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カテゴリ:財政( 40 )

債券市場参加者の消費増税への見方

 7月29日に公表された7月のQUICKの月次調査(債券)には、消費増税に関するアンケート結果があった。これによると参議院選挙の結果を踏まえての消費税率の引き上げの可能性について、調査対象全体の96%もの人が、1回目は予定通り実施されると答えていた。このうち予定通り2回引き上げられるとみている人は67%、2回目は見送りとする回答は29%あった。

 このように少なくとも来年4月の消費税引き上げはすでに既定路線として債券市場参加者には受け止められている。2回目についてはまだ半信半疑という感じである。2回目は延期とみているエコノミストもおり、私もどちらかといえば2回目は先送りの可能性もありうるかと考えている。

 アンケートの質問には、仮に2014年4月の消費税率の引き上げが見送られた場合、相場への影響に関するのもあった。

 日本の長期金利については上昇するが78%、影響なしが15%、低下するが7%となっていた。債券関係者にとっての本職の部分での10年国債の動向予想となるわけではあるが、財政健全化の遅れとともに、日銀の異次元緩和による大量の国債買いが財政ファイナンスと見なされる懸念を意識した回答結果かと思う。ただし、国債の信認はそう簡単に揺るがず、消費増税が見送られようが長期金利は低下すると答えた市場関係者が7%いた。

 株式市場への影響については上昇が30%、影響なしが16%、下落が54%となっている。株は下落するであろうとみているが、長期金利の上昇ほどの自信はないといった感じの結果であろうか。

 円相場(対ドル)については、上昇(円高)が23%、影響なしが16%、下落(円安)が60%となっていた。つまり来年4月の消費税引き上げが見送られると、長期金利の上昇(国債価格の下落)、株安、円安を招くとの予想となっている。

 ここにきてその消費税の先行きがやや不透明になってきた。政府が来週にもまとめる「中期財政計画」の概要が明らかになり、来年4月からの消費税率の引き上げを今の時点では明確には盛り込まないことが明らかとなった。また、消費税率引き上げをめぐり、安倍晋三首相が増税による経済への影響について、複数案に分けて検証するよう関係部局に指示したとも伝えられた。

 これが意味するところは、少なくとも首相官邸は来年4月の消費増税については、できれば避けたいとの意向のように思われる。ただし、すでにそれは法案が通っているものであり、民間企業などではそれに向けた対応も進められており、上記アンケート結果からもわかるように、市場の波乱要因ともなりかねず、いまさらの見送りはリスクも大きい。足下景気は回復基調となっていることもあり、なぜここで官邸はためらいを見せているのかが腑に落ちない。

 QUICKのアンケートでは消費税率の引き上げが予定通り実施された場合、景気や期待インフレ率などへの影響に関するものもあった。日本の景気については、影響なし20%、減速48%、踊り場26%、後退局面入り6%となっていた。安倍政権が気にしているのも、消費増税による景気減速への懸念であり、せっかくのデフレ脱却を消費増税で妨げてしまい、それが支持率の低下に繋がることを警戒している可能性もある。

 消費増税の景気への影響に関しては、過去の消費増税時の状況はあまり参考にならない。過去2回の消費税の引き上げ時は、増税による影響以上に外部要因による景気への影響が非常に大きかったためである。

 来年4月の消費増税が先送りされるようなことになれば、市場がどのように反応するのかも、実際にはかなり不透明である。素直に国債も株も円も売られるような事態にはならない可能性も高い。ただし、本当にそれで日本売りが生じてしまうと、日本発の世界的な金融不安が引き起こされてしまう懸念もある。そのリスクはテールリスクではあったとしても、ゼロではない以上、そのようなリスクを回避するためにも、来年4月の消費増税は予定通り実施したほうが良いのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2013-07-31 09:01 | 財政 | Comments(0)

必要なのは次元の違う財政再建策なのでは

 2月18日の日経新聞の経済教室は、小林慶一郎一橋大学教授の「財政再建も成長戦略」と題するものであった。ここでのキーワードは聞き慣れない「パブリック・デット・オーバーハング(public debt overhang)」であった。

 失われた20年、一貫して日本経済を悩ませているのが国債など公的債務の膨張であり、これが経済成長を阻害する主因であったとする考え方が、「パブリック・デット・オーバーハング」だそうである。ちなみに、デット・オーバーハングとは、債権者が「支払いの猶予」を認めた場合、企業は存続が可能になるが、新規の資金を借りることが難しくなるような現象を指すとか。

 この考え方を示した論文の記述者がまた興味深い。ハーバード大学のカルメン・ラインハート教授とケネス・ロゴフ教授、モルガン・スタンレーのヴィンセント・ラインハート氏による論文だとか。カルメン・ラインハートとケネス・ロゴフといえば「国家は破綻する」(原題は「This Time Is Different」)の著者である。ヴィンセント・ラインハート氏は元FRBの金融政策局長で、カルメン・ラインハート教授のご主人である。

