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カテゴリ:アベノミクス( 90 )

円高株安の要因はアベノミクスへの懸念

 安倍首相が消費増税の先送りを表明後、外為市場ではドル円は109円割れまで下落し、日経平均も17000円を割りこんでいた。特に2日のドル円と日経平均の下落は、日銀の佐藤審議委員が講演でマイナス金利政策に対して反対の姿勢を示したことで、日銀の追加緩和が先送りされるとの思惑によるものとの指摘があったが、それは違うのではなかろうか。

 そもそも佐藤審議委員は量的・質的緩和の拡大やマイナス金利政策の決定時に反対票を投じており、黒田総裁を中心とする執行部とは距離を置いている。今後もしマイナス金利の深掘りを検討することになった際も当然、佐藤委員は反対するとみられるが、それで決定が覆されることはないはずである。それは当然、市場参加者もわかっていると思われる。それではなぜこの佐藤委員の講演内容が材料視されたかといえば、異次元緩和を中心としたアベノミクスに対しての疑念が海外投資家を中心に意識されたためと思われる。

 今回の佐藤委員の講演の内容は、これまでの佐藤委員の発言等から大きな変化はないが、表現がより厳しくなっている。というよりも黒田総裁というかアベノミクスの登場以来封印されていた、かつての日銀が示していた通常の理論を前面に打ち出してきているようにも見える。つまり、今回は黒田総裁等の意向を意識してのフィルターが外されていたように私には感じられた。

 消費増税の延期そのものがアベノミクスと呼ばれたリフレ政策の効果について疑問を投げかける要因となったが、佐藤委員の講演内容により、その柱であった異次元緩和が実態経済への働きかけに乏しく、むしろリスクを増加させることになることを佐藤委員の発言を通じて、あらためて市場参加者が認識したのではないかと思われる。

 日銀のサイトにアップされている佐藤委員の講演内容からいくつか抜粋してみた。

 「特定の期限を区切り、特定の物価上昇率を目指すという考え方については、金融政策の効果発現のラグや不確実性を考え併せると、予てから違和感を持っている。」

 「(マイナス金利で)ペナルティを課しつつマネタリーベースの増加目標を維持するのは論理矛盾である。」

 「長期・超長期ゾーンの大幅な金利低下は長期ゾーンまでマイナスの下で行き場を失った資金が search for yield の結果として辛うじてプラスの金利が残っているゾーンに染み出したもので、当初の政策意図であるポートフォリオ・リバランスにはむしろ逆行していると思う。」

 あたりまえの発言であったが、むしろここまではっきり物が言えなかったのがこれまでの日銀であったようにも思われる。3年掛かってようやくこのような当然といえる発言が出て、市場もこの発言内容に納得した動きを示したとも言えまいか。そして佐藤委員は下記のような発言もしている。

 「わずかなプラスの利回りを求め、超長期国債の購入に向かう足許の動きには2003年のいわゆる「VaRショック」前のような危うさを感じる。」

 1日の東京市場は円高株安となったが、債券市場では佐藤委員の発言にほとんど反応を示していない。これは違和感がなかったためと思われる。上記の発言についても同様であったものの、債券市場参加者はこのリスクについても薄々気配を感じ取っているのではなかろうかと思われる。そして、アベノミクスのアキレス腱ともいえるものは実は日本国債にあることは言うまでもない。

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by nihonkokusai | 2016-06-04 09:54 | アベノミクス | Comments(0)

政府と日銀との共同声明と現実のギャップ

 北海道新聞によると、日銀の黒田総裁は30日、函館市内で北海道新聞の単独インタビューに応じ、黒田氏は「2013年1月に出した政府と日銀との共同声明で、政府は財政再建を進めていくことを約束している」と述べたそうである。これについて北海道新聞は、政健全化の重要性を改めて強調するこの発言は、消費税率引き上げを2年半再延期するという安倍晋三首相の方針に懸念を示したものだと指摘した。

 安倍首相は30日に自民、公明両党幹部と首相官邸で個別に会談し、増税延期方針を説明し協力を要請、衆参同日選を見送ることも伝えた。さらに麻生副総理兼財務相ともあらためて会談し、麻生氏は消費増税延期を容認し、増税延期の場合、実施を主張していた参院選に合わせた衆院解散についても見送る首相方針を受け入れた。これにより、国会会期末の6月1日にも増税延期を正式表明する。

