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カテゴリ:アベノミクス( 90 )

TPP効果と相反する追加緩和

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意した。TPPとはアジア太平洋地域において高い自由化を目標とし,非関税分野や新しい貿易課題を含む包括的な協定である。シンガポール、ニュージーランド、チリ及びブルネイの4か国からスタートし、その後アメリカ合衆国、オーストラリア、ペルー、ベトナムも加えた8か国で交渉が開始された。さらにマレーシア、メキシコ、カナダ及び日本が交渉に参加し、12か国で協定にむけた交渉が行われ、かなり難航したものの、10月5日に大筋合意したと発表された。

 TPPの大筋合意を受けて参加12か国は、今後、協定案の内容が法的に矛盾していないか、詳細にチェックして最終案を取りまとめる作業を行う。TPPの協定が発効するためには、各国政府が協定に署名し、その後、各国の議会で批准される必要がある。

 TPPが発効された際の影響については、海外産品の輸入増などによる国内農業への影響も懸念されるが、消費者にとっては恩恵を被ることが多そうである。たとえば米国産の牛肉やコメ、オーストラリアのワインなどが今より安く手に入ったり、海外の渡航先で通話料金が安くなる利点も期待されている(日経新聞)。

 TPPのメリットについて安倍首相は「TPPは私たちの生活を豊かにしてくれる。世界のバラエティーあふれる商品を安く手にできるだけでなく偽物の商品を買わされて後悔することはなくなっていく」と説明。「海外に旅行したときの電話代も安くなるかもしれない。サイバーの世界を飛び交う個人情報もしっかりと守られるようになる」と強調した(産経新聞)。

 つまりTPPが発行されれば、輸入物価は下がることが予想され、それを安倍首相はメリットとして強調している。政府は物価の上昇のために日銀法改正までちらつかせて、日銀とともに物価目標を掲げた。その上に日銀は異次元緩和まで行ったにもかかわらず、肝心の物価は上がらなかった。それにもかかわらず、安倍首相はここにきてむしろ物価の下落による恩恵をアピールしている。

 政権内の物価や円安に関する認識は、ここにきてアベノミクス登場時から、かなり変化していることは確かであろう。ロイターによると「政府関係者の1人は、政府・与党を取り巻く環境は、追加緩和による円安の進行を嫌う声に包まれている」との観測もある。

 アベノミクスの登場のタイミングで急激な円安と株高が生じたが、その円安も行き過ぎると米国などからの反発とともに、輸入材料価格の高騰などによる中小企業への悪影響や、食品価格の上昇などによる個人消費への影響も意識されている。日銀の黒田総裁は 6月10日に「(実効為替レートで)ここからさらに円安はありそうにない」という発言があり、これはドル円では125円以上の円安は望んでいないことを示唆したのではとの認識が市場で拡がった。

 昨年10月の異次元緩和第二弾の本当の意図はわからないが、円安も意識したであろうことは想像できる。しかし、現在の日銀はさらなる円安要因となりかねない追加緩和には、むしろ慎重とならざるを得ないのではなかろうか。政府としても国民にTPPの恩恵をアピールしたタイミングで、日銀の追加緩和による円安はあまり歓迎しないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-08 09:35 | アベノミクス | Comments(0)

GDP600兆円には物価目標達成が前提

 麻生財務相は25日の閣議後の会見で、安倍首相が新たに打ち出した3本の矢のうち1本目の「強い経済」に、大胆な金融政策や機動的な財政政策、成長戦略という従来の柱は集約されていると述べ、アベノミクス第2ステージでも物価目標2%達成の必要性は変わらないとの認識を示した(ロイター)。

 「強い経済」には金融政策も含まれ、2%の物価目標達成についても旗を降ろしたわけではない。当然と言えば当然の発言ながら、安倍首相の携帯料金の見直しを求める発言や、政府は円安による個人消費などへの負の影響への懸念など、リフレ政策から政府はやや距離を置こうとしているかに思える。このため金融政策という言葉が消えたことで、政府は政策の方向性を微調整しているのではとの思惑が出ても不思議ではない。

