牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:中央銀行( 222 )

ECBのテーパリング観測は異常な金融緩和策の終焉を示唆か」

 ECBは恐らく量的緩和の期間終了前に段階的に買い入れを減らし、月100億ユーロずつペースを落としていく可能性がある。ユーロ圏の複数の中央銀行当局者が明らかにしたとブルームバーグが伝えた。

 やや唐突感のある記事ではあるが、火のないところに煙りは立たない。ユーロ圏の複数の中央銀行当局者がこのような認識を持っているとしてもおかしくはない。もちろんそれは量的緩和導入時に反対の意向を表明していたドイツなどの中央銀行当局者であろう。

 ただし「一方で、現時点での終了時期となっている2017年3月以降も月800億ユーロの現行ペースで量的緩和を延長する可能性も依然排除されていない」ともしており、ECB内ではドラギ総裁を中心とした積極緩和派とドイツなどを中心とした慎重派の勢力争いとなっていることも伺える。

 9月8日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定した。量的緩和を延長するのではないかとの市場の観測もあったが、ドラギ総裁は会見で「資産買入れ策の期限延長について議論しなかったと説明」した上で、「資産買入れの円滑な実施を確実にするための選択肢を検討するよう指示した」とも伝えられた。

 この選択肢については日銀同様にECBも大規模な資産買入を継続することが次第に困難になりつつあり、日銀が昨年12月の決定した補完措置のようなことを行い、少しでも資産買入を継続出来る施策を練るのではないかとみていたが、どうやらその選択肢にはテーパリング(月額買入額の縮小)も入っていた可能性がある。

 ECBは当然ながら、今年に入ってからの日銀のマイナス金利の導入から、9月21日の決定会合で導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に至る経緯は分析していたとみられる。日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は量の限界とマイナス金利の副作用を意識した政策とも取れることで、同様の政策を行っているECBにはおおいに参考になろう。

 それとともに、日銀は結果としてテーパリングを意図しているのではないかとの見方も当然出てくる。しかも日本の金融市場はこれに対して動揺は示していない(あくまでいまのところではあるが)。これを見てECBも出口を見据えた政策を取る可能性も意識しはじめたのかもしれない(勝手な想像ではあるが)。実際にECBがテーパリングを行うには、欧州の金融市場に対して事前に織り込ませることも必要であり、今回はその一環となっている可能性もないとはいえない。

 日米欧の中央銀行がこれほど大胆というか異常なまでの金融政策をなぜ行わなければいけなかったのか。その主目的はデフレ脱却とかではなかったはずである。百年に一度という金融経済危機という有事に対する政策であった。しかし、そのリスクはかなり後退している。

 いまなおその政策を継続もしくは拡大しているのは、デフレ脱却のためとかに置き換えられてしまっている。しかし、市場心理を改善するには有効であったかもしれない異常な金融緩和は、物価に対してはそれほど効果的ではなかったという実験結果も明らかにしてしまった。これからは困難とみられている出口政策にそっと道筋をつける事も重要であり、それを多少なりECBも意識しはじめているのかもしれない。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-10-06 09:36 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBが9月21日に利上げをしなかった理由

 28日にFRBのイエレン議長は下院金融委員会の公聴会で証言し、「ことしの就業者の数は毎月、平均して18万人のペースで増えている」と述べ、「決まったタイムテーブルはない」としながら、「金融政策を決める会合の参加者のほとんどが、今の経済の状況が続けば年内に追加の利上げを行うことが適切だと考えている」と述べた。

 9月21日のFOMCでは賛成7人、反対3人で金融政策の現状維持が決定された。市場では利上げがあるとすれば9月の会合より12月の会合でとの見方が強かったことで、想定通りとの見方もできるかもしれない。しかし、仮に年内利上げを模索しているのであれば、タイミングは12月より9月のほうがやりやすいのではないかと個人的にはみていた。

 21日の会見でイエレン議長は今回の利上げの見送りについて、雇用最大化と2%の物価目標という使命の達成に向けて「さらなる証拠を待つことを選択した」ためとした。かなり慎重な姿勢を見せていたものの、「利上げの条件は整ってきた」との表現にはかわりなく、なぜ利上げを見送ったのかが具体的にはわからない。経済にはもう少し改善の余地があると指摘してしまうと今後発表される経済指標がよほど回復を見せない限り、年内利上げはむしろ厳しくなるのではなかろうか。

