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カテゴリ:債券市場( 661 )

日本の債券先物の建玉が10兆円台に復活した理由



 2月3日に大阪取引所に上昇している長期国債先物の中心限月の建玉が10兆円を回復した。債券先物の建玉が10兆円台を越えたのは2016年2月4日以来となる。この日付けを見てピンと来た人もいるのではなかろうか。この数日前となる1月29日の日銀金融政策決定会合でマイナス金利付き量的・質的緩和の導入を決定していた。


 昨年1月29日に日銀が決定したマイナス金利政策により、その後の国債の利回りは20年ゾーンあたりまでマイナスとなってしまった。債券市場では日銀のマイナス金利政策による国債利回りのマイナス化を受けて参加者が減少し、その結果として債券先物の建玉も減少していったのである。


 国債の利回りのマイナス化により、銀行や年金や生保などの資金運用に支障を来すようになり、日銀のマイナス金利政策に対して金融機関からも批判が相次ぐようになった。三菱東京UFJ銀行は国債市場特別参加者制度の資格を返上したが、これも国債利回りのマイナス化が影響していたといえる。


 こうした金融機関などからの批判を受け、日銀は総括的な検証を行うとともに昨年9月に長短金利操作付き量的・質的緩和政策を決定した。これまで日銀は操作できないとしていた長期金利を操作対象に加えたわけであるが、この政策の目的はマイナス金利政策の修正と言えた。


 つまり国債のイールドカーブをある程度スティープ化させて、金融機関の資金運用をやりやすくさせることが目的となったのである。これを受けてマイナスに沈んでいた10年国債の利回りがプラスに浮上し、債券市場での売買高も回復基調となった。債券市場の機能が回復し、それを示す象徴的なもののひとつが、この債券先物の建玉の10兆円台回復と言える。


 しかし、問題はこれからである。債券市場を取り巻く環境は改善しつつある。世界的な過度のリスク要因は後退し、原油価格の上昇もあり、欧米を中心に物価はしっかりしてきた。FRBの利上げとその背景にある雇用の改善等で米長期金利は2.5%近辺まで上昇してきた。日本の金利も上昇圧力が強まりつつある。そのなかにあって日銀は長期金利を国債の買入オペの調節で抑えようとしているが、その調節は容易なことではない。2月3日に日銀は指し値オペを実施したが、これは頻繁に使えるものでもない。債券市場の機能が回復すればするほど、市場を無理矢理押さえ込むには無理が生じることにもなるのである。



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by nihonkokusai | 2017-02-13 09:52 | 債券市場 | Comments(0)

日銀と債券市場の仁義なき戦い

 いずれ陥るであろうとされた日本銀行と債券市場との仁義なき戦いが始まった。そもそもの発端は、債券市場参加者が忌み嫌うリフレ政策を安倍政権が取り入れたこにある。日銀が大胆な金融緩和を実施すれば物価が上がり、デフレは解消するとしたのが2012年11月に登場したアベノミクスである。

 その手段として取りあげられたのが、2013年4月に日銀が決定した量的・質的緩和であった。日銀が国債を大胆に買い入れる。量とともに期間の長い国債も買い入れることにより、出口政策を遠ざけ、背信の陣を敷いた。そして大量の国債を市場から吸い上げることで債券市場の流動性も後退させることになる。

 市場から大量に国債を買って量を増やせば自ずと物価は上がるはずだったが、上がらない。そこで日銀は2014年10月にさらなる国債の買い入れ増額を決定する。量的・質的緩和の拡大である。これで国債の年間発行額の9割を日銀が買い入れることになる。これにより民間で買える国債の量はさらに減った。国債の利回りそのものも抑えられ、民間資金による国債の運用の場は狭まった。それでも市場参加者はなんとか耐えていた。しかし、その我慢に限界が来るのも時間の問題となった。そのきっかけは2016年1月に日銀が決めたマイナス金利付き量的・質的緩和であった。

 日銀のマイナス金利政策に市場は素直に反応し、10年債利回りどころか20年債利回りまで一時マイナスとなった。しかし、これによる民間での資金運用にマイナスの影響が出始めた。大手銀行や生保などのトップから批判が相次ぐなど、日銀にとって無視できない自体となった。

 その結果、それを修正してイールドカーブを立たせて民間に運用益を確保させようと決定したのが2016年9月の長短金利操作付き量的・質的緩和となった。過去の政策を否定できないため、次々と足し算しか出来なくなった日銀の金融政策は長期金利操作を加えるという荒唐無稽の手段に出た。それまで長期金利はコントロール出来ないという日銀の立場をあっさり覆したのである。

