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カテゴリ:金融( 23 )

高額紙幣廃止論のここがおかしい

 元イングランド銀行金融政策委員のブイター氏は11月20日付けの日本経済新聞において、現金の撤廃について下記のようにコメントしていた。

 「第1に現金をすべて廃止すれば、金利のゼロ下限(または実効下限)制約がなくなる。」

 中央銀行がマイナス金利政策を行って、預金金利をマイナスとしても、現金には当然ながらマイナス金利は適用できない。だからマイナス金利政策の効果が出にくい。このため、現金を廃止すれば、その効果が高まるとの見方である。しかし、本当にマイナス金利政策が需要を刺激できるのについては、かなり疑問が残る。

 「第2に現金は決済手段として非効率だ。金融の発達した国では、もっと効率的な様々な決済手段が存在する。」

 金融が極度に発達し、現金が国内であればどこでも安心して利用できるシステムが日本で構築されている。偽札の横行もほとんどなく、その意味では日本は金融の後進国ではありえない。日本では現金決済というシステムが高度に発達し、匿名性もあることで多少のリスクや費用が掛かっても現金を保有するというインセンティブが働き、その結果が100兆円もの現金流通量となっている。

 効率的な決済とは、スマートフォンを使った非接触型決済などであり、中国でのアリペイなどを指そうが、中国は金融システムの発達が遅れ、現金が利用しにくいために、インフラ整備の遅れが、新技術の普及を広めていったとは言えまいか。

 日本でもプリペイドカードを利用した少額貨幣での取引についてはキャッシュレス化は進んでいる。ただし、スウェーデンのスウィッシュや中国のアリペイやウィーチャットペイのように特定のアプリに集中していない。利便性の高くシェアの大きなアプリが出てくれば、一気に普及する可能性がある。

 「第3に現金には匿名性が備わっているため、非合法取引の決済や犯罪者の価値貯蔵の格好の手段となっている。また脱税、資本規制逃れ、資金洗浄(マネーロンダリング)、犯罪やテロの資金調達が容易になるという弊害もある。」

 現金は確かに匿名性を有しており、それが日本人の現金保有の要因のひとつになっている可能性はある。しかし、日本が脱税天国であり、マネーロンダリングやテロの資金調達に日銀券が大量に利用されていることは考えづらい。

 「日本は先進国の中で現金決済の占める比率が極めて高いので、特に問題が大きいと考えられる」とブイター氏は指摘するが、日本の現金比率の高さは犯罪に使われているというより、発達した金融システムにより、現金利用が便利なためとも言えるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-11 10:08 | 金融 | Comments(0)

FinTech(フィンテック)とは何か

 いまさらではあるが、FinTech(フィンテック)と呼ばれる用語について考えてみたい。FinTechとは金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。情報技術を金融サービスに利用して新しいサービスを生み出す動きともされている。

 この代表例としてビットコインが挙げられている。その値上がりピッチの早さもあって、ニュースなどでも紹介されているビットコインではあるが、その位置づけがはっきりしているわけではない。法的に金銭と評価することは現時点では難しいと、日銀の「FinTech 勉強会」における議論でもなされている。この日銀での議論のなかでは次のような指摘もあった。

 「しかしながら、ブロックチェーンや分散型台帳技術を利用する分散管理型ネットワークの特性といった新しい要素は、従来のパラダイムを大きく転換し得る観点を孕んでおり近年、様々な議論が行われている。」

 確かにブロックチェーンや分散型台帳技術についてはいろいろな応用が期待できるが、それが金融そのものを根本的に変えるかどうかは不透明である。世間の注目度としては、あらたな通貨が生まれたことで、その行方と言うか価格動向のみに注目が集まっているかのように思われる。

 ビットコインがバブルであるかどうかは、弾けてみないとわからない。しかし、その値動きは17世紀のオランダでのチューリップ価格の動きを連想させるものとなっている。チューリップであれば、それが綺麗で珍しいものであるのかは視覚や聴覚などで確認できても、電子通貨には実態はなく、あくまで価格の動きでしかない。その価値を適切に把握する手段もない。オランダのチューリップもその希少性のみで価格が上昇し、買いが買いを呼ぶことになったことで、適正価格なるものがあったわけでもなさそうである。

