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カテゴリ:債券市場( 677 )

トランプ相場は終焉したのか

 米東部時間11日午前11時(日本時間12日午前1時)に米国の次期大統領となるドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利してから初めて、公の場で記者会見を開いた。金融市場だけでなく世界中の多くの人々が、その会見の内容に注目していた。

 トランプ氏はこれまで過激な発言を続け、その過激な発言そのものが大統領選挙ではむしろ追い風になった面もあったとみられる。大統領選後は公の場での発言は控えていたが、ツイッターを利用して「トヨタは米国向けカローラを生産するためにメキシコのバハに工場を建設しようとしている。あり得ない!」といった批判的な書き込みをしていた。今回のトランプ氏の会見では日本に対して具体的な言及はなかったが、貿易不均衡の相手先として中国やメキシコとともに日本も言及しており、貿易に絡んでの批判を強めることは予想される。

 金融市場では減税を含めた経済政策に関して何かしら具体的な示唆があるのかどうか注目されていた。こちらについても具体的な言及はなかった。11日の米国株式市場やドル円はトランプ氏の会見を受けて乱高下したが、これは内容そのものよりもアルゴリズム取引などによる影響もあったのではないかと思う。結果として11日のダウ平均は98ドル高、ナスダックも11ポイント高と高値を更新した。一時114円20銭台あたりに下落していたドル円は115円台に戻している。ただしチャートをみると、このドル円や日経平均は多少の調整を余儀なくされる可能性はある。

 このトランプ氏の経済政策を期待して、景気の回復と物価の上昇を睨んだ動きがトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた。昨年の大統領選挙の結果を受けての米長期金利やドル、米国株式市場の上昇などを総称したものであった。これは東京市場もその恩恵を受けた格好となり、ドル円は11月9日につけた101円台から12月には118円台に急上昇した。日経平均も11月9日に16000円近くまで売られたあと急速に切り返し、今年に入り2万円に接近した。

 これらの動きだけをみると2012年11月に発生したアベノミクス相場と類似している。このときも安倍自民党総裁のリフレ発言で、物価の上昇や景気の回復が意識されて、急速な円安と株高が起きたとされた。しかし、これらの動きはトランプ氏の政策(まだ具体化もしていない)や安倍首相の政策(そもそも物価は上がっていない)が、具体的な効果を発揮したというよりも、大きな流れが変化しつつあるときの起爆剤のようなものになったに過ぎないと私はみている。

 トランプラリーが期待感だけであり、ここにきてドル高や米金利高、株高などにブレーキが掛かったことで、すでにそれは終わってしまったとの見方も出ている。しかし、それはまだ結論づけることはできない。トランプラリーと呼ばれた金融市場の動きの背景にあるのが、世界的な危機の連鎖の終焉とそれらによる正常化の流れによるものとみれば、その流れは簡単には止まらないとみている。

 米国株式市場をみてみると、ここにきてややダウ平均はブレーキが掛かっていたが、ナスダックは連日の高値更新となっている。トランプ政権と変わるとアップルなど世界的なハイテク企業に対しての圧力が加わるとの見方もある。ところがそれらハイテク企業の株も買われているのは、やはり景気そのものの回復も背景にあるのではなかろうか。

 米10年債利回りの推移をみると11月に1.7%台あたりにいたのが、12月には2.5%台に乗せるなどやや急ピッチな上昇となっていた。さすがにそろそろ調整が入ってもしかるべきタイミングであったようにもみえる。それでも米長期金利がボトムをすでに打っており、今年のFRBにとって複数回の利上げが可能となるのであれば、米長期金利はいずれ3%台に乗せてくる可能性はありうるとみていたほうが素直かなとも思う。

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by nihonkokusai | 2017-01-12 10:10 | 債券市場 | Comments(0)