 「パブリック・デット・オーバーハング」と題された論文によれば、先進国が公的債務の累積を経験した26の事例を調べた結果、そのうち23の事例で長期にわたる経済成長の低迷が起きていたという。公的債務のGDP比が90%をこえてからこの関係が生じるようである。つまり90%を超えると急に経済成長の阻害要因になるという。

 小林教授によると、最近まで公的債務が経済成長率に負の影響を持つことは実証的に確認されていなかったそうで、近年のデータの拡充により、高債務の事例が加わったため、こうした事実が発見されたという。

 その説明のひとつに小林教授は「非ケインズ効果」を挙げている。つまり、財政支出拡大や減税で財政悪化が進むと、将来の財政再建の痛みが非常に大きいと予想されるようになる。するとそれに備えようと貯蓄が増え、現時点の消費が抑えられる。つまり「公的債務が増えると消費が減る」。

 このあたりの関連性については、特に日本では研究の余地があるのではなかろうか。日本経済の低迷の要因をデフレという一言だけでは片付けるのは無理がある。もしパブリック・デット・オーバーハングといった考え方が正しいとすれば、2%の物価目標のために、結果として国債を大量に買い入れる中央銀行の存在は、経済成長をむしろ妨げるようなことになりうる可能性はないのだろうか。

 抜本的な財政再建が先延ばしされれば、経済成長を促す長期的な政策を実行することが困難になる。信用できる長期の成長戦略が示されないと、将来の収益見通しが不確実となり、企業は新技術や新分野に打って出ようとしなくなり経済成長は低下する。企業は既存の技術やビジネスにしがみつき、生産性上昇は停滞し、実質金利も上がらない、と小林教授は指摘する。

 個人的にこの意見はかなり筋が通るように思われる。デフレ脱却というより、失われた20年から脱却するのに必要なのは、次元の違う金融政策とかではなく、次元の違う財政再建策なのではなかろうかとも思うのだが。その手段は政府に任せるとして。

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by nihonkokusai | 2013-02-19 09:50 | 財政 | Comments(0)

アベノミクスは高橋是清を模倣

 ブルームバーグによると、麻生財務相はNHKインタビュー番組で、日本でデフレ対策の経験者は政治家、役所や日本銀行にいないと述べ、その上で「一番直近は高橋是清大蔵大臣だと思う。我々はいろいろ工夫しながら対応を模倣している」と強調したそうである。数年以内に健全な日本経済に戻せるのかと問われ、麻生財務相は政策継続を前提に「必ずそうなると思う」とも語ったとか。

 以前にこのコラムで、麻生財務相そのものの経歴が高橋是清氏と似ていることで、二代目平成の高橋是清ではないかと書いた。高橋是清と同様に異例ともいえる総理大臣の経験者が蔵相・財務相になったためである。ちなみに平成の高橋是清初代は宮澤喜一氏であった。

 アベノミクスと呼ばれる安倍政権の掲げる政策は、デフレ脱却を達成したとされる高橋是清を模倣していた可能性がある。いわゆるケイジアンと呼ばれる首相経験者を財務相としたことだけでなく、高橋是清が行っていた日銀による国債引受を連想させるような発言も以前、安倍総裁から見られていたことも、高橋是清の政策が意識されていたのかもしれない。

 ここであらためて高橋是清が何をしてきたのかを簡単に振り返ってみたい。

 1929年7月に金輸出解禁の方針を掲げた浜口内閣が成立し、緊縮財政への転換と国民への倹約の呼びかけを行い、井上準之助蔵相が主導し1930年1月に旧平価により金輸出を解禁した。この金解禁により金本位制に復帰した日本は、旧平価に対し円がとくに弱かった時期に金本位制への復帰が発表されたため、物価と輸出が急速に低下し、大量の金が輸出解禁とともに海外に流出した。アメリカから始まった世界恐慌の影響も受けて国際収支も悪化し、日本の景気は急速に悪化し、昭和恐慌と呼ばれる深刻なデフレ不況に陥った。これに対して石橋湛山や高橋亀吉らの経済学者たちは、井上準之助蔵相の財政政策を批判し、インフレ誘導によるデフレ不況克服を訴えた。

 1931年9月にイギリスが金本位制を離脱、同年12月の犬養内閣の成立にともなって高橋是清が蔵相に就任すると、直ちに事実上のリフレ政策を断行した。金輸出が再禁止され、1932年1月には「銀行券の金貨兌換停止に関する勅令」の公布施行により、金兌換が停止され、日本は金本位体制から離脱し、日本銀行券の兌換も原則として停止された。1941年の日華事変の拡大とともに増大する戦費調達のため、兌換銀行券条例臨時特例法が制定され、翌年に新たに制定された日本銀行法により法律上も兌換義務がなくなった。