 私自身はFinTech(フィンテック)という用語については、懐疑的というかそれが金融の未来を変えうるものといったイメージはない。そもそも金融の世界は情報技術とともに発展していたものであり、何をいまさらといった感もある。

 コンピュータが生まれ、それを真っ先に利用した業態といえるのが金融業界であった。証券取引所のシステム化の歴史、銀行や証券会社によるシステム化の歴史をみればそれが明らかであろう。金融取引と情報技術は極めて相性が良い。だからこそFinTech(フィンテック)という用語は決して新しいものとは言えないと個人的には思っている。その代表格がビットコインとあっては尚更感も強いのである。ただし、モバイル決済などについては金融決済を今まで以上に容易にさせうるものであり、それがさらに普及するであろうとは思う。しかし、これもあくまで新たな決済方式というよりも、情報技術を使っての利便性の向上にすぎないのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-09 14:27 | 金融 | Comments(0)

仮想通貨とモバイル決済と高額紙幣廃止議論

 ビットコインを代表とする仮想通貨、中国やスウェーデンなどで利用が拡大しているモバイル決済、インドなどでの高額紙幣廃止等々動きなどから、日本での1万円札廃止論なども出ている。これはハーバード大学のケネス・ロゴフ氏による日本での高額紙幣廃止論がひとつのきっかけとみられるが、仮想通貨とモバイル決済、高額紙幣問題は、キャッシュレス化社会としての動きとしてトータルで捉えるよりも、それぞれ切り離して考えるべきものではなかろうか。

 ビットコインを代表とする仮想通貨であるが、自国の通貨に信用のおけなくなった国であれば代替通貨としての利用も考えられるが、法定通貨である円に対する信認が強い日本では、通貨としての利用は考えづらい。仮想通貨は通貨と称しているもののネットを通じた仮想の金融取引手法であり、投機的に利用されているだけである。その値動きからも17世紀のオランダのチューリップバブルと類似しているものである。仮にビットコインバブルが弾けようと、実態経済への影響はほとんどないのではなかろうか。

 キャッシュレス社会が到来かと騒がれている中国などでのモバイル決済普及の動きについては、たとえば通常の電話網が整備されていないところで急速に携帯電話が普及したようなもので、現金利用に障害があることで、モバイル決済の普及が進んだといえる。さらに日本はモバイル決済の後進国などではなく、少額貨幣の利用ではキャッシュレス化は進んでいる。ただし、アプリなどの寡占化が行われず、各種のカードやアプリが乱立してしまっていることで、中国などに比べて普及が進んでいないかのような印象となっている。

 問題なのは高額紙幣問題であるが、ケネス・ロゴフ氏は日本での現金流通水準の高さ、1万円札など高額紙幣の利用度の高さの要因はマネーロンダリングや脱税などの犯罪行為に高額紙幣が利用されているためとしている。日本での1万円札など現金が異常に利用されているのは何故なのか。マネーロンダリングやテロの資金調達などに日銀券が使われている可能性は全くないとまでは言い切れないものの極めて低いと思われる。

 問題となるのは現金の匿名性を利用した脱税への利用であるが、これについては存在する可能性はある。昔の証券会社などにとっての金融商品販売の主力商品が割引金融債であったが、これは金融商品としてだけでなく、匿名性を利用した相続などでの脱税などにも利用されていた可能性があった。

 現在は中期ゾーンの国債の利回りもマイナスとなっているため、利息ゼロの現金のほうが中期債に比べれば利回りが高い状況となっている。保管費用はかかっても、多額の現金をしまい込んでいる富裕層がいる可能性は否定できない。ときおり所有者不明の多額の現金が発見されるが、それも税金対策などであった可能性はありうる。

 だからといって現金を廃止すべきというのはやや極論ではなかろうか。日本国内での現金利用率の高さは、決済等含めたその使い勝手の良さが大きく影響している。治安の良さ、現金をATMで引き出せる利便性、偽札が少ないこと、紙幣がクリーンであることなど、それなりの費用をかけて現金が利用されやすいインフラが整備されている。

