牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:日銀( 1071 )

日銀の正常化が困難を極める原因のひとつがアベノミクス

米国の中央銀行にあたるFRBは正常化に向けた歩みを着々と進め、カナダの中央銀行も利上げが視野に入りつつある。イングランド銀行では利上げ推進派が3名に増え、こちらもいずれかのタイミングで利上げを決定する可能性が出てきた。ちなみにイングランド銀行は議長である総裁が少数派となることもあるなど、空気など読まずに本当に意味での多数決で金融政策が決定されることがありうる。ECBもひとまず追加緩和に傾斜する姿勢を中立に戻している。

日銀も表向きは物価目標が達成できないことで強力な緩和を推し進めるという姿勢は維持しているものの、政策目標を量から金利に戻したことでステルステーパリングを行うなど、実際には少しブレーキを掛けている。

それでも欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を取りつつある中、このままだと日銀だけが取り残されることも予想される。そのためか、ここにきて日銀の出口戦略に対する関心も高くなってきている。しかし、日銀は物価目標達成のためにリフレ政策を取ってしまったことで、自ら退路を塞ぎ、正常化に向けて舵を取るには多くの障壁を作ってしまった。

リーマン・ショックに代表される米国の金融機関の経営危機が世界的なリスクを増大させ、そのあとギリシャの財政問題がユーロというシステムの危機を迎え、それぞれ百年に一度という世界の金融経済危機を迎えた。それに対処するには最終的に中央銀行の金融政策に依存せざるを得なかった。

当時のFRBのバーナンキ議長やECBのドラギ総裁なども、日銀が試していた量的緩和政策などの非伝統政策に追い込まれたというより、壮大な実験を自ら試したかったこともあったのかもしれない。そう簡単にオペなどで売れないであろう長い期間の国債の買い入れ等を主体とした非伝統的手段を打ち出した。それらが結果的に市場の不安感を後退させて、百年に一度のリスクは沈静化していった。

そのようなタイミングで出来たのが、世界的なリスクに対応するため、ではなく長く続くデフレ脱却を掲げたアベノミクスである。デフレは日銀の金融政策の踏み込みの甘さが原因として、リフレ派の主張を取り入れたのがアベノミクスであった。

危機対応ではなくデフレ対応の大胆な金融緩和を柱としたアベノミクスは、そのタイミングがたまたま世界的な金融危機の後退期にあたり、それが急激な円高の巻き戻しを呼び、急速な株高を誘発した。円安効果と世界的なリスクの後退、原油価格の高止まり、消費増税前の駆け込み需要なども加わり、一時的に物価も上昇しコアCPIは前年比プラス1.5%まで上昇した。しかし1年後の円安効果が剥落するなどして、CPIは再びゼロ近傍となってしまった。

あのタイミングで日銀が嫌っていたはずのリフレ政策を時の政権が強制的に打ち出したことで、円安などによる一時的な物価上昇は起きたが、それは日銀が長い期間の国債を大量に購入した結果によるものではなかった。ヘッジファンドなどの仕掛けによるポジション調整が円高トレンドを変えさせた影響が大きかった。だから物価上昇が長続きしなかった。

日銀の異次元緩和で物価目標達成が可能という前提に問題があったことを証明するのに4年以上の歳月が必要となった。しかし、それは当然日銀も現政権も認めることはしないであろう。実はそれが日銀が正常化を困難とする大きな足かせとなってしまっているのである。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-06-20 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀の物価目標達成までにはまだかなりの距離が存在

5月26日に公表された4月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となり7か月連続のプラスとなった。日銀の物価目標ともなっている生鮮食品を除く総合は前年比プラス0.3%となり、こちらは4か月連続の上昇となった。生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比変わらず。

寄与度をみてみると、原油価格の底打ちによる影響が引き続き大きいようである。ガソリンなどの上昇幅が縮小したものの,電気代がプラスに転じ都市ガス代などの下落幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅が寄与していた。