11月は都銀が中期債主体に大量に買い越す

 12月20日に日本証券業協会は11月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

10月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し
単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -20620(758、-7871、-12087)
地方銀行 1678(1136、576、755)
信託銀行 9062(170、4925、923)
農林系金融機関 -3655(-3165、189、1)
第二地銀協加盟行 -1322(-810、-181、-30)
信用金庫 -3448(-1523、-1053、4)
その他金融機関 -222(-174、395、-27)
生保・損保 -5786(-5480、88、83)
投資信託 -254(198、-623、586)
官公庁共済組合 737(-170、626、234)
事業法人 -353(-87、0、0)
その他法人 269(-219、310、338)
外国人 -11672(2275、-2448、-10674)
個人 218(-1、21、4)
その他 3269(9421、-1547、-1093)
債券ディーラー -400(-74、-442、194)

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において、金融政策の総括的な検証を行ったことに加え、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。

 11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏が勝利したことをきっかけに金利高、ドル高、株高が起き、これはトランプラリーと呼ばれた。12月のFOMCでの利上げ観測が一層強まり、米長期金利はあっさりと2%台に乗せてきた。日本の国債の利回りも上昇し、日銀は11月17日に中期ゾーンの利回り上昇抑制のため、初の国債の指し値オペをオファーした。

 11月の国債の投資家別売買高をみると都銀は2兆620億円の買い越しと2兆円を超す買い越しとなっていた。都銀の国債売買高をみると10月の5兆167億円を上回り、5兆5900億円となっていたが、このうち中期ゾーンが2兆189億円と10月の1兆3826億円を大きく上回っていた。トランプラリーの影響に伴う中期ゾーンの売りと日銀の指し値オペ実施による買い戻しに都銀は大きく関わっていた可能性がありそうである。

 中期ゾーンと言えば海外投資家の売買が中心を占めていたことで、こちらの動向も確認してみたい。外国人は1兆1672億円の買い越し。10月の買い越し額は5717億円に減少していた。10月はこれまで大量に買い越していた中期ゾーンを少額ながら売り越していたが、11月は再び1兆円を超す買い越しに転じた。海外投資家の全体の売買高をみると10月に比べ11月は増えていたが、中期ゾーンについては11月は10月より減少していた。海外投資家は11月はそれほど活発に動いていたわけでもなさそうである。

海外投資家の売買状況
月 売買高(マイナスは買い越し)、(中、長、超長期)、全体売買高、うち中期

4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513
5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315
6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055
7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036
8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718
9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124
10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534
11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912

 中期ゾーンについては指し値オペの水準(2年債利回りで-0.090%、5年債利回りで-0.040%)が意識されて、上昇しづらい状況にいるが、10年債利回りは12月16日に0.1%に上昇している。超長期ゾーンの利回りも上昇しているが、日銀は通常の国債買入の買入額の調整で、上昇ピッチを抑えようとしている。この間に投資家がどのような売買を行っていたのか、12月の動向も要注目となる。

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by nihonkokusai | 2016-12-21 09:58 | 債券市場 | Comments(0)

金融市場は中央銀行の都合で形成されるものではない

 米長期金利の上昇が止まらない。12日には一時2.5%台に上昇した。原油先物も上昇し、WTI先物1月限は一時54ドル台をつけたことも、米長期金利上昇を促す格好となった。米長期金利の上昇はドルも押し上げ、ドル円は一時116円台をつけた。しかし、ドル円はその後114円台に下落するなど波乱含みの様相ともなり、FOMCも控えて米長期金利やドルの上昇はいったんピークアウトした可能性もある。

 米長期金利の上昇は英国やドイツなどの長期金利の上昇を促した。日本の国債利回りにも影響を与えたが、日本の国債利回りは日銀のイールドカーブ・コントロール政策もあってやや歪なものとなっている。

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を導入した。その主な内容として長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」を打ち出してきた。長期金利、つまり10年物国債金利については概ねゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う、とした。

 そして、長短金利操作を円滑に行うため、日銀が指定する利回りによる国債買入れ(指値オペ)を実施するとした。イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。

 この指し値オペは9月の決定会合後に一度だけ実施された。日銀は11月17日に初の国債の指し値オペをオファーしたのである。トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇、特に中期ゾーンの金利上昇を背景に、2年国債と5年国債を対象とした指し値オペをオファーした。ただし、初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識された。