 キャッシュレス化はその費用を軽減させることになるが、それには特定の使いやすいアプリなども必要となろう。ただ、高齢者にとってはモバイル決済は馴染みにくい面もある。脱税を防ぎ、キャッシュレス化を進展させるために高額紙幣を廃止するという議論は極端すぎるし、日本社会に混乱を招きかねない。いずれ否応なくモバイル決済などを通じたキャッシュレス化は進むであろうし、日銀がマイナス金利政策をやめれば、保管費用のかかる現金保有は減ることも予想される。


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by nihonkokusai | 2017-12-08 10:08 | 金融 | Comments(0)

中国のスマホ決済の急速な普及と日本の実情

 11月28日付けの日経新聞によると中国で「生活インフラ」として定着したスマートフォン(スマホ)決済が2年で6倍に増え、年間660兆円にも達したそうである。上海の一角に密集する八百屋や雑貨店など20店に聞くと、電子決済を使えないのは婦人靴店1店のみだとか。中国のスマホ決済は「支付宝(アリペイ)」と「ウィーチャットペイ」の2強に延べ12億人が登録しているそうである。

 北京や上海で財布から現金を出して払っている人といえば、老人か外国人旅行者ばかりだとの指摘もあり、中国は大都市だけでなく内陸部でも交通や食事など、どんな支払いでも決済アプリで簡単にできてしまうようである。

 なぜ中国ではこのように急速にキャッシュレス化が進んでいたのか。それに対して日本ではキャッシュレス化が遅れているようにみえるのか。

 それは日本では現金が全国で流通できる社会基盤が充実していたことで、現金での決済の利用が便利であったためといえる。これに対して中国では日本よりも偽札が多く、また治安も日本に比べて良くない面も指摘され、現金の利用が日本に比べてリスクが高いことがあった。そこに急速なスマートフォンの普及があり、アプリでの簡易決済が可能となったことで現金を持ち歩くリスクもなく、気軽に使える決済方式が急速に普及したものと思われる。

 インフラ整備の遅れが、むしろ新技術の普及を広めていった事例のひとつとも言えるのではなかろうか。それでは今後、日本でもスマートフォン決済、モバイル決済が普及する可能性はあるのであろうか。

 キャッシュレス化が進んでいる国としてはスウェーデンもある。スウェーデンでは複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済が広く使われている。

 日本では現金の決済が便利なため、中国やスウェーデンのように一気にモバイル決済が普及することは現状考えづらい。しかしSuicaなどJRのカードやnanacoなどのコンビニのカードを使うことで小銭を持ち歩くことも少なくなった人も多い。少額貨幣についてはキャッシュレス化は進んでいる。

 スマートフォンの普及も中国ほどではないが、日本でも進みつつあり、今後、国内で使いやすいアプリが出てくれば一気に普及する可能性はある。国内大手銀行なども三菱UFJがMUFGコインを発表するなど、銀行口座のお金をスマートフォンで簡単に支払えるような仕組みが検討されている。銀行別のアプリとかではむしろ使いづらい面もあるが、スウェーデンのように複数の有力銀行が共同開発とかなれば使い勝手も良くなる可能性もあるのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-12-04 09:54 | 金融 | Comments(0)

日銀レポートにみる日本でのキャッシュレス化の現状

 あらためて日本でのキャッシュレス化の現状についての論点整理を試みたい。今回は「BIS決済統計からみた日本のリテール・大口資金決済システムの特徴」という今年2月に日銀が出したレポートを参考にして見ていきたい。

 日本における現金流通残高の対名目GDP比率は突出して高く、キャッシュレス化が急速に進行しているスウェーデンの約11倍にも達する。日本では「国内の治安が相対的に良く、盗難等により現金を失うリスクが他国対比では低いこと、偽造された銀行券が相対的に少なく、銀行券に対する国民の信認が高いこと、低金利環境により現金保有の機会費用が小さいこと」等から法定通貨である円という現金の利用が多くなっているとしている(上記レポートより)。

 現金の支払手段としての側面からみてみると、法定通貨としての強制通用力や一般受容性といった性質に加え、支払完了性を有すること、価値以外の情報が切り離されているという意味で「匿名性」を有することといったメリットが挙げられている(上記レポートより)。

