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カテゴリ:中央銀行( 222 )

市場の期待の流れを変化させるFRB

 3月29日のニューヨークでの講演においてFRBのイエレン議長は、海外経済と国際金融情勢の不確実性がリスクとなり続けると指摘し、今後の利上げに関しては海外経済のリスクを考慮して慎重に進めるとコメントした。ただし、利上げを進めるというシナリオを大きく修正したわけではない。

 FRBは12月に公表された政策金利の見通し、いわゆる「ドット・チャート」では、2016年に0.25%の4回の利上げの可能性が示唆されていた。これが今年3月の「ドット・チャート」では年2回分に修正されていた。

 ドット・チャートがFRBの政策見通しを伝えるものではなく、あくまでメンバー個々の見通しの集計に過ぎないながらも、市場ではこれをFRBの金融政策の道筋を示すものとして解釈している。FRBとしてもこの見通しの数字をかなり意識している面もあると思われる。

 昨年12月の時点では四半期ベースの利上げの可能性を意識していたFOMCメンバーが多かった。ところが現実問題としては2006年の日銀のゼロ金利解除の際の利上げペースもかなり慎重となったように、せいぜい半年に一度ぐらいのペースになるのではないかと個人的には見ていた。

 今年に入ってからの国際金融市場では、中国経済への懸念や原油価格の下落などにより、リスク回避の動きを急速に強め、世界的な株安等を招くことになった。これはFRBの利上げそのものも影響している可能性があった。FRBの正常化により過剰流動性相場が終焉しつつあり、新興国からの資金引き上げなども要因となったことは確かであろう。

 FRBに3月に利上げの意図があったのかどうかは定かではないが、3月のFOMCでは金融政策は現状維持とした上で、ドット・チャートにて今後の利上げのペースを緩やかなペースに修正され、それを市場に示した格好となった。

 これを市場は好感し、原油価格の下げ止まりもあり、世界的なリスク回避の動きは後退した。欧米の株式市場は年初の水準を上回るまでになった。ただし、FRBとしては利上げそのものを停止するわけではないものの、市場ではこの一連の動きからFRBの利上げは困難との見方も一部に出ていた。

 これに対して牽制球が投げられた。投げたのは地区連銀の総裁であった。アトランタ連銀、サンフランシスコ連銀、シカゴ連銀の各総裁に続き、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁、セントルイス連銀のブラード総裁も利上げについて前向きな発言をしたのである。これは4月のFOMCでの利上げの可能性を示すというよりも、FRBは正常化というベースとなる路線は放棄したわけではないことを示すことが狙いであったのではないかと思われる。

 ただし、4月のFOMCで利上げをするのかどうかはまだ不透明であり、むしろ議長会見のある6月の可能性もありうることで(個人的には6月の可能性が強いとみている)、あまり市場が前倒しでの利上げの可能性を意識させることに対してもブレーキを踏ませようとしたのが、今回のイエレン議長の発言であったように思われる。もしそうであれば、31日に予定されているニューヨーク連銀のダドリー総裁の講演内容も、今回のイエレン議長の発言と似た趣旨になると予想される。

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by nihonkokusai | 2016-03-31 09:41 | 中央銀行 | Comments(0)

上海のG20での謎の非公式会合

 3月7日のWSJは「日本への批判高まり、円安誘導の選択肢なくなる」との記事のなかで、G4という非公式会合の存在を指摘していた。

 2月26、27日に上海で開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の際、日本の他にユーロ圏、米国および中国のいわゆるG4が財務相・中銀総裁レベルの非公式会合を持ったそうである。関係者によると、G4の財務相・中央銀行総裁会議は少なくともここ数年、G20や国際通貨基金(IMF)年次総会などの際に定期的に行われているそうである。

 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)の議長を務めるオランダのダイセルブルーム財務相はG20会期中に、日本が通貨戦争を引き起こす危険性が協議されたことを明らかにしたと報じられた。これについて麻生太郎副総理・財務相は4日の参院予算委員会で、ダイセルブルーム財務相の上海での発言は誤って引用されたものだと欧州委員会高官から伝えられたと報告した。しかし、欧州委員会報道官はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、オランダ財務相の発言は正確に報じられたものだと述べたそうである。

