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カテゴリ:アベノミクス( 90 )

右肩上がりの相場シナリオの危険性

 いまさらながら1980年代の日本のバブルは何が原因であったであろうか。その発生は1986年末あたりからとされ、1985年のプラザ合意による円高や、それに対処するための日銀の金融緩和策が、日本の実態経済以上に株や不動産の資産価格を上昇させた。すでに高度成長は止まって低成長時代を迎えていたが、日経平均や地価は右肩上がりの状態が1989年末あたりまで続いたのである。

 その上昇トレンドが崩れたことでバブルが崩壊した。銀行の経営などは株も土地も上昇し、急落はしない前提で行われていたことで、不良債権問題が発生し、金融不安が吹き荒れ、日本経済はデフレへと突入することになった。このあたりの分析についてはいろいろな見方もあろうが、少なくとも株と土地が右肩上がりのトレンドとなっていることが当然のこととして認識されていた事がバブル崩壊の最大の原因になっていたと思われる。

 現在の日本の状況をみると地価はさておき、株式市場は右肩上がり、長期金利は右肩下がり、もしくは超低位安定が前提となって物事が動いているように思われる。

 公的年金などの資産運用については、株式や海外資産などのリスク資産の比重を大きく高めてきている。ゆうちょ銀行などもその方向にあるようだが、これは株式市場などが右肩上がり、もしくは大きく下落しないことが条件となっている。

 仮に1990年以降のバブル崩壊のような株式市場の下落が起きるとすべての前提が狂うことになる。ある程度のヘッジができたとしても、我々の年金資金の運用で大きなマイナスが発生する懸念がある。国債であれば途中で売却すれば損失が発生するが、少なくとも償還まで保有すれば元本は戻ってくる。

 その国債についても、すでに短期債含めて1000兆円という残高となっていることで、長期金利は超低位で推移することがシナリオの前提となってしまっている。予算編成などでは長期金利の2%あたりまでの上昇も考慮しているかもしれないが、現実にそのようなことは簡単には起こらないはずであるというのが市場参加者も含めた素直な見方となっているのではなかろうか。

 その背景にあるのが日銀の異次元緩和による大規模な国債買入であるが、今度はその日銀による大規模な国債買入が債券市場では当然のことのようになりつつある。つまりは、日銀の大規模な国債買入や右肩下がりの長期金利のトレンドが前提となっている。この前提条件が崩れるシナリオは本格的には準備はされておらず、あくまでひとつのリスクシナリオでしかない。

 このような一方方向のトレンドの前提の上でのシナリオが崩壊した際にはどうなるのか。その際に大きな反動が来ることは、バブル崩壊時に痛いほどわかったはずであるが、どうもその反省はあまり生かされていない。現在の状況がバブルであるかどうかの判断は崩壊するまではわからない。しかし、一方向に賭けた運用には危険が伴うことも確かであろう。

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by nihonkokusai | 2015-04-16 09:37 | アベノミクス | Comments(0)

円安はアベノミクスの成果なのか

 2012年11月の衆院解散による政権交代への期待と、あらたに政権を担うであろうとされた安倍自民党総裁によるリフレ的な発言により、アベノミクスは誕生した。その効果として示されたのが急激な円安と株高、さらには一時的な物価の上昇となる。さらに雇用も改善傾向にあり、このあたりもアベノミクスの成果とされている。はたしてここで本当にレジーム・チェンジは発生していたのであろうか。

 ドル円は2011年10月末に75円台まで下落していたが、ここが過去最安値となった(念のためドル円とするときはドルが円に対して上げた下げたとの表現になる)。その後、2012年11月あたりまで80円割れが続く。しかし、2012年11月のアベノミクスの登場のタイミングにより、急激な円安を迎えることになり、2015年3月には一時122円台まで回復した。122円台がいつ以来なのかといえば2007年7月以来となる。

 それでは2007年から2015年にかけて円高が進行した理由は何か。それは日銀の金融緩和の度合いが足りなかった、からではない。

 2006年半ばに、それまで高騰を続けていたアメリカの住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど、アメリカ住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月のパリバ・ショックであった。ダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。米債市場は安全資産の国債に買いが集中し、これを受けて債券は買い進まれた。そして円も安全資産として買い進まれたのである。

 このサブプライム・ローン問題が2008年9月のリーマン・ショックに繋がる。その後、さほど時を経ずしてギリシャの財政問題から欧州の信用危機が発生した。それにより円が買い進まれて、ドル円は2011年10月末に75円台まで下落したのである。その後、2012年11月あたりまでドル円は低迷し80円割れが続いたが、欧州の信用危機はECBを含めて欧州連合などを含めての賢明な努力なより次第に収束していった。世界的な危機は去りつつあったのである。