 黒田総裁は28日の会見において、安倍政権が打ち出した新3本の矢は2%の物価上昇を前提に600兆円のGDP達成を掲げているとの見解を表明した。これは大胆な金融緩和という表現は消えたものの、物価目標達成を前提にアベノミクス第2ステージが成立するとの考え方を示し、政府と日銀の連携は維持されていることを強調したかにみえる。

 ところが、この600兆円という数字は内閣府が7月に公表した試算(中長期の経済財政に関する試算)に基づいたものである点にも注意が必要となる。実質2%、名目3%以上の経済成長が続けば、2014年度に490.6兆円の名目GDPが、2020年度には594.7兆円に達するとしたものであるが(経済再生ケース)、この試算には政府・日銀の掲げる物価目標が達成されていることも前提条件としてある。つまり、消費者物価指数2%が名目GDP600兆円の前提条件になっていたので、黒田総裁の発言はこれを再確認したものに過ぎない。

 しかし、名目GDP600兆円が一人歩きしてしまうと、これも日銀の金融政策を縛ることになりかねない。実質2%、名目3%以上の経済成長が続くという、かなりハードルの高い条件に加え、現状0.2%でしかない消費者物価指数を2%に引き上げることは容易ではないというか、引き上げる手段そのものがない。もちろん円の信用を失墜させた上での物価上昇は引き起こせるかもしれないが、これこそ現実的ではない。

 現在の政府・日銀にとって、大胆な金融緩和で物価上昇を起こせるとの前提条件を否定することはできないであろう。そうなると追加緩和はさておき、このまま異次元緩和を続けざるを得なくなる事態もありうる。そうなったときには、今度は時間の経過とともに日銀の国債買入がいずれスムーズにいかなくなる懸念が強まる。すでに日銀は国債の年間発行額の9割も買い占めており、ここにきて10年債や30年債のカレントが出合わない日も出てきている。いずれ日銀の国債買入で未達が頻発するようなことになれば、実質的なテーパリングをせざるをえなくなる。現在の異次元緩和を永遠に続けることも無理がある。日銀はいずれ大きな方針転換をする必要も出てこよう。それまでに残された時間はそれほど長くはないのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-09-30 09:27 | アベノミクス | Comments(0)

消えた金融政策という矢の意味

 9月24日に安倍首相が表明したアベノミクスの新たな三本の矢は、「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」となり、これにより名目GDPを600兆円にすることを目標とするそうである。

 アベノミクスの第一弾は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であった。麻生財務相は9月25日に旧3本は「新たな3本の矢の1本目」に集約されているとした。

 「強い経済」というかなり曖昧な表現のなかには、経済を支えるための金融政策、財政政策、成長戦略が組み込まれていると考えるのは自然かと思うが、「金融政策」との表現を消したことについてはそれなりの軌道修正を図ったとみてしかるべきかと思われる。

 アベノミクスはのちに三本の矢とかを出して体裁を整えた格好ながら、その柱はリフレ政策にあった。これによりデフレから脱却することが目的となり、その目標は政府と日銀が共同宣言で打ち出した消費者物価指数の2%となっていた。

 2013年4月の量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和により日銀は2年で2%の物価目標を達成するとした。それから2年以上の月日が経過し、2015年8月の消費者物価指数は総合で前年比プラス0.2%、ベンチマークといえるコア指数ではマイナス0.1%と、まさに異次元緩和を決めた時点と同様のマイナスに陥った。

 この結果をみればアベノミクスの柱といえる大胆な金融緩和が、結果としての物価の上昇を起こさなかったことは明らかである。なぜ物価目標は達成されなかったのか、いずれこの検証は必要となろう。しかし、数値目標は達成されなくても、日銀は基調はしっかりしていると判断し、政府はデフレから脱却しつつあるとの認識を示している。

 25日の昼に安倍首相と黒田日銀総裁は首相官邸で会談した。定例ともいえる会談ではあるが、タイミングが興味深い。安倍首相がアベノミクスの新たな三本の矢を打ち出したあとで、8月の消費者物価指数も確認したあとである。市場では当然ながら追加緩和期待が出ていたようだが、そう期待してしまうのも無理はない。