 高橋是清は首相や蔵相を歴任し、積極財政によって当時の日本の経済を立て直してきた。1931年再び81歳で蔵相となった高橋是清は、日銀引受の国債を発行する。それによって得た資金で政府が物資を買うことなどにより経済の状況が回復し、物価も少しずつ上昇した。政府は日銀が引受けた国債を市中に売却することで余剰な資金を回収するという巧みな政策を実施してきた。

 この積極財政の仕組みは、成功するかに見えたが、軍部予算の急膨張によってバランスを失う。すでにインフレの兆候も出てきたこともあり、1936年の予算編成で高橋蔵相は公債漸減方針を強調した。健全財政を堅持しようとする大蔵省と軍部との対立が頂点に達したことにより、軍事費の膨張を抑制しようとした高橋是清は二・二六事件により凶弾に倒れたのである。

 この高橋是清はこんな発言もしていたそうである。

 「多額の公債が発行されたにもかかわらず、いまだ弊害が表れずかえって金利の低下や景気回復に資せるところが少ないので、世間の一部にはどしどし公債を発行すべしと論じるもがあるが、これは欧州大戦後の各国の高価なる経験を無視するものである」

 いわゆるリフレ派と呼ばれる人達の意見の中には、こんなに国債が発行されても日本の長期金利は低位安定し、国内消化されている限りはいくらでも国債は発行できるので、それで経済対策を行ってデフレ脱却をおこなうべきとの主張もみられる。そのような意見に対して高橋是清は懸念を示していた。

 「公債が一般金融機関等に消化されず日本銀行背負い込みとなるようなことがあれば、明らかに公債政策の行き詰まりであって悪性インフレーションの弊害が表れ、国民の生産力も消費力も共に減退し生活不安の状態を現出するであろう」

 高橋是清が行ってきた日銀の国債引受については、当時の国債市場が未熟であったこともあり、いったん日銀が引き受けた国債を金融機関に売却するという手段をとり、インフレを避けるような仕組みを取り入れていた。ところが、高橋是清が指摘した公債が一般金融機関等に消化されず日本銀行背負い込みとなる事態はその死後に訪れることになる。戦争という特殊な状況下であったことで、このような事態が平時に起きることは想定しづらいとの見方もあろう。しかし、再び日銀による国債引受が始まってしまうと、後戻りが難しくなることを歴史が示したともいえる。

 歴史を振り返ることも重要であり、デフレからの脱却に高橋是清を模倣するというのは、たしかにある意味必要かもしれない。高橋是清が行ったのは財政政策だけでなく、為替レート政策、金融政策も加わっていた。まさに現在のアベノミクスと同じような政策といえる。そしてこのアベノミクスは円安を加速させ、世界的な株高もあり東京株式市場も活況の中、上昇しつつある。ただし、結果として高橋是清の政策は、財政の規律を失わせることになった。アベノミクスはそのリスクもあることを、十分に認識しておく必要があろう。

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by nihonkokusai | 2013-02-05 09:41 | 財政 | Comments(0)

二代目平成の高橋是清への期待と不安

 平成の高橋是清と呼ばれた人物がいた。高橋是清と同様に異例ともいえる総理大臣の経験者が蔵相となった宮澤喜一氏である。そして今回の第二次安倍政権でも、総理大臣の経験者である麻生太郎氏が財務相(副総理兼財務・金融・デフレ脱却円高対策担当相)に就任した。いわば麻生財務相は、二代目平成の高橋是清と称されてもおかしくはない。もちろん、ご本人は二代目と呼ばれるのを嫌がるかもしれないが。

 二代目を語る前に、初代がいかなる蔵相であったのかを確認してみたい。宮澤喜一氏は1998年に小渕内閣が発足した際に、未曾有の経済危機に対処するため小渕恵三首相から大蔵大臣就任を要請され、それを受諾した。戦前に活躍した高橋是清と同様に異例の総理大臣経験者の蔵相就任となったため、平成の高橋是清と呼ばれたのである。

 首相を経験し、犬養内閣の成立の際に蔵相に就任した高橋是清は積極財政によって当時の日本の経済を立て直した。宮沢氏には同様の働きを期待されたものと思われる。実際、宮澤喜一氏はもともと自らケイジアンと称したとされ、やはり積極的な財政政策を推し進めることになる。

 宮澤喜一氏は続く森内閣でも蔵相に留任し初代の財務大臣となった。つまり宮沢氏は、小渕政権と森政権を通じて(1998年7月-2001年1月)、蔵相・財務相となっていた。1998年7月に成立した小渕恵三政権では次々と経済刺激策を打ち出し、国債が大量に増発された。これをきっかけに米格付け会社が日本国債を格下げしたり、1998年末には運用部ショックと呼ばれた国債の急落も招いている。