 21日のFOMCで反対票を投じたひとり、カンザスシティー連銀のジョージ総裁は28日、FRBが後になって急激な利上げをしなくてすむためにも、今緩やかに利上げすることが望ましいとの認識を示した。

 28日のイエレン議長も「経済の過熱を容認すれば、金融当局が望むよりも速いペースで利上げせざるを得なくなる可能性がある」とも発言し、ジョージ総裁と同様の認識であることがわかる。

 それではなぜ9月21日のFOMCでは利上げに踏み込めなかったのか。イエレン議長、フッシャー副議長、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁などが利上げに向けた地均し的な発言もFOMCの前にあっただけに疑問である。ただし、それでも市場の利上げに向けた織り込み度合いがあまり上がらなかったことも事実である。ブラックアウト期間直前に、ブレイナード理事から利上げに向けた慎重発言も出ていた。

 FRBがみているのは経済指標ということになってはいるが、市場の利上げ織り込み度合いとともに、影響力が強まっているとされるブレイナード理事などの反対派が抑えられるのか、そのあたりもキーになるかもしれない。11月と12月のFOMCは米大統領選挙を挟む。イエレン議長は否定しているが、政治の情勢が少なからず影響するであろうことも確かではなかろうか。その意味でもブレイナード理事の存在なども意識しておく必要があるのかもしれない。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-09-30 09:56 | 中央銀行 | Comments(0)

ブレイナードFRB理事のスタンスはブレず、それでも9月の米利上げの可能性はある

 FRBのブレイナード理事は12日のシカゴでの講演で「米経済は成長力が鈍化しており、金融引き締めは慎重さが求められる」と述べた。利上げの是非は「数か月先までのデータをみて判断したい」として、次回会合での決断は時期尚早との見方を示した(日経電子版)。

 13日から1週間は金融政策の情報発信を控えるいわゆる「ブラックアウト期間」に入ることで、このブレイナード理事の発言内容が注目されていた。いわゆるハト派であり、これまでもFRBの利上げについては慎重な発言を繰り返していた。そのブレイナード理事が、早期利上げを示唆するようなことになると9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性が一気に高まるとの見方もあったが、ブレイナード理事のスタンスはブレてはいなかった。

 イエレン議長、フッシャー副議長、さらにニューヨーク連銀のダドリー総裁はそれぞれ補完しあうかたちで、早期利上げの可能性を織り込ませようとしていた。それに対して今回のブレイナード理事が早期利上げに対して慎重姿勢をあらためて示し、またそれに先だってタルーロ理事もやはり慎重な姿勢をみせていた。

 タルーロ理事はインタビューで「私の見解では、講じる措置の内容にかかわらず、現時点で最も望ましいのはインフレ率の上昇が続き、目標に近い水準を維持するという実際の証拠を目にすることだ」と指摘した(ブルームバーグ)。

 ブレイナード理事の発言を受けて、市場では20、21日のFOMCでの利上げ予測は大きく低下した。しかし、利上げの可能性は依然として高いと個人的には見ている。ブレイナード理事は昨年12月のFOMCで利上げを決定した2週間前に「利上げには慎重を期し、実施するときにはゆっくりとしたペースで進めるべき」と発言しており、そのスタンスにブレはない。

 ブレイナード理事は民主党の大統領候補のクリントン氏にも近いとされており、クリントン氏が大統領となった際には財務長官の候補の一人ともされている。FRBの建物内では意図的なものがあったのかどうかはわからないが、ブレイナード理事の部屋はイエレン議長の部屋の隣だそうである。それだけの権力を持っているのではとの見方があり、だからこそ今回のブレイナード理事の講演内容が注目された面もあった。

 クリントン候補が大統領に選出されると、さらにブレイナード理事の存在感を強めることとなり、12月のFOMCでの追加利上げは9月に比べると不安定要素が多くやりづらくなることも予想される。

 共和党のトランプ候補は12日のインタビューでFRBがオバマ政権の意向に沿って政策金利を低く維持しているなどと述べ、FRBを批判したそうである。もしトランプ氏が大統領になった場合に、あらためてFRBに対する圧力を強めることも予想される。

