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カテゴリ:財政( 38 )

金融緩和で物価が上がらないなら財政でという安易な発想

 日銀が現在行っている金融緩和策のバックボーンには、いわゆるリフレ派と呼ばれる人達の考え方がある。リフレーション(リフレ)とは、 中央銀行が世の中に出回るお金の量を増やし、人々のインフレ期待を高めることでデフレ脱却を図ろうとする金融政策のことを示す。リフレは通貨再膨張と訳されている。

 ただしリフレ的な発想には暗に財政拡大も絡んでいる。政府は財政再建等を行わず、さらなる借金をしても(国債を増発しても)財政を拡大させ、その国債を日銀に引受させる格好で金融緩和を行い、それによって景気は拡大し物価も上がる。景気拡大による税収増によって借金は返済できるといった発想となる。これはいわばフリーランチ的な発想ともいえる。

 日本の債務がGDPの倍以上となっており、この数字そのものはまさに危機的な状況にある。ただし、政府は多額の資産も保有しており、実質的な債務はそれほど多くないとする意見もリフレ派にみられる。さらには日銀が保有している国債は、日銀が国の機関であるため相殺でき、債務をそれほど心配する必要はないとの意見もリフレ派からは聞こえる。

 そうであればなぜ、欧米の国々が中央銀行の国債引受を禁止しているのであろうか。中央銀行が国債を買い入れれば債務は実質増えないのであれば、税金など取らずに大量の国債を日銀に保有してねもらえば済むことである。なぜ世界の国々はそれをしていないのか。

 ここまで国が債務を拡大しても全く問題なかったため、さらに財政を拡大させて国債残高を増やしても問題はない、と本当に言えるのか。日本政府の債務はそのほとんどを国民の金融資産で賄われているので問題ないといえるのか。政府が債務を放棄すれば我々の金融資産はどうなってしまうのか。

 そして政府による財政拡大で本当に税収が増えるのか。GDPギャップをそれでカバーできるのか。それはこれまでさんざん試してきたことではなかったか。税収を大きく増加できる財政政策は高度成長期などであればまだしも、低成長期にはかなり難しくなる。

 単純に財政を拡大すれば景気が回復し物価が上がるとの発想も、大胆な緩和で物価が上がるという発想とあまり変わりはない。結果は出ずに国の債務だけ増加し、日銀は出口も見えない状況に追い込まれ、世界第二位の市場規模を誇る日本の債券市場が機能不全に陥るといった状況が続く。政府もそろそろこのフリーランチ政策とは距離を置いて、現実と向き合った政策に修正すべきだと思う。


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by nihonkokusai | 2017-08-16 09:56 | 財政 | Comments(0)

OECDが指摘した日本のリスク

 OECDが発表したエコノミック・アウトルック最新号によると、「世界のGDP成長率が2016年は基本的に2015年とほぼ同水準の3%に止まると予測されていますが、主要新興市場における貿易の低迷、投資の不振、賃金の伸び悩み、経済活動の遅滞がすべて、その要因となっています。世界経済は2017年にわずかに回復して3.3%になると見込まれています。」

 今年度や来年度の世界経済の予想を見る限り、どうやら安倍首相がサミットで主張したような今そこにあるリスクを、OECDは認識してはいないようである。ただし、リスクが存在していることはOECDも指摘しているが、それは例えば英国のEU離脱リスクである。さらに日本については「前例なき高水準の公的債務が主要リスクのひとつ」だと指摘している。

 安倍首相は6月1日に消費増税の先送りを正式に表明し、さらに「総合的で大胆な経済対策」を講じる考えも表明した。いくら財政規律は守ると主張しようが、そのための増税を回避する上、国債発行を仮に伴わなくても本来国債の償還に充てるべき資金で大規模な経済対策を打つのであれば、「リスクには備えねばならない」(安倍首相)というよりも、OECDが指摘したリスクを増加させているようにすら映る。

