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カテゴリ:金融( 9 )

フィンテックで我々の生活の何が変わるのか

 フィンテック(Fintec)とは、金融(Finance)と技術(Technogy)を組み合わせた米国発の造語である。かなり漠然としたものであり、一過性のブームかともみられていたが、日銀は今年4月に決済機構局内に「FinTechセンター」を設立しており、かなり真剣に取り組んでいるようである。日銀のFinTechセンターは、伝統的な金融業にとどまらない幅広い企業や学界などとの間で、建設的かつイントラクティブなコミュニケーションを取るための媒介的な組織との位置づけのようである。

 もともと金融とコンピュータは相性が良い事で知られている。我が国初の商用コンピュータを導入したのが東京証券取引所であり、それに応じて証券会社などもシステム化を進めた。銀行なども急速にシステム化を進め、ネットワークとしては1973年4月に全国銀行データ通信システムが発足し、日銀も金融の基幹インフラとも言うべき日銀ネットを1988年に稼働している。

 このような大型で費用も掛かるシステムに対して、我々個人の職場や生活のなかにもコンピュータが入ってきた。当初のパソコンはゲーム機のようなものであったのが、仕事の効率化と大型システムの端末として普及し、特にマイクロソフトのOSとインテルのチップが革命的な普及をもたらせた。職場や家庭のデスクにはいつのまにかパソコンが置かれるのが普通の時代となった。

 個人保有のパソコンの普及もあったが、携帯電話の普及のほうが早かったように思う。そこに登場したのがインターネットと接続された携帯電話、つまりスマートフォンの登場となる。日本のiモードは残念ながらガラパゴス化してしまったが、デザイン性やトップのカリスマ性も手伝って登場したiPhoneが革命を起こした。今回のフィンテックにはこのスマートフォンの普及も影響した面もあろう。スマートフォンを利用したペイパルなどの決済機能などがそれにあたる。

 さらに資産運用・資産管理というノウハウの面での利用なども指摘されている。家計簿のシステムやAIを利用した資産運用などである。ただし、これはそれほど画期的なものとは言えないように思われる。資産運用はもともと運用側の条件等によって機械的に行う側面もある。また相場の先行きを予測することについては、職人芸のような側面があるとともに、AIを使っても的確に予測するのは困難である。仮にすごいAIを開発して常勝が可能となれば、皆そのシステムに乗っかることになる。すると負ける人がいないので勝ち分もなくなり、それはつまりそんな儲かるシステムはできないことになる。

 大型コンピュータの登場が世界を変えた。パソコンも同様であり、スマホも同様である。そこにソフトも絡み、基幹ソフトだけでなく、ワープロ、表計算などのソフトが仕事を効率化させた。検索ソフトが波及してグーグルなどが生まれ、FACEBOOKやツイッター、さらには小売りのシステムを変えかねないアマゾンなども出てきた。果たしてフィンテックと呼ばれるものから、このような企業が出てくることがあるのか。仮想通貨などもフィンテックの一部かもしれないが、その代表格ともいうべきビットコインには肝心の信頼性の問題が存在する。ブロックチェーンを使っての仮想通貨は国内大手銀行もはじめるようだが、こちらもどれだけ波及しうるか未知数である。

 個人的にはフィンテックはWeb2.0のような漠然としたものではないかとみていて、距離を置いていた。その見方にあまり変化はないものの、海外送金などについてはフィンテックの技術で今後様変わりしてくることも予想される。我々にとって大きな変化とはならずとも、意外なところで便利さが増したり、余計な負担を軽減させてくれる技術となるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-12-27 10:10 | 金融 | Comments(0)

複合要因により金融市場が動揺

 7月8日の東京株式市場で日経平均は下げが止まらず、2万円割れとなり、638円安となった。9日もさらに売り込まれ、一時前日同様に600円を超す下げとなった。円高も進み、ドル円は120円台に。しかし、下落していた上海株がマイナスからプラスに転じ、これを受けて日経平均も急回復し、日経平均は117円高で引けるなどかなり波乱含みの展開となった。10日は多少落ち着きを取り戻し、日経平均は75円安で引けている。

