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カテゴリ:中央銀行( 257 )

FRBも次第にトランプ色が強まることに

FRBは10日、タルーロ理事が今年4月5日をメドに退任すると発表した。タルーロ理事がトランプ大統領に退任の意向を伝える手紙を提出したそうである。タルーロ理事はオバマ前大統領の指名を受け2009年1月28日に就任した。空席となっていた金融監督担当副議長の任務を代行し、金融危機後の金融システムの規制強化に関わった。任期は2022年1月末まで残っていた(日経新聞電子版)。

FOMCの投票権のあるメンバーは理事会から7名の理事と、地区連銀から5名の地区連邦銀行総裁の合計12名によって構成される。現在のFRB理事の布陣は、ジャネット・イエレン議長、スタンレー・フィッシャー副議長、ダニエル・タルーロ理事、ジェローム・パウエル理事、ラエル・ブレイナード理事の5名である。FRBの理事会は本来、7人の理事で構成されるが現在空席が2つある。

タルーロ理事は、FRBの金融監督当局者として新たな規制の導入を主導するなどし、金融危機や深刻な景気後退への対応に尽力、最も厳しい銀行監督当局者の一人として高い評価を得ていた。しかし、金融規制を見直す大統領令にトランプ氏が署名するなど、今後は規制緩和の動きを強めることが予想され、タルーロ氏が退任表明は想定内との見方もあった。タルーロ氏が退任する意向を示したとのニュースが伝わると、株式市場では銀行株が上昇するなどしていた。

これで4月5日以降のFRB理事の空席は3つとなる。さらにイエレン議長の任期が2018年1月までとなっており、トランプ氏は再任しないことをすでに表明している。またフィッシャー副議長の任期も2018年中となっている。

トランプ氏は空席となっているFRB理事の3つの席をいずれ指名してくると予想され、いずれ議長、副議長も変えるとなれば、FRB理事会がトランプ色の強いものに刷新される可能性が出てきた。ラエル・ブレイナード理事はトランプ候補と大統領選挙で戦ったクリントン氏に近く、いずれブレイナード理事の去就が注目されることがあるかもしれない。

トランプ政権がFRBの政策に対してどのような認識を持っているのかはいまだはっきりしていない。ただし、現在の正常化路線については否定はしておらず、過度な金融緩和を求めるようなことはせず、ファンダメンタルに即したある程度の金利上昇も容認してくる可能性はある。このあたりが次第にはっきりしてくると、今後のFRBの政策にも影響が出てくる可能性があり、それはつまり日銀の金融政策の行方にも影響を与えてくる可能性がある。


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by nihonkokusai | 2017-02-14 09:28 | 中央銀行 | Comments(0)

2017年に日銀やFRBの人事等で気をつけるべきこと

 2017年の日銀とFRBの金融政策を決める会合のスケジュールを確認してみたい。FOMC後の議長会見は今年も四半期ごとに年4回、3、6、9、12の各月に予定されている。

1月30日(月)・31日(火)、January 31-February 1 (Tuesday-Wednesday)
3月15日(水)・16日(木)、March 14-15 (Tuesday-Wednesday)
4月26日(水)・27日(木)、May 2-3 (Tuesday-Wednesday)
6月15日(木)・16日(金)、June 13-14 (Tuesday-Wednesday)
7月19日(水)・20日(木)、July 25-26 (Tuesday-Wednesday)
9月20日(水)・21日(木)、September 19-20 (Tuesday-Wednesday)
10月30日(月)・31日(火)、October 31-November 1 (Tuesday-Wednesday)
12月20日(水)・21日(木)、December 12-13 (Tuesday-Wednesday)

 FOMCでは7名の理事(現在2名空席)と5名の地区連銀総裁の計12名が投票権を有する。このうち理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任メンバーで、残りのメンバーはその他の地区連銀総裁が輪番制で1年間担当する。