全国消費者物価指数の先行指標とされる5月の東京都区部の指数は、除く生鮮で前年比0.1%の上昇となり、2015年12月以来のプラスとなった。電気代やエアコンなど家庭用耐久財の上昇、携帯電話機のマイナス幅縮小が寄与した。

このように日本の消費者物価指数は原油価格の底打ちの影響によって、やっと前年比プラスに転じてきている。しかし、欧米の物価指数に比べてもかなり低い水準にあるといえる。

いまでも日銀の異次元緩和は継続されており、日銀のバランスシートは膨らみ続け、市場から異常ともいえる大量の国債の買い入れを続けている。日銀はこれによって物価目標を達成するとしていたが、いっこうに達成する気配はない。

日銀は物価目標の達成時期を延期し続け、さらに質的・量的緩和の拡大やマイナス金利の導入、長期金利を政策目標に据えたりと手を変え品を変え、次元が入り組んだ妙な金融政策を打ち立ててしまっている。これが物価に直接影響していないことは、どう見ても明らかではなかろうか。

いまのところ国債価格が急落するといった副作用が出ているわけではない。だから効果の有無はおいといて、異常な政策を日銀は続けているわけだが、効果が出ない以上は効果が出るかもしれない新たな手段(財政政策含む)を講じるのではなく、いったん異常な政策そのものを後退させて、将来のリスクを摘む必要もあるのではなかろうか。それを本来警告するはずの長期金利の機能を日銀自ら摘み取ってしまっていることも確かではあるのだが。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-30 09:46 | 日銀 | Comments(0)

何故、このタイミングで安倍首相と黒田日銀総裁が会談したのか

日銀の黒田東彦総裁は17日に首相官邸で安倍晋三首相と会談した。黒田総裁が首相官邸に首相を訪ねるのは1月11日以来、4か月ぶりとなる。黒田総裁は会談後、記者団に「金融緩和をしっかり続けていくとだけ申し上げた」と明らかにした。「首相から特別の注文はなかった」とも述べた(日経新聞電子版)。

5月には金融政策決定会合の予定はない。首相から何かしら要請されるような状況でもない。今回は前回の会談から4か月経っており、首相のスケジュールと黒田総裁のスケジュールが空いたところで定例とも言える会談が設定されたと思われる。黒田総裁も首相との会談について「定例的なもの」とあえて強調していた。

官邸側としても日銀の金融政策で物価目標が達成されておらずとも、今年1~3月期のGDPが年率プラス2.2%の成長率と5期連続でプラスになるなどしており、あえて追加緩和を要求するようなことは考えづらい。むしろ物価が上昇しない、つまり金利も超低位のなかでの経済成長は政権にとっても好都合のはずである。ここで物価が2%に向けて急上昇し、長期金利も上昇するようなことになると、財政面への影響が出てくることも予想される。その意味ではいまの環境は政権にとっては好環境とも言えよう。

しかし、そうはいっても日銀が首相の意向を汲んで、異次元緩和を行っているという事実は残る。しかもそれで物価は上がってこないということも露見した。そもそもアベノミクスと称された政策の根底、つまり異次元緩和で物価を上げてデフレ解消との前提に大きな間違いがあったものの、いわば結果オーライといった事態となっている。

それでもいまの日本が危機的な状況にあるわけでもなく、景気が落ち込んでいるわけでもないにも関わらず、非常時の以上金融政策を長らく続けてしまっているということも事実である。それはそれで潜在的なリスクが膨らんできていると見ざるを得ない。本来であれば、ステルステーパリングとかではなく、妙なかたちで積み上げてしまった金融緩和政策の修正を図り、将来のリスクを取り除くことが求められてしかるべきであろう。

しかし、異次元緩を押しつけたのが現政権であり、自らの政策の根底が間違っていたことを認めるようなことも現在の日銀はしづらいというか、できないであろう。少なくとも政権が代わり、リフレ政策に疑問を持つ首相でも就任しない限り、現在の状況は継続することが予想される。そのあたりを暗黙のうちに確認したのかもしれない。