今回の日経平均の急落要因としては、中国株の下落が大きかった。12日に大きく決断が下されるギリシャの動向も気掛かり材料ではある。しかし、仮にギリシャがデフォルトとなり、ユーロを離脱するようなことになろうとも、金融市場への影響は限定的とみられる。

8日の欧州の株式市場はなぜかしっかり。イタリアとポルトガルの株価指数が急伸。欧州の債券市場でもイタリアとスペインの国債が前日に続き買われ、これに対してドイツの国債は売られていた。前日の東京や中国の株式市場が急落しても落ち着いていた。欧州ではギリシャ問題が最大の懸念材料となろうが、その結果はどうであれ不安感は後退しているように思われる。9日の欧州市場も続伸。イタリアやスペインの国債も買われたが、ドイツの国債は売られるなど、いわゆるリスクオフの反動が起きていた。

これに対して米国の株式市場は動揺を見せており、8日のダウ平均は261ドル安となっていた。ただし、この日はニューヨーク証券取引所のシステム障害による影響も大きかったとみられる。システム障害が始まってから、他の取引所を通じた株式への売りが優勢になりダウ平均は下げ幅を広げた面も指摘された。9日のダウ平均は33ドル高と戻りはしたが、戻りも鈍かった。

欧州はギリシャを注視しているが、米国は中国の動向も大きな懸念材料となっていた可能性はある。このような材料への感応度の違いもあったのではなかろうか。6月開催のFOMC議事要旨において、海外の危機的状況が米国経済の重しになり得るとの当局者の認識が示されたことも影響した可能性はある。

これに対して東京市場は物理的に中国に近く影響を受けやすい面や、中国株が売れないため日本株を売ったとの見方もあった。中国経済への懸念、これで日本の商品への爆買いがなくなるのではとの不安もあったかもしれない。しかし、中国株の下落は買われすぎた反動や、中国当局の対応のまずさ、さらには企業側の申し出により売買停止ができてしまうことによるテクニカルな影響も大きかったとみられる。9日の上海株の反発は中国警察当局が悪質な空売りを調査との報道が原因ともされるが、これをきっかけにいわゆるショートカバーが一気に入ったか。

ただし、ここまで東京市場が上海市場に連動することも説明は難しい。日本の投資家が中国株の下落で直接影響を受けることは考えづらい。それではなぜここまで東京株式市場の下げがきつくなったのか。日経平均の日足チャートをみると、9日はいきなりトレンドを下抜けてきたことがわかる。チャートによるテクニカルな売り、さらに追い証などにともなう売りなどが急落の要因とみられ、そのきっかけがギリシャ不安や中国株の下落になっていた。いずれにしてもテクニカルなものを含めた複合的な要因が重なり合ってのここにきての株価の変動か。

円高については日経平均の下落とセットになっての動きであった可能性がある。アベノミクスの登場で円安・日本株高がセットになり、海外投資家は為替と日本株を合わせてポジションを取るケースも多いとみられる。つまり、円売り株買いの反対のポジションが入り、そこに資源国通貨の下落によるリスク回避の動きをともなっての円高か。

このように市場それぞれがギリシャ、中国への懸念にテクニカルな要因も組み合わさって動いたものと思われる。

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by nihonkokusai | 2015-07-10 17:55 | 金融 | Comments(0)

ドイツでは一部の個人の預金口座でもマイナス金利に

 11月6日付けの読売新聞電子版によると、ドイツのオンライン銀行が11月から大口預金に限り、預金額に応じて利息を付けるのではなく、顧客から利子を徴収する「マイナス金利」を同国で初めて導入したそうである。