 電子通貨ではこの「匿名性」が失われる可能性がある。また支払可能な金額が額面金額に限定されていることも、むしろメリットと捉える向きもあると指摘されている。

 日本ではカード決済のウエイトが相対的に小さく、支払手段として現金が幅広く使われているが、各種カードの一人当たり合計保有枚数をみると、日本では一人当たり平均で7.7枚とかなり多い。実はデビットカードの保有枚数も日本は多いものの、それはデビットカードの保有枚数には「J-Debit」が計上されているためで、使わなくてもデビットカードの機能もあるカードを複数枚所持していることが要因となっている。

 そして、日本におけるカード決済金額をみると次のような特徴がみられるとレポートでは指摘している。

・電子マネーによる決済金額は、各国平均を大きく上回っている。

・クレジットカードは、概ね各国平均並みに利用されている。

・デビットカードによる決済金額は、各国平均を大きく下回っている。

 電子マネーのカード利用に関しては、交通系カードが広く普及していることやポイントの付加などが日本で多く利用されている要因となっている。電子マネーによる決済は、小売店等における少額決済を中心にかなり急速に増加しているようである(nanacoやWAON等々)。このため日本における少額貨幣の流通残高は減少している。

 デビットカードに関しては、日本における一人当たりの保有枚数は非常に高くなっている一方で、カード決済金額の対名目GDP比率は極めて低い。日本では人々が預金引き出し等のためのキャッシュカードをデビットカードとしてはほぼ全く使わないまま複数枚持ち歩いていることになるが、なぜデビットカードが普及していないのか。日銀のレポートは次のように指摘している。

 「日本においてデビットカードの利用が広まっていない理由としては、米国では銀行業界が、大量の小切手処理に伴うコスト削減の観点から、小切手を代替するデビットカードの普及に努めたのに対し、日本ではもともと小口決済において小切手の利用が普及していなかったことや、クレジットカードの発行に伴う審査が諸外国に比べ厳しくなく、比較的多くの人々がクレジットカードを持てること、さらには、このようなクレジットカードが利用される際、一回払いが選択される場合が多く、機能的にはもともとデビットカードに類似した使われ方がなされていることなどが挙げられる。」(日銀レポートより)

 海外でのキャッシュレス化の普及状況をみると、たとえばスウェーデンでは同国の複数の有力銀行が共同で開発したスウィッシュ(Swish)と呼ばれるモバイル決済が広く使われている。中国でのモバイル決済は「支付宝(アリペイ)」と「ウィーチャットペイ」の2強に延べ12億人が登録している。このように使い勝手の良い限られたモバイル決済が大きく普及している。これに対して日本では日銀が発行した日銀券という使い勝手の良い決済が多く利用されているものの、電子決済に関しては事業会社ごとに異なるものとなっており、単一性が図られていない。これは利用者にとっても不便であり、それぞれの端末の設備投資が必要となる小売業などにとっても不便と言えよう。

 日本では脱税やマネーロンダリング防止目的での高額紙幣の廃止の必要性は感じられないが、モバイル決済については今後、さらなる普及が見込まれる。しかし、その障害となっているのが、単一性が図られていない面ではなかろうか。たとえばではあるが、スウェーデンのように日本の大手銀行がスウィッシュ(Swish)のような統一したモバイル決済を行うようになれば、電子決済の普及がさらに高まる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-12-01 09:29 | 金融 | Comments(0)

株高なのに円高の理由

 11月22日の東京株式市場は前日の米国株式市場で久しぶりに主要3指数が史上最高値を更新したことなどから、買いが先行し日経平均は一時22600円台後半まで上昇した。ここにきて、利益確定売りなどに押されていた東京株式市場であったが、米株の回復なども手伝い日経平均は再び23000円も視野に入ってきそうである。

 これに対して外為市場ではドル円の上値が重くなっている。上値が重いというより、ドル円はダウントレンド入りしているようにも思われる。ドル円は11月6日に114円70銭台まで上昇していたが、そこから下落基調となり、11月17日には一時111円台を付けていた。22日のドル円も戻りが鈍く、112円台前半での推移となっていた。