 長期金利を中央銀行がコントロールできるのか。そもそも物価をコントロールできるのかという大問題はとりあえず置いて、長期金利のコントロールについてあらたな社会実験が始まった。

 日銀の長期金利のコントロールは国債買入オペという手段を通じて行うことになった。すでに債券市場では日銀の国債買入による影響が非常に大きなものとなっていただけに、細かな買入調節(細かいといっても100億円単位だが)によって、国債の利回りの跳ね上がりや下がりすぎにブレーキを掛けようとした。しかし、これもあくまで金利が上がりにくい環境にあればそれも可能たったのかもしれない。

 ところがすでにFRBは利上げを行うなど非常時の対応が必要な危機的環境からは正常な段階に移行しつつある。原油価格も下げ止まり、リスク回避による円高圧力も後退した。欧米では物価がしっかりしつつあり、日本でも足元のコアCPIは前年比マイナスにあるが、近いうちに水面上に浮上し、前年比プラス1%程度あたりまで上昇してくることが予想されている。

 さらにもうひとつ日銀には大きな課題が課せられていた。国債買入への限界である。来年度の国債発行額の減額もあり、日銀は言葉にこそ出せないがあれを行う必要がある。だから1月の中期ゾーンの国債買入を1回スキップしたのである。あれとは国債買入額の縮小(テーパリング)であった。

 そんななかにあってのファンダメンタルズに即した長期金利の上昇を果たして日銀が抑制できるのかという課題が生じてきた。日銀としてはイールドカーブを立たせるためある程度の長い国債の利回り上昇は好都合となる。ファンダメンタルズに沿った長期金利上昇も本来容認したほうが、テーパリングにも好都合となる。ところが、長期金利についてはゼロ%と言ってしまった手前、ここをどう落とし前をつけるのかが課題となった。

 その結果が2月3日の変則的な時間帯(14時ではなく前倒しの12時半)の指し値オペとなった。これにより市場との対話どころか、完全に債券市場参加者の多くを敵に回してしまった格好となった。通常の国債買入で日銀に5年超10年以下を売った業者などが馬鹿を見た。さらに3日の通常オペのスタンスからはある程度日銀は長期金利上昇を容認とも読み取れ、売却した業者も多かったのではなかろうか。ところが日銀は0.110%という0.100%でもなく0.150%でもない、何を考えているのかというレベルで指し値オペをオファーした。

 この指し値オペで7239億円の国債を吸い上げてしまった。これでなんとか市場と折り合いをつけた(ように見えた)1月の中期ゾーンの減額分をより長いもので補充してしまった格好である。これで市場参加者と遺恨も残すこととなってしまった。

 3日の12時半の「指し値オペ」の実施は、日銀がコントロールしようとしている長期金利を決定している債券市場のマインドを日銀はまったくと言って良いほど読めていないことを示すとともに、日銀は慌てると何をしてくるのかわからないという不安感も市場に与えることとなった。

 6日は3日のゴタゴタがなければオペなしでもおかしくはなかったが、5年超10年以下4500億円、10年超25年以下1900億円、25年超1100億円を日銀は通常時間で国債買入オペをオファーした。すでに市場参加者は何が起きてもおかしくないとみており、これを受けて動くのは止めたように思える。

 そもそも日銀は市場と対話する気があるのか。本音で意見交換できるのか、もしそれがそれが無理となれば、市場は日銀がコントロールすることなどできないことを市場自らが示してくることも今後予想されるのである。

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by nihonkokusai | 2017-02-07 10:10 | 債券市場 | Comments(0)

金融市場は年明け早々、トランプ発言等で波乱含みの様相に

 私は昨年1月当初のコラムに「2016年は年明け早々に金融市場は世界的に波乱含みの展開となった」と書いていたが、今年も「2017年は年明け早々に金融市場は世界的に波乱含みの展開となった」と書かざるを得ない状況となりつつある。

 英国のメイ首相は17日の演説で、英国が欧州連合(EU)の単一市場から撤退し、代わって関税についての合意を目指す考えを表明した。これはほぼ事前に予想された内容となり、大きく売られていたポンドは急速に買い戻された。これはポンド安を好感していたロンドン株式市場には逆風となって作用した。しかし、市場はこのメイ首相の演説よりもトランプ氏のコメントに過剰反応した。

 ウォールストリート・ジャーナルが17日に掲載したトランプ次期大統領とのインタビューで、われわれの通貨が強過ぎるので、米国の企業は(中国)に勝てないと強調し、ドル高が進んだ場合には「価値を引き下げる必要があるかもしれない」と述べ、ドルを安値に誘導する可能性を示唆した。