 ダイセルブルーム議長の発言があったのかどうか、非公式会合も開催されたのかどうかは定かではない。真偽のほどは定かではないが、オランダ財務相であるダイセルブルーム議長のお膝元のECBもこれまで通貨安を意識した金融緩和を行ってきた経緯もあり、さらに3月にはECBは追加緩和を決定している。もしかすると2015年1月のECBの量的緩和政策決定の際にドイツとともにオランダは反対しており、日本を持ち出しながらも実はドラギ総裁に釘を刺した可能性もあるのかもしれない。これもあくまで憶測ではあるが。

 G4のうち利上げした米国以外は、G20直後に預金準備率を引き下げた中国を含めて、通貨安狙いの追加緩和策を講じているところでもあり、ダイセルブルーム議長の後ろには米国の意向が働いた可能性もありうるか。米政府は安倍政権が日銀の金融政策に頼り、円安で成長を促そうとすることに対して懸念を示しているとされる。このような米国サイドの批判もあってか、日本政府は2011年の冬以降、為替介入は実施していない。

 もしG4という会合が存在しているのであれば、昔のプラザ合意ほどではないものの、非公式に行われながらそれなりの影響力を持っている可能性もある。IMFのSDRにはドル、ユーロ、英ポンド、円、そして人民元で構成されており、そのうちの4つの通貨に絡んだ国々の会合であり、特に為替政策に関しての協議の場である可能性がある。ただし、ここになぜ英国の名前が入っていないのかは疑問である。

 その英国の中央銀行であるイングランド銀行のカーニー総裁からは上海のG20において「金融緩和が世界レベルで効果を上げるためには、単にある国から他国に需要の乏しさを移し替えるだけの方法を当てにすべきではない」との発言もあった。さらに「世界的なゼロ金利の中、フリーランチ(タダ飯)などない」という警告も発している。

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by nihonkokusai | 2016-03-21 13:06 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの利上げペースは緩やかに

 3月16日のFOMCでは、政策金利であるところのフェデラルファンド金利の誘導目標を年0.25~0.50%で据え置くことを賛成多数で決定した。投票メンバー10人のうち9人が現状維持に賛成したが、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は反対し、0.25%の利上げを提案した。

 会合後に公表された声明文では、「世界経済と金融動向は引き続きリスクをもたらす」とし、イエレン議長は記者会見で「海外経済への不安感が金融市場の動揺につながっている」との懸念を示した。

 ただし、米国景気については「失業率が4.9%に下がるなどほぼ完全雇用の状態にあり、米経済は拡大を続けるとみている」とし、物価上昇率も「エネルギーと食品を除いたベースでみれば上昇した」と述べていた。

 昨日発表された2月の米消費者物価指数はエネルギー価格の低下から前月から0.2%低下した。しかし、全体から食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比では2.3%の上昇となった。この上昇率は2012年5月以来の高い水準となったようである。

 FRBによる米国の景気や物価に対する見通しには大きな変化はなかったものの、中国などの経済動向や金融市場での年初からのリスク回避の動きなどから、FOMCの年内利上げに関する見方にはやや変化が生じた。

 FOMCメンバーが示した四半期予測によると、2016年末時点のFF金利誘導目標は中央値で0.875%となっており、年内2回程度の利上げを示唆した。昨年12月時点の予測では4回程度の利上げが示唆されていた。

 この四半期予測通りに金融政策が実施されるわけではないものの、これによって金融市場での利上げ予想に近づいたとも言える。年初のリスク回避の動きもあったが、それ以前に年4回の利上げはさすがに無理ではないかとの認識も市場では強かった。私も2006年の日銀のゼロ金利解除後の利上げペースなどからみても、半年に1回できるかどうかとみていた。

 ただし、これにより年内利上げそのものが後退したわけではなく、あくまでも市場のコンセンサスに近い緩やかな利上げが実施されるであろうとの見方から、これを市場は好感した。