 異次元緩和が物価目標達成に直接結びついていないことは誰の目にも明らかとなっている。安倍首相はここにきて携帯料金の引き下げを検討するよう指示を出した。新三本の矢やこの携帯料金引き下げなどは来年の参院選を見据えた動きではあろうが、少なくとも携帯料金の引き下げは物価の下落圧力となる。それでなくとも目標達成どころか元の木阿弥に戻ってしまっている物価に対して、首相は関心を失いつつあるように思われる。

 政府と日銀が打ち立てた物価目標とはいったい何であったのか。それが達成できなかった理由を明確に示さぬ限りは、日銀による追加緩和は難しい。物価はさておき、緩和をすれば株価は上がるとの発想ありきでは、中央銀行の金融政策は株価対策でしかないことになる。

 結果が出なかった限りは金融政策のあり方そのものを再考する必要がある。金融政策は万病に効く特効薬などではない。あくまで一時的な痛み止めに過ぎないことを認識する必要があるはずである。しかし、それを表明すると市場の期待が大きく剥がれかねないほどに、市場が金融政策に過度に依存してしまっていることもまた事実であり、これも金融政策のあり方をより困難にさせてしまっている。

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by nihonkokusai | 2015-09-29 09:15 | アベノミクス | Comments(0)

無理があるGDP600兆円の目標

 安倍首相は24日夕方の会見で、昨年度、名目で490兆円だったGDPを600兆円にすることを目標に、強い経済、子育て支援、社会保障をアベノミクスの新たな「三本の矢」と位置づけ、今後3年間の総裁任期中も、引き続き経済最優先で政権運営に当たる決意を示した。

 アベノミクスの最初の三本の矢とは、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生を目的とした「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であった。ここには日銀が2%の物価安定目標を実現するというもの以外に具体的な数値目標は掲げられていなかったが、今回は名目GDPの600兆円という数値が掲げられた。

 すでに高度成長時代ではない日本にとって、具体的な期限は設けてはいないものの、名目GDPを600兆円に引き上げることは容易ではない。名目GDPは1980年が約250兆円であったのが、1995年に500兆円台に乗せたが、それ以降は500兆円近辺での推移が続いている。内閣府が7月に公表した試算によると実質2%、名目3%以上の経済成長が続けば、2014年度に490.6兆円の名目GDPが、2020年度には594.7兆円に達するとした。しかし、この試算の数値そのものが楽観的過ぎるものとなっている。

 ここで名目GDPの600兆円台達成を目標に掲げたということは、日銀の大胆な金融政策により、すでにデフレから脱却しており、失われた20年からも脱しているということなのであろうか。それを前提にしているのか。

 デフレ脱却の意味が結果としての物価上昇というのであれば、消費者物価指数が前年比でゼロ%近くで推移している現状をどう見ているのか。8月の全国CPIはコア指数で前年比マイナス0.1%となっている。日銀の物価目標となっている総合も前年比プラス0.2%と低迷が続いている。株価もここにきて低迷し、円安については弊害も意識されている。ここで「強い経済」という新たな第一の矢を持ってきても、具体的な政府による経済運営は見えてこない。当初のアベノミクスの第一の矢は、日銀によるリフレ政策であった。それによる円安株高もあり効果があったかに見えたが、その円安株高の本当の要因となっていた世界的なリスク後退の動き、さらには米国経済の回復などの外部環境の好転によるものなどによる影響が大きかった。

 それにも関わらず外部要因ではなく内部要因による「強い経済」とはいったいどのような政策を打ち出すつもりなのであろうか。今回は金融政策には触れておらず、つまり日銀の金融政策は十分に当初の目的は果たしたので、お役御免ということであろうか。肝心の物価目標は達成されていないのだが。

 それ以上に「子育て支援」、「社会保障」という二本の矢は、前回の残り二本の矢よりも具体的のように見えるが、アベノミクスという経済拡大政策のためのものというより、それが可能となった際に、その果実を回すべき物としている。つまり名目GDP600兆円が前提となっているが、その前提となる具体策が「強い経済」では、あまりに曖昧なものとなる。