 実は前日書いたコラムで下記のようなコメントを書いていた。

 「またトランプ氏は外為市場でのドルに関しても発言を控えている。いずれ外為政策についての言及があるとみられるものの、政策のなかの優先順位はあまり高くないようにも伺える。」

 もしかすると為替への言及は控えていたのではなく忘れていただけかもしれないが、中国を念頭に置いた上でのドル高については抑制する可能性が出てきた。そうなれば11日の記者会見でトランプ氏が貿易不均衡の相手先として中国とメキシコとともに日本も名前を挙げていただけに、日本も意識される可能性がある。

 ドル円はトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた動きにより、昨年12月には118円台まで上昇していたが、その後上値が重くなり、今回のトランプ氏によるドル高牽制発言も受けて一時112円台にまで下落した。その後買い戻されて114円台後半をつけている。

 ドルばかりでなく、米長期金利や米国株式市場の上昇も昨年末あたりで、いったんピークアウトした格好となっている。ダウ平均は2万ドルがかなり厚い壁となってしまった。このためある程度の調整が入ることは予想されたが、今回のトランプ氏の発言でドルなどが再び上昇トレンド入りするのかどうかが微妙な状況となってきた。

 もちろんドル高の背景には米長期金利の上昇があり、その米長期金利は米国経済や物価動向の影響と、それを受けてのFRBの動向に影響を受けやすい。イエレン議長は18日の講演で、完全雇用に近づき、インフレ率が2%に向かうなか、FRBが緩やかな利上げを実施していくことは理にかなうと述べた。18日に発表された12月の米消費者物価指数は前年比プラス2.1%となり、11月の前年比プラス1.7%から0.4%も上昇し、2%台に乗せていた。FRBの物価目標はPCE価格指数での前年比2.0%ではあるものの、今年中にFRBが複数回の利上げをてくる可能性はある。

 その意味では米長期金利の上昇はまだ道半ばとみている。しかし、その見方を変えざるを得なくなるのか。20日に就任するトランプ大統領の今後の発言に対して市場が過剰に反応する可能性もあり、金融市場は今年も年初から波乱含みの展開となりそうな予感がする。

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by nihonkokusai | 2017-01-19 10:01 | 債券市場 | Comments(0)

2017年の金融相場をみる上で注目すべきポイント

 2017年の金融市場の動向を占う上で注目すべきポイントをまとめてみたい。最初に注意すべきは1月20日に就任する米国のトランプ大統領であろう。11日のトランプ氏の記者会見では、ロシアとの関係を問う質問が大半を占め、減税などの具体的な経済成長促進策は示されなかった。しかし20日に就任後はある程度、具体的な政策が打ち出されるとみられる。これまでのトランプ氏の発言等からはその柱となりそうなのが雇用面である。

 トランプに標的にされたトヨタは今後5年で対米に向け100億ドルの設備投資を行うと発表した。大統領選挙期間中にトランプ氏と衝突したアマゾンのベゾス氏は米国で10万人強を採用する計画を発表した。

 これらの動きはトランプ氏の顔色を伺いながらのもの、と見えなくもないが、大手企業のグローバルな投資戦略に変化が訪れてきている事も確かなのかも知れない。中国の急激な経済成長にブレーキが掛かり、中国では大気汚染も拡がるなど副作用も出ている。中国政府は元安を食い止めようと色々と策も講じるなど、いわゆる中国の時代がいったん終焉を迎えつつある。このようなタイミングでのトランプ大統領の登場が世界経済だけでなく政治のパワーバランスにどのような影響を与えるのかも注目される。

 米国市場動向を占う上では、FRBの利上げの行方も気になる。2015年12月に最初の利上げ、追加利上げは2016年12月とFRBは結果として慎重に利上げのタイミングを計ってきた。それは今後も同様もみられ、経済状況次第の面はあるが、今年も1回もしくは2回程度の利上げがあるとみている。その際にはトランプ氏が指名するであろう空席のFRB理事の人選などにも注意したい。トランプ氏が為替政策をどうみているのかも気になるところではある。いまのところある程度のドル高は容認しているように見える。

 昨年の英国のEU離脱問題、イタリアの国民投票の結果などを受けてのユーロシステムが継続可能なのかも焦点となる。英国はハードブレグジットへの懸念も出ている。英国のメイ首相は今月17日の演説で、英国の欧州連合(EU)離脱に向けた計画について説明するとしている。この演説も大きなポイントとなる可能性がある。

