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カテゴリ:為替( 17 )

英国のメイ首相の総選挙前倒し発言受けて、何故ポンドが買われ株は売られたのか

英国のメイ首相は18日、ロンドンの首相官邸で緊急会見を行い、2020年に予定されていた総選挙を前倒し、今年6月8日に実施したい意向を明らかにした。総選挙を前倒しして実施するには、議会の3分の2の賛成が必要となるが19日の英国議会下院では、最大野党の労働党も賛成したことで採決の結果、必要な3分の2を超える支持を得て、総選挙の前倒しが決まった。メイ首相の総選挙前倒しの意図とは何か。その前にメイ首相の発言を受けての金融市場の動きを確認してみたい。

外為市場では、ポンドが主要通貨に対して大きく「上昇」した。英国は昨年6月の国民投票でEU離脱を決定した。今年3月にメイ首相がEUに離脱を通知し、原則2年間の交渉に入っていた。この間、ポンドはドルなどに対して下落した。これにはメイ首相のハードブレグジット(英国がEUから完全に離脱する強硬路線)・リスクが影響していたと思われる。

ハードブレグジットとは移民抑制などを優先し、単一市場からの離脱もいとわない政策のことであり、リスク回避の動きとしてポンド売りとなったが、ロンドン株式市場はポンド安、つまり自国通貨安を好感して上昇するという現象も起きていた。為替市場と株式市場では英国の将来に対しての認識の違いもあったのかもしれない。

今回のメイ首相の総選挙前倒し発言を受けてポンドが買われたのは、政権基盤が強固されるため不透明感の払拭も意識されていたようである。しかし、ロンドン株式市場は下落したがもこれはポンド高によるものとされた。つまり2012年11月の東京市場での円高株安修正のように大きなポジションの巻き返しが起きた可能性がある。また今回の外為市場やロンドン株式市場の動きを見ると、ハードブレグジットリスクの後退を意識させるものとも見えなくもない。

ここで問題となりそうなのが、メイ首相が総選挙を前倒しをしたい理由となる。日本の2012年12月の総選挙は民主党政権が追い込まれて実施したものであったが、今回の英国の総選挙の前倒しはメイ首相が起死回生を狙ったものといえる。与党勢力を伸ばして政権基盤の安定を図ることが目的となろう。これでハードブレグジット路線をより強固なものにしたいものとみられる。ただし、現実路線(ソフトブレグジット)ら向けた修正を図っている可能性も指摘されている。

元々メイ首相はソフトブレグジット路線を探っていたものの、EU側の強固な姿勢もあってハードブレグジットを選択せざるを得なくなった。このため与党保守党内でも分裂が生じた。またスコットランドでは独立の是非を問う2度目の住民投票の可能性も指摘されている。このタイミングで総選挙に打って、とりあえず勢力基盤の安定を図るにはチャンスとみていたと思われる。

英国債の動きをみると今回は買い進まれ、18日の英国の10年債利回りは一時1.0%割れとなった。選挙は水物でもあり、英国の政治の先行き不透明感の強まりを考慮すると、リスク回避により英国債は売るべきか買うべきかは悩ましいところであろう(19日の英国債は売られている)。フランス国債は大統領選挙に向けた不安もあって売られる場面もあった。18日の英国債が買われた理由としては、リスク回避というよりも政権安定を意識した買いの可能性もある。

ただし、18日のメイ首相の総選挙前倒し発言受けた市場の動きは一時的なものとなることもあるため、今後のポンドやロンドン株式市場、英国債の動向も注意したい。ちなみに英国債や米国債が買われたことで、19日に日本の10年債利回りはゼロ%に低下した。


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by nihonkokusai | 2017-04-20 09:32 | 為替 | Comments(0)

ムニューシン米財務長官の強いドルは良いことだとの発言の意図

「強いドルは国益にかなう」という米国が伝統的に受け継いできた為替政策は、トランプ政権に変わってからも続いているようである。ムニューシン米財務長官は、17日のフィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「長期的に見て強いドルは良いことだ」と語った。

