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カテゴリ:財政( 40 )

米国の財政の崖とは何か

 7月9日の日銀、白川総裁は会見の中で、米国経済に関して次のような発言をしている。

 「いわゆるfiscal cliff(財政の崖)の問題を反映し、財政政策の先行き不透明感が強い状態が続いており、その回復力に引き続き注意が必要です。」

 今年に入り、バーナンキFRB議長は「fiscal cliff」という言葉を使うようになり、メディア等でも注目されるようになった。また、格付け会社も注目しているようで、6月にS&Pは財政の崖の回避に期待するとのコメントを出している。

 「fiscal cliff(財政の崖)」とは、かなり昔から使われていた用語であるようで、特定の時期に何らかの事情で緊縮財政となり、これによる雇用を中心とした景気への悪化が予想される状況を示す。

 今回バーナンキ議長が示した「財政の崖」とは、今年末に所得税などに対する大型減税策、いわゆるブッシュ減税が期限切れとなることに加え、2011年にアメリカの債務上限が問題視された際に2013年1月からの強制的な予算削減が決まっており、この減税の期限切れと歳出の自動削減による急激な財政引き締め状態に陥ることを示す。この影響は米GDPの約4%にも達するとみられており、米議会がこの急激な財政引き締めを緩和しなければ、米景気そのものが崖っぷち状態に陥る懸念が出ているのである。

 米国にとっても今後の緊縮財政策は避けられないものの、あまりに急激な削減は景気に悪影響を及ぼしかねない。米議会では共和党も民主党も「財政の崖」はなるべくなだらかものにしようとの見方では一致しているようであるが、両党の考え方そのものには大きな隔たりが存在しており、ねじれ議会の問題が崖として立ちはだかる可能性がある。

 11月には米大統領選挙と議会選挙が控えており、その結果次第では、財政の崖を回避するような動きが強まるのではないかとの期待もある。しかし、それでも残された時間は限られている。さらに米国の債務は、大統領選が実施される11月から年末にかけて再び法定上限に達する見通しともなっている。「財政の崖」の緩和を巡る駆け引きに、債務上限引き上げ問題が絡み、米政府の資金繰りが問題視される懸念も出ている。

 米国の財政の崖については、事前にこれだけ警戒され、バーナンキ議長も警告を発している以上は、大きなショックは回避されるとみられる。市場でも警戒はしているが、それを材料に米株などを売るような環境でもない。崖が発生する可能性は現状、それほど高くはないであろうとの希望的観測も働いているのかもしれない。ただし、その動向そのものが一時的な材料視されることもある。年末までのスケジュールを見ると、途中、ハラハラさせられる場面もあるかもしれないことで、今後もfiscal cliff(財政の崖)の問題は注意して見ておく必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2012-08-14 09:37 | 財政 | Comments(0)

財政再建のための消費増税ではないのか

 言うまでもなく、社会保障と税の一体改革なるものは、日本の財政悪化に歯止めをかけることが目的のはずである。

 2000年代から社会保障費が急激に増加してきたが、これは高齢化に伴う自然増や基礎年金の国庫負担割合引き上げ、子ども手当の創設などが要因となっている。社会保障関係費はほぼ一貫して増え続けている。それに対して、税収など歳入面では、景気低迷による影響に加え度重なる減税も影響し、減少している。このように日本の政府債務残高の増加要因は、社会保障費の増加がその主因であり、そこに税収の落ち込みも影響している。

 日本の財政健全化を進めるには歳出と歳入両面での改革が必要であり、だからこそ「社会保障と税の一体改革」なのであろう。今後も伸びが予想される社会保障費に対して、税収がこのまま落ち込みを続ければ国債への依存度はますます大きくなりかねない。

 足下の日本の国債の需給からみて、そう簡単に国債が暴落するようなことは考えづらい。しかし、このような好環境が永久に続くことのほうが考えづらいことも確かであり、国債市場が好環境のうちに手を打たねば、もし日本に対し欧州のような信用不安が生じて長期金利が上昇してからでは、手の打ちようがない。

 財務省の「平成24年度予算の後年度歳出・歳入の影響試算」によると、消費税の引き上げにより、プライマリーバランスが改善されることは確かであるが、今後の国債発行額を見る限り、消費税の引き上げを加味してもなお毎年度45兆円規模の新規国債が発行される計算となっている。

 名目経済成長率3%程度を前提とし消費税の引き上げを加味した試算でも、差額部分は2012年度44.2兆円、2013年度45.4兆円、2014年度44.6兆円、2015年度44.3兆円と44兆円以上の規模が続く予測である。

 この試算は長期金利の2.0%が前提基準となっている。この前提からの変化幅がプラス1%の場合、国債費の増加は2013年度が1.0兆円、2014年度2.4兆円、2015年度4.1兆円。そしてプラス2%の場合、国債費の増加は2013年度が2.0兆円、2014年度4.9兆円、2015年度8.3兆円となる。反対にマイナス1%の場合には、2013年度が-1.0兆円、2014年度-2.4兆円、2015年度-4.1兆円となる。