 「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」のグラフを確認してみると、1998年(平成10年)あたりから、歳出総額と税収の差がさらに大きく開いていることがわかる。つまり、宮沢蔵相による積極的な財政政策により「ワニの口」が大きく開きだしたきっかけになっている。当然ながら新規国債発行額も平成10年度に大きく増加した。

「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」、財務省
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.htm

 そして、今回の安倍新内閣では麻生太郎氏が財務相となったが、やはり麻生氏も高橋是清や宮沢氏と同様に、積極的な財政論者として知られる。

 麻生氏は2008年9月24日に第92代内閣総理大臣に就任したが、その数日前の15日にリーマン・ブラザーズが破綻し、いわゆるリーマン・ショックが発生した。これは麻生氏にとって、ある意味良いタイミングであったのかもしれない。財政再建が叫ばれていた中にあり、世界的に金融経済ショックを理由に、積極的な財政政策が取れたためである。10月末には事業総額26.9兆円の追加経済対策を発表するなど、最終的には75兆円規模の景気対策を実施した。

 ここでまた「一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移」のグラフを確認してみると2009年度に、さらに口が大きく開いていることがわかる。

 そして今回、その麻生氏が二代目平成の高橋是清として登場した。麻生財務相はデフレ脱却を図るためとして、政府による財政出動が必要であると27日のNHKのニュース番組で発言している。安倍政権はすでに10兆円規模とされる補正予算の編成を打ち出しており、麻生財務相は初閣議後の記者会見で、今年度の国債発行について民主党政権が定めた44兆円の発行枠に、こだわらないとの考えを示した。

 今年は欧州における信用不安の後退などから円高修正の動きが入り、安倍氏による発言等がその動きを加速させることになった。円安進行を好感し株も買われ、日経平均は28日に一時10400円台まで上昇した。この株価の上昇の背景には、政府による積極的な財政政策への期待も含まれていよう。

 しかし、これによりワニの口はさらに大きく拡がることが予想される。いったいいつまでワニは口を開けていられるのか。アゴが外れてしまうと財政政策どころではなくなる恐れもある。そんな期待と不安が、二代目平成の高橋是清には存在する。

 キンドルの電子書籍にて書き下ろしました「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」(定価300円)にも日銀の国債引受のリスクについて書いてます。是非、読んでみてください。

「超低金利時代の終わり -そして、日銀による国債引受のリスク-」


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by nihonkokusai | 2012-12-30 11:48 | 財政 | Comments(0)

日本の財政の持続可能性(白川日銀総裁講演より)

 9月6日の白川日銀総裁の講演では、日本の「財政の持続可能性」についても触れており、今回はその部分を取り上げてみたい。

 財政の持続可能性の問題について白川総裁は、「やや長いタイムスパンで考えた場合、日本経済にとって非常に重要なテーマである」と指摘している。

 まず、国の財政バランスが長期にわたって悪化した場合、財政の持続可能性を回復す る方法は、論理的にも歴史を振り返ってみても、3つしか考えられないとしている。ここは重要ポイントである。

第1は、成長力の引き上げや歳出入の改革を行って、財政バランスを回復すること。
第2は、国債の債務不履行、デフォルト。
第3は、インフレで帳消しにする方法。

 日本のデフォルトに対してあり得ないという見方については、先日のこのコラムで触れた。第3のインフレで帳消しにする方法については、この事例も過去の歴史を振り返ればたびたび出てくる。第一次大戦後のドイツ、フランスのポアンカレの奇跡と呼ばれたもの、また日本の終戦後なども事例となると思われる。これについては、デフレ下にある今の日本でインフレなどは到底想定することすら難しく、そのような可能性はやはり皆無に等しいとみる人も多いのかもしれない。しかし、オイルショックの頃の日本人に将来デフレがやってくると言っても誰も信じてくれなかったと思う。デフレという確証バイアスが働いてしまっていると、未来のリスクも見えなくさせてしまう恐れるもある。ただし、そう簡単にインフレが起きるとは現状、考えづらいことでもあることも確かではある。

 「わが国では大幅な財政赤字が続き、政府債務残高の対GDP比率は、国際的にみてもきわめて高い水準であるにもかかわらず、国債発行は円滑に行われ、長期金利も低位で安定しているのは何故か」

 この質問に対して白川総裁は2つの答えを用意している。第1の理由は、「日本は最終的に財政再建にしっかり取り組む意思と能力を有している」と投資家が信頼している点。そして第2の理由は、「金利はこれまで安定してきたのだから、これからも安定しているだろう、と投資家が漠然と予想している」という点である。

 「厳しい財政状況が国債金利の上昇というかたちで表面化していないことのもっも本質的な理由としては、第1の理由、すなわち、財政再建に対するわが国の意思と能力に対する信認にあると考えています。」