ムニューシン米財務長官は就任後、ドルの長期的な強さについて、米経済にとって最大の利益であり、世界の基軸通貨としての信頼を反映しているとの見解を繰り返し示していた。しかし、トランプ大統領が12日のウォールストリート・ジャーナルのインタビューでドル相場に関して強すぎるとの認識を示したことで、市場はトランプ政権はドル安誘導を意識しているのではないかと警戒し、北朝鮮などの地政学的リスクも相まって、ドル円は一時108円台前半にまで下落(円高が進行)していた。

ムニューシン米財務長官は、FTとのインタビューで、「トランプ大統領は短期的なドルの強さについて事実に基づく発言を行った」と述べていた。つまり、トランプ大統領とムニューシン財務長官との間に、為替政策に対して意見の相違はなく、あくまで短期的にみるか、長期的に見るかとの違いに過ぎないことを強調した。

米財務省は14日に公表した外国為替報告書で、中国を為替操作国として認定することを見送った。その理由についてトランプ大統領は北朝鮮を抑え込むために中国政府の協力を得られるためだと説明した。今回、為替操作国として認定した主要貿易相手国・地域はなかったが、同省は「監視リスト」に前回と同じく中国と韓国、日本、台湾、ドイツ、スイスの6か国・地域を指定した。

「強いドルは国益にかなう」という米国の伝統的に受け継いできた為替政策については、本音は違うところにあるものの、表面上のスタンスはそのように見せざるを得ないというのが実情ではないかと思う。それは米国が為替操作国もしくは監視リストにいくつかの国を指定するとなれば、そもそも米国そのものが為替操作国ではないという前提でないとおかしいことになる。

1985年のプラザ合意を持ち出さずとも米国はかなり自国のための為替操作を行ってきた国だと言える。それが結局、急激な円高ドル安を招くことになり、「有事のドル高」がいつの間にか「有事の円高」に変わったひとつの要因であろう。しかし、基軸通貨国としては、それを公に認めるわけにはいかない。このためムニューシン米財務長官から、強いドルは良いことだとの発言が出てきたものとみられる。


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by nihonkokusai | 2017-04-19 09:43 | 為替 | Comments(0)

北朝鮮への懸念で近隣国の日本の通貨が買われる不思議

昔の相場の格言に「有事のドル買い」というのがあった。これは戦争などが起こった場合、いわゆる有事の際に外国為替市場においてドルが買われやすいことを意味する。軍事大国でもある米国の通貨のため、安全性が高いとされる上に、ドルは最も流動性が高く、ほかの通貨よりも信用リスクや流動性リスクが低いことで、有事の際には買われやすいことを意味していた。しかし、この有事のドル買いという言葉は最近ではあまり通用しなくなった。地政学的リスクの強まりによりドルが買われる場面はあるが、こと円に対してはドルが下落することが多い。

6日に米軍がシリアに向けてミサイル攻撃を行った。そして間髪入れずに今度は、8日に原子力空母カール・ビンソンを中心とする第1空母打撃群がシンガポールから朝鮮半島に向けて出航した。米国のトランプ大統領は11日、ツイッターで「中国が北朝鮮問題を解決すれば、米国とより良い貿易取引ができるだろうと中国の習近平国家主席に説明した」と投稿した。さらに「中国が協力を決断するなら、それはすばらしいことだ。そうでなければ、中国抜きでわれわれが問題を解決する」とも投稿しており、中国が行動しないのであれば、米国が単独で対応する用意があるという考えを改めて示した。

海上自衛隊が朝鮮半島の近海に向けて航行中の米空母カール・ビンソンと共同訓練を検討しているとも伝えられており、これも北朝鮮を刺激する可能性がある。今月は金日成主席の誕生日を15日に迎えるなど、北朝鮮で記念日が続くことで北朝鮮が新たな挑発行為に出る懸念もあり、一触即発のリスクも高まっている。