 FRBの正常化路線はまだ道半ばであるが、年内少なくともあと一回の利上げを行いたいのであれば、そのタイミングとしては12月よりも9月20、21日の方がやりやすい。また物価が上がりにくい環境となっていることもあり、慎重になればなるほど先々で利上げがしにくくなることも予想される。正常化路線としてのFRBの利上げは、まさに今でしょうということになるのではないかと私は思っている。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-09-14 09:48 | 中央銀行 | Comments(0)

米雇用統計受けても米9月利上げの見方は維持

 9月2日に発表された8月の米雇用統計では、非農業雇用者数は15.1万人増と予想の18万人程度を下回った。過去3カ月の平均は23.2万人増となる。8月の失業率は4.9%で前月と変わらず、平均時給の伸び率は前年比で2.4%増、7月は2.7%増となった。

 これを受けて米国市場でのとらえ方はまちまちとなっていた。非農業雇用者数の数字が市場予想を下回り、失業率は低下せずに横ばい、賃金の伸びは鈍化したことで、これは9月20、21日のFOMCの利上げを見送る理由となりうるため、利上げは先送りされるとの見方がある。

 しかしこの見方に対しては異を唱えたい。そもそもここにきてのFRBの施行部の発言からは利上げに向けてかなり前向きの発言をしていた。それにも関わらず本心は利上げはしたくないとの見方に対してはかなり懐疑的である。むろんこれで利上げ慎重派の、ブレイナード理事、タルーロ理事が利上げに向けて異を唱える可能性はあるかもしれないが、全体の勢力分布から言えば少数派となる。ただし、仮に11月の大統領選挙でクリントン氏が大統領に選出されると財務長官候補ともされているブレイナード理事の発言力が大きくなる可能性はある。

 イエレン議長が想定していたであろう正常化への道筋はまだ道半ばである。しかし、追加利上げに関しては、英国のEU離脱というイベントショックがあったことで6月、7月は見送らざるを得なかったとの見方ができる。市場での利上げ観測が急速に後退してしまったことを危惧し、執行部のイエレン議長、フッシャー副議長、ダドリー総裁がお互いカバーし合うようにして、市場に早期利上げの可能性をあらためて織り込ませようとしていた。

 9月の利上げを執行部が想定しているとすれば、今回の8月の単独の雇用統計の数字だけで、そのスケジュールを変更してくることは考えづらい。仮に極端に数字が低かった際には、その要因を掴むまで利上げは先送りされる可能性もなくはないが、過去3カ月の平均が20万人を超えている今回の数字程度では揺るがないとみている。

 6月と7月のFOMCでの利上げの見送り、先送りの要因はイベントリスクといえるものであった。これはたとえば2000年7月17日の金融政策決定会合でゼロ金利政策を解除しようしとした日銀が7月12日に大手デパートのそごうが民事再生法を申請したことで解除が見送られたことに類似している。日銀は8月11日の決定会合においてゼロ金利政策を解除している。FRBの正常化への道筋に変化がない限りは、9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性は高いとみている。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-09-06 09:46 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの追加利上げは2007年の日銀の追加利上げも参考に

 FRBのイエレン議長やフィッシャー副議長、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言から、年内の利上げ観測が高まりつつある。9月の可能性についてもやっと市場は意識し始めた。それでもまだ利上げはないと見ている向きも多い。金融政策の正常化は如何に難しいことなのかが、これからもわかる。

 金融政策の正常化としては日銀に先例がある。2006年3月の量的緩和政策の解除と同年7月のゼロ金利政策の解除、そして2007年2月の追加利上げの決定である。

 FRBはこの正常化に向けてかなり慎重に事を運んできた。2013年6月19日のFOMC後の記者会見において、当時のバーナンキ議長は、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べた。これをきっかけに米国の株式や債券が大きく下落し、これは「バーナンキ・ショック」と呼ばれた。これでFRBがさらに慎重になった可能性もあるが、それでも正常化路線を進めるため、この年の12月のFOMCでテーパリングの開始が決定された。

 テーパリングが終了したのが2014年10月となった。次のゼロ金利解除まではさらに時間を要し、利上げが決定されたのは2015年12月である。このあたりの時間の置き方を見ても、日銀の量的緩和とゼロ金利の解除に比べてかなり慎重となっていたことがわかる。これもあって次の利上げは少なくとも半年程度の時間を置くであろうとみられたが、結局は半年以上経っても次の利上げは見送られていた。しかし、正常化路線は放棄されていたわけではなく、あくまでタイミングを見計らっていたことも確かであろう。

