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カテゴリ:債券市場( 661 )

欧米の長期金利が底打ちした可能性

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(FRBのデータベースを基に作成)


 ここにきて米国やドイツ、英国など欧米の長期金利、つまり10年債の利回りが徐々にではあるが上昇しつつある。

 今年に入り、原油安やその要因となった中国経済の減速懸念などからのリスク回避の動きにより、欧米の長期金利は急速に低下した。米10年債利回りは昨年末の2.30%あたりから今年の2月11日に1.65%あたりまで低下した。

 しかし、このあたりからリスク回避の動きは後退し、3月9日あたりにかけて米10年債利回りは2%近くまで上昇した。これは原油先物が底を打ったかたちで反発しており、原油価格の上昇とほぼ同じタイミングとなっていた。

 その後、米10年債利回りは再び低下し4月7日には1.7%割れまで低下した。原油先物が再び売られていたこともあるが、原油先物の下げピッチに比較すると、米10年債利回りの低下は意外に大きかった。利上げは慎重にとのFRBのマーケットフレンドリーな姿勢を好感した可能性はあるが、4月7日頃を底に再び米長期金利は上昇し、これによりダブルボトムを形成することになる。米10年債利回りは1.7%割れから再び上昇トレンドを形成し、4月25日に1.9%台まで上昇した。

 この動きは、FRBとは金融政策の方向性が真逆となっているユーロ圏を代表する長期金利、つまりドイツの10年債利回りも同様の動きとなっていた。ドイツの10年債利回りも2月末に0.1%近くまで低下し、4月8日に0.1%割れとなったあと上昇し、4月25日に0.26%をつけ、ダブルボトムを形成した格好となっている。

 そして米国債と連動性も高く、金融政策は中立的なスタンスの英国でも英国10年債利回りも、米国やドイツほど綺麗なかたちではないが、ダブルボトムのようなかたちとなっている。

 これらを見る限り、どうやら欧米の長期金利の低下はいったん底打ちし、6月のFOMCでの利上げ観測もあり、米長期金利は再び2%台を見据えた動きとなることが予想される。

 それではこの欧米の長期金利の動きに対し、日本の長期金利はどうなっているのか。日本の長期金利は長らく低下トレンドが継続中で、1月29日の日銀によるマイナス金利の導入でさらに加速され、10年債利回りそのものもマイナスとなった。ただしその低下基調もここにきて弱まりつつある。

 これは日銀のマイナス金利への批判などからこれ以上の深掘りは難しいのではとの観測だけでなく、米債などの動きも影響している可能性がある。もし米長期金利が2%台に乗せて昨年末の水準である2.2%あたりまで回復するとなれば、ドイツや英国の長期金利も同様に上昇してくる可能性がある。そうなれば少なからず日本の長期金利にも上昇圧力が掛かる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-04-27 09:49 | 債券市場 | Comments(0)

3月の都銀の国債売買高は過去最低水準

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 4月20日に日本証券業協会(JSDA)は3月の公社債投資家別売買高を公表した。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。それが下記となる。

3月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円
()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -9524(-3686、-2743、-3081)
地方銀行 -1201(-386、1794、-667)
信託銀行 13860(4720、2871、2838)
農林系金融機関 -4591(-4301、146、0)
第二地銀協加盟行 -47(-740、500、140)
信用金庫 -1074(335、431、55)
その他金融機関 -448(144、870、-1497)
生保・損保 -7917(-7430、489、539)
投資信託 -877(-549、-473、415)
官公庁共済組合 241(50、15、1)
事業法人 -403(93、18、42)
その他法人 -894(-540、117、133)
外国人 -14551(8527、-8516、-14360)
個人 333(38、61、9)
その他 -10097(-124、-1532、-2752)
債券ディーラー 838(83、980、-211)

 都銀は9524億円の買い越しに転じた。マイナス金利となっている中長期ゾーンも買い越しとなっていたが、償還見合いに担保としての国債を購入していた可能性もある。

 そして、データの残る2004年4月以降の国債(短期債除く)の売買高でみると、都銀の売買高は2兆8402億円と過去最低水準となった。ちなみにこの期間で最も売買高が多かったのは2012年4月で、この月は70兆1079億円もあった。売買高の増減は債券市場の動向により起こりえるが、決算月という要因もあったが、ここまでの低水準の売買高の最大の要因は日銀のマイナス金利政策によるものであろう。