 利払い費に絡んでは、「金利ボーナス」と呼ばれる利払い費用の抑制効果がなくなり、その分増加しやすい状況となっていることにも注意が必要である。金利ボーナスとは、過去の高い金利の国債が償還期を迎えると、その分は低い金利で借り換えることになり、その分の利払い負担が軽減される効果のことである。しかし、1990年代後半以降は長期金利の低位安定が長く続き、その抑制効果は次第になくなりつつあり、今後は国債残高の増加がもろに利払い費に影響する状況となっている。

 このように消費税の引き上げを加味しても国債発行額の抑制は限定的であり、長期金利がもし上昇してしまうと利払い費もそれに応じて増加してしまえば、増税分はあっさりと打ち消され、財政はさらに悪化しかねない。だからこそ、日本の長期金利の跳ね上がりを抑制するためにも、財政再建に向けての姿勢を示す必要がある。

 ところが、消費増税を行ったとして、その分を景気刺激策に使ってしまえば、それは財政再建とは矛盾する。それにより将来の税収が増加するとの保証があれば良いが、過去の財政出動による税収増への効果はどれほど認められたのか。今回の消費増税に景気対策もセットとなっているのであれば、財政再建への意味合いはその分、薄れることにもなる。

 国債市場は足下の好需給に支えられ、簡単には売り圧力が高まるようなことは考えづらい。しかし、市場に将来の財政再建に対する懸念が次第に蔓延してくるような事態となれば、現在の国債相場がかなりの高値圏にあることも手伝い、相場が神経質な動きを見せる可能性も否定できない。


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by nihonkokusai | 2012-06-29 09:44 | 財政 | Comments(1)

ユーロ諸国の財政事情

 欧州連合(EU)の統計局(Statistical Office of the European Communities)は4月23日に、加盟27か国の2011年中の財政状況を発表した。ちなみにEU統計局が発表する統計資料のことをまとめてEUROSTAT(ユーロスタット)と呼んでいるが、EU統計局そのものをユーロスタットとも呼んでいるようである。

 ユーロスタットのサイトのアドレスは、下記となる。
http://epp.eurostat.ec.europa.eu/portal/page/portal/eurostat/home/

 今回発表された「Provision of deficit and debt data for 2011 - first notification」は下記のファイルとなる。
http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_PUBLIC/2-23042012-AP/EN/2-23042012-AP-EN.PDF

 まずEuro area (EA17)、つまりユーロ圏17か国での公的債務残高はGDP比で87.2%となり、2010年比で1.9ポイント上昇している。 ユーロ圏の債務残高のGDP比は1999年のユーロ創設以来の最高水準を更新した(日経新聞)。ユーロ全体の債務残高は8兆2153億ユーロと、日本円で約870兆円に膨らんだ。また、ユーロ圏の2011年の財政赤字のGDP比は4.1%となっている。EUで定め競れている財政規律の基準は3%である。

 それではユーロ圏17か国に関して、同様に2011年の公的債務残高のGDP比、債務残高、財政赤字を確認してみたい(以下、公的債務残高のGDP比の大きい順)