 マイナス金利を導入したのはドイツ中部のチューリンゲン州の小規模行「ドイツ・スカート銀行」だそうで、同行での預金総額が300万ユーロ超の顧客で、貯蓄口座に50万ユーロ以上を預けていた場合などに金利として0.25%が徴収されるとか。

 中央銀行が政策金利の一部としてマイナス金利が発生したケースはあったが。民間の銀行が個人向けの預金にマイナス金利を適用するのは極めて稀ではなかろうか。もちろん日本の銀行でも金利が極めて低いため、時間帯によってはATMで預金をおろした際に手数料が発生し、結果としてマイナス金利となってしまうことはある。しかし、今回の場合は銀行がマイナス金利を課することになり、状況は異なる。

 ドイツはユーロ圏の国であり、中央銀行はECBとなる。そのECBは今年6月5日のECB政策理事会で追加緩和策が決定された。政策金利は0.1%引き下げられ、リファイナンス金利が0.25%から0.15%となった。コリドーとよばれる政策金利の上限と下限については、上限金利である限界貸出金利は0.4%に引き下げられ、下限金利であるところの中銀預金金利(預金ファシリティ金利)はマイナス0.1%となったのである。

 このマイナス金利は預金ファシリティ金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用されるとされた。

 これがいわゆるECBのマイナス金利である。さらに9月4日の政策理事会では、ECBは政策金利を全て0.1%ずつ引き下げ、リファイナンス金利を0.05%に、上限の限界貸出金利を0.3%とし、中銀預金金利をマイナス0.2%とした。

 6月の利下げでドラギ総裁は政策金利は「事実上」下限に達したと述べていたにもかかわらず、9月にまた引き下げ、今度こそ利下げはこれで終わりと強調していた。これはドラギ総裁としては量的緩和政策の導入をしたかったものの、ドイツ出身のメンバーなどの反対もあり、政策金利の引き下げなどで対応せざるを得なかったためとみられる。かなり無理をしていたことも確かであり、その結果、民間にもシワ寄せが来た結果となった。

 民間金融機関としては貸出や国債などでの運用とともに、預金の引き出しに備えてある程度の資金は中央銀行の当座預金に置くなり、短期で運用する必要がある。しかし、その金利がゼロ近くかマイナスとなっていれば。今回のように大口顧客の預金の利子をマイナスにせざるを得ないことも理解はできる。しかし、銀行の運用の源である預金はいらないとの政策は通常は取れないことで、この銀行はレアケースではないかと思われる。

 それではすでに1年物の国庫短期証券が一時マイナス金利となっていた日本でも、個人の預金でのマイナス金利はありえるのか。これについては絶対ないわけではないが、やはり銀行が預金の流出を招くようなことはしないのではないろうか。

 ECBと日銀は緩和目的は同じであっても、そのやり方が違うため、その可能性は極めて薄いといえる面もある。ECBはマイナス金利を課すことで、中銀の当座預金に置かれた資金を多少リスクをとっても他の商品で運用、例えば株式市場などでの運用を促そうとした。

 これに対して日銀は、当座預金の超過準備にはプラス0.1%の利子をつけている。これは日銀が市場から国債を買って、民間銀行は受け取った資金を日銀の当座預金口座に積み上げることを目的としているためである。現在の日銀の政策目標が、日銀の当座預金を含むマネタリーベースとなっている。これが膨らむとインフレ期待が強まる、と日銀は考えている。ECBは中央銀行から資金を逃がす策、日銀は中央銀行に資金を積み上げさせる策をとっている。これでも目的は同じで、ともに物価の上昇や景気の回復である。

 日銀の超過準備には0.1%という利子が課せられることで、日銀に口座がある一般的な国内銀行などでは、預金者にマイナス金利を課せる必要はない。ただし、今後、1年より長い期間の国債でマイナス金利が発生するような事態となれば、今回のドイツのように運用難を理由に大口預金者にマイナス金利を課す可能性がないわけではない。

