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カテゴリ:日銀( 1086 )

海外の中央銀行の日銀当座預金口座にマイナス金利を適用

日銀は日本銀行法第41条に基づき、外国の中央銀行等や国際機関との間で、これらの先による円貨資産の運用や円資金の調達に協力するため、預り金業務、債券等保管業務、国債買取り等業務を行っている(日銀サイトの「教えて!にちぎん」より引用)。

外貨準備を運用する目的で、海外の中央銀行は日銀にも円建ての当座預金口座を開いている。合計で93口座あるそうで、全ての口座の預金残高の合計は13兆6000億円(3月末時点)となっている(日経新聞の記事より引用)。

日銀はこれまで、海外中銀の預金に利子はつけていなかった。しかし、6月5日以降は、それぞれの海外中銀の預金の一定額を超える預け入り金について、現金担保付き債券貸借(レポ)金利から算出する短期の実勢金利から0.05%を引いた利率を付けることにした。現在この短期金利はマイナス圏で推移しており、その結果、この付利金利もマイナス金利となる。

欧州中央銀行(ECB)も海外中銀の預金口座にマイナス金利を適用しており、日銀もこれに習った格好となるが、何故このタイミングではじめたのであろうか。システムなどの対応に時間が掛かった可能性もある。

ちなみに日銀が2016年1月に決定したマイナス金利政策におけるマイナス金利適用に際しても、金融機関の日銀当座預金の一部にマイナス金利が適用される仕組みとなっている。民間金融機関が日銀に預けている当座預金残高を年平均残高となる「基礎残高」、所要準備額と貸出支援制度などの利用額に基礎残高の一定割合となるマクロ加算額を加えた「マクロ加算残高」、当座預金残高から上記の2つの残高を除いた「政策金利残高」の3段階に分類し、このうちの「政策金利残高」の部分にマイナス金利が適用される格好となっている。

海外中銀の当座預金口座にマイナス金利を適用することによる影響としては、マイナス金利の適用を嫌って一部の資金が日銀の当座預金から流出する可能性はある。しかし、中銀預金などによる日銀への資金の預け入れは、資金運用というよりも必要に応じてのものとなっているとみられる。たとえば日銀が外国の中央銀行等との間で行う通貨スワップ取引の決済などにも預り金口座が利用されるなどしている。

このため今回の海外中銀の当座預金口座の一部にマイナス金利を付利することにより、日銀の当座預金から資金が大きく流出するような事態が生じることはないとみられる。


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by nihonkokusai | 2017-07-17 16:59 | 日銀 | Comments(0)

日銀のスタンスに変化なし、日銀支店長会議総裁挨拶より

7月10日の日銀支店長会議での黒田総裁の挨拶が日銀のサイトにアップされた。これを前回4月の支店長会議の挨拶文と比較してみたい。

「わが国の景気は、緩やかな拡大に転じつつある。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる(7月)」

「わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。先行きについては、緩やかな拡大に転じていくと考えられる(4月)」

足元の景気判断は「緩やかな回復基調を続けている」から「緩やかな拡大に転じつつある」に上方修正している。これは3日に発表された日銀短観などを確認してのものとみられる。短観の業況判断指数(DI)は全規模全産業でプラス12となり、2014年3月調査と並び、リーマン・ショック後で最高となったように、企業の景況感の回復に広がりが出ていることが示されていた。

「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台前半となっている。先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(7月)」

「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。先行きについては、エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと、マクロ的な需給バランスが改善し、中長期的な予想物価上昇率も高まるにつれて、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(4月)」

消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、4月は「0%程度」であったものが、7月は「0%台前半」に多少の上方修正となっている。直近に発表された5月のコアCPIは前年比で4月の0.3%から0.4%となっていたことなどを反映か。

4月にはあった「エネルギー価格の動きを反映して0%程度から小幅のプラスに転じたあと」が除かれている。あらたな段階に移行したということであろうか。「プラス幅の拡大基調を続け」ても、さすがに2%には届かないとの予想が多いことも確かではあるが。

「わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある(7月)」

「わが国の金融システムは、安定性を維持している。金融環境は、きわめて緩和した状態にある(4月)」

安定していないと困ることも確かである。

「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(7月)」

「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う(4月)」

こちらもまったく文面はまったく変えていない。欧米の中央銀行がECBを含めて、緩和バイアスの解除を模索しているが、日銀は2%という身の丈に合わない物価目標を掲げ、しかもそれを金融緩和でなんとかしようとするあまり、自らを縛りつけてしまい、戻るに戻れなくなってしまっている。この状況が変わるには何かしらのショックが生じるか、何かの弾みで物価が2%をワンタッチするようなことがなければ難しいのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-07-11 09:50 | 日銀 | Comments(0)

日銀は長期金利の上昇に対し指し値オペで阻止、これは何のため?