ただし、日銀が国債を持てばその分の政府債務はカウントされない、などとの考え方がいかに危険なものであるのか。その危険性が試される日が来ないとは言い切れないことも確かである。そのあたりのリスクを日銀と官邸が共有しているようには見えないことも危惧すべき問題と思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-19 10:00 | 日銀 | Comments(0)

何故、このタイミングで安倍首相と黒田日銀総裁が会談したのか

日銀の黒田東彦総裁は17日に首相官邸で安倍晋三首相と会談した。黒田総裁が首相官邸に首相を訪ねるのは1月11日以来、4か月ぶりとなる。黒田総裁は会談後、記者団に「金融緩和をしっかり続けていくとだけ申し上げた」と明らかにした。「首相から特別の注文はなかった」とも述べた(日経新聞電子版)。

5月には金融政策決定会合の予定はない。首相から何かしら要請されるような状況でもない。今回は前回の会談から4か月経っており、首相のスケジュールと黒田総裁のスケジュールが空いたところで定例とも言える会談が設定されたと思われる。黒田総裁も首相との会談について「定例的なもの」とあえて強調していた。

官邸側としても日銀の金融政策で物価目標が達成されておらずとも、今年1~3月期のGDPが年率プラス2.2%の成長率と5期連続でプラスになるなどしており、あえて追加緩和を要求するようなことは考えづらい。むしろ物価が上昇しない、つまり金利も超低位のなかでの経済成長は政権にとっても好都合のはずである。ここで物価が2%に向けて急上昇し、長期金利も上昇するようなことになると、財政面への影響が出てくることも予想される。その意味ではいまの環境は政権にとっては好環境とも言えよう。

しかし、そうはいっても日銀が首相の意向を汲んで、異次元緩和を行っているという事実は残る。しかもそれで物価は上がってこないということも露見した。そもそもアベノミクスと称された政策の根底、つまり異次元緩和で物価を上げてデフレ解消との前提に大きな間違いがあったものの、いわば結果オーライといった事態となっている。

それでもいまの日本が危機的な状況にあるわけでもなく、景気が落ち込んでいるわけでもないにも関わらず、非常時の以上金融政策を長らく続けてしまっているということも事実である。それはそれで潜在的なリスクが膨らんできていると見ざるを得ない。本来であれば、ステルステーパリングとかではなく、妙なかたちで積み上げてしまった金融緩和政策の修正を図り、将来のリスクを取り除くことが求められてしかるべきであろう。

しかし、異次元緩を押しつけたのが現政権であり、自らの政策の根底が間違っていたことを認めるようなことも現在の日銀はしづらいというか、できないであろう。少なくとも政権が代わり、リフレ政策に疑問を持つ首相でも就任しない限り、現在の状況は継続することが予想される。そのあたりを暗黙のうちに確認したのかもしれない。

ただし、日銀が国債を持てばその分の政府債務はカウントされない、などとの考え方がいかに危険なものであるのか。その危険性が試される日が来ないとは言い切れないことも確かである。そのあたりのリスクを日銀と官邸が共有しているようには見えないことも危惧すべき問題と思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-19 10:00 | 日銀 | Comments(0)

ゆうちょ銀行が日銀の国債売買オペに参加、それぞれの思惑も

日本郵政グループのゆうちょ銀行が、日銀の国債売買オペに4月以降、参加しているようである。

4月19日にゆうちょ銀行は電子メールで「当行は、民営化以降、運用の高度化・多様化を進めており、その一環として、本件日銀オペの参加を申請し、この度日銀より承認されたもの」とコメントしていた(ブルームバーグ)。

私はてっきり、日銀の売買オペには、大量の国債を保有するゆうちょ銀行は当然参加していると勝手に思い込んでいた。しかし、確かに下記の日銀が公表した「国債売買オペの2016年度対象先公募(定例選定)の結果について」には、ゆうちょ銀行は入っていない。

