、30日には2年国債入札、30~31日は日銀の金融政策決定会合が予定されていたことであと1日が見つからない。結局、1月の中期ゾーンは1回分スキップされたのである。市場参加者は12月末に公表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」の意図が読めず、いきなり中期ゾーンを1回分スキップ、つまり減額されたことで、ややパニック状態に陥った。2月2日には長期金利上昇抑制のため、指し値オペが実施されている。

日銀にとり、来年度の国債発行額の減額等もあって国債買入の減額は避けられない。しかし、それを表立って示すことも、テーパリングと認識される懸念があってできない。そこで「当面の長期国債等の買入れの運営について」でそれとなく示唆したことでスキップという手段を取ったとみられる。しかし、市場参加者は減額の必要性は認めていても、闇討ちのような手段にむしろ驚いてしまったのである。

このため日銀は国債買入の日程を公表するとともに、市場参加者には長短金利操作の目標があるため長期ゾーンはさておき、中期ゾーンや超長期ゾーンの減額の可能性も1回あたりのオファー金額の調整などで日銀は意識させようとした。

少なくとも今後はスキップという手段を講じることはなく、一回当たりの多少の減額は需給を読みながらとの解釈も可能なことで、市場はこの形式での減額については特に動揺することはなかった。これにより日銀は4月以降の国債発行額も意識しながらの微調整を行うことが可能となったのである。


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by nihonkokusai | 2017-03-16 09:53 | 日銀 | Comments(0)

免震化工事を実施中の日本銀行本店本館の豆知識

 国の重要文化財に指定されている日本銀行本店本館は1896年2月に竣工した。日銀の開業当初の店舗は永代橋のたもとにあったそうであるが、手狭なうえ都心からやや遠かったこともあり、開業の翌年に店舗の移転が決定されたそうである。


 日銀の設立に際して、創設者でもある松方正義はフランス蔵相レオン・セーからモデルとしては比較的設立が新しいベルギー国民銀行が良いのではないかといった助言を得ていた。このため、ベルギー国民銀行がモデルにされたが、建物そのものもベルギー国民銀行を参考にしたとされている。ちなみに、本館建物を上空からみると円の形に見えるが、当時の「円」は「圓」を使っていたことで偶然である。


 日本近代建築界の先駆者であり、東京駅も手掛けた建築家の辰野金吾が設計し、建設事務主任となっている。監督は安田財閥の祖である安田善治郎である。さらに建設事務主任となったのが、あの高橋是清であった。


 高橋是清は、森有礼の友人で農商務省次官の前田正名が持ち込んだペルーの銀山開発の話に乗って、農商務省を辞して鉱山経営のためにペルーに赴くものの、騙されて無一文になってしまった。さすがに責任を感じていた前田は高橋に第三代日銀総裁の川田小一郎を紹介し、高橋は日銀に入行することとなる。まずは現場からとの高橋の意向もあって建設事務主任となったのである。ちなみに、辰野金吾は唐津の洋学校での高橋是清の教え子でもあった。


 日銀本店工事では高橋是清の力が存分に生かされ、大幅に遅れていた工事はほぼ予定通りに進捗した。この実績が高く評価され、高橋は入行の翌年には全国二番目の支店となった日銀西部支店の初代支店長となり、横浜正金銀行本店支配人となっている。その後、日銀総裁となり大蔵大臣、さらには首相にもなっている。


 日銀本館の建設にあたり、1891年に発生した濃尾地震の教訓から、高橋是清の指示で建物上部を軽量化し耐震性を高めた。このため、1923年の関東大震災でも建物そのものへの被害は限定的だったようである。しかし、火災により創業以来の貴重な資料とともに、2階の廊下の両側にあった総裁の肖像画もすべて焼失した(現在展示している肖像画はその後再製されたもの)。


 日銀本店本館の建物は1974年に国の重要文化財に指定された。


 関東大震災にも耐えた本館であるが、その後、復旧工事や改修工事も行っている。しかし、東日本大震災を契機に首都直下型地震等による被害想定が切り上げられたことを踏まえ、更なる耐震安全性の確保を図るため、2016年10月から免震化工事が行われている。