 そこにアベノミクスの登場のタイミングでドル円は急回復する。安倍自民党総裁のリフレ発言をきっかけとしたヘッジファンドなどによる大規模な売り仕掛けが入ったのだが、これは反転のきっかけ待ちにあったためとも言えよう。そして、そこからドル円は122円台、つまり百年に一度とされた危機が立て続けに起きる前の水準に戻ったのである。

 この推移をあらためて確認すると、この動きを日銀の異次元緩和の効果として説明することにむしろ無理はなかろうか。アベノミクスはたしかにきっかけとなり、異次元緩和はそれをしっかり実行したため、円安が進行し、第二次異次元緩和でさらに円安に拍車をかけた、とされても、大きな危機以前の元の水準に戻っただけである。歴史に「もし」はないが、仮にアベノミクスのようなリフレ政策を打ち出さずとも、円高調整が入った可能性はありうると思われる。

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by nihonkokusai | 2015-03-31 09:29 | アベノミクス | Comments(0)

二・二六事件と高橋是清

 これを書いている2月26日は79年前に二・二六事件が起きた日である。1936年2月26日未明に陸軍の青年将校らが1400名余の兵を率いて昭和維新を起こそうと決起し、未遂に終わったクーデターとされる。この犠牲者となった一人が高橋是清である。

 高橋是清による高橋財政は円安放置政策、日銀引受による国債発行と財政支出の拡大、大きな低金利政策が柱となっていた。景気対策という側面からみると、井上デフレと呼ばれた深刻な不況から脱するために、積極財政と低金利政策により有効需要の拡大を計った。高橋財政の柱のひとつである財政支出の拡大は、農村救済のための時局匡救事業はあったものの、軍事費の拡大が最大の要因となっていた。

 放漫財政とも呼ばれた拡大財政について高橋是清は、比較的短期間のうちに歳出規模は再び収縮し、景気回復に伴う税収増と相まって財政収支は均衡を回復するとの認識でいたが、これはやや楽観的すぎる見方であった。1934年度の予算編成のころとなると、さすがに高橋是清も財政膨張の抑制、国債増額の是正に取り組みはじめる。1934年4月に高橋蔵相は次のように発言している。

 「赤字公債が年々増えることは良くない。政府は決して之を安心して、何時までも続け得るものとは思って居らぬ。併し一昨年以来の我が国の一般経済界、産業界の有様を見たとき、先ず政府が刺激剤を与えるより外に手段はなかった」

 1932年以降の政府支出の拡大要因は軍事費の拡大が主要因となったことで、財政政策の転換は簡単にはいかなかった。1935年に高橋蔵相は軍備拡張を強引に要求する軍部と対立する。高橋は軍部予算を海軍と陸軍一律に削減する案を実行しようとしたが、海軍に対する予算規模の小ささに不満を持っていた陸軍の恨みを買うことになり、二・二六事件で高橋蔵相も標的とされたのである。

 高橋財政のリスクとしては、財政拡大の主因が軍事費であったことに加え、日銀による国債引受があった。これについて高橋是清は「一時の便法」と称していたが、それはある意味、パンドラの箱を開けてしまったと言える。デフレからの脱却期であれば、その弊害は見えてこないものの、経済が回復するとそのリスクが拡大する。つまり、日銀による国債の売りオペを行って過剰流動性を吸収しても、国債発行による財政拡大が続けば信用膨張が進む。これを抑制しようにも金融引き締め政策の実行が著しく困難となる。

 高橋是清の考案した日銀引受による国債発行は、市中公募と異なり発行額や発行条件が市場動向に左右されなくなる。そもそも日銀の国債引受方式による大量の資金供給は金利そのものの引き下げも目的としており、財政負担の軽減を目的に発行する国債の利率の引き下げを計ることも重要な目的となっていた。金融緩和策ととも、国債の発行条件の引き下げにより、金利の先安予想が強まり、国債価格の上昇予想を背景にして、国債の売りオペを通じての市中消化を円滑に行うことが可能となっていた。つまり、これは金利の引き上げを行うことはかなり困難になることを意味し、その好循環が途切れるとすべての歯車がうまく回らなくなることも意味する。結果的にこれが戦後のハイパーインフレの要因となり、政府債務はそのハイパーインフレと預金封鎖により国民の金融資産を吸い上げて返済されることになる(「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」より一部引用)。