 ここにきての米長期金利の上昇を受けて日本の国債利回りの変化が大きかったのは、超長期と呼ばれる期間20年を越えるところとなった。12日の現物債の売買をみても、2年や5年といった中期ゾーンはほとんど商いはなかった。手を出したくはないといったところであったのか。

 10年債利回りも上昇したものの、日銀の言うところの概ねゼロ%程度がどの程度の範囲を示しているのかを試しているような格好となった。これまでの10年債利回りの動向をみると、下限はマイナス0.1%が意識されていたため、上限はプラス0.1%あたりかとの見方が強い。12日の引け後に10年債利回りはプラス0.080%に上昇し、0.1%に接近した。

 これに対して超長期債については、日銀のイールドカーブ・コントロールの対象に含まれているのかどうかも試しているように思われる。12日に20年債利回りは0.630%、30年債は0.800%、そして40年債利回りは0.945%に上昇した。超長期債利回りは1%が見えてきた。

 日銀は20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしているため、当然ながら超長期債の利回り上昇にもブレーキをかけるために指し値オペを実施してくる可能性はある。

 日銀が9月21日に長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を何故、導入したのか。それは1月のマイナス金利政策の導入で長い期間の国債利回りも低下してしまい、20年債あたりまでマイナス金利となってしまったため、機関投資家による国債での運用に支障をきたしてしまったことによる。つまり、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策は、この超長期の金利を引き上げて、イールドカーブをスティープ化させることに意味があった。

 日銀はイールドカーブをコントロールすることによって物価上昇を促すとしているが、カーブコントロールで物価が動かせるというよりも金融機関の資金運用等に配慮したわけである。

 ただし長期金利を押さえ込むことによって米長期金利が上昇した際には、日米の長期金利のスプレッドが拡大し、円安を促すという効果は見込めるし、現実にそうなっている。これを見る限り日銀にとってはしてやったりとなるかもしれない。

 しかし、本来市場で形成されるべき金利を日銀が無理矢理押さえ込んでいることも確かである。ここにきての足元消費者物価も前年比マイナスにあったことで、日銀が押さえ込むというよりも、長期金利も低下圧力の方が掛かりやすかった。しかし、今後は原油価格のボトムアウトも手伝って、物価が前年比でプラスに転じることも予想される。つまりこれからはまさに長期金利の上昇を押さえ込むような格好となりかねない。そこに市場との摩擦が生じることも予想される。

 日銀がどのような相場観を持ってイールドカーブ・コントロールを実施してくるのかは不明である。日銀は巨大な投資家であれど債券市場では機械的な買いしか行ってこなかっただけに、適切な居所を見いだし、そこにコントロールができるのかは極めて疑問である。市場は多種多様な思惑がぶつかって形成されるものであり、中央銀行の勝手な都合だけで形成されるものではない。この矛盾がいずれ国債市場で噴出してくる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-12-14 09:58 | 債券市場 | Comments(0)

海外投資家の国債買い越し額が減少


 11月21日に日本証券業協会は10月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

10月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -12321(-3076、-3123、-5334)
地方銀行 -8334(-2678、-5038、275)
信託銀行 5864(607、-262、4757)
農林系金融機関 -2939(-2012、7、1)
第二地銀協加盟行 -1045(-856、-62、60)
信用金庫 -929(22、-117、15)
その他金融機関 -1581(-856、-1557、1578)
生保・損保 -4493(-2086、210、317)
投資信託 -1481(-472、-172、-396)
官公庁共済組合 -110(-49、46、47)
事業法人 -620(1、19、7)
その他法人 -555(-53、33、67)
外国人 -5717(1051、-5636、166)
個人 238(-1、32、4)
その他 17279(7202、5024、9155)
債券ディーラー -398(26、-12、-375)

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において、金融政策の総括的な検証を行ったことに加え、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。