 高度成長期ならばともかく、低成長期というか成熟期に入っている日本経済を20%増しにするには、少なくとも当初の政策にあった成長戦略を積極的に進めることが必要になろう。しかし、その成長戦略についてはほとんど成果が上がっていない。アベノミクスは第一の矢と、それによる円安株高だけが目立った政策であり、そこから名目GDP600兆円の目標を達成しようにも、基盤すらない状況とも言える。このままでは目標の数字だけが一人歩きする結果ともなりかねない。

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by nihonkokusai | 2015-09-25 09:21 | アベノミクス | Comments(0)

携帯料金引き下げでデフレ解消になるのか

 安倍首相は9月11日の経済財政諮問会議で、「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、高市総務相に携帯電話料金の引き下げ方策を検討するよう指示した(読売新聞)。

 家族分の携帯料金をほぼ負担している私としては、携帯電話料金の引き下げはぜひ進めていただきたいと思うが、個人的な事情はさておき、これがデフレ圧力を強めるとの見方と、デフレ解消に効果的と極端に見方が分かれている。

 もちろん携帯電話料金が消費者物価指数などに影響を与える割合は小さくはない。つまりこれは素直に物価低下圧力に繋がると思われる。しかし、安倍首相は家計負担を軽減して消費を拡大するには携帯料金の値下げが欠かせないとしている。消費が伸びればいずれは物価上昇圧力に繋がるという理屈である。また、これは三本の柱のひとつ成長戦略に絡んだ規制緩和の一環との見方もある。それはさておき、ここには個別物価と一般物価は違いという問題も含んでいるように思われる。

 個別価格は消費者の需要と供給量の関係だけでなく、景気物価動向、為替の動向等をみながら供給者が決定するものと思われるが、一般物価は日銀の金融政策により決まるというのが、岩田日銀副総裁などリフレ派と呼ばれる人たちの主張となっている。

 個別物価に関係なく、日銀がしっかり金融緩和を行えば物価は上がるという発想である。だから日銀は異次元緩和を二度も行ったが、物価はいっこうに上がっていない。そもそも2014年10月の二度目の異次元緩和の理由は「原油価格の下落」に伴う影響、つまり個別物価に関わる影響を受けてのものであったはずである。

 一般物価と呼ばれているような物価は存在せず、あくまでそれは個別物価の集合体ではなかろうか。そもそも日銀の物価目標は消費者物価指数であり、それは個別の価格の変化によって構成される。つまり、もし携帯料金等が引き下げられれば素直に消費者物価指数にはマイナスの影響を与える。私の場合も携帯料金が仮に引き下げられることで、少し家計には助かった程度になるのではないかと思う。それが消費を拡大するためのインパクトになることも考えづらい。ただし、もしそれが規制緩和に繋がるものであれば、あらたな商機を拡げる可能性はある。しかし、単純に携帯料金の引き下げだけを要請するのであれば、その目的は支持率アップなのか、それともそれでデフレ解消になると考えてのことなのか。

 携帯料金引き下げでデフレ解消になるとの発想と一般物価との発想は通じるものがある。それは期待インフレなどにも通じるものなのかもしれない。しかし、少なくとも金融政策で物価が動かせるということは、今回の日銀の壮大な実験で結果は出ていると思われる。金融政策で一般物価が上がらなかった。それは原油価格の下落によるものであれば、それは個別物価のことではなかろうか。消費増税が影響したのだとすれば、金融政策だけで物価は動かせないことをむしろ示した格好にもなる。財政健全化などをさておいて、物価を上げる支障を取り除くため消費増を元に戻したとしても、それで物価が上がる保証もない。

 金融政策で物価が自由にコントロールできないとなれば、当然インフレ時にもインフレターゲットを採用しているから金融政策で物価上昇は抑えられるという主張もかなり疑問となる。

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by nihonkokusai | 2015-09-17 09:20 | アベノミクス | Comments(0)