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by nihonkokusai | 2015-02-27 09:47 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスの真価が問われる

 12月14日の衆院選挙で自民・公明両党は法案の再可決や憲法改正の発議に必要な全議席の3分の2を上回る326議席を獲得した。自民党は291議席と事前に予想された300議席には届かなかったものの、公明党の35議席を合わせると2年前の325議席を上回った。

 安倍政権にとってはアベノミクスは信任されたとして、今後も経済政策としてアベノミクスなるものを継続すると思われる。ただし、問題はそのアベノミクスとは何かということにもなる。

 選挙明けの12月15日の東京株式市場は12日の米国株式市場の大幅下落を受けて、売りが先行した。アベノミクスへの期待よりも、原油安をきっかけとした海外市場の動向に大きく影響を受けた格好となった。2年前の2012年12月16日の衆院選の結果を受けての翌17日に円安株高が進んだのとは景色が変わってきていた。

 アベノミクスの根幹にはリフレ的な発想があり、それを具体化させたのが2013年4月の日銀の異次元緩和であった。しかし、今回日銀はすでに解散総選挙が決まる前に異次元緩和第二弾を打ち出しており、ここで再び円安の動きが強まり、ドル円は120円を突破していた。

 しかし、ここからは新たに日銀の金融政策を元に円安株高を仕掛けることは難しい。日銀が第二弾を打ち出した要因が原油安により物価抑制にあったが、原油安は株価の上昇も結果として抑制させることになった。

 原油安とそれにより株安の動きに影響される格好で、円安の動きも止まり121円台から117円台あたりに下落した。今回の米国株式市場の下落は一時的な調整の可能性もあるが、ダウ平均は過去最高値をつけるなどしていたことで、いったんピークアウトした可能性もありうる。

 日経平均株価のトレンドは、日銀短観の大企業製造業DIの動きにある程度連動していることが知られている。その日銀短観が12月15日の朝に発表された。大企業製造業DIはプラス12と前回の13からやや悪化し、3か月先についてはプラス9になる見通しとなっていた。これからみると日経平均もここでいったんピークアウトする可能性がある。

 12月16日、17日のFOMCでは声明文における「相当な期間」との表現の部分が削除され、利上げに向けた動きを強めることも予想される。これはドル買い円売りの材料ではあるが、それもかなり織り込みつつある。むしろFRBが利上げに向けて慎重姿勢を示してくるとなれば、ドル安の動きを強めることも予想される。

 円安株高と日銀の異次元緩和というアベノミクスの原動力については、ここからはあまり期待はできない。それでも経済成長を継続させるというのであれば、三本目の矢をしっかり撃つ必要があるが、果たしてそれができるのか。ここから本当の意味でのアベノミクスの真価が問われる。

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by nihonkokusai | 2014-12-16 09:35 | アベノミクス | Comments(0)

なぜいま解散総選挙なのか

 12月14日に衆院選挙が実施される。12月4日の新聞各紙は自民党が300議席を伺う動き(日経)、自公、300議席超す勢い(読売)、自民300議席超える勢い(朝日)とそれぞれ別な調査ながら、同じような結果が出ていた。

 なぜいま解散総選挙なのか。消費増税を先延ばしするために、その是非を国民に問う必要があるというが、それは言い訳に過ぎないであろう。12月8日に発表された7~9月期のGDP二次速報は上方修正かとの予想に反し下方修正されたが、そもそも消費増税の決断はこの二次速報を確認してからと官房長官などからは指摘があった。しかし、それを一次速報のタイミングに前倒しした。ご承知のように一次速報もプラスとの予想に対してマイナスとなったことで、消費増税延期やむなしとの見方も強まった。

 たしかにこの7~9月期のGDPも解散に向けたひとつのきっかけにはなった。事前予想もマイナスというのはなかったものの、エコノミストの予想も以前の予想から大きく下方修正されており、一次速報の発表で消費増税延期の決断をし、解散に打って出るとのシナリオが遅くとも11月はじめには練られていたことが下記要因により推測できる。

 11月2日に安倍首相の右腕と言われる飯島勲氏がテレビ番組で「12月2日に衆議院が解散、14日に投開票が行われる」と発言したことが話題となった。飯島氏はテレビ番組で、「補欠選挙をやった後に7月~9月の経済状況が明らかになる。11月17日くらいにはわかりますから、20日くらいに総理は消費税を10%に上げるかどうか決断する」と一気に読み上げ、 さらに「その後の12月2日に、思い切って衆議院解散して、12月の14日に投開票。24日に内閣改造、予算は越年」と告げたそうである。飯島勲氏のほぼ予言通りに衆院は解散され、14日に投開票となったのである。これは偶然の一致であったであろうか。