 これについてはやや疑問を呈したい。確かにこれまでの政府は財政再建に向けた努力を行ってきた。野田政権も非常に苦労して消費増税法案を可決したが、これも根底に財政再建がある。しかし、そもそも結果があまり見えてこない。たしかに海外の金融ショックや震災などの影響も大きかったが、新規財源債の発行額の推移を見ても減少する兆しがない。歳出も形式上現状維持に抑えるのがやっとの状況にある。

 さらに消費増税だけでもかなりの大仕事となるなど、現在の政局動向をみると、財政再建に対する能力というか、やる気があるのかすらも疑問が残る。このあたり今年中にも衆院の解散総選挙が実施される可能性があり、その結果次第でさらに状況は変わりうる。

 白川総裁も次のように述べている。「ただし、意思と能力は最終的には実績で裏打ちされなければなりません。中長期的な観点から、財政健全化に向けた取り組みを着実に進めていくことについて、市場の信頼をしっかりと維持していくことはきわめて重要です。同時に、金融政策面でも、中央銀行が物価安定のもとでの持続的成長を目的として運営されているということに対する信認維持がきわめて重要であり、日本銀行は財政ファイナンスを目的とした国債買入れは行いません。」

 そして白川総裁がもうひとつ指摘していた「金利はこれまで安定してきたのだから、これからも安定しているだろう、と投資家が漠然と予想している」という点については、今後も注意が必要である。漠然とした楽観は、何かのきっかけで崩れる可能性がある。市場の信認を形成させるにはそれを得るにはかなりの努力が必要だが、失うのはあっと言う間である。市場での信認を維持させることは国債価格の安定には必要不可欠であり、このあたり、国や中央銀行にとり重要な仕事となろう。

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by nihonkokusai | 2012-09-11 09:59 | 財政 | Comments(0)

予算の執行抑制策で財源が底をつく時期は11月末に

 赤字国債の発行に必要な特例公債法案の今国会成立は絶望的となったことから、今年度予算の執行に必要な財源が足りなくなるおそれがあるとして、政府は執行抑制策を7日の閣議で決定する。予算の執行抑制が実施されれば、戦後初めての異例の事態となる。

 この2012年度政府予算の執行抑制策で、地方交付税交付金の支給延期などにより、財源が底をつく時期が当初の想定より約1か月遅い11月末になるようである。

 地方交付税交付金の16.4兆円は4月と6月、9月、11月に分割して支払われている。9月4日に予定していた4.1兆円の支払いを延期し、7日に再配分する予定。市町村分は今月すべて支出するが、道府県分の2.1兆円は今月から11月まで7000億円ずつ3回に分割して交付される(NHK)。さらに11月に自治体に配分を予定している4.1兆円のうち6000億円は毎年、自治体への配分に先立ち一般会計から特別会計に投入してきたが今回、この繰り入れ措置も凍結する(日経新聞)。また、自治体が資金不足に陥るのを回避するため、金融機関から新たに借り入れる場合には国が利子を負担する(時事通信)。

 国立大学への交付金と私学助成を半分以下に減額するほか、一般会計から特別会計への繰り入れの抑制などを行うとしている(日経新聞)。

 歳入の4割強を占める赤字国債38.3兆円は特例公債法案が成立しなければ発行できない。赤字国債発行に必要な特例公債法案の今国会成立が絶望的となり、このままでいけば10月中にほぼ財源が底をつく計算になっていた。そのタイムリミットが11月末まで延びることになる。

 ただし、秋に開かれる見通しの臨時国会でもし特例公債法案が成立しなければ、さらに厳しい追加の執行抑制策を迫られる。現状では、政府は国民生活に影響が生じない範囲で支出を先送りすることになるが、今後の状況次第では生活保護など社会保障など国民生活に関わる支出、もしくは政府機関の一時封鎖、さらには国債の償還・利払い費などを含む国債費、これは日本国債そのものへの信認への問題となりかねないが、これらについても対象となる可能性も出てくることになる。

 もちろん国民生活や日本国債の信認に関わるようなことは避けるべきであり、今回もぎりぎりになって法案は成立するであろうと認識されているようである。たとえば、国債市場の動きを見ても、特に動揺が走るような状況にはなっていない。

 しかし、これからの政局が全く読めないこともあり、漠然とした不安感は残る。現在マスコミを賑わせているのは、今月21日に投開票の民主党の代表選、同じく26日の自民党総裁選の行方となる。トップがそれぞれ誰になるかで次期選挙の様相も変わろう。ここに橋本大阪市長が党首となる新党が大きく絡んで、今後の政局は全く読めない状況にある。次の衆院選の時期も不透明ながら、その結果についても予断を許さない。

 このように政局の行方が全く見えていない中、とにかく必要な法律だけは早期成立させて、国の資金繰りへの懸念は早期に払拭すべきと思う。しかし、これが政争の具となってしまいいかねないだけにやっかいである。

