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カテゴリ:為替( 17 )

通貨安を仕掛けるには無理がある

 今回の中国人民元の引き下げについて、作為的に人民元の下落を狙ったものとの見方もできるが、そうせざるを得なかった事情も存在する。人民元についはドルペッグ制を取っている。つまりドルに連動する仕組みとなっている。そのドルがFRBの利上げ観測で上昇し、それにより人民元も引き上げられた格好となり、それでなくても減速傾向にあった中国経済の追い打ちを掛けた。IMFが設定している特別引き出し権(SDR)の構成通貨入りを目指していたこともあり、本来であれば元の引き下げはしたくはなかったところが、やむを得ず引き下げざるを得なくなったとみられる。つまり今回の元の引き下げは、そうせざるを得ない状況に追い込まれたとの見方ができる。

 通貨安戦争といった用語もあるが、通貨安は自国の経済を有利にさせるため作為的に引き下げることは実は容易ではない。日本はアベノミクスで円安を招いたとか、リーマン・ショックの頃に日銀の政策が甘かったことで通貨戦争に負けて円高を招いたとの見方も一部にあるが、それは違うと思う。

 そもそも外国為替市場は相手国が存在するものであり、変動相場制を取っている限りはその水準は市場で決定される。自国の経済や物価のために通貨を上げ下げして操作しようとしても、市場や相手国は簡単にそれを許さない。

 通貨安にも当然、弊害がある。今回の元切り下げによる市場の混乱のような事態も招きかねない。また、過度の円安となれば、輸出企業以外には材料費の高騰等などのマイナス要因があるとともに、個人にも商品の値上げ等で不利益を被る。

 通貨は介入等によって操作は可能との見方もいまだあるようだが、それは疑問である。イングランド銀行はジョージ・ソロスに負けているし、スイスの為替介入も途中であきらめざるを得なくなった。日本の財務省による過去の介入も決してうまくいったようには思えない。

 リーマン・ショックの際の通貨の動きについて、日米欧の金融緩和の度合いの違いで説明することもかなり無理がある。リーマン・ショックが起きたのは米国であり、サブプライムローン問題を起点に米国などの大手金融機関の経営危機が世界の金融市場を混乱させた。これは中央銀行の政策うんぬんなどではなく、そもそもドル売り要因である。その後の欧州の信用危機は同様にユーロ売り要因となる。つまり中央銀行の政策とかではなく、ドル、ユーロに次ぐ通貨として円が過度に買われたのはリスク回避のためである。危機が後退しつつあるとき、過度に買われすぎた円が、安倍総裁の輪転機ぐるぐる発言を「きっかけ」として反落した。これは日銀が行動を起こしたからではない。

 確かに二度目の異次元緩和の際には再び円安が進行したが、この際には円売りというよりドル買いが存在した。為替市場ではその時々により短期的に反応する材料が異なるが、この際には中央銀行の金融政策の行方が最近の注目材料となっていたことは確かでそれは否定できない。ただし、FRBの利上げ観測によるドル買いに日銀の異次元緩和の二段目が、タイミング良く重なったとの見方が素直ではなかろうか。

 中央銀行の金融政策に為替市場関係者の目が向けられている際には、短期的に追加緩和で通貨安を導くことはできるかもしれないが、それをしてしまうと相手国からクレームが付くことも予想される。政府や日銀が為替のコメントについて神経質になっているのは、それも要因とみられる。

 為替介入もトレンドやポジションの傾きを意識したものであれば、効果的なこともあるが、通常は逆張りのようなケースも多くなり、市場参加者の格好の餌食となってしまうことが多い。

 このように自国のために通貨安を招く政策はかなり無理がある。元安に対抗して日銀も追加緩和を行って円高を阻止すべきとの意見もあったようだが、日銀の金融政策はそもそも為替水準を操作させるものではないし、仮にそのために緩和を行っても、相場である以上はそれがうまく行く保証もない。

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by nihonkokusai | 2015-08-14 09:23 | 為替 | Comments(0)