 2017年に投票権を有する地区連銀総裁はエバンス・シカゴ連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、カプラン・ダボス連銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁となる。タカ派とかハト派の区別はさておき、利上げの行方については議長や副議長の意向が強く反映されるとみられ、メンバー構成よりも特にイエレン議長の意向次第とも言えよう。ただし、空席となっている理事2名をトランプ次期大統領が指名してくる可能性があり、その人事次第では金融政策の行方に影響を及ぼす可能性はある。

 日銀についても引き続き、黒田総裁の意向が強く反映されるものとみており、長短金利操作付き量的・質的金融緩和という、まるで戦艦扶桑の艦橋のような政策がうまくいくのかどうかが注目される。

 黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁の任期は2018年3月までとあと1年とちょっとあるが、佐藤審議委員と木内審議委員の二人は今年7月に任期を迎える。この二人は異常な金融政策に対して批判的な見方をしており、2014年10月の量的・質的緩和の拡大、2016年1月のマイナス金利政策、9月の長短金利操作に関して反対票を投じている。これらについては反対票が投じられて当然と私は思うし、また委員会制度をとっている以上はこのような反対意見があってしかるべきと思う。しかし、佐藤委員と木内委員は再任はないとみられ、現状の日銀の金融政策に理解ある人物が政府から指名される可能性が高い。

 これはこれで日銀の金融政策において黒田総裁の意向がさらに強く反映されることになるかもしれないが、すでに日銀の金融政策はいろいろと限界も見えてきていることや、長期金利を取り巻く情勢如何では、方針そのものが微妙に変化してくることも予想される。結果としての出口政策に向けてはむしろ佐藤委員や木内委員の存在は必要とされる可能性があり、ボードメンバーの方向性が妙に一方的になると微妙な舵取りがより難しくなる可能性もある。

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by nihonkokusai | 2017-01-13 10:04 | 中央銀行 | Comments(0)

通貨がいらない国、通貨が多い国、通貨が流出する国

 2016年末現在、マイナス金利政策を導入しているのは日本とユーロ圏、そしてデンマーク、スウェーデン、スイスの中央銀行となっている。このうちデンマークやスウェーデンはキャッシュレス化が急ピッチで進んでいる。これはノルウェーなども同様で北欧諸国の現金通貨流通高はここ数年間が大きく減少している。これらの国に行く際は現金を持つ必要はない反面、クレジットカードなどがないとスウェーデンなどでは地下鉄に乗ることもできない。反対に少額の買い物でもカードで決済が可能となっている。

 現金の流通を減らそうとしているのはこれら国々だけではない。韓国中央銀行は2020年までに硬貨を廃止する計画を立てている。韓国もカード決済システムが確立されているため、現金の決済率は低いそうである。硬貨製造や回収、管理コストなどのコストが軽減されるだけでもそれなりの経済効果が期待されるとか。

 インドでは昨年、突然、高額紙幣が廃止されて大きな混乱を招いた。この処置は、インドでは国内でテロ行為を行っている過激派グループが、紙幣を大量に偽造し活動資金に充てているためとした。また市民の間でも、脱税目的の現金決済が行われているとされる。ただし、モンティ首相はこの措置についてキャッシュレス社会も念頭に置いているようである。

 また欧州中央銀行(ECB)は2018年末で500ユーロの紙幣の発行を停止することを発表している。これらは犯罪に使われることを阻止するためのもので、マネーロンダリングに悪用されているとの懸念が高まっているための措置とされている。ただし。これに対し現金志向が強いドイツで廃止に否定的な意見が強かったようである。

 世界的にキャッシュレス化が進むなかにあって、何故か現金の流通額が増えている国がある。それは日本である。12月に日銀は紙幣流通額が100兆4661億円と過去最高になったと明らかにした。100兆円を突破するのは初めてとなる。世界的にキャッシュレス化が進むなか、何故に日本の現金が増加しているのか。これは日銀のマイナス金利政策が影響しているようである。日銀のマイナス金利政策により金利が下がり運用先が見当たらなくなったことで、お札を銀行等から引き出し、自宅でためこむタンス預金が増えたことが背景にあるとされる。たしかに金庫が売れているとのニュースもあった。これにはマイナンバー制度の影響との指摘もある。

