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カテゴリ:債券市場( 676 )

米国、ドイツ、英国の長期金利動向に変化

 米国とドイツ、英国の10年国債の利回り、いわゆる長期金利の動きはかなり似通っている。格付け上位国であり、お互いの影響も受けやすい。これは日本の長期金利にも、ある程度はあてはまるが、こちらは日銀のイールドカーブコントロールに抑えられていることで、日本の長期金利は大変狭いレンジ内で似通った動きとなっている。

 しかし、ここにきて米国、ドイツ、英国の長期金利の動きに連動性がなくなりつつある。

 米国の長期金利は9月上旬に2%近辺まで低下していたが、ここからトレンドラインを形成し上昇基調となっている。市場では12月のFOMCでの年内3回目の利上げに不透明感をいだいていたが、FRB関係者の発言などから、利上げ観測が強まってきた。さらにFRB議長人事で、タカ派とされるテイラー氏の可能性が浮上したことでの米債安、つまり長期金利の上昇もあった。FRB議長人事はパウエル理事の昇進が有力視されているが、テイラー氏の副議長就任の可能性もある。いずれにしてもこれまでのFRBの政策が維持されるとみて良いと思われる。12月の利上げが意識されれば、2.6%あたりまでの長期金利の上昇があってもおかしくはない。

 これに対してドイツの長期金利は9月上旬の0.3%付近からいったん0.5%近くに上昇後は、0.35%あたりから0.50%のレンジ内での上げ下げとなり、ここにきて再び0.4%割れとなっている。ECBは26日の理事会で量的緩和政策の縮小を決めた。今回の決定は大規模な緩和政策のペースを緩めるものであり、正常化に向けた一歩との見方ができなくはないが、FRBなどに比べると極めて慎重姿勢となっている。このECBの慎重さがドイツの長期金利の戻りが抑えられている要因となり、米長期金利とはやや異なった動きとなっている。さらにスペインの政治情勢も意識されているとみられ、リスク回避によるドイツ国債への買いとの動きも絡んでいよう。

 そして英国の長期金利であるが、9月上旬の1%割れから米・独の長期金利と同じように上昇したものの、1.3%台でもみ合う格好となっている。ドイツの長期金利ほどの落ち込みはなく、高い水準で次のトレンドを探ろうとしている。11月2日のイングランド銀行のMPCでは10年ぶりの利上げが予想されているのが、この水準を維持している背景にあるとみられる。利上げが決定してもある程度は織り込み済みかもしれないが、問題はFRBのように正常化の歩みをここから始めるのかどうかである。つまりイングランド銀行はここから利上げを続けてくるのかどうか。それともECBのような慎重さを前面に出してくるのか。MPCの動向が英国の長期金利の動向を握っている。

 結論としては、ここにきて米国とドイツ、英国の長期金利の動きにやや違いが出ているのはそれぞれの中央銀行のスタンスの違いが反映されていると言える。


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by nihonkokusai | 2017-10-31 09:35 | 債券市場 | Comments(0)

9月の債券、海外投資家は押し目買い

 20日に発表された9月の公社債投資家別売買高によると、都銀は1兆1532億円の売り越しとなり、それに対して海外投資家は2兆4042億円の買い越しとなっていた。海外投資家は6月、7月と買い越し額は1兆円を割り込んでいたが、8月は3兆円近くの買い越しとなっており、9月はそれよりは買い越し額は縮小していたとはいえ、存在感を示した格好となった。

 8月の都銀は小幅買い越しとなっていたが、9月は1兆円を越す売り越しとなり、同時に発表された国債の投資家別売買高をみると中期ゾーンを9050億円、 超長期ゾーンを2357億円売り越していた。これに対して海外投資家は中期ゾーンを1兆8317億円、長期ゾーンを4557億円買い越していた。

 公社債投資家別売買状況の下記データは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 11532(2357、816、9050)

地方銀行 -35(674、-231、850)

信託銀行 -4208(-2913、1061、-1079)

農林系金融機関 -2722(-2512、284、20)

第二地銀協加盟行 312(364、-114、0)

信用金庫 -1643(-562、306、40)

その他金融機関 -1366(-259、-218、60)

生保・損保 -4227(-3647、41、14)