円安で困るのは誰なのか

 日銀の黒田総裁は6月10日の衆院財務金融委員会で民主党の前原氏への答弁において、「実質実効為替レートがここまで来ているということは、ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と語った。実質実効為替レートは昨年、すでに1973年以来、42年ぶりの水準となっている。何を今更との発言であったものの、市場は「ここからさらに(実質実効為替レートが)円安に振れるということは、普通に考えればありそうにない」と()の部分を無視して反応してしまったのか。黒田総裁は「米連邦準備制度理事会(FRB)が金利引き上げプロセスに入るから、今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しい」とも発言していた。

 この黒田総裁の発言をきっかけに10日のドル円相場は124円台半ばから122円台半ばに急落したとなれば、市場の早とちりとなろう。黒田総裁は16日の参院財政金融委員会において、10日の衆議院財務金融委員会での実質実効為替レートに関する発言について「名目為替レートへの評価や先行きについて申し上げたわけではない」との認識を示した。黒田総裁は、「あくまで(実質実効為替レートについての)質問があったので、それに沿って理論的な説明をした」と指摘した。

 円安になって誰が困るのか。まずは一部の政治家が困る。米議会で環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の合意に欠かせない米大統領貿易促進権限(TPA)法案の審議が重要な局面を迎えていたことで政治的な配慮があった可能性もある。

 それよりも6月17日のFOMC後の会見で、イエレン議長は「ドル相場の上昇にもかかわらず、年内にある程度の引き締めを行うことを正当化するほどに経済は良好に推移するとFOMCは見ている」と発言していたが、利上げを控えて思惑的なドル高については牽制したいところが本音であろう。特に昨年10月の日銀の異次元緩和パート2ではFRBのテーパリング終了にタイミングを合わせた格好となり、その後のドル円の110円割れから120円台の上昇を招いている。さらに今年1月のECBの量的緩和の狙いはユーロ安であった。

 日本の消費者物価指数は5月はコア指数プラス0.1%となっていたが、いずれマイナスになる可能性がある。年末に向けての回復を期待しているとしても、2%という物価目標にはほど遠い。その物価上昇には円安が直接的な影響を与えうる。それにも関わらず、FRBが金利引き上げプロセスに入るから今後、さらに円安・ドル高が進むと決めつけるのは難しいと黒田総裁の発言には違和感を覚える。日銀の物価目標達成のためにはアナウンスメント効果を狙い、FRBの利上げに向けた動きと日銀の大胆な金融緩和は円安・ドル高要因にもなりうる、との発言があったとしてもおかしくはない。

 この背景には、今年1月に「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」とし、日本の為替政策を「注視し続ける」と述べた米国のルー財務長官の存在に加え、イエレン議長あたりからも何かしらの円安への牽制の動きがあったみてもおかしくはないのではなかろうか。

 円安は輸入品の価格上昇により中小企業や我々の消費にも悪影響を与えるが、それ以上に米国政府やFRBにとってもこれ以上の円安は望ましくないとの認識ではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-06-27 09:12 | 為替 | Comments(0)

ドル円が124円台を付けた要因とその影響

 5月26日の引け後、外為市場ではドル円が年初来高値であり、テクニカル上でも大きなポイントとなっていた今年の高値122円04銭を抜けてきた。さらにショートカバーを誘うような仕掛け的なドル買い円売りが入り、ストップロス等も巻き込み、この日の9時半頃には123円台を回復した。27日のニューヨーク市場では2007年6月以来の124円台を一時付けた。
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 前回、124円台をつけていた2007年にはいったい何が起きていたのか。2006年半ばに、それまで高騰を続けていたアメリカの住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなるなど、アメリカ住宅バブルが崩壊し、信用力の低い個人向けの住宅資金貸し付けであるサブプライム・ローンで焦げ付きが増加した。