 日銀本館の建物は、鉄筋や鉄骨を使うことなく、外壁の石と内側の煉瓦をともに積み上げて出来ており、この建物が分厚く強固なコンクリートのまな板の上に載っている。今回の免震化工事では、その板の下を掘り下げ、そこにできたスペースに免震装置を設置するという異例の方法をとっている。工事の終了は2019年の夏頃を予定している。(以上、日銀サイトや拙著の原稿などから一部引用)


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by nihonkokusai | 2017-03-14 09:54 | 日銀 | Comments(0)

日銀の利上げの可能性、意外にハードルは低い?

 FRBのイエレン議長はシカゴで行った講演で「今月のFOMCで、雇用とインフレがわれわれの予想に沿って引き続き進展しているかどうか検証する」とし、引き続き進展していれば「FF金利の一段の調整が適切となる公算が大きい」と述べた(ロイター)。


 FRBの金融政策の調節目標は金利に戻しており、その金利とはフェデラルファンド(FF)金利である。つまりイエレン議長のこの発言は、今月14、15日に開かれるFOMCで追加利上げが決定されることを示唆したものである。


 3日に総務省が発表した1月の全国消費者物価指数は、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.1%の上昇となった。プラスとなったのは2015年12月以来、13か月ぶりとなる。日銀の物価目標であるコアCPIの前年比がプラスに転じても、まだ目標の2%にはほど遠い。日銀はこれが2%になるまで現在の長短金利操作付き量的・質的緩和政策を続けると言っている。


 こういった状況のなかにあって日銀の佐藤審議委員は下記のような発言をしている。


 「(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)は毎回の会合において次回会合までの操作目標水準を都度決定する柔軟な仕組みである。その下で、長期金利操作についてはその時々の経済・物価・金融情勢やそれらの変化のモメンタムを勘案しながら、最適なイールドカーブの形状を政策委員会で判断している。」


 「仮に経済・物価情勢が望ましい方向に変化し、また市場がそれに応じて、ないしはそれを先取りして変化しているという認識に政策委員会が至れば、市場の動きを追認する形で操作目標水準を柔軟に調整していくことが適当と思う。」


 念のため、この意見は日銀の政策委員の総意ではなく、あくまで佐藤委員個人の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する認識とみられる。しかし、現実に足元物価が上昇基調に転じ、米国の追加利上げにより米長期金利が上がるなど情勢が変化すれば日本の長期金利にも上昇圧力が加わる可能性は出てくる。


 いまのところ3月のFOMCでの利上げ観測が強まっても、米長期金利は2.5%がひとつの壁となっている。しかし、いずれ3%を目指して再度上昇する可能性もありうる。


 佐藤委員は次のような発言もしている。


 「長期金利操作に関する政策実務上のプラクティスが必ずしも確立しているとは言い切れない現状では、操作のタイミングや幅などは、無論、政策委員会の判断事項ではあるが、操作に先立っては市場との入念な対話によりサプライズを避けるなどの周到な配慮も必要と私は考える。 」


 この場合の操作とは長期金利を含めた目標金利の調節、つまり利上げとなる。日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和という「柔軟な」政策に移行したことで、実は利上げのハードルを低めたようにも思われ、それは佐藤委員も認識しているとみられる。


 むろん黒田総裁などは長期金利の操作目標の引き上げなど、まったく考えていないとの認識であろう。しかし、経済・物価情勢が望ましい方向に変化してきた際にはいずれフレキシブルな対応が市場から求められる可能性がありうる。そのタイミングは意外に早期に出てくる可能性がある。



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by nihonkokusai | 2017-03-07 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀の国債買入の行方、市場との対話がより重要に

 2月28日の夕方に日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。今回からオペ通告日を事前に発表することとなり、1年超5年以下の中期ゾーンは6回、5年超10年以下の長期ゾーンも6回。そして10年超の超長期ゾーンは5回となる。1月は1年超5年以下の中期ゾーンは5回と12月の6回から減額したが、2月は6回に戻し、3月も6回となる。