投資信託 -477(151、306、-430)

官公庁共済組合 -262(-212、2、0)

事業法人 -473(-57、1、0)

その他法人 -925(-188、-39、90)

外国人 -24042(-967、-4557、-18317)

個人 241(-34、26、4)

その他 18967(7153、-5340、21058)

債券ディーラー 415(-5、931、-460)

 9月の全体の国債売買高は201兆円程度となり、6月の212兆円以来の200兆円台を回復した。中期ゾーンの売買高は7月に35兆円程度と一時的に落ち込んでいたが、8月、9月と50兆円台を回復させている。

 9月の債券相場は米債が年内利上げ観測の強まりなどから下落トレンドとなり、円債も同様に下落した。この間に都銀などは利益確定売りを急いだようだが、海外投資家はしっかり押し目買いを入れていたようである。


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by nihonkokusai | 2017-10-21 13:22 | 債券市場 | Comments(0)

ロクイチ国債の暴落を知っているか

 10月の日本経済新聞の「私の履歴書」は、野村證券株式会社副社長や日本取引所グループの最高経営責任者(CEO)などに就任した斉藤惇氏が執筆している。10月12日の「私の履歴書」では下記のような記述があった。

 「78年から79年にかけて発行された表面利率6.1%の国債、いわゆるロクイチ国債が、79年から80年にかけて大暴落する局面にも立ち会った。そんな中でも野村はしぶとかった。」

 ロクイチ国債と聞いてピンとくるのは、当日の債券市場を知る一部の人に限られようが、日本国債の最初の暴落とも言える出来事であった。

 国債の流動化があまり進んでいなかったころに、国債は一度大きな暴落を経験している。それがロクイチ国債と呼ばれた国債の暴落である。1978年は当時とすれば低金利局面であり、4月にそれまで発行された10年国債の最低利率である利率6.1%(通称、ロクイチ国債)の国債が発行された。

 1979年4月以降は本格的な金利上昇局面となり、国債価格は大きく下落した。景気拡大や原油価格の上昇により、6月にロクイチ国債の利回りは9%を超えてきた。この国債の下落を受けて、12月には金融機関の保有国債の評価法が、従来の低下法から原価法または低価法の選択性となった。

 1980年に日銀は2月、3月と立て続けに公定歩合を引き上げ、長期金利も大きく上昇し、ロクイチ国債は暴落した。4月にロクイチ国債の利回りが12%台にまで上昇し、国債を保有している金融機関がパニック状況に陥ったのである。その後、米国金利の急激な低下などにより債券市況は急回復したが、ロクイチ国債の暴落は大蔵省(現財務省)の国債管理政策にも大きな影響を与えたとされる。

 斉藤惇氏によるロクイチ国債に関する記述は少なかったものの、最後の「そんな中でも野村はしぶとかった」との部分が非常に気になった。ロクイチ国債の暴落に当時の野村證券がどう立ち向かったのか。数少ない国債暴落時の経験だけに、できればその経験を将来に生かすためにも、そのときの状況を知りたいものである。


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by nihonkokusai | 2017-10-13 09:38 | 債券市場 | Comments(0)

ここにきて日米欧の国債が売られている理由

 米10年債利回りは7月上旬に2.4%近くまで上昇していたが、その後低下トレンド入りし、9月上旬に2.0%近くまで低下した。この間に米10年債利回りが低下した背景として、イエレンFRB議長が謎とした足元物価の低迷があった。FRBの年内あと一回の利上げは見送られるのではとの見方もあり、金利を押し下げた。また、北朝鮮が相次いでミサイルを発射し、核実験を行うなど地政学的リスクも意識されて、リスク回避による米債買いもあった。

 米10年債利回りの低下に合わせるようにドイツの10年債利回りも低下し、7月中旬に0.6%近辺にいたドイツの10年債利回りは9月上旬に0.3%近辺に低下した。ドイツの10年債利回りの低下の背景には米債が買われたことだけでなく、ユーロ圏の物価も低迷し、ECBの超緩和策の修正も極めて慎重に行うとの見方などもあったとみられる。