 FRBはこのようにペースはさておき、正常化への歩みは止めていない。世界経済は現在、決して危機的な状況にあるわけではない。それにも変わらず危機的な状況にあったときよりもさらに踏み込んだ金融緩和政策を行っている中央銀行が存在しているのはどうしてなのだろうか。

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by nihonkokusai | 2016-03-18 09:37 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBのマイナス金利政策からの転換

 3月10日のECB政策理事会で決定された包括的な金融緩和策は、2014年6月の理事会で決定した包括的な金融緩和策と類似したものではあったが、今後はマイナス金利政策とは距離を置くなどやや趣が異なっていた。

 政策金利は下限金利である中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%とし、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利も0.00%と従来の0.05%から引き下げ、政策金利の上限金利であるところの限界貸出金利も0.25%に引き下げた。

 これはマイナス金利政策の強化に見えたものの、ドラギ議長は理事会後の会見で、「今の状況ならこれ以上利下げする必要が無い」と発言した。これが当日の株式市場や外為市場では嫌気されたわけではあるが、この発言にはECBの緩和路線の変更が意味されていたとみられる。

 今回のECBの追加緩和の際には日銀の多段階のマイナス金利政策と同様の政策が検討されるのではとの観測があり、実際にそれは検討されたようである。ところが「ECBが望む限りマイナス金利政策を進めることができるとの(誤った)シグナルを市場に送ることを避けるために」採用を見送ったとドラギ総裁は述べている。

 このドラギ総裁の発言は、政策金利そのものをゼロにまでしたことで、これ以上の政策金利の引き下げは難しいことに加え、マイナス金利による欧州の銀行への収益悪化を意識したものであろう。当然ながら日本も同様にマイナス金利政策による金融機関への収益悪化が問題視されている。ただし、そうであるのならば何故、今回のECBの包括緩和にマイナス金利の深掘りも加えられていたのか。市場の緩和期待に応えるためラインナップを増やした面もあろうが、これでひとつの金利政策の打ち止め感も出したかったのかもしれない。

 今後のECBの追加緩和については、「金利政策からその他の非伝統的な金融政策に軸足を移す」とドラギ総裁は明言した。これはECBのマイナス金利政策からの転換を意味するものとなろうが、マネタリーベースの増加を目的とした日銀タイプの量的緩和政策とは一線を画するものとなろう。

 それではECBは非伝統的な金融政策としてはどのような手段を意識しているのであろうか。今回のECBの政策には資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロへの拡大が含まれていた。資産購入の対象には銀行以外のユーロ圏企業が発行した投資適格級の社債も加えられた。

 今後はこのような資産買入規模を膨らませる政策が意識されているとみられる。ただし、資産買い入れの期限は2017年3月までと変更してはいない。ECBはこの時間軸政策は今回は温存している。

 さらに新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)の6月からの開始も加えられた。これはある意味、ユーロ圏の銀行にとっては恩恵にもなることで、マイナス金利で疲労した銀行への救済策ともなる。

 ECBはマイナス金利政策からの転換を図っているが、いまのところその具体策は明確ではない。しかし、今回の包括緩和の内容を見る限り、資産買入の量と質、そして期限などの変更、さらには長期リファイナンスオペ(TLTRO)の活用などが想定されているのではないかと予想される。

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by nihonkokusai | 2016-03-15 09:02 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBの追加緩和に対する市場の反応

 3月10日のECB政策理事会では、包括的な追加緩和を決定した。前回1月の理事会後の会見でドラギ総裁は3月の理事会で追加緩和を検討することを示唆していたため、サプライズではない。しかし、内容はややサプライズな側面があった。

 政策金利の下限金利である中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%としたのは予想されていた。ところが、主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利も0.00%と従来の0.05%から引き下げたのである。さらに政策金利の上限金利であるところの限界貸出金利も0.25%(従来0.3%)に引き下げた。