 今年3月にオランダの総選挙が予定され、4~5月にフランスの大統領選挙が行われる予定。6月にはフランスの国民議会選挙も予定されている。さらに9月にはドイツの連邦議会選挙がある。これらの選挙の結果次第ではユーロというシステムに大きな影響を及ぼしかねない。

 今年は原油価格の行方もキーとなりそうである。1月1日に発効した協調減産が守られるのか。OPECは決して一枚岩ではなく、むしろ対立も激しくそこにロシアなどの非OPEC諸国の影響も考慮する必要がある。結果として減産はせざるをえないとみられ、原油価格が再度大きく下落するようなことは考えづらいか。

 国内では衆院解散総選挙の可能性も指摘されており、年内に選挙があるのかどうか、仮に選挙となったとしていまの盤石ともいえる安倍政権の行方に変化が出てくるのか。東京オリンピックにむけてさらに体制を整えてくるのか、そのあたりも焦点となる。

 その安倍政権と二人三脚で歩いて来た日銀の金融政策の行方は直接、債券市場に影響を与えかねないので注意したい。日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和はこれまでの政策をすべて付け足したものとなるなど、かなり無理を重ねている。かつては日銀が操作できないとしていた長期金利を操作対象に置いた。これにもかなり無理があり、外部環境の変化次第、特に金利に上昇圧力が加わりかねない場面では、市場参加者と日銀が対峙する懸念もある。日銀の今後の動向にも注意が必要となろう。

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by nihonkokusai | 2017-01-14 11:30 | 債券市場 | Comments(0)

トランプ相場は終焉したのか

 米東部時間11日午前11時(日本時間12日午前1時)に米国の次期大統領となるドナルド・トランプ氏が米大統領選で勝利してから初めて、公の場で記者会見を開いた。金融市場だけでなく世界中の多くの人々が、その会見の内容に注目していた。

 トランプ氏はこれまで過激な発言を続け、その過激な発言そのものが大統領選挙ではむしろ追い風になった面もあったとみられる。大統領選後は公の場での発言は控えていたが、ツイッターを利用して「トヨタは米国向けカローラを生産するためにメキシコのバハに工場を建設しようとしている。あり得ない!」といった批判的な書き込みをしていた。今回のトランプ氏の会見では日本に対して具体的な言及はなかったが、貿易不均衡の相手先として中国やメキシコとともに日本も言及しており、貿易に絡んでの批判を強めることは予想される。

 金融市場では減税を含めた経済政策に関して何かしら具体的な示唆があるのかどうか注目されていた。こちらについても具体的な言及はなかった。11日の米国株式市場やドル円はトランプ氏の会見を受けて乱高下したが、これは内容そのものよりもアルゴリズム取引などによる影響もあったのではないかと思う。結果として11日のダウ平均は98ドル高、ナスダックも11ポイント高と高値を更新した。一時114円20銭台あたりに下落していたドル円は115円台に戻している。ただしチャートをみると、このドル円や日経平均は多少の調整を余儀なくされる可能性はある。

 このトランプ氏の経済政策を期待して、景気の回復と物価の上昇を睨んだ動きがトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた。昨年の大統領選挙の結果を受けての米長期金利やドル、米国株式市場の上昇などを総称したものであった。これは東京市場もその恩恵を受けた格好となり、ドル円は11月9日につけた101円台から12月には118円台に急上昇した。日経平均も11月9日に16000円近くまで売られたあと急速に切り返し、今年に入り2万円に接近した。

 これらの動きだけをみると2012年11月に発生したアベノミクス相場と類似している。このときも安倍自民党総裁のリフレ発言で、物価の上昇や景気の回復が意識されて、急速な円安と株高が起きたとされた。しかし、これらの動きはトランプ氏の政策(まだ具体化もしていない)や安倍首相の政策(そもそも物価は上がっていない)が、具体的な効果を発揮したというよりも、大きな流れが変化しつつあるときの起爆剤のようなものになったに過ぎないと私はみている。

 トランプラリーが期待感だけであり、ここにきてドル高や米金利高、株高などにブレーキが掛かったことで、すでにそれは終わってしまったとの見方も出ている。しかし、それはまだ結論づけることはできない。トランプラリーと呼ばれた金融市場の動きの背景にあるのが、世界的な危機の連鎖の終焉とそれらによる正常化の流れによるものとみれば、その流れは簡単には止まらないとみている。

 米国株式市場をみてみると、ここにきてややダウ平均はブレーキが掛かっていたが、ナスダックは連日の高値更新となっている。トランプ政権と変わるとアップルなど世界的なハイテク企業に対しての圧力が加わるとの見方もある。ところがそれらハイテク企業の株も買われているのは、やはり景気そのものの回復も背景にあるのではなかろうか。