 11月9日の読売新聞朝刊は一面で、安倍首相が来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを先送りする場合、今国会で衆院解散・総選挙に踏み切る方向で検討していることが8日、分かったと伝えた。首相はこうした考えを公明党幹部に伝えたとみられるとしている。年内に解散する場合、衆院選の日程は「12月2日公示、14日投開票」か「9日公示、21日投開票」とする案が有力だという。この読売新聞の記事については自民党に影響力を持つ渡辺恒雄主筆からの指示だとの見方が週刊誌に掲載された。ある程度、解散総選挙への道筋が示されていたと思われる。

 実際には11月18日に安倍首相は記者会見を開いて消費再増税延期と年内解散・総選挙を表明した。21日に衆院を解散、衆院選の日程は12月2日公示、14日投開票となる。

 GDPも消費増税も解散総選挙に向かう材料にされたに過ぎず、今回の衆院解散については綿密な戦略な練られていた可能性があった。その戦略を立てる上で、ビッグデータが利用されていたとの見方がある。つまり、いま解散すればどの程度の議席を与党というか自民党が確保できるのか、ある程度予測していた可能性もある。

 内閣改造後の二人の閣僚の辞任により、安倍政権の支持率は低下しつつあるとはいえ、まだ高い水準を維持していた。さらにこのタイミングでの解散総選挙となると、野党の準備が間に合っていない。アベノミクスの効果そのものに疑問符もつき始めていたが、このタイミングであれば、現議席に近い議席を維持可能とのデータがあった可能性がある。遅くとも11月上旬には衆院選挙に向けたタイムスケジュールが組まれ、それが連立与党の公明党にも流れ、いずれ公になるのであればと飯島氏がテレビで発言し、与党は準備態勢を整えたということであろうか。

 ここでひとつ大きな疑問が残る。10月31日に異次元緩和第二弾を決定した日銀はこの動きを知っていたかである。解散総選挙に向けての安倍首相の動きは日銀は感づいていなかった可能性がある。そのひとつの証拠として、10月31日の政府側出席者による異例の中断要請である。政府としても日銀のこの動きはサプライズであり、歩調を合わせたものではなく、日銀が勝手に動いてくれたことで、円安株高も期待され、政府にとってはしめしめという状況となったのではなかろうか。これがさらに解散総選挙に向けた追い風になった可能性もある。その期待通り、ドル円は121円台に乗せ、12月8日に日経平均は18000円台に乗せてきた。

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by nihonkokusai | 2014-12-08 09:42 | アベノミクス | Comments(0)

市場が日銀や安倍政権に牙をむく可能性

 11月21日の衆院解散により、選挙戦に突入する。今度の選挙については策士策に溺れてしまったような気配が出てきた。そもそも安倍政権にとって時間とともに支持率低下が避けられないとの見立てもあっての今回の解散総選挙ともみられ、2年前の選挙と打って変わり、攻めの選挙から守りの選挙となる。前回の選挙は与党であった民主党を攻撃し撃破した。今回は何から守るかといえば、野党というより国民の支持の低下から身を守ることになろう。

 朝日新聞は19、20日に全国緊急世論調査(電話)を実施し、この結果、安倍内閣の支持率は39%で、不支持率は40%となり、第二次安倍内閣発足以来、初めて支持と不支持が逆転した。この時期に解散・総選挙をすることについては反対が62%で、賛成の18%を大きく上回った。消費増税延期に関する首相の判断を評価するは33%で、評価しないの49%の方が多かったそうである。

 さらに安倍首相の経済政策、つまりアベノミクスは成功か失敗か尋ねたところ、成功だは30%で、失敗だの39%方が多かったそうである。その他・答えないも31%に上り、判断がつかない人も多かった。

 この朝日新聞の世論調査を見る限り、今回の選挙は与党自民党にとって、かなりの逆風になる可能性がある。ただし、相手となる野党の魅力も薄く、上記の世論調査の結果でも、比例区投票先を政党名を挙げて聞いたところ、自民37%、民主13%となっているように、自民党が優勢であることは確かである。

 民主党に対する風当たりも引き続き強いものがあり、選挙の行方については自民党が若干の議席を失うだけとの見方も強く、そうなれば安倍首相の思惑通りとなる。果たしてそううまく行くであろうか。