 日経平均とドル円が常にリンクしていねわけではないが、リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される世界的な金融経済危機が生じた際には、リスク回避の動きから日経平均は下落し、ドル円も下落(円高)となっていた。ところがこの危機の後退時に登場したアベノミクスをきっかけに、リスク回避の反動が一気に生じ、今度は日経平均は急反発し、ドル円も上昇(円安)となった。

 その後も比較的、日経平均とドル円はリスクオンやリスクオフに絡んだ材料に同様の反応を示していた。しかし、ここにきてあらためて日経平均とドル円の動きに連動性がみられなくなっている。

 このひとつの要因として米長期金利の動きが影響しているように思われる。米国の10年債利回りは10月26日に2.46%あたりまで上昇後、上値が重くなり、ここにきて2.3%台主体での推移となっている。12月のFOMCでの利上げの可能性は市場でも意識されており、それを織り込んでの動きでもある。

 この米長期金利がそれほど上昇していない背景としては、FRBの正常化が慎重に進められている面もあろうが、米国の物価がさほど上昇していない面が大きい。原油先物などをみるとWTIは50ドル台に乗せるなどしているものの、10月の米消費者物価のコア指数は前年比1.8%増となっている。FRBの物価目標はPCEデフレータであるが、このコア指数も2012年半ばあたりからFRBの目標である2%を下回り続けている。

 つまりは米国の物価が思うほど前年比で上昇しておらず、その結果、米長期金利の上昇が抑制され、それによってドル円の上値が抑えられ、株式市場の動きと乖離を見せているように思われるのである。


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by nihonkokusai | 2017-11-23 08:52 | 金融 | Comments(0)

災害時の金融機関などのパックアップ体制

先日、映画シンゴジラでゴジラが東京駅周辺の建物を破壊し、大手町や日本橋などに避難勧告が出された際の金融市場への影響を想定してみた。この際に日本取引所グループの取引所取引専門部会報告書なども参考にさせていただいたが、日銀をはじめ金融機関も災害時における対応は進めており、それをネットで公開されている資料からあらためて確認してみたい。

 「日本銀行の業務継続体制の整備状況とその評価」とのファイルが日銀のサイトにアップされている。ここで「日本銀行は、災害対策基本法等の関連法令等において、災害時等にも業務を継続すること等を求められている」とある。脚注には下記の説明があった。

 「日本銀行は、災害対策基本法(昭和37年施行)、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)(平成16年施行)などにおいて「指定公共機関」とされており、業務にかかる防災計画を作成し、災害発生時には同計画を実施すること等が求められている。また、首都直下地震対策大綱(平成17年)では、「首都中枢機関(経済中枢)」として位置付けられており、重要な金融・決済機能の当日中の復旧等が求められている。」

 「日本銀行では、重要な経営資源が損なわれる場合に備えて、被災想定に応じた業務継続体制を整備している。具体的には、本店(東京都中央区)、システムセンター(東京都府中市)、役職員といった経営資源が機能不全になったケースに応じて、場合分けしている。そのうえで、大阪に所在するシステム・バックアップセンター、本店の代替業務拠点、大阪支店、業務継続要員などを活用することにより、業務継続を図る体制としている。」

 日銀本店が機能不全となった際には、大阪で代替業務を行うようである。

 日本取引所グループのBCPフォーラム(取引所取引専門部会報告書)によると、こちらも業務オフィスが利用不能になった場合、関東近郊に代替オフィスを確保しているようである。

 それでは民間金融機関はどのような準備をしているのか。これについては日銀による「業務継続体制の整備状況に関するアンケート(2014年9月)調査結果」という資料があった。

 このなかでバックアップオフィスに関する部分を確認してみると「全体の8割強の先が、被災時の重要業務遂行のためのバックアップオフィスを保有しており、保有しているバックアップオフィスの数は「3か所以上」、「1か所」とする先が3割程度、「2か所」の先が2割台半ばとなった」

 「バックアップオフィスで行う主な重要業務としては、「決済関連業務」を挙げる先が最も多く、「資金繰り業務」、「為替業務」等がこれに続く」ともあった。

 これらを見る限り、ゴジラによる首都圏中央部の災害が発生しても、バックアップ体制が機能するであろうと予想される。ただし、システムのバックアップと代替オフィスが準備されていても、問題は「人」であるかと思う。こちらはさすがに完全なバックアップ体制は構築できないため、非常時の課題となる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-11-16 09:43 | 金融 | Comments(0)