 サブプライム・ローン問題による最初の危機は欧州で発生した。2007年8月9日にドイツ連邦銀行は、IKB産業銀行がサププライムでの投資に伴う損失発生に対しての救済策を協議するため、緊急会合を開催した。さらに同日、仏銀最大手BNPパリバは傘下ファンドの償還停止を発表し、次はどこかとの連想も加わり、欧州銀行向け資金の出し手が急速に限られてしまい、これはパリバ・ショックとも呼ばれた。

 アメリカのダウ平均は、2007年10月に過去最高値の14164ドルの高値をつけたが、危機の発生により、その後は下落基調となった。

 つまり世界を揺るがした最初の危機の発生が2007年に起きていた。日本では「リーマン・ショック」と呼称されているが、米国初の世界的な金融経済危機の発端は2007年に入り顕在化したサブプライム・ローン問題であった。

 米国のダウ平均は2007年10月につけた過去最高値はすでに抜いているが、ドル円も本当の意味での危機以前の水準に戻ったとは言えまいか。日米欧の金融政策の正常化は、米国で始まろうとしているところだが、ドル円は先に危機前の水準に戻ったと言える。

 今回のドル円の動きの背景は過去のチャートも意識した上で、テクニカルなドルの買い戻しも誘った動きとみている。ただし、その理由付けとして、あらためてFRBと日銀の金融政策の方向性の違いも意識された可能性はある。FRBは早ければ9月にも利上げというかたちでの正常化の道を探る。参考までにイエレン議長は8月27~29日に開かれるジャクソンホール会合を欠席するそうである。

 ただし、FRBの年内利上げはかなり織り込まれており、日銀の出口が見いだせない状況も市場は理解しているはずで、これを材料にして、さらなる円売りドル買いは仕掛けづらいのではなかろうか。ドル円は120円台前半あたりが居心地が良く、当面は値動きは荒いものの方向感の乏しい動きを予想する。

 今回の123円台に乗せた円安による影響については、輸出企業は恩恵を被ることになろうが、海外への生産移転も進み以前ほどは景気に与える影響は大きくない。むしろ、燃料などの輸入品の値上がりにより、国内の中小企業や家計に与えるマイナスの影響も考慮する必要がある。

 日銀にとっては原油先物が60ドル近辺に上昇した上での円安となれば、これによる物価の上昇も期待したいところではなかろうか。しかし、2012年11月のアベノミクス登場時の円安に比べるとインパクトは小さく、その効果も限定的と思われる。

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by nihonkokusai | 2015-05-28 09:18 | 為替 | Comments(0)

ここにきての円高回帰の要因

 新年度入りしてからの東京株式市場は大きく下落し、4月1日に日経平均は262円安となり、2日には一時12000円割れとなっていた。この下落の背景には、期初の売りとかが指摘されている。当然その影響も大きいと思うが、それだけではないと思われる。

 そのひとつの要因として、1日に発表された日銀短観がある。この日銀短観によると、大企業の製造業DIはマイナス8ポイントとなり、前回の調査を4ポイント上回り、3期ぶりの改善となった。海外経済の回復や、円安により輸出関連企業の業績改善などが背景にある。アベノミクスの影響も少なからずあったとみられ、3か月後の先行きについても、大企業の製造業で7ポイント改善しマイナス1ポイントとなっていた。

 ところがNHKなどでも報じられたが、大企業の経常利益は、今年度、3年ぶりに増加に転じる見通しとなった一方で、設備投資計画は4年ぶりの大きな減少となり、景気の先行きにまだ慎重な企業の姿勢が反映される格好となった。さらに大企業の製造業が想定する為替レートの平均は今年度は85円22銭で、昨年度に比べて5円近く円安になっているものの、93円近辺にいる現在の水準からみて、かなり抑え気味の予想となっている。

 今後は再び円高に振れることも視野に入れている可能性がある。現実に外為市場の動きをみると、円安の動きはすでにブレーキが掛かり、円高が進みそうな地合になりつつある。

 2012年7月にECBのドラギ総裁はユーロ存続のために必要ないかなる措置を取る用意があると表明し、欧州の信用不安を後退させようとした。9月のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を打ち出し、これをきっかけに欧州の信用不安が後退した。償還期間が1~3年の国債を無制限で買い入れるとしたのだが、実際には買入はされずその期待感だけで市場は反応した。