 特に主要政策金利を実質ゼロというより本当のゼロ%に引き下げたのがサプライズとなった。ドラギ総裁は今回の理事会後の会見で「一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」と発言し、これが市場のネガティブな反応の要因とされたが、主要政策金利のマイナス化はスウェーデンなどの例はあるものの、そこまで踏み込むことは考えづらく、こと利下げに関しては打ち止め感を出したかったのかもしれない。

 そして利下げだけでなく資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロに拡大した。資産買い入れの期限は2017年3月まで。資産購入の対象には銀行以外のユーロ圏企業が発行した投資適格級の社債を加える。新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)も6月に開始することも決定した。TLTROの金利は「中銀預金金利と同じくらい低くなり得る」とした。つまりマイナス金利での資金供給の可能性を示唆した。TLTROとは資金供給の目的を限定して、銀行に期間4年の資金を貸し出す長期資金供給オペレーションのことである。

 今回のECBの追加緩和では日銀のような多段階式のマイナス金利政策にするのではないかとも予想されたが、そうではなく政策金利のゼロ金利化に資産買入増額等を組み合わせた包括緩和政策とした。これは市場にとって良い意味でのサプライズになるとドラギ総裁は期待したのではなかろうか。

 しかしこの日のECBの包括緩和政策を好感した動き、つまりECBの期待したユーロ安、欧州市場の株高はわずか90分程度しか続かなかった。相場の反転はドラギ総裁が会見で追加緩和の可能性を否定する発言がきっかけであったが、そもそも市場が中央銀行の追加緩和の効果に懐疑的な見方も出ていたためではなかろうか。

 市場の地合の変化は昨年12月のECBの追加緩和や日銀の補完措置の決定後の市場の動向からも見て取れる。さらに1月末の日銀のマイナス金利付き量的・質的緩和の決定に際しても円安株高は一時的となり、すぐに秀吉ならぬ大返しが待っていた。

 ECBもこのような一連の動きは承知の上で、物価下落を食い止めようとの目的で予定していた追加緩和を行ったのかもしれない。しかし、通貨安などの市場を経由した波及効果についてはあまり期待できないどころか、むしろ逆効果となりうることも意識する必要があろう。

 さらに今回気をつけなければいけなかったのは国債の動きである。これまでの中央銀行の追加緩和では他市場はさておき比較的債券市場は好感していた。むしろ日銀のマイナス金利には日本の債券市場は過剰反応を示していたぐらいであった。ところが10日のECBの追加緩和を受けてドイツの国債は下落し、英国や米国の国債も下落した。ただし、翌日の11日にはあらためてECBの追加緩和策の効果が意識されてか、イタリアやスペインの国債主体にドイツ国債も含めて買い戻されていた。

 10日のECBの追加緩和による欧米市場のネガティブな動きは、8日から9日にかけて地合が悪化しつつあった日本の債券市場も直撃し、11日の日本の債券市場は先物主導で大きく下落し、8日にマイナス0.100%にまで低下していた10年債利回りは一時プラスに浮上した。大きく買われた相場の一時的な反動との見方もできるかもしれないが、最後の砦ともなっている岩盤ともいえた国債市場に多少なり動揺が走るとなれば新たなリスクが生じる可能性もある。このため今後の債券の動きにも十分な注意が必要になろう。

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by nihonkokusai | 2016-03-12 13:54 | 中央銀行 | Comments(0)

ECB、日銀、FRBは3月に動くのか

 今月はECBが3月10日に政策理事会、日銀は14日から15日にかけて金融政策決定会合、FRBは15日から16日にかけてFOMCがそれぞれ開催される。ECB、日銀、FRBは3月に動きをみせるのであろうか。

 ECBについてはドラギ総裁が1月の理事会で次回理事会での追加緩和の可能性を示唆していた。先日発表された2月のユーロ圏消費者物価指数速報値が前年比0.2%の低下と前年比変わらずの予想を下回ったこともあり、追加緩和の可能性はある。

 ただし、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長(オランダ財務相)はG20で、為替相場の下落につながるような政策決定を行う際に事前に通知することで合意したことを明らかにするなど、競争的な通貨切り下げの状況に陥る懸念を示唆しており、追加緩和へのハードルはやや高くなっている。