 日銀が2007年2月に追加利上げを決定した際に、執行部の一人であった岩田副総裁が反対票を投じていた。総裁と副総裁の票が割れることはイングランド銀行はさておき、日銀で起きたのはこれが最初で最後であった。

 8月のワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの記事に使われた写真で印象的であったのが、イエレン議長を挟んでダドリー総裁とフィッシャー副議長が揃って談笑している姿であった。

 これは2007年2月の追加利上げで執行部が一枚岩となれなかったことの反省を生かして、FRBの執行部が利上げに向けて一枚岩であることを象徴したいがための写真であったとするのは考えすぎかもしれない。しかし、FRBの執行部の方向性は同じであることを強調していることも確かである。それを各連銀総裁もフォローしている。ただし、もうひとりのキーパーソンとなっているブレイナード理事からのコメントはいまのところあまり表に出ていない。

 あくまでFRBは足元の経済指標を確認して利上げを検討するというスタンスではあるが、少なくとも利上げが前提にあることも確かで、9月2日に発表される米8月の雇用統計がよほど悪化することがなければ、執行部を中心に9月のFOMCでの利上げ決定にむけて歩を進めると思われる。しかし問題はその次かもしれない。日銀は2007年2月が追加利上げの最後となってしまった。2007年8月にパリバ・ショック、そして2008年9月にはリーマン・ショックが起きている。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-09-01 10:02 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの9月利上げに向けた布石

 26日のイエレンFRB議長の講演内容が注目されていたが、市場はイエレン議長よりもむしろフィッシャー副議長のコメントに反応していたように思われる。 

 イエレン議長は「引き続き堅調な雇用市場の情勢や経済活動とインフレに関するわれわれの見通しを踏まえ、フェデラルファンド(FF)金利引き上げの論拠はここ数か月で補強されたと思う」と述べた。「われわれの判断は常に、今後入手されるデータが引き続き(FRBの)見通しをどの程度裏付けるかにかかっている」ともコメントした(WSJ)。 

 つまり9月2日に発表される8月の米雇用統計が予想以上の悪化を見せることがない限りは、9月20、21日のFOMCでの利上げの可能性を意識させるものとなる。ただし、イエレン議長からは利上げの具体的な時期への言及はなかった。このためこの発言で市場参加者が9月に利上げかとの認識をそれほど強めさせるものとはならなかった。 

 これに対してもう少し具体的な時期のコメントをしたのが、誰あろうフッシャー副議長であった。 

 イエレン議長の講演後、フィッシャー副議長はインタビューに答える格好で、9月に利上げが実施され、年内に複数回の利上げがあると予期すべきかとの質問に対し、「イエレン議長がこの日の講演で述べたことは、この2つの質問に対し「イエス」と答えることと整合性が取れている」と語ったそうである。ただ、こうしたことは経済指標次第となるとの見方も示した(ロイター)。 

 つまりフィッシャー副議長が市場に向けて、9月の利上げに向けた準備をすべきとの示唆であるようにも受け取れる。 

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は8月16日のインタビューで、追加利上げが適切となる時期にじわじわと近づいていると述べ、9月20、21日の会合で利上げを決定する可能性はありうると指摘した。 

 FRBのフィッシャー副議長は8月21日、コロラド州のアスペン研究所での講演において、米経済が既に金融当局の掲げる目標の達成に近づいており、成長が今後勢いを増すだろうと述べ、これまでの姿勢に変化がないことをあらためて示した。これは少なくとも年内1回の利上げの可能性を示唆したものと受け止められた。ただし、ここではむしろ具体的な時期の言及は手控えていた。そのフィッシャー副議長が今度は具体的な時期について言及してきたのである。 

 過去にはFRB高官が市場の金融政策の変更についての観測を過度に強めさせないようにと、ハト派に対してタカ派的なコメントをするなど役割分担をしていた。しかし、今回は市場が追加利上げはハードルが高いと認識してしまっているため、それぞれのコメントで補完しあいながら、少しでもそのハードルを低くさせよう意図が見え隠れしているように思われる。 

 正常化路線を維持している限り、6月、7月には追加利上げが見送られるなど、多少スケジュールの狂いはあっても、次の一手はやはり年内の利上げであろう。そうなるとFRBの利上げのタイミングとしては大統領選後の12月や議長会見のない11月とかではなく、9月に置いていると予想せざるを得ない。


[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-30 09:41 | 中央銀行 | Comments(0)