 ただし、日本で現金が増加した背景にはそれだけ円の信用度が高いことも要因となっていよう。インドなどのように偽札が入り込む余地は少ないこともあるが、円そのものへの信認が高く現金で保管しようとのインセンティブが働いているとみられる。日本でキャッシュレス化が進みにくい背景にも円そのものへの信用度の高さがあるのではなかろうか。

 これに対称的な国が中国となる。中国から海外への資金流出が2016年に過去最大になり、流出から流入を差し引いた金額は3千億ドル(約35兆円)超と前の年に比べ6割拡大した(日経新聞)。

 M&Aなど直接投資で流出した面も大きいが、現金の海外持ち出し、地下銀行を通じた違法送金などもあったとされる。ビットコインが一時急騰したが、その取引の9割が中国であった。

 中国当局はHIBORの翌日物金利を大きく上昇させて元の下落を防ごうとしたのは、ヘッジファンドの買い戻しを誘うためとされるが、年が変わると年間外貨両替枠が更新されて、中国からの資金流出が加速される恐れも懸念されていたことへの対処でもあった。

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by nihonkokusai | 2017-01-09 15:47 | 中央銀行 | Comments(0)

中国の短期金利が一時100%となった原因

 昨年の年初の金融市場はリスクオフの動きでスタートした。中国経済の先行き懸念にそれに伴っての原油価格の下落、原油価格の下落による資源国への影響なども意識されて、円高が進むなどリスクオフの動きを強めることとなった。

 そして2017年の相場がスタートして、またもや中国市場がおかしな動きを見せている。1月5日の東京市場の引けあと、ドル円があっさりと116円台を割り込んだ。特に国内の材料が見当たらず、何か起きたのかと思われたが、この背景に中国の人民元の急反発があり、それによってドルが下落し、ドル円も116円を割り込んだという図式であった。

 人民元は昨年10月にIMFの定める特別引き出し権(SDR)に採用された。このあたりからドルに対して下落傾向が続いていた。ドルそのものも12月のFOMCの利上げ観測もあり、上昇しやすい地合のなか、米大統領選挙におけるトランプ氏の勝利を受けて、さらにドル高圧力が強まった。そのトランプ氏は中国を「為替操作国」に指定すると広言しており、中国政府は為替介入という手段が取りづらくなっていた。

 ここに外貨準備の減少も懸念材料となっていた。中国人民銀行が元安の急激な進行を抑えようとドル売り介入を断続的に実施してきた結果、2016年11月末の中国の外貨準備高は3兆516億ドルと14年のピークに比べて1兆ドル近く減少していたのである(日経新聞電子版)。

 これは中国の米国債の保有額の減少要因ともなっており、米財務省が発表している米国債国別保有残高によると昨年10月時点で、これまでトップを走っていた中国を抜いて日本がトップに返り咲いていた。

 介入を行うと外貨準備が減少するが、外貨準備の減少は元安要因ともなりかねない。このため、中国政府は年が変わってから介入ではない手段を講じてきたようである。それは短期金利の操作で、いわゆる短期金利の高め誘導を行ってきた。

 比較的、元を自由売買できる香港短期金融市場で、オフショア人民元の流動性をひっ迫させ、香港銀行間取引金利(HIBOR)の翌日物が前日の16.9%から38.3%へと約1年ぶりの水準に上昇し、午後には100%を超える取引も成立したようである。ちなみに昨年1月にも香港市場で中国国有銀行を通じて、ドル売り元買いの市場介入を行ったことでHIBORが急騰し、翌日物HIBORは12日には60%台に急上昇するという場面もあった。

 今回は外国為替市場での大規模な元買いドル売り介入は見送られているようで、中国の国有銀行などが短期市場への資金供給を絞ったための短期金利の急騰とされる(日経電子版の記事より一部引用)。年が変わると年間外貨両替枠が更新されて、中国からの資金流出が加速される恐れも懸念されていたことへの対処でもあったとみられる。