「国債売買オペの2016年度対象先公募(定例選定)の結果について

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/rel161014a.pdf

ゆうちょ銀行が保有する国債額は73.5兆円規模となり日銀に次ぐ大きさである。ただし、運用等に制限もあったことで、日銀の国債売買オペには参加していなかったとみられる。

日銀にとってもすでに年間発行額規模の国債を購入しており、金融機関保有の国債の引き剥がしをしていかないと、この規模の買入はステルステーパリングをしているといえ、いずれ限界も来てしまう。そのような環境下、70兆円規模の国債を保有するゆうちょ銀行による国債売買オペへの参加は日銀にとっても願ったり叶ったりとなるのか。

しかし、ゆうちょ銀行にとって資産であるところの保有国債を日銀に売却してしまうとその資金の運用に困ることとなる。ただし、今後は資産運用の多極化も図るようで、それも今回の動きの背景にあるのかもしれない。ただし、証券会社などのように日銀トレードで鞘を取るといった運用が果たして可能なのであろうか。ちなみに、ゆうちょ銀行は国債入札参加者に含まれている。

財務省「国債に係る入札参加者一覧」

http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/bond/bidders/index.htm

今回のゆうちょ銀行が日銀の国債売買オペに参加したことは、ゆうちょ銀行と日銀それぞれの思惑が働いているようにも思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-17 09:42 | 日銀 | Comments(0)

物価が上がらないからデフレ脱却が出来ない?

5月2日に発表された日銀の金融政策決定会合議事要旨(3月15、16日開催分)のなかで、面白い意見が出ていた。当面の金融政策運営に関する議論のなかで一人の委員が次のような発言をしていたのである。

「デフレ下で形成された「物価は上がらない」とのノルムを変えるには、2%を超える物価上昇を人々が経験することが重要であり、こうした観点から、オーバーシュート型コミットメントを含む「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は最適な政策枠組みであると述べた。」

良く意味がわからない。その前にノムルとは何か。ドイツ語のノルムにはスタンダード(企画)や基準という意味もあるようだ。それはさておき、そもそも「物価は上がらない」と人々が信じるようになったのは「デフレ」が要因なのであろうか。それではそのデフレは何が原因であったのか。この発言者は流れからみてリフレ派とみられるが、仮にデフレがリフレ派の主張するように日銀の金融政策の失敗(緩和が足りなかったのが理由だとか)によるもの仮定して、黒田日銀の異次元緩和によっても物価が上がってこなかったというのはどう説明するのか。リフレ派の主張を盛り込んだ緩和策を講じても物価は上がらない。それはつまりデフレそのものは金融政策に起因するものではないことを自ら証明したことにはなるまいか。

2%を超える物価上昇を人々が経験させることが重要であるというのはリフレ派の前提でもあった。それは異次元緩和で達成しうるものであったはずなのが、それができないのは2%を超える物価上昇を人々が経験していないからという、これまた鶏が先か卵が先かといった堂々巡りの議論になりかねない。

無理矢理我々に2%を超える物価上昇を経験させる必要はあるのか。あったとしてもそのための手段が金融政策なのであれば、すでに結果が出ている。オーバーシュート型コミットメントを含む「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は最適な政策枠組みどころか、次から次へと新手を考えてくっつけた産物に過ぎず、結果は伴っていない。

日銀が物価を無理矢理上げるのではなく、物価が上がる環境作りが必要であり、それは金融政策だけによってもたらされるものではない(緩和環境はマイナスではないことは確かかもしれないが)。しかし物価が上がらずとも、雇用環境が改善し、所得も伸びれば消費も喚起される。物価ありきの考え方にいろいろと矛盾があることを日銀は4年以上の歳月をかけて証明してくれた。そろそろ物価ありきの姿勢から日銀は距離を置いて、オーバーシュート型コミットメントを含む「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という複雑な構造物から、あくまで景気物価を支援するだけの本来の日銀の金融政策のすっきりした体制に戻すべではなかろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-06 10:27 | 日銀 | Comments(0)