 10月は投資家は国債売買そのものを手控え、売買高は大きく減少したと思われた。ところが国債の投資家別売買高(一覧)での全体合計の国債売買高でみてみると10月は181兆1267億円と9月の216兆335億円よりは減少したが、思ったほどの落ち込みとはなっていなかった。

 それよりも興味深かったのは、外国人投資家と買越額の減少と都銀の買越額の増加か。都銀は9月の1139億円の買い越しから、10月は1兆2321億円の買い越しとなっていた。比較的中期債主体ではあるが万遍なく買い越していた。都銀の売買高は8月に1兆7326億円と、データがある2004年4月からでは過去最低水準となっていたが、9月は3兆6046億円、10月は5兆167億円と回復しつつある。

 そして海外投資家であるが、最近の買越額は下記となっていた。

4月-36565(328、-9142、-27271)
5月-16775(1347、-6186、-10933)
6月-36565(328、-9142、-27271)
7月-16693(1860、-4453、-13200)
8月-16838(-1108、-5390、-9702)
9月-27674(-3320、-4283、-19310)
10月-5717(1051、-5636、166)

 10月の海外投資家は中期ゾーンの買越額が前月までに比べて大きく減少させており、その結果全体の買越額も大きく減少させてきた。相場はそれほど大きく動かなかっただけに、この動きは興味深い。

 11月に入ると8日の米大統領選挙の結果、トランプ氏が勝利したことをきっかけに米長期金利は大きく上昇し、ドル円も大きく上昇し、地合が一変した。日本の国債の利回りも上昇し、日銀は11月17日に中期ゾーンの利回り上昇抑制のため、初の国債の指し値オペをオファーした。11月のこの海外投資家を中心に売買状況は大きく変化してきた可能性もあるため、11月の数字も要注意となる。

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by nihonkokusai | 2016-11-22 09:41 | 債券市場 | Comments(0)

日銀による初の国債の指し値オペの目的は何か

 日銀は17日に初の国債の指し値オペをオファーした。この目的は何かと問われれば、トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇の抑制となる。

 日経QUICKニュース社の取材に答えた日銀の金融市場局の担当者は、指し値オペの実施を初めて通知したことについて「短中期の金利の急速な上昇を踏まえたもの」とした。

 黒田日銀総裁は17日午前の参院財政金融委員会で、米金利の上昇につれて日本の金利に上昇圧力がかかる中、長短金利を操作目標としたイールドカーブ・コントロール政策の下では、日本の金利上昇を容認することはないと語った(ロイター)。

 日銀が17日は20年国債の入札日であるにも関わらず、異例の国債買入、しかも初の国債の指し値オペをオファーした背景には16日の債券相場の動きがあった。

 10年債利回りは16日の引け後にプラス0.035%まで上昇し、2年債利回りはマイナス0.095%、5年債利回りはマイナス0.040%に上昇した。

 今回の指し値オペの指し値が、2年利付国債370回の買入利回りで-0.090%、5年利付国債129回の買入利回りは-0.040%とまさに16日に売り込まれた水準であったことからもそれが伺える。

 それでは何故、「長短金利」操作をうたった日銀が「中期」の金利の抑制に動いたのか。これは長期は0.035%まで上昇したとはいえ、概ねゼロ%という水準に近いことで動きづらい面があった可能性がある。それよりも16日の債券市場でまとまった売りが中期ゾーンに入り、中期ゾーンの利回り上昇に対して日銀が警戒した可能性がある。

 当然ながらこの中期ゾーンの売りの要因なり売り手を探るため、日銀は市場関係者にヒアリングを実施した事も考えられる(通常でも意見交換はあると見られるが特に念入りに)。

 その結果、指し値水準から見ても16日の段階で17日中には初の国債の指し値オペを実施することを決めていたのではないかと思われる。国会に出席する黒田総裁の耳にも事前に入れておいたはずである。

 これでいよいよ日銀のイールドカーブコントロールが試されることとなる。17日の初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識される。