 HIBORの上昇をみて、ヘッジファンドなど元を売っていた投機筋などが、コストの増加を嫌気して外為市場では元の買い戻しの動きを強めることとなった。人民元が急反発し、その余波で上昇し続けていたBitcoinが急落するなどした。

 ただし、インターバンク市場の流動性ひっ迫は、銀行に深刻な影響を与えかねない。企業や市場などにも影響を与えることで、昨年のような景気減速そのものへの警戒が強まることもありうる。さすがに昨年の二の舞はないと思われるものの、当面の中国人民元の行方も注意する必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2017-01-07 11:28 | 中央銀行 | Comments(0)

トランプ政権とFRBの関係性と今後の米利上げの行方

 12月4日のイタリアの憲法改正の是非を問う国民投票では、予想されていたように憲法改正が否決され、この結果を受けてレンツィ首相は辞任の意向を表明した。しかし、市場はそれほど動揺を見せず、イタリアの銀行への影響は危惧されるものの、イタリアショックへの懸念は後退した。

 同日のオーストリアの大統領選ではリベラル系・緑の党のベレン元党首が僅差で勝利した。トランプ効果により、EU離脱派でもある極右・自由党候補のホーファ氏が勝利する可能性も指摘されていた。しかし、ひとまず極右の流れが欧州にも広まることは避けられた格好となった。

 ユーロに対する警戒が後退したことで、あらためて市場の焦点はFRBの利上げペースに移ってきた。12月2日に発表された11月の米雇用統計で非農業雇用者数は17.8万人と予想を少し下回り、10月分は下方修正されたが、失業率は4.6%と0.3ポイント低下した。この数字であれば、12月13、14日のFOMCで利上げを妨げる要因とはならない。

 市場での12月のFOMCでの利上げ予想はほぼ100%に近い。こうなると利上げしない方がむしろリスク要因ともなりうる。市場はさらに先を読んで2017年のFRBの利上げペースを意識している。

 来年の米国経済が果たしてどうなるのかは不透明感が強い。トランプ氏の経済政策への期待もあってトランプ相場と呼ばれる米長期金利や株式市場、ドルの上昇が起きたが、これにはFRBの利上げ観測も絡んでいる。

 現実に景気が回復し、物価の上昇圧力が強まれば、慎重なFRBも利上げのペースを早める可能性がある。OPECの減産合意による原油価格の上昇も後押し材料となろう。それでも不確実性は残る。

 トランプ政権とFRBとの距離感も良く掴めない。クリントン氏が大統領選で勝利するとクリントン氏と近いブレイナードFRB理事の存在が政権との関係に強く影響するとみられた。しかし、トランプ氏となるとFRBも戸惑っているのではなかろうか。イエレン議長の再任はないといった意見も出ている。今後は空席の理事について指名があるのではないかとみられ、トランプ氏に近い人物のFRB理事就任の可能性もある。

 トランプ氏もアベノミクスのようなリフレ政策を行うとの見方もあるが、物価や景気動向に即した利上げについては容認してくるのではなかろうか。むしろ正常化を進めることによって、米国経済の力強さをアピールしてくることもありうる。

 トランプ政権の金融政策運営についての方針は、はっきりしないものの、日本や欧州の動向なども参考に、少なくとも政府が積極的に金融緩和を促すようなことはしてこないのではないかと思われる。むしろ正常化に向けた利上げ方針を黙認し、FRBも景気物価動向次第の面はあるものの、年複数回の利上げを模索する可能性がある。

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by nihonkokusai | 2016-12-12 10:03 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBの時間稼ぎの政策と日米欧の長期金利の行方

 12月8日のECB理事会では、政策金利は据え置いた。すでにこれ以上のマイナス金利の深掘りをしないことを表明しており、市場は資産買入の行方に注目していた。これまでの会合では買い入れ国債の不足についても時間をかけて討議されており、国債が不足した場合にどう対処すべきかといったことについても話し合われていた。しかし、ここで資産買入の3月末での終了を宣言するわけにもいかなかった。