日銀は異次元緩和政策をあらためて検証することも必要なのでは

27日の日銀金融政策決定会合において、現在の金融政策を維持することを賛成多数で決定した。反対したのは「長短金利操作」と「資産買入れ方針」のいずれも佐藤委員と木内委員であった。佐藤・木内両委員の任期は7月までとなっており、状況に大きな変化がない限り、9月の決定会合からは反対票がなくなる可能性がある。

「概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ」との文面もそのまま残された。あくまで「めど」であり、上下するのは問題ないとの認識のようだが、このままのペースでは60兆円台となることが予想されている。

27日に発表された展望レポート(経済・物価情勢の展望)では消費者物価指数(除く生鮮食料品)の見通しを2017年度は前回の前年比1.5%上昇から同1.4%上昇に修正した。2018年度は同1.7%に据え置かれた。今回から加えられた2019年度については消費増税の影響を除き同1.9%上昇とした。そして、2%の物価目標の達成時期は2018年度ごろに据え置かれた。

これまで「しばらくの間、輸出・生産面に鈍さが残るものの、その後は緩やかに拡大していくと予想している」としていた景気の先行き判断については、「緩やかな拡大に転じつつある」に上方修正された。日銀が景気判断に「拡大」という表現を盛り込んだのは2008年3月以来となるようである。

28日に発表された3月の有効求人倍率は前月に比べて0.02ポイント上昇の1.45倍となった。1990年11月の1.45倍以来26年4か月ぶりの高い水準となった。3月の完全失業率は2.8%と前月に比べて横ばいとなった。

3月の消費者物価指数は総合で前年同月プラス0.2%、日銀の物価目標である生鮮食料品を除く総合(コア)でも前年同月比プラス0.2%となった。しかし、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)はマイナス0.1%となり、3年8か月ぶりにマイナスとなった。上昇に寄与したのがガソリンなとで、下落の要因としては携帯電話機などが指摘されていた。

雇用環境などをみる限り、日銀が指摘しているように「景気の拡大が続き、潜在成長率を上回る成長を維持する」状況となっている。しかし、物価をみると依然として日銀の物価目標からかなりの距離がある。

国民生活を考慮すれば雇用環境が改善するなど景気の回復とともに、物価が低位で推移しているためにその恩恵も被る格好となっている。日銀が2013年4月にスタートした量的・質的緩和はこの結果から見る限り、物価を低位に押しとどめ、雇用などを改善させたかにも見えてしまう。もちろん日銀の異次元緩和の目的は物価目標達成であったはずであるが。

今回の雇用を中心とした景気の回復の要因は何であったのか。日銀が異次元緩和を行って物価目標が達成されたからでないことは一目瞭然である。海外などの外部環境に助けられた面もあろうが、その背景には世界的なリスクの後退もあった。

むろん中央銀行の緩和政策がその景気回復をフォローした側面は否定できない。しかし、そのために異常な国債買入を拡大させたり、マイナス金利政策を導入する必要が果たしてあったのであろうか。すでに「意地元」緩和政策となってはいまいか。そのあたりをあらためて検証する必要があるのではなかろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-04-29 09:28 | 日銀 | Comments(0)

日銀の審議委員に三菱東京UFJ系の二人が選出された理由

政府は18日に日銀の審議委員に三菱UFJ&コンサルティングの片岡剛士上席主任研究員と三菱東京UFJ銀行の鈴木人司取締役を充てる人事案を国会に提示した。7月23日に任期が満了する木内登英氏と佐藤健裕氏の後任となる。片岡氏が木内登英氏、鈴木氏が佐藤健裕氏の後任となる。自民、公明の与党が過半数を占めるため、6月18日までの今国会中に衆参両院で承認される見通し。承認が得られれば、片岡氏と鈴木氏は9月20、21両日の金融政策決定会合から参加する