 こちらも注目されていた3月初回の金額であるが、どうやら今回から初回のオファー金額は提示しないようである。買入日程の発表で不透明要素がひとつ減った格好ながら、金額に関しては不透明要素が増えた格好となる。


 日銀は今年1月の国債買入で中期ゾーンを一回分スキップした。これをきっかけに債券市場は動揺した。日銀は国債買入を減額しようとしており、ある程度の長期金利の上昇は容認するのではないかとの観測が出た。日銀は長期ゾーンの買入を一回程度400億円増額し、金利上昇は抑制しようとしたが、市場の動揺は収まらず、その結果、2月3日に10年債利回りが0.150%まで上昇し、日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に「指し値オペ」をオファーした。これで市場の動揺は収まるが、日銀は2月10日の国債買入で超長期ゾーンを100億円ずつ増額し、超長期債の利回り上昇も抑えようとした。


 日銀が何故、1月に中期ゾーンの買入を一回スキップしたのか。これは4月以降の来年度の国債発行額の削減を見据えたものであったと想像される。しかし、これはテーパリングと認識されると円高や株安、さらには長期金利の上昇を招く恐れもある。国債買入の減額はいずれ必要になろうが、2月の債券市場の動揺で結果として増額となってしまったことになる。


 いまの日銀の金融政策である長短金利操作付き量的・質的緩和政策では、量を残した上で長期金利の目標値を設定している。これはリスク回避の動きやデフレ圧力が強まる際には機能したかもしれないが、景気や物価がしっかりするなど正常な状況となり、海外要因や物価動向などによる金利に上昇圧力が加わると長期金利を押さえ込むことも難しくなる。その結果、大量の国債をさらに買い入れなければならない懸念も生じる。


 4月以降の国債需給はよりタイト化することが予想されるため、このままのペースで日銀が国債買入を継続できるのかという疑問も生じよう。今後は物価の上昇も予想される。このため長期金利の目標値に対して幅を持たすなり、国債買入を減額しても市場に動揺を起こさせないようにするためのより一層の市場との対話も必要になってくるのではないかと予想される。



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by nihonkokusai | 2017-03-06 09:20 | 日銀 | Comments(0)

日銀が国債買い入れ日の事前公表をはじめた理由

日銀は主にその月の最終営業日に「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表している。2月28日の夕方に発表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」には、これまで回数だけだったものから、具体的な国債の買い入れ日も表記された。

日銀のサイトにある「国債買入れ」

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_f/index.htm/

この日銀の国債買入を巡って、国債を中心に売買している債券市場参加者が、調節を行っている日銀の意図が読めず、1月から2月にかけて市場は動揺し、その結果、日銀も動揺することになった。それが今回の日程発表の要因となっていた。この間に何かあったのかを確認したい。

そもそもの発端は昨年12月30日に発表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」での変更点にあった。11月30日に発表したものでは「オファーの回数」が1年超5年以下であれば11月30日分は「6回程度」となっていたものが、12月30日分では「5~7回程度」と変更されていた。5年超10年以下も「6回程度」から「5~7回程度」に、10年超は「5回程度」が「4~6回程度」となっていた。

いったいこれは何のための変更なのか。それがわかったのが1月25日の日銀の国債の買い入れにおいてであった。25日の日銀の国債買入の市場参加者の予想は、残存10年超25年以下と残存期間25年超に加えて「1年超3年以下」、「3年超5年以下」も含まれていた。1年超3年以下と3年超5年以下は一応セットとなっており、1月は25日までに4回の買入が実施されていた。昨年12月には6回実施されており、1月も当然6回あると市場参加者は読んでいた。ところが25日に「1年超3年以下」、「3年超5年以下」がオファーされなかったことで、27日に1年超3年以下、3年超5年以下の買入あっても、もう一日がみつからない状態となってしまったのである。