ジャクソンホールが注目される理由

 8月25日から27日にかけて米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは市場参加者にとり大きな注目材料となっている。


 ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。


 これには著名学者などとともに、日銀の黒田総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。


 なぜこのようなシンポジウムが、ワイオミング州ジャクソンホールという小さな街で行なわれるかといえば、FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街を良く訪れていたお気に入りの場所であったからという説がある。


 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったとされている。


 1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(当時、のちのFRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。


 さらに2010年8月27日にはバーナンキ議長(当時)がQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。このシンポジウムに出席していた白川日銀総裁(当時)は予定を1日に早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定している。


 ジャクソンホールでの発言が今後の金融政策の方向性を示唆することがあるのに対し、ここでの発言があまりに注目されるためもあって、本来なら出席してしかるべき人が今後の金融政策の方向性の言質を取られないようにするためなのか出席しないケースも多くみられた。


 今年のジャクソンホールには、昨年は欠席したイエレン議長は出席し、講演も予定されている。日銀の黒田総裁も出席するようである。


 今回のイエレン議長の講演では、先日のフィッシャー副議長のように米経済が既に金融当局の掲げる目標の達成に近づいており、成長が今後勢いを増すだろうと述べ、これまでの姿勢に変化がないことをあらためて示すものと予想される。ニューヨーク連銀のダドリー総裁のように9月20、21日のFOMCで利上げを決定する可能性はありうると指摘するようなことはないとみられるが、9月の可能性も否定はしないとみられる(ただし質疑応答は予定されていない模様)。


 黒田総裁からはどのようなかたちでコメントが伝わるのかはわからない。総括的な検証が公表されるのが9月20、21日の金融政策決定会合においてとみられるが、いまのところ総括の内容はまったくわからない状態となっている。その進展について黒田総裁に連絡は伝わっているとしても、まだまとめている最中ではないかとみられる。日程からみて総裁・副総裁あたりには来月に入ってから叩き台が示されて、それを修正後、今度は政策委員にも示されここでも協議が進められるのではなかろうか。これもあくまで推測ではあるが、そうとなればいま黒田総裁が総括の内容を持ってジャクソンホールに向かうことは考えられない。このため追加緩和を含めて、黒田総裁から発せられるコメントはこれまでの延長線上にあるものと予想される。



[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-26 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの9月利上げに意外性はない

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は16日のインタビューで、追加利上げが適切となる時期にじわじわと近づいていると述べ、9月20、21日の会合で利上げを決定する可能性はありうると指摘した(ブルームバーグ)。

 アトランタ連銀のロックハート総裁も16日の講演で、「現段階でいかなる政策の立場にもとらわれていないが、経済に対する私の自信が正当化されるのであれば、年内に少なくとも1回の政策金利引き上げが適切になるかもしれないと考える」と述べた(ブルームバーグ)。

 ここで注目すべきは執行部の一人でもあるダドリー総裁の発言であろう。ハト派とされているはずのダドリー総裁の今回の利上げに向けた発言の背景には当然ながら、正常化路線を進めようとしているイエレン議長がいると思われる。

 米国市場では5日に発表された7月の米雇用統計の内容が良かったことで、年内利上げ観測が強まった。しかし、それも9月ではなく12月との見方の方が多いし、年内利上げは難しいとの見方も依然として存在している。こにきて米国の株価指数は過去最高値を更新しており、米長期金利は低位で安定している。そこに市場参加者にとってサプライズ的に9月に利上げを決定すると、その反動は大きくなる懸念がある。そこで9月の利上げに向けて、あらためて地均しを始めたと私は見ている。

 しかもそのタイミングが7月のFOMC議事要旨の発表前というのもなかなか興味深い。昨年12月のFRBの利上げ以降、次の利上げのターゲットは6月と見ていた向きは多かったのではなかろうか。イエレン議長のシナリオも仮にそうであったとしたら、6月は予定通りに利上げを見送ったのではなく、想定外の事情により見送らざるをえなかったとの見方ができる。その想定外の出来事とは英国のEU離脱であった。

 6月のFOMCは国民投票前ではあったが、世論調査で離脱観測が強まり市場は動揺していた。ここでの利上げ決定は見送らざるを得なかった。7月のFOMCでは実際に英国のEU離脱が決まり、それによる影響を見極める必要があり、ここでも利上げは見送られた。