シンゴジラのヤシオリ作戦による金融への影響を想定してみた

 11月12日の地上波で初放映されたシンゴジラは大きな反響を呼んだようである。平均視聴率は15.2%と高かったようだが、それよりもネットでの反響が大きかった。すでに映画館などで見た人も多かったはずだが、ツイッターで地上波実況を共有するなどして、ネットも使って視聴者が同時にテレビでのシンゴジラを楽しむという新たな楽しみ方も注目されよう。

 このシンゴジラは日本の首都を直撃した大きな災害に対してどのように政府が対処するのかという面についても、妙にリアリティーがあった。首相官邸地下にある危機管理センターや、立川にある緊急災害対策本部など、実際にある施設の使用が想定された。

 シンゴジラの中での金融に絡んだコメントは限られていた。ただし、証券取引所で株価が急落し、急激な円安が進行するとともに、日本国債が暴落しているというコメントが会話にあった。

 ゴジラの都心に向けた襲撃進路をみると、最終的な対策が取られたのが東京駅であり、その周辺も大きな被害を受けた格好となった。かろうじて東京証券取引所や日本銀行の建物への直接的な被害は免れた格好となっていた。

 しかし、あれだけの大規模作戦(ヤシオリ作戦)が敢行されたとなれば、東京証券取引所や日銀、メガバンクの本店やプライマリーディーラーの本社なども避難対象となっていると想定される。それで果たして金融そのものにどのような影響を与えるのかもシミュレートしておく必要があるのかもしれない。

 有事の際の東京証券取引所などの取引については、「取引所取引専門部会」が4月に報告書を出していた。有事の際にはバックアップ体制に速やかに切り替えることで、清算・決済機能についてはおおむね2時間以内、約定機能についてはリスクとなる事象が発現してからおおむね24時間以内に復旧・再開させることを目標とする体制を構築するよう報告がなされていた。

 参考、「BCPフォーラム取引所取引専門部会 第二次報告書」http://www.jpx.co.jp/corporate/about-jpx/crisis-management/bcp-forum/tvdivq0000007c9r-att/1-1.pdf

 日銀についても非常時の対応は検討されていると思われ、バックアップ機能は当然想定されているとみられる。少なくとも金融インフラの基幹ともいえる日銀ネットは機能することが予想される。それでも日銀本店が使えないとなれば、それなりに金融取引に支障が出る可能性はあるかもしれない。大手町にあるメガバンクの本店機能も一時的に喪失するとみられ、こちらもシステム的にはバックアップはあるとしても、人的な作業面等である程度、金融取引に支障が出る可能性はある。

 国債を主体とした債券の取引についてはどうであろうか。国債の入札については日銀ネットが機能していたとしても、プライマリーディーラーの本店なども東京駅周辺にあるため、ある程度の期間は中止せざるをえないではなかろうか。ただし、国債の休債分については、前倒し発行枠などあるため、ある程度の期間であれば休債は可能とみられる。

 国債の取引そのものについても、売買だけでなく決済にも支障が出ることが予想される。日本証券クリアリング機構も東京証券取引所内にある。このため国債の取引は一時的に中止せざるを得ないかもしれない。それでも上記の取引所取引専門部会の報告書にあるように、停止期間がそれほど長期にわたることがないとなれば、市場の混乱も一時的なものとなろう。


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by nihonkokusai | 2017-11-14 09:56 | 金融 | Comments(0)

ビットコインと円との大きな違い

 円は日本の法定通貨である。国は法定通貨を定めることで、その通貨を「決済手段として使う権利」が定められる。通常、国はひとつの法定通貨を有している。法定通貨が持つ、この「決済手段として使う権利」は「強制通用力」と呼ばれる。日銀券を用いて支払いを行った場合には、相手がその受取りを拒絶することができないという「法貨としての強制通用力」を持っている。