これが月初めや月半ばであれば、調整が利くかもしれないが、1月も押し迫っている上に26日には流動性供給入札、30日には2年国債入札、30~31日は日銀の金融政策決定会合が予定されていたことで、市場参加者が、えっとなったのである。現実に1月の「1年超5年以下」の国債買入は1回分スキップされた。

日銀はこのスキップを意識していたため、「オファーの回数」の表現を変更したとも言える。来年度の国債発行額は中期ゾーンを含めて減額される。日銀にとっては巨額の国債買入を継続するのは次第に困難になることが予想され、そのため事前に手を打ったとの見方もできよう。ただし、市場の動揺を抑えるためか「5年超10年以下」について日銀は27日に4500億円と400億円増額させてきた。

ところが1月31日に発表された「当面の長期国債等の買入れの運営について」では、5年超10年以下の2月初回分では4100億円と元に戻されていた。これから伺えることは5年超10年以下の400億円の増額は中期ゾーンを1回スキップしたことによる一時的な金利上昇(もしくはその懸念)に対応するものであったといえる。

長期ゾーンの増額が一時的なものであることがわかり、市場は日銀のイールドカーブコントロールによる長期金利の居所を改めて探りに来た。2月2日に10年債利回りは上限とみられた0.1%を越えてきた。長期金利が0.1%という節目を越えたことで、日銀がどのような対応を行うのかが焦点となった。3日の10時10分の日銀による国債買入のオファーでは残存期間5年超10年以下の買入金額が4500億円となった。つまり5年超10年以下を4500億円に戻してきたのである。

それでもこの日の国債は急落した。これは5年超10年以下のところの増額が前回と同様の400億円にとどまったこと(最大5300億円まで可能)、さらに金利を抑えたいのであれば、ここは普通に超長期ゾーンをオファーすべきところ、それがなかった。これによりある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められ、債券先物が大きく売られ、10年債利回りは0.150%まで上昇したのである。

日銀はもしかすると400億円程度の増額で長期金利の上昇にブレーキを掛けられると信じていたのかもしれない(状況を考えるとそれはかなり債券市場の地合の読み方を間違えたともいえる)。日銀が読み間違えていたのであれば、10年債利回りの0.15%までの上昇は想定以上のピッチとなる上、ここで歯止めを掛けておかないと、0.2%あたりまで簡単に上昇するリスクが生ずる。

そこで日銀はこの日の12時半というイレギュラーな時間帯に「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。11月17日に初めて実施された指し値オペは実勢利回りが指し値よりも低下したため応札額がゼロとなり、いわば空砲であった。しかし、今回の国債買入は、対象が残存期間5年超10年以下の固定利回較差は0.006%(前日の引け値対比)となり、10年利付国債345回でみた買入利回りは0.110%となった。前場の10年債利回りの引け水準が0.140%近辺となっていたので、今度は空砲ではなく実弾となった。これにより7239億円の買入を行った

さらに2月10日の国債買入では10年超25年以下の買入金額をそれまでの1900億円から2000億円に、25年超を1100億円から1200億円に増額している。そして2月は1年超5年以下の国債買入の回数を6回に戻した。日銀は国債買入の削減を意図していたとみられるが、むしろ指し値オペを含めて増額せざるを得ない状況となってしまったのである。

2月28日の夕方に日銀は「当面の長期国債等の買入れの運営について」を発表した。1月から2月にかけてのドタバタで少しでも不透明感を払拭させるため、今回からオペ通告日を事前に発表することになったとみられる。1年超5年以下の中期ゾーンは6回(1日、10日、15日、21日、29日、31日)、5年超10年以下の長期ゾーンも6回(3日、8日、13日、21日、29日、31日)。そして10年超の超長期ゾーンは5回(3日、8日、10日、15日、23日)となっていた。

1月は1年超5年以下の中期ゾーンは5回と12月の6回から減額したが、2月は6回に戻し、3月も6回となる。

そしてこちらも注目されていた3月初回の金額であるが、どうやら今回から初回のオファー金額は提示しないようである。買入日程の発表で不透明要素がひとつ減った格好ながら、金額に関しては不透明要素が増えた格好となる。ただし、1回あたりの上限については微妙な修正をしている。中期ゾーンの上限を下げた反面、長期と超長期はゾーンそのものを微妙に修正している。