 デフレ観測は後退しているものの、イタリアの政治情勢への不透明感やイタリアやドイツの銀行に対する不安、さらには欧州でのポピュリズムや極右の台頭への懸念等もあり、ECBとしてもなかなか異常な緩和策から簡単に出口を模索できる状況でもない。ECBとしては時間稼ぎの策を打って出ざるを得なかった。

 そのためのECBは国債の買い入れの範囲を拡げることを検討したようである。必要な範囲で中銀預金金利を下回る利回り水準の国債も買い入れることや、買入銘柄の残存期間を2年以上から1年以上にするなど、いわば日銀が昨年12月に行った補完措置のようなことを行った。

 これにより国債の買い入れ余地を拡げたが、問題はその期間と月ごとの買い入れる量となった。日銀と違ってECBは年間で買い入れる額ではなく、FRBのように月々に買い入れる額を目標値に置いている。ドラギ総裁は月額800億ユーロの買い入れを半年間継続するという選択肢もあったことを示した。800億円を6か月延長するか、600億円に減額して9か月延長するのかの二択となったのかと思ったが、実際にはそうではなかったようである。

 ロイターによるとECBのスタッフは月額800億ユーロの買い入れを半年間継続する案を出していたが、ドラギ総裁はこの案では過半数の賛同を得られないと認識していたようである。そのためスタッフは月額600億ユーロで1年延長を提案。だがドイツなどタカ派は600億ユーロで6か月延長を主張し、その中間となる9か月延長が決まったそうである。まるで売り手と買い手の値段交渉の結果の妥協点みたいなことが行われていたようである。

 買入対象を拡げたこともあり、ある程度の買入枠は確保でき、より時間を稼ぐことができる。さらに月ごとの買入は「減額」を行うことで反対派の主張を盛り込んだ上、全体の買入額は当初のスタッフ案も上回るという摩訶不思議な結果となった。

 欧州の債券市場はこの減額に反応し国債は売られたが、本来であれば追加緩和であるはずの今回のECBの措置に対して、材料出尽くしというよりも、金融緩和の限界も感じ取った動きとも言えまいか。今後、欧米の長期金利はFRBの利上げペースを見定めながらどこまで戻れるのか試してくることが予想される。

 この欧米の長期金利の上昇は日本にも波及し、9日の10年債利回りは0.060%、20年債利回りは0.555%、30年債利回りは0.700%に上昇した。日銀は10時10分に日銀の国債買入をオファーしたが通常の買入であり、一部に期待もあったようである指し値オペではなかった。

 10年債利回りを日銀はゼロ近傍に誘導するとしているが、下限がマイナス0.1%あたりであれば上限はプラス0.1%あたりと予想され、そこまでの上昇とはなっていない。日銀が警戒するのはひとまず10年債利回りでプラス0.1%以上ではなかろうか。超長期債の利回り上昇に対して、超長期債の指し値オペも行うことがあるのか。操作対象が短期金利と長期金利としているだけに、超長期の金利までも操作してくるのかはなかなか興味深いところでもある。いずれにしても日本の長期金利の上昇は欧米の長期金利の上昇と比較すれば、ゆっくりとしたものとならざるを得ない。この意味では日銀のイールドカーブコントロールは今のところ効いているという見方もできる。

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by nihonkokusai | 2016-12-11 11:04 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBは資産買入額を減らして延長、これはテーパリングに向けた布石か

 12月8日にECBの金融政策を決定する政策理事会が開かれた。市場の注目はどちらかといえば、12月13、14日に開かれるFOMCに向けられているものの、ECBの動向にも注意が必要となる。今回、ECBは何月間800億ユーロの資産買入を2017年3月まで続けるとした資産買い入れプログラムの期間を延長し2017年末まで延長し、毎月の債券購入額は来年4月以降、600億ユーロに減らすと発表した。さらに必要な範囲で中銀預金金利を下回る利回り水準の国債も買い入れることも発表された。

 これまでの会合では買い入れ国債の不足についても時間をかけて討議されており、国債が不足した場合にどう対処すべきかといったことについても話し合われていた。すぐに買入れる国債が枯渇するわけではないが、大規模な買入を継続している限り、いずれその買入に限界がやってくることも確かである。そもそもその買入が本当に必要なものなのか、さらにはそれでどのような効果があるのかといった疑問もある。