7月7日に日本の10年国債利回り(長期金利)は0.105%に上昇した。これを受けて日銀は指し値オペを実施し、これ以上の長期金利の上昇を阻止した。なぜ日本の長期金利が上昇し、それをどうして日銀が押さえ込む必要があったのか。

まずは日本の長期金利上昇の背景から見てみたい。

27日にポルトガルで開催された欧州中央銀行(ECB)の年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための利上げの可能性を指摘した。

FRBが正常化に向けた歩みを進めるなか、英国の中央銀行であるイングランド銀行も利上げに向けた討議を進めるとし、カナダ銀行(中央銀行)も利上げの可能性を指摘するなど、欧米の中央銀行が正常化に向けた動きをみせはじめた。そのなかにあって正常化とは距離があるとみられたECBも緩和バイアス解除を意識させる動きを見せ始めたのである。

6日に公表された6月のECB理事会の議事要旨では、必要に応じて資産買い入れを拡大するとの従来の文言について当局者が削除することを協議していたことが明らかになった。これに伴う市場の混乱を強く警戒し、行動を急がない公算が大きいとも指摘してはいたが、ECBの方向性は追加緩和にはないことがはっきり示された。

欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を切りつつあり、これを受けて欧州の国債利回りが上昇し、FRBが利上げを行っても反応の鈍かった米国債利回りも欧州国債の利回り上昇を受けてあらためて上昇しはじめた。

ECB理事会の議事要旨の内容受けて、7月6日のドイツの10年債利回りは0.56%に上昇した。6月22日には0.25%近辺にいたことから、そこから倍以上の利回り上昇となった。フランスの10年債利回り0.91%と6月26日には0.60%近辺にいたがこちらも大きく上昇している。英国の10年債利回りも1.31%と6月20日頃は1%近辺にいたがそこから0.3%程度の上昇となっていた。

この欧州の国債の売りは米国債にも波及し、米10年債利回りは6日に2.36%に上昇した。米10年債利回りも6月26日に2.13%近辺におり、ここから欧州の国債利回りと一緒大きく上昇していた。

この海外での金利上昇を受けて7日の日本の10年債利回りは0.105%に上昇した。これにどう日銀が対処するのかが注目された。

今年2月3日に債券市場では日銀の長期金利コントロールのゼロ%の範囲を探るような動きを見せ、通常の国債買入での増額がなかったことを確認後、10年債利回りは0.150%まで上昇した。これに対し日銀は変則的な時間帯の12時半に(オペタイムは午前は10時10分、午後は通常14時)指し値オペを実施した。その水準が10年債利回りの0.110%となっていた。

7日に10年債利回りは2月3日の指し値オペの水準に接近したことで、日銀は10時10分という通常の時間帯で予定通りに長期と超長期ゾーンのオペをオファーし、その際に5年超10年以下のオファー額をこれまでの4500億円から5000億円に増額した。市場はこの増額はある程度予測していたようである。指し値オペについては見方は可能性は薄いかとの見方が強かった。

ところが日銀は通常のオペと同時に固定利回り方式での残存期間5年超10年以下の国債買入もオファーした。つまり伝家の宝刀といえる「指し値オペ」である。その水準は10年利付国債347回の買入利回りで0.110%となった。つまり2月3日と同水準である。日銀としては0.110%が絶対防衛ラインということを示した格好となった。。

7日の10年債利回りで0.110%はつけていたわけではなく、今回は2月3日のように実弾ではなかった(3日の10年債利回り水準は0.140%近辺となっていた)。通常オペで増額した上にストッパーを入れてきた格好である。ただし、利回り水準がそこまで上がっていなかったため、今回は2月3日のように応札する業者はいなかった。今回はまさに来るなら来い的なオペレーションといえた。

