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カテゴリ:日銀( 1085 )

「日銀の国債買い切り」

 量的緩和解除観測が強まる中、日銀執行部はこれまであえて国債の買い切りには触れないようにしてきたようにも見受けられた。日銀総裁が速水さんから福井さんに代わってからの金融政策の変更時において決定的な違いがひとつある。日銀の当座預金残高を引き上げた際に国債の買い切りを増やし続けた速水さんに対して福井総裁に代わってからは一度も国債買い切りの額は引き上げられていないのである。

 2001年3月19日に量的緩和政策が取られてからの金融政策の推移をここで簡単に見て行きたい。

2001年3月19日
1.金融市場調節の操作目標の変更、金融市場調節に当たり、主たる操作目標を、これまでの無担保コールレート(オーバーナイト物)から、日本銀行当座預金残高に変更する。(日銀当座預金残高が5兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。)
2.新しい金融市場調節方式は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する。
3.日本銀行当座預金残高を5兆円程度に増額する(最近の残高4兆円強から1兆円程度積み増し
3.長期国債の買入れ増額、日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合には、現在、月4千億円ペースで行っている長期国債の買い入れを増額する。ただし、日本銀行が保有する長期国債の残高は、銀行券発行残高を上限とする。

2001年8月14日

1.金融市場調節方針の変更、日本銀行当座預金残高をこれまでの5兆円程度から6兆円程度に増額する。
2.これまで月4千億円ペースで行ってきた長期国債の買い入れを、月6千億円ペースに増額する。

2001年9月18日
1.金融市場調節方針の変更、当面、日本銀行当座預金残高が6兆円を上回ることを目標として、潤沢な資金供給を行う。
2.公定歩合を0.15%引き下げ0.10%とし、明日より実施する。
3.補完貸付制度、補完貸付制度(いわゆるロンバート型貸付制度)の公定歩合による利用上限日数を、今積み期間(9月16日~10月15日)について、5営業日から10営業日に引き上げる。

2001年12月19日
1.金融市場調節方針の変更、日本銀行当座預金残高が10~15兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。
2.長期国債買入れの増額、これまで月6千億円(年7.2兆円)ペースで行ってきた長期国債の買い入れを月8千億円(年9.6兆円)ペースに増額する。
3. 金融市場調節手段の拡充(CP現先オペの積極的活用、資産担保CPを現先オペ対象と適格担保に加えるための実務的検討を早急に進める、住宅ローン債権・不動産担保証券を裏付け資産とするABSを適格担保に加えるための実務的検討を早急に進める。手形オペ・全店買入のオファー頻度引き上げ、国債買入・国債レポ・CP現先・手形売出オペの輪番制を廃止し全先に毎回オファーを行う)

2002年2月28日
1.年度末に向けた一層潤沢な資金供給、日本銀行当座預金残高が10~15兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、当面、年度末に向けて金融市場の安定確保に万全を期すため、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。
2.長期国債買入の増額、資金供給を円滑に行うため、長期国債の買い入れを、これまでの月8千億円(年9.6兆円)ペースから、月1兆円(年12兆円)ペースに増額する。
3.ロンバート型貸出における公定歩合適用期間の拡大、3月1日~4月15日までの間、すべて公定歩合による利用を可能とする。
4.適格担保拡大の検討、預金保険機構向け・地方交付税特別会計向け貸付債権の適格担保化の実務的検討を早急に進める。

2002年9月18日
「金融システムの安定に向けた日本銀行の新たな取り組みについて」を公表
1.金融機関による保有株式削減努力の促進策=日銀による銀行保有株の直接買取=の導入検討(10月11日に「株式買入等基本要領」を制定
2.不良債権問題についての基本的な考え方の整理・公表
(金融政策決定会合終了後、通常会合で決定)

2002年10月30日
1.金融市場調節方針の変更、日本銀行当座預金残高の目標値を、これまでの「10~15兆円程度」から、「15~20兆円程度」に引き上げる。
2.長期国債買入れの増額、これまで月1兆円ペースで行ってきた長期国債の買い入れを、月1兆2千億円ペースに増額する。
3.手形買入期間の延長、これまで「6か月以内」としてきた手形買入の期間を「1年以内」に延長する。