 また、今回のエコノミック・アウトルックでは興味深い記述もみられた。「追加的金融緩和は過去と比較して有効ではなく、状況によっては逆効果になり得る」と指摘していた点である。

 これについて金融市場関係者であれば、昨年末あたりから様子がおかしくなっていることは薄々気がついていたとみられる。FRBが利上げ、つまり正常化をする姿こそがあたりまえのように見えてきたなかでの、ECBや日銀の追加緩和について市場はポジティブな反応をしなくなった。というよりもむしろネガティブな反応をした、アウトルックでの指摘も、追加緩和が特に市場を経由しての影響力に対して逆効果となっている状況を危惧したものかと思われる。

 伊勢志摩サミットや今回の消費増税延期に関する表明でも、ひとつ抜け落ちているものがあった。アベノミクスの柱のひとつであったはずの日銀の異次元緩和に関するものである。日銀の大胆な緩和がなければこんなものでは収まらなかったと主張したかったのかもしれないが、世界経済は米国が利上げできるほどにリスクは後退しており、この間に日本だけが大きなリスクに晒されることは考えづらい。

 結果から言えば日銀の異次元緩和は物価目標を達成する手段とはなり得なかっただけである。大胆に国債を中央銀行が買い入れて、マネタリーベースを倍以上に増やしても物価に影響を直接与えることはできず、むしろ財政ファイナンスのような状況を作ってしまい、財政規律の緩みというリスクをむしろ増加させてしまったといえるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-06-03 09:31 | 財政 | Comments(0)

消費増税の延期と財政の緩み

 5月25日の読売新聞によると、安倍首相が夏の参院選と次期衆院選を同じ日に行う「衆参同日選」を見送る公算が大きくなったと伝えた。現時点では衆院解散を考えていない意向を与党幹部に伝え、これは参院選情勢や熊本地震の復興状況などを踏まえたとみられる。来年4月の消費税率10%への引き上げについては先送りする方向で、6月1日の今国会閉会後にも表明するとした。

 つい最近まで安倍首相は来年4月の消費増税について「リーマン・ショックや大震災のような事態が発生しない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し答弁してきた。熊本地震のあとでも同様の発言をしていたため、熊本地震による日本経済への打撃はそれほど大きくはないとの認識であったのか。それでは世界の金融経済は今、リーマン・ショックのような百年に一度とされる危機を迎えているのか。いやむしろ大きな危機は去って米国のFRBは正常化路線に舵を切り替えているぐらいである。

 1~3月期の日本のGDPでは多少個人消費が回復していることを示していたが、なかなか個人消費が回復し切れていないのは、日銀の新たな指標からも明らかである。しかし、これをリーマン級の影響によるといった判断はできまい。

 つまり本当に消費増税を延期するのであれば、これまでの首相の発言とは矛盾した結果となる。もしかすると今後、嘘をつけるものとして日銀の公定歩合、衆院解散に続いて消費増税が加わることになるやもしれない。

 ただし、市場ではかなり消費増税の先送りは織り込んでいた。日銀の異次元緩和にも関わらず物価目標が達成できない理由についには日銀も2014年4月の消費増税による影響を指摘するようになっていたぐらいである。予定通り実施しても物価目標はできると2013年4月には日銀は胸を張っていたはずなのではあるが。

 それはさておき、どのような理由付けになるかは知らねど、首相として在任中に二度の消費増税の引き上げなどはできないであろうというのが市場関係者の読みであった。今回予定通りに実施されるほうがサプライズとなる可能性があった。

 日銀が大量に国債を購入しているが、物価はいっこうに上がる気配はなく、長期金利は上がる理由がいまのところ見当たらない。10年債あたりまでのマイナス金利により、国債を発行すると政府は儲かるシステムとなっている。国債需給もタイトであり、いまのうちに国債を大量に発行して大胆な財政政策を打つべしとの声も出ている。財政規律は緩みつつある。長期金利は上がる理由がいまのところ見当たらないとしたが、上がるリスクそのものは見えないところで膨れあがっていることにも注意すべきである。