 ところが、G20の開催国であった中国が29日に預金準備率の引き下げという追加緩和策を決めるなど、果たして今回のG20の影響力がどの程度及んでいるかという懸念もある。

 ドラギ総裁が追加緩和を決定する可能性はありうるものの、12月のECBの追加緩和後の市場の動きを見ても追加緩和によってユーロ安やユーロ圏の株高を招くかはかなり不透明であり、12月のように市場がネガティブな反応をする懸念すらある。さらにデイセルブルム議長の発言からもサプライズ緩和は御法度となっている。市場の動揺が落ち着いていれば追加緩和を先送りする可能性もある。

 日銀については、ECBより先に1月にマイナス金利付き量的・質的緩和政策として追加緩和を決定しており、今回はその効果や副作用について検討することとなろう。

 政府は世界経済の減速を受け、国内景気を下支えする緊急経済対策の検討に入り、2016年度予算案の成立後、今月下旬にも具体案の調整に着手すると読売新聞が報じている。また、来年からの消費増税の行方についてもかなり不透明となっている。日銀はマイナス金利の副作用への懸念が強まろうが、政府の経済対策に合わせるとともに、消費増税のさらなる先送りを避けるためにも、3月というよりも4月の会合で追加緩和を検討する可能性はあるのかもしれない。

 そしてFRBであるが、1日にニューヨーク連銀のダドリー総裁は、自身の米経済見通しのリスクバランスが「やや下振れしつつある」との認識を示し、ブレイナード理事も米国での利上げペースは世界経済成長の減速に伴い、従来予想よりも緩やかなペースとなる可能性があると指摘した。そしてタカ派とされているセントルイス地区連銀のブラード総裁が、FRBが利上げを続けるのは賢明でないとの認識を示すなど、少なくとも3月の会合での追加利上げの可能性はかなり薄い。

 個人的にはFRBは半年に一回のペースでの利上げを決定するのではないかとみていたが、あるとしても年内に1回の追加利上げとなるのかもしれない。ただし、米国経済についてはそれほど悲観的にはなる必要もないとみている。

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by nihonkokusai | 2016-03-03 09:41 | 中央銀行 | Comments(0)

米利上げがリスク回避の動きの原因なのか

 今年に入ってのリスク回避の動きは、米国の利上げが要因だとの見方がある。まったく関係ないとは言えないものの、FRBの12月の利上げが年初からの日米欧の株安の直接的な原因とは考えづらい。

 今回のリスク回避の動きには原油安が大きく絡んでいることは確かである。それでは米国の利上げが原油安の原因かと言えば、そうではなかろう。また、米国の利上げは12月16日であり、年初の米株の下落まで時間にずれが生じている

 たしかに米国の利上げは金融引き締めであり、株価下落の原因とされてもおかしくはない。しかし、FRBはかなり慎重に正常化に向けた動きを進めてきたことで、利上げを織り込み済みの市場が予想外といった動きをすることも考えづらい。むしろ米国の利上げは直接的なリスク回避のきっかけではなく、世界の金融市場の資金の流れの変化を改めて意識させた面が大きいのではなかろうか。

 今回のリスク回避の背景にあるのは中国など新興国の経済バブルの崩壊が大きな要因といえる。それを支えていたのがFRBを含めての大胆な金融緩和策であり、それは原油を高止まりさせていた要因でもあった。しかし、中国の人民元切り下げにみられるように景気の悪化が顕著となり、それは原油の需要面での売り要因となった。原油価格の下落は供給面よりも需給面の見方があらためて意識され、WTIは30ドル割れとなった。

 原油価格の下落はロシアやブラジルなどの新興国とともにサウジアラビアなど産油国の経済や財政を直撃し、それが新たな不安要因ともなり、年初の中東や北朝鮮の地政学的リスクもひとつのきっかけとなって、新興国などからの資金の逆流も意識されたことで、リスク回避の動きを強めたとみられる。