金融市場動向をみると特に欧米の株式市場などでは、それほど大きな動揺を示していないが、外為市場ではじわりじわりと円高が進行し、「ドルは強すぎる」とのトランプ大統領の発言も加わって、ドル円は一時109円割れとなった。リスク回避の動きから金の先物も買われ、ニューヨーク金先物相場は5か月ぶりの高値をつけている。

金が買われるのは何となくわかるが、地政学的リスク回避の動きだからといって円が買われるというのは理屈に合わない。今回のリスク回避の動きの背景にはシリアという中東の国の問題というより、地理的に日本と非常に近い北朝鮮の影響が大きい。何かしらの有事が発生した場合に、米国と日本への影響やそのリスクを考えると日本に対する影響の方が大きくなるはずである。それにも関わらず何故、円がドルに対しても買われるのであろうか。

リスク回避の円買いは、理屈で動くというよりも長きにわたり市場で形成されてきた条件反射的な動きに思える。たしかに先進国のなかで政治は安定しているようにみえる。しかし、安倍首相以前は毎年のように首相が替わっていた国であった。しかも膨大な政府債務を抱え、中央銀行はやや無謀とも言える政策を続けている国である。これらは日本国債の潜在的なリスクを高めているともいえる。それでも円が買われるのは、日本への信認が維持されている裏返しでもあるのかもしれない。しかし、それでも北朝鮮における地政学的リスクの高まりによる円買いに対しては、違和感を持たざるを得ない。


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by nihonkokusai | 2017-04-13 09:43 | 為替 | Comments(1)

為替を巡る日米の見解の相違

 20日から21日にかけて仙台の温泉地である秋保で開催されたG7財務大臣・中央銀行総裁会議は何事もなく無事に閉幕した。歓迎レセプションで、鏡開きをする様子や仙台城跡で記念撮影が財務省のサイトのフォトライブラリーで見ることができる。仙台城跡の伊達政宗像の前での記念撮影の一枚には、麻生財務相、黒田総裁、ルー財務長官、イエレン議長など皆笑顔のなかで一人だけ、むっとしているドラギ総裁がいた。たまたまそのタイミングで撮ってしまったと思われるが、もしや何か思うところがあったのだろうか。

 それはさておき、今回のG7財務大臣・中央銀行総裁会議では本当に何事もなかった。注目ポイントのひとつとみられた日米政府の外為市場の見解の相違に関しては、互いへの強い批判は避けた格好となった。

 日経新聞によると「ここ数週間をみれば、10日間で8円とか9円とか振れるのは秩序だった動きとはいえない」との麻生財務相の発言に対し、「相場は無秩序とはいえない状況だろう」とルー財務長官は発言するなど平行線のままではあった。21日朝に開いた日米財務相会談でも麻生財務相は「ルー長官と特に激論があったわけではない」と発言している。日米とも今年は選挙を控え、それぞれの立場も意識し、米国としても開催国の日本に配慮していた可能性もある。

 それでも根本的な見解の相違が存在していることは確かである。日本としては急激な円高に対しては介入という手段があることを市場に認識させておきたい意向はあるであろう。米国としては為替介入などもってのほかとのスタンスは継続しよう。しかし、ドル円そのものがここにきて105円台から110円円台に戻すなどしていたことで、それほど神経質にはなっていないことも確かである。

 ただし、ここからあらためて円高が進むような事態になると状況が変わる可能性がある。今週は伊勢志摩サミットも控えている。6月にFRBが利上げをする可能性も高まっている。日銀の今後の動向も念のため確認しておく必要もある。

 もうひとつ注目されていた協調しての財政出動に関しては、英国やドイツの慎重姿勢に変化はなく見送られた。これに関しての一連の議論は伊勢志摩サミットに引き継がれるようだが、やはり合意は難しいと思われる。

 意外にサプライズとなるかもしれないのは日本の消費増税の行方となるかもしれない。市場は見送りと読んで、これをかなり織り込んでいただけに、予定通り実施されるとなると株式市場などがやや動意を示す可能性はある。個人的には財政規律を維持させるためにも消費増税は予定通り実施されるべきであると思っているが。

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by nihonkokusai | 2016-05-24 09:31 | 為替 | Comments(0)