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by nihonkokusai | 2016-05-26 09:34 | 財政 | Comments(0)

消費増税の行方と国債市場

 25日の参院決算委員会での答弁で麻生太郎財務相は、消費増税について、「(自民党の稲田朋美政調会長などから)1%刻みでの(段階的な)消費増税というお話が出されていますが、「ドン・キホーテ」なんかで毎年1%上げられたら、それだけで経費が上がってたまらんだろうなと。商売やった経験者はそんなこと、逆立ちしても言いませんな。私はそういうことを言う人に、「自分で商売やったことないだろう」といつもからかうんですけれども」と発言したそうである(朝日新聞)。

 自民党の稲田朋美政調会長は20日に、来年4月の消費税率10%への引き上げについて「絶対に2%ということではなく、まず1%上げる考えもある。上げ方もいろいろな道筋がある」と述べ、増税幅を1%にとどめる選択肢もあり得るとの見方を示した(毎日新聞)。

 増税幅を1%にとどめる選択肢については、経済協力開発機構(OECD)事務総長のアンヘル・グリア氏も、経済状況によっては2017、2018の両年度に「1%ずつの段階的な引き上げ」を行うことが望ましいとの見解を示していた。しかし、1%ずつの引き上げは現実的には余計な費用が掛かることは必然であり、麻生財務相の意見が正論だろう。

 ただし、稲田政調会長の発言の背後には、何としても増税延期ということは避けたいとの思惑も強いのではなかろうか。むろん日本の財政の行方を考えれば、消費増税はやむなしと思われるが、財政規律には敏感なはずの国債市場でも実は増税延期がメインシナリオになっている節がある。

 2014年11月28日に安倍首相は首相官邸で記者会見し、2015年10月から予定されていた消費税率10%への引き上げを2017年4月に1年半先送りするとともに、衆院を解散する考えを表明した。これについては特にサプライズでもなく、国債市場に動揺を与えることはなかった。かなり前から安倍首相は任期中に二度の消費増税はやらないとの見方が市場でも強まっていたためである。

 2017年4月の消費増税についても、いろいろと理由付けをしながら延期させるであろうとの見方が強いと思われる。熊本地震の影響もあり、衆参同時前挙の可能性は後退したが、5月の伊勢志摩サミット後あたりに消費増税延期を表明するのではないか。

 日銀が大量に国債を買い入れていることもあり、消費増税延期で国債が急落するようなことはいまは考えづらい。しかし、国債残高は膨れあがる一方であることに変わりはない。財政規律についても完全に無視はできないが、とりあえずそのリスクも日銀の国債買入などで先送りされている格好となっている。

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by nihonkokusai | 2016-05-02 10:01 | 財政 | Comments(0)

ギリシャ国民の選択の行方、日本との違いは何か

 ギリシャの国民投票は本日、5日に実施される。この短期間でよく国民投票の実施が準備できたと思うが、古代ギリシャのアテネでは重要決定は市民全員参加での多数決によって決定されたとされる。このあたりの伝統も受け継がれているのであろうか。

 今回のギリシャの国民投票は、EUが提案した財政緊縮策の賛否を問うかたちとなる。つまり6月30日にいったん停止されたギリシャへの金融支援プログラムを延長するためには、ギリシャが財政改革案をのむことが大前提となる。国民投票では年金カットなど厳しい緊縮改革案を受け入れる場合にはイエスとし、受け入れたくない場合にはノーとする二択の投票となる。

 イエスが過半数を占めることになれば、緊縮改革案を受け入れることになり、金融支援プログラムが延長される可能性がある。ただ、イエスとなればギリシャのチプラス首相、バルファキス財務相は辞任すると表明している。そうなれば総選挙の実施も予想され、ギリシャの新政権次第ということにもなる。