 日本の10年債利回りも7月7日に0.105%まで上昇し、日銀が指し値オペを実施したタイミングがピークとなり、9月1日に10年債利回りが再びマイナスとなった。しかし、この水準がボトムとなり、今度は上昇基調となってきている。

 日本の10年債利回りは足元、0.080%あたりまで上昇し、再び0.1%を試すかのような動きとなっている。米10年債利回りも9月上旬の2.0%近辺から2.3%台に上昇した。ドイツの10年債利回りも9月上旬の0.3%近辺から0.5%近くまで上昇している。

 ここにきて日米欧の国債が売られている理由としては、足元物価は謎としても、9月のFOMCにおける金融政策見通しで、会合参加者の多くが年内1回の追加利上げを予想するなど年内利上げ観測が再燃したことも挙げられよう。また、2日に発表された9月のISM製造業景気指数が2004年5月以来の高水準を記録し、この日の米国株式市場は3指数ともに過去最高値を記録したが、米景気の好調さも米10年債利回りの押し上げ要因となっているとみられる。

 ここに財政面の懸念も出てきている。トランプ大統領は連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表したが、財源の問題があり、米国債の増発など財政悪化も懸念材料となりつつある。

 日本では衆院選挙が実施されることとなったが、安倍首相は消費税の増収分の使途変更を表明した上で、2兆円規模の新たな経済対策を行うとしている。対抗馬となりそうな小池氏率いる希望の党は消費税の凍結を打ち出すなど、日本でも財政健全化に対する懸念が生じつつあり、これが日本国債を買いづらくさせている。

 北朝鮮問題については、ひとまず軍事衝突は避けられるとの見方もあり、地政学的リスクの後退により、米債、ドイツ国債、日本国債ともに再度売られた側面もある。

 このようにいくつかの要因によって、日米欧の国債の利回りは揃って上昇基調にあるが、注目は日本の10年債利回りがどこまで上昇するのかということになるのではなかろうか。再び日銀が0.1%で抑えに掛かれば、日本国債の利回りだけでなく、米国債やドイツの国債利回りも抑えられる可能性がある。しかし、日本国債の利回りだけが強制的に抑えられ、米国やドイツの国債利回りがさらに上昇するとなれば、日本国債を取り巻く状況に変化が生じる可能性もある。


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by nihonkokusai | 2017-10-04 10:07 | 債券市場 | Comments(0)

解散総選挙により日本の国債市場も動揺か

 9月27日の日本の債券市場では、久しぶりに先物が大きく下落し22銭安の150円58銭で引けた。債券先物の20銭程度の下落は過去の動きからは普通に見えるが、ここにきてはそこそこ値幅が大きいものとなっていた。

 この日本の債券先物の下落に誘発されたかのように、米国債やドイツの国債が日本時間の27日の午後から売られていた。円債の売りはこの米債安の影響を受けたかにもみえなくもない。

トランプ大統領は連邦法人税率を35%から20%に下げる税制改革案を正式に発表したことで景気刺激策として捉えられるとともに、財源としては国債発行で補うのではないかとの観測も手伝い、 27日の米国市場で米国債は大きく下落した。

 27日の日本時間の午後、すでにこの動きが察知されて米債が売られたのかは定かではないが(国内投資家脳裏とも)、その後の米国市場で一段安となったのは、税制改革案による影響であったと思われる。

 米10年債利回りは2.3%台に乗せてきた。これは税制改革案だけでなく、12月のFOMCでの利上げ観測の強まりも当然ながら背景にある。このまま米10年債利回りが2.4%台に上昇してくるとなれば、大きな節目となっている2.6%を伺う可能性もある。

 これには米国の税制改革だけでなく、足元物価の状況次第の面がある。FRBのイエレン議長がミステリーとしていた物価が原油価格の上昇なども背景に回復してくるとなれば、米長期金利を押し上げる要因ともなりうる。むろん、物価が「謎」のままであれば戻りが抑えられる可能性はある。

 円債がこの米債の影響を受けやすいことは確かであるが、27日の日本の債券先物の相場の崩れ方は海外発というよりも国内要因によるものではなかろうか。

 その背景として考えられるのが解散総選挙となる。希望の党の出現、そこに民進党が解党して加わるなど予想外の出来事が、日本の政治の変化を意識させてきているのではなかろうか。