 このようにして、昨年の9月あたりから外為市場では円高調整が始まった。その後、11月あたりから円安の速度が加速したのは、アベノミクスをきっかけとしてヘッジファンドなどが円売りを仕掛け、流れが一気に加速したことによる。ところが、この円安の流れはユーロ円でみると今年2月上旬、ドル円でみると3月半ばあたりでいったんピークアウトした。

 これには2月12日にG7が緊急共同声明を発表し、為替レートを政策の目標にはしないと明記したことがひとつのきっかけになったと思われる。少なくとも日銀による外債購入というかたちでの円安誘導は封印された。そして、3月に入るとギリシャ財政危機の影響でキプロスの金融危機が深刻化した。キプロス政府は3月16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始したことなどがきっかけとなり、一時不安感も強まった。つまりアベノミクスの手段のひとつが封じられ、さらに円安の根本的な要因となっていた欧州の信用不安が再燃したことで、円安にブレーキが掛かり、再び円高の動きが出てきたといえる。

 もうひとつ、アベノミクスへの過度の期待が剥がれてきたことも、要因としてあげられよう。アベノミクスは三本の矢というが、一本目の次元の違う大胆な金融緩和という期待に負うところが大きい。実際、日銀総裁・副総裁人事では安倍首相の意向に沿う人物が選ばれた。ところが、新体制となって初の金融政策決定会合を控え、出てきた観測は次元はあまり違わず、これまでの路線の延長上にあるものばかりとなった。むろん、あまり大胆なことをすると財政ファイナンスと市場で認識されかねず、このあたりのバランスを取るのが難しく、現実にはあまり大胆な政策は困難であったはずで、このあたりも認識されての円高の動きの可能性もある。

 期待で動いた相場は、期待が後退してしまうと当然反動がくる。その期待感を維持させるにはどうしたら良いのか。そもそも期待だけでデフレが解消、というよりは成長率が上がり、雇用も回復し、賃金も上昇し、その結果として物価が上がるとの考え方そのものに、やはり無理があるとの認識も次第に出てくるのではないかと思われる。

アベノミクスを理解するための日銀入門

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by nihonkokusai | 2013-04-03 09:00 | 為替 | Comments(0)

昨年からの円安の流れの根底にあるもの

 日銀の正副総裁人事は政府による正式な提示、さらには国会の同意が必要となるが、日銀の白川方明総裁の後任にはADB総裁の黒田東彦氏、副総裁には学習院大学の岩田規久男教授と日銀から中曽宏理事を昇格させる方向で決まりそうである。

 いわゆるリフレ派というかアンチ日銀派とも呼ばれる黒田氏と岩田氏の起用により、アベノミクスへの期待があらためて強まり、25日にドル円は94円台をつけるなど円安が進み、日経平均も11600円台に乗せるなど東京株式市場も大きく上昇した。

 ところがイタリアの選挙の情勢が伝わると状況が一変し、ドル円は一時90円台、ユーロ円は118円台をつけるなど急激な円高が進行した。その後ドル円は92円台、ユーロ円は121円近くまでそれぞれ戻してはいるが、ここでいったん円安の流れは一服する可能性がある。

 昨年からの円安の流れの根底にあるのは、欧州のリスク後退によるものである。これは外為市場でのユーロそのもの動きや、スペインやイタリアの長期金利の動向などを確認すれば明白である。円高基調が変化していたところに、日本では安倍政権の登場で、次元の違う金融政策に対する期待が出たことで円安が加速した。そこにはヘッジファンドなどの動きも加わっていたが、これは流れに乗って仕掛けてきたと言える。いわばギリシャ・ショックの際にギリシャ国債をとことん売り込んだように、流れに乗れとばかりに今度は円売りの動きを強めたのである。