何故、三菱東京UFJ銀行関係から同時に2人選出されたのか(出身大学も二人とも慶應義塾大学)。これはこれまでの審議委員の選出の過程等に影響されたもので偶然の部分がある。

直近の日銀審議委員の人事は石田浩二審議委員の後任に政井貴子・新生銀行執行役員を充てるというものであった。この人事が今回の人事にも影響を与えることになる。

石田委員の後任が政井氏となったことで、これにより新日銀法の下に組織された日銀の政策委員のなかの審議委員にあったメガバンクの席がなくなってしまった。新日銀法が施行されてからは、特に政策委員における産業枠や銀行枠など業界枠が明確になっているわけではない。しかし、石田委員までの前任者はすべてメガバンクからの出身者となっていた。

なぜこの際にメガバンクから選出されなかったのであろうか。その前の人事で、白井さゆり委員の後任には桜井真氏が就任したことにより、日銀の政策委員には女性が一人もいない状況となっていた。このため女性が優先されて選出する必要があった。また、順番から言えば次のメガバンク出身としては三菱東京UFJ銀行からとなるはずが、日銀と三菱東京UFJ銀行との関係がやや悪化していたとの見方もあった。このため、メガバンクを外すというより、ワンクッション置いた人事となったのではなかろうか。

このために三菱東京UFJ銀行の副頭取でもあった鈴木人司氏が今回、時間遅れで選出されたものとみられる。この人事については事前から予想されていたようである。そしてエコノミスト枠として片岡剛士氏が官邸から推挙されたものとみられる。片岡氏は代表的なリフレ派であり、日銀の岩田副総裁や原田泰審議委員、さらには浜田宏一内閣官房参与や本田悦朗駐スイス大使らに意見が近い。

これにより異次元緩和に対して異を述べていた佐藤氏と木内氏の後任には、リフレ推進派の片岡氏が入ることで、反対意見が一票少なくなることになる。ただし、片岡氏はマイナス金利には反対しているようで、その意見を主張してくるかもしれない。

鈴木人司取締役は銀行経営者であり、日銀という銀行の経営者でもある審議委員には最適の人物であろう。審議委員を含む政策委員は日銀の役員であり、金融政策だけを決めているわけではない。日銀そのものを経営する責任がある。さらに鈴木氏は市場部門の統括もされていたようで市場動向にも詳しいとみられる。今回の佐藤・木内両委員の後任人事で最も危惧していたのは市場、特に金利債券市場に精通した人物がいなくなってしまうことであったが、このあたりも鈴木氏がある程度カバーしてくれるものと期待したい。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-04-21 09:31 | 日銀 | Comments(0)

日銀のステルス・テーパリングとそれを忖度(そんたく)する市場

今年の流行語大賞に選ばれるであろう言葉に「忖度(そんたく)」がある。森友学園の問題で国有地売買において忖度があったのか、なかったのか、国会の与野党の議論でも飛びかっていた用語である。

忖度とは、他人の気持をおしはかることと言う意味がある。森友学園の問題では、上司などの意向を推し量るといった意味合いで使われているとみられる。相手から直接言及されたり指示されたりされなくとも、相手が何をしたいのかを推量し、それに応ずるというのが忖度の意味ではないかと思われる。

その意味では国債買入に対する日銀の姿勢についても、市場はまさに忖度しているとも言えるのではなかろうか。

日銀は昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和政策を導入した。操作目標を「量」から再び「金利」に戻し、フレームワークの変更を行った。これによりマネタリーベースの目標値はなくしたが、なぜか長期国債の買い入れに対する量については数字を残した。

国債の買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとするとし、80兆円という数字を残したのである。

しかし、現実には80兆円を維持するのは困難になりつつある。そのために、2015年12月に補完措置を導入し買入可能な国債の金額を増加させた。しかし、それでも2016年度は年間国債発行額に相当する金額を購入せざるを得ない。2017年度の国債発行額は2016年度に比べ、カレンダーベースで差し引き5.8兆円の減額となることもあり、現在の規模のままでの国債買入は金融機関保有の国債引き剥がしともなり、次第に困難になっていくことが予想される。