これを受けて10年債利回りはいったん0.085%に低下した。しかし市場も慣れてきたのか、昨年11月や今年2月の指し値オペほどのインパクトはなかった。ただし、外為市場ではこれをみて日銀と欧米の中央銀行の金融政策の方向性の違いが意識されて、ドル円は一時114円台をつけていた。

しかし、欧米の中央銀行が緩和バイアス解除に向かうなか、頑なに異次元緩和に固執する日銀の姿のほうが異様にみえる。長期金利をここで止めて、どのようにして物価が上がるというのであろうか。債券市場の機能喪失と引き換えに長期金利コントロール含めた異常な緩和策を進める日銀に対して、疑問を感じる人達も次第に増えつつあるように思われる。

今回日銀が0.110%で指し値オペを入れたのは、2月3日の同水準とすることで長期金利のコントロール範囲の上限は0.110%であることを市場に意識させようとしたものとみられる。むしろここで行動を取らなければ市場は日銀も緩和バイアス解除を意識しているのではと勘ぐってしまうことを恐れた可能性もある。しかし、これはつまり日銀だけが正常化に向けた動きから取り残されることになる。

日銀が物価目標を達成していない以上は当然だ、とのご意見もあるかもしれない。しかし、日銀は異次元緩和で物価そのものを簡単に動かせないことを4年以上掛けて証明してしまった。欧米の物価も目標値に届いていないケースもあれど、2%近くにいることは確かである。ただし、これは欧米の中央銀行の金融政策に負うところというよりも、そもそも欧米の物価は2%近くに収斂しやすく性質がある。それが日本の消費者物価指数では2%ではなくゼロ近傍にある点に大きな違いが存在する。

デフレ脱却云々の前にこういった物価指標の性格も意識しなければならず、少なくとも日銀が長期金利を0.110%に押さえつければ、消費者物価指数が2%に上昇するという理屈はどう成り立つというのであろうか。これにより債券市場の価格発見機能はますます失われ、取引量の減少や既存の市場参加者の退出という形で機能度の低下に繋がっている。海外の長期金利の上昇ばかりでなく、3日の日銀短観などをみても本来、ある程度上昇するのが自然に見える長期金利を無理矢理抑えて、日銀はいったい何をしたいのか。あらためて問いたい。


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by nihonkokusai | 2017-07-08 09:57 | 日銀 | Comments(0)

日銀の政策リスクは出口にあるのではなく出口がないこと

6月30日に発表された5月の日本の消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となった。日銀の物価目標となっている生鮮食料品を除く総合(コア)でも前年比プラス0.4%となっていた。ちなみに生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)と、エネルギーまで除いてしまうと前年比プラスゼロ%となっていた。

日銀は原油先物の下落による物価低下圧力を意識するあまり、基調的なインフレ率を捕捉するための指標(速報)として消費者物価指数の「除く生鮮食品・エネルギー(新コアコア)」を独自に算出しているが、原油価格の上昇分が反映されるようなことになると、むしろ原油価格が回復すると、前年比では上昇幅が失われてしまう結果となる。

これをみるまでもなく、日本の消費者物価指数はエネルギー価格に影響を受けやすい。もちろん外為市場の動向の影響も受ける。それらの影響を除いてしまうと結局はゼロ近傍に収斂しやすい性質を持っていると見ざるを得ない。

日銀は1999年にゼロ金利政策、2001年に量的緩和政策、2006年にいったん量的緩和とゼロ金利政策を解除するが、2010年に包括緩和政策、2013年にはこれまでの緩和策は踏み込み不足とばかりに量的・質的緩和、2014年にはその拡大、2016年2月にはマイナス金利政策も加え、9月には長期金利操作も加えて、長短金利操作付き量的・質的緩和政策を打ち出してきた。

その間の消費者物価指数の変遷をみると、途中の上げ下げはあったものの、ほぼコアCPIの前年比はゼロ近傍で推移している。特に2013年の量的・質的緩和導入以降、マネタリーベスや日銀の国債保有額は大きく増え続けているが、それがCPIに影響しているとは考えられない。

物価は上がらなくても雇用環境は改善され、景気も回復基調を続けていることでアベノミクスは成功しているとの意見もある。しかし、アベノミクスの唯一の柱というべき日銀の異次元緩和は物価に影響を与えていない。物価改善ありきでの景気回復ではなかったのか。国民にとっては物価が上がらずに景気や雇用が改善してくれたほうがありがたい。ここには賃金が上がらないという問題も出てこようが、金融政策で賃金がどうにかなるものでもあるまい。