2002年12月17日
「企業金融円滑化策について」を公表
1.証書貸付債権の担保拡大、債務者種類および当初貸付期間毎に担保掛け目を細分化し、3年以内の証貸債権の担保掛け目を引き上げるとともに、5年超10年以内の証貸債権を、新たに適格担保化。
2.資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)の適格基準の緩和、2004年度末までの時限措置として日銀取引先の保証するABCPを適格の扱いとする。
3.ストリップス債の適格担保化

2003年3月20日、福井俊彦氏日銀総裁に就任。

2003年3月25日
金融市場調節の変更
3月31日までは、日本銀行当座預金残高が15~20兆円程度となるよう金融市場調節を行う。4月1日以後は、日本郵政公社の発足に伴い、日本銀行当座預金残高が17~22兆円程度となるよう金融市場調節を行う。
2.なお、当面、国際政治情勢など不確実性の高い状況が続くとみられることを踏まえ、金融市場の安定確保に万全を期すため、必要に応じ、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。
ロンバート型貸出における公定歩合適用期間の拡大、当分の間、すべての営業日を通じて公定歩合による利用を可能とする。 
金融機関保有株式の買入れ上限の引上げ、買入総額の上限を2兆円から3兆円、買入対象先毎の累計買入限度額5,000億円から7,500億円に。

2003年4月8日潤沢な資金供給が経済活動の拡大に効果的に結びついていくためには、金融緩和の波及メカニズムを強化するため、中堅・中小企業関連資産を主たる裏付資産とする資産担保証券を、時限的措置として金融調節上の買入れ対象資産とすることについて検討を進める。

2003年4月30日
1.金融市場調節方針の変更
日銀当座預金残高の目標値を、これまでの「17~22兆円程度」から「22~27兆円程度」に引き上げることを決定。
産業再生機構に対する証書貸付債権を新たに日本銀行の適格担保とする。

2003年5月20日
金融市場調節方針の変更、日本銀行当座預金残高が27~30兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

2003年6月11日
「資産担保証券の買入れとその考え方について」を公表、具体的スキームの骨子を取りまとめ、7月末までの実施に向けて所要の準備を進める。

2003年9月12日
1.「国債現先オペの期間延長の検討について」を公表。次回決定会合で報告するよう執行部に指示。
2.「シンジケートローン債権の担保受入について」を公表、実務面での検討を進めている執行部からの報告、

2003年10月10日
1.金融調節の柔軟性を高め、流動性供給面から機動的に対応する余地を広げる観点から、日本銀行当座預金残高の目標値の上限を引き上げ、これまでの「27~30兆円程度」から、「27~32兆円程度」とする。
2.金融調節を機動的に行う観点から、国債買現先オペの最長期間を現在の6か月から1年に延長する。
3.「金融政策の透明性強化について」を公表
(1)経済・物価情勢に関する日本銀行の判断についての説明の充実。「経済・物価の将来展望とリスク評価」(4月・10月に公表。以下「展望レポート」という)で示した標準的な見通しに比べ、上振れまたは下振れが生じていないか、3か月毎の(1月・7月の)決定会合で検討し、「金融経済月報」の「基本的見解」の中で公表する。
「金融経済月報」は、現在、決定会合の翌営業日に公表しているが、このうち「基本的見解」部分について、即日公表することとする。
総裁記者会見は、現在、月1回目の決定会合の翌々営業日に行っているが、月2回目の会合を含めてすべての決定会合後、当日中に行うこととする。
(2)量的緩和政策継続のコミットメントの明確化
金融政策面から日本経済の持続的な経済成長のための基盤を整備するため、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品。以下略)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を継続することを約束している。日本銀行としては、このコミットメントについては以下のように考えている。
第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。
第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である
。こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。

2004年1月20日
金融市場調節方針の変更、日本銀行当座預金残高が30~35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。 なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。

2004年2月26日
「国債市場の流動性向上に向けた制度導入の検討」を公表、日銀保有国債を市場に供給しうる制度(いわゆる品貸し)の導入に関する実務的な検討を行い、準備が整い次第、決定会合に報告するよう執行部に指示。