 売り越しで目立ったのが信託銀行の1兆3860億円の売り越しとなり、過去最大の売り越しとなったようである。

 外国人は1兆4551億円の買い越しとなり、21か月連続の買い越しとなった。

 国債の売買高で確認したところ、国債全体(短期債除く)の売買高はそれほど落ち込んではいない。海外投資家の売買高が比較的高い水準となっていることや、債券ディーラーの売買高が都銀の減少分をカバーしている格好となっている。

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by nihonkokusai | 2016-04-22 09:41 | 債券市場 | Comments(0)

国債先物の乱高下の背景とは

 3月31日の債券先物は5銭高の151円88銭で寄り付いたがここが高値となり、その後も売りに押され、53銭安の151円30銭の安値引けとなった。50銭以上の下落はそれほど珍しいことではないが、ここにきて膠着相場が続いていただけにやや奇異に感じた。しかも先物主導であり、現物債の売りは後からついてきた格好となっていた。

 要因としては新年度入りすることで、銀行などによる期初の売りへの警戒も出ていたと思われる。5日に10年国債の入札を控え、業者がヘッジ売りを入れてきたのではとの見方もあった。月末にも関わらず年金などの買いが限定的であったことも意識されたのかとの思惑も。

 31日の夕方に日銀が「当面の長期国債買い入れの運営について」を発表するため、今後の日銀の国債買入の増減に向けた思惑的な動きも出ていた可能性もある。こちらはむしろ30年債の買い材料となり、イブニング・セッションでの債券先物は151円50銭と買い戻されていた。これは米債が買われていたことも影響したと思われる。

 米債高などから4月1日の債券先物は買いが先行し、前日比19銭高の151円49銭で寄り付いた。朝方発表された日銀短観は大企業製造業DIがプラス6となり、12月調査のプラス12から6ポイントの悪化となった。これもあってか日経平均は大幅に下落したが、同時に債券先物も寄り付き後、昨日よりピッチの速い下落となった。債券先物は一時151円02銭まで急落した。

 たしかに以前に比べれば債券先物も出来高は薄くなっており、板が薄いなか値段だけが大きく飛んだ可能性はある。しかし、31日の債券先物の出来高は3兆円近くあったことでそこそこまとまった売りが入っていたとも思われる。

 銀行などは国債が利回りがマイナスにまで低下していたことで、膨大な含み益を抱えている。もちろん最大の国債保有者は日銀ではあるが、日銀が利益確定のため国債を売却することはない。しかし、民間金融機関は特にマイナス金利となっているゾーンについては利益確定売りを入れてくる可能性はある。保有国債を売却するとそれが日銀の当座預金に積み上がり、マイナス金利のペナルティーが科せられる可能性はあるものの、それでも利益幅はそんなものではないため、目先の売りは出てもおかしくはない。そのような売りを先取りするような格好で債券先物に売りが入った可能性がある。

 いずれにしてもこのような思惑も出ておかしくないような動きに債券先物がなっている。手口がわからない以上は売り手は想像するほかはない。ただし、1日の債券先物は151円02銭が安値となり、その後買い戻され、151円66銭まで戻して、引けは18銭高の151円48銭となっていた。これは日銀の国債買入結果や、日経平均の下げなどをきっかけとした買い戻しではあるが、現物債は中長期債に益出し売りが入ったものの、売られたところでは押し目買いも待っていたことで先物が買い戻された格好となっていた。または、思惑的なショートのカバーが入った可能性もある。いずれにしても債券市場では先物主導で動意を見せつつあり、期初の売り観測も残っており注意する必要がある。

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by nihonkokusai | 2016-04-04 09:23 | 債券市場 | Comments(0)

2月に都銀は中期債を大量売り越し、海外勢は買い越し

 3月22日に日本証券業協会(JSDA)は2月の公社債投資家別売買高を公表した。発表される公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。それが下記となる。

2月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別 都市銀行 20763(-1686、865、23149) 地方銀行 542(-1411、4412、345) 信託銀行 2046(1379、-4880、3519) 農林系金融機関 -2783(-2353、475、50) 第二地銀協加盟行 -2056(-1541、349、-10) 信用金庫 -1841(-402、303、876) その他金融機関 -2606(-1091、-406、-1549) 生保・損保 -5266(-4190、976、692) 投資信託 1378(-20、524、971) 官公庁共済組合 283(146、0、325) 事業法人 -782(1、-22、13) その他法人 -426(185、-72、221) 外国人 -26356(-400、-1310、-26892) 個人 385(18、63、8) その他 1380(3484、214、3645) 債券ディーラー 1107(696、453、12)

