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カテゴリ:日銀( 1097 )

日銀総裁が金利を下げすぎることによる副作用にも言及

 日銀の黒田総裁は13日の『「量的・質的金融緩和」と経済理論』と題するスイス・チューリッヒ大学における講演は、これまでの発言内容と比較して、やや様変わりとなってきたようにも思われた。それを示すものとして、「量的・質的金融緩和」の成果に加え、副作用についても言及していた点である。

 「最適なイールドカーブの把握」との部分では下記の説明があった。

 「金利の年限によって金利低下の効果が異なることも、最適なイールドカーブを考えるうえで考慮すべき一つのポイントです。経済や物価への影響という点では、一般的に、短期から中期の金利低下による効果が大きいと考えられます。企業や家計の資金調達に占めるこのゾーンのウエイトが大きいためです。」

 だからこそ、2013年4月の量的・質的緩和政策の導入まで、日銀による国債の買入は超短期ゾーンが主体であったはずである。また、短い国債の買入により、償還がすぐ来ることで全体の規模の調整が比較的しやすいメリットがある。つまり出口政策を容易比にさせる。2006年の3月の量的緩和策の解除にも、当座預金残高の削減はかなり短期間で可能とされていた。

 「一方、より長めの金利については、保険や年金といった金融の社会インフラの機能と強い関連があると考えられます。このため、長期・超長期金利の過度な低下は、これらの運用利回りに対する不安感などを惹起し、マインド面を通じて経済に影響を及ぼす可能性に留意する必要があります。」

 この点をあらためて総裁が指摘した意味は大きい。そのために導入したのが2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和による、イールドカーブコントロール「YCC」であった。このYCCの目的はイールドカーブをスティープ化させることであった。それによってある程度「運用利回りに対する不安感」などを後退させることができる。

 「このほか、金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています。これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートとは米プリンストン大学のブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である(ロイターの記事より引用)。リバーサル・レートを引き合いに出して黒田総裁は、金利を下げすぎることによる副作用について、あらためて言及している。これなども今回の総裁発言のなかではあまり過去にはみられないものであった。

 今後、日銀がマイナス金利政策や長い期間の国債の大量買入を主体としている現在の大規模緩和策から調整を図ってくると期待したいところではあるが、市場への影響等を考慮するとそう簡単に修正できるものではない。しかし、それでも結果としてステルステーパリングを行うなど、これまでのかなり緩和に対する前傾守勢を修正しつつあることも確かなのかもしれない。また、これは追加緩和を主張している向きに対する牽制との見方もある。


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by nihonkokusai | 2017-11-17 10:08 | 日銀 | Comments(0)

日銀はサプライズ緩和政策からの方針変更か

 11月9日に日銀は金融政策決定会合における主な意見(10月30・31日分)を公表した。このなかの「金融政策運営に関する意見」のところを確認してみたい。

 「現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要」、「金融市場調節方針を維持することにより」、「現在の金融政策は・・・政策効果の不確実性が最も小さく、最適な金融政策である」

 決定会合では現状維持が賛成多数で決定されていたため、現状維持が適切であるとする意見が出るのは当然ではあるが、物価目標達成にはかなりの距離はあるものの、それによって追加緩和を行う必要性はないと主張しているようにも思われる。意見のなかには次のようなコメントもあった。

 「政策変更の効果に確信が持てない限り、現状維持が適切である」。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると、金融不均衡の蓄積や金融仲介機能の低下といった副作用が生じる恐れもある」。「追加緩和に関しては、市場や金融機関への影響、政策の持続性等の観点から、プラスの効果より副作用の方が大きいとみている」、「国債市場の流動性に加え、国内外投資家の動向や金融機関の保有有価証券ポートフォリオの中身について一層注視する必要がある 」

 どうやら副作用についてもかなり気配りをしているようにも思われる。「目標達成を急ぐあまり極端な政策をとると」との表現があったが、2013年4月の量的・質的緩和、2014年10月の量的・質的緩和の拡大、2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和は、ある意味、目標達成を急ぐあまり取った極端な政策のようにも思えるのだが、日銀はそのようにサプライズ緩和政策から方針を変えてきているようにも思われる。

 しかし、なかには何を言っているのかわからない意見も出ている。

 「米欧の中央銀行が出口に向かっているので、日本銀行も同様に出口に向かうべきだという意見があるが、これらの国に比べて、金融緩和の開始時期が遅いため、出口に向かう時期が遅くなることについても不思議はない。」