 これについては日銀も検証を行っており、その結果として9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定した。これは国債の買い入れについて減額を含めての調整の余地を残したものである。

 表だっての指摘はないものの、この日欧の異常な金融緩和策については、その買い入れる量の限界だけでなく効果そのものも疑問視されている。ただし、為替市場などへの影響を考慮すると効果がないようなので止めますとも言えない。このためECBとしても資産買い入れプログラムの期間を延長した格好となった。

 しかし、米国ではトランプ氏の登場もあって経済への回復期待とともに物価の上昇への期待も強まっている。また原油価格も底を打ったような格好となり、これも物価には上昇要因となる。欧州でも一時あったデフレ懸念がやや後退しつつある。

 イタリアの政治情勢への不透明感やイタリアやドイツの銀行に対する不安、さらには欧州でのポピュリズムや極右の台頭への懸念等もあり、ECBとしてもなかなか異常な緩和策から簡単に出口を模索できる状況でもないようにみえる。それでも金融市場は極度の金融緩和依存症からは少しずつではあるが回復しつつある。

 日銀は前を向いた格好ながら歩みを止めた格好となった。ECBも今回は時間稼ぎの政策に出た。今後の景気や物価の予想次第では、今後の資産買入の調整もありうる(今回、あくまで増額の方向での修正の可能性も示唆された)。つまり日銀のように増加の可能性を強調しながらも、いずれはテーパリングの余地を探ることも予想される。

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by nihonkokusai | 2016-12-09 10:02 | 中央銀行 | Comments(0)

トランプ相場をきっかけに、異常な低金利からの脱却はありうるのか

 米大統領選挙におけるトランプ氏の予想外の勝利によって、ドルが買われ、米国株式市場ではダウ平均などが過去最高値を更新するなど、いわゆるトランプ・ラリーが起きた(ラリーとは株価などが上昇しやすい現象のこと)。このトランプ・ラリーの象徴するのが米長期金利の上昇となる。

 米国の長期金利は今年7月に1.3%台まで低下後、英国のEU離脱によるショックが一時的に止まったことなどからじりじりと上昇してきた。それがトランプ氏が次期大統領に選出されたことによって、上昇ピッチが加速して、米10年債利回りは節目とされた2.35%もあっさり抜けてきた。2.5%が次の節目となるが、このまま3%に向けて上昇してくる可能性もありうる。

 この米長期金利の上昇要因としては、トランプ氏の打ち出す減税や規制緩和などによる米経済回復への期待、原油価格の上昇も相まっての物価上昇予想がある。また財政赤字拡大の懸念も米国債の売り(長期金利の上昇)要因となっている。

 しかし、それ以前に世界的に金利は上昇局面に変化しつつあることの見方もできる。米国の長期金利上昇の背景には、12月のFOMCの利上げ観測も当然ある(市場の予想はなぜか100%を超えている)。FRBは昨年12月に利上げを行い正常化に向けて一歩進めた。ところが今年の年初からの原油価格の下落や、その要因ともなった新興国経済への不安感により、金融市場のリスク回避の動きによって、米長期金利は上昇どころか低下した。さらに今度は英国の国民投票によるEU離脱決定という事態が起きて、ここでリスク回避の動きがピークアウトする。

 英国のEU離脱による金融市場でのリスク回避の動きが一過性のものとなったことで、米長期金利の反発がスタートした。これは原油価格の上昇ともリンクしていた。しかし、この原油価格はWTI先物で節目の50ドルがいったんの上限となった。OPECでの減産合意に不透明感が強まり、原油先物は下落したのである。ところが30日のOPEC総会での最終的な減産合意となったことで、米長期金利の重しとなっていた原油先物も上昇し、米長期金利もあらためて上昇した。