 目立っているのは都銀の売り越しと海外投資家の買い越しである。都銀は中期ゾーンを中心に2兆円を越す売り越しとなった。売り越しは2か月ぶりとなる。これに対して海外投資家は中期ゾーンを中心に2.6兆円もの買い越しとなった。海外投資家の買い越しは20か月連続となった。

 1月29日の日銀の金融政策決定会合のマイナス金利政策の決定と2月16日からのマイナス金利の施行により、国債のマイナス金利化が一気に進んでいた。2月9日には10年国債の利回りがマイナスとなり、その後プラスに戻したものの、18日には再びマイナスに転じている。この間、2年債や5年債の利回りはマイナスの状態となっていた。

 この集計については発行時の年限がベースとなっているため、長期債に分類されていても残存が2年や5年といった10年国債も含まれている。それも意識しながら数値をみてみると、少なくとも中期債を買い越しているのは海外投資家を除くと「その他金融機関」と「第二地銀協加盟行」だけとなる。その他金融機関には在日外銀なども含まれているため、買い越しとなっているとみられる。

 長期債については海外投資家、その他金融機関、さらに信託銀行が買い越しとなっている。信託銀行はプラス利回りとなっていたときに10年債のカレント中心に買い越していた可能性はあるが、何かしらの事情もあったのかもしれない。

 そして、超長期債については主な投資家が買い越しとなっており争奪戦の様相となっている。この状況は3月に入りさらに顕著になっているのではなかろうか。

 気になるところの国債売買高であるが、昨年11月に一時落ち込んだものの、その後は回復基調となっている。いまのところ国債の売買高で見る限りは、流動性がそれほど大きく低下しているわけではない。

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by nihonkokusai | 2016-03-24 09:27 | 債券市場 | Comments(0)

国債先物の建玉に異変

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 現在の金融先物取引は米国のシカゴで生まれたが、その原型は江戸時代に大阪の堂島で取引された米の先物取引(帳合米商い)にある。帳合米商いとは1年を春夏冬の三期に分け、4月28日、10月9日、12月24日を精算日とし、各期に筑前・広島・中国・加賀米などから1つを標準米として売買し、反対売買による差金決済を原則とする取引であった。

 これに対して1985年に東証に上場した日本初の金融先物取引である長期国債先物は、3月、6月、9月、12月のそれぞれ20日を精算日とし、利率6.0%の架空の長期国債を標準物として売買するものである。差金決済が多いが現引・現渡しも行われる。

 このように債券先物には精算日が年4回あり、取引される現月は年4本ある。その限月の取引最終日は精算日であるところの受渡決済期日(各限月の20日、休業日の場合は繰下げ)の5日前(休業日を除外)となっている。

 今年の3月限の取引最終日は3月14日であった。日本の債券先物は取引慣習上は出来高が逆転した時点で中心限月が移行したとされる。正式には当日約定分(イブニング含む)の出来高が逆転した翌日から中心限月が変わることになるのだが、取引している当事者は出来高の逆転をみて中心限月が移行したと認識している。

 今回の3月限から6月限への中心限月の移行は市場参加者ベースでは11日となっていたが、今回の中心限月の移行にあたっては興味深いことが起きていた。それは中心限月となった6月限の建玉にある。

 上のグラフを見ていただけるとわかるように限月移行時は期近の建玉が減少し、中心限月が移行すると新たに中心限月となったものの建玉は回復する。これまでの中心限月の移行にあって、新しく中心限月となった移行日の建玉は8兆円から9兆円台でスタートしているが、今回の6月限の11日の建玉は6兆円台前半しかなかったのである。

 この原因としては3月限が中心限月であった際の期先であるところの6月限の売買高が少なく、中心限月の移行にともなっての建玉の移行がスムーズに進めなかったのではないかとの見方がある。確かに11日以降は少し増加している。それでも22日の速報ベースではまだ7兆円割れとなっている。