2004年4月9日
「国債の補完供給制度の導入について」を公表、いわゆる「品貸し」の導入を決定。

2005年5月20日
一時的な日銀当座預金残高目標割れの容認、いわゆる「なお書き」の変更、日本銀行当座預金残高が30~35兆円程度となるよう金融市場調節を行う。なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う。また、資金供給に対する金融機関の応札状況などから資金需要が極めて弱いと判断される場合には、上記目標を下回ることがありうるものとする。
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by nihonkokusai | 2005-10-21 14:10 | 日銀 | Comments(0)

「第二条件のCPIが安定的にプラスとは」

 12日の福井日銀総裁記者会見において、量的緩和解除の三条件のうちの第二条件である「政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比がゼロ%を超える見通しを有していること」の解釈についての質問に対して、福井総裁は下記のようなコメントをしている。

 「足許の物価が何か月も続いてプラスであり、先行きもプラスであると言う時に、一回マイナスとなることを前提に議論することは、あまり生産的ではないと思われる。素直に理解すれば、足許がプラス、先行きの年度の見通しがプラスという限りにおいては、多少の波があっても概ねプラスで推移することが当然想定されているのであって、時々大きく沈むことを想定して、予測を立てるということは多分ないのではないか。」

 安定的にゼロ以上という表現をどのような解釈するのか。5年後、10年後の経済情勢など予測は困難であるため、再びCPIがマイナスとなる可能性はないとは言い切れない。たとえ先行き1年、2年後でも一時的にマイナスとなる可能性は当然あるため、一時的にせよマイナスとなることがないとするのはあまりに縛りがきついものと思われた。

 それに対して、福井総裁は「足許がプラス、先行きの年度の見通しがプラスという」ことをもって第二条件を満たすことを示唆しているものとみられる。実際に2003年10月10日の「金融政策の透明性の強化について」においては下記のようなコメントとなっている。

 「第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、展望レポートにおける記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である」

 そして今年4月に、日銀は公表する「経済・物価情勢の展望」が対象とする期間について、今後、当該年度に加え、翌年度を含めることにしており、そうなれば翌年度を含めた対象期間において、政策委員の多くがプラスとの見通しとなれば条件が満たされるものと思われる。

 今月31日に発表が予定されている「展望リポート」では、すでに新聞などが報じていたように、「2005年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)について前年度比0.1%下落としていた4月の予測を上方修正し、ゼロ%か0.1%の上昇にする見通し。2006年度の見通しについても0.3%の上昇から、0.1か0.2ポイント程度引き上げる方向で検討する」としている。

 もし、この報道どおりの内容となれば、今月末時点において第二条件がクリアされることにもなる。もちろん肝心の第一条件、「直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断する」ことが達成されてはいないが。
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by nihonkokusai | 2005-10-17 09:46 | 日銀 | Comments(0)

「量的緩和解除後の日銀当預残の引き下げ」

 何度も繰り返しとなってしまうが、外部環境等に大きな変化がない限り、日銀は10月以降のコアCPIの動向を見ながら今年度末から来年度初めにかけて量的緩和政策を解除する可能性が高い。

 その解除の方法については、3条件を満たしたことを明らかにした上で金融政策を量から金利へと戻す所謂、量的緩和を解除することを宣言するものと見られる。このタイミングとしては、「展望リポート」の発表される来年4月末の決定会合の可能性が現在のところ最も高いものと思われる。

 ただし、金利については「不連続に変化することを意味しない」との総裁発言もあったように、当面ゼロを目標とするゼロ金利政策を取っていくものと予想される。ゼロ金利の期間は少なくとも、日銀の当座預金残高を必要額まで減額するまでの期間か、さらにその後もう少し様子を見てくる可能性もある。

 それでは現在30兆円以上積みあがっている日銀当座預金残高をどのように、どの程度の期間で減らしていくのであろうかという点について考えてみたい。その前に当預残の必要額とはどのぐらいになるのであろうか。所要額としては6兆円程度と言われているが、ある程度のバッファー等が必要ともみられ、その額は10兆円程度ではないかと指摘されている。

 このため20兆円以上の当預残を減少させる必要がある。これには資金吸収などによって急激に減額するような政策も取りづらく、オペを少しずつ短期化し、手形の買いオペの期日がきたものをロールしないといった方法で徐々に引き下げを図っていくものと見られる。それでもある程度の期間は必要とも見られ、数か月といった期間をかけて減額するのではないかと予想されている。