 これまでも海外では予想できなかった米国でのトランプ政権の誕生があり、フランスではマクロン旋風が吹き荒れ、英国ではまさかの総選挙の過半数割れといったことが起きている。同様のことで日本で起きてもおかしくはない。

 日本で政権交代が起きるのかどうかはさておき、安倍一強と呼ばれた状況が変化する可能性が出てきた。これは日銀の金融政策などにも影響を与えかねない。現在の異次元緩和策が修正されるようなことになると国債市場そのものが再び動き出すこともありうる。27日の債券先物の動きはそれほど大きなものではなかったが、何かの予兆めいた動きのようにも思えたのである。

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by nihonkokusai | 2017-09-29 10:05 | 債券市場 | Comments(0)

8月の国債売買高は回復

 9月20日に発表された8月の公社債投資家別売買高によると海外投資家が3兆円近くの買い越しとなり、都銀、生保、投資信託なども小幅買い越しとなっていた。ただし、都銀の買い越しは675億円に止まった。同時に発表された国債の投資家別売買高をみると中期と超長期は買い越しとなっていたが、長期ゾーンは売り越しとなっていた。

 海外投資家の買い越し額は7月が7394億円、6月が7993億円と1兆円を割り込んでいたが、8月は大きく切り返した格好となった。中期を2兆円近く買い越し、長期も1兆円近い買い越しとなっていた。

 公社債投資家別売買状況の下記データは、全体の数字と短期債の数字となっているため、短期債を除く債券のデータについて全体から短期債を引いた。ここには国債入札で購入した分や日銀の国債買入分は入っていない。

公社債投資家別差し引き売買高

注意、マイナスが買い越し

単位・億円

()内は国債の投資家別売買高の超長期・長期・中期別

都市銀行 -675(-3879、7699、-6037)

地方銀行 7127(586、4949、-59)

信託銀行 1974(-712、16、1739)

農林系金融機関 207(-142、205、-39)

第二地銀協加盟行 1832(599、1216、10)

信用金庫 6091(2187、3109、0)

その他金融機関 1230(453、383、471)

生保・損保 -1193(-1196、435、-11)

投資信託 -588(-407、322、-100)

官公庁共済組合 107(55、74、73)

事業法人 -867(27、84、10)

その他法人 -382(139、-53、4)

外国人 -29837(-546、-9377、-19211)

個人 207(0、23、4)

その他 28159(5697、9978、15495)

債券ディーラー -740(-110、-243、-292)

 7月の全体の国債の売買高は174兆円程度と6月の212兆円程度から落ち込んでいたが、8月は195兆円となり、売買高は6月の水準には及ばなかったが増加した。

 7月は中期ゾーンの売買高が大きく落ち込んでいたが、こちらも回復し、7月の35兆円程度から8月は51兆円程度に回復した。7月の中期ゾーンの売買高を大きく減らしていたディーラーも中期ゾーンの売買高は7月の21兆円程度から33兆円程度に回復させた。ちなみに7月の債券ディーラーによる中期ゾーンの売買高も2004年4月以降、最低水準となっていた。

 7月に証券会社などの債券ディーリングでは、顧客向けのポジションを保有してのディーリングなどを極力縮小させ、日銀の買入に向けた国債入札の応札に止めていたのではないかとみられる。しかし、8月の数字を見る限り、これは一時的な現象とも思える。ただし、8月は米債が買われていたことなどから、円債も買い進まれ相場環境が良かったことも売買高の回復に繋がっていた。9月に入り、長期金利は再び上昇しつつあり、環境が変わってきていることで、売買高を維持できているのかも注意したい。


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by nihonkokusai | 2017-09-26 10:03 | 債券市場 | Comments(0)

欧米の長期金利は再度上昇か

 ここにきて欧米の長期金利が再び動意を見せつつある。日本の長期金利は日銀の金融政策に抑え込まれているとはいえ、欧米の長期金利の動向に多少なり影響を受けることから、この欧米の長期金利の動向も注意しておく必要がある。

 日米欧の長期金利の推移をみてみると、7月7日あたりをピークに低下基調となっていた。この7月7日に10年債利回りは0.105%まで上昇し、0.110%で指し値オペが実施された。つまり日銀が国債利回りの上昇を抑制させたことがひとつのきっかけと言える。