 今後の6月限の建玉の推移をもう少し確認しないと何が起きたのかは明白ではないものの、一部の市場参加者がいったん先物から手を引いた可能性もあるかもしれない。

 日銀の異次元緩和での大量の国債買入による国債需給の逼迫に加え、マイナス金利政策により10年を超える国債の利回りがマイナス化した。これらにより国債市場の流動性の低下が懸念されている。

 ここにきて超長期債が買い進まれ、10年債利回りは18日にマイナス0.135%まで低下したが、商いそのものは盛り上がっているわけではない。特に超長期債は売り物が限られ、売り物が出ると高いところでも買われて値が飛ぶような地合となっている。その結果、過去最低利回りを更新しているが、あまり実感がない買われ方ではある。

 この現物債の流動性の低下は債券先物の出来高にも現れているが、債券先物の建玉そのものにも影響を及ぼしている可能性があるかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-03-23 09:46 | 債券市場 | Comments(0)

量か金利かの二択だった1月の日銀決定会合

 日銀は1月29日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。この会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入が決定したわけではあるが、何故、追加緩和が必要となったのかをこの議事要旨から見てみたい。

 「多くの委員は、このところ、原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっており、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大しているとの認識を示した」

 要するに年初からの中国経済の減速とそれも影響しての原油安による金融市場の不安定な動き、つまりリスク回避による株安と円高の対策のために、「デフレマインドの転換が遅延」との理由付けのもと、追加緩和を検討したということになる。ちなみに米国のダウ平均は17日に昨年末の水準に戻っているが、日経平均やドル円は戻り切れていない。日銀の追加緩和はどうやら市場には期待された効果は出ていないようである。

 「多くの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するために、追加的な政策対応を行うことが適当であるとの見解を示した。」

 物価上昇ペースが下振れるリスクというが、日銀の異次元緩和が有効ではなかったことはすでに現実のCPIの推移でも明らかだと思うが。そもそも予防をするという以前に、物価上昇ペースそのものが現実に下振れたのは、日銀の緩和がそれでも足りなかったとの判断なのであろうか。

 「こうした議論を受けて、議長は、執行部に対し、政策対応を行う場合に採り得るオプションの提示を求めた。執行部からは、「量的・質的金融緩和」の拡大(マネタリーベースの増加幅および資産買入れの拡大)、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入、という2つのオプションが示された。」

 この部分にやや意外性があった。てっきり「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入だけを提案したのかと思っていたが、ここであらためて執行部が「量的・質的金融緩和」の拡大と「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」というふたつの選択肢を提示し、総裁の腹づもりは決まっていたとしても、あらためて決定会合でもこの選択について議論させていた。ただし、結局は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入についての議論とはなった。

 賛成派は「イールドカーブの起点を引き下げ、大規模な長期国債買入れを継続することとあわせて、金利全般により強い下押し圧力を加えることができるとの見解を示した。」、さらに「同じ量であれば付利を引き下げた方がポートフォリオ・リバランス効果を高め、より強い効果があるとの見解を示した」、「マイナス金利については、欧州諸国の経験から、効果や実務的な問題についても適切に運営するだけの知見は集積されており、問題を小さくしながらより効果を高めることができる」との見方が示された。

 マイナス金利導入後、金利全般により強い下押し圧力が加えられたのは事実であるが、ポートフォリオ・リバランス効果については欧州同様に、あまり動きは出ていない。さらに内外からのマイナス金利への批判も強まり、問題を小さくしながらより効果を高めることもできていない。3月の決定会合ではその批判を受けて、MRFをマイナス金利適用外にするなどの調整を余儀なくされた。

 「これらの委員は、マイナス金利の導入に当たっては、当座預金の付利金利を当初はマイナス0.1%とし、今後、必要な場合、さらに引き下げることが望ましいと述べた。」

 賛成派は総裁含めて、マイナス金利のさらなる引き下げを選択肢として置いているが、ECBはこちらも内外からの批判などもあって、マイナス金利政策は打ち止めにしている。

 そして反対派からは、「複数の委員は、「量的・質的金融緩和」の補完措置の導入直後のマイナス金利の導入が、かえって資産買入れの限界と受け止められる可能性を指摘した」との意見が出た。これは総裁は認めていないがその通りであろう。

 「このうち一人の委員は、複雑な仕組みが混乱・不安を招くこと、今後、一段のマイナス金利引き下げへの期待を煽る催促相場に陥ること、金融機関や預金者の混乱・不安を高めること、2%の「物価安定の目標」への理解が乏しいもとで政策意図に関する誤解を増幅させることなどへの懸念も示した。」