 黒田総裁が指摘していた政府と日銀との共同声明では「日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。」とある。

 これに対して「政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」とあった。

 この共同声明が出たころの日銀総裁は白川氏であった。共同声明とはアベノミクスがスタートし日銀に物価目標を課して政府の意向を強く反映させようとしたものである。かつての米国の政府とFRBのアコードと呼ばれた政策を都合良く解釈したものの日本版といったものである。

 これに対し日銀はその後、黒田総裁となって異次元緩和を行い、2年で2%の物価目標を達成するとした。しかし、国債を大量に購入し、マネタリーベースを思い切って増加させても物価目標は3年以上経過しても達成どころか前年比ゼロ%近辺でうろうろしている。

 さらに政府は財政健全化を推し進めるどころか、リーマン・ショック並みのクライシスに備えてという訳のわからない理由で、予定されていた来年の消費増税を先送りすることをほぼ決定した。

 2013年1月に出した政府と日銀との共同声明が結果として、日銀による国債の大量買い入れに繋がり、それは物価を上げることはなく、今度は政府は財政健全化のひとつの大きな政策であったはずの消費増税を取りやめた。

 財政ファイナンスのようなことをしても日本の国債市場は素直に買われていたことは事実である。日銀のマイナス金利政策により10年債利回りもマイナスとなった。日銀の国債買入で需給はタイトであり、そう簡単に日本国債が急落するようなことは考えづらい。しかし、日銀が金融政策の枠組みを変更し少しでも出口を見えるような政策に変更するならばともなく、日銀は物価目標達成のためとしてこのまま大量に日本国債を買い入れ、政府は消費増税を延期し拡大財政政策に向かうようであれば、さすがに日本国債もこのまま安泰ということはむしろ考えづらい。

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by nihonkokusai | 2016-06-01 09:23 | アベノミクス | Comments(0)

リーマン・ショック並みのクライシスへの備え

 安倍首相は28日夜、麻生副総理兼財務相、自民党の谷垣幹事長らと会談し、来年4月の消費税率の10%への引き上げについて、2019年10月に2年半、再延期する考えを伝えたそうである。

 これに対して麻生財務相は、29日に富山市で開かれ谷垣幹事長も同席した会合で、仮に引き上げを再延期する場合には、衆議院の解散・総選挙を行う必要があるのではないかという考えを示した。

 リーマン・ショック並みのクライシスに備えて、どうやら安倍首相は消費増税延期で無理矢理押し通す構えのようである。クライシスの備えで延期するとなれば、たぶん永遠に消費税の引き上げなどは難しくなりそうだ。ただし、この消費増税延期について市場は特に動揺を示すことは考えづらい。債券市場においても安倍首相が在任中に二度の消費増税などはやるわけはないとの突き放した見方はすでに以前から出ており、やはりな、といった結果となった。

 ただし、安倍首相はリーマン・ショック並みのクライシスに備えての財政政策も打つつもりのようである。その中身よりも規模とそれによる国債増発の有無などが注目されよう。財政規律は維持するということが口先だけのものとして認識されるようであれば、国債市場に動揺が起きる懸念は皆無ではない。

 そして、米国ではFRBが6月か7月のFOMCでの利上げを視野に入れていることがイエレン議長の発言で明確となった。

 イエレン議長は27日、ハーバード大学でのイベントで、「これまでにも話したことだが、金融当局が時間をかけて緩やか、かつ慎重に政策金利を引き上げていくのは適切だ」とし、「恐らくは、今後数か月のうちにそうした行動が適切になるだろう」と述べた(ブルームバーグ)。

 今後数か月となれば6月14、15日もしくは7月26、27日のFOMCのどちらかということになろう。可能性とすれば議長会見がある6月の可能性が極めて高いとみている。

 ここにきて地区連銀総裁からは利上げに向けてかなり前向きの発言が相次いだことで、イエレン議長は多少なり慎重な姿勢を示して、調整を図る可能性もあるかとみていた。ところがすでに市場は6月の利上げも織り込んでいながらも、米株も米債もかなり冷静な動きとなっていた、株式市場はむしろ利上げが可能なほど米国経済がしっかりしているとの認識を強めた格好となり、イエレン議長もその見方を強めさせたと思われる。