ギリシャ(Greece)、公的債務残高のGDP比165.3%、債務残高3556億ユーロ、財政赤字のGDP比9.1%

イタリア、公的債務残高のGDP比120.1%、債務残高1兆8972億ユーロ、財政赤字のGDP比3.9%

アイルランド(Ireland)、公的債務残高のGDP比108.2%、債務残高1693億ユーロ、財政赤字のGDP比13.1%

ポルトガル(Portugal)、公的債務残高のGDP比107.8%、債務残高1843億ユーロ、財政赤字のGDP比4.2%

ベルギー(Belgium )、公的債務残高のGDP比98.0%、債務残高3617億ユーロ、財政赤字のGDP比3.7%

フランス(France)、公的債務残高のGDP比85.8%、債務残高1兆7173億ユーロ、財政赤字のGDP比5.2%

「参考、イギリス(United Kingdom)、公的債務残高のGDP比85.7%、債務残高1兆2926億ユーロ、財政赤字のGDP比8.3%」

ドイツ(Germany)、公的債務残高のGDP比81.2%、債務残高2兆885億ユーロ、財政赤字のGDP比1.0%

オーストリア(Austria )、公的債務残高のGDP比72.2%、債務残高2174億ユーロ、財政赤字のGDP比2.6%

マルタ(Malta )、公的債務残高のGDP比72.0%、債務残高46億ユーロ、財政赤字のGDP比2.7%

キプロス(Cyprus)、公的債務残高のGDP比71.6%、債務残高127億ユーロ、財政赤字のGDP比6.3%

スペイン(Spain )、公的債務残高のGDP比68.5%、債務残高7350億ユーロ、財政赤字のGDP比8.5%

オランダ(Netherlands)、公的債務残高のGDP比65.2%、債務残高3925億ユーロ、財政赤字のGDP比4.7%

フィンランド(Finland )、公的債務残高のGDP比48.6%、債務残高930億ユーロ、財政赤字のGDP比0.5%

スロベニア(Slovenia)、公的債務残高のGDP比47.6%、債務残高170億ユーロ、財政赤字のGDP比6.4%

スロバキア(Slovakia)、公的債務残高のGDP比43.3%、債務残高299億ユーロ、財政赤字のGDP比4.8%

ルクセンブルグ(Luxembourg)、公的債務残高のGDP比18.2%、債務残高78億ユーロ、財政赤字のGDP比0.6%

エストニア(Estonia)、公的債務残高のGDP比6.0%、債務残高10億ユーロ、財政黒字のGDP比1.0%

 ユーロ圏が定める公的債務残高上限の60%以下となったのは、フィンランド、スロベニア、スロバキア、ルクセンブルク、エストニアの5か国にとどまった。また、財政赤字のGDP比3%以下の国は、エストニア、ルクセンブルグ、フィンランド、マルタ、オーストリア、ドイツとなった。

 この数字を見る限り、先週まで懸念を強めたスペインや、総選挙が実施されることになったオランダなどはさほど懸念する必要はないようにみえる。ただし、スペインは国内銀行の不良債権問題が注視され、オランダについては政局の先行き不透明感が残り、これについてはフランスも同様となる、それでもユーロ圏諸国の公的債務残高のGDP比がそれほど大きく見えないのは、あまりに大きな日本の数値に見慣れてしまったためであろうか。


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by nihonkokusai | 2012-04-25 07:59 | 財政 | Comments(0)

債券市場の今後の注目点は来年度の国債発行計画と消費税の行方か

 来年度予算案は今週、安住財務大臣と各大臣による閣僚折衝が行われ、24日の閣議決定を目指して編成作業は大詰めを迎えている。24日に閣議決定となれば、同日に財務省は2012年度の国債発行計画を発表するとみられる。ちなみに昨年も12月24日に国債発行計画が発表されている。

 国債発行計画の発表を前に、19日に財務省で国債市場特別参加者会合と国債投資家懇談会がそれぞれ開催された。テーマは、「最近の国債市場の状況と今後の見通し等について」、「最近の国債市場の状況と今後の運用見通し等について」となっているが、来年度の国債発行計画に関して話し合われたものとみられる。この会合後の記者説明で来年度の国債発行総額は過去最大の175兆円前後となることが明らかとなった

 不確定要因としては、基礎年金の国庫負担割合を二分の一で維持するための財源2.6兆円をどうするのかだが、19日の日経新聞ではそれを年金交付国債(仮称)で賄うと伝えている。交付国債となれば、政府は支払いを要求された時点ではじめて予算措置を行うことになるが、当面の財源として年金特別会計の積立金の一部を取り崩す必要もあり、厚労省は難色を示しているとも伝えられた。

 いずれにしてもある程度の国債増発は避けられないとみられるが、すでに第三次補正予算にともない2年債、5年債が増発されており、その発行規模が来年度も継続されるとともに、超長期債が増発されるのではないかと予想される。このあたり、19日の国債市場特別参加者会合と国債投資家懇談会での内容も確認したい。ただし、予想外の大幅な増発などは考えづらく、債券相場そのものには、来年度の国債発行計画が大きな影響を与えることは考えづらい。

 来年度予算に関しては基礎年金の国庫負担割合を二分の一で維持するための財源2.6兆円は、交付国債で賄うとなれば、この年金負担分が外れるために、政策経費は中期財政計画の約71兆円から約68.4兆円に抑制される。このため国債費を加えた一般会計の総額は90兆円余りとする方向で調整を進めているようである。そして、新規国債発行額は44兆円以下を堅持するとしており、形式上は中期財政計画で定めた数値を遵守する。それよりも問題は消費税の行方となる。

 消費税について、年内を目処にまとめるとしている素案では、いつ何%に引き上げるのかというスケジュールや、所得の低い世帯への対策などが大きな焦点となっている。これに対し、「民主党内では、消費税率の引き上げに反対する署名活動が始まっているほか、山田前農林水産大臣や原口元総務大臣が引き上げに反対する新たな勉強会を20日にも立ち上げることにしていて、素案の取りまとめに向け、調整は難航することが予想される」とNHKが報じているように、消費税の行方はまだ不透明と言える。ただし、消費税率の引き上げについて読売は、2013年10月に8%、2015年4月に10%とする案を軸に検討に入ったと伝えている。