 ただし、今後米金利がさらに上昇する事態も考えられる上に、16日の中期債の売り手が国内ではなく海外投資家の可能性もある。日銀は無制限に買い入れるとしているが、海外の金利動向次第では、日本の長期金利形成が歪なものとなる可能性もある。為替介入でも自国通貨安を食い止めることに無理はある。このようなことをもし日銀が続けるとなれば、いずれ日銀は市場参加者と立ち向かうことにもなりかねない。

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by nihonkokusai | 2016-11-21 09:59 | 債券市場 | Comments(0)

トランプ効果で日本の長期金利がプラスに転じる

 16日に10年国債の利回り(長期金利)がプラス0.005%を付けた。日本の10年債利回りがプラスとなったのは、9月21日に日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」を決定したことを受けて一時的に10年債利回りがプラス0.005%に跳ね上がって以来となる。

 9月21日に瞬間的にプラスに転じた10年債利回りはその後、日銀のイールドカーブコントロールの居所を探るような展開となった。長短金利操作に関して日銀は「10年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う」としていたが、「概ね」ということで市場ではそれはある程度のレンジを想定しているとし、その下限を探りにいった。

 なぜ下限を探りに行ったのかといえば、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」ではイールドカーブコントロールとともに、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」が加わっていたためである。

 足元の消費者物価上昇率は前年比マイナスの状態が続いており、日銀の目標値を大きく下回っている。目標達成時期も先送りせざるを得ない状況で、いずれ日銀は追加緩和をせざるをえないのではとの見方も一部にあり、金利のバイアスとしては下方に働きやすかった。その結果、10年債利回りは下がったが、マイナス0.1%が下限として意識された。その後、ゼロ%からマイナス0.1%の間でのレンジ内相場が続いた。その地合を変化させたのが、トランプ氏の米大統領選の勝利をきっかけとした米国の長期金利の上昇であった。

 米国の10年債利回りは大統領選挙前は1.8%近辺にあったが、大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けて、あっさりと2%を超えて上昇した。14日には一時2.3%台をつけてきた。これは欧州の債券市場にも大きな影響を与え、ドイツや英国だけでなく、イタリアやスペインなどを含めて国債の利回りが大きく上昇した。ドイツやフランス、英国の長期金利上昇はトランプ氏の勝利をきっかけとした米長期金利に連動した面が大きいのに対し、南欧諸国の国債利回りはイタリアの12月の国民投票に対してトランプ勝利の影響が危惧された面も大きかった。

 米長期金利の上昇を受けて、外為市場ではドルも上昇した。ドル円は16日に109円台をつけた。円安によって東京株式市場は上昇し、日経平均は18000円に迫る勢いとなっている。

 債券市場は日銀の顔色をうかがいながらの動きが続いていたが、さすがにこの外部環境の変化を受け、ここにきてイールドカーブ全体が水準訂正を行ってきた。トランプ氏の登場で米国の物価が上昇し、日本にも波及するというようなシナリオに沿ったものというより、米金利上昇と円安株高に反応した面が大きいと言える。さらに日銀のシナリオからみて10年債利回りもゼロ%はまさに目標値であり、ここで日銀が金利上昇抑制の動きに出ることも考えづらい。問題はここからである。

 トランプ効果による米長期金利の上昇とドルの上昇がどこまで行くのか。米長期金利の目処としては2013年末につけた3%あたりとなる。ドル円は目先110円が意識されよう。米長期金利上昇の背景には12月のFOMCでの利上げ観測の再燃もある。しかし、前回の昨年12月から1年も費やしてやっと追加利上げができたとしても、さらなる追加緩和は容易ではない。このあたりトランプ大統領の就任後の政策を見極め、それが本当に物価上昇に結びつくのかを検証する必要がある。

 日本の長期金利は日銀の想定する下限ではなく、今度は上限を探る展開となることが予想される。そうなるとプラス0.1%あたりが想定されよう。そのあたりまでの金利上昇であれば許容範囲内となるのではなかろうか。ただし、生保などの投資家は、超長期債の利回りが1%あたりまでの上昇を望んでいると思われ、多少利回りが上昇したところで、積極的に買い進むという地合でもない。いまのところはまだ日本の長期金利は日銀の手のひらのうちにある。あくまで「いまのところは」であるが。