 財源が底をつく新たなタイムリミットは11月末に延ばされた。ここからさらに引き延ばすことは、かなり困難が伴い、悪影響が出る可能性もある。日本国債にとっても、これは決して好材料ではないはずである。なんとか早期に特例公債法案が成立することを、願うばかりである。


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by nihonkokusai | 2012-09-07 09:43 | 財政 | Comments(0)

日本政府は戦後初の予算執行抑制を実施か

 8月29日に参議院で野田総理大臣に対する問責決議が可決されたことで、赤字国債の発行に必要な特例公債法案の今国会成立は絶望的となった。特例公債法案が審議未了のまま廃案となった場合には、政府は秋の臨時国会に再提出し、成立を目指すそうである(時事通信)。

 今年度予算のうち税収や税外収入は46.1兆円、これに建設国債5.9兆円を合わせれば、50.2兆円の財源は確保できるが(財政法第四条に基づいて発行される建設国債は予算が通れば発行できる)、歳入の4割強を占める赤字国債38.3兆円は特例公債法案が成立しなければ発行できない。

 資金のやり繰りのため財務省証券の発行をすればなんとかなるとの見方があるかもしれないが、国債発行はむやみに発行されないように法律に基づいており、確実な財源が見込まれない中での自転車操業のような財務省証券の発行は認められない。

 財務省によると公共事業などの建設国債発行対象を除いた9月末の支出見込み額は39.3兆円。これに例年の10月の平均的支出額約5兆円を加えると約45兆円に達するという。特例公債法案が成立しないとなれば、38.3兆円分の執行ができなくなる。このままでいけば10月中にほぼ財源が底をつく計算になる。もしそうなった場合には、支出を厳しく抑える必要がある。

 このため政府は特例公債法案の成立まで、「予算執行を抑制する」方針を固め、来月、全国の地方自治体に支給する地方交付税およそ4兆円の減額や、政党交付金の支給を遅らせるほか、国立大学への交付金といった、いわゆる補助金を半減する方向で、調整を進めることになった。予算の執行抑制が実施されれば、戦後初めての異例の事態となる(NHK)。ただし、生活保護など社会保障や、国債の償還・利払い費などを含む国債費は対象外となる見通しのようである。

 地方交付税交付金の16.4兆円は4月と6月、9月、11月に分割して支払われているが、9月4日とみられていた4.1兆円の支払いの一部が先送りされる公算が大きいとされる(ロイター)。

 予算執行の抑制策については、安住淳財務相がその基本的な方針を31日に示す方向で調整が進んでいるそうである。

 米連邦債務の法定上限引き上げをめぐる協議も年中行事となってしまった感があるが、日本でもねじれ国会となる中、特例公債法案の行方は今年もまた綱渡りの状態となり、ついに戦後初の予算執行抑制の実施を招く結果となってしまうようである。

 特例公債法案が廃案となり、政府があらためて秋の臨時国会に再提出し、成立を目指すといっても、成立の目途が立っているわけではない。野党も選挙を意識して特例公債法案を人質にとる可能性がある。そうなると政府機関の一時封鎖(シャットダウン)等も意識され、国債市場にも影響を及ぼす懸念がある。格付け会社なども動きを見せる懸念もある。

 特例公債法案を政争の具にするには、あまりにリスクが大きいことを認識すべきだが、どうも与野党ともに、それよりも選挙の方が重要であるようである。国債市場は盤石との過信は禁物である。市場参加者のセンチメントが変わると、相場は激変する懸念がありうる。そのあたりも政治家の方々にはしっかり認識してほしいと思うのだが。


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by nihonkokusai | 2012-08-31 09:32 | 財政 | Comments(0)

スウェーデンの財政再建のきっかけとは

 スウェーデンでは、1980年代に入り段階的に進められてきた金融自由化や通貨安を背景に、株価や不動産価格が急騰し、1980年代後半にいわゆる「バブル」が発生した。しかし、世界経済の減速などからバブルは崩壊し、スウェーデン経済はリセッション入りした。主要金融機関の経営が危機に陥るなど大恐慌以来最悪の経済金融危機を迎えた。

 これに対し、スウェーデン政府は1992年9月に「スウェーデンの銀行免許を持つ全銀行の債務を政府が保障する」旨の発表を行い、12月には「金融システム強化策」が議会で承認された。1993年5月に金融機関支援委員会(BSA)が設立され、BSAは経営の悪化した銀行に対する出資を行ったほか、特別債権回収銀行(バッドバンク)を設立して銀行の不良債権を分離移管し、優良資産の部分を銀行に残して(グッドバンク)存続させるといった施策を行った。

 この際に金融機関に公的資金を投入する際に保有株式の引き渡しを株主に求めた。税金による公的資金を回収するためには、政府が金融会社の株主になる必要があったためである。その後、グッドバンクはリストラ策などにより業績が回復し、政府は保有株の一部を売却して国有化の際に投入した資金を回収した。 バッドバンクでは政府は専門家の助言を得て再生可能な事業は多様な手法で再建し、再建不能な事業は不動産や株式に転換するなど、多様な手法を用いて付加価値を高めて売却した。