 このあたりの動向を見ながら、日本の格付け会社R&Iが日本国債の格付けを引き下げる可能性があり、今週は大きな山場となろう。仮に来年度予算について中期財政計画の数値内でまとめ上げたとしても、格下げに踏み切る可能性はありうる。消費税の行方などもひとつの要因となろう。格下げは1月かとの見方も出ているようだが、週内の可能性もあるため注意が必要か。ただし、仮に格下げがあったとしても国債市場への影響は限定的とみられる。しかし、海外投資家はさておき国債投資家にとり、国内格付け会社による日本国債格下げは多少なり不安心理を招くことも予想される。

 そして、20日から21日にかけて今年最後の日銀金融政策決定会合が開催される。急激な円高や株安等でもない限り、金融政策は現状維持となることが予想される。それよりも16日に公式ツイッターを開始した日銀が、「決定会合終了なう」とツイートするのかどうかを個人的に注目している。現実には公表文がサイトにアップされたことをツイートするだけとみられるが。


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by nihonkokusai | 2011-12-20 08:50 | 財政 | Comments(0)

若さとスピードが売りの英国の財政再建

 欧州連合(EU)首脳会議はユーロ圏の財政規律強化で基本合意した。ただし、EUに加盟している27か国による基本条約改正では合意できず、条約改正を通じた財政規律の強化については英国が反対した。英国のキャメロン首相は、首脳会議に提案された内容は英国の国益に沿わなかったと発言しており、国際金融街ロンドン・シティを抱えることで、金融取引税の導入に対する強い反対が背景にあったと藻指摘されている。ただし、これで英国が財政再建に後ろ向きと捉えるべきではない。むしろ、英国は積極的に財政再建に取り組んでいる。

 1997年5月に英国ではブレア政権が誕生し、ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切った。

 ブレア政権によるイングランド銀行の改革により、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会へ政策運営権限が委譲され、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲され、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し、新設された金融サービス機構(FSA)へ移管し、そして国債管理業務は財務省へ移管されたのである。

 金融政策に関しては、インフレーション目標の土台が築かれた。インフレーション目標は政府が設定し、イングランド銀行はこれを達成するために必要な政策手段を決定するという役割となった。また、量的緩和策の導入やその拡大にあたっても財務相の了承が必要となっている。

 しかし、この改革の際には「財政安定化規律」がセットとして設けられていることに注意したい。1980年代後半から90年代前半にかけての英国では財政赤字の拡大、公的債務の累増が生じた。こうした状況に陥った最大の要因は、明確で透明性の高い財政政策の目標がなかったことにあった。このためブレア政権下において、1998年に財政安定化規律(The Code for Fiscal Stability)が議会の承認を経て制定されたのである。

 また、1998年4月に英国の国債管理政策に関する権限と責任は、イングランド銀行から「債務管理庁」に移されている。国債の年間発行額、固定利付債と物価連動債の発行額、入札回数、入札予定日等は、年度開始直前(3月)に財務省から債務管理庁(DMO)に通達されるが、債務管理庁はこの通達に基づき、債務管理庁は各回の発行毎に具体的な年限、利率、発行額を決定している。

 参考までに、2009年3月末に英国の国債入札による発行予定額に応札が届かない未達が7年ぶりに発生した際、DMOは金融機関によるシンジケート団の提示した買い入れ額に応じて発行する仕組みも再導入した(朝日新聞の特集記事より引用)。

キャメロン政権による財政再建

 2010年5月の総選挙により政権についたキャメロン首相は財政再建を最優先課題とした。その5年間という任期在任中に財政再建を果たすために、6月に財政再建に向けた緊急予算案を発表した。オズボーン英財務相が発表した緊急予算案によると、第二次大戦後で最悪規模に膨らんだ公的債務を減らすため、2011年1月4日から付加価値税の基礎税率を現在の17.5%から20%に引き上げた。

 オズボーン財務相は2010年度の公的債務が1490億ポンドに上るとの見通しを示した。このため、年間20億ポンド規模の銀行新税を2011年から導入するとともに子供手当てや福祉給付カットなどの歳出削減を組み合わせ、財政赤字のGDP比を2015年度までに1%まで引き下げるとした。

 財政再建には大きな痛みを伴う。これは財政再建に向けた動きに対して、デモが発生したギリシャなどの例を見ても明らかである。しかし、ギリシャなどは外部からの財政再建の圧力に屈したものであり、内部からその声が強まったわけではない。

 これに対して英国では、選挙で財政再建を最優先課題とした保守党を国民は支持したことになり、内なる声に耳を傾けた結果の財政再建であり、国民は自らの責任において財政再建を推し進めるべきとしたものである。ちなみに、1990年代でのカナダのクレティエン政権による財政再建も同様に国民の声に答えたものである。

 英国の政治を見ると、スピード感が日本などとまったく異なる。キャメロン政権の財政再建もそうであるが、1997年5月に誕生したブレア政権もやはりそうであった。当時のブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し独立性を高めるという大胆な改革を進めている。