 また、現在3.5兆円程度あるとされる郵貯の保有する当座預金残高についてどのような処理がなされるのかといったことも注目されているようである。

 結局、上記のように日銀の当預残を10兆円程度に引き下げるには、市場に大きなインパクトを与えないためにも数か月といった期間を要するものと見られ、その間はゼロ金利が維持されるものと予想される。このため、利上げが実施されるとしても来年秋以降となりそうである。また、その上げ幅について現時点で予想するのも時期尚早かもしれないが、以前に25bpではないかと指摘したが、以前の日銀の金融政策などから見て、10bpや15bp刻みとなる可能性もないとは言い切れない。
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by nihonkokusai | 2005-10-13 10:50 | 日銀 | Comments(0)

「武藤副総裁のコメント」

 昨日の日銀金融政策決定会合後の、福井総裁会見に注目が集まっていたが、引き続き量的緩和解除に対して前向きの姿勢に変りはなく、まさに想定の範囲内といった内容であった。それよりも、その前に行われた衆院財務金融委員会での武藤副総裁のコメントが一部気になった

 質問者が注目されている佐藤ゆかり氏だからではないが、武藤総裁のコメントを生で聞きたいと予定されていた13時半からネットでの中継をパソコンで見た。ここで気になったのは「今年度末から来年度にかけて消費者物価はプラスに転じる可能性が高まっている」とのコメントであった。これは明らかに言い間違えではなかろうか。実際に、9月2日のブルムバーグのインタビューにて武藤副総裁は、コアCPI前年比については「今年末から来年初にかけて、コメ価格の下落や電気、電話料金の引き下げといった特殊要因の影響がはく落していくとみられるので、そういう過程でプラスに転じていくだろう」と指摘している。今年度末ではなく今年末から、来年度ではなく来年にかけてとおっしゃりたかったのではなかろうか。

 決定会合終了してその足で国会に向かうなどたいへん過密スケジュールの影響などもあると思われ、細かいミスまで突っつくなとも言われそうだが、とりあえず指摘しておきたい。

 そして、この答弁の様子でもうひとつ注意していたことがある。たまたまであるが、武藤副総裁の答弁の際、すぐ後ろの谷垣財務大臣がテレビに映っていた。武藤氏のコメントに対してどのような反応を示すのか、興味深く観察させていただいたのだが、ほとんど表情を変えなかった。答弁の内容をあらかじめご存知であった可能性もあるが、量的緩和解除に向けて大臣の本音が多少なり表情に表れはしないかと思ったが、残念ながら(?)期待外れとなった。
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by nihonkokusai | 2005-10-13 10:49 | 日銀 | Comments(0)

「日銀の現体制下でのインフレ目標導入の可能性は薄い」

 現在の福井日銀総裁がインフレ目標といったものを導入することはないと思われる。欧州などではインフレ目標政策を導入しているところが多く、また日本でも学者を中心に「インフレターゲット」を導入するように求めた経緯があった。しかし、前任の速水総裁も現在の福井総裁も、その導入に対しては面と向かっての反対は表明しなかったものの、のらりくらりとかわしててきているように思われる。

 10月3日の衆院予算委員会でも導入を強く勧めていた質問者に対して、「透明性を高めるためのひとつの枠組み、道具立てである」との認識をまず示したが、「オールマイティーであるという考え方は取っていない」と、その導入については否定的なコメントをしている。

 執行部のひとり岩田副総裁は副総裁就任前からインフレ目標の導入には積極的と見られ、竹中大臣の意向といったものも意識されてはいるが、現在の日銀の金融政策を決定しているキーマンである福井総裁自身がその導入に否定的である限り、その導入の可能性はないと言える。審議委員においても積極的に導入すべきとの意見は少なく、その有効性を認めることはあっても導入に踏み切るべきとの主張は見えていない。

 ただし、正常時に戻った際には検討課題との意見も見られていることも事実であり、完全に否定されているわけではない。また、仮に米FRB の次期議長が、もしインフレ目標政策を導入した際には、世界の主な中銀が採用したこととなり、将来、日銀としてもその導入の検討をする可能性は否定できないことも確かではある。