 ノーが過半数を占めると、やや訳がわからない事態が生じる。チプラス首相はこの結果をもってEUとの交渉を有利にさせたいとの腹づもりなのかもしれないが、EU側はこれによって妥協するとは思えない。EUからの支援がなければ7月20日のECBに対する約35億ユーロの返済も不可能となる。ECBからの資金供給でかろうじて生きながらえているギリシャの銀行がこれで完全に資金繰りに窮する。政府による年金等の支払いも不可能となってこよう。そうなるとユーロ離脱の選択肢が浮かび上がる。

 ギリシャのバルファキス財務相は2日、国内にはユーロに代わる紙幣を印刷する輪転機がなく、通貨を発券する能力はないと説明した。ゲーム理論の専門家でもあるバルファキス財務相が仕掛けたゲームはあまりに稚拙すぎる。輪転機があろうがなかろうが、EUから見放された場合には、そこに止まることはできなくなる。

 ユーロ離脱となれば、統一通貨のユーロは使うことが出来ず、あらたな通貨を発行せざるを得ない。その通貨の価値は下落すると予想され、ギリシャ国民の生活に非常に大きな影響を与えよう。国民投票の賛成派は「緊縮策の受け入れ反対は、ギリシャのユーロ圏からの離脱と経済の破綻を意味する」と主張しているそうだが、決してこれは誇張ではない。果たしてそのような選択肢をギリシャ国民は取れるのか。

 一度は生活を苦しめる緊縮策に反対してチプラス政権を選択したギリシャ国民だが、フリーランチはないことをここであらためて気がついたはずである。その結果、どちらを選択するのか。

 このあたり日本も大きな教訓とすべきところであろう。日本とギリシャの違いとしてはユーロというシステムの存在もある。しかし、大きな債務を抱えてその返済の有無が国家的な危機を生むという状況は日本でも当然起こりうる。それが日本で起きない理由のひとつが、日本の経済規模があまりに大きすぎて影響力がありすぎるところにある。つまりは「Too big to fail」である。もちろん国債への信認が維持されているからこそ、その債務残高を維持し続けることができている。

 ギリシャと日本との国民性と違いなどの指摘もあるが、日本は巨額の借金ができるという環境にいればこそ、現在の生活というか経済が維持されている。日本でも新たな借金ができなくなれば、国民性とかの問題ではなくなり、ギリシャと同様の事態が発生する。日銀が国債を大量に買うから問題はないとの指摘もあるかもしれないが、中央銀行が大量の国債を買い入れている状況は、日本の債務リスクをむしろ増加させている懸念もある。決してギリシャの問題は他人事ではない。

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by nihonkokusai | 2015-07-05 10:40 | 財政 | Comments(0)

消費増税延期と解散総選挙の可能性

 9日の読売新聞朝刊は一面で、安倍首相が来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを先送りする場合、今国会で衆院解散・総選挙に踏み切る方向で検討していることが8日、分かったと伝えた。首相はこうした考えを公明党幹部に伝えたとみられるとしている。年内に解散する場合、衆院選の日程は「12月2日公示、14日投開票」か「9日公示、21日投開票」とする案が有力だという。

 ただし、APEC首脳会議(北京、11日まで)に出席するため羽田空港で記者団の質問に答えた安倍首相は、衆院解散について「全く考えていない」と述べたとも伝わった。

 魑魅魍魎の政治の世界であり、あまり憶測しても意味はないかもしれないが、少なくとも、このような記事が出ること自体、消費増税の延期の可能性が高まりつつあることを示しているように思われる。