 キャメロン首相もブレア元首相も非常に若いときに首相に就任しており、若さ故のスピード感もあった。また、高い支持率がある政権交代時にすぐに行動に移すことにより、時間をかけることによって生じかねない反対意見を抑えこんで、とにかく既成事実化する必要もあったと思われる。


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by nihonkokusai | 2011-12-12 09:55 | 財政 | Comments(0)

危機的様相強める欧州事情

 ユーロ圏の債券市場では、イタリアの10年債利回りが再び警戒ゾーンの7%台に乗せたばかりか、フランスとドイツの10年債の利回り格差が過去最高水準に拡大した。さらにスペインの10年債利回りも危険水域の7%に接近した。ユーロ圏の信用不安はスペインそしてフランスなどにも及んでいる。

 イタリアではモンティ新内閣が発足した。モンティ新首相は財務相と経済相を兼任し、16人の新閣僚は学者や官僚、大手金融機関のトップなどで政治家は含まれない。ヨーロッパ委員会の委員を10年間務めたモンティ新首相の手腕に期待したいところではあるが、政権運営に与野党の支持を得られるかどうかは不透明である。実際に与野党議員を内閣に含めることを検討したものの、各党との協議で合意できなかったと伝えられている。このあたりへの不安もあり、イタリアの長期金利が再び上昇してきたものと思われる。

 ギリシャでは、パパデモス首相が議会で信任された。ユーロ圏でのソブリン危機の発端がギリシャであるだけに、ギリシャの信用回復が最優先課題となるが、第2次ギリシャ支援受け入れを確実にするために国会の承認を取り付けることがまず重要な仕事となる。そのためには国民に対して痛みを伴う緊縮策への理解を求めなければならないが、これが大きな課題となりそうである。

 このようにギリシャ、イタリアともに首相が代わり、新たな政権で財政再建による信用回復に取り組むことが必要ながら、両国ともに政党との距離があることや、国民の理解をどれだけ得られるのかが不透明であり、懸念は残る。

 日銀の白川総裁は会見で、最大のリスク要因は欧州ソブリン問題の今後の展開だと発言し、米国のオバマ大統領も、欧州がソブリン債問題の解決に向けた具体的策を打ち出さなければ市場の混乱は継続と発言、さらに日本を訪問中のカナダのフレアティ財務相も、欧州のソブリン債務問題に対し具体的な行動が必要と発言するなど、欧州のソブリン問題は日米の経済にも大きな影響を与えかねず、あらためて国債問題ならぬ国際問題となってきている。

 ドイツのメルケル独首相は、ECBがユーロ危機を解決することは不可能とした上で、市場の信認を得るには、合意した改革の実施や条約改正に伴うユーロの強化刷新以外に道はないとの発言があった。また、メルケル首相は欧州のみならず、世界各国が自国財政を健全化することが必要とも述べたそうである。

 ECBによるユーロ圏の国債買入についてはECBのゴンサレス・パラモ専務理事やドイツ連銀のバイトマン総裁の発言にもあったように、ECBはあくまでユーロ圏の銀行に対する最後の貸し手であって、ユーロ圏の政府に対する最後の貸し手ではない。

 ポルトガルのカバコシルバ大統領は、ECBが最後の貸し手になることを可能にしなければならないとして、ECBが無制限に国債を買入すべきと発言があった。しかし、ECBはカバコシルバ大統領の言うような防火壁とはならず、あくまで消化器程度の役割にとどめておかないと、ユーロ圏の信用問題がさらに深刻化する懸念すらありうる。

 欧州のソブリン問題の根本的な要因は信用にある。ギリシャがそれを裏切り、信用不安が債務残高の大きな国に次々に飛び火し、イタリアさらにスペインやフランスにも及ぼうとしている。ソブリンの信用の根幹を成しているのは国民の意識である。財政の持続可能性に対して国民の理解が得られれば、信用そのものは回復しよう。そのためにはある程度の国民の痛みは避けられない。しかし、財政再建による信用の回復により、経済に良い影響が出てくれば、財政への懸念は後退しよう。このあたりの理解が求められるのか、特にギリシャやイタリアの動向がやはり大きな焦点となりそうである。


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米財政赤字削減案めぐる攻防再び

 米国では11月23日に財政赤字削減策の合意期限を迎える。これは超党派による財政赤字削減のための合同特別委員会(Joint Select Committee on Deficit Reduction)が、今後10年間で最低で1兆5千億ドルの赤字削減の勧告案とその法案を11月23日までに作成しなければならないのである。この特別委員会は民主党・共和党6名ずつの12名の両院議員で構成されている。