 現在の日銀が無理にインフレ目標を導入する必要性を感じず、その動きに対して否定的な姿勢を示せるのは、やはりインフレ目標導入に反対しているグリーンスパン議長の存在が大きいのではないかと、個人的には思っている。

 そしてまた、日銀はすでに擬似的なインフレ目標を導入しているのではないかとの意見もあろう。量的緩和解除に際しての条件がつけられていることこそ、確かにインフレ目標と言えなくもない。しかし、福井総裁はできれば条件が整い次第、すみやかに「正常な状態」に戻したい意向も強いものと思われる。その正常な状態という中には、あらためてインフレ目標政策を取るといったことは意識されていないものと思われる。
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by nihonkokusai | 2005-10-07 10:45 | 日銀 | Comments(0)

「10月展望リポートでの物価・景気の見通し上方修正予想」

 日銀は31日の金融政策決定会合後に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」において、2005年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)について前年度比0.1%下落としていた4月の予測を上方修正し、ゼロ%か0.1%の上昇にする見通しと日経新聞が伝えている。2006年度の見通しについても 0.3%の上昇から、0.1か0.2ポイント程度引き上げる方向で検討するようである。また、2005実質経済成長率の予測も4月時点の1.3%から2% 前後に、2006年度も1.6%から上方修正する見通しのようである。

 これまでの日銀関係者によるCPIのプラス転換予測に加え、景気についての強気の見通しが、数値としても示されるようである。
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by nihonkokusai | 2005-10-06 09:45 | 日銀 | Comments(0)

「議決延期請求権」

 2000年8月11日の日銀金融政策決定会合において、大蔵省および経済企画庁からの出席者から、「日本銀行法第19条第2項の規定に基づき、議長提出の金融市場調節方針の決定に関する件に係る政策委員会の議決を次回金融政策決定会合まで延期すること」との議案が提出された。ゼロ金利解除の際における議決延期請求権の行使である。この条項はドイツのブンデスバンクを参考に取り入れられたと言われたが、そのブンデスバンクですら一度も行使されることなく ECBの設立とともにその条項は削られていた。それが日本で行使されるという異常な事態となったことを記憶している方も多いと思う。

 日銀はここにきてゼロ金利政策よりもさらに踏み込んだ「量的緩和政策」の解除に向けての姿勢を次第に強めてきている。福井総裁は10月3 日の衆院予算委員会において、「異常な政策をいつまで続けろという声にくみすることは断固できない」とまで言い切った。市場においても今年度末近辺における量的緩和解除を次第に織り込みつつある。

 量的緩和解除については3つの条件が存在するが、今年の年末にかけての特殊要因剥落などによるコアCPIのプラス転換の可能性は強く、政府も景気の踊り場脱出を表明しているように景気が回復基調を強めていることで、3条件がクリアーされる環境が形成されつつある。しかし、それでも政府や財務省は、この日銀の動きを牽制している。細田官房長官は3日に「量的金融緩和、変更する理由見出せない」とコメントしており、谷垣財務大臣も「金融政策、穏やかに続くデフレに対応必要」と量的緩和解除について慎重なコメントをしている。

 それでは、今回の量的緩和解除にあたっても、財務省と内閣府の出席者から議決延期請求権が出される可能性があるのであろうか。これは今回の量的緩和解除にあたっての大きな注目点ともなりそうなのである。

現在の執行部の布陣は、総裁は福井氏、そして副総裁は前財務次官の武藤氏と内閣府出身の岩田氏である。前任の執行部と大きく異なる点は、議決延期請求権を提出した財務省と内閣府の出身者が現在、副総裁として総裁の脇を固めていることにある。特に武藤副総裁は首相官邸とのパイプ役も担っているとも言われ、量的緩和解除にむけては極力、議決延期請求権の提出を回避させるべき役割も担っているのではないかとも見られる。量的緩和解除が想定されるまで、まだかなりの時間がある。その間、物価や景気動向を見ながら、現在の執行部が財務省や内閣府そして首相官邸への理解を求めるべく動きを活発化してくるものとも考えられる。
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by nihonkokusai | 2005-10-05 09:57 | 日銀 | Comments(0)