 それでも民間銀行にとっては各種の決済などを含めて、預金を置いておくことで手数料収入が得られる面もある。企業にとっても預金にマイナスが課せられれば、他のマイナス金利でない銀行に資金を移し替えることが予想される。銀行にとって収益の源が預金である以上、日本での預金へのマイナス金利は考えづらいのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2014-11-07 09:49 | 金融 | Comments(0)

安全資産とは何か

 資金を運用する際に常に意識しなければいけないのがリスクである。少なくとも元本を毀損することなく運用しなければいけない資金は、リターンをある程度犠牲にして運用する必要があることは言うまでもない。いわゆる安全資産での運用となるわけだが、その代表的なものとして預金がある。金融機関の運用先として最も安全な資金の保管先は日銀の当座預金となる。その代わりその金利は準備預金制度に基づく所要準備の分はゼロ、それを超える超過準備の分は以前はゼロだったが、現在は0.1%の金利が付けられている。

 個人は日銀に口座を持つことができないため、日銀の当座預金に資金を置くことはできない。その代わりに我々は銀行などの預金口座を利用している。この口座において給与の振り込み、電気代や電話代等々の引き落とし、クレジットカードの決済等々も行っているが、この預金も利息よりも元金が保証されている面が重視されている。その銀行に何かあっても預金保険の対象預金(利息のつく普通預金・定期預金・定期積金等々)であれば、合算して元本1000万円までと破綻日までの利息等を保護される。また、決済用預金(当座預金・利息のつかない普通預金など)は全額保護される。

 日銀の実質的なゼロ金利政策により、短期の金利はほぼゼロ近くなっており、預金金利は低い状態にあるが、安全性と決済の利便性を考えればある程度の資金を預貯金に置いておくであろう。民間銀行はこの預金の資金を元にして、貸出や国債などでの運用を行っている。定期預金の金利と同じ年限の国債の利回りに差があるのは、国債の価格変動リスクを銀行が負っているためである。

 国債などの債券には価格変動リスクがある。つまり市場に入札などを通じて発行された国債は債券市場で売買されて価格が決まる。その価格は元本の100円を上回ったり、下回ったりする。ただし、デフォルトでもない限り、償還日には元本が返済される。これが株式や為替の価格変動リスクと異なる点となる。さらに国債は国が発行しているため、国内の金融資産では最も安全とされるものとなっており、だからこそ元本をなるべく毀損させてはいけない資金の運用の主体が国債になっている。当然、年金の運用も国債主体にならざるを得ない。国債と株と為替の価格変動リスクを同等にみるべきものではない。

 国債など債券には、株などと同様に信用リスクも意識しなければならない。国が出しているから国債は安全だというのはおかしいとの議論もあるかもしれない。日本国よりトヨタのほうが安全ではないかとの見方もあるが、国と民間企業ではそもそもの土俵が異なる。トヨタはなくても別の自動車会社があるが、もし国への信用がなくなれば、国内で生活している限り、安心して経済生活を送ることはできなくなる。円とビットコインの信用の違いなどもここにある。

 国債のリスクは他の金融商品に比べて低いことは確かであり、より安全性を求める必要のある資金はリターンよりもリスクの低いもので運用すべきというのは鉄則である。国債のリスクも残存期間に応じて異なる。期間の短い国債は期間の長い国債に比べて価格変動リスクは低くなる。リスクとリターンはこのあたりで調整すべきである。たとえば子供の将来の学資にあてるための資金を利子が少ないとかの理由で、リスクの高い金融商品にその資金を投じるであろうか。国債が絶対安全というわけではむろんないが、よりリスクを抑える運用のためには国債主体の資金運用は避けることはできないはずである。

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by nihonkokusai | 2014-04-27 11:02 | 金融 | Comments(0)