 この委員会の削減案に対して、連邦議会は2011年12月23日までに採決される。勧告案に対しての修正は認められない。勧告案を実現するための財政赤字削減法は、2012年1月15日までに成立させなくてはならない。もし、成立しない場合や財政赤字の削減額が1兆2千億ドルを下回った場合は、トリガー条項が発動され、予算の一律削減が実施されることになっている。

 しかし、与党民主党は増税と歳出削減を主張しているのに対し、野党共和党は社会保障改革など主に歳出削減を訴えており増税に消極的である。このため、民主・共和党間の溝が埋まっていない。厳しい増税案を盛り込むかどうかの決定については、来年に先送りする方針として、何らかのかたちで合意に持ち込むとの観測も出ているが、期限まで1週間となってもいまだ先行きは不透明な状況にある。

 8月2日が期限となる債務上限引き上げと財政赤字削減に関する協議でオバマ米大統領と議会指導部は合意に至らず、米国の大手民間の格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、8月6日に米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げた。S&P関係者は、米国の格付けが今後6か月から2年の間にさらに引き下げられる可能性は3分の1とテレビ番組で述べていた。

 今回もこのような格下げの懸念も出ているが、8月のS&Pによる米国債の格下げの影響が限定的であったこともあり、たとえ2度目の格下げがあったとしてもやはり影響は限定的であると予想される。つまり日本国債の格下げの時と同様に、国債消化に支障を来すような状況にない上、ユーロ圏諸国のような信用不安が生じているわけでもなく、格下げにより、慌てて米国債を売る投資家は限定的であるためである。

 ただし、あまりこのように交渉がもつれていると現在イタリアなど欧州で起きているような信用不安が米国でも生じかねない。いまはなるべく市場には隙を与えないほうが懸命であると思われる。これは他人事ではなく日本でも同様であろう。


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by nihonkokusai | 2011-11-17 08:19 | 財政 | Comments(0)

欧州の信用危機に学べ

 2010年1月に欧州委員会がギリシャの財政に関して統計上の不備を指摘し、ギリシャの財政状況の悪化が表面化した。ギリシャは2009年10月に政権交代が行われたが、パパンドレウ新政権に変わったことにより前政権が行ってきた財政赤字の隠蔽が明らかになったのである。これを受けて格付会社は、相次いでギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債は暴落した。

 ギリシャ危機が生じたのは、その債務そのものの大きさよりも、政府がそれを隠蔽していたことで政府への信認が失墜したことが大きかった。しかし、市場はギリシャの財政問題をクローズアップしたことにより、同様に不動産バブルの後遺症により債務状態が悪化したアイルランド、さらにポルトガルにも飛び火したのである。

 金融危機後の銀行の救済で深刻な財政危機に陥ったアイルランドは、2010年11月末に欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)との間で総額850億ユーロ規模の緊急支援を受けることで合意した。欧州最大の独立系中央清算機関であるLCHクリアネットが、アイルランド国債に対する証拠金を11月10日に引き上げ、それがひとつのきっかけとなり、アイルランド国債の利回りが上昇した結果、支援を仰ぐこととなった。

 2011年4月にポルトガルのソクラテス首相はテレビ演説において、ポルトガル政府が欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会に金融支援を要請することを決めたと述べた。支援要請はこれにより、ギリシャとアイルランドに次いで3か国目となった。この際にも、 LCHクリアネットによる証拠金の引き上げがあった。

 そして、今度は巨額の債務残高抱えるイタリアにも信用不安が及んだ。政権基盤が脆弱であった分、財政再建が遅れがちとなっていたことが懸念材料となった。2011年11月8日のイタリア下院での2010年度会計報告に関する法案の採決は可決されたものの、ベルルスコーニ政権が下院で絶対多数を維持するための票数を割り込んだことで、首相は財政緊縮法案が来週議会で可決され次第、辞任する意向を表明した。

 ベルルスコーニ首相の辞任表明でイタリアに対する信用不安はいった後退するかに思われたが、11月9日に欧州の証券決済機関のLCHクリアネットが、イタリア国債の取引に必要な証拠金を引き上げたことをきっかけに、イタリアの10年債利回りが7%台に上昇し、アイルランドやポルトガルが金融支援を余儀なくされた水準であるところの長期金利7%という分岐点を突破した。

 昨年のギリシャを皮切りに、債務問題がアイルランドやポルトガルにも飛び火し、ついにユーロ圏でドイツ、フランスに次ぐユーロ圏で第3位の経済規模となっているイタリアにも飛び火した。イタリアの経済規模はギリシャなどに比べて格段に大きく、仮にイタリアの債務問題が深刻化すれば、ギリシャの債務問題の比ではない。

 しかし、イタリアは債務残高こそ巨額なものとなっているが、ユーロ圏内ではドイツとともにプライマリー・バランスは黒字となっており、2011年の財政赤字はGDP比で4.1%と、これはフランスの5.8%よりも低い数値である。イタリアの足下の財政についてはむしろ健全とも言える。決して財政状態がそれほど悪くない国でも、このように政治の不安定さや財政再建の遅れ、そして巨額の債務残高を背景に信用不安は起こりうることをイタリアが示している。