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by nihonkokusai | 2016-11-17 10:08 | 債券市場 | Comments(0)

金融政策によって長期金利をコントロールすることは可能か

 日銀はこれまで長期金利は操作できないとしていた。すでに更新されてしまっているが、日銀のサイト内に「日本銀行の金融調節を知るためのQ&A」というコーナーがあり、このなかで次のような説明がなされていた。

 「金利は期間が長いほど、将来のインフレなどの経済情勢に関する予想や将来の不確実性に左右されます。しかし、中央銀行は、人々の予想や将来の不確実性を思いのままに動かすことはできません。また、このような期間の長い金利の動きから、市場参加者が将来のインフレ情勢等に関しどのような予想を持っているかを読み取ることも、金融経済の状況を判断するうえで非常に重要です。つまり、中央銀行が誘導するのに適しているのは、ごく短期の金利なのです。期間が長い金利の形成は、なるべく市場メカニズムに委ねることが望ましいのです。」(以前にあった日銀のサイトから引用)

 日銀は「長短金利操作付き量的・質的緩和」の決定もあり、上記の部分を修正し、それを「教えて日銀」と言うコーナーで金融政策によって長期金利をコントロールすることは可能なのですか、という質問に答える格好で説明している。

 これに対する回答としてまず、「リーマン・ショック以降、まず米・英などの中央銀行が長期金利に働きかける政策を実施しました。短期の政策金利がゼロ%に達し、いわゆる「ゼロ制約」に直面する中で、更なる金融緩和効果を実現するために、長期国債等の買入れを通じて、長期金利を引き下げる政策を始めた」ことを説明している。さらに日銀も2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」では、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、大規模な国債の買入れを開始したと説明した。

 「2016年1月に日本銀行が導入した「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の経験から、マイナス金利と大規模な国債買入れの組み合わせが、長短金利全体に影響を与えるうえで、有効であることがわかりました。」

 つまり結論として日銀は長期金利をコントロールすることができるとしている。大胆な金融緩和とマイナス金利により長期金利もマイナスに誘導し、「長短金利操作付き量的・質的緩和」によってイールドカーブのスティープ化も可能との認識である。

 過去にできないとしていたことが結果としてできてしまったことにより、説明を修正した。これはある意味、現在の日銀の政策はこうした前提を替えないと矛盾が生じてしまうためでもあろう。果たして金融政策で長期金利はコントロールできるのか。それはこれから試されてくるものと思われる。

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by nihonkokusai | 2016-11-14 09:43 | 債券市場 | Comments(0)

トランプ勝利が世界的な長期金利上昇の引き金に

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 米大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けて、どうやら市場の潮目が変化してきたようにも見える。それを顕著に示しているのが、長期金利の上昇である。

 米国やドイツ、英国の10年国債の利回り、いわゆる長期金利の推移をグラフでみてみると2014年あたりからの低下トレンドがすでに終了し、何かしらをきっかけとして反発局面に移行してもおかしくはなかった。

 そのきっかけが米大統領選挙の結果となることは予想されていた。ただしこれはクリントン候補の勝利により市場が安堵し、12月のFOMCでの利上げも予定通り実施されると予想され、それを背景に米長期金利は2%に向けてじりじりと上昇と、そんなシナリオを描いていた。

 ところが米大統領選挙の蓋を開けてみると、なんとびっくりのトランプ候補の圧勝となった。金融市場では当初、リスクオフの動きが吹き荒れたのだが、懸念は期待に変化してきた。トランプ氏は選挙前の過激な発言は控え、オバマ大統領と早速合うなど融和を図る姿勢に転じた。

 トランプ氏は米国の成長率を2倍に引き上げるとの姿勢も示し、経済成長に向けたテコ入れを図る姿勢も示した。インフラを中心とした財政出動となれば財政悪化も懸念される。すべての国の輸入品に関税をかけるとのトランプ氏の発言もあり、関税引き上げによる物価上昇も意識された。