 11月20日の夕方、ドル円は一時119円近くまで進んだ。ドル円だけでみれば、日銀とFRBの金融政策の方向性の違いによる動きとみることもできる。しかし、円はユーロに対しても下落し、ユーロ円は一時149円台に乗せていた。ECBの追加緩和観測も出ているにも関わらずである。また、同じ安全通貨とされているスイスフランに対しても円は下落するなど、単純に金融政策だけでの動きとも思えなくなってきている。

 もちろん日本国債はいまのところ微動だにせず、日本売りが始まっている気配はない。しかし、ヘッジファンドなどが日本国債よりも先に円を切り崩しに掛かる可能性もありうる。格付け会社も日本の格付けを再確認しようとするなど、消費増税の延期は次の再延期は認めないとしても、財政規律の緩みを感じさせる。しかも、その前に日銀は30兆円もの国債残高の積み増しを決定している。

 このあたりからもヘッジファンドなどが付け入る隙をみせてしまっているように思われる。場合によると1992年のイングランド銀行とヘッジファンドの攻防戦のように事態が起きる可能性もないとはいえない。この際にはジョージ・ソロスなどのヘッジファンドがイングランド銀行を打ち負かしていた。安倍政権は市場をうまく味方につけた結果、円安株高を背景に高い支持を受けた。その市場が日銀や安倍政権に牙をむく可能性がないとは言えない。

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by nihonkokusai | 2014-11-25 09:48 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスの原点は危険なリスク的思考にあり

 安倍首相は18日の夜、消費増税の先送りと衆院の解散総選挙を表明した。2015年10月の8%から10%の消費増税は、1年半延期され2017年4月からとなる。消費増税の延期には法改正が必要となるが、この際に現行法にある「景気弾力条項」は撤廃される方向であり、そうなれば2015年10月からの消費増税の再延期もしくは撤廃は考えづらくなる。

 消費増税を1年半程度先延ばしして何かしらの意味があるのか。これはアベノミクスによる景気回復が消費増税の影響で腰折れしそうなため、さらなる増税は抑え、アベノミクスの効果を如何なく発揮できる環境を整えたいとの意向もあろう。しかし、それ以上に2016年の参院選など今後の選挙日程等などが意識されての1年半の先送りかと思われる。いわば財政再建も含めた「先送り選挙」となる。

 衆院の解散総選挙に関しては21日に解散し、衆院選は12月2日に公示され、14日に投開票が実施される予定となっている。参考までに前回の2012年の衆院選は11月16日に解散し、12月4日に公示、12月16日に投開票となっていた。

 前回の衆院解散の翌日17日、自民党の安倍総裁は熊本市内で講演し、衆院選後に政権を獲得した場合、金融緩和を強化するための日銀法改正を検討する考えを重ねて表明し、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べ、日銀が建設国債を全額引き受けるのが望ましいとの考えを表明した。 また、同日、山口市では「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」との安倍総裁の発言も伝えられた。これがアベノミクスの始まりである。

 日銀法の改正はなかったが、この安倍政権のリフレ政策は安倍政権が任命した黒田総裁によって2013年4月に実行に移された。日銀は建設国債の発行額どころではない額の国債を市場から買い入れることになる。ただし、ここで輪転機は残念なことにぐるぐるは回っていない。お札の発行量はほぼ変化なく、日銀の当座預金に資金は積みあがった。それにより新しいマネーが市場に出ていくこと、つまり貸出等の伸びは限定的であった。株は上がったが、GPIFのポートフォリオリバランスなどは除いて、その大きな買い手が海外投資家であり、ニューマネーがどうしたこうしたみたいな動きもなかった。つまり、結果として安倍政権のリフレ政策を見越して、ヘッジファンドなどが円売りと株高を仕掛けたに過ぎないのがアベノミクスと言える。

 株高は日本だけでなく欧米市場でも同様であり、アベノミクスだけが要因ではない。円安についてはそれまでの欧州危機などによる円高のポジションの巻き戻しという側面も大きい。そこで組まれた円売り日本株買いはなかなか良いパフォーマンスが上がり、それがいまに続いている。17日のマイナスGDPの影響もなんのそのという状況となっているのもそれが要因か。

 果たして今度は安倍首相はいったいどのような発言をして、市場を仰天させるのであろうか。また野党は2012年のアベノミクスを見習って、度胆を抜く仕掛けをしてくるのか。今回の選挙はアベノミクスの成果を問う選挙となるそうだが、そもそもアベノミクスの原点が2012年11月17日の日銀の直接国債引き受けとプリンティング・マネー発言にあったことをしっかりと認識すべきであり、三本の矢というのはあとから付け足されたものである。このようなリフレ政策が極めて危険なものであることは言うまでもないが、国債が警報機として作用していない現状ではその危機が覆い隠されていることも知っておくべきことである。私はだれに投票するかどうかというより、この隠されたリスクが非常に気になっているだけである。