市場に動揺を与えないためには国債買入額は結果として増額のままにせざるを得ない面はあるものの、4月以降の国債発行額そのものが減少することを考えるとむしろ減額する必要が出てくる。このため初回の金額については提示しなかった可能性もある。

実際に3月1日の日銀の国債買入オファーでは、1年超3年以下を3200億円(前回4000億円)、3年超5年以下を4000億円(前回4200億円)と減額してオファーしている。日銀は回数ではなく金額で修正してきた。


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by nihonkokusai | 2017-03-01 09:56 | 日銀 | Comments(0)

日銀がいずれ国債買入を減額することが必要となる理由

 23日の山梨での木内登英審議委員の講演で、「国債買入れの安定性・持続性強化に向けた提案」がされていた。木内審議委員は毎回の金融政策決定会合において。金融市場調節の操作目標を資産買入れ額としたうえで、資産買入れ方針に関して、長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うなどを内容とする議案を提出している。その理由に絡めて提案の説明があった。


 「日本銀行は、量的・質的金融緩和のもとで大規模な国債買入れを続けており、日本銀行の国債保有比率は既に国債発行残高の4割程度に達しています。一方、国内金融機関は、様々な理由から、国債を保有する必要があります。例えば、銀行は、担保需要や金融規制対応から、一定規模の国債を保有する必要があるほか、年金は、適切なポートフォリオの構築という観点から、運用資産の一定比率は安全性の高い国債で保有する必要があります。また、生保は、生命保険商品という非常に長期の負債を持つことから、ALM(資産・負債の総合管理)や会計要件充足のため、超長期国債を中心に、相当額の国債を保有する必要があります。」


 国債とは国の借金であるとともに、金融市場にとってはなくてはならない金融商品である。安全資産であり満期まで持てば元本が返ってくる。株式や為替の影響を受ける外債投資ではどうしても元本を割り込むリスクが存在する。このため国債には安全資産として、もしくは日銀担保などとしての一定のニーズが存在している。


 「日本銀行が発行済みの国債を全て保有することができる訳ではなく、現在の買入れペースを続けていけば、国債買入れが困難な状態に近づくことは必至であると私は考えています。」


 国債の残存は1000兆円もあるので、数字上からはまだ600兆円も日銀は買うことができる。足らなければ国がバンバン国債を発行すれば問題ないとの意見もある。しかし、それは金融機関の保有している国債を引きはがすこととなる。また、むやみやたらに国債を発行してしまうと国債の信用力が低下しかねない。このため、日銀がこのまま大量の国債買入を続けるには無理があると私も思う。


 「また、国債買入れの困難度が増すにつれて、先行きの金融政策に対する不確実性の高まりや国債市場の流動性の過度の低下などから、金利が大きく変動しやすくなり、金融市場や実体経済に深刻な影響を及ぼす惧れがあります。」

 世界的な危機が存在しリスクが高まり、国債へのニーズが強まり、金利は低い状態が続く限りは、量と金利の両方を操作できても、その環境が変われば無理が出てくることになる。海外要因や物価要因などから金利に上昇圧力が加わった際などには、量と金利の両方を追い求める日銀の現在の政策の矛盾が浮き出る。


 木内委員の主張する45兆円という数字で良いのかどうかはわからないが、この数字そのものを取り除いてしまった方が良いと思う。しかし、こういった提案は日銀の審議委員のなかでも木内委員からしか出されていない。ほかの委員も現在の規模で国債買入が続けることがいずれ困難になると理解はしていると思うが、それにブレーキが掛けられないこともいまの日銀の現状なのである。


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by nihonkokusai | 2017-02-27 09:25 | 日銀 | Comments(0)