 現在、日本で使うことのできるお札は22種類ある。この「使うことができる」ということを「強制通用力がある」と言い、日銀券は日銀法で法貨として無制限に通用すると定められている。ただし、補助貨幣などの貨幣には一定の制限があり、硬貨の場合は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条」により、同じ硬貨は20枚まで強制通用力を有していると定められている。

 強制通用力を認められた貨幣による決済は、額面で表示された価値の限度で最終的な決済と認められ、受け取る相手側はこれを拒否できない。つまり、日本国内で円を使う場合に、日銀券は制限なく使用できる。反対に強制通用力の無いものでは、決済を拒否できることになる。

 日本における通貨の「円」とビットコインなどの仮想通貨などとの大きな違いは、この通貨の強制通用力の有無ということになろう。さらに法定通貨と強制通用力で守られた「通貨」は交換力が保証される。つまり流動性が保証される。これに対して仮想通貨はこういった交換力の保証がない。

 法律で守られていないビットコインと法定通貨である円が、もし同じような利用価値を有することになるとなれば、日本の国民が法律を遵守することがなくなり、法律というかそれを制定する国への信用度が極度に低下する場合となろう。

 いまの日本では日銀が国債を異常な規模で購入していようが、いまのところ国や国債、そして円に対する信認は非常に強い。日本国債の利回りが低位で推移し続けているのも国への信認が背後にあり、それは国の法律に守られた円に対する信認が強いことも示している。

 また、日本国内での商取引が極めて閉鎖的であることで、円の使い勝手が良いことなどがあり、国際的に流動性の高いドルなど他の通貨がそれほど流通していない要因となっている。日本の物価が安定していることで、円の価格変動リスクが極めて少ないことも大きく影響していよう。

 これに対してビットコインなどは極めて価格変動リスクが大きいこともあり、投機的な利用はさておき、通貨として利用が日本国内で拡がることは現状は考えづらいのである。


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by nihonkokusai | 2017-10-22 10:55 | 金融 | Comments(0)

「『円』対『仮想通貨』」

 ビットコインの価格が乱高下するなどしていることで、再びビットコインなどの仮想通貨がニュースなどでも取りあげられている。しかし、特に日本ではこの仮想通貨が法定通貨である円に取って代わるような事態となることは考えづらい。

 日本国内での「円」の利用については、まったく支障がない。それどころか日本人は特に現金主義であり、世界的に電子マネーや仮想通貨といった新たな決済手段が広がりつつあるなかでも、日本は引き続き他国と比べて現金を好む傾向が強いとされている。

 日銀が今年2月に発表したレポートによると、日本の現金流通高の名目国内総生産(GDP)比は2015年末時点で19.4%となり、日本の現金流通高のGDP比はユーロ圏の10.6%、米国の7.9%、英国の3.7%など他の主要国と比べて際立って大きい。

 この要因として日銀が指摘しているもののひとつは「タンス預金」として使わないまま滞留している現金が多いこと。日本は治安が相対的に良く、現金を保管しても盗難のリスクが低いこと、低金利が長く続いていることで、預金していても金利収入がほとんど得られないことなどとなっている(2月21日日経新聞記事より引用)。

 もちろん現金に慣れ親しんでしまっていることで、便利とはわかっていても電子マネーよりもつい現金を使ってしまう面もある。コンビニでの利用もいまだ現金の割合も多いようである。

 これは日本の円の決済のしやすさや、その価値が安定していることも影響している。電子マネーは便利ではあるが、ひとつの電子マネーが、すべての店で決済ができるわけではない。

 またビットコインなどを使った際のように、今日買ったコーヒーの値段が明日、大きく変動するようなこともない。

 同じ円で使える電子マネーの普及もなかなか進まないなか、日々値動きがあり、さらにその決算についても一定の手続きが必要な「仮想通貨」が日本国内で通貨として普及することは、円の信認や価値がこれまで通り維持されるという前提では考えづらい。  

 仮想通貨は通貨という名称はついていても、国内では投機的な対象物となっており、ブロックチェーンという仕組みは応用が可能で普及する可能性はあるものの、仮想通貨自体が「通貨」として普及する可能性は極めて低いと言えよう。


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by nihonkokusai | 2017-10-18 09:49 | 金融 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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