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by nihonkokusai | 2014-11-19 09:47 | アベノミクス | Comments(0)

GDPマイナスも想定内であったのか

 来年の消費増税の延期と解散総選挙の前提ともなりうる今年7~9月期実質GDP一次速報値に注目が集まっていた。11月17日の8時50分に発表されたものは、前期比年率プラス2%台あたりかとの予想も大きく下回り、実質で前期比マイナス0.4%、年率換算ではマイナス1.6%となった。年率でマイナス7.3%と大幅に落ち込んだ4~6月期から2四半期連続でマイナスとなった。

 民間在庫投資が前期の反動により大きく落ち込んだことに加え、設備投資も二期連続のマイナスとなり、民間住宅の大幅な落ち込みが継続し、民間消費支出の伸びも限定的となった。公的資本形成によって支えられている面はあるものの、これにより事前予想に反してマイナス成長となった。

 12月8日のGDP二次速報値を待たずに、11月18日にも安倍首相は消費増税の先送りと解散総選挙を表明すると報じられているが、ある程度この7~9月期GDPの悪さは首相に伝わっていた可能性もあるのではなかろうか(具体的な数字はさておき)。日銀も10月31日にQQE2を決定していたことも、今回のGDPの数字を見る限り、適切なものであったと認識されよう(その効果はさておき)。

 日銀のQQE2と消費増税先送りのミックスは円安・株高要因となった。日銀がQQE2を10月31日に決めたのは、そのタイミングから円安株高を意識したものであったと考えられる。10月29日のFRBによるテーパリングの終了を睨んでの円安ドル高要因、GPIFの運用比率発表とコラボすることで株高(株の運用比率上昇)と円安(海外資産の比率向上)、さらにQQE2の国債買入れ増額がGPIFの国債売りをカバーする。

 そして、日銀にとっての最大の懸念材料であった原油価格の下落による物価下落に対して、効かないながらも特効薬をさらに服用させることで、とにかく追加緩和をすれば物価も上がる(はず)との姿勢も示せる。QQE1の効果が(気合含めて)なかったことを覆い隠すことも可能となる。

 安倍政権にとって、日銀のQQE2による円安株高は、アベノミクス再来にも映る。日銀のQQE2は内閣改造後あたりからレームダック状態になりつつある安倍政権へのフォローともなる。この機に乗じて、解散総選挙というのは(票をなるべく減らさないとの)タイミングからは理にかなう。そこにもし7~9月期のGDPのかなりの悪化が意識されていたのであれば、当然ながら二次速報の発表される12月まで解散表明は待てないことになる。

 安倍首相にとっては、そのリフレ的な考え方から見ても、来年の消費増税の10%への引き上げは実施したくないというのが本音ではなかったろうか。2014年4月の消費増税は民主党が最終的に決めたこと(三党合意はさておき)であり、それを強行してしまったことで景気は予想以上に悪化し、せっかくのアベノミクス効果も消費増税によって打ち消されてしまったとし、物価も予想通りには上がってこない。そうとなれば安倍首相にとり、来年の消費増税などできる状況ではない。そこで消費増税の延期を表明した上で、安倍政権の生命線となっている株価が上昇している隙に(閣僚人事への批判もカバーするために)、解散総選挙に打って出ようと考えたのではなかろうか。

 しかも、消費増税と解散総選挙についてはマスコミ等を通じて、GDP一時速報が出る前に流すことにも意味があったと思われる。GDPを確認してから慌てて消費増税の延期と解散を決めると、アベノミクスに対しての批判がむしろ強まる恐れがあった(それでなくても批判は高まりつつあるが)。そうではなく、悪いのは消費増税であるから、来年の増税は延期すると言っておけば、確かにGDPを見てもそうであったと認識されよう。安倍首相の決断は正しい、みたいな見方になる。このあたり、もしや安倍首相には黒田勘兵衛並みの切れ者参謀がいたのかもしれない。

 問題はこれからである。もし2期連続でGDPがマイナスと確定されるとリセッションとなる。これに対して政府は選挙も意識して、経済対策を準備してこよう。日銀は10月31日に事前に手を打ってあるとして、11月19日の決定会合含めて当面はその効果の確認すると考える。しかし、株価動向など次第では追加緩和圧力が今後強まる可能性もある。果たして日銀の弾薬庫にはまだ弾は残っているのであろうか。「希望」と書かれた紙しか残っていない懸念もあるが、いずれ何かしらの対策を講じることも想定される。