 21日のECB理事会後にドラギ総裁が追加緩和を示唆し、1月29日の日銀の追加緩和も加わりいったんリスク回避の動きは弱まったものの、原油安などは中央銀行の金融政策で何とかなるものではない。金融市場の混乱で米利上げのピッチはさらに緩やかになっても、それが新興国バブル崩壊を食い止めることはできない。ECBや日銀のさらなる追加緩和手段も限られていることで(マイナス金利にも限界はある)、ここから再び中央銀行の大胆な金融緩和に頼ることも難しく、これ以上の追加緩和は副作用も大きくさせよう。

 新興国のバブルは弾けても、米国や欧州の経済がしっかりしていれば今回のリスク回避の動きも一過性のものとなろう。米国は利上げに耐えうるだけ経済は回復してきており、欧州の景気も回復しつつある。日本経済もバラ色とは言いがたいが、大きく落ち込むようなことも考えづらい。このあたりが意識されれば、リスク回避の動きは次第に収まってくると思われる。

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by nihonkokusai | 2016-02-01 10:02 | 中央銀行 | Comments(0)

中央銀行の物価目標の意味

 ECBのドラギ総裁は21日の理事会後の会見において、「インフレ率がしばらくの間低水準にあり、それが原油主導だとしても長引く低インフレがインフレ期待を動揺させ持続する恐れがある」と指摘した(ブルームバーグ)。

 さらに「エネルギーと食品を除くコアインフレも低いという事実によってそのリスクは高まっている。コアインフレ率はわれわれの目標ではないが、総合インフレ率を中期的に導く傾向がある」と付け加えたそうである(ブルームバーグ)。

 ECBはユーロ圏の消費者物価調和指数(HICP)で年%を下回る上昇率を物価の目標値としている。

 FRBも2012年1月のFOMCで、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 日銀は2012年2月に物価安定の目途(コアCPIの1%)を示すことにより実質的なインフレ目標策を導入したが、それを2013年1月に2%の物価目標にバージョンアップした。

 英国では財務省が「物価の安定」の内容を決定しており、2004年1月以降は消費者物価指数(CPI)で2%とされている。

 この2%に何らかの意味があるのか。日銀からはグローバルスタンダードであるためとの説明がなされていた。

 FRBの政策目標はデュアル・マンデートとも呼ばれるように物価安定と雇用最大化を促す目標となっている。2015年12月にFRBが利上げを決定したのは、物価目標(ゴール)は達成していなかったものの、雇用が回復していたことが理由となっている。

 たしかに物価という面からはここにきての原油安もあり、日米欧の中央銀行は目標に届かないどころか、非常に低い水準にいる。しかし、雇用という面からみると米国だけではなく欧州も日本も回復基調にある。

 それが賃金上昇に結びついていないことで、日銀総裁が新年の連合の会合で「物価の上昇に見合った賃金の上昇がなければ経済は持続しない」と述べるなどしていた。日銀は目標を物価ではなく賃金にするべきという異論まで出ている。

 日銀がどのように金融政策で賃金に働きかけるのかはさておき、金融政策でそもそも物価に働きかけられるのかというのは大きな課題である。その壮大な実験を行ったのがアベノミクスの一役を担った黒田日銀であり、二度にわたる異次元緩和であった。しかし、その結果は2年で2%どころかゼロ%近辺となった。

 そもそも日銀はマネタリーベースを膨らませることでインフレ予想に働きかけようとしたが、ECBはマイナス金利政策をとってむしろマネタリーベースを抑制するかのような政策をとるなど、目標は同じでも手段が真逆になっている。

 バーナンキ元FRB議長は金融政策の98%は市場との対話だった、行動は2%に過ぎなかったと述懐しているそうである。要するに金融政策は対話を通じて金融市場そのもの、つまり長期金利や株価、通貨価値に働きかけることで効果を出すということであろうか。そうであれば目標達成のためにはいったん市場を経由させる必要があるということになる。