 11月2日には安倍首相の右腕と言われる飯島勲氏がテレビ番組で「12月2日に衆議院が解散、14日に投開票が行われる」と発言したことが話題となった。飯島氏はテレビ番組で、「補欠選挙をやった後に7月~9月の経済状況が明らかになる。11月17日くらいにはわかりますから、20日くらいに総理は消費税を10%に上げるかどうか決断する」と一気に読み上げ、 さらに「その後の12月2日に、思い切って衆議院解散して、12月の14日に投開票。24日に内閣改造、予算は越年」と告げたそうである。ただし、今国会の会期は11月30日までとなる。もし12月2日に解散となれば会期を延長する必要がある。

 小泉政権時に秘書官として活躍した飯島勲氏は、第2次安倍内閣において内閣官房参与に就任している。その飯島氏がテレビで堂々と解散総選挙について述べたということはどういうことなのか。そして、その期日とまったく一致する内容の記事が「読売新聞」の記事にも掲載された。

 解散総選挙を年内に行うのであれば何が目的となるのか。すでに衆院は前回解散して2年が経過しており、いつ解散してもおかしくない。解散権は首相にあり、最適と思われるタイミングで解散に打って出ることが予想される。それではなぜこのタイミングが最適と思われるのか、そこには消費増税の行方がひとつの鍵となっていると思われる。

 消費増税については現財務相の麻生副総理、元財務相の谷垣自民党幹事長らが予定通り実行するように求めていたのに対し、内閣官房参与の本田氏、浜田氏が延期を求めている。米国の経済学者でノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏が11月6日に安倍晋三首相と会談した際にも、この2人は同席している。というよりこの場を設けたのも両参与であった可能性がある。クルーグマン氏は予定通りに増税した場合にアベノミクスが失敗する可能性を指摘したそうである。

 10月22日には消費税率の再引き上げに慎重な自民党の山本幸三氏が党本部において、再増税が日本経済に与える影響などを議論する勉強会の初会合を開いていた。会合には、保岡興治元法相ら約40人が出席した。この勉強会には以前、首相就任以前の安倍氏も出席していた。この日は消費増税賛成派の会合も開かれていたようではあるが、次第に増税反対派の波が押し寄せつつあるように思われる動きであった。

 消費増税の引き上げに慎重なもうひとりの重要人物がいるとされている。菅官房長官である。菅義偉官房長官は11月5日午後の会見で、安倍首相が消費税率引き上げの判断を行う時期について、12月8日の二次速報値のあとになるとの認識を示していた。11月17日の7~9月期のGDP一次速報値を確認しての解散となれば「12月2日公示、14日投開票」の可能性はあるが、8日の二次速報まで待ては「9日公示、21日投開票」となるか。

 消費増税引上げの判断は7~9月期のGDP次第となる。経済情勢が悪い場合、増税を見送ることはできる。ただしその際には法改正が必要である。ただし、増税凍結法案はすぐに成立させなければならないものではないようで、後回しにもできるとか。

 11月17日に発表される2014年7~9月期GDP速報値は、日経QUICKニュース社が31日時点でまとめた民間調査機関7社の予測中央値は前期比0.5%増、年率換算で2.0%増であった。もしこのあたりの数字となれば、予想以上に回復の度合いが鈍いとして消費増税は見送る可能性がある。

 そうなれば前政権(民主党の野田政権)が決めた(ただし当時の谷垣自民党総裁も同意していた)消費増税を凍結させて、日本経済再生を旗印にアベノミクスの成果(特に円安株高あたり)を問う選挙に打って出る可能性はありうる。もしそうなれば10月31日の日銀の異次元緩和第二弾は、解散総選挙に向けてうまく利用された格好ともなりかねない。

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by nihonkokusai | 2014-11-11 08:13 | 財政 | Comments(0)

ドイツにできて日本はできない財政再建

 7月3日付けの日経新聞によると、ドイツが2015年に財政均衡を実現し、赤字国債の発行を46年ぶりに停止する見通しとなったそうである。このため赤字国債は今年に65億ユーロを発行するのを最後に姿を消すとされる。さらに債務そのものの削減も進め、直近まで80%だったGDP比の債務残高は2017年に70%を割り込む予想となっている。