欧米の中央銀行が出口に向かいはじめているなか、日銀は2%の物価目標達成という看板を掲げてしまったことにより、身動きがとれなくなっている。物価目標を達成した際に日銀の財務状態が心配だとの意見もある。しかし、そもそも金融政策で物価は簡単に動かせないことを見事に証明してしまったが、それも認めることは当然できず、とにかく付け加えられるものを付け加えてしまったバベルの塔のような政策を続けて行くしかないということにリスクはあるまいか。日銀の政策リスクは出口にあるのではなく、出口がないことにある。


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by nihonkokusai | 2017-07-02 10:35 | 日銀 | Comments(0)

日銀がいつになっても物価目標の2%を達成できない理由

今回、日本と米国の消費者物価指数のデータをエクセルに入れそれぞれを比較するグラフを作成してみた。日米ともにコアと呼ばれる指数で比較した。注意すべき点として、日本のコアCPIは値動きの大きな生鮮食料品を除いたものであり、米国のコアCPIは食品とエネルギーを除いたものであるという違いがある。また、日銀とFRBの物価目標は、日銀がコアCPIそのものであるのに対し、FRBはPCEデフレーターであるという違いもある。

ここではあくまで日米の物価の動きのクセのようなものを見るために比較してみたのである。手元のデータが2004年1月以降であったため、もっと長いスパンの分析とはならなかったが、それでも過去13年以上のデータの比較となった。

これにより一目瞭然なのが、米国のコアCPIが2004年から2017年にかけて、途中の上げ下げはあってもいずれ前年比で2%あたりに収斂するというものであった。これに対し日本ではゼロ近傍に収斂していることがわかる。

データを見ると、2004年1月から2017年4月までの日本のコアCPI前年比は最大値でプラス2.4%、最低値でマイナス2.4%、平均は前年比0.0%となっていた。それに対して米国は最大値でプラス2.9%、最低値でプラス0.6%、平均値で1.93%とほぼ2%となっていた。念のため、これは無理矢理数字を揃えたいので2004年以降にしたわけではない。

日銀が政府の意向も汲んで物価目標をCPIの前年比で2%に設定したのが2013年1月であり、同年4月に量的・質的緩和を決定し、2年程度で物価目標を達成するとした。しかし、その目標は達成されずゼロ近傍にいるのは何故なのか。  

それは中央銀行の金融政策に関わらず、原油価格や外為市場などの動向により多少の上げ下げはあっても日本の場合はコアCPIはゼロ近傍に収斂してしまう性質がある。それは米国では2%であった。つまり、そもそも設定目標に無理があったのではなかろうか。2006年に日銀が量的緩和政策の解除にあたって条件としたのが、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるとしていたが、この数字こそ今振り返っても適切であったように思われる。

だからこそ長きにわたるデフレを退治するため日本の物価の水準を無理矢理にでも2%に引き上げて欧米並みにすべきという意見もある。しかし、そもそも日本の消費者物価指数は帰属家賃等もあり、簡単には水準修正は難しいし、一時的に上昇下降してもゼロ近傍に収斂してしまう。それを日銀のマネタリーベースの増加とか長期金利の低下で動かせるものではない。

2008年あたりから2017年にかけては日銀の緩和策が実験場のように矢継ぎ早に打ち出されたが、このグラフを見ても、消費者物価指数が金融政策によって動いたような兆候はない。この間の消費者物価指数の動きは、むしろ原油価格や為替市場の動きによって説明が付きそうである。日銀にとって物価目標の達成はいつになっても見通せないのは、国債の買い入れなどでは物価は簡単に引き上げられない上に、現在のゼロ%近くの低成長下では物価もゼロ近傍に収斂してしまうためであろう。


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by nihonkokusai | 2017-07-01 12:31 | 日銀 | Comments(0)

日銀の正常化が困難を極める原因のひとつがアベノミクス

米国の中央銀行にあたるFRBは正常化に向けた歩みを着々と進め、カナダの中央銀行も利上げが視野に入りつつある。イングランド銀行では利上げ推進派が3名に増え、こちらもいずれかのタイミングで利上げを決定する可能性が出てきた。ちなみにイングランド銀行は議長である総裁が少数派となることもあるなど、空気など読まずに本当に意味での多数決で金融政策が決定されることがありうる。ECBもひとまず追加緩和に傾斜する姿勢を中立に戻している。