 その市場が果たして中央銀行の金融政策の在り方をどう認識しているのか。その意味では12月のECBの追加緩和と日銀の補完措置に対する市場の反応は興味深い。市場も中央銀行の物価目標達成に向けたそれぞれのロジックに対して疑問を抱きつつあるように思われる。その意味ではいち早く正常化に向けて動きを示したFRBは正解だったのではなかろうか。今後もしECBや日銀が物価目標を意識して追加緩和を模索するのであれば、この市場との対話が大きな焦点になるように思われる。

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by nihonkokusai | 2016-01-28 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

ドラギマジックに種は残っているのか

 1月21日に開催されたECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に維持し、中銀預金金利と限界貸出金利もマイナス0.3%とプラス0.3%でそれぞれ据え置くことを決定した。

 ドラギ総裁は会見で、新興市場国の成長見通しをめぐる不透明性の強まりや金融・商品市場の変動、地政学的リスクに伴い、下振れリスクが年初以降、再び増大したとし、3月の次回会合で金融政策スタンスを見直し、恐らく再検討する必要があるだろうと述べた。つまり、「追加緩和」の可能性を示唆した。これを市場は好感し、中国リスクや原油安などによるリスク回避の動きが反転するきっかけとなった。

 ECBは昨年12月3日の政策理事会で追加の緩和策を決定した。主要政策金利のリファイナンス金利は0.05%に据え置き、上限金利の限界貸出金利も0.30%に据え置いたが、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%に引き下げた。ドラギ総裁は会見で、債券購入の期間を2017年3月まで延長する方針を示し、買い入れる資産の対象に地方債を含めることも明らかにした。買い入れた債券が償還された際に、償還金の再投資を実施することも表明した。ただし、毎月600億ユーロの資産を買い入れという規模は現状維持となった。

 この決定に対して市場は「踏み込み不足」との認識を示した。12月3日の欧米の株式市場は大きく下落し、ダウ平均は一時300ドルを超す下げとなった。ユーロ圏の国債とともに米国債や英国債も大きく下落した。米10年債利回りは2.3%台に上昇。また外為市場ではユーロが買い戻され、ユーロ円は134円近辺に上昇した。まさに「ドラギショック」といった展開となったのである。

 12月3日に決定された内容は、継ぎ接ぎではあったものの、償還金の再投資を実施するなど政策としてはそれなりに踏み込んでいたと思われる。しかし、大規模な金融緩和に慣れてしまい、この程度では期待外れとの認識が市場で示されてしまった可能性がある。

 12月18日の日銀の金融政策決定会合では量的・質的緩和を補完するためとして、いくつかの措置を発表した。7~10年であった買い入れ国債の平均残存を7~12年程度に変更するとした。量的・質的金融緩和のもとでの長期国債買入れに伴って、金融機関が保有する適格担保が減少していることを踏まえ、外貨建て証書貸付債権を適格担保とするほか、金融機関の住宅ローン債権を信託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とする制度を導入した。ETFは3兆円の買い入れ枠に加え、新たに年間約3000億円の枠を設け「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れる。同時に金融機関から買い入れる株式の売却完了期限の10年間の延長も決めた。

 日銀としてはこの措置はあくまで追加緩和でなく異次元緩和の補完とした。仮に追加緩和のような効果を狙ったとしても、このような手段を講じるしかないことを市場に見透かされてしまった格好となった。12月18日に日経平均先物は一時19900円近くまで上昇したが、その後大きく売られ19000円割れとなるなど値動きの激しい相場となった。追加緩和だと思ったが違ったので株は乱高下したとの見方もできるかもしれないが、市場のセンチメントが変化している点にも注意すべきであった。追加緩和、もしくはそれに準ずるものに市場が素直に反応するような地合ではなくなってきている。

 それではドラギ総裁には追加緩和としてどのような手段が残されているのであろうか。下限金利の中銀預金金利の再引き下げ、債券購入の期間のさらなる延長、そして前回手をつけていなかった資産買入規模拡大などが想定される。主要政策金利そのもののマイナス化は弊害も大きいとみられ難しい。資産買入規模拡大についてもドイツなどの反対があると予想され、大規模な拡大は現実的にも難しい。