 つまり、決して盤石とはいえない日本の野田政権は、財政再建を目指してはいるが消費税増税にしても民主党内での反発も強い。TPP問題も今後の動向によっては党内の分裂を招きかねない。さらに日本の債務残高はイタリアの比ではない。日本の2011年の財政赤字はGDP比で10.5%もあり、債務残高のGDP比ではイタリアの120.6%に対して日本は233.2%と非常に大きく(IMF調べ)、もしも何かのきっかけで日本に対する信用不安が起きれば、現在イタリアで起きている同様のことが、日本でも起きうる。

 イタリアの長期金利と日本の長期金利を比べると1995年あたりからの動きは非常に似通っていたことがわかる。1998年にイタリアの長期金利は6%を割り込んでから、この6%が天井となっており、日本は1999年2月に一時長期金利が2%を超えたが、その後はこの2%が天井となり長期金利は低位安定していた。

 イタリアがその6%を超えてきてから利回り上昇が加速したように、日本でも信用不安が生じれば2%をあっさり超えてくることが予想される。しかも1999年あたりに比べて国債残高は大幅に増加しており、日本の長期金利の上昇により国内金融機関に大きな打撃を与える上に、利払い費用の増加により財政をさらに悪化させる。

 日本の場合には国内資金で日本国債が賄われなくなったときに、このような長期金利の上昇を引き起こす可能性がある。これが潜在的な不安要素になっており、何かのきっかけ次第では日本の債務問題がクローズアップされ、急激な長期金利の上昇を招き、世界経済に大きなショックを与えかねない。これを防ぐためには、財政再建を急ぐほかはない。それを欧州の信用危機は教えてくれている。


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by nihonkokusai | 2011-11-16 14:19 | 財政 | Comments(0)

今年度第3次補正予算と復興債の発行

 政府は21日に、東日本大震災の復興や歴史的な円高対策を柱にした総額で12兆1025億円の今年度第3次補正予算案を閣議決定した。震災の復興対策については、被災地の自治体への支援に重点が置かれ、円高対策としての補助金や、第1次補正予算の財権となった基礎年金の国庫負担分の穴埋め(2.5兆円)や、台風12号などの被害の復旧経費なども盛り込まれた。第3次補正予算後の今年度一般会計の総額は、106兆3987億円と過去最高となる。

 今年度第3次補正予算案の財源については、通常の国債とは別枠で管理される11兆5500億円の復興債が発行される。残りは子供手当ての見直しや税外収入で捻出する。

 閣議決定された今年度3次補正予算に基づき、財務省は平成23年度国債発行計画の変更を行った。これによると新規財源債が当初の44兆2980億円から、復興債11兆5000億円が加わり、55兆8480億円に増額される。これまで新規財源債(新規国債)は、建設国債と特例国債(赤字国債)であったが、ここに復興債が加わることになる。

 そして、今年度の借換債の発行額については、当初の111兆2963億円から1兆9720億円減額され、109兆3242億円となる。これは、平成23年度の国債発行計画を公表した後の平成22年度末に、日銀再乗換による1年債の発行を2兆円減額し、市中発行による満期2年以上の国債で借り換えたため、今年度の満期到来額がその分減少するためである(PD懇議事要旨より)。

 財投債については、1次補正後の16兆円から16兆5000億円に増額される。財政投融資計画についても追加されることで、その財源のうち財投債による調達が5000億円となる。

 この結果、今年度の国債発行額は当初予算の169兆5943億円からは12兆780億円、1次補正後の171兆5943億円からは10兆780億円増額され、181兆6722億円となる。

 国債の消化方式別発行額については、1次補正後の増額分10兆780億円について、第2非価格競争入札において1兆8838億円を増額し、前倒債発行減額による調整分について6兆3942億円増額され、個人向け国債の発行計画額も1兆円増額される。

 今年度のカレンダーベースの消化額は、1次補正では増額がなかったことで当初予算比で8000億円増となり、12月発行分から3月まで2年、5年で各1000億円ずつ増額されることになった。13日のPD懇などは少なくとも1兆円以上、2兆円規模程度を見込む向きが多かったことで、これはポジティブサプライズとはなったが、市場への影響は一時的となった。

 そして、11兆5000億円の復興債の発行には、このうち1兆5000億円を個人向けとすることが明らかになった。3次補正後の今年度の個人向け国債の発行予定額は3兆5000億円となっているが、10月発行分までに約1兆5000億円販売されている。復興財源確保法の成立後は、それ以後に募集を行う個人向け国債は復興債となり、その際に安住財務大名の感謝状を出すことも発表されている。