 米10年債利回りの推移をみると11月に1.7%台あたりにいたのが、12月には2.5%台に乗せるなどやや急ピッチな上昇となっていた。さすがにそろそろ調整が入ってもしかるべきタイミングであったようにもみえる。それでも米長期金利がボトムをすでに打っており、今年のFRBにとって複数回の利上げが可能となるのであれば、米長期金利はいずれ3%台に乗せてくる可能性はありうるとみていたほうが素直かなとも思う。

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by nihonkokusai | 2017-01-12 10:10 | 債券市場 | Comments(0)

11月は都銀が中期債主体に大量に買い越す

 12月20日に日本証券業協会は11月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

10月の公社債投資家別差し引き売買高
注意、マイナスが買い越し
単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -20620(758、-7871、-12087)
地方銀行 1678(1136、576、755)
信託銀行 9062(170、4925、923)
農林系金融機関 -3655(-3165、189、1)
第二地銀協加盟行 -1322(-810、-181、-30)
信用金庫 -3448(-1523、-1053、4)
その他金融機関 -222(-174、395、-27)
生保・損保 -5786(-5480、88、83)
投資信託 -254(198、-623、586)
官公庁共済組合 737(-170、626、234)
事業法人 -353(-87、0、0)
その他法人 269(-219、310、338)
外国人 -11672(2275、-2448、-10674)
個人 218(-1、21、4)
その他 3269(9421、-1547、-1093)
債券ディーラー -400(-74、-442、194)

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において、金融政策の総括的な検証を行ったことに加え、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。

 11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏が勝利したことをきっかけに金利高、ドル高、株高が起き、これはトランプラリーと呼ばれた。12月のFOMCでの利上げ観測が一層強まり、米長期金利はあっさりと2%台に乗せてきた。日本の国債の利回りも上昇し、日銀は11月17日に中期ゾーンの利回り上昇抑制のため、初の国債の指し値オペをオファーした。

 11月の国債の投資家別売買高をみると都銀は2兆620億円の買い越しと2兆円を超す買い越しとなっていた。都銀の国債売買高をみると10月の5兆167億円を上回り、5兆5900億円となっていたが、このうち中期ゾーンが2兆189億円と10月の1兆3826億円を大きく上回っていた。トランプラリーの影響に伴う中期ゾーンの売りと日銀の指し値オペ実施による買い戻しに都銀は大きく関わっていた可能性がありそうである。

 中期ゾーンと言えば海外投資家の売買が中心を占めていたことで、こちらの動向も確認してみたい。外国人は1兆1672億円の買い越し。10月の買い越し額は5717億円に減少していた。10月はこれまで大量に買い越していた中期ゾーンを少額ながら売り越していたが、11月は再び1兆円を超す買い越しに転じた。海外投資家の全体の売買高をみると10月に比べ11月は増えていたが、中期ゾーンについては11月は10月より減少していた。海外投資家は11月はそれほど活発に動いていたわけでもなさそうである。

海外投資家の売買状況
月 売買高(マイナスは買い越し)、(中、長、超長期)、全体売買高、うち中期

4月-36565(328、-9142、-27271)、294983、62513
5月-16775(1347、-6186、-10933)、246889、34315
6月-36565(328、-9142、-27271)、344055、65055
7月-16693(1860、-4453、-13200)、275366、61036
8月-16838(-1108、-5390、-9702)、302397、65718
9月-27674(-3320、-4283、-19310)、380542、102124
10月-5717(1051、-5636、166)、264616、62534
11月-11672(2275、-2448、-10674)、302551、48912

 中期ゾーンについては指し値オペの水準(2年債利回りで-0.090%、5年債利回りで-0.040%)が意識されて、上昇しづらい状況にいるが、10年債利回りは12月16日に0.1%に上昇している。超長期ゾーンの利回りも上昇しているが、日銀は通常の国債買入の買入額の調整で、上昇ピッチを抑えようとしている。この間に投資家がどのような売買を行っていたのか、12月の動向も要注目となる。

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by nihonkokusai | 2016-12-21 09:58 | 債券市場 | Comments(0)

金融市場は中央銀行の都合で形成されるものではない

 米長期金利の上昇が止まらない。12日には一時2.5%台に上昇した。原油先物も上昇し、WTI先物1月限は一時54ドル台をつけたことも、米長期金利上昇を促す格好となった。米長期金利の上昇はドルも押し上げ、ドル円は一時116円台をつけた。しかし、ドル円はその後114円台に下落するなど波乱含みの様相ともなり、FOMCも控えて米長期金利やドルの上昇はいったんピークアウトした可能性もある。