 ドラギ総裁は、われわれは周知の通り数多くの手段を持っていると主張するが、日銀同様に規模に関しては国債買入に依存するほかなく、金利にも限界がある。手段はいくつもあったとしても市場を納得させるほどのマジックの種は存在していない。それでも何もしないよりも緩和したほうが良いという発想であるのであれば、それはそれで市場との対話をより難しくさせる可能性もある。

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by nihonkokusai | 2016-01-23 11:09 | 中央銀行 | Comments(0)

利上げの試練

 米国の中央銀行であるFRBは昨年12月のFOMCで正常化、つまり利上げを決定した。今年は年4回程度の利上げを想定しているようである。しかし、その利上げ回数に対して多すぎるのではとの意見も、ここにきてボストンやシカゴの連銀総裁などから出されている。

 FRBの利上げも日銀の2000年と2006年の利上げと同じような結果になるのではないかとの懸念も出ている。つまり、利上げを実施したものの外部環境の悪化により、再び金融緩和に追い込まれるのではないかとの見方である。

 2000年8月11日の日銀の金融政策決定会合ではゼロ金利政策の解除、つまり利上げが決定された。7月17日の金融政策決定会合でゼロ金利が解除されるのではとの見方が強まっていたが、7月12日に大手デパートのそごうが民事再生法を申請したことで、この時の解除は見送られ、一か月遅れでのゼロ金利の解除となった。

 ところが、このときの日銀のゼロ金利解除は、タイミングとしては最悪となってしまった。日銀のゼロ金利解除の要件とされたデフレ懸念の払拭であるが、デフレはこれ以降さらに強まることになってしまった。米国景気を支えたITバブルが崩壊し、米国のITバブルに影響を受けたハイテク企業中心の業績により、かろうじて支えられていた日本経済も、ITバブルの崩壊で崩れ去ったのである。デフレ懸念はさらに強まることとなり、景気は悪化していった。

 このためさらなる利上げはできず、2001年3月19日の金融政策決定会合において金融調節目標を金利から日銀当座預金残高という量に変更することを決定した。いわゆる量的緩和政策が実施されたのである。

 その量的緩和政策が解除されたのが、2006年3月9日の日銀金融政策決定会合においてであった。7月14日の政策決定会合では無担保コール翌時物金利の誘導目標をゼロに抑え込むゼロ金利政策も解除された。つまり利上げが決定された。さらに2007年2月には追加利上げを8対1の賛成多数で決定したが、この際に岩田一政副総裁が利上げに反対した。

 日銀はその後も追加利上げを模索していたものの、世界の金融経済を揺るがす事態の発生により、再び金融政策は緩和の方向に舵を向けざるを得なくなった。その事態とはサブプライム問題に端を発するリーマン・ショックに代表される世界的な金融経済危機の発生である。

 米国の昨年の利上げ後、中国経済の悪化や原油安が引き金になって世界的に株式市場は下落している。原油価格の動向をみても、チャイナバブルが弾けたというか、中国を中心とした新興国の急速な経済成長がピークダウンしたことは確かであろう。新興国の株式市場を含めて世界の株式市場を予想以上に嵩上げしていたのは日米欧による積極的な金融緩和であっただけに、米利上げによるその資金の流れの変調もここにきての株安や原油安に拍車をかけてしまった格好となっている。

 FRBもここからの利上げは困難となっていくのか。中国バブルの崩壊が2000年のITバブルの崩壊同様の影響を及ぼす懸念はないとは言えない。中東などでの地政学的リスクも存在する。しかし、リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される大きな金融経済危機をやっと乗り越えてきたことも確かである。いまは大きな転換の時期にいる。このため、ある程度の株式市場や原油先物市場などでの調整はやむを得ない面がある。ここから再び世界を揺るがすような危機が訪れる懸念が果たしてどれだけあるのか。二度あることは三度あるかもしれないが、むしろその可能性に賭けることのほうが難しいように思われるのだが。

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by nihonkokusai | 2016-01-15 09:25 | 中央銀行 | Comments(0)
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