 長期金利の上昇は米国にとどまらず、英国やドイツの長期金利も同様に上昇してきている。英国債は米国債の動きに連動しやすい面もあるが、この欧米の長期金利の上昇は、これまで次々に襲ってきた世界的な経済金融のリスクからの脱却を意味するものではないかと思われる。異常ともされた日米欧の金融緩和に対して、すでに市場も違和感を覚えつつある。いつまでこのような政策を中央銀行は続けるつもりなのかと。

 米国はあらためて正常化に向けた道筋を歩むとみられ、イングランド銀行もいずれ方向を変えてくることも予想される。しかし、日銀とECBは向きを変えることすら困難なところに自ら追い込んでしまっている。見えないかたちで国債の買い入れ額を縮小するというステルス・テーパリングがせいぜいではないかとみられる。日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和はそれを可能とさせた。ECBも国債買入期間を延長する変わりに買入額を減少させるのではとの観測もある。いずれにしても国債買入にはすでに限界が近いことも確かである。

 日本の長期金利もさすがに上昇したといっても、やっとプラスになった程度である。この日米の長期金利の上昇ピッチの違いも円安ドル高の要因とされており、これは日銀の意図したところかもしれない。しかし、原油価格の上昇は日本の物価にも跳ね返ってくる。果たして日銀はいつまで長期金利を抑えるつもりなのか。日銀はそのような技術的な操作などよりも、出口を意識した政策にそろそろ頭を切り換える必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-12-04 12:27 | 中央銀行 | Comments(0)

12月の米利上げの観測強まるが大統領選の結果次第とも

 11月1日、2日に開催されたFOMCでは賛成多数で現在の金融政策の維持を決定した。カンザスシティー連銀のジョージ総裁と クリーブランド連銀のメスター総裁が利上げを主張し反対票を投じたが、前回反対票を投じたボストン連銀のローゼングレン総裁は賛成に回った。

 今回の声明文では「委員会はFF金利を引き上げる根拠は引き続き強まったと判断するが、当面は目標に向けて続く進展に関するさらにいくらかの証拠を待つことに決めた」とした。また、「インフレ率は今年の初めからやや上昇した」としたほか、目先はインフレ率が低い水準にとどまるとした従来の文言を削除した(ロイター)。

 これにより12月のFOMCで利上げの可能性が高まった。4日に発表された10月の米雇用統計で非農業雇用者数は前月比16.1万人増と予想の17万人程度を下回った。しかし、前月の数字がは19.1人増と速報値の15.6万人増から上方修正されたこともあり、市場のコンセンサスは12月の利上げとなっている。

 ただし、ここにきて米大統領選挙の行方に不透明感が強まった。クリントン候補のメール問題が再燃し、トランプ候補との支持率が接近している。万が一にもトランプ候補が勝つようなことになると金融市場は波乱含みの展開となろう。その際にはいったん利上げ観測が後退するとみられる。

 ただしクリントン候補が勝てば、不透明要因はいったん後退し市場は歓迎するとみられる。FRBにとっても利上げできる環境が整うことになる。しかしひとつ気になる点は、クリントン氏が大統領となった際の財務長官候補とされるブレイナードFRB理事の存在か。利上げにむけて慎重派とされるブレイナード理事が、12月のFOMCで利上げに賛成してくるのかどうかも焦点となりそうである。

 11月2日、3日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)も開催された。こちらも予想通りの現状維持となったが、2017年のインフレ率見通しを大きく引き上げるなど、ポンド安による物価上昇をかなり意識したものとなった。8月には国民投票でのEU離脱選択の影響を懸念し利下げを決定したが、その際に示した追加利下げの公算に関するガイダンスを無効とした。

 カーニー総裁は決定発表後の記者会見で「インフレ目標への持続的な回復を確保するため、金融政策は景気見通しの変化に応じいずれの方向にも動き得る」とし、「今後の政策に関するバイアスは中立だ」と述べた(ブルームバーグ)。

 一時大きく売られた英国の通貨のポンドではあったが、ここにきて底打ち感も出ている。3日に英国のEU離脱手続き開始に議会承認が必要との司法判断等を受けて、外為市場でポンドは上昇した。ポンド・ドルのチャートからはいったん戻りを試すような動きにもみえる。それでも水準自体はかなり低いところにある。

