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カテゴリ:日銀( 1106 )

日銀の金融政策の修正の難しさ

 1月15日に日銀の支店長会議が開催された。日銀のサイトには黒田総裁の挨拶がアップされている。これを前回の昨年10月の挨拶分と比較してみたところ、昨年10月の挨拶分と今回の挨拶分の違いはわずか1か所だけとなっていた。

 「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。」2017年10月の支店長会議挨拶

 「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。」2018年1月の支店長会議挨拶

 つまり消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の居所だけが、ここにきての前年比での上昇を受けて「0%台後半」から「1%程度」にやや上方修正されていた。

 これ以外の挨拶分には変更はない。景気に関しては昨年10月も今回も下記の通りとなっている。

 「わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。」

 この部分は昨年7月には下記のようになっていた。景気についてはより強気の姿勢を維持した格好となった。

 「わが国の景気は、緩やかな拡大に転じつつある。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。」

 最も注目すべき部分となるのは、「金融政策運営について」であろうが。その文面は下記のように全く変更されていない。もちろん金融政策そのものが現状維持となっていることで当然と言えば当然ではある。

 「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。」

 この金融政策運営はこの5年近い経験則なども踏まえ、より柔軟なものに修正すべきものであることは確かである。しかし、そもそも物価目標が達成されていないこと、また外為市場などへの影響、政府との関係等々を配慮すると、現在の日銀としてはこの頑なな姿勢を維持せざるをえないのも確かである。それではこの姿勢を修正せざるを得なくなるとすれば、それは何が原因となるのか。

 そのひとつの可能性としては、日銀の本来の思惑通りの物価の上昇が挙げられる。日本の消費者物価指数(除く生鮮食品)が安定的に2%を超えて推移することは、まず考えにくいものの、瞬間的に2%を超えることはありうる。

 それはあくまで外部環境がそうさせるものとなり、中央銀行の金融政策によるものではないことが、むしろこれで明らかとなることも予想される。そこにあって金利が超低位に押さえつけられている。つまり我々が本来もらえるはずの金利分がもらえていない実情に対して批判的な見方が強まることも考えられる。その際に日銀が柔軟な対応を示せるのか。外為市場への影響なども考慮するとなかなか難しい選択に迫られることになる。


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by nihonkokusai | 2018-01-17 09:50 | 日銀 | Comments(0)

日銀のステルステーパリングに過剰反応?

 日銀は1月9日の国債買入において、超長期ゾーンの国債買入額を減額した。残存10年超25年以下は1900億円と前回の2000億円から減額し、残存25年超も800億円と前回までの900億円から減額した。残存10年超25年以下の減額は2016年12月28日以来、残存25年超は2017年11月24日以来の減額となる。

 この減額は債券市場でもサプライズと受け止められたが、反応そのものはこれまでの減額時と同様にさほど大きなものではない。債券先物は売られたといっても9銭安での引けであった。10年債も売られたが0.010%上昇の0.065%と大きくは動いていないし、そもそも現物債は商いそのものが通常に比べても少なく、超長期ゾーンにもパラパラと売りが入った程度であった。つまり円債市場は大きくは動いていなかった。

 来年度の国債発行計画で超長期ゾーンも含めて発行額が減額されることもあり、どこかのタイミングでの減額は想定されていた。ただし、年末でもなければ年度末でもなく、このタイミングというのがやや意外性があり、さらに来年度の発行額で減額がない20年ゾーンも絡んでいたあたりに、小さなサプライズはあった。しかし、債券市場ではその程度であった。

 日銀は2016年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和政策によって、政策目標を量から金利に戻している。「概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ」という数字は残したものの、約80兆円は目標数値ではない。すでに今年度ペースでは60兆円を割り込んでいる。日銀は金利をコントロールするために、国債買入額の微調整を行っているという格好ながら、現実には買入額を減少させている。これはステルステーパリングとも呼ばれているが、いまに始まったことではない。

 しかし、今回の日銀による国債買入の減額は、外為市場が特に反応を示した。ドル円が113円近辺から112円台半ばにドスンと下落したのである。さらには9日の米国債券市場で10年債利回りが2.55%と前日の2.47%から大きく上昇したのも、日銀のステルステーパリングがひとつの要因と指摘されている。

 9日の日銀の国債買入オファーのタイミングでのドル円のこの反応は、特に大きな材料もないなか、「国債買入の減額」という表現にシステム的な反応を起こした可能性もある。米債も売りのきっかけ待ちのところに、この材料に反応した面もあったのかもしれない。

 ただし、欧米の中央銀行が正常化に向けて舵を取ろうとしているなか、頑なに物価目標達成に向けて大規模な緩和策を継続する日銀に対して、海外投資家もこれはやはりおかしいと感じ始めている事も確かなのかもしれない。

 結果としてのステルステーパリングは、あくまで買い入れる国債に限界が見えてきたことによる。このため、量ではなく金利に再度着目し、2016年1月にマイナス金利政策を取ったら、金融界からの批判が集中、その批判をかわして、国債の買入額に縛られずにイールドカーブをスティープ化させるために編み出されたのが、長短金利操作付き量的・質的緩和策といえる。ある意味苦肉の策ではあったが、これが案外うまくいっているというのが現状である。ただし、これは正常化に向けた動きではない。

 それでも景気拡大時に非常時の金融政策を続けることに対してはやはり疑問は残る。世界的な景気拡大とそれを受けての原油高などによって物価がいよいよ上がってくる可能性も出てきている。日銀にとっては物価目標が達成されず、むしろ低迷し、長期金利が低位で押さえつけられる環境の方が実はベターであるともいえる。しかし、物価や金利を取り巻く外部環境が今後、劇的に変化してくる可能性もある。量については調整が出来ても、金利については物価目標達成が見えない限り調整はしないというのが日銀の現在のスタンスとみられる。しかし、果たしてそのスタンスがどこまで維持できるのか。市場も多少なり疑問を抱きつつあることも、今回の過剰反応に現れていたのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2018-01-11 09:48 | 日銀 | Comments(0)

2018年のビックリ予想、日銀の物価目標達成!

 年初ということで2018年の金融市場動向についていろいろと予想や予測が出ていると思うが、意外性のあるものとして物価が日銀の金融政策の目標としている水準に達するというビックリ予想が現実化する可能性が出てきた。

 日銀が金融政策において政府と共有して目標としているのは消費者物価指数である。以前は消費者物価指数の総合であったが、2016年9月の決定会合で長短金利操作付き量的・質的緩和を決定した際、日銀はこの目標とする物価を総合から除く生鮮(コア)に置き換えているので、現在はコア指数(以下、コアCPI)を見る必要がある。

 このコア指数に大きな影響を与えているのは、日銀の金融政策である、と書いたら納得するであろうか。少なくとも私は納得しないし、むしろ何を言っているのだとの反論が多数くることも予想される。日銀の金融政策で物価を動かせるのかとの議論はここ5年程度で決着を見た気がするが、それはさておき、コアCPIを大きく動かせる要因に原油価格がある。

 新年早々の東京株式市場は日経平均がいきなり大幅高となり、幸先の良いスタートとなった、この背景にあったのが米国株式市場の上昇であるが、その背景に経済指標により世界的な景気の拡大が明らかになったことや、景気拡大による需要拡大を見込んだ原油価格の上昇があった。

 その原油価格のベンチマークといえるWTIが2015年につけた61ドル台の目先の高値を抜いてきたのである。このまま原油先物の上昇基調が止まらないとなれば、次の節目は100ドルあたりまで特にない。WTIが100ドル台を回復する理由はいまのところ見あたらないが、今後さらに世界的に景気が拡大する可能性もあり、過剰流動性による余剰資金が入り混むなどすれば、WTIの100ドル台回復が絶対にないとも言い切れなくなってきた。

 日銀の目標のコアCPIの数値は前年比であり、このまま原油価格が上昇基調を続けると当然、CPIに大きな影響を与える。実はこのコアCPIが2%を超えたことが、2000年台にも存在した。2008年7月に日本のコアCPIは前年比2.4%増、8月にも同2.4%増となっていた。このときの物価上昇は、瞬間147ドル27セント(7月11日)、 引け値で145ドル29セント(7月3日)まで急伸していたWTIによるもの、つまり原油価格の急激な上昇によるものであった。

 この背景にあったのが中国など新興国の経済成長による原油への需要の拡大とそれを見越した動きとも言えた。しかし、そのタイミングではすでにサブプライムローン問題が金融市場を脅かしており、その後リーマン・ショックに代表される金融経済危機によって原油価格は急落し、日本のコアCPIも前年比は2009年3月にマイナスに転じている。

 この経験もあってか日銀は「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続する」としている。つまり何かのきっかけで瞬間的に2%をつけてもそれは物価目標達成とは認めないと意地を張るようである。

 そうはいっても、仮に2%の物価目標が原油価格の上昇を主因に、少し気の早い消費増税の駆け込み需要なども巻き込んで達成されたらどうるのか。世界的な景気拡大、雇用のタイト化等々、物価を側面支援する要因も多くなってきている。これはどうも絵空事ではなくなってきている。むしろ物価目標に固執するあまり身動きの取れない日銀にとっては、より柔軟な政策に変更する良いタイミングとなるかもしれない。

 異次元緩和を含むアベノミクス政策によって、時間はかなり掛かったものの、物価目標の達成が見えてきた。デフレ脱却は間違いない。アベノミクスを支えるリフレ政策は間違っていなかった?(間違っていたとは思うが)。そうなのであれば、マイナス金利政策を修正し、ステルステーパリングではなく、正式にテーパリングも開始することが、物価目標達成とそれによるデフレ脱却をより広くアピールできると現政権に説明すれば、日銀の意地元緩和政策ではなく、異次元緩和政策の軌道修正も可能なのではなかろうか(期待をこめて)。


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by nihonkokusai | 2018-01-06 11:59 | 日銀 | Comments(0)

マイナス金利政策の修正の可能性

 日銀の黒田総裁は昨年12月22日の金融政策決定会合後の記者会見において、下記のような発言をしていた。

 「特にリバーサル・レートという学術的な分析を採り上げたからといって、昨年9月以来の長短金利操作付き量的・質的金融緩和について見直しが必要だとか、変更が必要だということは全く意味していません。」

 11月13日のスイス・チューリッヒ大学での講演でも黒田総裁が「リバーサル・レート」について指摘したことで、金融界からの批判も出ていたマイナス金利政策について、日銀はそれをいずれ調整するのではとの思惑が出ていた。しかし、その可能性はないと総裁はあらためて明言した。

 しかし、マイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明であり、金融機関の収益を圧迫するマイナス金利政策は、見直す必要があるのではなかろうかと私は思っている。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるが、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。

 10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨でも下記のような発言が複数の委員からあった

 「複数の委員は「物価安定の目標」の達成を急ぐあまり、極端な金融緩和策をとると、金融不均衡の蓄積や金融仲介機能の低下といった副作用が生じ、結果的に十分な政策効果が得られない可能性があると述べた。」

 また、日銀の宮野谷理事はロイターとのインタビューで、下記のような発言をしていた。

 「ただ、債券キャピタル・ゲインを得られる余地はかなり減少しており、信用コストの一段の低下も期待し難い。そうした中で資金利ざや縮小のデメリットが大きくなり、金融機関の不満が強まっている」

 日銀がすぐにでもマイナス金利政策の調整に動く兆しは、いまのところはない。しかし、今後さらに物価が上昇してくる可能性もある。11月のコアCPIは前年比で0.9%増となり、1%も見えてきた。原油価格も上昇してきている。もちろん2%の物価目標達成には距離はあるが、物価に応じたイールドカーブ形成もいずれ必要となるのではなかろうか。その際にマイナス金利政策から脱すると、むしろ日本の景気回復やデフレ脱却が意識され、その上金融機関の収益の改善も見込めるとなれば、株式市場にとっても悪材料ではなく好材料視される可能性もある。正常化に向けた出口政策は難しくても、景気や物価の状態をみながらの金融政策の微修正ならば検討しても良いのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2018-01-04 09:40 | 日銀 | Comments(0)

片岡委員の意見への反論に垣間見える日銀の本音?

 日銀は26日に10月30、31日に開催された日銀金融政策決定会合議事要旨を公表した。色々と指摘したいところはあるが、特に興味深かったのが、下記のある委員の意見に対する反論である。

 この「ある委員」とはこの会合において、「イールドカーブにおけるより長期の金利を引き下げる観点から、15年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した」片岡委員である。

 「ある委員は、より長期の金利を引き下げる観点から、10年物国債金利に代えて、15 年物国債金利が 0.2%未満で推移するよう長期国債の買入れを行うことが適当であるとの意見を述べた。」

 片岡委員はその前の会合で、現在のイールドカーブのもとでの金融緩和効果は、2019年度頃に2%の物価上昇率を達成するには不十分であるとして、金融政策の現状維持に反対したが、対案として新たな議案は出していなかった。そもそも対案が必要なのかどうかはさておき、10月30、31日の会合では具体案を出してきたものの、それに対して複数人から反撃を受けた格好となった。

 「この委員の意見に対して、何人かの委員は、15年物国債金利を引き下げた場合の経済・物価に及ぼす具体的な政策効果や、それをもたらすメカニズムが明らかでないと指摘した。」

 何人かの委員が何人なのかは具体的ではないが、3、4人程度とみて良いか。ここには少なくとも片岡氏と同様にリフレ派とされる岩田副総裁、原田委員や櫻井委員ではない可能性が高い。そのあとにもう一人の委員が下記の発言をしている。

 「この点について、別のある委員は、15年物金利のような超長期ゾーンの引き下げは、保険や年金の運用利回りの低下などを通じ、国民のマインド面に影響を及ぼすことが懸念されると付け加えた。」

 これは発言内容からみて鈴木委員の発言ではないかと思われる。そうなると何人かの委員には審議委員だけでなく、黒田総裁もしくは中曽副総裁が含まれている可能性もありうるか。

 片岡委員はこれもあってか、次の12月の決定会合では下記のように意見を修正している。

 「2018年度中に「物価安定の目標」を達成することが望ましく、10年以上の国債金利を幅広く引き下げるよう、長期国債の買入れを行うことが適当であるとして反対した。」

 10月30、31日の会合での片岡委員の意見に対して複数人が反論してきたのは、何かしらの逆鱗に触れた可能性もありうるか。

 10月30、31日の会合では実は下記のような発言もあった。

 「大方の委員は、現在の金融市場調節方針のもと、強力な金融緩和を粘り強く推進していくことが適切であり、現時点で追加緩和を行うべきではないとの認識を共有した。」

 あえて「追加緩和を行うべきではない」との強い表現としたのは何故か。ここに日銀としての本音が隠れているように思われる。これは片岡委員の追加緩和の提案に対する複数人からの反論にも現れたということではなかろうか。

 現在の日銀はよほどの事態が発生しない限りは追加緩和を講じることは想定していないと思われる。これは物価目標の達成の有無に関わらずである。それは現在の強力な緩和策であれば、それで十分効果が出てくるとの認識によるものと思われる。

 ただし、現実には上記反対者の言葉を借りると、異次元緩和を講じた場合の「経済・物価に及ぼす具体的な政策効果や、それをもたらすメカニズムが明らかでない」ことも確かではなかろうかと思う。それでも、これからさらなる深みにはまることは避け、量の調整も可能な現在の長短金利操作付き量的・質的緩和を継続させざるを得ないのではなかろうかと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-12-28 10:05 | 日銀 | Comments(0)

景気に応じた金融政策に修正すべきではなかろうか

 12月15日に発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス25となり、前回9月調査のプラス22から3ポイント改善した。2006年12月のプラス25以来11年ぶりの高水準となり、5四半期(1年3か月)連続の改善となった。2017年度の設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額、除く土地投資額)は大企業・全産業が前年度比7.4%増となっていた。

 大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回のゼロから1ポイント上昇となった。プラスとなるのは2008年9月のプラス11以来9年ぶりだそうである。それでも物価の上昇圧力は弱く、原油価格の上昇などでどうにか日本の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比でプラス0.8%となっている。

 日銀短観から景気動向をみると、景気は回復基調にあることは疑いのない事実である。ただし、これは欧米などの海外の景気回復が大きく寄与している。つまりリーマン・ショックや欧州の信用不安といった世界的な経済金融危機が収束した結果として、世界的に景気が回復したといえよう。

 世界的な経済金融危機に対して、特に金融市場の不安を後退させるために、日米欧の中央銀行による大胆な金融緩和策が講じられた。世界的な経済金融危機の後退には、これが寄与したことも確かである。しかし、その後景気が回復し、米国の株価指数が過去最高値を更新するなどしており、これを見る限り、危機対応としての中央銀行による過剰な緩和策の必要性はなくなりつつある。

 このため米国のFRBは正常化路線を進め、今年も3回目の利上げを行ってきた。イングランド銀行も今年11月に10年ぶりの利上げを決定した。ECBも慎重にQEの縮小を進めようとしている。これら対して日銀はステルステーパリングは進めつつあるものの、物価目標に縛られて方向転換そのものはかなり困難となっている。

 中央銀行の金融政策の方向転換は特に金融市場に大きな影響を与えかねない。金融引き締めと捉えられると株価が下落する懸念もある。だからといって異次元緩和を続ける必要もないはずである。マイナス金利政策は金融機関に対して負の影響を与えるなどしており、むしろマイナス金利政策をやめたほうが株価にプラスになる可能性もある。実態経済に即した金融政策に修正しないと、今後、柔軟な金融政策を取ることが難しくなる懸念もある。そろそろこのあたりを考慮すべきタイミングに来ているのではなかろうかと思う。


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by nihonkokusai | 2017-12-24 14:14 | 日銀 | Comments(0)

日銀は効果の見えないマイナス金利政策を見直すべき

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、預金の預け先である銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めた。GPIFの預金は現在みずほフィナンシャルグループ傘下の資産管理サービス信託銀行(TCSB)が預かっており、資産管理サービス信託銀行におけるGPIFの預金は2017年9月末時点で預金は10兆円以上となり、1年前より7兆円増えた(12月18日付け日経新聞より)。

 2016年1月に導入が決まった日銀のマイナス金利政策により、準備預金の法定額を超過した一部に、年0.1%のマイナス金利が適用される。信託銀行全体でマイナス金利を適用される預金は約7兆円程度あるようだが、その多くをTCSBが占めているようである。

 これまで年金などを運用する機関投資家がマイナス金利分を負担する事例はあったようだが、ついに超大手の機関投資家ともいえるGPIFも負担せざるを得なくなったということになる。

 日銀が2016年1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど利回りが大きく低下した。MMFやMRFの資金の導入先であるところの債券の利回りも軒並みマイナスとなり、MMFについては新規の購入申し込みを停止し、さらに運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。同年3月の金融政策決定会合では、マネー・リザーブ・ファンド(MRF)と呼ばれる投資信託について、マイナス金利の適用から外すことを決めた。

 日銀は2016年9月の金融政策決定会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、これによって長期金利つまり10年債利回りをゼロ%を少し上回るプラスに引き上げた格好ながら、中期ゾーン以下の国債利回りはいまだにマイナスとなっている。

 いったいマイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明というか、そもそも物価目標は達成される見込みもない。マイナス金利政策が直接、物価上昇に働きかけることを証明できるものはない。そうであるのであれば、金融機関の収益を圧迫するだけともなるマイナス金利政策は早晩、見直す必要があるのではなかろうか。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるかもしれないが、それでやめられないというのもおかしいし、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。そろそろ、マイナス金利政策の修正を提案する日銀の政策委員が出てきてもおかしくはないのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-20 09:28 | 日銀 | Comments(0)

日銀のイールドカーブ・コントロールの目的と問題点

 日銀の黒田総裁は12月7日のきさらぎ会での講演で、日銀のイールドカーブ・コントロールについて説明をしていた。

 「かつてのような国債買入れ額を固定する方式では、経済・物価動向や国債市場の状況等に応じて金利の押し下げ度合いに過不足が生じ、結果的に、日本銀行が望ましいと考えるイールドカーブを実現することができない可能性がありました」

 日銀の金融政策がどのようにして経済や物価に影響を与えて行くのか。それは日銀の金融調節によって行われる。政策金利の短期金利を上げ下げすることで、長期金利にも影響を与え、市場を経由して経済物価動向に影響を与えようとしている。しかし、政策金利がゼロ%となってしまうと、資産買入の量を目標にするなり、政策金利をマイナスとするといった選択となる。

 日銀は買い入れる資産の量を大胆に増やす政策を取った。しかし、量にも限界はある。このため取った政策がマイナス金利政策であり、長期金利そのものをコントロールしてしまおうとするイールドカーブ・コントロールであった。

 本来の長期金利は市場で形成されるものであり、コントロールは難しいものとみられていた。それに対して黒田総裁は「わが国のイールドカーブは、この1年間、金融市場調節方針と整合的な形で、円滑に形成されています」と成果を強調している。

 それでは適切なイールドカーブとは何か。総裁は「それぞれの年限に対応する予想物価上昇率や自然利子率の状況を分析したうえで、全体として、金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状を探し出していくことが必要となります」としている。また「適切なイールドカーブの形成にあたっては、貸出・社債金利への波及、経済への影響、金融仲介機能への影響などを踏まえて判断するということです」とも述べている。

 日銀のイールドカーブ・コントロールは、歴史的にみても過去に例のない金融政策と言える。そのため「金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状」とか「適切なイールドカーブの形成」が本当に可能であるのか。適切なイールドカーブ形成を市場に委ねるのではなく、中央銀行が本当に操作することが可能なのか。

 景気拡大は続くものの、物価は低位安定していることで、イールドカーブ・コントロールはしやすい面がある。しかし、この安定しているファンダメンタルズが変化し、国債の需給バランスが崩れるような場面が訪れた際にどのように対処が可能なのか。いずれイールドカーブ・コントロール政策が試される場面が出てくる可能性もあろう。


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by nihonkokusai | 2017-12-18 09:33 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁が指摘したリバーサル・レートの議論

 日銀の黒田総裁は、11月13日のスイス・チューリッヒ大学における講演で、「金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています」と発言し、市場関係者の注目を集めた。黒田総裁はリバーサル・レートについて以下のように説明していた。

 「これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートについては、講演議事要旨の注釈に「Markus K. Brunnermeier and Yann Koby (2017), "The Reversal Interest Rate: An Effective Lower Bound on Monetary Policy," mimeoを参照」とあり、米国のプリンストン大学のブルネルマイアー教授の論文を引用した。リバーサル・レートとはブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である。

 リバーサル・レートの議論は、大胆な金融緩和策の副作用ともいえるものであり、何故、黒田総裁はこのタイミングで、この議論を海外の講演で紹介したのか。

 日銀は長短金利操作付き量的・質的緩和と称する大規模な金融緩和策を行っている。いろいろな緩和策をくっつけたような名称となっているが、現実には量的・質的緩和とその後のマイナス金利政策にいろいろな意味で限界や副作用が生じ、それを修正するための手段との見方もできる。

 2016年1月のマイナス金利付き量的・質的緩和の導入については金融界からの批判が相次いだ。現実にここにきてメガバンクが大量のリストラ策を発表しているのも、マイナス金利による影響が大きい。マイナス金利政策はECBなどがすでに実施していたが、その効果は見えないにも関わらず、金融機関への収益を大きく悪化させかねないものである。そのため、マイナス金利政策の修正を行ったのが、同年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和策である。

 長短金利操作付き量的・質的金融緩和策は一見、短期金利に加えて長期金利も操作目標に加え、追加緩和のようにみえる。しかし、その実態は長めの期間の金利を引き上げ、イールドカーブを少しでもスティープ化させて、金融機関の運用に対する悪影響を軽減させるものである。また操作目標を量から金利に変えたことで、量への呪縛を解くこととなった。

 これにより、日銀は国債の保有残高の増加額年間約80兆円という数字は残しているものの、実質は40兆円台となるなどステルステーパリングを行うことが可能となった。これに対して市場は緩和策ではなくなっているのではとの印象よりも、日銀の国債買入への限界を気にしていたことでその不安が多少なり解消されたことをむしろ好感した。長期金利に目標が課せられたことで、国債の利回りが大きく跳ね上がることも抑えられることになった。

 日銀の黒田総裁がこのタイミングでリバーサル・レートの議論を紹介したのは、さらなる利下げ観測を牽制したとか、今後の異次元緩和からの微調整の可能性を示唆したとの見方もできなくはない。しかし、それよりも日銀の現在の政策である「長短金利操作付き量的・質的緩和」がリバーサル・レートも意識した上での政策であることを示す目的もあったのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-06 10:00 | 日銀 | Comments(0)

日銀総裁が金利を下げすぎることによる副作用にも言及

 日銀の黒田総裁は13日の『「量的・質的金融緩和」と経済理論』と題するスイス・チューリッヒ大学における講演は、これまでの発言内容と比較して、やや様変わりとなってきたようにも思われた。それを示すものとして、「量的・質的金融緩和」の成果に加え、副作用についても言及していた点である。

 「最適なイールドカーブの把握」との部分では下記の説明があった。

 「金利の年限によって金利低下の効果が異なることも、最適なイールドカーブを考えるうえで考慮すべき一つのポイントです。経済や物価への影響という点では、一般的に、短期から中期の金利低下による効果が大きいと考えられます。企業や家計の資金調達に占めるこのゾーンのウエイトが大きいためです。」

 だからこそ、2013年4月の量的・質的緩和政策の導入まで、日銀による国債の買入は超短期ゾーンが主体であったはずである。また、短い国債の買入により、償還がすぐ来ることで全体の規模の調整が比較的しやすいメリットがある。つまり出口政策を容易比にさせる。2006年の3月の量的緩和策の解除にも、当座預金残高の削減はかなり短期間で可能とされていた。

 「一方、より長めの金利については、保険や年金といった金融の社会インフラの機能と強い関連があると考えられます。このため、長期・超長期金利の過度な低下は、これらの運用利回りに対する不安感などを惹起し、マインド面を通じて経済に影響を及ぼす可能性に留意する必要があります。」

 この点をあらためて総裁が指摘した意味は大きい。そのために導入したのが2016年9月の長短金利操作付き量的・質的金融緩和による、イールドカーブコントロール「YCC」であった。このYCCの目的はイールドカーブをスティープ化させることであった。それによってある程度「運用利回りに対する不安感」などを後退させることができる。

 「このほか、金融仲介機能への影響という点では、最近、「リバーサル・レート」の議論が注目を集めています。これは、金利を下げすぎると、預貸金利鞘の縮小を通じて銀行部門の自己資本制約がタイト化し、金融仲介機能が阻害されるため、かえって金融緩和の効果が反転(reverse)する可能性があるという考え方です。」

 リバーサル・レートとは米プリンストン大学のブルネルマイアー教授が考案した概念で、金利がある一定水準を下回ると、かえって貸し出しなど金融仲介機能に悪影響を与えるとの議論である(ロイターの記事より引用)。リバーサル・レートを引き合いに出して黒田総裁は、金利を下げすぎることによる副作用について、あらためて言及している。これなども今回の総裁発言のなかではあまり過去にはみられないものであった。

 今後、日銀がマイナス金利政策や長い期間の国債の大量買入を主体としている現在の大規模緩和策から調整を図ってくると期待したいところではあるが、市場への影響等を考慮するとそう簡単に修正できるものではない。しかし、それでも結果としてステルステーパリングを行うなど、これまでのかなり緩和に対する前傾守勢を修正しつつあることも確かなのかもしれない。また、これは追加緩和を主張している向きに対する牽制との見方もある。


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by nihonkokusai | 2017-11-17 10:08 | 日銀 | Comments(0)
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