日銀も表向きは物価目標が達成できないことで強力な緩和を推し進めるという姿勢は維持しているものの、政策目標を量から金利に戻したことでステルステーパリングを行うなど、実際には少しブレーキを掛けている。

それでも欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を取りつつある中、このままだと日銀だけが取り残されることも予想される。そのためか、ここにきて日銀の出口戦略に対する関心も高くなってきている。しかし、日銀は物価目標達成のためにリフレ政策を取ってしまったことで、自ら退路を塞ぎ、正常化に向けて舵を取るには多くの障壁を作ってしまった。

リーマン・ショックに代表される米国の金融機関の経営危機が世界的なリスクを増大させ、そのあとギリシャの財政問題がユーロというシステムの危機を迎え、それぞれ百年に一度という世界の金融経済危機を迎えた。それに対処するには最終的に中央銀行の金融政策に依存せざるを得なかった。

当時のFRBのバーナンキ議長やECBのドラギ総裁なども、日銀が試していた量的緩和政策などの非伝統政策に追い込まれたというより、壮大な実験を自ら試したかったこともあったのかもしれない。そう簡単にオペなどで売れないであろう長い期間の国債の買い入れ等を主体とした非伝統的手段を打ち出した。それらが結果的に市場の不安感を後退させて、百年に一度のリスクは沈静化していった。

そのようなタイミングで出来たのが、世界的なリスクに対応するため、ではなく長く続くデフレ脱却を掲げたアベノミクスである。デフレは日銀の金融政策の踏み込みの甘さが原因として、リフレ派の主張を取り入れたのがアベノミクスであった。

危機対応ではなくデフレ対応の大胆な金融緩和を柱としたアベノミクスは、そのタイミングがたまたま世界的な金融危機の後退期にあたり、それが急激な円高の巻き戻しを呼び、急速な株高を誘発した。円安効果と世界的なリスクの後退、原油価格の高止まり、消費増税前の駆け込み需要なども加わり、一時的に物価も上昇しコアCPIは前年比プラス1.5%まで上昇した。しかし1年後の円安効果が剥落するなどして、CPIは再びゼロ近傍となってしまった。

あのタイミングで日銀が嫌っていたはずのリフレ政策を時の政権が強制的に打ち出したことで、円安などによる一時的な物価上昇は起きたが、それは日銀が長い期間の国債を大量に購入した結果によるものではなかった。ヘッジファンドなどの仕掛けによるポジション調整が円高トレンドを変えさせた影響が大きかった。だから物価上昇が長続きしなかった。

日銀の異次元緩和で物価目標達成が可能という前提に問題があったことを証明するのに4年以上の歳月が必要となった。しかし、それは当然日銀も現政権も認めることはしないであろう。実はそれが日銀が正常化を困難とする大きな足かせとなってしまっているのである。


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by nihonkokusai | 2017-06-20 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀の物価目標達成までにはまだかなりの距離が存在

5月26日に公表された4月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となり7か月連続のプラスとなった。日銀の物価目標ともなっている生鮮食品を除く総合は前年比プラス0.3%となり、こちらは4か月連続の上昇となった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比変わらず。

寄与度をみてみると、原油価格の底打ちによる影響が引き続き大きいようである。ガソリンなどの上昇幅が縮小したものの,電気代がプラスに転じ都市ガス代などの下落幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅が寄与していた。

全国消費者物価指数の先行指標とされる5月の東京都区部の指数は、除く生鮮で前年比0.1%の上昇となり、2015年12月以来のプラスとなった。電気代やエアコンなど家庭用耐久財の上昇、携帯電話機のマイナス幅縮小が寄与した。

このように日本の消費者物価指数は原油価格の底打ちの影響によって、やっと前年比プラスに転じてきている。しかし、欧米の物価指数に比べてもかなり低い水準にあるといえる。

いまでも日銀の異次元緩和は継続されており、日銀のバランスシートは膨らみ続け、市場から異常ともいえる大量の国債の買い入れを続けている。日銀はこれによって物価目標を達成するとしていたが、いっこうに達成する気配はない。