日銀のイールドカーブ・コントロールはここがおかしい

 日銀の木内審議委員は23日の山梨県での講演のなかで、イールドカーブ・コントロールのプラスの側面として、「金融市場調節の操作目標を長短金利に変更したことによって、国債買入れペースが変動しうる状態となったことから、この先、国債買入れペースが縮小して、国債買入れの持続性が高められる可能性」を指摘している。しかし、現実には80兆円というメドの数値を残しており、国債買入れペースを縮小させることは容易でないことを日銀は1月の国債の買い入れ調整で身をもって知った格好となった。


 日銀は1月25日の国債買入で予想された中期ゾーンをスキップし、その結果、中期ゾーンの国債買入は12月の6回から5回に減り、8200億円減額されることになった。これを受けて市場は動揺を示し、それを沈めるため25日の5年超10年以下の金額を4500億円と400億円増額させた。


 しかし、これで市場の動揺は収まらず、日銀の意図も見えないことで、2月2日の10年国債入札日に10年債利回りは0.115%まで上昇した。これは0.1%台を容認しているのかを試したとも言える。そして3日の日銀の買入では超長期は入らず、5年超10年以下も400億円の増額にとどめたことで、ある程度の10年債利回りの上昇を日銀は容認しているとものサインとも受け止められた。これを受けて10年債利回りは0.150%まで上昇した。


 これに動揺したのが今度は日銀となった。日銀は通常のオペタイムではなく12時半というイレギュラーな時間帯に新「天下の宝刀」ともいうべき「指し値オペ」をオファーした。これにより日銀は7239億円もの国債を買うこととなり、さらに5年超10年以下の増額分も維持せざるを得なくなり、その結果、買入ペースは縮小どころではなくなってしまった。


 木内委員は今回の講演で、イールドカーブ・コントロールのリスクとして下記の指摘をしたが、まさに1月末から2月上旬にかけてのドタバタはこのリスクが顕在化したこととなる。


 「イールドカーブ・コントロールのもとで、先行き、国債買入れペースが国債買入れの持続性を高めるのに十分なペースで低下していくかは不確実であり、逆に国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあると考えています。」


 日銀の現在の政策である長短金利操作付き量的・質的緩和の問題点は量を完全に引っ込めることなく、金利を政策目標に据えたことである。まさに「二兎を追う者は二兎をも得ず」となり、木内委員も「一般に、量と金利は一体的に決まるものであるため、両方に明示的な目標を設定しつつ安定的な金融調節を行うことは難しいと私は考えています」とコメントしている。


 このリスクについては「国債市場に外的なショックが生じる場合に顕現化しやすく、昨年11月以降の米国長期金利上昇に伴うわが国長期金利への押し上げ圧力が長期金利操作への最初の試練になっていると私は考えています」ともコメントしている。


 このリスクへの対応としてか、日銀は国債買い入れ日の事前予告を検討していると伝えられたが、そういう問題でもなかろう。そもそも国債の買い入れを減額したいのであれば、それをはっきり伝え、80兆円というメドもなくすべきである。また長期金利の目標についてもかなりレンジがあることを示すべきで、指し値オペの乱用を防ぐことも必要になろう。市場参加者も国債買入の維持の上でも減額は必要と認識しているはずである。それが言えないところに現在の日銀の金融政策上の矛盾がある。


 そもそも日銀の金融政策で長期金利がコントロールできるのか、それをして良いのかという問題も存在する。木内委員も講演で下記の指摘をしていたが、その通りだと思う。


 「長期金利を一定の水準にコントロールすることは、金利の変動を通じた経済の自動安定化装置機能を損ねてしまうことになり、長期金利をコントロールしない場合と比べて経済の振幅を増幅し、経済を不安定化させてしまう可能性が考えられます」


 しかし、木内委員も指摘しているが、長期金利の目標水準の変更は現実には容易でない。「目標水準を頻繁に見直すと、目標に対する信認の低下を招き、市場を不安定化させてしまうリスク」を木内委員は指摘しているが、それよりも異次元緩和を続けないと為替市場や株式市場が動揺してしまうという恐怖心の方が日銀には強いように思える。



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by nihonkokusai | 2017-02-24 09:58 | 日銀 | Comments(0)