 この円安というか円高調整の動きは当然ながら国内では歓迎され、それにより株も買われた。政府関係者などからも為替に関する発言も相次いだ。ところが円高調整ならばしかたないとしても、円安に誘導するかのような動きに対しては、欧米などから懸念の声もあがり、それがG7とG20の声明という結果に繋がった。為替に関する責任者といえる麻生財務相はG7あたりから為替に関するコメントは一切控えるようになってきたことからも、そのプレッシャーの大きさが伺える。

 円の動きだけを見ると、アベノミクスへの期待という材料を元に仕掛け的な動きも入った事で、相場の変調が見極めづらかった。これに対し、たとえばユーロドルの動きをみると、あきらかに2月初めあたりからトレンドが変化していた。つまりユーロの買い戻しがいったん止まっていたのである。

 昨年、11月あたりからの外為市場の「ユーロ」や「米株」などの動きをみると、リスクオンの動きが続いていたことがわかる。これらは当然ながらアベノミクスへの期待が背景にあるわけではない。このリスクオンの動きにいったんブレーキが掛かり、今回のイタリア選挙が材料視され、再びリスクオフの動きが出たものと思われる。ユーロの信用不安は一時期よりは後退したことは市場のマインドを見ても明らかではあるが、完全に払拭されたわけではない。

 アベノミクスという言葉が一人歩きしているようだが、現実には安倍政権も日銀も何ら具体的な政策を実行しているわけではない。今年度の補正予算が成立したのは昨日26日であった。日銀が2%の物価目標を決めても本当に物価が上がる確証も、それに至る道筋も明らかにされているわけではない。つまりは期待感のみが先行している。これについては欧州の信用不安の沈静化にあたって、具体的に行動を起こさずとも政策を打ち出したことで市場に安心感を与えたドラギECB総裁の政策に似たものと言えるかもしれない。ただし、それぞれ絶好のタイミングであったためとも言えるのではなかろうか。

 欧州にしても本当に信用回復となるためには、もう少し具体的な行動も必要となる。イタリアの選挙の結果次第では財政再建の後退が意識され、再び不安感の方が強まる可能性がある。日本ではリスク後退による円安の流れをうまく捕まえたものの、欧州のリスク後退の流れが止まれば、円安の流れもそこでブレーキが掛かり、アベノミクスという魔法の言葉による効果も限定的になる。今後の為替の動きを見る上では、再び欧州の動向が焦点となる可能性もある。

 この流れのなかでの円債の動きについてだが、円安株高の最中でも円債は日銀の追加緩和期待による買いなどから強含みで推移している。5年債利回りはここにきて連日のように過去最低利回りを更新し、長期金利も0.7%を割り込んできた。今のところは、円債が大きく崩れる要因は見当たらない。債券先物も過去最高値を再度伺う位置にきている。ただし、このように売る材料が見当たらないという好環境そのものに、ある種のリスクも感じる。念のための警戒も必要かと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-02-27 09:15 | 為替 | Comments(0)

G7の緊急共同声明と米国の思惑

 昨日のコラムでG7による緊急共同声明の意味についてまとめてみたが、これにはどうやら米国の思惑も絡んでいるようであり、もう少し今回の緊急共同声明が出された背景について見てみたい。

 12日にこの緊急共同声明について、円の過度な動きに懸念を表明することがG7の目的だったとの匿名のG7筋による発言があった。匿名のG7関係筋が「G7声明は誤って解釈された。同声明は、円の過度な動きに対する懸念を示すものだった。G7は円の一方的なガイダンスを懸念している。日本をめぐる問題は、モスクワで今週末開かれるG20会議で焦点になる」と発言した(ロイター)。

 これに対し、中尾武彦財務官は13日午前に共同声明について、G7の一部当局者が匿名で円の行き過ぎた動きへの懸念を示唆したとの見解を示したことに対し、「匿名の発言についていちいちコメントしない」と述べたそうである(ブルームバーグ)。