日本政府による為替介入の可能性

 麻生太郎財務相は5月9日の参院決算委員会で、ドル・円相場の急激な変動は望ましくないとして「介入する用意があるということを申し上げる」との見解を示した。米財務省が外国為替報告書で中国と日本、ドイツ、韓国、台湾を監視リストに入れたことについては、「為替政策は今、制約を受けるというわけでもない」とも述べた(ブルームバーグ)。

 この「当然介入の用意がある」と発言した理由について麻生財務相は、「急激な為替変動が経済に好影響を与えないことはG7、G20でも合意されており、一方的な偏った状況が続くなら介入する用意があるため」と説明した。最近の為替動向は「一方的に偏しており、さらにこの方向に進むのは断固として止めねばならない」と強調した(ロイター)。

 米財務省は4月29日に貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書において、対米貿易黒字が大きい日本や中国、ドイツなど5か国・地域を監視リストに指定した。米当局は相手国が不当な通貨切り下げなどを強めれば、対抗措置がとれるとしている。年明け以降の円高・ドル安については、市場は秩序的だと評価し、日本の円売り介入を改めてけん制した格好となった。

 このあたり日米の見解の相違がある。米国は年初からの円高ドル安について秩序的だと評価しているのに対し、麻生財務相は一方的に偏していると評している。この見解の相違はいまに始まったことではなく、4月14日から15日にかけてワシントンで開催されたG20の前後においてもルー財務長官と麻生財務相が同じようなやり取りをしている。

 ただし問題は為替の動きが秩序的なのか、一方的に偏しているかとの認識ではなく、今回の円高に対して日本が為替介入を行うことが現実に可能かどうかということになるのではなかろうか。

 日本の認識では為替介入は可能ということになろうが、それを行えば相手国となる米国の批判を浴びることは目に見えている。5月の伊勢志摩サミットも控えて米国との対立は避けたいであろうし、さらに米国の大統領選挙も控えている。仮に日本が為替介入を行えば、大統領候補は米国民の賛同を得るために日本を攻撃の矛先に加える懸念がある。

 そもそも為替介入で円安となるのかという問題もある。円売りドル買いであれば、日本政府はいくらでも資金を調達することができるから負けるわけないとの指摘が以前あったが、円売りであろうと円買いであろうと市場に勝てる保障はまったくない。むしろ個人的には負ける可能性が強いと思っている。すでに金融緩和での通貨安もできない状況下、力尽くでの介入は市場の敵対心を煽るだけとなる可能性もありうる。

 それでも為替介入やそれに先んじてのレートチェックはいつでも出来ると市場に認識されておかないとならないというのが日本政府の意向でもあろう。しかし、それすらも市場で見透かされると、むしろ円買い圧力を強め、介入の可能性を試すようなことも考えられる。

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by nihonkokusai | 2016-05-15 10:38 | 為替 | Comments(0)

日銀だけではなかった円高の背景

 28日の日銀金融政策決定会合で金融政策は現状維持となった。市場が予想というか期待した追加緩和は見送られ、これをきっかけにドル円は111円台後半から108円を割り込むなど、円高が急速に進行した。29日の東京市場は昭和の日で休日となり、この日からいわゆるゴールデンウイークがスタートした。過去にも日本が年末年始や盆休み、ゴールデンウイークなどの大型連休の間に外為市場が大きく動くこともあったが、今回もさらに大きく動く結果となった。円高に歯止めが掛からず、ドル円は29日のニューヨーク外為市場で106円台前半まで下落した。

 今回の急速な円高の背景としては、22日のブルームバーグの記事をきっかけとした日銀の追加緩和観測による円の急速な買い戻しの反動が起きた事があげられる。CFTCが発表しているIMM通貨先物の集計によると投機筋の円の買越額が4月19日の時点で過去最大水準となっていたが、26日の発表分ではそれが減少していた。ヘッジファンドなどが日銀の追加緩和観測により、いったん円買いのポジションを外していたことが伺える。ただし、ドル円は22日に反発した分の幅の倍近い下げとなっている。東京市場が開いておらず日本の投資家が動けず、実需の円売りドル買いなども入りにくかった面もあろうが、改めて円買いを仕掛けてきた可能性がある。