 ただし、日銀の指し値オペで米国債が買われることはない。米国債が買われて利回りが低下したのは、7月11日の米下院金融委員会の公聴会で、FRBのイエレン議長は「FOMCは向こう数か月、インフレの動向を注視していく」と指摘したように、米国の物価の低迷が背景にあろう。今月のFOMCでバランスシート縮小を決定する可能性を市場はかなり織り込んでいるが、年内追加利上げに関しては不透明感を強めている。

 ECBも正常化に向けた動きはかなり慎重となっており、ドイツの10年債利回りも7月14日あたりから低下基調となっていた。

 足元の物価が低迷し、FRBやECBの物価目標を下回っていたことで、それぞれ正常化に向けた動きが慎重になるのではとの思惑も働いた。そこに北朝鮮の核実験やミサイル発射により、地政学的リスクが意識され、米国では大型ハリケーンの被害なども警戒され、リスク回避の動きが出た。このため、7月に2.3%台となっていた米長期金利は2.0%近くまで低下したのである。

 ところが9日の建国記念日を迎えた北朝鮮がミサイル発射などの挑発行為に出なかった事や、フロリダ州を直撃したハリケーン被害が警戒されたほど大きくないとの観測から、リスク回避の巻き戻しの動きが強まった。13日の米長期金利は2.20%近辺に戻してきている。ドイツの長期金利も7月の0.6%近辺から8日に0.3%近辺に低下後、12日には0.4%近辺に上昇した。英国の長期金利も7月に1.3%台まで上昇していたのが、9月7日に1%割れとなった。その後12日には1.1%台に上昇していた。

 12日に英国立統計局が発表した8月の英CPIは前年同月比2.9%の上昇と5年超ぶりの水準となり、イングランド銀行の利上げ観測が再燃したことも英国の長期金利の反発要因となっていた。

 北朝鮮リスクは完全に後退したわけではないが、少なくとも米国との軍事衝突という最悪の事態は回避されるであろうとの見方が強まった。今後は9月19、20日のFOMCを控え、再び中央銀行の金融政策の行方が注目材料となることも予想される。

 ここにきてのマインド変化にはECBの動向も影響している。9月7日のECB政策理事会では、金融政策の現状維持を決定したが、市場が注目していたのは、量的緩和縮小に関するドラギ総裁の会見内容となっていた。ドラギ総裁は「決定事項は多く、複雑で、向こう数週間、もしくは数か月で現実化する可能性のあるリスクを考慮するため、特定の期日の指定を巡り慎重さが出ている。大方、こうした決定の多くは10月になされる」と発言していた(ロイター)。

 この発言について市場は、ドラギ総裁は量的緩和縮小に関してかなり慎重と捉えた。しかしその後、7日のECB理事会では資産買い入れ縮小とすることで幅広い合意に達したとあらためて報じられた。量的緩和縮小に関してはすでに話し合いが行われ、10月のECB理事会で決定されるであろうことが再認識された。悲観的なマインドが強まっているときとそうでないときでは、同じ発言でも市場のとらえ方が異なることがある。ECBの動向は当初、長期金利の低下要因にみえたが、その後は上昇要因として意識されたように思われる。

 問題は米国となる。今月のFOMCでは資産縮小に向けた決定がなされると予想され、正常化に向けた動きが一段と進むことになる。ただし、12月のFOMCでの追加利上げが可能なのかは依然不透明であり、フィッシャー副議長の辞任も少なからず影響を与えよう。どの程度までの物価水準を容認するのか、9月のFOMCは議長会見も予定されていることで、イエレン議長の会見内容も今後の日米欧の長期金利の動向に影響を与えてこよう。


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by nihonkokusai | 2017-09-14 10:08 | 債券市場 | Comments(0)

長期金利を下げると本当に我々に恩恵があるのか

 現在、日銀が行っている長短金利操作付き量的・質的緩和という政策の目的は、大量の国債等の資産買入を維持させ、さらに短期金利だけでなく長期金利にも働きかけて金利を押さえ込むことになる。これによって金融緩和効果を発揮させようとするものである。