 リーマン・ショック並みのクライシスに備えて政府は消費増税を先送りし、デフレ脱却のためと称して中央銀行はマイナス金利まで導入した我が国に対し、リーマン・ショック並みのクライシスはすでに去り、金融政策についても正常化に戻しつつある中央銀行を有する米国との違いは明白である。いったいどちらが見方や手段を間違えているのかは言うまでもなかろう。

 米国市場はすでに利上げに耐えうる状態となっており、健全な形で株価も金利も上昇してくる可能性が高いと思われる。これに対して財政規律の緩みも意識される上で財政ファイナンスの様相を強めている我が国にとっては、別の意味でリーマン・ショック並みのクライシスに備える必要も出てきているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-05-31 09:09 | アベノミクス | Comments(0)

リーマン・ショック並みのリスクとは何か

 2007年の2月あたりから米国住宅市場が減速し、2005年から2006年に証券化されたサブプライムローンについて、金利が跳ね上がる2年を過ぎたものが出てきました。これらのローンについては、借り手に返済能力があるかという審査も不十分で、支払い遅延やデフォルトが相次ぐようになりました。これによりサブプライムローンを組み込んだ債務担保証券(CDO)の価格が大きく下落しました。さらに資産担保CPを購入することで、様々な証券化商品プログラムに資金を供給していた投資家が、担保にサブプライムローンが含まれていることを嫌気し、購入を手控えてしまったのです。これにより欧米の金融機関が資金繰りの問題に直面し、その後、巨額の損失見込みを計上するなどしたことで、金融市場を大きく混乱させる原因となりました。

 金融市場の動揺の背景には、高度化というよりも複雑化した金融商品に隠れていたリスクが表面化したことも大きいと言えます。サブプライムローンについてはそういった層に融資していた金融機関が直接被害を受けるものの、本来なら世界的な影響を及ぼすことは考えづらいはずです。しかし金融機関一社が、こういったローンのリスクをすべて一人で背負うことには無理があり、そのローンを担保にした証券を発行し、数多くの投資家に転売してしまうという仕組みが考え出されました。つまり一社では背負い切れないほどの信用リスクを、細分化して広範囲にばら撒いてしまう手法です。もちろんトータルのリスクが軽減するわけではありません。しかしこの仕組みならば、従来では不可能であったようなローンも提供することが可能となったのです。このような住宅ローンを裏付けにした証券が、住宅ローン担保証券(RMBS)と呼ばれるものでした。さらに合成債務担保証券、CDOの一部には、ローンや住宅ローン担保証券を組み入れたものがあったのです。

 米住宅バブルの崩壊により、サブプライムローンの焦げ付きが増加し、格付会社がそれを組み入れた証券化商品を格下げしたことで巨額の評価損が発生しました。その結果、それらを大量に保有していた欧米の金融機関で、数十兆円とも言われる天文学的な損失が表面化したのです。2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、カウンターパーティ・リスクに対する市場参加者の警戒感が高まりました。

 たとえばリーマン・ブラザーズ証券の破綻の際に、「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する」旨を発表したことで、約定済みの日本国債の取引が一切履行されないという非常事態が発生しました。この結果、リーマンが国債取引について引き起こしたデフォルトの規模は、2008年9月の予定分だけでも約7兆円規模に上ったのです。これによりリーマンと決済を予定していた相手先では、ポジション再構築、リーマンから引渡しを受けられなかった国債の調達及びリーマンに引き渡す予定であった国債の売却処分を余儀なくされたのです。また、リーマンから引渡しを受けなかったものについては、即日にその国債を調達することもできずフェイルを余儀なくされました。リーマン・ショックのあった2008年9月において、累計で6兆円弱のフェイルが市場で発生しました。リーマン破綻の経験を通じて、市場では、「破綻等のストレス時にモノ・金を予定通りに受け取れないリスク」(デフォルト・フェイルに伴う流動性リスク)が、概念上の存在に止まらない現実的なリスクとして、改めて強く認識されたのです(「リーマン・ブラザーズ証券の破綻がわが国決済システムにもたらした教訓」日本銀行資料より)。