日銀は物価目標の達成時期を延期し続け、さらに質的・量的緩和の拡大やマイナス金利の導入、長期金利を政策目標に据えたりと手を変え品を変え、次元が入り組んだ妙な金融政策を打ち立ててしまっている。これが物価に直接影響していないことは、どう見ても明らかではなかろうか。

いまのところ国債価格が急落するといった副作用が出ているわけではない。だから効果の有無はおいといて、異常な政策を日銀は続けているわけだが、効果が出ない以上は効果が出るかもしれない新たな手段(財政政策含む)を講じるのではなく、いったん異常な政策そのものを後退させて、将来のリスクを摘む必要もあるのではなかろうか。それを本来警告するはずの長期金利の機能を日銀自ら摘み取ってしまっていることも確かではあるのだが。


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by nihonkokusai | 2017-05-30 09:46 | 日銀 | Comments(0)

何故、このタイミングで安倍首相と黒田日銀総裁が会談したのか

日銀の黒田東彦総裁は17日に首相官邸で安倍晋三首相と会談した。黒田総裁が首相官邸に首相を訪ねるのは1月11日以来、4か月ぶりとなる。黒田総裁は会談後、記者団に「金融緩和をしっかり続けていくとだけ申し上げた」と明らかにした。「首相から特別の注文はなかった」とも述べた(日経新聞電子版)。

5月には金融政策決定会合の予定はない。首相から何かしら要請されるような状況でもない。今回は前回の会談から4か月経っており、首相のスケジュールと黒田総裁のスケジュールが空いたところで定例とも言える会談が設定されたと思われる。黒田総裁も首相との会談について「定例的なもの」とあえて強調していた。

官邸側としても日銀の金融政策で物価目標が達成されておらずとも、今年1~3月期のGDPが年率プラス2.2%の成長率と5期連続でプラスになるなどしており、あえて追加緩和を要求するようなことは考えづらい。むしろ物価が上昇しない、つまり金利も超低位のなかでの経済成長は政権にとっても好都合のはずである。ここで物価が2%に向けて急上昇し、長期金利も上昇するようなことになると、財政面への影響が出てくることも予想される。その意味ではいまの環境は政権にとっては好環境とも言えよう。

しかし、そうはいっても日銀が首相の意向を汲んで、異次元緩和を行っているという事実は残る。しかもそれで物価は上がってこないということも露見した。そもそもアベノミクスと称された政策の根底、つまり異次元緩和で物価を上げてデフレ解消との前提に大きな間違いがあったものの、いわば結果オーライといった事態となっている。

それでもいまの日本が危機的な状況にあるわけでもなく、景気が落ち込んでいるわけでもないにも関わらず、非常時の以上金融政策を長らく続けてしまっているということも事実である。それはそれで潜在的なリスクが膨らんできていると見ざるを得ない。本来であれば、ステルステーパリングとかではなく、妙なかたちで積み上げてしまった金融緩和政策の修正を図り、将来のリスクを取り除くことが求められてしかるべきであろう。

しかし、異次元緩を押しつけたのが現政権であり、自らの政策の根底が間違っていたことを認めるようなことも現在の日銀はしづらいというか、できないであろう。少なくとも政権が代わり、リフレ政策に疑問を持つ首相でも就任しない限り、現在の状況は継続することが予想される。そのあたりを暗黙のうちに確認したのかもしれない。

ただし、日銀が国債を持てばその分の政府債務はカウントされない、などとの考え方がいかに危険なものであるのか。その危険性が試される日が来ないとは言い切れないことも確かである。そのあたりのリスクを日銀と官邸が共有しているようには見えないことも危惧すべき問題と思われる。


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by nihonkokusai | 2017-05-19 10:00 | 日銀 | Comments(0)

何故、このタイミングで安倍首相と黒田日銀総裁が会談したのか

日銀の黒田東彦総裁は17日に首相官邸で安倍晋三首相と会談した。黒田総裁が首相官邸に首相を訪ねるのは1月11日以来、4か月ぶりとなる。黒田総裁は会談後、記者団に「金融緩和をしっかり続けていくとだけ申し上げた」と明らかにした。「首相から特別の注文はなかった」とも述べた(日経新聞電子版)。

5月には金融政策決定会合の予定はない。首相から何かしら要請されるような状況でもない。今回は前回の会談から4か月経っており、首相のスケジュールと黒田総裁のスケジュールが空いたところで定例とも言える会談が設定されたと思われる。黒田総裁も首相との会談について「定例的なもの」とあえて強調していた。