 日銀のマイナス金利導入後、不安感が強まりそれがマスコミなどで報じられることになる。

 「マイナス金利の導入とマネタリーベース増額目標の維持は整合性に欠けること、マイナス金利は市場機能や金融システムへの副作用が大きいこと、海外中銀とのマイナス金利競争に陥る可能性があること、日本銀行のみが最終的な国債の買い手となり、市場から財政ファイナンスと見做される惧れがあることへの懸念を示した。」

 この発言も的を射ている。短期金融市場ばかりでなく債券市場も機能不全に陥りつつある。流動性の意味合いからも債券市場はリスクが高まりつつある。また、イングランド銀行のカーニー総裁は各国中銀のマイナス金利導入は「近隣窮乏」環境生む恐れがあるとの見解を示すなど、米国などを含めての批判も強まっている。

 そして、最も注意すべきは国債市場が財務省と業者と日銀だけの右から左への動きだけとなりつつあり、業者も今後は日本の国債市場から徐々に手を引く懸念もある。そして、財政ファイナンスとの認識が今後より強まるリスクがあり、これはいずれ日本国債の信認にも関わってくる潜在的な問題となりかねない。

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by nihonkokusai | 2016-03-19 10:24 | 債券市場 | Comments(0)

日本の国債市場への危機感

 8日から9日にかけての日本の債券市場での超長期債を中心とする乱高下は、日本の債券市場が機能不全に陥りつつあることを示している。日銀は年間に入札等で発行される国債のほとんどを買いオペで吸い上げている。この場合の新規で発行される国債には借換債も含まれることで、来年度でみると短期債を除く新規発行額の122兆円のうち日銀は120兆円(増額分80兆円プラス償還乗り換え分40兆円)を買い入れる計画となっている。

 日本の国債は国内投資家が95%を保有している。そのうち日銀が268兆2810億円で29.9%、 銀行など民間預金取扱機関が245兆7416億円で27.4% 民間の保険・年金が232兆6832億円で25.9%、公的年金が52兆3086億円で5.8%、海外が45兆7410億円で5.1%などとなっている(2015年9月末現在)。

 つまり新規国債は日銀が独占的に買い占めてしまうことになり、国内の金融機関保有の国債の償還を乗り換えようとしても買い入れる国債は計算上はない。さらに日銀はマイナス金利政策まで導入してしまった結果、一時残存12年あたりまでの国債までがマイナス金利となった上に、超長期債の利回りも急低下してしまったことで、運用利回りそのものが求められない状態となっている。

 9日に年金などのパッシブ運用のベンチマークとなっているBPIと呼ばれる指数がマイナス0.01%と初めてマイナスとなってしまった。ベンチマークに合わせて運用すると損失が発生する計算になる。このため、運用先として外債等の割合が大きくなるのかもしれないが、これはあらたに為替リスクなどを負うことにもなる。

 短期金融市場もマイナス金利政策によりかなりの動揺を受けているが、システム対応等は徐々に進むとしても、そもそもマイナス金利という状況下では市場参加者は極めて限られることになり、市場の流動性が後退してこよう。

 債券市場も同様であり、本来の中心プレーヤーであったはずのメガバンクや生保、年金などはマイナス利回りの国債は購入しづらい上、新発債中心に日銀に国債が吸い上げられたことで市場の流動性が枯渇していることで手が出せない状況にある。

 海外投資家に関しては、日本の機関投資家の外債需要にともなうドル需要を受けて調達した円の運用でマイナス金利での日本国債も購入できる外銀などはあっても、海外の年金運用などは日本国債の運用利回りの低下で保有額を減額させているところもある。

 そして今回の乱高下によって最も動揺を見せたのがプライマリーディーラーなどの業者であったかもしれない。3月は償還月ということで新たに入札された10年債や30年債の発行日がいつもよりも先になる。つまり国債を入札で仕入れて日銀の買入に向けて売却するという簡単なお仕事のはずが、保有期間が長くなることでその間の価格変動リスクに晒される。そのリスク回避の動きも今回の国債の相場の乱高下のひとつの要因となった可能性がある。

 このように今回の日本国債の乱高下は償還月といった特殊な要因に影響された可能性はあるものの、日本の債券市場の流動性がかなり後退し、きっかけ次第では価格変動リスクに晒される懸念も示された。