フラッシュ・ボーイズとフロントランニング

 8日現在、アマゾン・キンドルのEconomics のベストセラーのトップが「Flash Boys: A Wall Street Revolt」となっている。私も昨日、ダウンロードし、これからじっくりと読んで見たいが、とにかく興味深い本である。

 昨日のこのコラムでもフラッシュ・ボーイズのことを取り上げたが、この本が取引所の取引そのものの変革を促すこともありうる。本の売れ行きが良いということはそれだけ関心が持たれていることは確かである。これにはもちろん、この本に発売により、HFTを手掛ける投資会社「バーチュ・ファイナンス」の上場延期というニュースも、販売増に影響したものと思われる。

 著者である米作家のマイケル・ルイス氏は、ブルームバーグ・テレビとのインタビュで、「フロントランニング(仲介業者が顧客の注文の前に自分の注文を先に出す行為)が行われていることは明らかだ」と語ったそうである。ただし、システムの抜け穴を利用して利益を得ているだけだとも指摘していた。

 しかし、ここで問題になりそうなのは、どのようにして顧客の注文を事前に把握したのかである。1238日のうち損失が出たのはたった1日の「バーチュ・ファイナンス」に対して、FBIはインサイダー取引の有無について調査に乗り出したと6日の日経新聞は伝えていたが、取引所とHFT業者の関係についても今後は調査の手が入る可能性がある。

 フロントランニングが違法であるのかどうかは微妙なところであるが、注文そのものをチェックできてしまうとすれば、インサイダーに関わる取引にもなりかねない。ちなみに、フロントランニングは別にコンピュータを使った取引だけに存在しているものではない。むかし、人同士が取引している際にも存在していた。

 株式市場での立会場での取引では、怒号やサインが飛び交っていたが、ここには顧客の注文を取り次ぐ証券会社の社員、その注文を付け合わせる取次業者(実栄証券)の社員がいて、東証の社員がそれを監視していた。顧客の注文を取り次ぐ証券会社の社員のなかには、会社の資金をもとに自己の裁量で売買を行っている社員もおり、これがディーラーと呼ばれていた。このディーラーは自社なり他社なりの大口注文を確認し、その注文より先に売買を執行して利益を得ることも可能であった。このあたり、注文を繋ぐのが新人とかであれば、ベテランのディーラーが横目で確認して先に売買を執行するようなことは容易であったはずである。

 しかし、取引がシステム化してしまうと、人が介在してのフロントランニングは難しくなる。そもそも自己売買を行うディーラーという人種そのものが、既にレッドブック入りしており、昔に比べて存在感はなくなっている。そんななかにあり、どうやらシステムの隙をついてのフロントランニングが、ハイ・フリークエンシー・トレーディングを通じて復活していたようである。注目すべきはフロントランニング行為そのものよりも、それが可能となった背景にある。その結果次第では、今後の世界的な金融取引手法に大きな変化が出るとともに、取引所取引にも変化が生じる可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-04-09 08:05 | 金融 | Comments(0)

ビットコイン問題と取引所

 仮想通貨ビットコインの主要な取引所であるMt.Gox(マウント・ゴックス)が取引を全面停止する事態となり、その被害は74.4万枚分、約3.8億ドル相当との情報もある。マウント・ゴックスがある日本の政府は金融庁、警察庁、財務省が情報収集しているようで、米当局は複数のビットコイン取引所に召喚状を送付したそうである。欧州銀行監督機構(EBA)はビットコイン保有者に対し、銀行預金のようなセーフティネットはなく、損失を被っても自己責任だと警告した(以上、ロイターの2月27日の記事「ビットコイン業界、マウント・ゴックス問題乗り越え強固なシステム目指す」)。

 今回のビットコインの問題については、ビットコインという仮想通貨の在り方とともに、それを取引する仕組みについての問題が明らかとなった。特に「取引所」という言葉がひとり歩きしているが、この取引所とは東京証券取引所のような存在とは全く異なるものであることに注意したい。東京証券取引所などは金融庁の管轄下にあるが、ビットコインは「通貨でない」ため、その取引所は金融庁の管轄下にはない。このため規制対象にもなっておらず、まさにネットを使って私的な取引を行っている場なのである。