 米長期金利の上昇は英国やドイツなどの長期金利の上昇を促した。日本の国債利回りにも影響を与えたが、日本の国債利回りは日銀のイールドカーブ・コントロール政策もあってやや歪なものとなっている。

 日銀は9月21日の金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を導入した。その主な内容として長短金利の操作を行う「イールドカーブ・コントロール」を打ち出してきた。長期金利、つまり10年物国債金利については概ねゼロ%程度で推移するよう、長期国債の買入れを行う、とした。

 そして、長短金利操作を円滑に行うため、日銀が指定する利回りによる国債買入れ(指値オペ)を実施するとした。イールドカーブが概ね現状程度の水準から大きく変動することを防止するため、金利が上昇した場合などには、例えば10年金利、20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしている。

 この指し値オペは9月の決定会合後に一度だけ実施された。日銀は11月17日に初の国債の指し値オペをオファーしたのである。トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇、特に中期ゾーンの金利上昇を背景に、2年国債と5年国債を対象とした指し値オペをオファーした。ただし、初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識された。

 ここにきての米長期金利の上昇を受けて日本の国債利回りの変化が大きかったのは、超長期と呼ばれる期間20年を越えるところとなった。12日の現物債の売買をみても、2年や5年といった中期ゾーンはほとんど商いはなかった。手を出したくはないといったところであったのか。

 10年債利回りも上昇したものの、日銀の言うところの概ねゼロ%程度がどの程度の範囲を示しているのかを試しているような格好となった。これまでの10年債利回りの動向をみると、下限はマイナス0.1%が意識されていたため、上限はプラス0.1%あたりかとの見方が強い。12日の引け後に10年債利回りはプラス0.080%に上昇し、0.1%に接近した。

 これに対して超長期債については、日銀のイールドカーブ・コントロールの対象に含まれているのかどうかも試しているように思われる。12日に20年債利回りは0.630%、30年債は0.800%、そして40年債利回りは0.945%に上昇した。超長期債利回りは1%が見えてきた。

 日銀は20年金利を対象とした指値オペを実施する用意があるとしているため、当然ながら超長期債の利回り上昇にもブレーキをかけるために指し値オペを実施してくる可能性はある。

 日銀が9月21日に長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策を何故、導入したのか。それは1月のマイナス金利政策の導入で長い期間の国債利回りも低下してしまい、20年債あたりまでマイナス金利となってしまったため、機関投資家による国債での運用に支障をきたしてしまったことによる。つまり、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策は、この超長期の金利を引き上げて、イールドカーブをスティープ化させることに意味があった。

 日銀はイールドカーブをコントロールすることによって物価上昇を促すとしているが、カーブコントロールで物価が動かせるというよりも金融機関の資金運用等に配慮したわけである。

 ただし長期金利を押さえ込むことによって米長期金利が上昇した際には、日米の長期金利のスプレッドが拡大し、円安を促すという効果は見込めるし、現実にそうなっている。これを見る限り日銀にとってはしてやったりとなるかもしれない。

 しかし、本来市場で形成されるべき金利を日銀が無理矢理押さえ込んでいることも確かである。ここにきての足元消費者物価も前年比マイナスにあったことで、日銀が押さえ込むというよりも、長期金利も低下圧力の方が掛かりやすかった。しかし、今後は原油価格のボトムアウトも手伝って、物価が前年比でプラスに転じることも予想される。つまりこれからはまさに長期金利の上昇を押さえ込むような格好となりかねない。そこに市場との摩擦が生じることも予想される。

 日銀がどのような相場観を持ってイールドカーブ・コントロールを実施してくるのかは不明である。日銀は巨大な投資家であれど債券市場では機械的な買いしか行ってこなかっただけに、適切な居所を見いだし、そこにコントロールができるのかは極めて疑問である。市場は多種多様な思惑がぶつかって形成されるものであり、中央銀行の勝手な都合だけで形成されるものではない。この矛盾がいずれ国債市場で噴出してくる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-12-14 09:58 | 債券市場 | Comments(0)

海外投資家の国債買い越し額が減少


 11月21日に日本証券業協会は10月の公社債投資家別売買高を発表した。公社債投資家別売買状況のデータは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

10月の公社債投資家別差し引き売買高 注意、マイナスが買い越し、単位・億円 ()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -12321(-3076、-3123、-5334)
地方銀行 -8334(-2678、-5038、275)
信託銀行 5864(607、-262、4757)
農林系金融機関 -2939(-2012、7、1)
第二地銀協加盟行 -1045(-856、-62、60)
信用金庫 -929(22、-117、15)
その他金融機関 -1581(-856、-1557、1578)
生保・損保 -4493(-2086、210、317)
投資信託 -1481(-472、-172、-396)
官公庁共済組合 -110(-49、46、47)
事業法人 -620(1、19、7)
その他法人 -555(-53、33、67)
外国人 -5717(1051、-5636、166)
個人 238(-1、32、4)
その他 17279(7202、5024、9155)
債券ディーラー -398(26、-12、-375)