 16日に公表される7月のFOMCの議事要旨の内容は、市場からはある程度利上げに慎重と捉えられる可能性があった。実際に公表された議事要旨では、完全雇用に近い状態だとして利上げを進めても問題ないとの指摘がある一方、追加引き上げを遅らせるのが望ましいとの意見があるなど意見が割れていた。利上げを見送った以上はこういう結果にならざるを得ない。それをみて市場は9月の利上げも困難と解釈してくることも予想される。そこでダドリー総裁は先手を打ってきたという見立てもできなくはない(インタビュー等をこういう目的で使ったであろう事例は過去ある)。

 利上げというが、米国のファンタメンタルズはそれほど良くはない、英国のEU離脱ばかりでなく、中国の経済減速などリスクが山積しているなか、日銀、ECBに加えイングランド銀行も大胆な緩和をせざるをえない状況下、FRBだけが利上げするのはおかしい、との見方もある。

 しかし、おかしいのはむしろ日銀、ECB、イングランド銀行の方ではなかろうか。市場の動揺を抑えるため、もしくは通貨安を招くためとして、非常時の緩和策をさらに深掘りすることにどれだけの効果があるのか。むしろ日銀のマイナス金利政策のように、弊害が目に見えて大きくなっているものも出てきている。

 そのなかにあってFRBが、雇用等のファンダメンタルズの改善の後押しもあるが、異常な緩和策からの脱却を図るというのは当然のことであろう。そのスケジュールが少し延びたものの、正常化路線を諦めるほど経済実態やマーケットは悪化してはいない。このため、予定通りに正常化路線歩むのであれば、9月の追加利上げは当然視野に入る。むしろ12月まで待つ方が、大統領選挙後ともなり政治リスクが入り、利上げがしにくくなる懸念もある。

 上記のシナリオに異を唱える人も多いかもしれないが、イエレン議長が正常化路線を諦めていないことは、少なくとも今回のダドリー発言で裏付けられたと思う。そして、26日のジャクソンホールの講演でそれをイエレン総裁自ら明らかにするのではなかろうか。9月の米利上げが決定されるとしてもそれは全く意外ではない。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-18 09:31 | 中央銀行 | Comments(0)

米利上げ時期を左右しかねないブレイナードFRB理事

 現在のFRBでの要注意人物としては当然ながらイエレン議長がいる。さらにそれを補佐するフィッシャー副議長も注意すべき人物である。さらにここにニューヨーク連銀のダドリー総裁も含めて、いわば執行部とされる人物の発言には今後の金融政策の動向をみる上で注意が必要となる。

 しかし、ここにもうひとり利上げ時期を左右しかねない要注意人物が存在している。その人物とは、ラエル・ブレイナード理事である。日本の為替政策にも大きな影響を与えていた人物である。

 たとえば、2013年2月12日のG7による緊急共同声明について、円の過度な動きに懸念を表明することがG7の目的だったとの匿名のG7筋による発言があった。この匿名のG7高官とはブレイナード財務次官である可能性が高いとされた。

 ブレイナード財務次官(当時)はご主人がカート・キャンベル元東アジア・太平洋担当国務次官補で親日家であるが、こと為替政策についてブレイナード氏は安倍政権の動きを牽制していた。そのブレイナード氏はいまFRBの理事となっている。

 ブレイナード元財務次官が何故、FRBに送り込まれたのか。それは現政権とFRBの橋渡し的な役割を与えられているとの見方は当然できる。このブレイナード理事の部屋が近頃、イエレン議長の部屋の近くになったとの観測もある。

 しかも今年は大統領選挙の年であり、民主党のヒラリー・クリントン氏が大統領となった際の財務長官の候補のひとりに、ブレイナード氏の名前がすでに挙がっている。

 ブレイナード氏のFRB理事としてのこれまでの発言をみると、利上げを急ぎ過ぎることに対して警鐘を鳴らすなど、いわばハト派といえる。正常化を急ぐイエレン議長に対してブレーキを掛けている存在でもある。

 このブレイナード氏の勢力が増しているため、FRBの年内利上げが難しくなるとの見方も存在する。しかし、そうはいっても正常化路線はイエレン議長が進めている政策であり、フィッシャー副議長の賛同があり、積極的ではないにしろダドリー総裁も賛同すれば、理事の立場からブレイナード氏は反対しにくくなる。