この80兆円に関してはあまり意味はなくなりつつあり、減額可能な中期ゾーンなどを中心に一回あたりの買入額を修正する格好ですでに減額を行っている。これはステルステーパリングとも呼ぶ人もいる。

米国のFRBは非伝統的な金融緩和手段としての量的緩和に際し、毎月の国債等の買入額そのものを目標値としていた。このため正常化の過程においてはその金額を減少させるという、テーパリングという作業が必要となった。

これに対して2013年3月に決定した日銀の量的・質的緩和政策では、年間ベースでのマネタリーベースや国債買入額を目標水準としておき、それを達成するための毎月の国債買入額は特に数値目標化はされなかった。さらに昨年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和の導入により、80兆円という数字も目標数字とはならず、あくまで長期金利をゼロ%に抑えるための目安(めやす)的なものとなっている。

このため日銀が結果として毎月の国債買入額を減らしたとしても、現実にはこれはFRBのテーパリングとは違う意味合いとなる。しかし、現実には国債の買い入れ額は減らさざるを得ないし、80兆円という数字も形骸化しつつある。そのあたりの日銀の姿勢について、大胆な緩和政策を継続しているように見せているが、現状はちょっと違うということについて、市場参加者はまさに「忖度」していると言えるのではなかろうか。

大胆な金融緩和を維持しているようで、現実にはブレーキが掛かっている。それでも長期金利は日銀の意向も意識して、ゼロ%近辺に維持させざるを得ない。果たしてこんな状況がいつまで継続可能なのであろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-04-01 12:14 | 日銀 | Comments(0)

金融政策運営に関する意見の興味深い箇所

27日に日銀が公表した3月15、16日開催の金融政策決定会合における主な意見は、よくよく読むとなかなか面白い箇所があった。このなかの金融政策運営に関する意見を確認してみたい。

「世界経済が好転するもとで、わが国の景気回復の足取りもよりしっかりしたものになってきているが、2%の「物価安定の目標」にはなお距離がある。こうした状況では、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが適切である。」

これが現在の日銀の金融政策の基本的なスタンスとなっている。我が国の景気がしっかりし、日銀が異次元緩和を行って、何故2%の物価安定の目標にはなお距離があるのか、ここが物価目標達成に向けた最大の問題点となろう。そこを解き明かさないと強力な金融緩和を推進していくことで本当に良いのかどうかは結論できないはずである。

「経済の好循環は緩やかで、「物価安定の目標」達成は道半ばである現況下においては、経済の好循環の後押しに資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。」

ここでは「経済の好循環の後押しに資するべく」との表現が気になる。実はこれが当たり前の金融政策の見方だったはずなのだが、黒田日銀のスタンスは能動的に金融政策で物価を動かすというものであり、これは昔の日銀の香りが漂う発言となる。

「物価安定の目標達成に向けて、経済を自律的な成長軌道に乗せることが重要である。海外経済を巡る不確実性も踏まえると、拙速に行動すべきではなく、現行の枠組みのもとで粘り強く金融緩和に取り組むことが肝要である。」

拙速にどんな行動を起こせというのであろうか。これはもしや昨年のマイナス金利政策などの反省を込めて、ということになるのであろうか。

「オーバーシュート型コミットメントを含む「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早く達成するために、現時点で最適な政策枠組みである。」

最適というよりもいろいろと矛盾した政策であることは昨日、このコラムにて指摘させていただいた。

「現行の金融緩和政策は、その所期の効果を発揮しており、またオペレーション上も特段の問題をきたしていないことから、早急に枠組みを変更する必要性は認められない。」

早急に枠組みを変更する必要性はさておき、日銀の現場の担当者は今年に入り、オペレーションではかなり苦労したであろうことが伺える。また、どの物価を見れば、現行の金融緩和政策は、その所期の効果を発揮していると言えるのであろうか(物価だけが中央銀行の金融政策の目標ではないが、掲げた目標はあくまで物価であったはずである)。