 「リーマン並みのショック」は米国住宅市場のバブルが崩壊し、そこに複雑に高度化した金融商品のリスク分散手法の欠点が顕在化し、そのようなリスクが顕在化すると前提せずに投資していた金融商品に大きな損失が発生し、グローバルな大手金融機関を直撃したのです。大手金融機関の破綻により市場における流動性リスクが顕在化し、カウンターパーティ・リスクに対する市場参加者の警戒感が世界の金融市場を直撃しました。そこで世界的な金融経済危機が発生したのです。それが日本の国債市場も揺るがしたのです。ではいま、このような潜在的なリスクはどこに存在していると言えるのでしょうか。中国、産油国などにもないわけではないものの、むしろその潜在的なリスクは債務残高の異常な大きさと中央銀行が財政ファイナンスのような行動をしている日本にこそ潜んでいるとも言えるのではないでしょうか。

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by nihonkokusai | 2016-05-29 10:48 | アベノミクス | Comments(0)

サミットという虎の威を借る安倍首相

 今回の伊勢志摩サミットで議長の安倍晋三首相は機動的な財政戦略や構造改革を提案し、リーマン・ショックを引き合いに出して世界経済の危機(クライシス)に懸念を示したが、危機の度合いの表現をめぐって疑問も出たことから調整もあったようである。

 今年に入っての金融市場のリスクオフの動きなどから現在がリーマン・ショック前のような危機的状況に陥っているとの判断はかなり無理がある。中国を中心とした新興国の景気下振れリスクはたしかに存在する。しかし、これはリーマン・ショックやギリシャ・ショックのように金融市場を大きく揺るがすようなクライシスに相当するとは思えない。しかも世界的なクライシスはテールリスクとも呼ばれるように予測不可能なものであり、それを事前に予測できるものにクライシスなどはない。さらに言えば、米国はすでに金融政策の正常化を進めているぐらいである。

 何故、安倍首相はリーマン・ショックという表現を盛り込もうとしたのか。これは自ら消費増税の先送りの条件に「リーマン・ショック」という表現を組み入れてしまったからに他ならない。世界経済の認識については、多くの首脳から新興国の現状に厳しい認識が示されることは予想されており、それに乗じてリーマン・ショックという表現を盛り込んで、G7という虎の威を借りて消費増税を先送りさせることが目的であったのではなかろうか。これは以前にノーベル賞級の経済学者を呼んで消費増税に対する意見を聞く場を設けたことも同様の目的であったと思われる。

 サミットなどの主要国首脳会議は政治ショーの色彩が強く、開催国の首脳に花をもたせることも定例化しているそうである。安倍首相もこのあたりを計算に入れて、消費増税先送りへの道筋を付けようとしたのではなかろうか。それでも参加国は素直にうんとは言えなかったようである。

 本来危惧すべき問題は、あるかないかわからないリスクなどよりも、むしろ日本が抱える巨額の債務問題のほうではなかったのか。そうであれば消費増税先送りなどもってのほかという結論となってしまう。

 消費増税の先送りの可能性はより強まった。果たしてこれは手放しで喜べることになろうか。実は世界経済の危機(クライシス)になりそうなもの、潜在的なリスクが大きく膨らんでいるのは日本にあるように思われる。

 4月のコアCPIは前年比マイナス0.3%となった。日銀は物価を上げるためと称して年間発行額に相当する国債を買い入れているが、それが物価に直接反映されることはないことをむしろ証明してしまった。しかし、いったん踏み込んだ以上、日銀はどうやら後戻りもできそうにない。マイナス金利まで付けて、異常な金利体制を構築してしまった。つまり異常なほど日本国債の価格は上昇していることになり、これはバブル以外の何ものでもなかろう。このバブル崩壊のリスクこそ本来は意識すべきものであるはずである。

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by nihonkokusai | 2016-05-28 10:19 | アベノミクス | Comments(0)

いま何故、G7で財政政策なのか

 5月26日、27日にかけて開催されている伊勢志摩サミットでは、議長国である日本は安倍首相が世界経済を支える強いメッセージを打ち出す必要を訴えてきた。これは安倍政権の基盤そのものがアベノミクスと呼ばれた経済政策が柱であったため、アベノミクスの海外拡大版を意識したものであろうか。

 20日、21日に仙台の温泉地である秋保で開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議では、協調しての財政出動に関して英国やドイツの慎重姿勢に変化はなく見送られた。これに関しての一連の議論は伊勢志摩サミットに引き継がれたようだが、やはり合意は難しいと思われる。

 ここにきて何故、財政政策なのか、それは年初からの原油安やその要因でもあった中国の景気悪化などによるリスクオフの動きも意識されたのであろうか。ただし、中国の景気減速はそもそも中国のバブル崩壊とも言えるべきもので、それが少し日米欧の積極的な金融緩和で先送りされていたところ、米国の利上げなどもあって顕在化したものであろう。その影響は無視はできないが、そのリスクオフの要因のひとつであった原油価格は反発し、WTIは50ドル近辺にまで戻ってきている。これをみても今になって何かしらの危機対策で、緊急の財政政策を打つ必要性は各国首脳もそれほど望んではいないのではなかろうか。

 7か国の間には協調しての財政出動に関して温度差があると指摘されている。積極的なのは日本と米国、中立ながらもやや前向きであるのがカナダ、フランス、イタリア。財政再建に取り組む英国と財政規律を重んずるドイツが消極的という構図とされる。

 ただし、現実問題として積極的な財政政策を打ち出せる国は本来いない。そもそも何故、欧州の信用不安に対し中央銀行の積極的な金融緩和に委ねられたのかといえば、財政政策に限界が見えたためであった。フランス、イタリアにはそんな余裕があるとは思えない。さらに米国も同様であり、自分の国はさておいて日本やドイツが頑張ってくれるなら応援するよとの認識ではなかろうか。

 日本もこれだけの政府債務を抱えて2020年のプライマリーバランスの黒字化を目指すはずが、どうやら消費増税は見送るだけでなく、積極的な財政政策も打つつもりなのであろうか。日銀が異次元緩和と称して大量に国債を購入し、マイナス金利政策まで加え、長期金利までマイナスと化している状況下、国債を発行すれば儲かるような図式となっている。ここでの積極財政、その財源としての国債増発となれば財政規律の緩みも意識されよう。

 国債というか長期金利はすでに、このようなリスクを示す指標とはなっていない。だから問題ないということではない。そのサインが出ないようにと国債管理政策等も進められてきた。急激な金利上昇は20年間起きなかったことがこれから起きるわけはないと言う人もいる。しかし、過去の歴史を振り返ると国が財政ファイナンスを行って成功した事例はないことも確かである。

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by nihonkokusai | 2016-05-27 09:41 | アベノミクス | Comments(0)

終焉を迎えつつあるアベノミクス相場

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 4月5日のニューヨーク外為市場でドル円は一時109円台をつけ、2014年10月31日に日銀が量的・質的金融緩和を決定した前日の水準にまで低下した。日経平均株価は16000円を割り込み、すでに2014年10月31日の水準を下回っている。そして、昨日までの日経平均株価は7日続落となり、2012年11月13日までの7日続落以来の出来事となった。つまりアベノミクス相場が始まってから初の7日続落となった。

 2012年12月の総選挙を経て誕生した安倍政権であるが、その政権奪取に向けて打ち出した政策がアベノミクスと呼ばれる経済対策であった。11月17日に自民党の安倍総裁は熊本市内での講演で、衆院選後に政権を獲得した場合、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう。新しいマネーが強制的に市場に出ていく」と述べた上、同日に山口市では「輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう」と発言した。アベノミクスとはいわゆるリフレ政策と呼ばれ、日銀が次元の違う金融緩和を行うことでデフレマインドを払拭させるというものではあった。その結果として現れたのが円安・株高と、その円安にも影響された一時的な物価の上昇となった。

 安倍政権は常に日経平均をチェックしていると言われるように、株価の動向をかなり意識している。その意味では最初の市場への奇襲作戦といえるアベノミクスの登場はおおいに成功した。ただし、それは欧州の信用不安の後退期という絶妙のタイミングと、リフレ政策による株高を連想したヘッジファンドが美味しいところを持っていったこと(大量の円売り・日本株買いの仕掛け)によるところが大きい。

 ところが、アベノミクスの勢いは2014年あたりで一服した。日経平均は16000円台、ドル円は110円台でいったんピークアウトしたのである。これもあり、あらたな打開策として登場したのが日銀による追加緩和である。これは原油安により物価目標達成がより困難になりつつあったことも背景にあるが、あらためて円安・株高の勢いを取り戻そうとの作戦となった。

 日銀のバズーカ第二弾もあり、さらに米国株式市場の上昇も追い風となって日経平均は2015年4月に2万円台を回復し、ドル円は2015年6月に125円台をつけた。しかし。このあたりで改めてピークアウトする。2015年8月に日米の株式市場は大きく調整した。これは中国の元切り下げなどもきっかけではあったが、中国経済の減速傾向がはっきりし、世界的な景気減速への警戒が世界の株安連鎖に繋がった。中国などの経済減速は、原油価格の下落の要因ともなり、原油価格の下落がリスク意識を強めさせた。

 日米の株価の本格的な調整は、原油価格の下落も伴って2016年に入ってから起きた。ダウ平均は17000ドル台から15000ドル台に急落した。しかし、原油価格の下げ止まりもあり、ダウ平均はその後17000ドル台まで回復している。

 ところが日経平均の戻りは鈍かった。ここで再び登場したのが日銀であり、2016年1月の決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和を決定した。しかし、市場はこれに対してネガティブな反応をした。マイナス金利への負の反応もあったかもしれないが、市場はすでに金融緩和に踊らされる地合ではなくなっていた。

 あらためて東京株式市場は売られて円高は進み、ドル円と日経平均は2014年10月の水準まで下落した。日銀にとっても打つ手は限られ、政府がいくら財政政策などを行っても地合を変化させることは難しい状況にある。むしろGPIFなども使っての無理矢理な株価対策に対する反動もあるとみられ、よほどのファンダメンタルズの改善でもない限りは、力尽くでの株価浮揚策には無理があろう。円安・株高に頼ったアベノミクスはすでに終焉を迎えつつあり、問題はその後始末にあるように思われる

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by nihonkokusai | 2016-04-07 10:11 | アベノミクス | Comments(0)

困難となりつつある政府・日銀の株価対策

 年初からの株安、円高さらに原油安により、政府や日銀に対応を求める声が出てきている。今回の日本の株安や円高は日本の内部要因によるものではない。中国など新興国経済のピークアウト感が強まり、原油価格も下落した。そこに米国の利上げも組み合わさり、新興国からの資金の逆流も生じた。これが年初からの相場変動の要因である。

 ただし、原因は何であれ、結果として東京株式市場が年初から大きく下落し、日経平均は心理的な節目とみられる17000円を割り込んできた。さらにはドル円も節目とされる117円を割り込む事態となっている。原油先物もWTI先物が30ドルを割り込んでいる。

 株価は日本経済の指標のひとつであり、円高は輸出企業にとってはマイナス要因となる。特に安倍政権はアベノミクスと呼ばれたリフレ政策により、急速な円安株高を招き、それが政権支持への大きな基盤となっていた。このため、今回の円高株安の動きは看過はできないはずである。

 さらに原油価格の下落は日銀の物価目標達成のさらなる先送りを意味する。日銀の示す新コアコア指数にはエネルギー関連は除かれているが、原油価格の下落はエネルギー関連だけではなく物価全体に影響を与えることで、新コアコアも頭打ちとなる可能性がある。それ以前に、そもそも日銀の物価目標はあくまで消費者物価の「総合」であるため、原油価格の下落は直接的な影響を被る。

 それでは政府や日銀は市場からの期待に応えて効果的な株価対策を打つことが可能となるのか。マーケットの動きをみると14日の日経平均17000円割れのタイミングでは、いわゆるPKOのような動きが入った可能性がある。公的年金などがアセットアロケーションの変更という名目で、株式市場で押し目買いを入れて、債券市場では超長期債を売却した可能性がある。

 しかし、海外市場での株価や原油価格の下落が止まらない限り、このような施策にも限度はある。すでにGPIFのアセットアロケーションの調整もだいぶ進んでいたはずであり、また日銀によるETFへの買いにも限界がある。

 今年度の補正予算案ものもなく可決されることで、ここからあらたな財政政策を講じることも難しい。そうなると日銀の追加緩和への期待が強まりそうだが、果たして日銀が追加緩和を講じるとしても、それが株高や円安を招くかどうかも疑問である。12月のECBの追加緩和に対する市場の反応をみれば、むしろ中途半端な追加緩和は逆効果になりかねない。

 このように政府と日銀は現在のところ、外部要因による日本株の下落や円高、さらに原油安に対しては有効な手段はとりえないと思われる。むしろここは対策の可能性は示しても、外部環境が落ち着くのを待った方が得策ではなかろうか。あまり無理強いすると、ここは岩盤のように動かないはずの国債市場に動揺が走る懸念すらありうる。

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by nihonkokusai | 2016-01-19 15:52 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクス相場の終焉で日銀は動くのか

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 8日に発表された12月の米雇用統計では、非農業雇用者数が29.2万人増と市場予想の20万人増を大きく上回った。10月、11月も上方修正された。暖冬の影響で建設業など主体に増加したようである。失業率も5.0%と低水準を維持している。時間当たり賃金は前月からわずかながら減少した。賃金は前年比で2.5%の増加となり、前月の2.3%から伸びが拡大した。

 これを受けて8日の米国株式市場は買いが先行したものの、中国経済への警戒感などにより戻り売りに押され、前日比167ドルの下落となった。FRBの利上げペースが意識された可能性はあるものの、米国経済の堅調さよりもリスク回避の動きが意識されたようである。11日のダウ平均は52ドル高とやや戻したが、12日の東京株式市場は売りが先行し、日経平均は一時500円を超える下げとなった。いったん押し目買いが入るとは思うものの、チャート上からは、いずれ日経平均は17000円割れを試してくる可能性が高そうである。

 そして、12日には原油先物市場ではWTI先物が一時29.93ドルを付け、12年ぶりに30ドルを割り込んだ。

 株安や原油安などの一連の動きの背景には、中国経済への懸念によるリスク回避の動きがある。このため外為市場では円高圧力が強まり、ドル円は12月はじめの123円台から一気に下落(円は上昇)し、一時117円を割れとなった。

 今年のドル円の予想は円安と円高に極端に分かれていたが、いまのところは円高に軍配が上がった格好となっている。ただし、この円高傾向についてはリスク回避以外に説明が難しい。ただし、チャートのトレンドが変化しつつあることは確かではなかろうか。

 ドル円のチャートを少し長めのタームでみてみると、2012年10月あたりで円高トレンドが修正されて、円安が急速に進行する。いわゆるアベノミクスをきっかけとしての円高調整の動きとなった。その円安がいったん105円近辺で落ち着くが、2014年9月あたりから再び円安が進行する。FRBの利上げ観測によるドル高であったが、そこに10月の日銀による異次元緩和第二弾が加わり、ドル円は120円台に乗せ、2015年6月に125円台をつけたところでピークアウトした。

 このあたりからドル円の上値が重くなったのは、黒田日銀総裁の発言による125円ラインが意識されたこともある。これ以上の円安を望んでいないとする政府の意向も意識された。そして、FRBは2015年12月のFOMCで利上げを決定し、思惑で買われたドルが真実で売られた格好となった。さらに懸念材料として中国経済への不安感が再び台頭。人民元の引き下げなどをきっかけに中国の株式市場が急落し、チャイナショックが起きた。サウジアラビアとイランとの国交断絶や北朝鮮による水爆実験とされる核実験による地政学的リスクなども加わり、リスク回避の動きの強まりで東京株式市場は下落し、それとセットにドル円も下落した格好となった。

 ドル円の月足チャートをみると、2014年12月あたりから2015年12月あたりまで120円台で天井圏を形成し、そこから下抜けしようとしている格好となっている。これは2011年8月あたりから2012年10月あたりまで70円台主体に底値圏を形成してからの反発の裏返しのようなチャート形成となっている。

 あくまでチャート上からではあるが、ドル円はさらに下落することが予想され、目先の目処としては110円割れあたりまでありうるか。ドル円が110円近辺まで下落したとして、政府や日銀は何らかの対策を打ち出すのであろうか。

 経済政策を前面に打ち出している安倍政権としては、円安・株高を背景としたアベノミクスが政権安定の基盤ともなっている。今年7月には参院選挙も控えている。

 そのなかで原油価格の下落は続き、日銀の物価目標達成時期予想も先送りせざるを得ない状況となっている。日銀の金融政策決定会合は今年から8回しかない。参院選までは1月、3月、4月、6月の4回が予定されている。そのうち1月と4月には展望レポートの公表がある。

 日銀にとり打つ手は限られている。それでも12月の異次元緩和補完措置により国債の買い入れ余地を拡げた、これは2016年の国債買入をスムーズにさせるものではあろうが、これを追加緩和に使ってしまう可能性もないとはいえない。ただし、二度の異次元緩和ほどのバズーカ砲は撃てない。仮に日銀が円高株安と原油安による物価下落に対応するための措置として追加緩和を決定したとして、12月のECBの追加緩和の際と同様に期待外れといった認識をされる可能性は高い。それ以上の追加緩和がさらに困難になるとして、むしろ円高圧力が強まる可能性もありうることにも注意が必要となろう。

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by nihonkokusai | 2016-01-13 10:03 | アベノミクス | Comments(0)

GDP600兆円政策と日銀の金融政策

 安倍首相は7日に内閣改造を行い、皇居での認証式を経て第三次安倍改造内閣が発足した。安倍首相は新設した一億総活躍担当大臣に起用した加藤前官房副長官に対し、GDP600兆円などの目標達成に向けて、緊急対策を年内に実施するため「国民会議」を速やかに立ち上げるとともに、今後実行する具体策を盛り込んだ工程表を作成するよう指示した。これに関連して加藤大臣は記者会見で、国民会議について「各大臣のほか、若い方や高齢者、男女、障害のある方、難病の方の意見をきちんと反映できるような方に入ってもらわなければならない」と述たそうである(NHKニュースより一部引用)。

 9月24日に安倍首相が表明したアベノミクスの新三本の矢は「強い経済」、「子育て支援」、「社会保障」であり、これにより名目GDPを600兆円にすることを目標とするとした。当初の三本の矢は「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」であったが、これは新三本の矢の「強い経済」に集約されているそうであるが、少なくとも「金融政策」という表現が消えていることは確かである。

 国民会議の具体的なメンバーの人選はこれからであろうが、ここに日銀総裁が含まれているのかどうかもわからない。少なくとも今回の加藤大臣の発言のなかには日銀総裁は含まれておらず、名目GDPを600兆円に向けた緊急対策に日銀の金融政策がどの程度関わるのかは不透明である。

 10月7日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策の現状維持が賛成多数が決定された。経済動向の見方も前回から大きな変化はなく、会合後の会見において黒田総裁は景気や物価の基調は改善しているとの認識を示していた。

 とにかく日銀の追加緩和そのものが容易でない。黒田体制になってからの日銀にとり、これまでの延長戦上で量を増やす手段には限界がある。リフレ的な政策から変化させる、つまりターゲットを量から金利にするなり、大胆ではなく小出しにして逐次投入スタイルに変化するなりの必要がある。

 黒田総裁は7日の会見で、日銀の当座預金の超過準備の付利について、引き下げや撤廃については完全否定しており、量から金利、小出しの政策変更は考えづらい。

 仮に追加緩和を行うとして、その効果というか結果に対しても過去のようには受け入れがたい面が出てきている。どのような手段を講ずるにせよ、結果として物価高、というよりも円安の動きが強まることが予想され、これは政府としてはむしろ受け入れがたいのではなかろうか。安倍首相は昨年10月の異次元緩和第二弾決定前に国会等で「家計や中小企業にデメリットが出てきている」と発言していた、ただし、株高ともなったことで、その点については評価していたかもしれないが、その株高効果も一時的となり、外部要因で打ち消された格好となっている。

 日銀の武器庫にはすでに戦える道具はほとんどなくなっているものの、それでもなんとかかき集めて新兵器を構築するかもしれない。しかし、それを使うとしてもタイミングが重視される。景気の先行き警戒はあれど、現在がそのタイミングとは思えない。

 政府と日銀の間に為替政策など含めた亀裂が入っている可能性もあるが、安倍首相がGDP600兆円などの目標達成に向けての政策をいずれ打ち出すのであれば、そこに追加緩和が組み込まれる可能性はありうる。その意味でも10月30日に動かない方が、武器に限度がある日銀にとっても得策となるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-10-09 09:38 | アベノミクス | Comments(1)
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