 11兆5000億円もの復興債の発行とはなるが、市中消化額は市場予想以上に抑えられることになった。前倒債発行減額による調整分の活用などが大きいが、このバッファー部分もいったん使ってしまうと、来年度以降のバッファー分がそれだけ縮小されることになる。もし個人向け復興債が予想以上に販売好調となるなどすれば、そのバッファー分はあらためて確保できることになるが、果たして財務相感謝状付きの個人向け復興債はどれだけ売れるのであろうか。


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by nihonkokusai | 2011-10-25 09:43 | 財政 | Comments(0)

来年度予算案の概算要求は過去最大の98.4兆円に

 5日に締め切られた2012年度予算案の一般会計概算要求は、98.4兆円に上ることになった。要求総額は3年連続で過去最高を更新した。

 国の予算編成の流れとしては財務省がそれぞれの省庁に対して、来年度予算として、どのくらいのお金が必要かを聞くところから始まる。これが翌年度予算において必要な金額を要求する概算要求と呼ばれるものである。

 概算要求の前に財務省から要求の基準が設定されるが、この基準が概算要求基準(シーリング)と呼ばれるものである。シーリングとは天井、つまりこの場合には要求の限度額の事である。

 2009年9月に自民党から民主党に政権が交代し、民主党は前内閣が決定したシーリングを廃止し、あらたな上限枠は設けずに、民主党のマニフェストの内容を反映した要求を求めた。ところが菅政権になってから概算要求基準が復活している。

 2012年度予算編成においては9月20日に概算要求基準が閣議決定された。概算要求基準では、政策経費を1割カットし、削減分の1.5倍まで再生枠に要求できるようにした。歳出の大枠を2011年度当初予算並みに抑える一方、復興費は別枠扱いで、要求に上限を設けないとした。一般会計予算全体では、国債費などを除いた政策経費の上限は今年度と同じ71兆円程度に、新規国債発行額を44兆円以下に抑えるとしている。

 概算要求基準に基づいて政府各省庁が財務省に提出する次年度の予算要求を行う。これが概算要求となる。各省要求額のうち、国債費や人件費などを除いた政策的経費はいずれも前年度当初予算を1割以上、下回り、概算要求基準を満たした。しかし、上限を設けずに受け付けた震災復興対策関連の要求額が3兆5051億円となったことで、全体が押し上げられた。

 国債費や復興関連経費を除いた歳出の大枠は72兆3635億円で、今後、中期財政フレームで定めた70兆9000億円以下の水準まで削り込むことになる。

 震災復興とデフレ脱却のための成長促進のためには、ある程度の規模の歳出も必要となろうが、いくら中期財政フレームで定めた経費を絞り込んでも、新規国債の発行規模は44兆円規模が予想される。

 2011年度予算では、歳出規模は92.4兆円、国債費を除いた基礎的財政収支対象経費は70.9兆円、そして新規国債の発行額は44兆円規模となっている。ただし、震災復興のための第三次補正予算によりあらたに復興債が発行される予定でもあり、国債の発行額は実質的に44兆円を上回ることになる。

 2011年度の税収は41兆円を見込んでいる。税収そのものは前年度に比べて増加しているようだが、それでも税収が国債発行額を下回るという異常な事態が続いている。

 巨額の借金を抱えながら、収入以上の借金をしているのが、現在の日本の姿であり、いまのところは資金の貸し手には困っていないとはいえ、このような状況がこのまま継続できるとは思えない。

 今年は東日本大震災と原発事後が重なり、復興のためには国の関与が必要となる。今後5年間の復興費は19兆円規模と政府は見積もっている。ただし、これまでの日本の財政を見てみても、財政再建をすすめようとするたびに、何かしらのショックや災害等により、その動きは抑えられ、結果的に歳出規模は膨らみ、税収は落ち込むというワニの口が形成され、それが一向に改善する見込みはない。

 本来、日本の国債の利回りが財政の健全化を示すモニターとして機能するはずであるが、モニターの針は10年以上、ひとつの基準ともみられる2%というラインを超えることなく低位で安定している。このモニターの数値を見ている限り、まだ借金を続けることは可能と見られる。

 ただし、ダムに溜まる水には当然限度がある。外から見て、そのダムの具体的な大きさや水の許容度はわからず、水が一杯になったのかどうかは、それが溢れ出すか、ダムそのものが崩壊してはじめて知ることになる。長期金利という財政モニターも水が溢れ出すのを確認するまでは、動かないのかもしれない。しかし、いったん溢れ出した水が確認されると、モニターの数値を一気に引き上げることになる。

 そのような状況に陥りさせないようにするにはどうしたら良いのか。とりあえずは、来年度の歳出規模をなるべく抑えることしかできないかもしれない。しかし、もう少し先を見据えての行動も起こしておかないと、いつか水は溢れ出すことも確かであろう。


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by nihonkokusai | 2011-10-07 09:28 | 財政 | Comments(0)
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