「福井総裁も自ら解除時期を示す」

 昨日の福井総裁の記者会見において、量的緩和解除について「2006年度に入る前か、入って数か月程度」あたりに行われる可能性を示唆した。武藤副総裁も 9月2日のインタビューにおいて、今年度後半にも解除の可能性を示しており、14日の都内のシンポジウムにおいては岩田副総裁が「量的緩和政策、現在とても出口に近いところまできている」とコメントしている。そして、須田審議委員も28日の会見の中で、「私がいる間にそういうことが起こるかもしれないし、起こらないかもしれない」と任期切れとなる来年3月末前後における解除の可能性を示していた。

 須田委員のコメントは個人的な意見といった捉え方もされていたようだが、武藤・岩田両副総裁、そして昨日の総裁コメントを見ても明らかなように、日銀執行部としても、今年度末から来年度初めにかけての量的緩和解除をすでに視野に入れていたことが伺える。

 ただし、CPIがゼロにもなっていないのにそのようなコメントをするのは早すぎるといったような意見も垣間見られ、昨日の会見などでも総裁はむしろ慎重姿勢を示すことで、8日の記者会見同様に市場へのインパクトを軽減させるのではないかとの見方もあった。私もその可能性があると思っていたが、むしろここで総裁自ら方向性をはっきりさせたいとの意思が働いたものと思われる。加えて、日銀の庭先ともいえる短期市場に対して量的緩和解除に向けての準備を進めさせるとの意図が働いた可能性もある。そのためにはある程度の期間といったものも当然必要になるためである。

 このタイミングでの発言の背景には、市場でもすでに来年4月末における量的緩和解除といったことをある程度織り込みつつあったことにより、大きなインパクトはないとの認識が働いた可能性もある。また、総裁は会見において、量的緩和解除後もゼロ金利を当面維持することを示した。このため、当預残を所要準備近辺にまで引き下げていくための必要期間以上にゼロ金利が維持される可能性もあり、それをもって市場への安心感をも与えることでインパクトを軽減させることができるとの判断が働いたのであろうか。

 日銀総裁のコメントにより、来年1-3月内での量的緩和解除の可能性もあらためて出てきている。22日の「量的緩和解除へのステップ」においても指摘したが、たとえ今年10月のCPIからゼロ以上となったとしても、3か月分のコアCPIを確認できるのは1月27日であり、確認後の決定会合は2月8・9日となる。この時点で「安定的にゼロ以上」と確認することが可能かどうか。もう少し余裕を持って、来年4月末の「展望リポート」での数値上の裏づけ(2006年度、2007年度の審議委員の見通し)とともに実施するのが、対外的にも理由を得やすいとも考えられる。

 それでも年度内の可能性を示していることは、日銀執行部としても条件が揃い次第、なるべく早いタイミングでの解除実施を模索している可能性もある。景気の踊り場からの脱却も明確化しつつあり、土地の下げ止まりなどデフレ脱却への動きも見えつつある。企業業績の回復などを見越しての株の上昇などもあり、政府や財務省などもゼロ金利がある程度維持されることとなれば、日銀の量的緩和解除への姿勢には理解を示してくるものと考えられる。

 日銀の量的緩和は、デフレという重い病気にかかった病人を回復させるために、必要以上の薬を投与し続けていたことにも例えられる。その薬の効果を計ることも難しいものの、その副作用も当然あったはずである。病人はすでに病気の改善も見えてきている上に、基礎体力を回復しつつある。大量の薬の投与は本来やめるべきであるが、やめたことによって病気が再発するような懸念も指摘されてしまい、医師もかなり慎重にならざるを得なかった。しかし患者もここにきて目に見えての回復基調となったことで、やっと回りの理解も得られるようになり、薬の投与を必要最低限に抑えることが可能になったと医師たちは判断したものと思われる。当分の間、患者はベッドに寝たままで、さらなる回復を待つことを条件に、薬の大量投与をやめるタイミングをある程度固めてきたものと思われる。
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by nihonkokusai | 2005-09-30 10:18 | 日銀 | Comments(0)