 そもそも何故、ヘッジファンドなどは円買いを仕掛けてきているのか。ここにきては、年初からの原油安とその要因のひとつでもあった中国などの景気減速への懸念によるリスク回避の動きは弱まってきたはずである。このリスク回避の動きもあり、円買いが仕掛けられたことは確かであるが、別な要因も働いていたとみられる。

 それがまず、日米欧の中央銀行の金融政策に対する反応の変化ではなかろうか。日銀やECBの追加緩和に対して外為市場はポジティブな反応を示さなくなってきた。これが顕著となったのが昨年12月3日のECB理事会で包括的な追加緩和策を決定した後や、今年1月29日に日銀がマイナス金利を導入後の市場の動向に現れている。一時的に株高・通貨安となったものの、その後再び株安・通貨高となっていた。

 金融経済危機も去り、FRBが正常化路線を着々と進めるなか、日欧の異常ともいえる金融政策に対して、市場も次第に冷めた目で見るようになってきているとも言える。それとともに日欧の金融緩和が通貨安を経由して効果をもたらそうとしていることも明らかであり、それに対して米国がかなり批判的な見方をしていることも、今回の円高の背景にあると思われる。その米国の動向が今年のG20からも垣間見えていた。

 4月14日から15日にかけてワシントンでG20が開催されたが、開幕に先立って、麻生太郎財務相は米国のルー財務長官と会談して為替政策を協議し、通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を「すべての国が尊重することが重要」との考えで一致した(以上、日本経済新聞の記事より)。また、麻生財務相はG20に出発する前に、「為替相場の急激な変動や無秩序な値動きは望ましくないことははっきりしていて、それに対してしかるべき対応を取ることをG20でも合意している」と述べて、急な円高の動きに対しては必要な措置を取る考えを改めて示した(NHK)。ところが16日の日経新聞電子版によると、ルー米財務長官は15日、米ワシントンで開いたG20後の記者会見で「最近は円高が進んだが、為替市場の動きは秩序的だ」と述べていた。これはつまり、日本政府が円安誘導策に動くことをけん制した格好となったのである。

 そして、米財務省は29日に貿易相手国の通貨政策を分析した半期為替報告書において、対米貿易黒字が大きい日本や中国、ドイツなど5か国・地域を監視リストに指定したのである。「米当局は相手国が不当な通貨切り下げなどを強めれば、対抗措置がとれるとしている。年明け以降の円高・ドル安については、市場は秩序的だと評価し、日本の円売り介入を改めてけん制した。」(日経新聞電子版)。

 今回の急激な円高は、そもそも日欧の中央銀行の金融緩和策に対する感応度が変化してきたこと、米国の金融政策の正常化に対して過度な警戒が後退してきたこと、日本に対しては通貨安を主軸としたアベノミクスに対して米国政府を中心に批判的な見方が強まってきたことなどがあり、日銀の追加緩和観測を巡っての反動のような動きが、ゴールデンウイークと重なって大きくなったのではなかろうか。

 日本政府は今回の米財務省のレポートにより、介入等の手段が余程の事態でない限り、さらに取りづらくなったことは確かである。しかも5月には伊勢志摩サミットも控えている。日銀の追加緩和に対しても一時的に円安を招く可能性は22日の相場を見ても明らかではあるが、それが長続きすることはむしろ考えづらい状況にある。今後、ドル円は目先の節目の105円も突破して、2012年11月にアベノミクスがスタートしての急速な円高調整が一息ついた水準でもある100円台あたりを目指して下落してくる可能性がありそうである。

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by nihonkokusai | 2016-04-30 10:56 | 為替 | Comments(0)

東京株式市場が乱高下した理由

 4月18日の東京株式市場で日経平均は大幅下落し、500円を超す下げとなった。この株価下落の要因としては大きく3つ存在した。そのひとつは米国のルー財務長官が15日のG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、為替市場の動きは秩序的だと述べ、日本政府が円安誘導策に動くことをけん制したことによる円高である。