 9月20、21日の日銀の金融政策決定会合において、金融政策の総括的な検証を行ったことに加え、フレームワークの変更を行った。これは「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と呼ばれ、その柱のひとつがイールドカーブコントロールとなった。

 10月は投資家は国債売買そのものを手控え、売買高は大きく減少したと思われた。ところが国債の投資家別売買高(一覧)での全体合計の国債売買高でみてみると10月は181兆1267億円と9月の216兆335億円よりは減少したが、思ったほどの落ち込みとはなっていなかった。

 それよりも興味深かったのは、外国人投資家と買越額の減少と都銀の買越額の増加か。都銀は9月の1139億円の買い越しから、10月は1兆2321億円の買い越しとなっていた。比較的中期債主体ではあるが万遍なく買い越していた。都銀の売買高は8月に1兆7326億円と、データがある2004年4月からでは過去最低水準となっていたが、9月は3兆6046億円、10月は5兆167億円と回復しつつある。

 そして海外投資家であるが、最近の買越額は下記となっていた。

4月-36565(328、-9142、-27271)
5月-16775(1347、-6186、-10933)
6月-36565(328、-9142、-27271)
7月-16693(1860、-4453、-13200)
8月-16838(-1108、-5390、-9702)
9月-27674(-3320、-4283、-19310)
10月-5717(1051、-5636、166)

 10月の海外投資家は中期ゾーンの買越額が前月までに比べて大きく減少させており、その結果全体の買越額も大きく減少させてきた。相場はそれほど大きく動かなかっただけに、この動きは興味深い。

 11月に入ると8日の米大統領選挙の結果、トランプ氏が勝利したことをきっかけに米長期金利は大きく上昇し、ドル円も大きく上昇し、地合が一変した。日本の国債の利回りも上昇し、日銀は11月17日に中期ゾーンの利回り上昇抑制のため、初の国債の指し値オペをオファーした。11月のこの海外投資家を中心に売買状況は大きく変化してきた可能性もあるため、11月の数字も要注意となる。

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by nihonkokusai | 2016-11-22 09:41 | 債券市場 | Comments(0)

日銀による初の国債の指し値オペの目的は何か

 日銀は17日に初の国債の指し値オペをオファーした。この目的は何かと問われれば、トランプ相場によるところの米長期金利の上昇を受けての日本の国債利回り上昇の抑制となる。

 日経QUICKニュース社の取材に答えた日銀の金融市場局の担当者は、指し値オペの実施を初めて通知したことについて「短中期の金利の急速な上昇を踏まえたもの」とした。

 黒田日銀総裁は17日午前の参院財政金融委員会で、米金利の上昇につれて日本の金利に上昇圧力がかかる中、長短金利を操作目標としたイールドカーブ・コントロール政策の下では、日本の金利上昇を容認することはないと語った(ロイター)。

 日銀が17日は20年国債の入札日であるにも関わらず、異例の国債買入、しかも初の国債の指し値オペをオファーした背景には16日の債券相場の動きがあった。

 10年債利回りは16日の引け後にプラス0.035%まで上昇し、2年債利回りはマイナス0.095%、5年債利回りはマイナス0.040%に上昇した。

 今回の指し値オペの指し値が、2年利付国債370回の買入利回りで-0.090%、5年利付国債129回の買入利回りは-0.040%とまさに16日に売り込まれた水準であったことからもそれが伺える。

 それでは何故、「長短金利」操作をうたった日銀が「中期」の金利の抑制に動いたのか。これは長期は0.035%まで上昇したとはいえ、概ねゼロ%という水準に近いことで動きづらい面があった可能性がある。それよりも16日の債券市場でまとまった売りが中期ゾーンに入り、中期ゾーンの利回り上昇に対して日銀が警戒した可能性がある。

 当然ながらこの中期ゾーンの売りの要因なり売り手を探るため、日銀は市場関係者にヒアリングを実施した事も考えられる(通常でも意見交換はあると見られるが特に念入りに)。

 その結果、指し値水準から見ても16日の段階で17日中には初の国債の指し値オペを実施することを決めていたのではないかと思われる。国会に出席する黒田総裁の耳にも事前に入れておいたはずである。