 ビットコインはMt.Goxのみならず、Coinbase、Kraken、BitStamp、Blockchain.info、Circle、BTC Chinaなどいくつもの取引所が各国に存在している。それぞれのビットコイン取引所では、自国の通貨でビットコインを売買できるようである。ただし、ビットコインの取引には返金の仕組みがなく自己責任となっている。今回のように取引ができなくなり、換金不能となっても誰も助けてはくれない。

 本来の取引所とされるものには、株式や債券、さらに米などの商品を売買するため、取引参加者に取り引きの場所を提供するものである。以前は会員がある決められた立会時間に証券や商品を取り引きするために設立した会員組織の法人であったが、現在は東証などを含めて株式会社化されている。

 アントワープ(アントウェルペン)に1531年、現在のようなかたちの証券取引所が歴史上初めて設立されたとされる。ブリュージュにおける手形の取引所をモデルにしてつくられたとされるアントウェルペン取引所では、手形や商品などの取引が行なわれていた。アントウェルペン取引所の銘板には「国籍と言語の如何を問わず、すべての商人に役立てるために」とあるそうで、交易の自由が保証され、イギリスやポルトガルなどヨーロッパ各国が商館や駐在員を配置し、資金調達などを行っていた。またアントウェルペンでは「アントウェルペン慣習法集成」という商法も制定され、この商法がオランダの東インド会社の設立に大きな影響を与えたと言われている。また、アントワープでは船舶の売買に加え海上保険といった取引も盛んに行われ、ヨーロッパ最大の商業・金融の中心地となっていった。

 1878年に現在の東京証券取引所の前身である「東京株式取引所」が開設された。1878年6月1日に東証のある兜町は、日本最初の株式会社候補のひとつ第一国立銀行が、渋沢栄一を最高責任者として設立された場所であった。名前の由来は平安時代に遡る。源義家が奥州征伐のとき、ここを通り暴風に出会うや、鎧を沈めて竜神に祈って無事を得た。その帰途、近くに塚を築き鎧を埋めて神を祭ったという故事から生まれた兜塚(兜岩)を名前の由来として、明治に三井組等がこの地に集まって兜町と命名した。東京株式取引所が売買立会を開始して以来、120年以上にわたり、アメリカのウォール街やイギリスのシティなどとともに、兜町はわが国の証券市場の象徴的な場所のひとつとされている。

 現在の金融の取引所も元々は取引する人々が自然に集まり、そこで取引のルールが決められていった。私的な組合のような組織が政府の管轄下に入り、現在のような取引所が作られていった。

 今回のビットコインの問題は、通貨とするのであればそれに最も必要な信用が問題視されることになり、今後、ビットコインが仮想通貨として発展するとするならば、その信用回復が必要となる。価値を維持するシステムもわかりにくく、それも一般への普及を阻害しているように思われる。今後も同様の仮想通貨が生まれてくることも考えられるが、その信用を見極められるかどうかは、我々の自己責任となる。取引所という言葉で、どこかで保護されているかではないかとのイメージは持たない方が良い。

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by nihonkokusai | 2014-03-02 12:20 | 金融 | Comments(3)

ビットコインはマネーなのか

 グリーンスパン前FRB議長は、1年で89倍に値上がりした仮想通貨「ビットコイン」について、取引価格は持続できないほどの高水準にあり、通貨ではないとの見解を示した。さらに「ビットコインの本質的価値が何かを推測するため想像力を本当に膨らませなければならない。それを他の人はできるかもしれないが、私はできない」と断言した。