官邸側としても日銀の金融政策で物価目標が達成されておらずとも、今年1~3月期のGDPが年率プラス2.2%の成長率と5期連続でプラスになるなどしており、あえて追加緩和を要求するようなことは考えづらい。むしろ物価が上昇しない、つまり金利も超低位のなかでの経済成長は政権にとっても好都合のはずである。ここで物価が2%に向けて急上昇し、長期金利も上昇するようなことになると、財政面への影響が出てくることも予想される。その意味ではいまの環境は政権にとっては好環境とも言えよう。

しかし、そうはいっても日銀が首相の意向を汲んで、異次元緩和を行っているという事実は残る。しかもそれで物価は上がってこないということも露見した。そもそもアベノミクスと称された政策の根底、つまり異次元緩和で物価を上げてデフレ解消との前提に大きな間違いがあったものの、いわば結果オーライといった事態となっている。

それでもいまの日本が危機的な状況にあるわけでもなく、景気が落ち込んでいるわけでもないにも関わらず、非常時の以上金融政策を長らく続けてしまっているということも事実である。それはそれで潜在的なリスクが膨らんできていると見ざるを得ない。本来であれば、ステルステーパリングとかではなく、妙なかたちで積み上げてしまった金融緩和政策の修正を図り、将来のリスクを取り除くことが求められてしかるべきであろう。

しかし、異次元緩を押しつけたのが現政権であり、自らの政策の根底が間違っていたことを認めるようなことも現在の日銀はしづらいというか、できないであろう。少なくとも政権が代わり、リフレ政策に疑問を持つ首相でも就任しない限り、現在の状況は継続することが予想される。そのあたりを暗黙のうちに確認したのかもしれない。

ただし、日銀が国債を持てばその分の政府債務はカウントされない、などとの考え方がいかに危険なものであるのか。その危険性が試される日が来ないとは言い切れないことも確かである。そのあたりのリスクを日銀と官邸が共有しているようには見えないことも危惧すべき問題と思われる。


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by nihonkokusai | 2017-05-19 10:00 | 日銀 | Comments(0)

ゆうちょ銀行が日銀の国債売買オペに参加、それぞれの思惑も

日本郵政グループのゆうちょ銀行が、日銀の国債売買オペに4月以降、参加しているようである。

4月19日にゆうちょ銀行は電子メールで「当行は、民営化以降、運用の高度化・多様化を進めており、その一環として、本件日銀オペの参加を申請し、この度日銀より承認されたもの」とコメントしていた(ブルームバーグ)。

私はてっきり、日銀の売買オペには、大量の国債を保有するゆうちょ銀行は当然参加していると勝手に思い込んでいた。しかし、確かに下記の日銀が公表した「国債売買オペの2016年度対象先公募(定例選定)の結果について」には、ゆうちょ銀行は入っていない。

「国債売買オペの2016年度対象先公募(定例選定)の結果について

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161014a.pdf

ゆうちょ銀行が保有する国債額は73.5兆円規模となり日銀に次ぐ大きさである。ただし、運用等に制限もあったことで、日銀の国債売買オペには参加していなかったとみられる。

日銀にとってもすでに年間発行額規模の国債を購入しており、金融機関保有の国債の引き剥がしをしていかないと、この規模の買入はステルステーパリングをしているといえ、いずれ限界も来てしまう。そのような環境下、70兆円規模の国債を保有するゆうちょ銀行による国債売買オペへの参加は日銀にとっても願ったり叶ったりとなるのか。

しかし、ゆうちょ銀行にとって資産であるところの保有国債を日銀に売却してしまうとその資金の運用に困ることとなる。ただし、今後は資産運用の多極化も図るようで、それも今回の動きの背景にあるのかもしれない。ただし、証券会社などのように日銀トレードで鞘を取るといった運用が果たして可能なのであろうか。ちなみに、ゆうちょ銀行は国債入札参加者に含まれている。

財務省「国債に係る入札参加者一覧」

http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/bond/bidders/index.htm

今回のゆうちょ銀行が日銀の国債売買オペに参加したことは、ゆうちょ銀行と日銀それぞれの思惑が働いているようにも思われる。


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by nihonkokusai | 2017-05-17 09:42 | 日銀 | Comments(0)
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