 これでいよいよ日銀のイールドカーブコントロールが試されることとなる。17日の初の国債指し値オペの応札はゼロとなった。実勢利回りが指し値よりも低下したためのことではあるが、これで2年債と5年債の利回りの下値の防衛ラインが意識される。

 ただし、今後米金利がさらに上昇する事態も考えられる上に、16日の中期債の売り手が国内ではなく海外投資家の可能性もある。日銀は無制限に買い入れるとしているが、海外の金利動向次第では、日本の長期金利形成が歪なものとなる可能性もある。為替介入でも自国通貨安を食い止めることに無理はある。このようなことをもし日銀が続けるとなれば、いずれ日銀は市場参加者と立ち向かうことにもなりかねない。

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by nihonkokusai | 2016-11-21 09:59 | 債券市場 | Comments(0)

トランプ効果で日本の長期金利がプラスに転じる

 16日に10年国債の利回り(長期金利)がプラス0.005%を付けた。日本の10年債利回りがプラスとなったのは、9月21日に日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」を決定したことを受けて一時的に10年債利回りがプラス0.005%に跳ね上がって以来となる。

 9月21日に瞬間的にプラスに転じた10年債利回りはその後、日銀のイールドカーブコントロールの居所を探るような展開となった。長短金利操作に関して日銀は「10年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う」としていたが、「概ね」ということで市場ではそれはある程度のレンジを想定しているとし、その下限を探りにいった。

 なぜ下限を探りに行ったのかといえば、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」ではイールドカーブコントロールとともに、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」が加わっていたためである。

 足元の消費者物価上昇率は前年比マイナスの状態が続いており、日銀の目標値を大きく下回っている。目標達成時期も先送りせざるを得ない状況で、いずれ日銀は追加緩和をせざるをえないのではとの見方も一部にあり、金利のバイアスとしては下方に働きやすかった。その結果、10年債利回りは下がったが、マイナス0.1%が下限として意識された。その後、ゼロ%からマイナス0.1%の間でのレンジ内相場が続いた。その地合を変化させたのが、トランプ氏の米大統領選の勝利をきっかけとした米国の長期金利の上昇であった。

 米国の10年債利回りは大統領選挙前は1.8%近辺にあったが、大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けて、あっさりと2%を超えて上昇した。14日には一時2.3%台をつけてきた。これは欧州の債券市場にも大きな影響を与え、ドイツや英国だけでなく、イタリアやスペインなどを含めて国債の利回りが大きく上昇した。ドイツやフランス、英国の長期金利上昇はトランプ氏の勝利をきっかけとした米長期金利に連動した面が大きいのに対し、南欧諸国の国債利回りはイタリアの12月の国民投票に対してトランプ勝利の影響が危惧された面も大きかった。

 米長期金利の上昇を受けて、外為市場ではドルも上昇した。ドル円は16日に109円台をつけた。円安によって東京株式市場は上昇し、日経平均は18000円に迫る勢いとなっている。

 債券市場は日銀の顔色をうかがいながらの動きが続いていたが、さすがにこの外部環境の変化を受け、ここにきてイールドカーブ全体が水準訂正を行ってきた。トランプ氏の登場で米国の物価が上昇し、日本にも波及するというようなシナリオに沿ったものというより、米金利上昇と円安株高に反応した面が大きいと言える。さらに日銀のシナリオからみて10年債利回りもゼロ%はまさに目標値であり、ここで日銀が金利上昇抑制の動きに出ることも考えづらい。問題はここからである。

 トランプ効果による米長期金利の上昇とドルの上昇がどこまで行くのか。米長期金利の目処としては2013年末につけた3%あたりとなる。ドル円は目先110円が意識されよう。米長期金利上昇の背景には12月のFOMCでの利上げ観測の再燃もある。しかし、前回の昨年12月から1年も費やしてやっと追加利上げができたとしても、さらなる追加緩和は容易ではない。このあたりトランプ大統領の就任後の政策を見極め、それが本当に物価上昇に結びつくのかを検証する必要がある。

 日本の長期金利は日銀の想定する下限ではなく、今度は上限を探る展開となることが予想される。そうなるとプラス0.1%あたりが想定されよう。そのあたりまでの金利上昇であれば許容範囲内となるのではなかろうか。ただし、生保などの投資家は、超長期債の利回りが1%あたりまでの上昇を望んでいると思われ、多少利回りが上昇したところで、積極的に買い進むという地合でもない。いまのところはまだ日本の長期金利は日銀の手のひらのうちにある。あくまで「いまのところは」であるが。

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by nihonkokusai | 2016-11-17 10:08 | 債券市場 | Comments(0)
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