 G20の開幕に先立って、麻生太郎財務相は米国のルー財務長官と会談して為替政策を協議し、通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を「すべての国が尊重することが重要」との考えで一致したとの報道があった。しかし、これはそれぞれ都合良い解釈によるものではないかと私はみていた。

 ただし、IMFのラガルド専務理事が14日の記者会見で、足元で進む円高について「日本の市場を注視している」と述べた事が気になっていた。急激な為替変動があった場合には「為替介入は正当化される」と指摘しており、日本の為替介入について同意を示すような発言があったのにむしろ違和感を覚えていた。

 IMFの対日審査責任者を務めるリュック・エフェラールト氏が「為替レートが極めて無秩序な動きを示さない限り、現時点での日本の介入には正当な理由はない」と発言していたこともあるが、少なくとも米国が日本の為替介入を認めるようなことは、これまでの経緯からは考えられないと見ていたからである。現実に米国はルー長官が自ら念を押すような発言をしてきたと言える。これにより外為市場でドル円は107円台をつけてきた。

 そして、もうひとつ注目されていたのが17日の産油国会合で増産凍結合意できずとの報である。イランが凍結に応じず、サウジアラビアがイラン抜きでの増産凍結に反対し、原油価格押し上げに向けた増産凍結の見送りが決定された。

 市場では増産凍結にはなんとか合意に持ち込めるのではとの希望的観測が強まっていた。原油先物も40ドル台で推移し、市場も原油価格の動向に一喜一憂することがなくなりつつあった。ところが、増産凍結合意ができなかったことにより、時間外取引で原油先物は大幅下落となった。この円高と原油安によって、東京市場ではリスク回避の動きを強めることとなった。

 これに加わったのが熊本地震による影響で、部品供給が滞っているトヨタが18~23日に全国の完成車工場の生産を段階的に停止すると発表したことである。トヨタだけでなく、ルネサスやソニーも熊本などの工場停止が相次いでいるが、あらためてサプライチェーンの問題が浮上し、これも株式市場などにインパクトを与えたといえる。

 東京株式市場の大幅な下落や原油安を受けて18日の欧米の株式市場も売りが先行した。18日の原油先物も下落したが、その後下げ幅を縮小させた。欧米の株式市場は結局買い戻されたが、これは原油価格の下げ幅縮小によるというよりは、以前に比べて原油価格に対する市場の感応度が低下したという見方の方が良いのではなかろうか。18日の東京株式市場は円高が進行したが、つまりドルやユーロは円に対しては下落しており、これは欧米の株式市場では売り要因とはならない。また、18日の東京株式市場はやはり熊本地震の影響が強く意識されていた側面があり、そこに円高と原油安が加わっての大幅下落となったものとみられる。

 しかし、18日の欧米の株式市場の上昇を受けて、19日の東京株式市場でもやや不安感が払拭された。ショートカバーも入り、ほぼ前日の下げ分を取り戻す格好となっている。東京株式市場が大きく値を戻したこともあり、外為市場でドル円はあっさりと109円台に戻している。これはいまだに株とドル円はセットで動いているためとみられる。どうやら欧米の株式市場が大きく崩れない限りは東京株式市場もしっかりした地合は継続しそうな感じである。

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by nihonkokusai | 2016-04-19 09:43 | 為替 | Comments(0)

日本の為替介入への牽制

 IMFのラガルド専務理事は14日の記者会見で、足元で進む円高について「日本の市場を注視している」と述べた。そのうえで急激な為替変動があった場合には「為替介入は正当化される」と指摘した。

 14日から15日にかけてワシントンでG20が開催されたが、開幕に先立って、麻生太郎財務相は米国のルー財務長官と会談して為替政策を協議し、通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を「すべての国が尊重することが重要」との考えで一致した(以上、日本経済新聞の記事より)。