「金融市場局が国債買入れオペ実施日の公表などの工夫も講じながら機動的なオペ運営に努めたことから、イールドカーブは、引き続き金融市場調節方針に沿った形で推移している。」

国債買入れオペ実施日の公表などの工夫は確かにマーケットの動揺を抑えた。市場との対話がやっとスムーズになってきた印象はあるが、それでも期末に向けた対応などやや唐突な面もあり課題は残ろう。

「海外金利の上昇から、金融政策の転換を求める声があるが、日本の金融政策はあくまでも日本の景気と物価を考えて行うべきである。米国や欧州の物価上昇率は2%近傍となっているが、日本はいまだ0%近辺である。日本の金融政策の転換が必要となるまでには相当に時間がかかる。」

米国の金利上昇と日本の足元物価の回復は、日本の長期金利の上昇要因となりうる。果たして長期金利をいつまでゼロ%近辺に抑えることが可能なのかを市場は懸念している。日銀の政策変更を求めているわけではないが、実勢に見合った長期金利が形成出来ない状態が何かしらのリスク要因となったりはしないか。そもそも長期金利の目標引き上げは単なる調節ではなく利上げに見えてしまう点にも長短金利操作の難しさがある。

「本行の金融政策が注目されている中では、市場の状況次第で、我々の情報発信が、意図と異なった受け止め方をされ得る。情報発信にあたっては、その時々の状況を踏まえることが肝要である。」

まさにその通りかと思うが、なにぶん政策に矛盾した面があり(量と金利の併存、大胆な緩和で物価が動かない等々)、日銀の情報発信は注意したとしても、市場は悩んでしまう面もある。

「2月に国債買入れ額が大幅に膨らんだことは、長期金利に目標を設定すると大幅な国債買入れを余儀なくされ得るという 、イールドカーブ・コントロールの弱点が顕現化したものだ。」

木内委員の発言とみられるが、その通りとしか言いようがない。

「10年金利の目標をゼロ%程度とすることに反対であり、望ましい経済・物価情勢の実現に最適なイールドカーブの形状は若干スティープであるべきと思う。先行きの不確実性への備えもあり、買入れは極力減らしておくことが望ましい。なお、先行きの外貨調達環境を考えると短国利回りは4月以降もさほど上昇しない可能性があり、一段の買入れ減額の余地がある。」

こちらは佐藤委員の発言か。こちらもほぼ同意であるが、先行きの外貨調達環境をどのように設定しているのであろうか。

「見通しに沿って、物価の基調が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まることが見込まれる。長短金利操作の手順や政策反応関数について、今のうちから議論しておく必要がある。」

これもその通りとしか言いようがないが、今のうちから議論しておく必要があるというのは少なくとも政策委員ベースでの議論はこれまで行っていないということになる。もちろん執行部ベースではシミュレーションはしていようが(しているはずだが)、表だっては出口に向けた動きを見せられず、政策委員間での議論はこれまで本当になかったようである。

 「イールドカーブ・コントロールのもとで、市場の金利や期待をコントロールするのは難しい一方、国債買入れオペは、むしろ市場の期待に影響され、買入れ額の調整等の面で柔軟性を失っていくリスクがある。このため、資産買入れ額に新たに目標を設定し、それを秩序だって段階的に下げていくことが、政策の持続性と市場の安定性を高める。」

これは発言内容から、資産買入れ額を減額して操作目標とする枠組みを提案していた木内委員の発言と思われる(同一人物の発言が複数回載っていることはありうる)。これが素直なやり方のひとつであると思うが、金融緩和の後退は認めたくない現在の日銀が、この政策を取り入れることは、余程のことが起きない限りはたぶんない。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-03-29 09:40 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー