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カテゴリ:アベノミクス( 88 )

衆議院選挙の行方次第で金融政策に影響は出るのか

 衆議院選挙は10月10日に公示され、22日に投開票が行われる。選挙の行方は不透明感を強めている。ただし、安倍首相は党首討論会で「(与党で)過半数を取れば首相指名を受ける候補として出る」と述べていた。自民党の衆院解散時勢力は287で、今回全議席465の単独過半数となるのは233議席となる。いまのところ自民党は単独でも過半数は維持するのではとの予想となっている。

 台風の目となりそうな希望の党については、当初の勢いは姿を消しつつあり、ある程度の議席は確保するにしても、政権を奪取するほどの勢いとはなりそうもない。安倍政権が維持される可能性が高いのではなかろうか。

 今回の衆院選挙次第では日銀の金融政策の行方にも影響が出る可能性があったが、安倍政権の続投となれば、2%の物価目標も維持され現在の政策が維持されることになろう。ただし、安倍政権もすでに軸足は金融政策によるデフレ脱却を主軸に打ち出していない。自民党の公約のなかの「アベノミクスの加速」は下記のようになっている。

 「わが国の経済は確実に回復している。この流れを確かなものにするため、「生産性革命」と「人づくり革命」の2つの大改革を断行することによって、力強い消費を実現し、経済の好循環を完遂する。」

 もちろん現在の金融政策は維持するという前提の上での上記の政策となろうが、少なくとも日銀の金融政策に期待する比重は、かなり後退してくるともいえるのではなかろうか。

 消費税については2019年10月に消費税率を10%に引き上げるとし、その際、「全世代型社会保障」への転換など「人づくり革命」を実現するため、消費税率10%への引き上げの財源の一部を活用するとしている。あくまで財源の一部であり、財政再建を後退させる事ではない面も強調している。

 その財政再建については、基礎的財政収支を黒字化するとの目標は堅持するとしている。同時に債務残高対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げも目指すとし、引き続き歳出・歳入両面からの改革を進め、目標達成に向けた具体的計画を策定するとしている。

 この財政再建の文章も残っている以上は、ひとまず国債への信認も維持されよう。アベノミクスについては、日銀の異次元緩和の効果等を含め、かなりいろいろと疑問は多いのも事実であり、必ず物価目標を達成しなければならないとの空気が変化してくる可能性もありうる。


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by nihonkokusai | 2017-10-16 15:49 | アベノミクス | Comments(0)

日銀短観、10年ぶりの回復が意味するものとは

 日銀が10月2日に発表した9月の短観では、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス22となった。前回6月調査のプラス17から5ポイント改善した。22ポイントの改善は2007年9月のプラス23以来、10年ぶりの水準となった。

 大企業製造業の業況判断指数は株価指数とも連動性が高く、ここにきての日経平均の上昇の背景には当然ながら、この企業業績の改善も影響していよう。

 9月25日の記者会見で、茂木経済財政・再生相は国内景気について「戦後2位のいざなぎ景気(1965年11月~70年7月の57カ月)を超える景気回復の長さになった可能性が高い」との認識を示した。9月も回復となれば、2012年11月から58カ月と「いざなぎ景気」を上回り、戦後2番目の長期回復局面となる(9月25日日経新聞)。

 実感なき景気回復とされるが、少なくとも景気が落ち込んでいるわけではない。今回の短観の大企業製造業DIの「2007年9月」以来10年ぶりの回復と、「2012年11月」からの景気回復基調とそれぞれの日付けをみると、今回の景気回復の意味するところが現れてくる。

 一見すると2012年11月からの景気回復は、2012年12月の総選挙で登場したアベノミクスによる効果と見えなくもない。日銀が2013年4月に日銀は異次元緩和を呼ばれた量的・質的緩和を決定し、その2013年4月にプラスに浮上した全国消費者物価指数(除く生鮮食料品、コア)は1年後にプラス1.5%まで上昇した。

 今回の景気回復には日銀の異次元緩和を中心としたアベノミクスが功を奏したのであろうか。今回の日銀短観の数字の背景として、日銀による緩和効果といった説明はなく「世界経済の回復を背景とした企業業績の好調が景況感を押し上げた」との説明があった。実際には日銀の緩和効果よりも世界経済の回復が日本経済も支えているとみたほうが説明がつく。

 アベノミクスやその中心となった日銀の異次元緩和が即、景気や物価に影響を与えたかにみえたのは、あくまでタイミングが良かったに過ぎない。そもそもアベノミクスがスタートする前の2012年11月から景気が改善した背景は、欧州の信用不安という世界的な金融経済リスクの後退によるものとみた方が自然である。金融市場でもリスク回避の巻き戻しが起きつつあるところに、安倍氏の輪転機発言があり、ヘッジファンドが仕掛けて急激な円安・株高が生じ、あたかもアベノミクスが景気に大きく影響したかに見えることとなる。

 今回の日銀短観の水準が2007年9月の水準に戻ったということも、ある意味象徴的な出来事といえる。2007年8月に起きたのがパリバ・ショックであった。つまりリーマン・ショックに繋がる一連の金融経済危機がこのころ発生していたのである。リーマン・ショックとギリシャ・ショックに代表される百年に一度とされる2度の危機が収まってきたのが、2012年11月あたりからであり、時間をかけてやっとそれらの危機以前の水準にまで景気が回復してきたといえる。

 これについて日銀の異次元緩和がまったく効果はなかったとは言わないまでも、そこまでやる必要性はまったく認められないし、現実に物価に影響を与えていない。FRBはすでに正常化に向けた動きを本格化させているが、日銀は物価目標に縛られて身動きが取れなくなっている。本当にこれで良いのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-10-03 09:37 | アベノミクス | Comments(0)

生活改善はアベノミクスの成果なのか

 内閣府が行った「国民生活に関する世論調査」によると、現在の生活に「満足している」か「まあ満足している」と答えた人の割合が、1963年以降で最も高くなったそうである。所得・収入について、21年ぶりに「満足」と答えた人が「不満」と答えた人よりも多くなったとか(NHKニュースより)。

 所得・収入がそれなりに伸びてくるなど雇用環境が改善し、生活そのものにも満足している人々が増えているそうである。これはアベノミクスによる恩恵と指摘する向きもあるかもしれない。

 しかし、アベノミクスが目指したものは、直接、雇用環境の改善や生活向上に働きかけるというものではなかったはずである。日銀がリフレ政策を行うことで、人々のインフレ期待を高めさせ、日本の物価水準を欧米並みの2%まで高まれば、雇用も改善し、景気も良くなり、人々の生活も豊かになるとの発想であったはずである。

 しかし、現在の生活に「満足している」という結果だけをみて、これがアベノミクスの成果とするのであれば、途中にあったはずの物価目標達成がなされていないことをどのように解釈すべきなのか。

 今回の生活水準の改善は日銀の過度の金融政策によるものではない。まったくないとはいえないが、負債の多い企業や、なにより国の財政が助かっており、その意味での不安は後退しているといえるかもしれない。しかし、それはつまり我々が本来収入として得られるはずの利息収入が犠牲になっていると思えば、低金利政策そのものにより我々の消費が押さえ込まれているとの解釈もできよう。

 なにより物価が低位安定していることそのものも、我々の生活の満足度に繋がっているのではなかろうか。伸びは緩やかながらも賃金の伸びが改善し、物価が抑えられていれば当然、生活の満足感に繋がる。デフレを解消しない(物価が2%に上がらない)と景気は回復せず、我々の生活も豊かにならない、わけではない。

 いったい日銀は異次元緩和で何をしようとしていたのか。今回の「国民生活に関する世論調査」だけで判断すべきではないとは思うが、異次元緩和の前提にあったものが本当に正しいものであったのか。それをしなければ現在の生活満足度は得られなかったのか。異次元ではなく通常の緩和の延長線でも現在の環境は維持できたのではなかったのか。アベノミクスによる円高調整と株高をもってその成果とするのも勝手ではあるが、それがどれだけアベノミクスによるものだったのかついても検証する必要もあるのではなかろうか。少なくとも現在の環境がアベノミクスによってもたらされたものと結論づけることには無理があると思う。


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by nihonkokusai | 2017-08-29 10:04 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクスに相当な成果があったとする見方への疑問

 10日の日経新聞の大機小機に次のような記述があった。

 「アベノミクスの4年半を振り返ると、景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げたと評価できる。非伝統的な金融政策が威力を発揮したといえる。」

 2013年4月に安倍政権の意向を汲んで決定されたのが、日銀による大胆な緩和策、量的・質的緩和策である。これは異次元緩和とも称され、出口政策のことなどはおかまいなく、大胆に国債を大量に買い入れて、マネタリーベースを増加させて、物価目標を2年程度で達成しようとしたものである。

 中央銀行の金融政策は、あくまで金融市場を通じて経済や物価に働きかけるものである。その甲斐あってか長期金利は低位のまま推移し、マイナス金利政策により一時マイナス圏にまで低下した。外為市場にも働きかけた格好となり、ドル円は急減に上昇し、これが株高を誘発した。

 しかし長期金利は抑えられても、外為市場での円安に対する働きかけは一時的なものとなった。財務省が管轄の為替介入も実施されず、日銀の大胆な緩和策により、欧州不安の後退のタイミングで、大きな円買いポジションがひっくり返されての投機ポジションを含む、一時的な円安にすぎなかった。

 それでも雇用は大きく改善している。物価も一時のマイナスからプラスを回復している。景気についても低空飛行ながら改善している。それは果たして日銀の異次元緩和による効果と言えるのだろうか。

 原因と結果を結びつけるには、その間にある経路についてもしっかりした説明が必要になろう。アベノミクスの大きな柱となっていた日銀の異次元緩和は、どのようにして雇用の回復に影響したのか。大きな金融経済危機の後退含めた海外要因、さらには2020年のオリンピックを睨んだ国内要因など、日銀の金融政策以外の要因を除いて、金融緩和効果がどれだけ残っているといえるのか。

 そもそも日銀は物価目標を達成させることで、デフレを解消させ、それが景気回復要因となり、雇用も改善し、賃金も上昇するというシナリオを描いていたのではなかったのか。

 肝心の物価目標2%がまったく達成の兆しがないことは、それはつまりアベノミクスの中心となっていたリフレ政策が雇用を含めて景気を改善させるというシナリオそのものに間違いがあった可能性はなかったのか。

 アベノミクスが景気回復と脱デフレという面では相当の成果を上げたと評価するのも勝手ではあるが、非伝統的な金融政策が威力を発揮したとの結論はどこからくるのか。少なくとも物価目標を達成していないという事実はどのように評価するのか。

 安倍政権の支持率低下には、いろいろな要因があると思われるが、そのひとつとしてアベノミクスという経済政策への疑問も含まれているのではなかろうかと思う。当初は華々しく見えたものが、日銀は無理に無理を重ねる結果となっており、むしろその副作用も意識されつつある。そのあたりも支持率に影響を与えていると見てもおかしくはないと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-08-11 09:27 | アベノミクス | Comments(2)

トランプ政権の減税策に過度の期待は禁物か

26日にムニューシン財務長官とコーン国家経済会議(NEC)委員長は記者会見で、トランプ政権の大型税制改革の基本方針を発表した。

法人税制改革では、連邦法人税率を35%から15%に引き下げるとし、約30年ぶりの大型減税を目指す。米企業が海外に保有している利益約2兆6000億ドルに対する1回限りの課税も提案された。輸出を免税して輸入を課税強化する「法人税の国境調整」は今回は導入が見送られた。

個人税制は最高税率を39.6%から35%に下げ、7段階ある税率構造も10%、25%、35%の3段階に簡素化する。基礎控除も2倍に引き上げて低中所得層の減税幅を広げる。主に富裕層にかかる相続税は廃止すると明記された。株式などへの譲渡益に課税するキャピタルゲイン税は税率を23.8%から20%に引き下げる。

ムニューシン長官は「われわれはできるだけ迅速に動き、年内に実現させる決意だ」と語ったそうだが、米国では税政の立案・決定は議会に権限があり、ホワイトハウスには法案提出権はない。トランプ政権は29日に発足100日を迎えるが、今回の税制改革案の発表はその実績づくりとの見方が強い。トランプ政権のスタッフもいまだ固まっておらず、財政規律を重視している議会との調整に対しても不透明である。

ムニューシン長官は「目的はアメリカの企業の競争力を世界で最も高くすることだ。GDPの伸び率を3%かそれ以上に戻すことができる」と述べたそうだが、減税分のカバーはどうやら3%成長が維持されることが前提となっているようである。減税によって3%成長が果たして維持されるのかとの疑問も残ろう。

成長力を促すためとして、FRBの出口政策にともなう利上げに対してトランプ政権が今後牽制してくることもありうるか。日本でもアベノミクスの前提が日銀の異次元緩和による物価目標達成であった。減税にしろ金融緩和にしろ、それが予想された経済成長を促すことができるのかは疑問であるのは、日本の事例を見ても明らかである。

今回の減税策の発表を受けての米国市場はドル安、株安、債券高との反応であったが、それほど大きく動いたわけではない。市場は現実としてあまり過度の期待は抱いていなかったとみられ、こんなものだろうとの反応であったかに思われる。


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by nihonkokusai | 2017-04-28 09:56 | アベノミクス | Comments(0)

トランプ相場が失速した背景を探る。アベノミクス相場との類似性

2012年11月あたりからのドル円や日経平均株価の急速な上昇は、アベノミクスによるものとされた。リフレ政策を掲げた安倍自民党総裁は12月の衆院選で政権を取り戻し、これがきっかけとなって相場が大きく動いた。しかし、相場が動いた背景にはそれまでの急激な円高とそれに伴う株安の反動という側面が大きかった。あくまでアベノミクスという政策そのものが相場を動かしたのではなく、それをひとつのきっかけとしてドル円や東京株式市場でのショートカバーの動きを強めた。ヘッジファンドなどがそれを先導したとされている。

昨年11月からのいわゆるトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた市場の値動きも、この2012年11月からのアベノミクスと似通った動きとなっていた。トランプ相場もトランプ大統領の経済政策などへの期待によるドル高、株高との見方が強かった。しかし、これもまたアベノミクス同様に反発するエネルギーが溜まっていたことが相場を大きく動かしたといえる。

昨年当初の世界の金融市場は大荒れとなっていた。中国を中心とした新興国経済への不安感や原油安により、いわゆるリスクオフの動きを強めた。たとえばドル円でみると、2016年初に120円台にあったのが、6月末には100円割れとなった。これは新興国リスクに続いて、今度は昨年6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まったことが大きなショックとなったためである。しかし、英国ショックは一時的なものに止まり、さらに不安視された米大統領選挙でも予想外のトランプ氏の勝利はリスク要因というよりも期待要因に変化した。

ドル円は米大統領選の結果、101円台に一時下落したがそこから切り返し、12月15日には118円台に乗せた。実はドル円に関してはここでピークアウトしている。

また、米長期金利も大統領選挙前の1.8%台から12月14日に2.60%近くに上昇したが、この2.6%が壁となった。米長期金利については3月FOMCでの利上げ決定もあり、3月に再度2.6%台をつけるが、やはり跳ね返されている。

米国株式市場に関しては3月1日までは三指数ともに過去最高値を更新するなど絶好調となっていたが、ここから上値が重くなっている。3月1日のトランプ大統領の演説に新鮮味はなく具体性も欠くなどしており、このあたりから期待が剥げつつあった。相場の先導役のひとつとなっていたゴールドマンサックスの株価動向をみるとダウ平均などよりも、ピークアウト感が伺えるようなチャートとなっている。

そして昨年のリスクオフ相場の大きな要因となっていた原油先物の動きについては、すでに昨年2月あたりでボトムアウトしており、WTIは30ドル近辺から6月に50ドル台を回復した。その後売り買いが交錯するが、11月の米大統領選挙を受けて今年初めに55ドル台に上昇した。しかし、ここにきて47ドル近辺まで下落している。

これら一連の動きを見る限り、ひとまずトランプ相場は、アベノミクス相場と同様に原動力となったショートカバーのような動きが収まったことで、ピークアウトした感がある。ここからはあらたな材料を改めて模索するような展開となりそうである。


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by nihonkokusai | 2017-03-24 09:22 | アベノミクス | Comments(0)

トランプ相場の背景にあるポスト・グローバル危機

 金融市場、金融相場の世界では、ある言葉が流れの変化を象徴することが多い。昨年の米国大統領選挙の結果を受けての「トランプ相場」とか「トランプラリー」と呼ばれるものもそのひとつである。

 日本でも「アベノミクス」と呼ばれた用語が相場に限らず、日本全体に何か大きな変化をもたらせたかのように受け止められている。それより少し前の「欧州の信用不安」や「リーマン・ショック」も同様に百年に一度と呼ばれた世界の金融経済危機を象徴する用語となっていた。

 ただし、注意すべきはこれらの用語が一人歩きしてしまい、あたかもトランプ氏や安倍首相の登場が、金融市場の流れを突然変えてしまったかのような見方をしてしまうことである。

 「リーマン・ショック」という用語は英語にはない。いわゆる和製英語である。英語では「the financial crisis」とか呼んでいるようである。これは2007年のサブプライム住宅ローン問題がきっかけとなり、ある種のバブル崩壊が発生した上に、金融商品のリスクの行方が広範囲に拡大していたことで、金融バブルの崩壊とも言えた。その象徴的な出来事のひとつが、リーマン・ブラザーズの破綻であった。

 「アベノミクス」についても、安倍首相のリフレ政策への発言は、あくまでひとつのきっかけにすぎない。「リーマン・ショック」のあとの「欧州の信用不安」の拡大で、かつてないほどのリスク回避の動きが極まり、それが解消されつつあったタイミングで出てきたのがアベノミクスである。そのため急激な円安株高が起きたが、リフレ政策で物価目標は達成されていない点だけをみても、物価を上げるはずのアベノミクスは成功したわけではなく、タイミングの問題とも言えた。

 アベノミクスと呼ばれた現象の背景にあったのが、世界の金融市場を揺るがした大きな危機からの脱却であり、それを象徴するのが米FRBの正常化に向けた動きとなった。しかし、日銀はアベノミクスに引っ張られ、ますます深みにはまり、ECBも異常な緩和を続けている。これは流れを読み切れていなかったともいえるのではなかろうか。物価の低迷は金融政策が足りなかったからというわけではない。原油価格の持ち直しで、それも次第に解消されつつある。

 そんなタイミングで出てきたのがトランプ相場である。2016年12月のFRBによる二度目の利上げは遅かったぐらいではあるが、2016年に入っての中国など新興国経済への懸念と原油安によるリスク回避の動きなどが、米再利上げを躊躇させた。しかし、このリスク回避の動きの大きな要因はそのFRBの利上げであり、過剰流動性の後退と原油安が新興国に与える影響が危惧されたと言える。しかし、原油価格は底を打ち、新興国経済もそれほど悪化することはなかった。

 さらに予想外ともいえる国民投票による英国のEU離脱決定も、世界の金融市場を揺るがしかねないとされた。しかし、これもギリシャ危機に比べると市場は比較的冷静であった。ドイツ銀行やイタリアの銀行の問題も懸念されたが、すでにこのような危機に対してはブラックスワンとはなっておらず、危機を防ぐための手段も講じられていたことや、過去の経験も生きたことで、これらによるリスク回避の動きも一時的なものとなっていた。

 もちろん今年、2017年にも新たな危機が生じる可能性はある。その火種もある。しかし、2007年から2012年あたりにかけての金融経済危機を乗り越え、ポスト金融経済危機の時代に移りつつあるとの見方もできよう。それがここにきてのトランプ相場と呼ばれる世界的な株高、長期金利上昇の背景にあるとも言えるのではなかろうか。象徴的な言葉に惑わされることなく、背景にある流れについても認識しておくことも重要だと思われる。

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by nihonkokusai | 2017-01-05 09:43 | アベノミクス | Comments(0)

菅官房長官と黒田日銀総裁による円安政策とは何か

 27日の日経新聞の一面に、気になる記事というかコメントがあった。これは菅官房長官とのインタビューのなかで、為替に関して、円安となっているのは私たちが為替の危機管理をちゃんとやっているからだ、との発言である。具体的な対応については、「そこは色々と。私たちへの意識は強く、中途半端な決断ではない」と官房長官は発言していたのである。

 これはアベノミクスの元締めとも言える人物からの発言だけに、「色々と」とは何をしたのかはたいへん気になる。菅官房長官など官邸関係者が見ているのはドル円と日経平均が主だとみられる。官邸がたとえば為替に絡んで米国政府やFRBに直接働きかけをしたとは思えない。米大統領選挙についても結果が出てから慌てて首相がトランプ氏に会いに行ったぐらいで、事前に何か準備がされていたとは思えない。

 官邸による危機管理、中途半端な決断ではないものとはいったい何であろうか。トランプラリーが起きる前の円高の要因は、中国をはじめとする新興国経済の減速への懸念によるリスク回避の動きによるものであった。その後、英国のEU離脱などによってさらにリスク回避の動きを強めたが、これらは日本政府がどうのこうのできる問題ではない。

 トランプ氏の大統領選の勝利をきっかけとした円安ドル高も、日本が牽引したわけでは当然ない。リスク回避の反動のきっかけにトランプ氏の登場がなったわけでもあり、素直な市場の動きとも取れる。

 それでも「中途半端な決断ではない」ものとしては、ひとつ該当しそうなものがある。日銀が9月に決定した長短金利操作付き量的・質的緩和である。11月の消費者物価指数はコア指数で前年比マイナス0.4%となったが、日銀がいくら異次元緩和をしようとも物価は結果として目標には全く達していない。アベノミクスの主役であった金融政策は目標達成には何ら効果を及ぼさなかったこととなるが、それに危惧したのは日銀だけでなく、官房長官も同様であろうか。

 今年9月の日銀の総括と長短金利操作付き量的・質的緩和の決定に関しては、これまでの経緯からみても菅官房長官がまったく関与していなかったとは思いづらい。特にアベノミクスについては当初から物価そのものよりも、為替というか円安と株高が意識されていたはずである。特に長短金利操作付き量的・質的緩和についても、重点が量から金利に移行するため、リフレ派の意向を汲んでいるとみられる菅官房長官にとっては「中途半端な決断」ではなかったのかもしれない。ところがこれがトランプラリーの結果、功を奏する格好となった。

 黒田日銀総裁は12月26日の講演において、海外経済の好転が明確になっていくにしたがって、日本の長期金利にも上昇圧力がかかってきているものの、10年物金利は「ゼロ%程度」で安定的に推移しており、このことは「イールドカーブ・コントロール」が所期の効果を発揮していることを示しているとしている。これにより、グローバル経済の回復のモメンタムを、わが国経済にとってより大きな「推進力」に増幅していくことが可能になるとしている。

 何ということはない。直接触れていないが、日米の長期金利の較差の広がりにより円安効果を生み出すことを指摘しているとみられる。この見方を菅官房長官は共有しているのではないかと思われるのである。

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by nihonkokusai | 2016-12-28 09:59 | アベノミクス | Comments(0)

量の政策の誤りを認めた浜田内閣官房参与

 15日の日経新聞に浜田宏一内閣官房参与とのインタビュー記事が掲載された。このなかで浜田氏は次のような発言をしていた(以下、日経新聞朝刊より引用)。

 「アベノミクスの『第1の矢』では岩田規久男日銀副総裁のインフレ期待に働きかける政策が効いた」

 「国民にとって一番大事なのは物価ではなく雇用や生産、消費だ。最初の1、2年はうまく働いた。しかし、原油価格の下落や消費税率の5%から8%への引き上げに加え、外国為替市場での投機的な円買いも障害になった」

 「私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」

 2012年11月にスタートしたアベノミクスと呼ばれた大胆な金融緩和を中心とした政策は、インフレ期待に働きかける政策が効いたものの、原油価格など外的要因の障害により物価上昇が阻まれたかのような分析である。このあたりは日銀の主張と一致する。しかしである。少なくとも一時的には効いたとした量による政策効果をここにきて否定してきたのである。

 学者があらたな事実が発覚したことで、考え方をあらためるということは通常であれば、当然あってもしかるべきということになろう。しかしである。浜田氏はその間違っていた政策を政府に提言した上で実行に移されてしまった。いわば実証もされておらず、むしろ以前の日銀を中心にリフレ政策は誤りであると認識されていたものを、アベノミクスというかたちで実行に移してしまった。それが4年経ってやっと浜田氏がその誤りを認める事態となった。浜田氏は次のような発言もしている。

 「(著名投資家の)ジョージ・ソロス氏の番頭格の人からクリストファー・シムズ米プリンストン大教授が8月のジャクソンホール会議で発表した論文を紹介され、目からウロコが落ちた。金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるし、マイナス金利を深掘りすると金融機関のバランスシートを損ねる。今後は減税も含めた財政の拡大が必要だ。もちろん、ただ歳出を増やすのではなく何に使うかは考えないといけない」

 いまさら目からウロコもないであろう。そもそも金利がゼロに近くては量的緩和は効かなくなるというのもおかしい。政策金利がゼロ近くになってしまったのでその代替手段として出てきたのが量的緩和ではなかったのか。ただし、量を増やせば物価が上がるという波及経路に関しての認識が誤っていたことも、ある意味立証されたということになる。

 しかし、だから減税も含めた財政の拡大が必要だという理論も本当に正しいのか。リーマン・ショックや欧州の信用不安に対して、日米欧の中央銀行が大胆な金融緩和を実施したのは、財政出動に限界が来ていたためである。金融緩和がダメなら財政出動という考え方はあまりに安易すぎる。

 浜田氏がデフレはマネタリーな現象だとの説の誤りを認めても、日銀が踏み込んでしまった異次元緩和は簡単に止めることはできない。ブレーキすらも掛けることが難しいことで、それとなく買入額の縮小も可能となる「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という絡め手を打ち出した。しかし、これにも「オーバーシュート型コミットメント」を付けないとリフレ派の賛同は得られなかった。「オーバーシュート型コミットメント」とは安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するというものであり、これは浜田氏が認めた間違った政策を強く押し進める姿勢を示してしまったものである。

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by nihonkokusai | 2016-11-16 09:46 | アベノミクス | Comments(0)

アベノミクス相場とトランプ相場の相違点

 11月14日に発表された日本の2016年7~9月期の国内総生産(GDP)一次速報値は実質で前期比0.5%増、年率換算では2.2%増となった。輸出の伸びがけん引した格好となり事前予想も上回り、プラスは3四半期連続となった。これを見る限りにおいて日本の景気はしっかりしている。

 これに対して足元の物価は、指標となっている消費者物価指数(除く生鮮食料品)は前年比でマイナスが続いている。これでは、日銀の大胆な金融政策が物価上昇に働きかけて、それにより景気が回復しているとの説明には無理があろう。日本だけではなく欧米の景気もしっかりしている。これについて、日米欧の大胆な金融緩和の効果によるものとの説明は無理がある。低金利による効果がまったくなかったとは言えないが、それはあくまで時間を稼ぐ手段であり、そのほかの要因を見る必要があろう。

 2012年11月あたりからの東京市場での急激な円安株高とそれを受けての景気の回復、物価の一時的な上昇は「アベノミクス」と呼ばれた。その大きな要因として日銀の大胆な金融緩和が挙げられている。しかし、その後の特に物価の推移を見てもわかるように、日銀の金融政策が直接寄与したとの見方には無理がある。

 リーマン・ショックと呼ばれた米国の金融市場を揺るがした出来事から、ギリシャの財政不安をきっかけとした欧州の信用不安とユーロというシステムの危機は、その波乱の中心となっていた金融市場を沈静化することによって収まってきた。それに関しては日米欧の中央銀行による非伝統的な金融緩和が鎮静剤として功を奏したことは確かである。そしてアベノミクスについてもリフレ政策宣言がマーケットを震撼させるきっかけとなったことも確かであるが、あくまでそれまでの急激な円高株安の反動によるものとの説明のほうが素直であろう。

 そこに消費増税前の駆け込み需要、便乗値上げなども絡んで、円安効果とともに物価上昇に寄与したが、金融緩和そのものの直接効果があったわけではない。あったとしても市場に対してのアナウンスメント効果に過ぎない。だから日銀の異次元効果に対する分析も外為市場、株式市場、債券市場を通じた分析とならざるを得なかった。個人や企業に直接影響を与えたものとは言いづらい。

 そして今回のトランプ相場であるが、これによる金融市場への影響の結果としては、欧米の長期金利の上昇、株式市場の上昇、そしてドル高といったかたちで現れた。ただこれは、その流れを加速させたきっかけと認識された面がある。

 今年に入っての中国などの新興国経済の悪化懸念とそれによる原油価格の下落が、日米欧の金融市場でリスクオフの動きを加速させた。その後、今度は英国のEU離脱というショックが襲った。しかし、いずれもリーマン・ショックやギリシャ・ショックのような深刻な事態に陥ることはなかった。新興国経済も何とか持ち直す動きを見せている。これについては日経新聞電子版の記事が、CRB工業原材料価格指数の上昇による新興国経済の持ち直しを指摘している。CRB工業原材料価格指数の上昇が米長期金利の背景のひとつとなっている可能性がある。

 原油先物については、WTIが節目とされた50ドル台を一時回復するなど、こちらも持ち直してきていた。ここにきてOPECの減産合意への不透明感から下落しているが、それでも40ドル台にあり、一時の30ドル割れからは回復している。

 つまり百年に一度とされたショックからやっと解放され、それがアベノミクスを生んだ。その後も小規模なショックはあったが、世界の景気は底堅いものとなり、日米欧の異常ともされた金融政策には限界が意識されるとともに、変化も生じてきた。そんななかにあってのトランプ氏の登場は、金利を抑制するという懸念より、今後の金利上昇を見据えた期待感も強まったなかに出てきたものとも言える。アベノミクスは流れの変化時にそれを加速させた。トランプ氏の登場は、その政策の善し悪しはさておいて、異常な低金利時代の終わりを告げるようなきっかけとなることを予感させるのである。

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by nihonkokusai | 2016-11-15 09:54 | アベノミクス | Comments(0)
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