 G7のご意見番とも言えるような人物からも、これに関して発言が出ていた。イングランド銀行のキング総裁は13日、為替に関するG7の声明は文字通りに受け止めるべきとの見方を示し、解釈しようとする動きがあることは遺憾だと表明した(ロイター)。キング総裁は会見で、「政府が国内経済成長を支えるために金融刺激措置を活用すれば為替相場に影響が生じる。こうした影響が及ぶのは容認すべきだ」と発言し、これは日本の政策を擁護する発言とも受け取れる。さらに「昨日、声明に署名した際、当局者と呼ばれる他の筋が声明発表前後に根拠のない説明を行い、声明で述べられていないことを主張するとは思いもしなかった」と述べたそうである。

 何故、これほど匿名とされる人物の発言が注視されるのか。相場が動いたのでマスコミが大きく取り上げただけなのか。ロイターの記事には次のようなコメントも添えられていた。

 「匿名のG7高官が声明は円の過度な変動への懸念を示唆したものだと語ったことについて、声明発表につながったやり取りに詳しい関係筋は、日本がすぐさまデフレ不況対策に理解が得られたとの認識を示したことへのいら立ちによるものだった可能性があると指摘した。」

 この匿名のG7高官からの声明はワシントン発だそうである。そうであれば、米国の高官という可能性が高くなる。その米国からG20に出席するのは、サインが特徴的なルー次期財務長官ではない。ルー次期財務長官は議会での承認を待っている段階であり、代わりにブレイナード財務次官が出席する。

 11日に会見したブレイナード次官は、積極的な金融緩和と財政出動を打ち出した安倍政権の経済政策について、「成長力を取り戻し、デフレ脱却を目指す日本の努力を支持する」と述べ支持する考えを示した。ただし、「財政、金融政策は自国の景気回復を目的に使われることが重要だ」としたうえで、「為替相場は市場が決めるというのは先進国間のルールだ」と述べ、通貨を安く誘導することを目的にする政策は認められないという考えを強調した(NHKニュース)。

 このブレイナード次官の発言は円安容認と受け止められたが、この発言や共同声明を円安容認とする解釈は誤りだとの指摘もあった(FT)。カーニー・カナダ中銀総裁も日本の当局が為替相場の特定の水準を目標としているとの懸念が「一部」出ているとして、「G7はこの件に関して討議した。週末のG20財務相・中央銀行総裁会議でも議題として取り上げられる見通しだ」と述べている。

 これらの状況から察するに、ワシントンの匿名のG7高官とは米国関係者であるとみられ、ブレイナード次官もしくはその関係者である可能性が高いのではなかろうか。

 それでは何故にこのタイミングで、米国が日本に対して警告を発してきたのか。もちろんG20の開催を控えてということもあろうが、発言がブレイナード次官を通してというところも気になる。これはつまり当然といえば当然ながら、ブレイナード次官が自らの考え方を単に述べただけとは思えない。たとえば前述のキング総裁の発言はイギリスを代表して述べたものというより、自らの意見との見方もできようが、ブレイナード次官の発言は米国政府を代表してのものであると思われ、匿名のG7高官の発言も米国政府の意向を反映したものではなかったかと思われる。

 そうなれば今回意識すべきはG20というよりも、来週の日米首脳会議ではなかろうか。緊急の共同文書も含め、事前に米国政府が日本政府に対して釘を刺してきたと言えるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-02-15 09:00 | 為替 | Comments(0)

G7の緊急共同声明に潜む意味

 15~16日にモスクワで開かれるG20を前に、「先進国として統一見解を示す狙い」(日経)から、G7は緊急共同声明をまとめた。その内容は下記の通り。

 「我々、G7の財務大臣・中央銀行総裁は、我々が長年にわたりコミットしている、為替レートは市場において決定されるべきこと、そして為替市場における行動に関して緊密に協議すべきことを再確認する。我々は、我々の財政・金融政策が、国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること、今後もそうしていくこと、そして我々は為替レートを目標にはしないことを再確認する。我々は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることに合意している。我々は引き続き、為替市場に関して緊密に協議し、適切に協力する。」(財務省のサイトより、仮訳)