 債券相場に与える影響としては、マイナス成長は当然ながら債券には買い要因となる。しかし、政府・日銀がパンドラの箱を開けてしまっており、歯止めの消費増税も見送りとなる見込み。国債需給では日銀の大規模買入れで問題はなく、補正予算を組むにしても新規の国債発行は考えていないとしている。しかし、来年度の予算編成も気になるところではある。国債需給はさておき国債信用に対して市場も次第に神経質になってくることは避けられないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-18 09:42 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスからバンザイノミクスへの懸念

 日銀のサイトにアップされた11月13日の宮尾審議委員記者会見要旨も興味深いものとなっている。記者の質問のなかに「英米の市場関係者の間では、追加緩和による事実上の国債全額買い取りという明確なマネタイゼーションと、増税延期という組合せをバンザイノミクスという国債暴落政策として懸念する見方も出ている」との発言があった。このバンザイは解散も意味しているとともに、国債そのものをバンザイするとの意味合いのようで、なかなか面白い造語である。

 さて、記者の質問は当然ながら10月31日の追加緩和に、なぜ宮尾委員は賛成したのかに焦点があてられていた。これについて宮尾委員は、これまでの「量的・質的金融緩和」の効果はしっかりあり、中長期の予想インフレ率も全体としては、この間上昇してきており、デフレマインドの転換も着実に進んできたとしながら、

 「そうした中で、このひと月、ふた月ですが、原油価格の下落がより顕著になってきた影響、あるいは増税後の需要面の弱めの動き──いずれも一時的な要因とみられるわけですけれども──、それらは物価の下押し要因として作用してきており、これまで順調に進んできたデフレマインドの転換が後戻りするリスクがあると考えました」

 これは講演の要旨にもあったものではあるが、原油価格の上げ下げで、異次元緩和の効果は薄れるものであったのであろうか(そもそも異次元緩和に円安以外に物価を上げる効果があったのかはさておき)。しかも、一時的な要因によるものに対して。新たな異次元緩和をぶつけることに問題はなかったのか。今後は同様な物価下落要因が出てくると追加の異次元緩和を何度も仕掛けてくるというのであろうか。

 「デフレマインドの転換が後戻りするリスクを未然に防ぐ、好転している期待形成のモメンタムを維持するということは極めて重要であると考えました」

 講演では「デフレマインドの転換が遅延する」としていまだ転換していないような表現となっていたが、いったいどちらなのか。たぶんこれは誰も答えられないはずである。そもそもそれは計りようがない。そのようなもののために金融政策を大胆に実施することに対してのリスクは感じないのであろうか。

 宮尾委員は「国債金利の見通しについては、経済・物価情勢の改善を伴う形で今後推移していく可能性が高いと考えております」と会見で述べていたが、一見当たり前にみえるこの発言も大きな矛盾を抱えている。宮尾委員は 中長期の予想インフレ率も全体としては、この間上昇してきたと指摘していたはず。それがまったく国債金利に影響を与えていないことをどう説明するのか。むろん答えは、日銀が国債買い入れを行ってそれが金利に低下圧力を加えているためとなろうが、異次元緩和後もまったく動かなかった長期金利の意味するものはデフレマインドがまったくもって転換していかったことを示していると捉えることもできるのではなかろうか。

 記者からの出口に対する質問も出ていたが、いまは出口どころではない。消費増税の延期と結果としてセットになってしまった異次元緩和第二弾は、繰り返し記者の質問にもあったように「国債が暴落するという財政の信認を失う事態」になりかねない。国債がバンザイボンドになってしまうリスクはないのか。それについては「消費税率引き上げが先延ばしされる可能性についての全て仮定に基づく議論ですので、そういった仮定に基づくご質問に対して、答えることは適切でもありませんし、私からコメントするのは差し控えたいと思います。」と宮尾委員は答えている。

 QQE2に加えて、消費増税延期の可能性が強まっても国債市場は比較的落ち着いている。しかし、本当に市場参加者は落ち着いているのであろうか。

 異次元緩和での物価目標達成が無理なことを、さらなる異次元緩和で蓋をした日銀。その日銀の動きもうまくとらえ、円安株高という環境を生かしての解散総選挙。それは安倍政権のレームダック化を覆い隠すための選挙とも言える。そのためには日銀の意向を無視してまでも消費増税も先送りさせることで、争点をうまく移し換えた安倍政権。これはいったい何を招くのか。