 また麻生財務相はG20に出発する前に、「為替相場の急激な変動や無秩序な値動きは望ましくないことははっきりしていて、それに対してしかるべき対応を取ることをG20でも合意している」と述べて、急な円高の動きに対しては必要な措置を取る考えを改めて示した(NHK)。

上記の記事からは、今回のようにドル円が120円から110円割れに大きく切り下がるようなケースの場合には、為替介入もありうることを示したかにみえるが、これは通貨安競争や過度な相場変動の回避を原則とするG20合意を確認したものである。しかし、これで本当に為替介入は可能なのかといえば、疑問が残る。ラガルド専務理事がわざわざ日本について言及した背景には、何かしら理由もありそうだが、そのIMFの関係者からは下記のような発言も出ていた。

 IMFの対日審査責任者を務めるリュック・エフェラールト氏は12日、ワシントンでのインタビューで、「為替レートが極めて無秩序な動きを示さない限り、現時点での日本の介入には正当な理由はない」と発言していたのである(ブルームバーグ)。

 要するに「過度な相場変動」という表現に対する解釈の違いがここには存在する。G20では「過度な相場変動」に対する介入の必要性は認めており、その解釈の上で今回のような円高にも介入で対応できるかといえば、現実にはかなり難しいといえる。

 エフェラールト氏の発言にもあったように「極めて無秩序な動き」、つまりは過去のイングランド銀行を狙い撃ちにしたような動きや、百年に一度といった金融不安による通貨の急落などに対しては介入の必要性は認める。しかし、今回の円高は円安がやや進みすぎたことの調整ともいえるため、無秩序な動きに該当するとは思えない。

 16日の日経新聞電子版によると、ルー米財務長官は15日、米ワシントンで開いたG20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で「最近は円高が進んだが、為替市場の動きは秩序的だ」と述べた。これはつまり、日本政府が円安誘導策に動くことをけん制した格好となった。

 このように米国やIMFが今回のような円高の是正に対して、介入もありうるとした日本の意向に賛同するとは考えづらい。このため、日本での為替介入、特に通貨安となる円売り介入についてはかなり困難ではないかとみている。

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by nihonkokusai | 2016-04-16 12:25 | 為替 | Comments(0)

急激な円高の背景

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 4月7日のニューヨーク外為市場では円高の流れが強まり、ドル円は一時107円67銭まで上昇し、2014年10月29日以来の108円割れとなった。しかし、8日には「場合によっては必要な措置取る」との麻生財務相の発言をきっかけに、ドル円は109円台まで買い戻された。

 7日にも菅官房長官が「場合によっては必要な措置」と発言したにも関わらず、円高基調は変わらなかった。これは為替介入の権限を持つ財務大臣の発言なのでドル円が巻き戻されたというよりは、そろそろ買い戻されそうなタイミングでの麻生財務相の発言であったため、反応したような格好となったのではなかろうか。

 4月14、15日にはワシントンでG20財務相・中央銀行総裁会議が開催される。麻生財務相や菅官房長官が「場合によっては必要な措置」と発言しようとも、G20も控え、さらには5月の伊勢志摩サミットも控え、自国通貨安を防止するための円売り介入は現実としてはかなり無理があろう。

 今回の急激な円高の背景には、FRBの利上げが緩やかになることで日欧の中央銀行による積極的な金融緩和策よりも、基軸通貨を有する米国の中央銀行の政策に影響した面はあろう。しかし、それよりも米国サイドがFRBの利上げが意識されるなかでのドル高の動きを牽制していた側面も大きいと思われる。

 日米欧の中央銀行による積極的な金融緩和策は、百年一度という非常時ならば市場を安定させ金融不安を後退させるために有効であったとしても、平時となるとそれは通貨安を意識した政策に捉えられてしまう。

 日欧の異常な金融緩和は一時的にせよ、中国などの新興国経済の悪化を見えにくくさせていた面もあった。しかし、原油安が象徴するように新興国経済の悪化は顕在化しており、それが昨年8月あたりからの市場のリスクオフの動きとして現れた。