 2014年のドイツの実質成長率は2%に達し、10%を超えていた失業率は5%台と域内の最低水準に下がった。2018年までの4年間で税収が16%も伸びる見込みとなっているが、これはあくまで小さく見積もっても、だそうである。

 まさにアベノミクス的な景気や雇用の回復であるが、もちろんこれは日銀の異次元緩和による影響では当然ない。ドイツは積極的に財政健全化を進めることで、ドイツそのものやユーロの信認を強めることになる。

 ユーロが成立する過程においては、参加国に財政規律が求められた。しかし、ユーロ参加国であったギリシャが財政状態を不正に隠蔽していたことが発覚し、2010年にギリシャ発のユーロ危機が発生した。このためユーロ圏ではより厳格な財政規律を確保することが求められた。さらにECBの積極的な金融緩和策も手伝い、ユーロの信用危機は去りつつある。しかし、ユーロ圏全体としては景気回復の足取りは鈍く、そのなかでいち早く景気が回復していたドイツにとっては、非常に好環境となり景気の回復とともに、財政再建もいち早く進む格好となった。

 これに比べて、やはりユーロ圏の信用危機の後退による恩恵を受けて、タイミング良く出てきた日本のアベノミクスであるが、ここには財政再建という矢は存在していなかった。日本もドイツのように、上昇気流に乗りやすい環境にあったが、その上昇気流をリフレ策というある意味禁じ手を使うことで、一気に生み出した。その結果が2012年11月あたりからの急激な円安と株高であり、世界経済の回復がさらに後押し、東京オリンピック開催決定というさらなるフォロー要因も加わって日本の景気も回復をみせ、円安要因などもあり物価も上昇した。

 それにより、2013年度の税収も予想以上の増加が見込まれ、甘利明経済再生担当相は「かなりの上振れが見込まれる」との見方を示した。さらに「その要因が構造的なものであれば、その一部をさらなる経済成長に投入するというのは理屈が立つ」と指摘したそうである。つまりは税収上振れ分を法人減税の財源にあてることに前向きな考えを示した(6月27日のロイター記事より)。

 法人減税を打ち出したものの、その財源は明記されなかったが、このあたりをあてにしていた可能性がある。このように日本では特に財政規律を守るべき指針はない。基礎的財政収支の目標もあくまで目標であり、このように税収が回復しても財政再建に充てるようなことがなければ、日本の財政再建が進むはずはない。それでも長期金利は0.6%以下にいるように、日本国債の信認が維持されているとかに見えるところが本来のリスクを覆い隠している。借金はいずれ返す必要があるものであり、膨らみ続ける債務バブルはいつか破裂するリスクを秘めている。

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by nihonkokusai | 2014-07-04 09:52 | 財政 | Comments(0)

骨太の方針と長期金利の上昇リスク

 政府は24日の臨時閣議で経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」と、「新たな成長戦略」を決定した。「骨太の方針」では財政健全化の指標である基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を、2015年度には2010年度に比べて半減する目標の達成を目指すことが明記された。来年度予算案について、歳出全体の三分の一近くを占める社会保障費を聖域なく見直して増加を最小限に抑えるなど、「厳しい優先順位付けを行い、メリハリのついた予算とする」としている。

 基礎的財政収支半減の目標はそれほどハードルは高くはない。2014年度予算では消費税率の8%への引上げとともに、景気回復に伴う所得税や法人税の税収増が寄与することで、基礎的財政収支はかなり改善する見込みであり、2015年度での目標達成の可能性は十分可能なところにいる。

 ただし、今回出された「新たな成長戦略」のひとつの柱でもある法人税の実効税率を来年度から引き下げるとの案についても、いまのところ財源は特に明記されておらず、また景気動向次第では大型の補正予算が組まれ、そこにあらたな財源が必要とされるようなことも出てくる可能性はある。