 とは言え、現実にこの「長短金利操作付き量的・質的緩和」が本当はどのような政策であるのかを理解することは難しいのではないかと思う。もちろん一見すると、とにかく緩和効果のありそうなものを詰め込んだパッケージに見える。しかし、これは想定通りに事が運ばなかったことによる修正に次ぐ修正の結果といえる。

 アベノミクスによって、日銀にリフレ政策が押しつけられ、その結果出てきたのが、2013年4月の量的・質的緩和政策である。金融市場調節の操作目標をマネタリーベースに変更した上で、期間の長い国債を含めて資産を金融機関などから大量に買い入れることで市場にインパクトを与え、その資金を市場に流入させることによって金融機関のポートフォリオのリバランス等を狙ったものとなる。

 国債などの資産買入によって国債が買われて長期金利が低下し、ETF等の買入で株価の下支え要因となる。日銀の金融政策は直接、物価等に働きかけるものではない。中央銀行の金融政策はあくまで市場を通じて物価や経済に働きかけるものとなる。

 人々のインフレ予想に働きかけることも大きな目的としているが、人々が果たしてどれだけ日銀の金融政策を理解し、それで予想を変えうるのか。日銀が動けば我々の物価に対する予想が本当に変化するのか。日銀がインフレターゲットを行っているからといって商品価格を値上げする必要はないと言っていた消費関連大手の経営者の発言もあったが、それが本音であろう。

 日本の長期金利は確かに日銀の異次元緩和で下がった。しかし、物価はいっこうに上がらず、量的・質的緩和を拡大しても効果はなく、そこで打った手段がマイナス金利政策となったが、これが評判が悪かった。

 金利をなくしたりマイナスにしていったい誰が喜ぶのか。実体経済が悪くてどうしようもない事態に対する緊急時の政策ならまだしも、日本の景気はそれほど悪くない。物価もむしろゼロ%近辺で安定している。それにも関わらず金利をマイナスにまでする必要はあったのか。

 これで助けられているのは巨額の債務を抱えた政府である。だから予算編成も大盤振る舞いできる。それは我々の将来に対する不安感を多少なり後退させうるが時間稼ぎにしか過ぎない。そしてそれがどれだけの経済政策になるのか。日銀が無理に抑えず、多少なり金利がつけば我々の利息収入が増え、それにより消費を上向くことも予想される。つまりそれは我々の犠牲の上になりたっている政策ともいえる。

 日本の長期金利を抑えることで日米金利差が拡大し、それが円安を招き、株価にも影響を与えるとの意見もあるかもしれない。しかし、為替は日米金利差だけで動くものではない。また、昔に比べて円安による日本への経済効果そのものも縮小しており、本当に日本の長期金利をここまで押さえ込む必要があるのか。このあたりそろそろ再検証する必要もあるではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-09-13 09:53 | 債券市場 | Comments(0)

長期金利のマイナス化の背景

9月1日の債券市場では後場に入り債券先物が一段高となり、引けにかけて10年国債のカレント(直近発行された銘柄)である347回債がマイナス0.005%をつけた。10年国債のカレント物の利回りを日本では長期金利と呼んでおり、昨年11月16日以来の長期金利のマイナス化となった。

 何故、日本の長期金利が再びマイナスとなったのであろうか。日銀がさらなる金融緩和を行うような兆しはない。むしろ国債買入をここにきて少しずつ減額していたぐらいである。それでは何が日本の長期金利を押し下げたのか。ここには2つの要因が絡んでいると私はみている。

 日本の10年債利回りの推移をみると、7月7日に日銀が指し値オペを実施したあたりから、低下基調となっていた。この7月7日に10年債利回りは0.105%まで上昇し、0.110%で指し値オペが実施された。つまり日銀が国債利回りの上昇を抑制させたことがひとつのきっかけとなっていた。

 7月7日に日銀は指し値オペとともに国債買入で5年超10年を5000億円に増額し、7月12日には3年超5年以下を3300億円に300億円増額していた。その後の利回りの低下もあり、5年超10年以下は8月25日に300億円減額したことで今年1月27日前の水準の4100億円まで戻していた。また、9月1日には3年超5年以下を300億円減らして3000億円と7月7日以前の水準に戻している。