山本幸三氏の発言の矛盾

 自民党の山本幸三衆院議員は、日銀の金融政策に関し、経済・物価情勢の展望(展望レポート)を策定する10月30日の金融政策決定会合に合わせて追加の金融緩和に踏み切るべきだとの認識を示した(ブルームバーグ)。

 山本幸三氏はいわゆるリフレ派と呼ばれる人たちの代表格ともいえる。安倍晋三首相とは野党時代に金融政策の勉強会を重ねてきており、2012年11月の安倍総裁の輪転機発言の背景にいた人物であり、本田悦朗内閣官房参与や浜田宏一内閣官房参与などとともに、リフレ政策による金融政策を柱としたアベノミクスを勧めてきた人物である。

 山本氏は具体策として、現在は「年間80兆円」のペースで行っている長期国債などの資産買い入れを最低10兆円規模で拡大することが必要と述べ、経済や物価に関する見通しは「どうせ見直しをしたら落ちるだろう。その時に何もしないというのはおかしい」と指摘。10月30日の会合は追加緩和の「いい機会だ」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

 山本氏は今年1月のロイターとのインタビューでは、 日銀が掲げる「2%の物価安定目標」達成は、2016年度に後ズレするが、消費税率引き上げによるマイナスの影響が強すぎた結果だとして十分説明可能と述べていた。追加緩和の効果が、今年夏以降に出てくるとし、「よほどそのほかの外的ショックがなければ様子をみてよい」としていた。

 また、2014年のブレジデントとのインタビューでは、「アベノミクスの金融緩和で円安になれば、輸出が伸びるから、その分で消費税の悪影響の分は相殺できるので大丈夫だろうと予測していた。しかし、輸出がまったく伸びない。工場の海外移転が大きい理由です。輸出構造が変わってしまった。消費税増税の影響を相殺する材料がないから、マイナスの影響だけが残った」との発言もあった。

 それでは日銀が2013年4月と2014年10月に二度にわたる異次元緩和を行った意味は何であるのか。山本氏などのリフレ派が求めていたようなインフレターゲット政策を日銀が行ったにもかかわらず、肝心の物価が上がっていない。リフレ政策は円安のための政策であったのか。その円安の効果すらものちほど否定している。

 消費増税による影響が大きいとするのであれば、異次元緩和の効果なるものはどこにいったのであろう。消費増税の悪影響を一定水準に止めるショックアブソーバー的な効果しかなかったとすれば、リフレ派が否定してきたそれまでの金融緩和効果と、どのような違いがあったのか。昨年10月の追加緩和の効果そのものも出てきていないし、物価は上がっていない事実をどのように説明するのか。

 その説明もなしに、日銀による「10兆円」の資産買入の増額で、どこにどのような効果が出るというであろうか。すでに山本氏は円安の効果についても自ら否定していることで、10兆円を増やせば物価目標を達成できるという根拠に乏しい。

 そろそろリフレ政策の意味そのものを問い直す必要もあるのではなかろうか。今回の山本氏の発言を受けて日銀が動くようなことはなかろう。アベノミクスに乗った日銀ではあったが、その効果について結果が伴っていないことを一番理解しているのは日銀自身であろう。

 市場参加者も日銀に資産買入による追加緩和を求めても、一時的に株価やドル円などに働きかけることはできても、実体経済や物価そのものを押し上げることはできないという事実を認識すべき時かと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-09-13 12:31 | アベノミクス | Comments(0)

9月8日の15時に市場で何が起きたのか

 9月8日の日経平均は上海総合指数が上昇していたにも関わらず、下げ幅を拡大させ日経平均の引けは433円安となり、7か月ぶりの安値をつけた。昨年末の引け値を下回り、年初からの上昇分を打ち消した格好となった。外為市場ではドル円も一時119円を割り込むなど円高も進行していた。

 ところがこの日の東京市場の引け後に相場は急変する。CMEの日経平均先物は17400円割れから急反発し、あっさりと18000円台を回復したのである。ドル円も同様に上昇し、120円台を回復していた。まさにV字回復となった。また、同じタイミングで米株の先物も上昇していた。