 すでに日本の債券市場を形成するプレーヤーは、発行する財務省と大量に買い入れる日銀、その間を繋ぐ業者だけという構図となっている。この業者がもし市場リスクを意識して売買を手控えるようなことになると債券市場そのものがさらに機能しなくなる懸念も存在しよう。日銀の追加緩和期待も一部にあるようだが、日銀がもしまた国債の買い入れを増額するなり、マイナス金利を深めるような追加緩和を実施するとなれば、債券市場がさらに危機的状況に陥る懸念が存在することを改めて認識すべきであろう。

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by nihonkokusai | 2016-03-11 09:54 | 債券市場 | Comments(0)

個人向け社債は買いなのか

 24日の日経新聞によると、22日に社債の利回りが初めてマイナスを付けたようである。日銀が22日に実施した社債の買入において、平均落札利回りがマイナス0.031%と初めてマイナスとなった。これを受けて市場でも初めてマイナス金利での出合いがあり、ファーストリテイリングやJR東日本の社債がマイナスで取引された。

 通常であれば投資家はマイナス金利の債券を購入して運用することはしない(絶対しないわけではなく、しかたなくせざるを得ないケースはある模様)。国債も同様ながらマイナス金利となった背景には、オペでさらなるマイナスで日銀が購入することが見込まれることや、一部外銀などがマイナス金利でも円資金を運用できるためである。

 そして「個人向けに高利回り債」として三菱UFJフィナンシャル・グループが個人投資家向けに劣後債を1000億円発行するそうである。10年満期ながら5年目以降に銀行が期限前償還できる条項が付いた10年債である。利率は2月26日に決定されるが0.1~0.5%となる見込みのようである。

 劣後債とは、劣後特約のついた社債のことである。劣後特約とは社債に付けられた特約条項のことである。その特約条項の内容は通常、劣後債を発行した企業が倒産した場合、劣後特約のついた社債の返済は一般債権者への支払いが全て完了した後に行うという内容となっている。デフォルト時の元利金の支払い順位が一般債務よりも低くなっており、もし発行した企業が経営破たんした場合には、株式と同じく紙切れ同然になるリスクがある。劣後債のリスクは、一般に普通社債と株式の間くらいとの認識のようであるが、その分、普通社債よりも利率は高く設定されている債券である。

 劣後債の発行体をみると、金融機関が非常に多い。金融機関は法律で一定以上の自己資本比率の維持を義務付けられている。劣後債は、会計上は負債に分類されるものの、銀行経営の健全性を維持するための国際ルールであるBIS規制では、自己資本の補完的項目(Tier2)への算入が一定限度まで認められている。このため、株主の権利を希薄化させずに、金融機関は自己資本を高められるというメリットがあるため、金融機関は劣後債を発行している。以前は、劣後債の大半は機関投資家向けとなっていたが、リーマン・ショック以降は一時、機関投資家向けの社債の発行ができなくなるなどしたことで、個人向け劣後債の発行も多くなった。個人投資家にしても、金融市場の混乱と円高進行などから、円建てでより安全とみられる商品へのニーズが強まったことで人気化した。

 金融機関の発行する劣後債には、今回のものを含めて、満期前に繰上償還される「期限前償還(コーラブル)条項」が付いているものが比較的多い。劣後債の期限前償還条項とは、発行体が債券の繰上償還をするかどうかは決めることができるもので、いつ償還となるか事前には確定していない。しかし、劣後債を自己資本とみなすルールには、劣後債の償還まであと5年以上残っていなければならない、というルールが存在する。残存期間が5年を切ると年率20%で累積的に減価しなければならないのである。このため、実際には残存5年のタイミングで繰上償還となるケースが「大半」となっている。劣後債は、BIS規制において自己資本に算入可能であるため、金融機関には残存5年のタイミングで繰上償還し、再度劣後調達を行うインセンティブが働くのである。

 ただし、絶対にコールがかかるというわけではない。これまで大手金融機関が発行した劣後債で、繰上償還が見送られた事例は少ない。しかし、発行体の財務内容が大幅に悪化し繰上償還するだけの余裕がなかったり、金利の上昇などにより再調達コストが大幅に上昇した場合などでは、期限前償還が見送られる可能性があることにも留意する必要がある。