 最終的には2020年度までには基礎的財政収支の黒字化を達成するとしている。これは東京オリンピックの時期とも重なり、国内外から日本の財政状況に対する注目も集まろう。こちらも達成させることが、日本の信認を維持させるためにも必要となる。年内とされる2015年10月に消費税率を10%に引き上げるかどうかの判断についても注目すべきものとなる。

 政府としては財政健全化の手を緩めるつもりはないかもしれないが、アベノミクスの三本の矢が大胆な金融緩和と積極的な財政政策、成長戦略となっている。これはむしろ財政健全化を急がずに、日銀に大量の国債を買わせ、その分、時間を稼いでいるようにも見えるところが気になる。

 日銀はデフレ脱却を旗印にし、たとえ2%の物価目標を達成したとしても簡単には手綱を緩める気はなさそうである。現在の大量の国債買入はかなりの期間維持されることも想定され、その分政府としては国債発行が楽になる。市場もいまのところ素直に日銀の国債買入の影響を受けて10年国債の利回りである長期金利は0.6%近辺に張り付いている。長期金利は財政リスクを意識させるような動きとはなっておらず、いわゆる財政リスクプレミアムはゼロ近傍にある。

 日本の財政がGDP比などでみてここまで悪化しているにも関わらず、長期金利には財政リスクが反映されておらず、さらには日銀が引受ではないものの、発行額の7割もの国債を買い入れているこの構図は果たして健全なものと言えるのか。

 長期金利の跳ね上がりへの懸念を主張しても、結局は狼少年となってしまっている。しかし、デフレから脱却というのであれば、長期金利も失われた15年から脱してくる可能性も当然ありうる。このリスクを考慮するのであれば、財政健全化を急ぐことも大きな矢として必要であるのではなかろうか。長期金利が上がってしまってからでは、身動きが取れなくなることも予想される。

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by nihonkokusai | 2014-06-26 09:37 | 財政 | Comments(0)

米国のデフォルトは回避、今後への影響

 米国のデフォルトはぎりぎりになって回避された。まさにチキンレースとなり、野党・共和党が最後の最後におれて、与党・民主党が粘り勝ちした格好なのかもしれないが、無益な争い、というより有害な争いは勘弁してほしいところである。

 米議会上院は、米政府に来年2月7日まで国債発行を認めると同時に、閉鎖中の政府機関を再開するため1月15日までの暫定予算案を本会議で採決し可決された。下院でも可決し、オバマ大統領の署名により成立した。

 こうして最大の懸念材料となっていた米国のデフォルトは回避されることになったが、2週間以上に渡り続いていた政府機関の一部閉鎖による影響も無視はできない。政府機関は、法案に大統領が署名後ただちに再開すると伝えられている。

 FRBが発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、「政府機関閉鎖と債務上限協議を主な要因とする不透明感の増大を指摘する向きも多かった」との報告があった。ただし、経済への影響はそれほど深刻な問題にはならないだろうとの見方もある。直接的な影響は限定的であったとしても、間接的な影響も存在する。そのひとつが経済指標に関するものとなる。

 10月4日に発表される予定であった9月の米雇用統計の発表は22日となる。また、10月集計分の発表は11月8日に延期されるとか。問題となりそうなのは集計期間中に政府機関が閉鎖となってしまった10月分の数字となる。遡っての集計がどれだけ可能なのか。特に家計調査に基づく失業率の数字がどうなるのかも気になるところ。特に雇用に関する経済指標はFRBの金融政策にも影響を与えうる。

 そのFRBであるが、市場参加者の多くはすでに年内でのテーパリング開始は困難との見方を強めている。しかも、今回の妥協案となる予算案は1月15日まで、国債発行については2月7日までという暫定的なものであるため、2014年1月28日、29日に開催されるFOMCでのテーパリング開始決定も難しいかもれない。1月末で任期終了となるバーナンキFRB議長は、自らの任期中に出口への道筋をつけることはできず、イエレン次期議長にそれを委ねることになる可能性も出てきた。