 イングランド銀行はEU離脱による金融経済への影響よりも、物価動向を見据えた金融政策に舵を取った。日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」も実質的には追加緩和に向けたバイアスを修正したともいえる。日米欧の中央銀行の金融政策のバイアスは緩和方向から中立もしくは引き締めにむけて方向が変わりつつあることも確かである。

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by nihonkokusai | 2016-11-05 10:52 | 中央銀行 | Comments(0)

今週、日欧米の中央銀行はどう動くのか

 「今週、日欧米の中央銀行はどう動くか」というタイトルにはしたものの、31日から11月1日にかけて開催される日銀金融政策決定会合、1日から2日のFOMC、2日から3日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、金融政策はそれぞれ現状維持が予想されている。つまり動く気配はいまのところない。

 31日から11月1日の日銀金融政策決定会合では、9月の会合で決定した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の新しい枠組みの導入の効果を見定めたいとして、現状維持を決定するとみられる。

 ただし、同時に公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、物価の見通しの下方修正が予想されている。このため、物価目標の達成時期について「2017年度中」から「2018年度以降」に先送りされるとみられている。それでも追加緩和期待が強まるようなことは考えづらい。日銀と市場との対話がうまくいっているというよりも、追加緩和の意味やその効果について市場参加者も疑問を抱くようになっているためと思われる。

 1日から2日にかけてのFOMCも金融政策は現状維持が予想されている。市場では9月のFOMC時に比べて追加緩和期待が強まっている。しかし大統領選挙前でもあり、議長会見もない今回のFOMCでの利上げ決定の可能性は薄い。市場参加者の多くは12月のFOMCでの利上げを予想している。

 ところが、ここにきて大統領選挙のクリントン候補が、国務長官時代に私的な電子メール・サーバーを使っていた問題が再燃するなど、あと一週間ちょっとに迫った大統領選挙に不透明要素が加わってきた。それでもクリントン氏優位に変わりはないと思われるが、FRBとしても大統領選挙の結果を確認してから利上げを検討したいのではなかろうか。

 そして、2日から3日にかけて開催されるイングランド銀行のMPCであるが、こちらも金融政策の現状維持が予想されている。英国のEU離脱による影響も危惧されていたが、先日発表された英国の7~9月GDPは前期比プラス0.5%と予想を上回る伸びとなるなど、景気への影響は限定的であった。これに加えてポンド安に伴う物価の上昇もあり、イングランド銀行の追加緩和観測は急速に後退した。

 むしろイングランド銀行で注目されつつあるのが、カーニー総裁の去就となっていた。カーニー総裁はこれまで、就任当初の計画である2018年に退任するか、総裁として通常の8年間の任期を全うして2021年まで在任するか、年末までに決定すると述べてきた。

 そして31日、カーニー総裁がイギリスのハモンド財務相に宛てた書簡の中で、再来年6月までとなっていたみずからの任期を1年延長して、2019年6月まで総裁を務める考えを明らかにし、財務相もこれを了承したと、イングランド銀行が発表した(NHK)。

 カーニー総裁は同氏をカナダから招聘したオズボーン前財務相との関係が緊密で、メイ現政権とは距離がある。そのメイ首相は低金利など金融緩和策には「悪い副作用がある」と批判するなど、現在のイングランド銀行の金融政策に不満を抱いている。このためカーニー氏が2018年に退任するのではとの観測もあった。それはなかったものの、総裁として通常の8年間の任期を全うして2021年まで在任するかどうかまでははっきりしてはいない。

 今後イングランド銀行が物価の動向など考慮して、金融政策の舵取りの方向を変える可能性はないわけではない。その意味ではメイ首相の意向に沿った方向に向かうこともありうる。なかなか難しい立場にあるカーニー総裁が、今週のMPC後の会見で今後の金融政策に対して、どのような認識を示すのかも注目したい。

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by nihonkokusai | 2016-11-01 09:59 | 中央銀行 | Comments(0)
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