 こうしてスウェーデンの金融危機はほぼ2年で収束した。政府による迅速な対応に加え、支援に対して銀行側から各種データを提出させ金融機関の中身を詳細に調査した上で対応を決定するなど透明性も強め、国民の理解を得られたことが危機を早期に克服できた要因とされた。

 このように、日本とほぼ同じ時期に金融バブルが起こって崩壊したスウェーデンでは、GDPの4%以上の公的資金を投入して銀行の資産の22%を国有化し、抜本的な再構築を行なった。その結果、1994年にはマイナス成長から回復し、それに加えて財政再建によって1998年に財政黒字に転じたのである。その財政再建のきっかけになったのが、ある保険会社の行動であったと言われる。

 スウェーデンでは財政収支は、1993年にGDP比11.9%の赤字、債務残高は1994年にGDP比77.9%にものぼっていた。1994年7月に国内最大の生命保険会社であるスカンディアが、「信頼できる財政再建計画ができるまで、国債の購入を停止する」と表明し、これにより長期金利が7.0%近辺から11%台に急上昇し、スウェーデン国債はデフォルトの危機に陥ったのである。

 これをきっかけに、スウェーデンにおける財政再建の必要性が喫緊の課題として国民に浸透したことで、政府は増税と社会保険料の引上げ等の財政構造改革を行い、危機を脱出できた。

 スウェーデン政府はまず財政支出を大幅に削減した。そして、すでに高額であった税金をさらに上げている。付加価値税をさらに上げ、高額所得者に対する所得税税率も上げた。これには政権を担っていた中道右派連立政権のみならず、野党であった社会民主党も建設的な協力を行ったことで、迅速な財政再建が進められた。

 ただし財政危機の最中にあり予算が大幅にカットされたにもかかわらず、教育、環境技術、IT技術などの分野は重点項目として余りカットしなかった。これにより同様の改革を行ったフィンランドとともに、その後、環境やIT分野で頭角を表すようになったのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-28 09:16 | 財政 | Comments(0)

メルケル首相が称賛したカナダでの財政再建とは

 夏季休暇明けのメルケル首相がまず訪問したのは、ユーロ圏内の国ではなくカナダであった。オタワで開かれたレセプションでメルケル首相は、カナダの財政規律や経済成長促進、借金に依存しない経済を称賛し、17カ国から成るユーロ圏の手本になると指摘したそうである(ブルームバーグ)。メルケル首相が称賛したというカナダでの財政再建とはいったいどのようなものであったか、これまで何度かこのコラムでも指摘したが、再度振り返ってみることにする。

 カナダの財政赤字は、1970年代以降、景気低迷の中での歳出拡大、それに伴う国債費増大などにより大幅なものとなり、累積債務残高も急速に増加しました。累積債務残高の対GDP比で、1991年度以降、カナダはG7各国の中でイタリアに次いで高い水準となっていました。このため、財政再建が重要課題となっていたのです。

 本格的に財政再建に取り組み始めたのが1993年11月に発足したクレティエン政権でした。同政権では財政赤字削減のために閣僚級のメンバーからなる特別委員会を設置し、選挙公約である「3年以内に財政赤字の対GDP比を3%以内に抑える」という目標をもとに財政の立て直しを進めていきました。その結果、1994年度以降、財政再建は強力に進められ1997年度以降は単年度ベースで財政黒字を計上したのです。

 クレティエン政権はプログラム・レビュー(Program Review Tests)を導入し、6つの基準を設定し、これに基づいて全ての既存政策について徹底した見直しを実施したのです。その6つの基準とは、国民に求められているのかという公共の利益の基準、政府が提供すべきなのかという政府の役割」の基準、連邦政府に適切な仕事なのか州政府の仕事なのかの基準、民間に任せることはできないのかという民営化の基準、効率を上げることはできないのかという効率性の基準、 その結果残った仕事についての費用負担の適切さの基準です。

 州への交付金や州との権限関係の見直し、失業保険制度や年金制度の改革、産業補助金の削減、政府企業の民営化やエージェンシー(外局)化、連邦公務員の削減、内閣組織の簡素・効率化などが積極的にすすめられ、各省庁の予算を1994年度から4年間で平均22%も削減したのです。

 歳入についても大規模法人税の税率引上げ、付加法人税の税率引上げ等が実施されたものの、カナダでの財政再建は主に歳出削減により進められていったのです。

 財政再建を進めた時期に、米国経済の回復によりその影響を受けやすいカナダ経済が回復したことも、カナダの財政再建を支えた要因として指摘されています。 しかし、カナダの経済に対する信任が国内外で厳しく問われたことで、そうした危機感が国民に共有されたことが、カナダの財政再建を成功させた大きな原動力になったことも確かであると思われます。