 10日の米国株式市場では民主党政権下で強まった金融や製薬業界への規制が緩和されるとの思惑も出てきたことで、建機などとともに金融や薬品会社の株が買われ、ダウ平均は過去最高値を更新した。これに対してトランプ氏が距離を置きそうなIT絡みの銘柄は売られたことでナスダックは下落するなど二極化も進行した。

 物価上昇観測、財政赤字拡大の懸念とともに、規制緩和による成長率の引き上げなどが今回の米長期金利の上昇の背景にあるようだが、FRBの動向に向けた思惑も影響を与えている。

 トランプ氏が勝つと市場は混乱し、12月のFOMCでの利上げは先送りされるとの見方が強かった。確かに市場は混乱したが、リスクオフからすぐにリスクオンに転じ、むしろ今後の米国の景気への期待感を強め、物価上予想も強まった。つまりFRBにとっては利上げに動きやすい環境となりつつある。いったん引き下げられた12月のFOMCでの利上げ予想は再び上昇してきており、市場の予想通りにFRBが利上げを決定するとの可能性が出てきた。これも今回の米長期金利上昇の背景にある。10日に米長期金利は2.15%に上昇した。

 この米長期金利の上昇に影響され、ドイツや英国を中心に欧州の国債利回りも大きく上昇した。あきらかに地合は変化しつつある。つまりきっかけ次第で上がることが予想された欧米の長期金利がここにきて底打ち感を強めて、上昇トレンド入りしてきた可能性がある。

 すでに日米欧の大胆な金融緩和政策には限界が見えていた。そもそもさらに金融を緩和しなければいけない状況でもない。それでも市場の期待を引き込もうと日銀など緩和への前傾姿勢を維持させているように見せてはいるが、すでに緩和の時代ではなくなっている。金利がつかない、もしくはマイナスという異常な状態から脱する時がきている。

 日本の長期金利もわずかではあるが上昇しつつある。長期金利をコントロールしようとしている日銀ではあるが、長期金利は日銀の政策だけで動くものでもない。海外の金利動向なども当然影響を受けるし、環境そのものが変化してきた可能性がある。今後の日本の長期金利の動向と、それに対し日銀がどう動いてくるのかも非常に興味深いところである。

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by nihonkokusai | 2016-11-12 11:03 | 債券市場 | Comments(0)

10月の債券先物の値動きが記録的な小ささに

 債券先物の日足チャートを見てみると9月末あたりから非常に小さいものとなっている。ここ4か月の月別の債券先物の日中(ナイトセッション除く)の値幅と出来高の平均値を手元のデータから算出してみたところ、下記のようになった。

7月の平均値幅は33銭、平均出来高は21283億円
8月の平均値幅は33銭、平均出来高は20238億円
9月の平均値幅は27銭、平均出来高は23435億円
10月の平均値幅は11銭、平均出来高は16170億円

 時間の関係で債券先物の過去すべての平均値を確認できなかったが、今年10月の平均値幅の11銭は記録的な小ささになるのではないかと思われる。この数字が示しているのは、日本の国債市場の流動性の低下と言える。

 日本の債券市場の流動性を見るには、もちろん派生商品であるところの債券先物よりも現物債のデータを見る必要がある。しかし、債券先物は債券市場のベンチマークの役割を果たしていることも確かであり、先物の値動きの縮小は債券市場全体の流動性が低下していることを示すものとなる。

 この流動性低下の原因となっているのは言うまでもなく、日銀の金融政策である。10月の流動性が大きく低下したのは、9月21日に決定された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」によるところが大きい。つまりイールドカーブ・コントロールである。これによって10年債利回りがマイナス0.1%からゼロ近辺と動きが小さくなり、債券先物も日々の値動きが小さくなってしまった。出来高も減少していることで市場参加者そのものが減少していることも確かである。

 ただし、中央銀行が本当にイールドカーブをコントロールできるのか。債券の動きが小さくなったのは、大量に国債を買い入れている日銀の政策に因るところが大きいが、物価が低迷していることも要因となり、さらに債券市場を大きく動かすような材料に乏しかったこともある。このような状況が果たしていつまで続くのか。世界第2位の規模となっている日本の債券市場がこのままおとなしくなっていくことも考えづらい。

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by nihonkokusai | 2016-11-02 09:48 | 債券市場 | Comments(0)

ドイツや英国の国債がここにきて売られている理由

 ドイツの10年債利回りは低下を続け、9月28日にマイナス0.15%まで低下した。ここにいたるまでの過程ではいくつもの要因が絡んでいたが、最後のひと押しとなっていたのが、ドイツ銀行の問題となった。米司法省から140億ドルの和解金支払いを要求されているドイツ銀に対し、ドイツ政府は支援の可能性を否定したと報じられたことなどが嫌気されてリスク回避の動きからドイツの国債の利回りに低下圧力が掛かった。

 そもそもドイツの10年債利回りがマイナスとなったのは、ECBによるマイナス金利政策を含めた積極的な金融緩和策による影響が大きかったといえる。その後のドイツの10年債利回りはじりじりと上昇し、プラスに転じている(国債価格は下落している)。

 英国の10年債利回りは8月12日に0.54%に低下した。こちらは英国のEU離脱によるリスク回避の動きとともに、8月4日にイングランド銀行が利下げや量的緩和を含む包括緩和を決定したためである。しかし、その後の英10年債利回りも上昇し1%台を回復している。

 ドイツと英国の10年債利回りが、これでボトム(底値)をつけたかどうかはまだわからないものの、いずれもチャート上でみるとトレンドラインを上抜けてきたように思われる。欧州の国債には明らかな地合の変化も感じとれる。もちろんこの背景としては米10年債利回りが7月8日の1.35%近辺をボトムにじりじりと利回りが上昇してきたことも背景にあろうが、個別の要因も存在する。

 これにはそれぞれの利回りを押しつけていたいくつかの要因が後退してきたことも挙げられよう。ドイツ銀行に対しては米司法省への支払額が当初の140億ドルから、大幅に減額された54億ドルで和解する方向で合意に近付いているとの報道をきっかけにドイツ銀行に対する不安が後退しつつある。

 そして英国のEU離脱の影響についても、当初懸念されていたような金融市場を揺るがすようなショックは起きず、こちらも不安感が後退してきた。新たに首相となったメイ氏はEU離脱プロセスについて、単一市場に可能な限り最大限のアクセス維持を模索する意向を表明したとされる。これが実現可能なのかどうは不透明ながら、英国のEU離脱がそれほど懸念材料視されなくなった。

 それだけではない。ECBの金融政策に変化が生じている。8月にイングランド銀行が包括緩和を決定してもECBは動かなかった。正確には動けなかったとも言うべきか。すでにマイナス金利の深入りの可能性はなくなっており、国債の買い入れ期間の延長すらもできなくなりつつある状況が見えてきた。ユーロ圏の複数の中央銀行当局者から、量的緩和の期間終了前に段階的に買い入れを減らすというテーパリングの可能性すら指摘されていた。

 日銀の9月に決定した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策についても、緩和の姿勢を維持しながらも大胆な金融緩和の調整を余儀なくされたと見る事ができる。イングランド銀行も8月に追加緩和をせざるを得なかったのかもしれないが、これでむしろさらなる緩和余地を自らなくしてしまった格好となっている。

 これらから言えることは日欧の中央銀行はこれ以上の大胆な金融緩和に踏み込む余地がほとんどなくなっているということである。日銀はまだまだやれると豪語しているが、これは現実的ではない。つまりこれから大きなショックがくるとなれば、それに対抗しうる手段が限られてしまっているともいえる。

 しかし、そのようなショックがこないとなれば、異常時の政策からの店じまいを考える必要が出てくる。ここにきてのドイツや英国の10年債利回りの動きは、そのような予兆も感じさせるものとなっている。

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by nihonkokusai | 2016-10-14 09:45 | 債券市場 | Comments(0)
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