 この相場変動はどのような説明が可能なのか。8日には日経平均やドル円にかなりの売り圧力が掛かっていたことは確かである。上海総合指数の動きとも乖離しつつあったこともそれを示していた。

 日経平均先物は8月25日のナイトセッションで17160円まで下落後、中国の利下げ等もあってチャイナリスクがやや後退し、買い戻しが入り28日に日経平均は19000円台を回復した。ところがFRBの早期利上げも意識されて再び上値が重くなり、日経平均は再度下落基調となった。

 あらためて東京株式市場の地合いの悪化もあり、日経平均は17160円という目先の安値も意識されてショートポジションが積み上がっていた可能性がある。9日の日経新聞が伝えていたような仕組み債などが絡んでの売りが入っていた可能性もあろう。

 しかし、8日の15時過ぎに地合は急変する。その要因が実は見当たらない。通常はこれほどの相場変化が生じるには、何かしらのヘッドラインニュースが影響する場合が多い。ところが相場にインパクトを与えるようなニュースはこのタイミングでは流れていなかった。国内の大手損保会社が英国の損保会社を買収との記事があり、それを見越した円売りドル買いが入ったとの観測もあったようだが、後講釈のようにもみえる。

 国内市場から海外市場に移る東京時間の15時というタイミングで何が起きていたのか。動きから見ると何かしらの手口が入っていた可能性がある。日経平均先物などのショートの積み上がり方、上海株の上昇受けての米株の上昇まで見越した仕掛けが入っていたのかもしれない。東京市場が引けてからの動きであり、GPIFや日銀による買い支えも考えづらい。タイミングからみると海外ヘッジファンドなどが積み上がったショートをみて買い仕掛けをしてきた可能性がある。2012年11月のアベノミクスの登場時にも、欧州危機により円買いと日本株売りのポジションが積み上がっていたところにヘッジファンドは大量の買い仕掛けを行っていた。今回も安倍自民党総裁が無投票で再選され、三本の矢を強調していた。アベノミクス第二弾に期待したわけではないかもしれないが、タイミングとして仕掛けやすいものであったのかもしれない。

 9日の日経平均は1000円以上の上昇となった。しかし、これで日経平均が底打ちしたとはまだ言い切れない。今回の相場変動の背景にはチャイナリスクとともにFRBの利上げ観測もある。世界銀行のチーフエコノミストが、世界経済が一段と安定するまで、FRBは利上げを見送るべきとの考えを示したことも8日の米株の上昇要因のひとつとなったが、来週のFOMCでの利上げ決定の可能性は残る。このため、相場の変動はまだ続くとみておく必要があろう。

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by nihonkokusai | 2015-09-10 09:56 | アベノミクス | Comments(0)

G20は中国経済や米利上げが焦点に

 9月4~5日にトルコの首都アンカラで開かれる20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、中国経済の現状や先行きが主要議題となるようである。今回の株式市場を中心とした市場の混乱は中国経済の先行き不透明感が大きな要因となっていた。中国人民銀行の利下げに続いての元切り下げなどをきっかけに、中国経済の減速の深刻さが浮き彫りになった。

 今回のG20では米国の利上げの行方も焦点となろう。今回の相場変動のきっかけが中国にあったとしても、その根本的な要因としては日米欧の中央銀行が行った大胆な金融政策からの脱却の動きがある。何故、非伝統的とされる金融緩和策を実施したのかといえば、それはサブプライムローン問題からリーマンショック、ギリシャ・ショックからの欧州の信用不安という世界的な金融経済危機が立て続けに起きたためである。その危機は去った。それであれば異常な金融政策から正常時の金融政策に戻すことが当然ながら、金融市場はあまりに金融政策に依存する状況となってしまった。

 真っ先に正常化に向けて舵をとったFRBの動きをみて、金融市場が動意をみせた。中国経済の減速や、それもきっかけとした原油価格の下落も手伝って新興国経済への影響などが複合要因となって、世界的な株価の調整が起きた。これだけの動きをした背景にはヘッジファンドなどの仕掛け的な動きも入っていたと予想され、HFTと呼ばれるコンピュータを使ったシステムトレードが値動きをさらに荒くさせたものとみられる。