 日本でも2009年の民主党政権が行った事業仕分けは、カナダのプログラム・レビューが参考にされたものです。しかし、カナダの財政改革は腰の座ったものであったのに対し、日本における短時間での仕分け作業では財政削減効果は限定的です。すでに1990年代のカナダ以上に危機的な状況となっている日本でも、本格的な財政再建が必要であり、それは国民も求めているものであるはずです。(参考、財務省資料「カナダの財政再建について」)


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by nihonkokusai | 2012-08-20 10:33 | 財政 | Comments(0)

2020年東京オリンピックの開催の可能性と日本の財政への影響

 ロンドン・オリンピックでの日本人選手の活躍により、世界的なイベントとしてのオリンピックの魅力があらためて日本でも見直されたのではなかろうか。今月20日にオリンピックのメダリストによる凱旋パレードが銀座で予定されている。もしこれが実現すれば100万人規模の人がパレードを見に来ると予想されており、大きなイベントになることに間違いはない。このパレード開催の背景には、2020年東京オリンピックの招致にむけて、特に都民の支持率を高めようとの意図もある。

 2020年の夏のオリンピック開催都市を選ぶIOC総会は、来年9月7日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる。今年5月の第1次選考で、東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市が最終選考に進んでいる。

 トルコは2020年のサッカー欧州選手権にも立候補しており、同じ年に大規模な競技大会を開催することは困難としてやや不利との見方もある。ただし、サッカー欧州選手権の開催地はまだ確定しておらず、このあたりの状況は不透明となっている。また、スペインについては、欧州の信用不安の震源地のひとつともなっているため、オリンピックどころではないという状況ではなかろうか。このため2016年の大会にも立候補していた東京が有利との見方もあるが、こちらは地元東京都民の支持率の低さが大きなネックとなっている。

 しかし、今回のロンドン・オリンピックでの日本人選手の活躍により、日本でのオリンピック開催に向けた機運が今後盛り上がる可能性がある。私を含めて、一定の年代層にとり生きている間にもう一度オリンピックの地元開催を見てみたいという人もいるであろうし、夏季オリンピックの地元開催を全く知らない年代層にとっても、地元で開催されるオリンピックへの関心があらためて高まるのではなかろうか。

 もし2020年の夏季オリンピックの東京開催が実現すれば、日本での久しぶりのピッグイベントとなる。費用は最低限に抑えられるとされながらも、このオリンピック開催によるインフラ整備等にはかなりの費用がかかることが予想される。

 現在の都内のインフラは前回の東京オリンピックで整備されたものが多い。特に首都高や新幹線、青山通り、東京モノレール等の交通網が整備された。首都高などすでに50年以上も経過しているものはあらためて、メンテナンス等も必要とされるであろうし、渋滞回避のための整備も必要になるのではなかろうか。

 これらのインフラ整備等も含めて、あらたな費用もつぎ込まれるとみられるが、公共投資により日本の景気回復のひとつのきっかけとなる可能性もある。また、商業化されてきているオリンピックでもあり、一定の収入も見込めるであろう。また、海外からの観光客の流入などにも繋がり、日本への宣伝効果も大きなものがある。

 東京オリンピックに向けてのインフラ整備等の反動が、昭和40年不況を呼び、戦後初の国債発行に繋がった。以前にも指摘したが、オリンピックの国内開催は、日本の財政面で大きな転換の年となっていた。

 札幌で冬季オリンピックが開催された1972年は日本列島改造論が出た事に加え、福祉元年とも言われた年となった。その後のオイルショックも加わり、高度成長から低成長時代に移るとともに、一般歳出に占める社会保障費を増加させるきっかけともなった。

 長野で冬季オリンピックが開催されたのが、1998年2月である。この2月に30兆円の公的資金枠を設けた金融システム安定化法が成立するなど、日本では不良債権問題が大きくクローズアップされた。11月にはムーディーズによる日本国債の格下げがあり、年末には運用部ショックもあった。日本の財政悪化が加速されたのが、この1998年あたりからである。

 もし2020年の東京オリンピック開催が決まれば、日本の財政にとっても、2020年が大きな節目の年になる可能性がある。2020年あたりまでは現在の国債発行ペースが維持できるかもしれないが、これがいつまで可能なのかは現時点ではっきりしない。できれば、これをきっかけに日本の財政悪化に歯止めが掛かり、財政再建への道筋が見えてくるような格好となれば良いが、過去のオリンピックの時と同様に財政がより厳しい状況になってしまう可能性もある。日本の財政が良い方向に向くのか、それとも悪い方向に向くのか、このあたりは当然ながら、政治家の仕事となろう。


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by nihonkokusai | 2012-08-17 09:46 | 財政 | Comments(0)
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