日銀のイールドカーブコントロールが難しい理由」

 日銀の中曽副総裁は2月10日の高知県での講演後の記者会見で、イールドカーブコントロールに関して次のような発言をしていた。


 「いわゆる長短金利操作付き量的・質的金融緩和のもとでは、金融市場調節方針において、短期政策金利と10年物金利の操作目標を定めた上で、金融市場調節方針と整合的な形でイールドカーブが形成されるように国債買入れを運営しています。」


 日銀の現在の操作目標は短期の政策金利と10年物の金利となっている。この2つの金利を起点として適切なイールドカーブを形成することで2%の物価目標を達成するというのが長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の目的となる。


 「国債買入れの金額とかタイミングとか回数は、国債の需給環境や市場動向を踏まえて実務的に決定されるものです。日本銀行のオペレーションデスクは、こうした実務的な能力を十分に有していると私は思っています。」


 操作目標を決めるのは金融政策決定会合においてであるが、その操作目標の金利を適切に誘導し、日々のイールドカーブの修正を行っているのが、中曽副総裁の言うところのオペレーションデスクとなる。国債の需給環境や海外を含めた市場動向次第では、日銀の許容範囲を超えた金利の上げ下げが起きることが予想され、それをオペレーションデスクは国債の買い入れ金額の増減、もしくは指し値オペを使うことによって調節する。


 日銀はこれまでコントロールできない、もしくは市場に任せるべきとしていたはずの長期金利をコントロールするという新たな実験を行っている。国債市場での日銀に対する依存度の高まりにより、日銀の国債買入の細かな増減でも影響を与えられるとの認識が背景にあろう。ただし、ここで問題となるのは日銀は国債の買い入れ額そのものの調節も同時に行おうとしているように見えることであり、このため市場と日銀の間での意志の疎通に支障が出ていると考えられるのである。


 国債買入額の縮小等を含めて政策スタンスを示すのは金融政策決定会合である。その決定会合ですでに量から金利に操作目標を戻し、マネタリーベースの目標値を取り下げた。しかし国債の買入については80兆円という数字をメドとして残している。その80兆円が数字として残ったことで、今後の国債買入の持続性に問題が生じることを市場は(日銀も?)警戒しており、それが日銀のコントロールをより難しくさせている要因だと思われる。



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by nihonkokusai | 2017-02-20 09:43 | 日銀 | Comments(0)

中国の国債先物市場に異変が生じた理由とは

 中国の国債先物市場に昨年10月あたりから異変が起きているとロイターが報じている。昨年11月の5年債と10年債の先物の取引高は8200億元と前月から倍増。さらに12月は過去最高の1兆7700億元へと2倍に増えて、わずか3か月間で4倍に膨れ上がった。1月も旧正月の連休があったにもかかわらず、約1兆2000億元と高水準を維持しているという。


 現在のかたちでのデリバティブ、つまり金融派生商品が登場したのは米国のシカゴにおいてである。ニクソン・ショックを経て、1972年にシカゴ商業取引所(CME)で通貨先物取引が開始された。1975年にはシカゴ商品取引所で初めて金利先物が上場され、こののち金融の世界にもデリバティブ取引が世界的に広がって行くことになる。シカゴで始まった先物取引は、江戸時代における日本の大阪(大坂)の堂島における米の先物市場が参考にされたとされる。


 1985年10月に日本において戦後初の金融先物市場として東京証券取引所に上場したのも長期国債先物(債券先物)取引であった。米国に続いて英国そして日本、ドイツ、フランスなどの先進国が国債先物を相次いで導入することとなった。1998年のアジア通貨危機後は、危機によって損害を被った韓国やシンガポール、香港、台湾などの国・地域で国債先物取引が次々と導入される。


 中国も1992年に国債先物取引を導入していた。しかし、市場環境の整備が十分でなかったことなどから、1995年2月23日に上海証券取引所で巨額の決済不履行が発生し、取引が停止に追い込まれた。この事件は先物の対象銘柄番号から「327事件」と呼ばれた。