 非常時からの脱却において市場の動揺をいかに抑えるのかは大きな課題ではあるが、すでにFRBのテーパリングを成功させている。今回の市場の動揺は別の要因も絡んだことでやや過激な動きとはなったが、これがFRBの利上げそのものを阻止するものとはならないと思われる。この程度の相場変動も想定内ではなかったか。

 それよりも気になるのは、中央銀行による過度な金融緩和だけでなく、政府絡みで株価を上昇、もしくは維持させようとしている国が先進国にあることである。百年に一度の大きな危機は去っていたにも関わらず、デフレ脱却との名目でリフレ政策を実行したのは良いが、大胆な国債買入が物価上昇に結びつかないことがむしろ証明された格好となっている。さらに今回は海外初の株安にも関わらず、すでに株高ありきの政策をとってしまっていることで、無理矢理株安を食い止めようとの動きもあったようにみえる。

 1989年末までのバブル経済の崩壊理由をもう一度振り返る必要がある。あのときも円高対策としての金融緩和とともに、土地や株の価格が右肩上がりとなることを前提とした運用を銀行などが行っていたことが、のちのバブル崩壊による金融経済ショックの要因となる。これがデフレそのものの要因となった。

 今回は銀行というよりも、GPIFなどクジラと称されるところが、株式市場の右肩上がりを前提とした運用に変更している。いずれこれはゆうちょなども同様となると予想されている。もし株式市場が今後、大きな調整を迎えると運用益どころではなくなる懸念が生じる可能性があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-09-04 09:47 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスで残ったのは日銀の国債だけか

 安倍首相は24日の参院予算委員会で、日銀が目標に掲げる2%の物価上昇を達成の目安としていた今年4月を過ぎても実現できていないことについて、「原油価格が暴落した中で達成できないのはやむを得ない」との認識を示した(時事通信)。

 ただし、日本経済は四半世紀ぶりの良好な状況を達成しつつあり、経済の好循環は着実に回り、デフレではない状況を作り出したとの安倍首相の発言もあった。

 少し古い首相発言となるが、安倍首相は2013年2月の衆議院予算委員会で「デフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられる」との認識を示していた。

 今月24日の安倍首相の発言のなかの「デフレではない状況を作り出した」というのは、どのような意味なのであろうか。

 アベノミクスのなかの中心的な役割を担っていたのが金融緩和であった。2012年11月16日に衆院選が解散し、翌日に熊本市内の講演で、安倍自民党総裁は衆院選後に政権を獲得した場合、建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていくと述べた。同日の山口市での講演で安倍総裁は、輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう、と発言をした。

 これがのちにアベノミクスと呼ばれたもののスタートとなる。この発言をきっかけとして急激な円高調整が起き、日経平均は上昇した。

 アベノミクスはデフレは貨幣現象であり、金融政策で変えられるとの発想が元になっている。日銀は2013年4月の量的・質的緩和により、2年程度の期間を念頭に2%の物価安定の目標を実現するとした。物価目標が達成できれば、デフレは解消し日本経済は四半世紀ぶりの良好な状況を達成できるというのが本来の政府・日銀のシナリオではなかったのか。

 それにもかかわらず肝心の物価目標が未達どころかゼロ%近くにいる。それにも関わらず、その結果だけが出ていると強調するのは、説明としてはおかしくはないか。日銀が債券市場を麻痺させるほどの国債を大量に買い込んで、インフレ期待を高め、物価を上昇させると自ずと景気も良くなるとの発想のはずが、途中の経路を無視して、結果のみを強調しようとしている。その結果についても世界的なリスク後退の恩恵も考慮すべきであり、2015年4~6月GDPはマイナス成長となるなか、アベノミクスの効果と結論づけるにも無理があろう。

 円安と株高のきっかけを作ったことは確かかもしれないが、そこには相場の力も大きく働いていた。上がったものはいずれ下がる、下がったものはいすれ上がる。買われすぎた円を売るタイミングに政権交代とリフレ発言が重なって、結果としてヘッジファンドを大儲けさせた。