 これについて麻生財務相は12日、記者団に「日本の政策がデフレ不況対策であり、為替相場に使っていないと各国から正式に認識された」と述べた(日経新聞)。ただし、この声明が出された背景には、安倍政権が打ち出した積極的な金融緩和策に対し、ドイツなどG7の一部の国から批判が出ていたことがある。「今の日本やアメリカなどの金融緩和策が、輸出を有利にする為替誘導ではないかといった懸念が出ていることから出されたもので、為替誘導を否定するとともに、一部の懸念を払拭したいねらいがあるとみられます」(NHKニュース)との解釈もあった。

 ところが緊急共同声明について、円の過度な動きに懸念を表明することがG7の目的だったとの匿名のG7筋による発言もあり、12日の欧米市場でこのような解釈の違いにより円相場は翻弄された。

 このあたりについて、カーニー・カナダ中銀総裁は、「インフレ目標を2%に設定した場合、国内的な結果を目標としているのであり、為替相場を目標としたものではない」と日本を擁護しているものの、日本の当局が為替相場の特定の水準を目標としているとの懸念が一部出ているとして、「G7はこの件に関して討議した。週末のG20財務相・中央銀行総裁会議でも議題として取り上げられる見通しだ」と述べたそうである(ロイター)。

 共同声明の文面からは明らかにされてはいないが、そもそも声明は当然ながら、そこに至る過程が示されているわけではなく、玉虫色の表現も使われる。今回の共同声明がそもそも日本に対する懸念がひとつの発端になっていたとすれば、あまり楽観的な解釈はできない。

 麻生財務相は為替市場での円安はデフレ不況のために打ち出した政策の結果であり、目的ではないとの考えを示していたが、そのような立場を取れば、確かに日本は為替誘導はしていないとの解釈もできよう。それに対して海外からは、結果としても何であれ、安倍政権の政策には円安誘導が含まれるとの認識が持たれていたとしてもおかしくない。

 安倍政権としても、この円安についてはどのようにアピールするべきかは悩ましいところでもあろう。アベノミクスへの評価の現れのひとつとして円安とそれによる株高がある。

 ただし、アベノミクスはあくまで円安の流れを加速させただけであり、そのひとつのきっかけが日銀への政治的な圧力による物価目標の設定であったといえる。その意味では、麻生財務省の解釈は正しいと思う。国内目的を達成するために国内手段を用いたということになる。

 ところが、自民党からは官民協調ファンドによる外債購入等も検討されるなど、円高からの脱却には為替調節に直接影響する政策も含まれていた。もちろんこれはいまのところ実現されておらず、その意味では直接的な為替操作は行っていない。しかし、今回の声明を見る限り、今後はたとえば日銀に対して外債購入を求めるような発言は為替誘導と認識される懸念がある。

 市場の流れを決めるのは、政治家ではなく市場参加者である。声明文でも為替レートは市場において決定されるべきとあり、事実そのようになっている。その市場参加者の心理状態が相場に大きく影響する。今回の円安の原因はアベノミクスではなく、欧州の信用リスクの後退、日本の貿易構造の変化等により、市場心理が変化し、長らく続いた円高局面に変化が訪れ、その流れにアベノミクスは乗ったものといえる。海外からの懸念を払拭するには、このあたりのことをアピールすることも必要であろう。

 今回の緊急声明に日本の動向が影響していたとすれば、海外からは今後の政府と日銀の動向に対しても注目されよう。もし日銀法改正などの動きが仮に本格化すれば、為替動向のみならず日本の政策に対して、海外からの懸念がますます強まる恐れもある。このあたりを含めて週末のG20の動向には注意しておく必要があるかもしれない。これまでの円安の流れに新たな変化が生じる可能性もありうる。

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by nihonkokusai | 2013-02-14 09:24 | 為替 | Comments(0)
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