 個人投資家にとって劣後債を買い付ける際には、上記の劣後債そのものの性質とともに、買付金額の大きさや途中売却の難しさも意識する必要がある。

 金融機関の発行する劣後債の最低単位は通常の個人向け債券よりも大きくなっている。劣後債は売りたい時に必ず売れるとは限らず、その流動性の低さに注意が必要である。個人向け国債は途中売却の際には財務省が買い取るが、劣後債は発行する銀行側が買い戻す義務はない。ただし、発行した証券会社が買い取ることは考えられるが、流動性がない分、購入価格よりも安い値段で買い取ることも考えられるため、できる限り途中売却は避け、基本的には購入したら償還まで持ちきることを前提に購入する必要がある。

 そして本来であれば上記の条件が付いているため、金利は比較的高く設定される。今回も預金金利の0.001%などに比べれば高そうに見えるが、ある程度のリスクもありながら0.1~0.5%しかない実質5年債の社債を購入すべきかについては私は疑問である。

 現在の金利は日銀により作為的に作られたマイナス金利であり、その反動なども意識して資金は待機すべきものと思われる。無理にリスクは取るべきではない。その意味では最低金利の0.05%が保証されている個人向け国債(お薦めは10年変動タイプ)や、いまのところはマイナス金利ではない預貯金に資金を置いておく方がベターであると考える。

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by nihonkokusai | 2016-02-25 09:35 | 債券市場 | Comments(0)

マイナス金利導入に身構える市場

 2月12日の東京市場で日経平均は大きく下落し一時、15000円の大台を割り込む場面もあった。11日にドル円が一時110円台をつけるなどの円高や欧米の株式市場の下落も嫌気された。この株価の下落や円高はリスク回避の動きの強まりを示すものであり、そうであればリスク回避資産として国債は買われるはずである。ところが12日の債券先物は寄り付きこそ買われたが、その後は下落基調を強め、78銭安の151円11銭で引けている。10年債利回りは9日と10日にマイナス0.035%まで以下したが、12日にはプラス0.075%に上昇した。

 長期金利のマイナス化の背景には、1月29日の日銀の金融政策決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入が決定された。これにより長期金利はさらに低下し、そこに海外発のリスク回避の動きが加わって、2月9日に10年債利回りが一気にマイナスに低下したのである。

 ただし、この間のいわゆるイールドカーブはかなりぬ興味深い格好となった。最も短い金利である無担保コール翌日物の金利はいまのところマイナスとなっていない。これはマイナス金利の適用が16日からということで、先んじたような動きとなっていなかった面もあるが、取引する金融機関のシステムが無担保コール翌日物の取引のマイナス化を想定しておらず、対応し切れていない面も指摘されている。

 10日のイールドカーブをみてみると、短いところがゼロ近辺で、そこからマイナスとなり、残存4年程度のマイナス0.2%台が底となって上昇し、10年でゼロ近辺、さらに長いところはスティープ化している。

 10年以下の国債利回りがマイナスとなったことにより、国内投資家はこのマイナス金利での国債運用は躊躇せざるを得ない。しかし、いきなりプラス利回りの期間の長い国債にシフトすることも難しいとなれば、ある程度のマイナス利回りは許容しても運用せざるを得ない面もある。

 それでも現実に16日以降のマイナス金利の適用で短期市場ばかりでなく、債券市場でもどのような動きになるのか、いまのところ予想が付かない面もある。このため、12日は高値警戒もあったろうが、16日のマイナス金利導入前にポジションをいったん手仕舞うような動きが出た可能性もある。もちろん金利がマイナスのタイミングで利益確定売りを出したこともありうる。

 はたして16日以降、短期金融市場や債券市場はどのような動きをみせるのか。短期市場に関してはマイナス金利へのシステムの未対応のところもあって、当面はマイナス化はないとの見方が強い。債券市場にあってはマイナス化はやむを得ないという面はあるが、マイナス金利の国債を積極的に買える状況でもない。

 当面は国債の入札や日銀の国債買入をこなしながら、少しずつ落ち着きどころを探る展開となりそうながら、そこに海外初の相場変動が加わると、ますます参加者が減って値動きが荒くなることも予想されるのである。

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by nihonkokusai | 2016-02-16 09:47 | 債券市場 | Comments(1)