 その円安・株高という最初で最後のアベノミクスの成果もここにきて怪しくなってきた。これがなくなるとなれば、あとに残るのは300兆円という日銀の国債保有残だけともなりかねない。むろん日銀の国債買入はここで止めるわけにはいかず、日銀の保有国債は物価と関係なくさらに積み上がり、それが債券市場を圧迫させる。また将来のテーパリングや出口も困難にさせかねない。ある意味、日銀はその金庫に国債を積み上げれば積み上げるほど、それを火薬庫に変化させかねないとも言えるのである。念のため、現在の国債発行はペーパーレスのため、現実には日銀の金庫に国債の券面はなく、電子上での保管となっている。

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by nihonkokusai | 2015-08-26 08:55 | アベノミクス | Comments(0)

アベトレードと呼ばれる株価の上昇と円安のシンクロの要因

 2000年以降の日経平均とドル円の推移を、手元のデータをグラフ化して見たところ、2012年11月あたりからの動きが、かつてない形でシンクロしていた。いわゆるアベノミクスの登場により、ドル円と日経平均の動きはかつてないほど連動していた。
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 円安イコール株高という図式は当たり前のようにみられているが、実際にはそれほど連動性は高いわけではない。2000年以降でみても極端に連動していたような動きはそれほどみられない。これはその時々により、ドル円と日本の株価に影響を与える材料が異なっていたためであろう。

 2000年4月に日経平均は2万円台を付けていたが、ここから2003年4月に7600円台で底入れするまで、ほぼ一本調子で下落した。これは米国のITバブルの崩壊と、2001年の米国の同時多発テロの発生、さらに国内では不良債権問題が燻り、日経平均は下落トレンドとなっていた。

 2000年4月から2003年4月にかけてのドル円は、米国の同時多発テロによる金融市場の混乱により、ドルが売られたものの円も売られて、むしろ円安へとなり、2002年にかけて130円台へと上昇しているのである。

 2003年5月、りそな銀行に対する資本注入で「政府は大手銀行を潰さない」といった意識も強まり、その結果、株式市場では銀行株などが買われた。さらに海外投資家の旺盛な買いに支えられ、日経平均はバブル崩壊後の最安値となった2003年4月に底入れし、上昇に転じた。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めていく。外為市場では、りそな銀行破綻・国有化をきっかけに円高が進行し、2004年には100円に接近した。

 2006年には日銀の量的緩和政策とゼロ金利政策の解除が実施された。2007年に日経平均は18000円台をつけ、ドル円は120円台をつけていた。

 2007年以降にいったん日経平均とドル円の連動性が高まる。円高と株安が同時に発生したのだが、これはサブプライム問題からリーマン・ショックに至る過程での世界的な金融経済危機が要因となっていた。日経平均は2006年10月に7000円を割り込み、引け値としては2009年3月に7000円近くでバブル崩壊後の最安値をつけた。

 その後のギリシャの債務問題を発端とした欧州の信用危機の発生により、円が買われドル円は2011年に75円台をつけ、ここがドル円の過去債低水準となった。

 このように日経平均とドル円は、ボトムアウトしたタイミングにはかなり違いがあった。それにもかかわらず、2012年の11月頃から同時に急反発することになる。きっかけは安倍自民党総裁のリフレ発言であり、円買いや日本株のショートがかなり溜まっていたところに、ヘッジファンドが大量の円売り・日本株買いを仕掛けたことが要因といえる。これはアベトレードとも呼ばれているようである。

 ここでシンクロ現象が発生していたのだが、グラフを見ると、ここ数か月は日経平均の上昇に比較して、ドル円の戻りが鈍くなり、その連動性が薄れつつあるようにもみえる。ここからはあらたな材料で、それぞれの動きをしてくることも予想される。ギリシャ問題やFRBの年内利上げの可能性などが材料視されてくると思われるが、あらたな動きが始まっているとの見方も可能かもしれない。

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by nihonkokusai | 2015-06-02 09:43 | アベノミクス | Comments(0)
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