 リスクオフの動きは東京市場では円高株安圧力となるため、日銀がマイナス金利政策を導入しても、ECBが追加緩和を行っても、すでに世界的なリスクオフの動きを止めることはできなかった。これはいずれ起こるであろうことが、日欧の異次元緩和で先延ばしされた分、変動幅が一時的せよ大きくなった面もあると思われる。

 ただし、米国経済は緩やかな利上げを許容できるぐらいの回復地合を見せており、その分、米国株の戻りは早かったとも言えるのではなかろうか。それではどうしてなぜ、日本の株価の戻りは鈍く、円高もさらに進んでいたのか。

 これは異常ともいえる日銀の金融緩和策によって持ち上げられた株価やドル円が、金融政策のイリュージョンによって実態経済以上の底上げが生じたことで、その分がそげ落ちてきたためとも言えるのではなかろうか。それを演出したのが海外投資家でもあった。

 いずれ東京株式市場もドル円も落ち着きどころを探る展開が予想されるが、さらに一段安となる懸念も存在する。

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by nihonkokusai | 2016-04-10 10:13 | 為替 | Comments(0)

実務者会合の目的は為替の協議か

 金融庁、財務省、日銀は2日の午前、世界的に金融・資本市場が変動している現状に関して意見交換したそうである。会合に出席したのは金融庁の森信親長官、河野正道金融国際審議官、財務省の浅川雅嗣財務官、太田充総括審議官、日銀の雨宮正佳理事、門間一夫理事の6人(ロイター)。

 この日の会合は第1回との位置付けで、都内で1時間程度、意見交換したとか。具体的な議論の内容は明らかにされていないが、政策当局がより緊密に連携することが狙いであり、市場動向に応じて今後も月次で開催するそうである。

 これに関して菅義偉官房長官は2日午後の記者会見で、同日午前に金融庁と財務省、日銀の幹部が金融資本市場に関して意見交換したことを巡り、「必要であれば適切に対応できるように、より緊密な連携を目的に実施した」と説明した。その上で、当局間で「情報交換を強化しながら、国際社会と連携して市場の動きを注視する」と述べた(日経新聞電子版)。

 なぜこのタイミングで金融市場に関する実務者のトップレベルでの会合が持たれたのであろうか。かなりの豪華メンバーであることは確かであり、ひとつには日本で5月に開催されるサミットを睨んでのものとの見方もできよう。しかし、このメンバーを見る限り別な要因が働いた可能性がある。

 金融庁からの出席者が長官と金融国際審議官であり、財務省からは財務官となれば金融市場のなかでも特に外国為替市場に関する議論が中心ではなかったかと推測される。たとえばこれが国債に関するものであったのであれば理財局から出席者が出たはずである。

 日銀からの出席者は異次元緩和の生みの親ともいえる企画担当の雨宮正佳理事であり、その異次元緩和の大きな目的のひとつが円安であったことを考慮すると雨宮理事の出席は納得できる。そして、門間理事の担当は国際局、国際関係統括である。

 柴山昌彦首相補佐官は2日にロイターとのインタビューの中で、2月26~27日に中国・上海で開かれたG20では、日本の金融政策の手を縛るような議論はなかったとの見解を示し(ロイター)、また財務省の浅川財務官も時事通信に対し、2月に中国・上海で開かれたG20について、「円の議論は全くなかった」と語っている。デイセルブルム議長(オランダ財務相)が、人民元に加えて「日本円も議論された」と発言したと報道に対して浅川財務官は、こうした報道を明確に否定した。また、デイセルブルム議長も「誤った引用だ」と釈明したそうである(時事通信)。

 しかし、このタイミングで日本の為替政策を巡って何かしら協議が必要になったことは確かなのではなかろうか。為替市場に影響を与える日銀の追加緩和策や財務省による為替介入などに関して意見交換し、これに対する米国の動向などもあらためて確認した可能性もある。さらに市場そのものが日銀の追加緩和などに対してポジティブな反応をしなくなったことの要因なども議論されたのかもしれない。ただし、これらはすべて私の憶測に過ぎないことも確かである。

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by nihonkokusai | 2016-03-04 09:14 | 為替 | Comments(0)
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