 ビットコイン(Bitcoin)とは中本哲史(Satoshi Nakamoto)と名乗る人物が基本的な概念を生み出した仮想通貨である。ビットコインは、円やドル、ユーロなどのように発行権限を有しその価値を担保する中央政府の存在はない。つまりその信用力の背景に、政府や中央銀行、現物資産があるわけではない。

 ビットコインはminerとよばれるビットコイン採掘管理ソフトの存在があり、これにより流通量が自動調整され埋蔵量にも限界が設定されている。この考え方の背景にあるのが、昔の金本位制であると考えられる。ビットコインの価値は需要と供給の関係によって決定されるのも金市場と同様である。ただし、このビットコインは、やや得体の知れないシステムそのものへの信用を背景になり立っている取引のようである。

 ビットコインは銀行などを介さないので決済手数料が非常に安く、P2Pで取引でき、獲得したビットコインはデジタルウォレットに貯蓄できる。ユーロ危機などを背景に、ビットコインは規制を受けない世界的な通貨という評判が高まり、11月27日に1ビットコインが1000ドルの大台に乗るなど、その価格が急上昇したことも話題になった。

 果たしてビットコインはマネーなのか。発行体の信用力の裏付けもなく、通常の商取引で用いることもできない。当然ながら銀行に預けることもできない。ダークな世界でのまさに闇取引のような存在ともいえる。

 現在の管理通貨制度では、円やドルには金本位制時のように、その価値を裏付ける物的保証は存在しない。その意味では、貨幣価値に裏付けのないビットコインと何ら変わりはないものとの見方があるが、それは違う。日銀券は法律に基づいて、国や中央銀行が責任を持って発行している上、完全な流動性が法律上認められているものである。つまり国がその信用を保証している。ところが、ビットコインは法的に認められたものではない上、何かしらの機関の信用力がバックにあるわけではない。仮想通貨のひとつに、たとえば買い物等につくポイントがあるが、これはその発行体の信用力が背景にある。

 ビットコインについては考え方は非常に面白いが、手を出すべきものではないと思われる。ただし、ネット環境がさらに整って行けば、何らかの信用力に基づいた国や中央銀行ではないところが発行したものが、仮想通貨として認識されて使用されることもないとは言えない。それが世界の統一通貨を生み出す要因になったりすればまさにSFの世界ではある。しかし、税金や決済等々のことを考慮すると、そのようなものが出てくるのはかなり困難を極めると予想される。

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by nihonkokusai | 2013-12-09 09:35 | 金融 | Comments(1)

プラスチック・マネー

 プラスチック・マネーといってもクレジットカードなどのことではない。イングランド銀行はプラスチック製紙幣の導入を検討しているそうである(9月10日のブルームバーグ)。

 この計画をロンドンで発表したイングランド銀行のカーニー総裁は、ポリマー製の紙幣は紙のお札より清潔かつ安全で耐久性も高いと説明。切り替え決定となれば、ポリマー紙幣は2016年にも流通し、チャーチル元首相の肖像も採用されるそうである。

 プラスチック製紙幣(ポリマー紙幣)は1988年にオーストラリアで発行されたのが最初とされる。カーニー総裁は、カナダ中央銀行総裁時代にポリマー貨幣を導入したが、この結果、偽造が大幅に減少したとされている(毎日新聞)。シンガポールやニュージーランドなど記念紙幣を含め、世界各国ですでに発行されている。ただし、イギリスで発行されるとなれば、日本でも検討課題に挙がることも予想される。

 少し気が早いが2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、記念硬貨が発行されようが、プラスチック製の記念紙幣というのも面白いかもしれない。ただ、政府発行の硬貨ではなく日銀発行の銀行券での記念紙幣というのは発行が可能なのか。それはさておき、この紙幣が生まれたのがいつ頃なのかをご存じであろうか。