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by nihonkokusai | 2013-10-18 09:54 | 財政 | Comments(0)

政府のシステムは複雑、米国危機回避は急ぐ必要も

 米国の財政問題を巡る与野党の協議に動きが見えてきた。米国下院の共和党指導部は債務上限を無条件で11月22日まで引き上げる案を提示した。無条件の債務上限引き上げ案が可決するとなれば、オバマ大統領は署名するとの観測もあり、これにより、米国の債務不履行がひとまず回避されるとの見方が強まった。

 10日の米国市場ではデフォルト回避との見方が強まった。ただ、12月や1月に償還を迎えるTBの利回りは上昇した。あくまで一時的なデフォルトリスクを回避しただけであり、11月22日までに解決されなければ再びデフォルトの可能性が出てくる。

 ところが、日本時間の11日の朝にオバマ大統領は共和党の短期間の債務上限引き上げ案を拒否するの観測が流れた。政府機関再開が提案に含まれていないためだそうだが、拒否との報道は誤報とも。オバマ大統領、下院共和党提案にイエスともノーとも言わなかったとの報道もあった(ロイター)。

 すでに2週目に突入している政府機関の閉鎖も早めに解決しなければ、各所に影響が及ぶ。米雇用統計の調査対象期間となるのは、日曜日から数えて12日を含む週となり、10月の調査週は今週(10月6日~12日)となり、このまま政府閉鎖が続けば調査ができない可能性が指摘されている。非農業雇用者数については遡っての集計も可能かも知れないが、失業率のもとになる家計調査に支障が出ることも考えられる。もし10月の米雇用統計がパスされるようなことになれば、FRBの金融政策にも影響を与えかねない。

 ブルームバーグによると米政府機関閉鎖で電子機器の発売に遅れが出る懸念についても報じられている。コンピューターや携帯電話、ゲーム機、テレビ、無線医療機器など電波を出す製品はいずれも、米連邦通信委員会(FCC)の審査を通過する必要があるが、それが滞る可能性があるとか。

 政府機関の閉鎖が今回のように長期に及ぶと、予想外の影響が出てくる可能性があるが、その影響度を個別に確認することは難しい。政府のシステムはかなり複雑となっており、その影響を完全に把握することは当事者も容易ではないのではなかろうか。

 米国のルー財務長官は、米債務上限が期限まで引き上げられずに米国がデフォルト(債務不履行)に陥った場合、政府が支払い義務を選択的に果たすことはシステム上不可能との見解を示した(ロイター)。

 米債務上限が期限まで引き上げられない際に、支払い義務を選択すれば良いとの見方があったが、「そのようなことができると考える人は、われわれの複合的支払いシステムの構造を分かっていない。非常に複雑なシステムであり、われわれが適切に支払うことを意図したものだ。支払いをしないために作られているわけではいない」と説明した(ロイター)。

 政府資金のシステムは支払いをしない前提で構築されているわけではなく、しかも支払先が多岐にわたり、一部の支払いを停止するなどいうことは技術的に困難であろう。仮に人海戦術で何とかしようとしても、現在、政府機関は閉鎖中でそれを準備できるような状況にもない。

 今月17日までに債務上限を引き上げる対応を議会が取らなければ、米国が債務不履行(デフォルト)に陥るのは時間の問題となる。まずはこのデフォルトの懸念を取り除き、多方面に影響を与えかねない政府機関の閉鎖についても、早急な解決が求められる。政治上の駆け引きも時には重要なのかもしれないが、世界経済を混乱に陥れる「懸念」がある以上は、そのようなことをしている場合ではない。



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by nihonkokusai | 2013-10-12 10:59 | 財政 | Comments(0)
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