 ただし、大統領選挙の結果が明らかになりクリントン氏が仮に大統領となれば、ブレイナード氏を通じて新政権の意向が伝えられるような事態も予想される。そうであるのであれば、イエレン議長としては12月まで利上げを待つというのは政治的なリスクが出てくる可能性もある。そういった意味で経済指標等を確認した上ではあるが、FRBの9月の利上げの可能性は意外と高いのではないかとの見方も出来るのではなかろうか。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-15 09:31 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行の包括緩和は必要だったのか

 8日の英国の10年債利回りは0.6%近くまで低下し過去最低を更新した。これは8月4日にイングランド銀行が利下げや量的緩和を含む包括緩和を決定したためである。

 4日のイングランド銀行の金融政策委員会(Monetary Policy Committee; MPC)では、年0.5%と過去最低の水準となっている政策金利をさらに引き下げて年0.25%とするとともに、英国債を対象とする資産買入プログラムの規模を600億ポンド増額し4350億ポンドとし、さらに100億ポンド規模の投資適格級社債購入プログラムを決定した。利下げの効果を強固なものとするための金融機関向け低利融資制度を含めてパッケージされた、いわゆる包括緩和政策を決定したのである。

 6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まったことにより、英国経済見通しの悪化が予想された。7月14日のMPCでは追加緩和は見送られたが、EU離脱後の影響をもう少し見極める必要があったためかとみられる。金融緩和は見送られたものの、9人の政策委員のうち、多くが8月の金融緩和の実施を見込んでおり、緩和策の選択肢を協議していた。その結果が8月4日の包括緩和策となった。

 カーニー総裁は4日の政策発表後の記者会見で「このパッケージの構成内容はいずれも拡大の余地がある」と発言した。ただし「マイナス金利には感心しない」と語ったように、ECBや日銀などのようにマイナス金利の導入に動く可能性は否定した。

 またヘリコプターマネーについてカーニー総裁は、こうした提案に利点があると思えないとし、「英国でそのような思い切った想像が必要になる状況は考えられない」と一蹴した。これが本来の中銀の考え方であろうし、ヘリマネについては日銀の黒田総裁も明確に否定している。

 ちなみに日本や米国では中央銀行による国債の直接引き受けは禁じられており、ECBも同様であるが、イングランド銀行はそのような規定はない。

 さらにカーニー総裁は、英国のEU離脱を巡り、イングランド銀は衝撃を和らげることはできるが経済への影響を完全に相殺することはできず、「長期繁栄の真の決定的要因となる判断」を下す責任は政府にあるとの見方を示した(WSJ)。

 このあたりの念押しは非常に重要である。どこかの中央銀行では金融政策だけであたかもデフレ脱却が可能であるかのように主張していた気がするが、本来の金融政策とは衝撃を和らげるといった役割であり、金融政策で何かを変えられるといったものではない。せいぜい金融市場のマインドを変化させる程度である。

 それはさておき、このタイミングでここまで大胆な包括緩和が英国に必要であったのであろうか。たしかにポンドが大きく下落するなど市場は動揺していた。しかし、ポンド安はむしろ景気にとってはマイナスではないはず。それでも中央銀行としては景気の落ち込みや金融市場の動揺を抑えるためには必要であったとの判断か。

 しかし、イングランド銀行も利下げはあと出きても一回(マイナス金利政策は否定している)、量的緩和についても英国債の市場規模は約1兆5000億ポンドとされることで日銀同様にまだ3割とはいっても限界もあろう。追い込まれつつある日銀の金融政策を見ても、今後もし何か起きたときのための「のりしろ」を残しておいた方が良かったようにも思える。現実に9日にイングランド銀行の国債買入で応札額が予定額に届かなかった未達も発生している。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」配信のお知らせ ***

 「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、その日の債券市場の予想と市場の動向を会話形式でわかりやすく解説しています。10年以上も続くコンテンツで、金融市場動向が、さっと読んでわかるとの評判をいただいております。昼にはコラムも1本配信しています。ご登録はこちらからお願いいたします。

ヤフー版(サイトでお読み頂けます)
まぐまぐ版(メルマガでお読み頂けます)
BLOGOS版(メルマガでお読み頂けます)

講演、セミナー、レポート、コラム執筆等の依頼、承ります。
連絡先:adminアットマークfp.st23.arena.ne.jp
[PR]
by nihonkokusai | 2016-08-10 09:57 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー