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カテゴリ:日銀( 1099 )

「日銀総裁会見内容検証」

 注目された18日の福井日銀総裁会見内容から注目すべき部分をピックアップしてみたい。

 「3つの条件とおっしゃるが、基本的には、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になったかどうかを皆で確認し合うということであるので、かなり的を絞って皆様が同じものを見ることができる。」

 3つの条件を満たすということは、コアCPIが安定的にゼロ以上になったかの確認であるとの認識である。しかし、日銀に理解を示しているとの与謝野金融経済財政担当相も「量的緩和解除の第三条件、全体考えて判断する余地ある」とのコメントをしているように、条件に対しての認識は日銀とはやや距離がある。この溝をどのように埋めていくのかが今後の大きな課題とも言える。

 「将来にわたって予見し得ない様々なショックが起こり得る可能性があるということは、すべての国の中央銀行が十分念頭に置きながら、そういう意味ではある程度リスクをとりながら政策運営をやっていかざるを得ない。予見し得ないことまですべて織り込もうとして、手をこまねいてタイミングを失するわけにはいかない。」

 これも市場関係者からもよく指摘されるように、もし仮に量的緩和解除後に景気の悪化などがもたらせられたらゼロ金利解除時の二の舞になるのではとの懸念に対する総裁の答えのひとつである。

 「日本経済については、特に民間部門での過去10年以上にわたった厳しい努力の成果として、ショックに対する脆弱性がかなり消えた。つまり、ショックに対してそれを吸収する力がある程度ついてきている。しかし、それにかまけることなく、私どもは先行きを見極める目をしっかり持って判断していきたいと思っている。」

 2000年8月のゼロ金利解除時と大きく異なるのはファンダメンタルの状況にある。2000年時の日本の景気回復については本格的なものとはいえなく脆弱性もあった。しかし、ゼロ金利導入時の経緯から見て、この一時的に取らざるを得なかった政策は早急に元に戻して、日銀としてのフリーハンドを取り返そうとの動きでもあったかに思える。ところがITバブルの崩壊は日本経済の当時の脆弱性を露呈させてしまい、その非が日銀に集中してしまった。このタイミングの悪さといったものは当然ながら福井総裁も十分に知りぬいているはずである。あのときと現在では、日本経済の基礎体力が違っていることを総裁は示唆しているものと思われる。

 「量的緩和政策が、重い文鎮を置くあるいはコミットメントを置くというようなかたちで金利機能を金縛りにしているという状況に比べると、単純なゼロ金利政策は、イールドカーブの一番期間の短い金利の部分のみを調節の結果としてゼロに抑えるということであるので、金利機能を抑圧するという度合いは随分違うとご理解頂けると思う。」

 量的緩和政策とゼロ金利政策の違いの説明ともなっている。「重い文鎮」とか「コミットメントを置く」との表現は面白い。量的緩和政策の現実的な効果といったものはいかほどであったのか図るのは難しいが、心理的に与えていた影響はそれなりに大きなものがあったはずである。なんといっても諸外国から福井日銀総裁はかなり高く評価されていたのもその現われであったはずである。ただし現場サイドからは、量を増やすことに対してその効果のほどを疑問視する声が多かったことも確かではあった。

 そして記者から「政府の中では、生鮮食品とエネルギーを除くというかたちで数字の公表を検討している」件についての総裁の答えは以下のとおり

 「先程も申し上げた通り、生鮮食品を除く消費者物価指数すなわち日本のコアの消費者物価指数は、おそらく非常に多くの国民の皆様が経済活動、経済生活をしていく中で、一番わかりやすい指標だと思う。これを共通の基準として約束してきているので、あまり技術的な理由で中身を入れ替えるようなことをして、また国民の皆様に頭の中で整理し直して頂く必要はないのではないかと思う。私どもは従来から約束している基準で最後まで一緒に見させて頂く。」

 日銀の解除に向けて姿勢に反対する人たちはあれやこれやと理由付けをしようとしているが、本来の約束は現状のコアCPIにある限り、新指標をもって解除できないとの理由にはならない。もちろんその数値をまったく意識するなということではないが。

 そして最後に総裁は、下記のように現在の日本経済の姿について再度コメントしている。まさに「日本経済は(解除をしても)危なくない」と私も思う。

 「ここまで日本経済において、特に民間部門の構造改革が進み、バランス・シートの健全化が進み、イノベーションが強いという経済を前提とした場合、何か強いショックが来たからといって単純に量的緩和政策に戻らなければならないような弱い経済であろうか。その点を私どもはしっかりと点検した上で量的緩和政策の枠組みの修正に踏み切るということである。」
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by nihonkokusai | 2005-11-22 10:06 | 日銀 | Comments(0)

「政治と金融政策」

 次期FRB議長となるバーナンキ氏は政治と宗教の話はご法度といった環境で育ってきたと報じられていたが、金融政策について政治の話はご法度というわけには、どうやらいかないようである。

 日銀の量的緩和解除に向けての姿勢に、待ったをかけた中川秀直政調会長などの発言に対して、福井日銀総裁がどのような発言をしてくるのか。政治家の発言した日がちょうど金融政策決定会合前のブラックボックス期間であったため、日銀サイドからの発言が控えられていたこともあって、市場関係者などの注目を集めていた。

 福井総裁の会見内容は、 2006年度にかけて量的緩和解除の可能性高まるとの判断に変更ない、としてこれまでの姿勢を貫いた。また政府との関係については、政策協定、あまり必要性は感じていないとしてアコードといったものは否定した。また、政府と日銀、異質のことを目標にはしていないとのコメントもあったものの、政府と日銀は責任を負う範囲が違う、細部にわたり意見の一致みるかは別の話とのコメントも見られた。

 11日の会見では、異常なものはいつまでも続けられない、通過点を間違いなくこえさせてもらうといった、福井総裁としてはややきつめの表現をしていたが、18日の会見ではここまで踏み込んだものではなかったとはいえ、政治家のコメントに対する答えは、「ノー」であったことに変りはない。

 このままでは再びゼロ金利解除時の二の舞、あくまで政府との関係においてではあるが、の可能性も出てきた。議決延期請求権といったものを意識すれば、担当大臣の谷垣財務相し与謝野金融・経済財政担当相の意向が重視されそうだが、最終的な判断は小泉首相が握っているものと思われる。

 その小泉首相はAPECが開かれた韓国釜山において、記者の質問に対して、(日銀が量的金融緩和政策を解除する可能性が高まっていることについて)「それは日銀が判断することだ」とコメントしたと伝えられている。断言するのも危険ではあるものの、小泉首相は中川氏などよりは、日銀の意向についてはある程度理解を示しているとも考えられるのである。

 福井総裁は18日の会見において、政府側からのコメントに対して「現状消費者物価指数がマイナスであることを前提に政府の発言が色々あっても、私どもの基本的な認識と相違はないと思っている」と発言している。13日の中川発言に続き、、小泉首相も同日に記者の質問に答えるかたちで、「まだ早いのではないか。物価がゼロ以上ないと。まだデフレ状況だ」とコメントしていたが、この答え方とさきほどの福井総裁の指摘するコメントについては整合性があると思われる。
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by nihonkokusai | 2005-11-21 10:26 | 日銀 | Comments(0)

「ボジョレー・ヌーボー」

 昨日はブルームバーグさんのボジョレー・ヌーボーのテイスティングパーティーに参加させていただいた。スタート時間少し前に行ったところ、ほとんど人がおらずまさに飲み放題状態であったが、時間が経つにつれてすごい人数に。最後はワイングラスが間に合わないほど。貴重なヌーボーもいただき、しっかり堪能させていただいた。

 テーブルをご一緒させていただいた方が、音声認識の会社アドバンスト・メディアの鈴木清幸社長であった。ご本人に直接、携帯電話を使っての音声認識の技術を見せていただき、その認識力にたいへん驚いた。すでに医療関係などでアドバンスト・メディアの音声認識技術は使われており、会社もしっかり黒字を続けているとお聞きした。久しぶりに理系の先端を走っている方のお話を聞いていたく感激。

 そして、久しぶりに富国生命の桜井さんともお会いして、最近の債券相場や日銀の動向などについてもお聞きした。金融政策とは直接関係ないが、福井総裁のお人柄はとても良い方というお話も伺ったが、これは別の方からも伺ったことがある。そして、よく奥様とご一緒の姿も見かけられるとか。福井総裁にはぜひ一度、お話を伺ってみたい気もするが、さすがにそれはちょっと無理か・・・。

 その福井総裁の現在の胸のうちや如何に。マーケットは本日の福井総裁会見内容に注目している。しかし、これまでとトーンに大きな変化はないと思われる。小泉首相が郵政民営化を目指したように、福井日銀はデフレ脱却とともに量的緩和解除を目指している姿勢に変りはないはずである。
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by nihonkokusai | 2005-11-18 09:37 | 日銀 | Comments(0)

「behind the curve」

 ビハインド・ザ・カーブは「後手に回る」と訳されているが、すでにグリーンスパン議長などの発言を受けて金融専門用語にもなっているようにも思われる。

 日銀執行部が量的緩和解除について具体的な言及をし始めたのは9月に入ってからのことである。武藤副総裁は9月2日の異例とも言われたブルームバーグでの単独インタビューにおいて、今年度後半にも解除の可能性を示した。また、14日の都内のシンポジウムにおいては岩田副総裁が「量的緩和政策、現在とても出口に近いところまできている」とコメントしている。そして、29日の福井総裁の記者会見において、量的緩和解除について「2006年度に入る前か、入って数か月程度」あたりに行われる可能性を示唆した。

 そして10月末に発表された展望レポートを受けて「展望レポートに示された経済・物価見通しが実現することを前提とすると、2006年度にかけて、量的緩和政策の枠組みを変更する時期を迎える可能性は高まっていくとみられる」と総裁はコメントした。

 総裁が指摘していたのはあくまで予測・可能性ではあるものの、この発言を巡っては一部市場関係者のみならず政府側からも時期尚早といった声が出ていた。コアCPIが現実にゼロ以上に浮上してからコメントしてもおかしくはないのではないか。ビハインド・ザ・カーブのリスクをとることを強調していたのにおかしいのではないかと言った声も上がっていた。しかし、総裁も、あくまで見通し・予測を示しているだけであり、ビハインド・ザ・カーブという約束を反故しているわけではない。

 量的緩和解除は3つの条件が整い次第行うであろうことは明白なものである。この3条件を整う環境にあること自体がすでにビハインド・ザ・カーブであるとの認識であったはずである。そもそも「後手に回る」というものは発言といったものを指すのではなく、政策変更自体のことを示しているはずである。

 CPIは、たとえばGDPや機械受注といった経済指標などのように、予測が実数値と大きく乖離するようなことは稀である。ある程度の予測が可能なものである。そしてまた10月以降は「特殊要因剥落」といった技術的な修正があることで、余ほどのことがない限り年末にかけてのプラス浮上は可能性が高いことは事実である。

 そしてまた、日銀と政府は日本経済に関して「踊り場からの脱却」を宣言しているなど、景気認識についてもある程度、日銀は政府と共有している。また、先行きの見通しについては、展望レポートで明らかにしている。これにより、解除条件が整う環境が迫りつつあることは確かであろう。それでもあえて、解除に向けての姿勢は明確にせず、あいまいなまま濁しておいて、しっかり条件が整うまでじっと待つべきであろうか。

 10月31日の福井日銀総裁会見において、福井総裁は次のような発言もしている。「量的緩和政策の導入と同様、枠組みの変更も先例のないものであるだけに、金融市場において経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行なわれていくように配慮することが重要である」

 総裁が前向きな姿勢を示しているのは、タカ派な考え方をしているとか、スピードを重視する姿勢といったことも影響しているのではとの見方もあるが、多少それはあるとしても、もう少し現実的な要因もあったのではなかろうか。それが上記のコメントに現れていると思われる。つまり、先例のない枠組みの変更も慎重な配慮が必要であることを示唆している。

 ほとんど機械的となってしまっていた資金繰りについても、量的緩和が解除されれば再び金融機関はある程度職人芸的なノウハウの取得が必要とされる。これまで金融調節における資金繰りなどのリスクといったものが日銀に集中していたものが、再び金融機関に戻されることとなる。また量的緩和解除となれば、その後日銀の当座預金残高を引き下げねばならず、それに向けてのオペの対応といったものも解除前にある程度整えておく必要もあろう。そういった準備期間なども配慮すれば、解除時期などについてある程度事前に知らしめておくことも必要となるはずである。「円滑に行なわれていくように配慮」というものにそういった意識があったのではないかとも推測されるのである。
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by nihonkokusai | 2005-11-17 14:15 | 日銀 | Comments(0)

「議決延期請求権(10月5日の「若き知」の再アップ)」

 2000年8月11日の日銀金融政策決定会合において、大蔵省(現、財務省)および経済企画庁(現、内閣府)からの出席者から、「日本銀行法第19条第2項の規定に基づき、議長提出の金融市場調節方針の決定に関する件に係る政策委員会の議決を次回金融政策決定会合まで延期すること」との議案が提出された。

 ゼロ金利解除の際における議決延期請求権の行使である。この条項はドイツのブンデスバンクを参考に取り入れられたと言われたが、そのブンデスバンクですら一度も行使されることなくECBの設立とともにその条項は削られていた。それが日本で行使されるという異常な事態となったことを記憶している方も多いと思う。

 日銀はここにきて「量的緩和政策」の解除に向けての姿勢を次第に強めてきている。福井総裁は10月3日の衆院予算委員会において、「異常な政策をいつまで続けろという声にくみすることは断固できない」とまで言い切った。市場においても今年度末近辺における量的緩和解除を次第に織り込みつつある。

 量的緩和解除については3つの条件が存在するが、その3条件が徐々に達成される環境が形成されつつある。今年の年末にかけての特殊要因剥落などによるコアCPIのプラス転換の可能性は強く、政府も景気の踊り場脱出を表明しているように景気が回復基調を強めているためである。

 しかし、それでも政府や財務省はこの日銀の動きを牽制している。細田官房長官(当時)は10月3日に「量的金融緩和、変更する理由見出せない」とコメントしており、谷垣財務大臣も「金融政策、穏やかに続くデフレに対応必要」と量的緩和解除について慎重なコメントをしている。

 それでは今回の量的緩和解除にあたっても、財務省と内閣府の出席者から議決延期請求権が出される可能性があるのであろうか。これは今回の量的緩和解除にあたっての大きな注目点ともなりそうなのである。

 現在の執行部の布陣は、総裁は福井氏、そして副総裁は前財務次官の武藤氏と内閣府出身の岩田氏である。前任の執行部と大きく異なる点は、議決延期請求権を提出した財務省と内閣府の出身者が現在、副総裁として総裁の脇を固めていることにある。特に武藤副総裁は首相官邸とのパイプ役も担っているとも言われ、量的緩和解除にむけては極力、議決延期請求権の提出を回避させるべき役割も担っているのではないかとも見られる。

 量的緩和解除が想定されるまで、まだかなりの時間がある。その間、物価や景気動向を見ながら、現在の執行部が財務省や内閣府そして首相官邸への理解を求めるべく動きを活発化してくるものとも考えられる。
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by nihonkokusai | 2005-11-16 09:31 | 日銀 | Comments(0)

加筆

昨日アップしました「日銀VS政府」に一部加筆いたしました。
それにしても政府の目的や如何に?
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by nihonkokusai | 2005-11-16 09:07 | 日銀 | Comments(0)

牛さん熊さんの名探偵ホームズ編

熊「ということで、ワトソン君、政府の事情とやらを推理してみようじゃないか」
牛「えっ、あっ、あのなあ、唐突になんなんや」
熊「そもそも、何で中川政調会長は日銀法改正まで持ち出したのか」
牛「昔、金丸さんとか言っていたことを思い出して言ってみようかなあと」
熊「どうも、後ろには竹中総務相の影も見え隠れしていると思わないか」
牛「そういえばCPIを出しているのは日銀やなくて総務省やったな」
熊「来年8月の改定ではエネルギー除くコアの数値も検討しているとか」
牛「現在のCPIは原油価格上昇でそれなりにかさ上げはされている」
熊「CPIはそう簡単にはゼロ以上にはさせん!、なーんてな」
牛「でも、中川さんと竹中さんて、歳出削減優先論者でもあるんじゃ」
熊「そして日銀寄りといわれた与謝野さんの日銀離れと言われた谷垣さんは」
牛「離れという意味が良くわからんけど」
熊「増税優先論者でもある」
牛「でも、小泉総裁は来年度の新規財源債は30兆円程度にしろって」
熊「そうそう、まずは歳出削減が優先すべきと、作者は言っているな」
牛「コナン・ドイルが?」.
熊「しかし、良く考えると歳出優先にせよ増税優先にせよ景気にはマイナスとも」
牛「その間、日銀には是非とも異常な金融政策を続けてもらわなくては」
熊「手を組んだ・・・のか?」
牛「それでもって、後場先物はチャートも上にブレークしちゃって137円85銭に上昇」
熊「こうなると投資家さんも待っていられなくなって買いを入れざるを得ないと」
牛「10年273回は5.5毛強の1.460%、20年82回5毛強の1.985%」
熊「そして、30年20回6.5毛強の2.315%まで買い進まれた」
牛「とはいっても上昇ピッチ早かったこともあり」
熊「買いが一服するとさすがに少し戻り売りも入ったが」
牛「先物の大引けは137円80銭となんと前日比40銭高」
熊「ということで、話を戻すと、とはいっても何か政府の対日銀発言には要因も」
牛「関連があるのかどうかわからないけど、明日は大物のチンパンジーがやってくる」
熊「もしそれが某国の某大統領を示すとすると某米国大使館からクレームが」
猫「ブッシュさんが後ろからプッシュしていると言うのね」
熊「としても、理由が良くわからないし、関係ないかもしれないし」
猫「でも日銀のゼロ金利政策もアメリカからのプッシュがあったんでしょ」
牛「さあて、この謎は解けるんやろうか」
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by nihonkokusai | 2005-11-15 16:39 | 日銀 | Comments(0)

「日銀VS政府」

 自民党の中川秀直政調会長は13日に京都市内で開かれた自民党府連のパーティーで、日銀の金融政策について「日銀は政策目標での独立性はなく、政権と合致させる責任がある。それが分からなければ日銀法の改正を視野に入れなければいけない」と指摘した。また、小泉首相も同日に「まだ早いのではないか。物価がゼロ以上ないと。まだデフレ状況だ」とコメントしていたが、これは実際にはさほど強いトーンでのものではない。

 さらに15日には谷垣財務相が「国と日銀の政策が別方向に行くことはおかしい、方向感は一致すべき」、「デフレは依然として継続しているとの認識、政府と日銀にそごはない」、「日銀の金融政策は大きな意味で国の政策の一環」との発言を行っている。加えて与謝野金融・経済財政担当相も「量的緩和解除の第三条件、全体考えて判断する余地ある。」、「日銀に独立性あるが、政府政策との整合性定めた日銀法の精神もある」とこれまでの日銀寄りの発言からややトーンを変化させてきている。

 上記の政府側の発言は11日の下記のような福井日銀総裁の発言を意識したものとの見方が強い。「物価の動き、ユニット・レーバー・コストなどで正確に判断できる」「デフレ脱却をひとつの時点で明確にできる人いない」「量的緩和は金利機能殺す非常手段、異常なものはいつまでも続けられない」「物価の上昇ペース、加速していく可能性は低い」「CPIの安定的プラス確認したらひとつの通過点を間違いなくこえさせてもらう」「一度プラスになった CPIが簡単にマイナスに戻ること考えにくい」。

 特に「異常なものはいつまでも続けられない」「通過点を間違いなくこえさせてもらう」といった表現はこれまでになく強いもののように思われ、これが政府側に反応を起させたと見る向きも多いが、果たしてそうであろうか。

 上記の福井発言は、どこか2000年4月12日の当時の速水日銀総裁の会見内容を思い起こさせる。この際は、当時の森前首相の就任挨拶でゼロ金利解除に前向きな姿勢を速水総裁が示したものの、快い返事がなかったことなどが要因で、速水総裁はさらなる強気の姿勢を示したのではないかとの憶測もあったが、会見時はかなり異質な雰囲気に包まれたと言われていた。

 今回、政府側と日銀執行部で何かしら接触があったとしてもおかしくはない。このタイミングでの政府の日銀の量的緩和解除に対するトーンの変化は何かしら要因があってしかるべきとも考えれる。

 このタイミングでの政府の日銀の量的緩和解除に対するトーンの変化は、むしろ何かしら別途要因があってしかるべきとも考えられる。たとえば、政府サイドからの日銀牽制コメントは、帝国データバンクによる調査にもあったように企業経営者の多くが量的緩和解除を時期尚早としており、また日本商工会議所の山口信夫会頭も「慎重に対応して欲しい。(中小企業にとって)景気はそれほど良くなっていない」といったコメントをしていた。このように自民党の支持基盤のひとつとも言える企業経営者の意識といったものも背景にある可能性がある。

 あまり憶測ばかりしてはいけないものの、気になる今後の予定のひとつに、16日の日米首脳会談がある。日本のデフレ脱却に向けた意思表示と取れなくもない。そしてこれはあくまで憶測に過ぎないが、米国政府からの何がしかの圧力があったと可能性もある。そもそも以前のゼロ金利政策自体が米国政府からの要請に応じたものと言えなくもなかった。しかし、今回も米国再度の意向があったとしてもその理由がつかめない。

 また17日から18日にかけては日銀の金融政策決定会合が開催される。まさかここで量的緩和解除といった可能性はないが、何がしか動きがある可能性もあるのであろうか。また、政府側の発言はこのブラックアウト期間を意識したものといった見方もあった。

 政府部内では、歳出削減が先か増税が先かで意見が完全に分かれている。しかし、どちらにしても景気に対してはマイナス要因とも考えられ、日銀による金融政策でのフォローは続けてほしいところであろう。このため、日銀包囲網という点ではどうも歩調を合わせている感もある。この事態、いったいどのように理解すべきなのか。もう少し様子を見る必要もあると思われる。
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by nihonkokusai | 2005-11-15 14:43 | 日銀 | Comments(0)

「量的緩和というモルヒネ」

 最近、NHKのBSで「コンバット」が再放送されている。現在、昭和30年台が再びブームになっているが、このコンバットが最初に放映されたのは昭和37 年である。私の両親もコンバットが大好きで、私も一緒になって見ていた記憶がある。このコンバットの中での「チェックメイト、キングツー」といった合言葉とともに、「モルヒネ」という単語が強く私の印象に残っていた。第二次世界大戦当時、モルヒネは戦闘で傷ついた重傷者のための鎮痛剤として使われていたようである。モルヒネは劇薬であり麻薬であるが、現在でも通常の鎮痛薬で抑えられない痛みに対して使われている。

 前置きが長くなったが、バブル崩壊後、金融システム不安やデフレなどの解消などのため、公的資金の導入に加えて、異常とも言える日銀の金融政策でこれまで日本経済を支えてきた。しかし、そういった異常事態があらゆる面で解消に向かいつつあることは誰の目にも明らかとなりつつある中、日銀も類を見ないほどの異常な金融政策である量的緩和政策の解除に向けて一歩踏み出そうとしている。

 日銀の政策委員でもある西村氏は、かつて「モルヒネを打ちながら日本経済は非常に大きな困難を乗り越えてきた」と表現していた。その上で、「モルヒネは劇薬だからいつかはやめなければならない」ともコメントしていた。

 この量的緩和というモルヒネの作用のひとつに、長期金利を低位安定させておくというものがある。短期金利をゼロに押さえ込むとともに、解除に向けての条件をつけることで時間軸効果を生み出すことで可能となった。

 この長期金利の低位安定は、巨額の国債発行を担当しさらに莫大な債務を管理しなければならない財務省にとってもたいへん好都合であったものと思われる。むろん、長期金利の低位安定には財務省の国債管理政策が適切に運営されていたという側面も見逃せないとともに、小泉首相の掲げた財政構造改革路線といったものも国債の信用度を維持させたものと見られる。

 しかし、経済が異常な状態から脱しつつある中にあり、モルヒネの使用は早く控えるべきである。そしてまたモルヒネは増税を主体とした財政構造改革には使用すべきものではないと考える。まずは徹底した歳出の見直しを図るべきであり、国民が納得できるだけの歳出削減が可能となったあとに増税を考えても良いのではなかろうか。

 プライマリーバランスの均衡化という錦の旗のもとに、構造改革の進展の阻害要因にもなりかねない安易な増税を図ることについては、国民の理解は得られないものと思われるし、それを日銀が異常な政策を続けることで側面支援すべきものでもないと思う。
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by nihonkokusai | 2005-11-14 11:28 | 日銀 | Comments(0)

「日銀の展望レポート」

 10月31日に発表された日銀の展望レポートにおいて、コアCPIの今年度及び来年度予想は、ほぼ事前に新聞などで報道されていたものと同じものとなった。しかも政策委員全員の見通しと大勢の見通しが全く同じものとなっていた。これは予測ではあるものの、審議委員が一丸となって量的緩和解除に向けての強い意志表示を示したものとも受け取れる。

 ちなみに、2005年度のコアCPI予想は0.0~+0.1%で中央値は+0.1%(4月の見通しは、-0.1~+0.1%、中央値-0.1%)、2006年度の予想は+0.4~+0.6%で中央値は+0.5%(同+0.2~+0.4%、+0.3%)。

 そして展望レポートの「金融政策運営」においては、今回の展望レポートの経済・物価見通しが実現することを前提とした上で、「現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、2006年度にかけて高まっていく」「枠組みの変更は、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融市場調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することを意味する。」「枠組み変更後のプロセスを概念的に整理すると、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序をたどることになる」としている。

 量から金利への枠組み変更の宣言ののち、ある程度の時間をかけて当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、その間はゼロ金利政策とし、その後状況を見ながら金利の目標水準を引き上げていくと見られる。

 それでは、量的緩和解除の時期はいつ頃と推測できるであろうか。レポートでは「現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、2006年度にかけて高まっていくと」しており、これまでの福井総裁コメントとほぼ同じ内容となっているが、コアCPIの予想をこの時点で、緩和解除の条件を満たす水準にまで引き上げられている点に気をつけたい。来年4月末に発表される展望レポートの内容を確認してとの見方も現在強いが、すでに10月レポートの予測でその基準は満たしているとも思える。このため、実際に全国コアCPIがゼロ以上に浮上し、それが数か月続くことを確認し、その間、レポートの指摘する「海外経済の想定外の減速など大きな外的ショック」などなければ解除に踏み切る可能性が高い。

 10月の全国コアCPIはゼロ以上になる可能性が高く、その後もゼロもしくはプラスとなろう。3か月分のコアCPIを確認できるのは来年1月27日であり、確認後の決定会合は2月8・9日となり、この際に量的緩和が解除される可能性が高まったと思われる。
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by nihonkokusai | 2005-11-01 15:06 | 日銀 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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