 日銀が買入額を減らすことは債券の需給面ではマイナス要因(債券の売り要因、利回りの上昇要因)となる。それにも関わらず、なぜここにきて長期金利はさらに低下基調を強めているのか。それには日銀が7月7日に長期金利の上昇に指し値オペでストップをかけたタイミングで、米国の長期金利も低下基調となっていたためとみられる。

 日銀の指し値オペによって、米国債が買われることはない。米国債が買われて利回りが低下したのは、7月11日の米下院金融委員会の公聴会で、FRBのイエレン議長は「FOMCは向こう数か月、インフレの動向を注視していく」と指摘したように、米国の物価の低迷が背景にある。9月のFOMCでバランスシート縮小を決定する可能性を市場はかなり織り込んでいるが、年内追加利上げに関しては不透明感を強めている。ECBも正常化に向けた動きはかなり慎重となっており、ドイツの10年債利回りも7月14日あたりから低下基調となっていた。

 このように米国の物価の低迷が米国債の利回りを低下させ、それによって日本の長期金利もマイナスに低下した。しかし、長い期間の国債利回りの低下は資金運用にとってもあまり好ましいものではないため、ここからのマイナス金利の深掘りは考えにくいことも確かである。



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by nihonkokusai | 2017-09-11 09:50 | 債券市場 | Comments(0)

金融市場との対話が何故必要なのか

 市場との対話というのは、たとえば財務省や日銀などがその政策を実施するにあたって市場参加者の意向も配慮するということになろうか。

 日本で金利が自由化されたのはそれほど大昔のことではない。国債が市場で積極的に売買されて国債の利回りが市場で決定されるようになったこともそれほど昔ではない。

 1985年に金利が市場の実勢で決められる大口定期預金が導入され、また金融機関によるフルディーリング開始されたのが1985年であり、このあたりから金利が市場で決定されるようになった。1994年に民間銀行の金利は完全に自由化される。

 財務省や日銀が市場との対話を本格化させるきっかけとなったのが1998年だと思われる。この年に改正日本銀行法が施行され、金融政策決定会合が始まった。これまでの日銀の金融政策の透明性は高くなかったのが、改正日銀法により独立性を強めるとともに、透明性も強め、それはつまり市場と直接向き合うようになった。政策金利も公定歩合(日銀貸出の基準金利)から市場で決定される無担保コール翌日物金利に変わった。

 1998年には大蔵省資金運用部の国債運用に関する報道をきっかけとした運用部ショックと呼ばれた国債急落が起きた。これをきっかけに当時の大蔵省は市場の対話を重視しながらの国債管理政策を進めることになる。その結果のひとつとして日本版プライマリーディーラー制度などが作られた。

 日銀も金融政策に関しては市場と直接向き合う必要がある。そもそも現在の金融政策は金融調整によって市場で形成される金利に働きかけて、経済や物価動向に影響を与えようとするものである。

 ところがアベノミクスによる政策によって状況が大きく変わった。まさに先祖返りとも言うべき状況となってしまっているのである。国債の大量発行などもあって金利は自由化された。ところが日銀の長短金利操作付き量的・質的緩和政策は日銀が国債を年間発行額分も買い込んで、さらにその長期金利も操作しようとするものであり、ここに市場の思惑等は入り込めなくなってしまっている。こうなると市場との対話は当然失われてしまうリスクが存在する。

 別に政府が大量に発行する国債をすべて日銀が購入するとなれば、市場などいらないということにもなる。しかし、このパターンは歴史上数々の悲劇を生んできたものであり、日本でも財政法で本来禁じられている中央銀行による国債引受となんら変わらないものとなる。現在のやり方がこのまま永久に続けられるとは思えない。

 市場もいずれ日銀も出口を模索することで、いまの財政ファイナンスに近い状況は解消されるはずと認識し、国債に対する信認は維持されている。しかし、本当に出口からすんなり出られるのかは、日銀と市場との対話に掛かっている。これに失敗することになると国債価格の急変という事態も招きかねない。もし出口から出られないとなれば、今度は国債への信認そのものが失われかねない。いずれこの市場との対話が大きなキーになることも予想されるのである。


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by nihonkokusai | 2017-09-06 09:21 | 債券市場 | Comments(0)
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