日本の長期金利がマイナスとなった理由

 2月10日の新聞各紙の一面トップは「長期金利、初のマイナス」との見出しが踊っていた。これほどまでに長期金利が大きくニュースに取り上げられるのは、やや意外感もあった。株式市場や外為市場の動向が取りあげられることはあっても長期金利、つまり債券市場の動向がこのように取りあげられるのは極めて珍しい。それだけ、今回の長期金利のマイナス化は注目を集めていたということになる。

 私自身は長期金利、つまり10年債カレントのゼロ%までの低下はいずれあるかもしれないが、マイナスには簡単にはならないのではないかと漠然と考えていた。10年債利回りのマイナス化にはさすがに抵抗があるだろうと思っていたが、市場の勢いは止まることなく9日の前場に長期金利はゼロ%をつけ、後場にはあっさりマイナスとなり一時マイナス0.035%まで低下することになった。

 なぜ日本の長期金利がマイナスとなったのか。これについては日銀の金融政策が大きく影響していたことは間違いない。

 9日にこの長期金利のマイナス化についてのコラムの依頼があり、それを書いた際に長期金利とは何かという肝心の説明が抜けていたことにあとで気がついた。いやあえて触れなかったともいえるか。つまり、本来の長期金利とは日本の経済・物価の動向などを反映し、投資家のニーズ、財務省の国債発行計画などを考慮して、市場において需給バランスが取れたところの10年国債の利回りが長期金利となる。

 ところが現在の長期金利はそのような需給バランスは反映されていない、というよりも日銀がほぼ発行額の全額近くを買い込み、需給バランスを崩してしまっている。

 外国の銀行などは日本の機関投資家からのドルの要請ニーズに応えると大きな利息付きの円が手に入る状況が続いており、外銀などは結果として保有することになる円の運営上は、ある程度のマイナス金利も許容できることで比較的短いところの金利はすでにマイナス化していた。これに加え、ECBのマイナス金利政策により、欧州で中期ゾーンあたりまでの利回りがマイナス化していたことも日本の中期ゾーンあたりまでのマイナス金利の要因となっていた。

 そこに突如、出てきたのが、1月29日の日銀のマイナス金利付き量的・質的緩和政策の決定である。マネタリーバランスを維持したまま、一部の超過準備の付利をマイナスにするという良いとこ取りの荒技政策を打ち出した。

 金利に関しては日銀の思惑通り、これによって足元の金利がさらにマイナス化することとなり、それが長い期間の国債に波及した。いきなり残存8年あたりまでの国債利回りがマイナスとなってしまったのである。

 日銀がそもそもこのタイミングで追加緩和を決定したのは、年初からの円高株安の動きによるものであった。その背景には中国など新興国の経済減や原油安が要因となっていた。日銀は追加緩和で2014年10月のバズーカ第二弾のような円安株高効果を期待したと思うが、すでに市場は追加緩和への感応度は低下していた。日銀のマイナス金利政策で一時的に円安株高となったものの、それはあっさりと剥げ落ち、日経平均は16000割れとなり、ドル円は11日に113円割れとなった。つまりリスク回避の動きをさらに強める結果となってしまったのである。

 このリスク回避の動きが加わったことにより安全資産としてさらに国債が買われることとなり、その結果、2月9日に期間10年の国債利回りがマイナスとなってしまったのである。日銀としては長期金利のマイナス化は想定内であったかもしれないが、リスク回避による円高株安を伴った格好での長期金利のマイナス化は想定外であったかと思う。

 実際にマイナス金利が適用されるのは2月16日以降であるが、このマイナス金利は様々なところに影響を与えつつある。もちろん住宅ローン金利の引き下げなど良い面はあるかもしれないが、金融市場関係者、特に資産運用を手がける人たちは悲鳴をあげている。銀行などの利ざやも縮小させることになり、欧州や日本の銀行株が大きく下落し、これがさらにリスク回避の動きを強めるという悪循環になりつつある。

 日本の長期金利がマイナスとなったが、それを促進させた格好の中央銀行の金融政策に対し、風当たりが強まるという皮肉な結果を招いている。ここにきての円高などの強まりで、もし日銀が緊急の決定会合を開催し追加緩和を決定するようなことをすれば、むしろ絶好の円買いドル売りのチャンスを作ってしまうことにもなりかねない。そのような状況に陥りつつある。

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by nihonkokusai | 2016-02-11 10:58 | 債券市場 | Comments(1)
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