「大阪経済4団体共催懇談会における総裁挨拶要旨より」

 当面の金融政策運営については、消費者物価指数の前年比がなおマイナスで推移しているもとで、先ほど述べた「約束」に沿って量的緩和政策を堅持していく方針です。

 この「約束」は、2001年3月に量的緩和政策を採用した際に行ったものです。当時は、世界的なITバブルが崩壊し、総需要が落ち込んだ結果、景気は後退し、物価が下落していました。こうした中で、日本銀行は、ゼロ金利のもとでも何とか金融緩和効果を生み出すため、量的緩和政策の実施期間を現実の消費者物価指数と結び付けて判断するという異例の措置に踏み切りました。

 その後、2003年10月には、この「約束」の内容を明確化し、(1)消費者物価指数の前年比が「数ヵ月均してみてゼロ%以上で推移すること」、(2)「先行き再びマイナスに戻らないと見込まれること」を条件としました。この2つは解除の必要条件、すなわち、「これが満たされるまで続ける」という意味で堅固な「約束」です。同時に、この2つの条件は必要条件であるが十分条件ではなく、「満たされたら機械的に解除する」ものではない点も、当然のことですが明示しました。量的緩和政策の解除に当っては、これらの考え方に沿って経済・物価情勢を点検し、「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」になったといえるかどうか、言い換えれば、「約束」で示した条件が全体として満足されたかどうかを確認していくことになります。

 いつ量的緩和政策解除の判断ができるかは、もとより今後の経済・物価情勢次第ですが、先ほど述べたような見通しを前提にすると、2006年度にかけて、その可能性が次第に高まっていくと考えています。

 その際には、日々の金融調節における操作目標を日銀当座預金残高から短期の市場金利に戻すことになります。先ほども述べたように量的緩和政策が実態としてゼロ金利に近付いていることを考えると、政策枠組みの変更はそれ自体で、金融政策が不連続に変化することを意味するものではありません。金融政策の姿は、先行きの経済・物価情勢により左右されますが、4月の展望レポートで述べたように、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって、物価が反応しにくい状況が続いていくのであれば、引き続き緩和的な金融環境が維持されていくことになると考えています。


以下、日銀福井総裁発言についての感想

 上記が今回の総裁コメントの最後の部分である。このところ副総裁や審議委員から量的緩和解除について前向きなコメントが出ていただけに、今回もややブレーキ役となるのではと勝手に想像していたが、むしろ副総裁や各審議委員のコメントと同じ方向性での発言内容になった。

 日銀は慎重な姿勢を示しているものの、来年度にかけて量的緩和解除を視野に入れていることがこれではっきりしたものと思われる。そして、解除後についても言及している点にも注意したい。政策枠組みの変更はそれ自体で、金融政策が不連続に変化することを意味するものではないと強調しているように、量的緩和を解除したとしても直ちに大幅な利上げとかは想定してはおらず、ここには一時的なゼロ金利という期間を置いたのち、経済環境を見越した上で、小幅な利上げをタイミングを見て実施するのではないかとも思われる。

 解除条件について、あえて「金融政策の透明性の強化について」で触れていた「展望リポート」については今回もコメントせず、「(1)消費者物価指数の前年比が「数ヵ月均してみてゼロ%以上で推移すること」、(2)「先行き再びマイナスに戻らないと見込まれること」を条件としました」としている。これは展望リポートの発表のタイミングに限らず解除を行う可能性も考慮しているのかとも読めなくもないが、やはり展望リポートで今後の物価や景気動向の予測を示して、これをもって解除の条件を満たしたとする方が示しやすいものとも思われる。その意味では、やはり2006年4月末の会合における量的緩和解除の可能性が強いものと思う。
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by nihonkokusai | 2005-09-29 16:46 | 日銀 | Comments(0)

「量的緩和解除に際しての3つの条件」

 2003年10月10日の「金融政策の透明性の強化について」より、

2. 量的緩和政策継続のコミットメントの明確化

 日本銀行は、金融政策面から日本経済の持続的な経済成長のための基盤を整備するため、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品。以下略)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を継続することを約束している。日本銀行としては、このコミットメントについては以下のように考えている。

 第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。

 第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。

 こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。
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by nihonkokusai | 2005-09-29 09:29 | 日銀 | Comments(0)
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