 中国の唐の時代の後期に、茶・塩・絹などの遠距離取引が盛んになるなど商業の発達に伴い銭貨の搬送を回避する手段として「飛銭」と呼ばれた送金手形制度が発生した。高額商品の売買には銭貨の「開元通宝」などでは量がかさんでしまう上、途中での盗賊などによる盗難の危険もあった。このため、長安や洛陽などの大都市と地方都市や特産品の産地などを結んで、当初は民間の富商と地方の商人との間によって「飛銭」という送金手形制度が開始された。これはたいへん便利なものであるとともに、手数料収入に目を付けた節度使(地方の軍司令官)や三司(財政のトップ)などもこれを模倣した。

 飛銭を利用する際に使われた証明書(預り証)が、宋代になると交子・会子・交鈔・交引などと呼ばれ、証明書それ自体が現金の代わりとして取引の支払に用いられるようになった。特に四川地方で発行された交子は世界史上初の紙幣とされている。

 紙幣はたいへん便利なものであったことで、その需要が増え、それに目をつけた政府は軍事費に当てるための財源として交子を乱発し、その価値を失ってしまった。政府に発行をまかせると紙片を乱発しかねないのは歴史が証明している。その後、新たな紙幣を発行するものの、やはり信用を落としてしまい、最終的には銅銭が復活することになった。

 なぜ中国で世界最初の紙幣が誕生したのであろうか。貨幣の材料となり、貴金属などの産出が限られていたこともあるが、宋や元の時代の国家権力が強かったことも要因と指摘されている。それとともに遠隔地との交易など商業の発達がそれを促したものといえよう。紙そのものが中国で発明されたものであり、さらに印刷術も発達していたことが、紙幣の発行を可能にしたといえる。マルコ・ポーロの「東方見聞録」には、元で通貨ではなく紙幣で買い物をする様子を見て驚く場面が登場する。これからも当時のヨーロッパなどでは紙幣が使われていなかったことがわかる(拙著「マネーの歴史 世界史編」より一部引用)。

「マネーの歴史 世界史編」


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by nihonkokusai | 2013-09-13 10:02 | 金融 | Comments(0)

ドルマークの由来、そして円と元のマークは同じだった

 先日、あるテレビ番組の製作スタッフから突然の電話があり、ドルマークの由来を教えてほしいという。その担当者はいろいろと調べてスペイン領アメリカにおいて使われていたスペインのペソに由来するのではとの話であった。たしかにネットで調べて見るとウィキペディアなどては諸説あり、そのひとつにスペイン領メキシコ・ペソの記号として使われていたものが由来ひとつと記されている。また当時のペソは、ピアストル、(英語圏では)ダラーとも呼ばれていた。

 これについては自分で書いた本(「金融」のことがスラスラわかる本―歴史に学ぶ金融の基本)にこのように記していた。

 「312年にローマのコンスタンティヌス大帝が発行したソリドス金貨は長い期間に渡り高い純度を維持し、その後11世紀末まで東地中海世界の標準貨幣として使われた。ノミスマとも称されたソリドス金貨は中世のドルとも呼ばれているように当時の基軸通貨となっていたのである。中世フランスや南米などで使われた通貨ソル(Sol)、中世イタリアで使われたソルド(soldo)、中世スペインで使われたスエルド(sueldo)などはこのソリドス由来するとされ、ドルのマークが$であるのも、ソリドス(Solidu)にあやかろうとしたものとも言われている。」

 残念ながらもらった電話では、すぐにこのことを伝えられず、曖昧な返事となってしまったが、この場を借りてこのような説があることを伝えておきたい。

 ちなみに円マーク(¥)については、英語で「en」ではなく「yen」と綴られることとなった円を、ドルの習慣に合わせてその頭文字Yに二重線を入れたものが円マークの由来であるとする説が一般的であるとか。中国では本来の通貨単位である「圓」を「元」に代替したが、記号は日本の円記号と同じ¥である。 いずれこれについてもめなければ良いのだが。


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by nihonkokusai | 2012-10-07 13:13 | 金融 | Comments(0)
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