 当たり前だが、日銀の緩和策は2013年4月の量的・質的緩和に始まったものではない。それまでの日銀の緩和策は緩和策とは言えないと言うのであろうか。

 米欧の中央銀行が出口に向かっているのは何故なのか。それは世界的な金融経済リスクの後退とそれによる世界経済の回復が要因のはず。そもそも金融緩和の開始時期の違いがあったとは思えず、日本だけ景気回復に取り残されているわけではない。むろんそれぞれの中央銀行は横並びに動く必要はなく、自国の経済物価状況に応じて行うものである。しかし、無理な物価目標を立ててしまって身動きを取れなくしてしまい、表立っては出口に向きを変えることすらできないのが現在の日銀の姿ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2017-11-10 09:34 | 日銀 | Comments(0)

原油価格が上昇すれば日銀の物価目標達成も?

 ここにきて原油価格が再び上昇の兆しを見せ始めている。11月6日の原油先物市場では、サウジアラビア政府が数十人の王族や閣僚を汚職容疑で拘束したとのニュースや、そのサウジアラビアはイエメンの反体制派が首都リヤドに向けた弾道ミサイルを迎撃したことなど、中東情勢の緊迫化を受けて原油価格が上昇したとされた。

 協調減産延長への期待も原油価格上昇の背景にあり、WTI先物は57ドル台となり、終値で2015年6月以来の高値をつけた。このまま上昇トレンドが続けば、2015年6月以来の60ドル台回復の可能性もある。チャート上は60ドル近辺が目先の天井になるとみられるが、ここを大きく抜けると80ドルあたりまで大きな節目はない。いまのところ、ここまで急伸することは現実的ではないが、中東情勢が緊迫化するなどした場合には絶対にないとは言い切れない。

 ここ数年の原油先物の推移をみてみると、2014年7月あたりまで上昇基調となっており、WTIは100ドル台をつけていた。しかし、2014年7月あたりから年末にかけて大きく下げ、2016年には30ドルあたりまで下落した。

 2013年4月あたりからのコアCPIの予想以上の上昇ペースの背景には、アベノミクスをきっかけとした急速な円高調整による円安効果と、消費増税にむけた駆け込み需要、さらには福島原発問題の影響が残るなかでのエネルギー価格の上昇による影響が大きかった。これにより消費増税の影響を除いたコアCPIは前年比1.5%半ばあたりまで上昇し、異次元緩和効果で2%の目標に向けて順調に上昇しているかのように見えた。

 しかし、日銀の異次元緩和が直接物価に働きかけていたわけではないことを2014年5月以降のCPIの前年比の低下が示すことになる。原油価格が2014年7月あたりから急速に下落基調となっていただけでなく、ドル円が110円台から105円台となるなど円安調整も加わってのコアCPIの前年比の落ち込みとなった。2015年2月にはゼロ%となり、同年8月にはマイナスとなっている。このCPIの落ち込みは消費増税によるものとの指摘もあったようだが、原油価格や為替の動向に影響を受けていたとみる方が自然であろう。

 ここにきての原油先物価格の上昇とドル円の上昇も加わって、コアCPIは前年比プラス0.7%あたりまで回復してきている。これは決して日銀の緩和政策によるものではなく、原油価格やドル円の推移で説明可能であろう。そうであれば、今後のCPIの行方を占う上ではWTIが60ドルの壁を破ってくるのかが注目される。もし突破してくるとなればコアCPIの1%台回復も見えてくる。もしまた1.5%あたりまで、たまたま上昇した際には、そのあたりで日銀も手を打ってはどうであろうかとは個人的に思うのであるが。


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by nihonkokusai | 2017-11-08 09:45 | 日銀 | Comments(0)

日銀は物価見通しを何故間違えたのか

 10月30日に発表された経済・物価情勢の展望、いわゆる展望レポートによると、2017年度の物価見通しは前回7月時点の見通しの前年比プラス1.1%からプラス0.8%に下方修正された。

 この場合の物価とは、日銀の物価目標となっている消費者物価指数(除く生鮮食品)であり、数字は政策委員見通しの中央値である。今回の下方修正は9月の消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比がプラス0.7%に止まるなどしたことによる修正とみられる。

 2018年度については前年比プラス1.4%(7月時点でプラス1.5%)、2019年度については前年比プラス1.8%(7月時点でプラス1.8%)となっている(2018年度は消費税率引き上げの影響を除くケース)。展望レポートによると2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高いとしている。

 それでは2年前の2015年10月に発表された展望レポートの予測を確認してみたい。2015年度の見通しがプラス0.1%、2016年度がプラス1.4%、2017年度がプラス1.8%となっていた。予測は大きく外れていると見ざるを得ない。2015年10月のレポートでの物価についての見通しでは下記のような説明があった。

 「2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、同価格が現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度後半頃になると予想される。」

 参考までに2015年10月末の原油価格を代表する指標としてのWTI先物は46.22ドルであった。それが1年後の10月末に49.78ドル、今年10月30日現在は54ドル近辺となっており、大幅に上昇はしていないが緩やかには回復している。

 2015年10月現在の物価を巡る状況については、「原油価格下落の影響が剥落するに伴って、物価安定の目標である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる」と物価予測を誤った要因として原油価格を挙げていた。

 たしかに原油価格は緩やかに上昇し、コアCPIは足元で前年比プラス0.7%にまで回復している。コアCPIに関しては原油価格の影響が大きいことは確かである。ところが、この原油価格の影響を除いた生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)でみると今年9月は前年比プラス0.2%に止まっている。これをみても原油価格の押し下げだけが物価を抑制していたわけではないということになる。

 日銀の物価見通しは何故間違えたのか。本来、日銀は物価の予測を含めた調査機関としても日本有数の組織である。展望レポートの数字はあくまで政策委員の予測であるが、データ等の背景説明は受けているはずである。今の日銀には2%の物価目標達成というバイアスが掛かりすぎてしまっていることが、このような予測にも影響を与えているのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-11-06 09:41 | 日銀 | Comments(0)

日銀片岡審議委員の提案の意図は何か

 10月31日の日銀金融政策決定会合では、8対1の賛成多数によって現在の緩和策を次回会合まで継続することを決定した。今回反対票を投じたのは、7月に審議委員に就任したばかりの片岡剛士委員であった。

 片岡委員は、「オーバーシュート型コミットメントを強化する観点から、国内要因により「物価安定の目標」の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じることが適当であり、これを本文中に記述することが必要として反対した。」

 日銀はアベノミクスの主軸として大胆な緩和策を実施してきたが、物価目標の到達予想時期を後ずれさせてきた。31日の展望レポートでは「(物価目標の)2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い」としているが、これもかなり怪しいものとなっている。時期が進むに従ってさらに後ずれする可能性は非常に高い。

 これについて「国内要因により」物価安定の目標の達成時期が後ずれする場合には、追加緩和手段を講じる必要があると片岡委員は主張した。「国内要因」を除くとなれば、為替や原油価格などの要因を除いてということになろうか。そうなると消費者物価指数はほぼゼロ近傍が続いていることで、追加緩和策が今後も常に必要になるということになろう。

 そもそもこれまでの異次元緩和で何故、物価目標を達成できなかったのか。追加緩和で物価上がる保証はあるのか。どのような追加緩和ならどういう経路で物価が上がるのかといった説明も当然必要になる。

 今回、片岡委員は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)についても反対票を投じている。これについては「イールドカーブにおけるより長期の金利を引き下げる観点から、15年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう、長期国債の買入れを行うことが適当である」との説明があった。

 日銀が現在行っている金融緩和策は長短金利操作付き量的・質的緩和であり、操作目標は量から金利に戻している。片岡委員は政策目標の量への回帰といった修正ではなく、金利目標の修正を提案してきた。しかし、それが何故15年物国債金利で0.2%なのか。

 日本の債券市場での国債の売買は主にカレント物と呼ばれる直近発行された2年、5年、10年、20年、30年の国債に集中している。現在、15年の利付き国債の新発債は発行されていない。このため15年国債となると20年の国債が発行されて5年目の国債などということになるが、流通量は非常に少ないゾーンであり、その国債を日銀が買い入れるとなると大きく変動する可能性がある。というよりそもそも買入自体が難しい。もし15年の金利操作を10年債と20年債のカレントを使って行うのであれば、わざわざ15年にするのではなく20年の金利をターゲットにした方が良いのではなかろうか。

 そもそも、日銀が長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した本当の理由は足元の金利はマイナスに置いても、長い期間の国債の利回りを引き上げてイールドカーブをスティープさせることであったはず。ここで長めの金利を引き下げたり、10年の目標金利をマイナスにしてしまうと再び日銀に対して金融機関の批判も高まることが予想される。だから15年金利を少しだけ引き下げるというのかもしれないが、それで物価目標を達成できるとも到底思えないのではあるが。


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by nihonkokusai | 2017-11-05 11:46 | 日銀 | Comments(0)

日銀の異次元緩和は本当に必要であったのか

 総務省が10月27日に発表した9月の全国消費者物価指数は総合前年比プラス0.7%と8月と変わらず、生鮮食品を除く総合指数(コア)で前年比プラス0.7%とこちらも8月と変わらず。生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)で前年比プラス0.2%とこちらも8月と変わらずとなった。

 コア指数は9か月連続で前年比プラスとなったものの、いまだ日銀の物価目標の2%に届く気配はない。生鮮食品及びエネルギーを除く総合がプラス0.2%程度に低迷していることからもわかるように、コア指数を引き上げているのは引き続きエネルギー価格の上昇によるものであり、ここに日銀の異次元緩和の影響が出ているわけではない。

 エネルギー関連では電気代、ガス代、灯油、ガソリンなどの上昇が影響を与えている。コア指数に関してはこのようにエネルギー価格の影響を受けやすいことがわかる。当然ながら、日銀が大量に国債やETFを購入すれば原油価格が上昇するわけではない。

 2012年12月の衆院選で出てきたアベノミクスは、急激な円安と株高のきっかけとなったことは確かであり、円安効果も加わりその後の消費者物価指数の上昇も招いた。しかし、それが円安や消費増税に伴う駆け込み需要による一過性のものであったことも確かであった。

 さらに日銀は異次元緩和によって円安を招いて物価を上昇させるとの見方について、総裁自身がそれは目的としていないと発言していた。ドル円の125円が黒田ラインと呼ばれているのも、それが影響している。

 大胆な緩和策が物価上昇を招いて、雇用など含めて景気も回復するというのが、そもそものアベノミクスの目的であったはずである。ところが物価はいつまでたっても目標には届かず、しかし雇用は回復し低成長ながらも景気も回復基調となっている。これは米国などの景気回復に助けられている面も当然ある。日銀の異次元緩和がなければ、ここまで日本の景気は回復しなかったとの意見もあるが、異次元緩和の効果のほどは物価を見る限りは疑わしい。果たして物価を上昇させられなかった日銀の異次元緩和は本当に必要であったのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-11-02 09:35 | 日銀 | Comments(0)

衆院選挙の結果を受けて、日銀の金融政策は変わるのか

 10月22日に投開票が行われた衆議院選挙では、自民党が284議席を獲得し、自民・公明両党で313議席となり、与党で定数(465)の3分の2を超えた。当初は台風の目かとされた希望の党は失速し、新たに出てきた立憲民主党が勢いづくものの、結果としては野党同士での票の奪い合いのような結果となり、与党の圧勝となった。

 この衆院選挙の結果を受けて、日銀の金融政策にどのような影響が出るであろうか。そもそも今回の選挙では、アベノミクスの柱である日銀の異次元緩和の影響、それに絡む財政再建に向けた動きについては、ほとんど争点とはなってはいない。

 消費増税を行うとしたのが自民党であり、野党の多くは消費増税反対という立場をとった。その自民党も消費税率10%への引き上げの財源の一部を「生産性革命」と「人づくり革命」の2つの大改革に活用するとしており、基礎的財政収支を黒字化するとの目標は堅持するとしているものの、財政再建については二の次といった方針となっている。

 野党も今回の選挙で財政再建を柱とするような政策を打ち出す政党はなかった。現状は財政問題についてアラームとなるはずの国債は日銀による大量の買入とイールドカーブコントロールによって利回りが押さえつけられていることもあり、今回の選挙に向けた各党の動きをみても、財政規律にやや緩みが生じているようにも思われる。

 今後も安倍政権にとり、財政健全化は無視できないとしながらも、景気回復の持続を可能にするためにも財政出動に頼ることになることが予想される。その意味でも日銀には現状の政策を維持してもらう必要がある。

 日銀にとっては2%の物価目標が達成されていないことで、現状の長短金利操作付き質的・量的緩和を継続させる必要がある。ただし、巨額の国債買入を継続させるためには、ある程度買入額を調整する必要がある。すでに日銀は政策目標を量から金利に移すことで、量については縛られる必要がなくなり、買入の持続性も意識してのステルステーパリングを行っている。

 問題はこの異次元緩和の持続性であるが、物価目標達成がなかなか難しい状況にあり、いずれ長短金利操作付き量的・質的緩和の調整は必要となろう。しかし、そのタイミングも難しい。金融機関の収益悪化などからマイナス金利政策についても再び批判的な声が強まることも予想される。このあたりの調整は来年4月の黒田日銀総裁の任期満了のタイミングに絡んで行われることも予想される。


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by nihonkokusai | 2017-10-30 09:56 | 日銀 | Comments(0)

マイナス金利で得をしているのは誰なのか

 日銀が2016年2月に導入した「マイナス金利付き量的・質的緩和政策」はすこぶる評判が悪かった。特に多額の資金運用を行っている投資家にとって、本来であれば安全資産であるはずの国債を保有することで運用成績がマイナスとなる事態は運用そのものに支障を来すことになる。

 日銀のマイナス金利政策の狙いのひとつとして、ポートフォリオ・リバランスというものがある。日銀が安全資産とされる国債を大量に買い占め、国債の利回りを徹底的に引き下げることにより、資金運用を行っている投資家に対し、貸し出しや国債以外の金融資産に資金を振り向けさせようとするものである。

 しかし、年金にしろ、預貯金にしろ資金を払い込んだ人たちには、大きなリスクを負っての運用は本来望んではいないはずである。少なくとも元金が目減りするようなことは考えていないのではなかろうか。だからこそ、これまでは年金や銀行などは国債を主体とした運用をしてきた。その国債も保有することで運用益がマイナスとなる事態となってしまった。

 日銀は金融業界からのマイナス金利政策に対する批判を受けてそれを修正したのが、2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和である。これは何と言うことはない、長期金利、つまり10年債利回りのマイナス化を避けて、期間の長い国債の利回りはプラスにさせる政策ともいえる。それでも長期金利は0.1%以下に押さえ込まれている。

 その結果、我々が受け取る利息もほとんどない事態が続いている。日銀の異次元緩和で物価が上がらなかったことで、その事態がさらに延長され続けている。それでも足元物価をみると消費者物価指数(除く生鮮食料品)で前年比プラス0.7%程度までは回復している。しかし、長期金利は日銀のイールドカーブコントロールによって引き続き0.1%を下回っているが、それがなければもう少し上昇してもおかしくはない。

 日銀の金融政策によって金利そのものは大きく押さえ込まれ、中期ゾーンの金利あたりまではいまだマイナスとなっている。景気は回復基調が続いていることは確かで、我々は本来もらえるはずの金利を、物価を上昇させるためとして、それが享受できない状況が続いていることになる。

 それではマイナス金利政策で得をしている人がいるのか。マイナス金利政策に恩恵を受けているのは、国債を低い利回りで発行でき、国債費が抑えられる政府となる。それは裏返すと財政規律を緩めかねないものともなっている。

 それとともに海外投資家もマイナス金利でも利益が出せる。日本の金融機関による海外の国債などへの投資の際に、円をドルに転換する必要があり、その際に付くドルのプレミアム分を相手方の海外の金融機関などは得ることができる。つまり海外投資家は多少のマイナス金利でもプレミアム分があるため、それで鞘を抜くことができる。

 10月16日の日経新聞の「マイナス金利、海外中銀にプラス」との記事では、その鞘を取る投資家にアジアや欧州の中央銀行も含まれていることを示していた。日銀は海外の中央銀行から預かる資金に今年6月からマイナス金利を適用しているが、それは日銀に預けてある資金の一部だけの適用となっている。このため、海外中銀による日銀の預金残高は10月10日時点で過去最高額となっているようである。


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by nihonkokusai | 2017-10-17 09:48 | 日銀 | Comments(0)

国民の関心はさほど高くはない日銀の異常な緩和政策

 日銀は6日に「生活意識に関するアンケート調査」(第71回<2017年9月調査>)の結果を発表した。

 これによると「景況感」については「良くなった」との回答が第68回(2016年12月)が4.4、第69回(2017年3月)が6.2、第70回(2017年6月)が6.5、第71回(2017年9月)7.6となっており、「また悪くなった」との回答は同29.2、24.3、22.7、21.1と減少している。「景況感」については「変わらない」との解答が最も多いものの、着実に回復していることも確かである。景況判断の根拠としては「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多かったようで、雇用の回復とともに賃金が増加していることが伺える。

 物価に対する実感(1年後、現在対比)は、「かなり上がる」が同6.9、5.6、7.7、6.2となり、「少し上がる」が同57.8、61.4、67.7、64.2となり、「上がった」との回答が減少した格好となっている。

 消費者物価前年比上昇率2%の「物価安定目標」の認知度については、「知っている」との回答が同28.6、29.6、27.7、26.7となっていた。さらに日本銀行が「積極的な金融緩和を行っていること」に対する認知度については、「知っている」が同43.2、33.8、40.1、28.1となっていた。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の認知度については、「知っている」が同24.4、20.6、23.3、16.5となり、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という「積極的な金融緩和」に戸惑いを見せているようにも見受けられる。

 足元景気が着実に回復していることをこのアンケート調査は示しているが、それが日銀による積極的な金融緩和によるものとの認識ではなさそうである。金融緩和の波及経路など考慮しても、日銀が積極的な金融緩和を行って物価の上昇期待が強まり、それが景況感を改善させている、といった流れになっているわけではないことをこの結果は示している。

 これだけ異次元の緩和を日銀が行っているにも関わらず、これについての国民の関心もさほど高くはない。「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が債券市場にどのような影響を与えているのかといったこともほとんど知られていないであろう。少なくとも金融緩和は景気に良いとの漠然とした認識があり、このため今回の衆院選挙でも、この日銀の異次元緩和に異を唱える政党がほとんどみられず、むしろ現在の政策を維持することが重要との認識も強い。本来であれば米国がすでに行っているように異常な緩和を修正するタイミングにあるが、日銀はそれができない。この状態は決して健全な状態にあるとは思えないのだが。



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by nihonkokusai | 2017-10-11 09:59 | 日銀 | Comments(0)

物価上昇の背景と金融政策の影響

 9月29日に発表された8月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.7%、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合(コア)で同プラス0.7%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)で同プラス0.2%となった。

 コア指数の最近の推移をみてみると5月と6月が前年比プラス0.4%、7月が同プラス0.5%、8月が同プラス0.7%とじりじりと上昇幅が拡大している。

 8月の前年比が拡大した要因として、原油や液化天然ガスの価格が上昇し、電気料金と都市ガス代が値上がりしたこと、さらに高額療養費制度の見直しで70歳以上の高齢者の自己負担額が引き上げられたことなどが主な理由としている(NHK)。

 原油価格の指標として使われているWTI先物は6月に42ドル近辺にあったのが、じりじりと回復し50ドルの大台を回復している。10月1日からヤマト運輸は宅急便を値上げするなど、今後はさらに物価上昇圧力が加わることも予想され、前年プラス1%あたりまでの上昇も十分ありうるか。

 ちなみにコアCPIの前年比がプラス0.7%となったのは2014年11月以来となる。2013年5月にコアCPIはプラスを回復し、2014年4月にプラス1.5%までプラス幅を拡大させた。日銀が量的・質的緩和を決定したのが2013年4月であり、1年後にプラス1.5%まで上昇し2%の物価目標ができるかに思えた。

 しかし、日銀の異次元緩和策がこのようにタイムリーに効果が出たとする考え方自体、おかしかった。日銀も緩和効果が出るまである程度タイムラグがあるとしていたはずである。つまりこのときの物価の上昇は日銀の緩和効果がダイレクトに効いたというよりも、円安や消費増税に向けた駆け込み効果等の影響が大きかった。

 その後の消費者物価指数は再びマイナスに転じたが、これを2014年4月からの消費増税による影響とすることもおかしい。もちろんそれまでの反動もあったろうが、円安効果が一巡した上、原油価格の下落などが影響を与えたとの見方の方が自然である。

 日銀の大胆な金融政策は実は物価に対してダイレクトな影響は与えていないことを、日銀はこの4年ちょっとで示すことになった。元々無理があったリフレ派の考え方を無理矢理日銀に押しつけ、その結果が出なかったことで日銀の無理矢理な政策だけが残されてしまっている。

 日銀は9月の金融政策決定会合における主な意見に、「2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されている。もっとも、その実現までにはなお距離があることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが重要である。」とあった。これはたぶん黒田総裁など執行部の意見かとも思われるが、「現在の強力な金融緩和を粘り強く推進していくこと」をそろそろ再考する必要があると思われる。


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by nihonkokusai | 2017-10-01 17:10 | 日銀 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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