 株は確かにリフレ政策に単純に反応している外国人投資家主体の買いにより株先主体に上がってきていた。円も売られやすい地合いになっている。この円安株高が根本的な問題も覆い隠してしまっている。バンザイノミクスは果たして杞憂に終わるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-16 11:08 | アベノミクス | Comments(1)

デフレ脱却が怪しくなっての消費増税反対なのか

 麻生財務相はアベノミクスは「デフレ」脱却ではなく「デフレ不況」からの脱却を目指していると指摘している。「デフレ」と「デフレ不況」では大きく意味合いが異なる。そもそもアベノミクスとは何からの脱却を目指した政策であったのか。

 2012年11月の衆院解散後に安倍自民党総裁は、政権奪還後、政府と日銀はアコードを結び、インフレターゲットを設定する。目標達成までは無制限な対応を行い、もし政策目標達成できなければ、日銀には説明責任を求めるとした。基本的には2%、3%のインフレ目標を設定して、それに向かっては無制限に緩和していく(ことが必要)」と述べていた。

 この発言からみれば、当初のアベノミクスはデフレ脱却を目指していたことになる。日銀が2%以上の物価目標を設定し、それまで無制限な対応を行い、その目標を達成することが主眼であったはずである。ここにはGDPや失業率などに関する目標は置かれていない。その意味では「デフレ不況」からの脱却が目的であったとは言いがたい。しかしその後、第二の矢(財政政策)、第三の矢(成長戦略)を持ってきたが、効果の度合いなどみてもこれらは付け足しに過ぎないものといえる。

 安倍政権は公約通りに日銀に大胆な金融緩和を実施させた。厳密には日銀が政府の意向を意識して自ら決定した格好だが、2013年4月の異次元緩和はアベノミクスを具体化させたことになる。それで何が起きたのか。

 タイミング良く、物価や景気は確かに安倍政権発足後に回復してきた。まるで第一の矢が効いたように見えるが、金融緩和にそれほどの即効性があるわけでもなく、期待だけで物価どころか景気も浮揚できるのであれば、財政政策など必要なくなる。

 ただ、金融政策は98%がトークと語ったFRB前議長がいた。2012年11月以降の日本の景気の回復と物価の上昇には、このトークの力が働いたことも確かである。安倍自民党総裁のリフレ発言を受けて、ヘッジファンドが円売り日本株買いを大量に仕掛けた。その結果の円安と株高が市場のムードを一新させ、欧州危機の後退による金融危機への不安が解消され、世界経済が回復基調となっていたことで、日本経済も回復した。物価も回復基調が見込まれていたところに円安とエネルギー価格の上昇分が上乗せされた。こうして順調にアベノミクスが効いているように表面上は見えていたのである。

 ところが今年の4月の消費増税後あたりから様子がおかしくなってきた。欧州の景気の低迷や物価の下落、さらには中国の景気もブレーキが掛かってきた。FRBの利上げ観測もあり、ドル円は110円台に乗せるなど円安も進む。しかし、今度は円安による日本経済のマイナス効果も意識され始めた。そこにエネルギー価格の下落も加わり、物価の上昇圧力が弱まってきた。これにより日銀の物価目標達成も怪しくなってきた。

 さらには消費増税の影響で個人消費が伸び悩み、景気が予想以上に落ち込んだことで、日銀にリフレ政策を押し付けた人たちを中心に、今度は来年の消費増税反対との声が自民党内部からも出てきた。

 そもそも日銀が無制限な緩和を行っていれば物価目標が達成できて、それでデフレから脱却できるというのがアベノミクスを提言していた人たちの認識あったはずで、むしろ物価の上昇要因ともなる消費増税に反対するというのは理屈として理解できない。

 デフレ脱却とデフレ不況脱却は似て非なるものである。リフレ派の主張通りであるならば、デフレ脱却には消費増税の有無などは関係なく、日銀が大規模な緩和を続ければ済むはずである。

 ただし、デフレ不況脱却を目指すとなれば、意味合いが全く異なり、日銀だけではなく政府の財政政策等が大きく影響する。どうやらこのあたりがかなり曖昧となってしまっている。このため「デフレ脱却」ができなくなるのが消費増税による影響のように捉えられているが、それは関係のない話であろう。もし消費増税によって物価の上昇も抑えられてしまう、つまりデフレ脱却もできないというのであれば、物価のコントロールは日銀の金融政策だけではできないことを露見させてしまうことになるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-10-24 09:16 | アベノミクス | Comments(0)
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