 その後の中国の国債発行額は年々増加し、規模はアジアで2番目となってきた。市場も整備され、1996年以降は中国において金利の市場化に向けた改革も進展した。このため中国金融先物取引所(中金所)は国債先物取引を2013年9月6日に再開したのである。


 再開したものの、中国の国債利回りが低迷していたことでヘッジの需要は弱く、商いがさほど盛り上がってはいなかった。ところが昨年、中国政府が金融政策を引き締めに転換し、中国の国債利回りが3年ぶりに底を打った格好となったことで、国債先物の取引も盛り上がってきた。


 ただし、この中国の商いの急激な増加の主役は個人とされる。日本の債券先物取引は1985年のスタート当初こそ個人の参加がみられたが、現在はほとんど個人は参加していない。個人向けの債券先物のミニ取引も低迷している。それに対し中国では個人が投機的な目的で参入し、その分、価格変動も大きくなっているものとみられる。


 個人が債券先物取引に参入することは決して悪いことではなく、債券先物取引の裾野を拡げるためにも必要と思う。しかし、個人が先導して国債先物取引を行っているというのは、やや危うい面も感じざるを得ない。



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by nihonkokusai | 2017-02-11 10:57 | 日銀 | Comments(0)

日銀が国債残高の4割を保有する意味はあるのか

 日銀が保有する国債の残高が1月31日現在、358兆1977億円となり(日本銀行が保有する国債の銘柄別残高の合計数字)、1月末時点の国債の発行残高、約894兆3357億円に占める日銀の保有割合は初めて4割を超えた。着実に日銀が保有する国債残高は増え続けている。いずれ発行残高の5割を越える日もくるかもしれない。これがいったい何かを示すのかをあらためて考えてみたい。


 そもそも日銀が2013年4月に量的・質的金融緩和を導入する直前の2013年3月末は11%程度に過ぎなかった国債の保有割合が、4年足らずの間に40%にも増えてしまっている。日銀は何のために、これほどの国債を購入したのか。しなければいけなかったのか。


 それは物価を上げるためではなかったのか。しかし、その物価は上がるどころか前年比マイナスという水面下にいる。これは日銀の国債買入が少なすぎたから、というわけはなかろう。結論から言えば、日銀がいくら異次元の国債買入をしようとも物価は動かせなかった。結果として日銀の大量の国債残高が残り、長期金利を操作するという手段に追い込まれた。これにより国債買入の額を減らすに減らせない状況に追い込まれてしまった。


 それだけではない。金融市場における中核的な存在であったはずの国債の流動性を日銀は低下せしめた。年間発行額のほとんどを日銀が買ってしまうため、一般に出回る国債の量が急減した。


 ところが異常な金融緩和を続けなければいけない状況にいま日本が陥っているわけでもない。日銀は無理矢理に国債の利回りを押さえつけているが、これでいったい何をしたいのかがわからない状況になりつつある。もし日本の長期金利を抑えれば、日米金利差が拡大して円安になり、円安により物価に刺激を与えようとのシナリオであれば、今度はトランプ政権が黙ってないであろう。


 日銀は昨年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和政策の決定により、調節目標をマネタリーベースから金利に差し替えている。それにもかかわらず保有残高の増加額年間約80兆円というめどの数字を残してしまったために、本来削減すべき国債残高を削減できずにいる。いや削減しようとしたが、市場参加者との意志の疎通がうまく行かず、その結果、指し値オペなど含めて、余計に買わざるを得ない状況に追い込まれてしまった。


 日銀はそろそろ腹をくくって、多少の円高となろうが、マイナス金利政策を止めて、80兆円という目処の数字も取り除き、ファンダメンタルに即した長短金利の居所を修正する方針に改めるべきではなかろうか。あくまでこれは引き締め策ではなく、異次元緩和を通常次元に戻す調整として行えば良いのではなかろうか。そうでもしないと今後は矛盾がどんどん拡がるばかりとなりかねない。



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by nihonkokusai | 2017-02-10 09:43 | 日銀 | Comments(0)
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