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カテゴリ:中央銀行( 263 )

日米欧の中央銀行による協調対応策はあくまで時間稼ぎ

 11月30日にカナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行(ECB)、米国連邦準備制度(FRB)およびスイス国民銀行は、国際金融システムに対する流動性支援提供能力を拡充するための協調対応策を公表した。

 日銀は30日の夜に臨時の金融政策決定会合を開き、上記の欧米の中央銀行と協調し、最近の国際短期金融市場の緊張に対応するための措置を講じることになった。具体的には、現在日銀が実施している固定金利方式の米ドル資金供給オペレーションの貸付金利を0.5%引き下げ、12月5日以降のオペレーションから適用する。この引き下げにより、新たな貸付金利は、貸付期間に応じたドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場の実勢金利に0.5%上乗せしたものとなる。

 加えて、現在FRBとの間で締結している米ドル・スワップ取極、およびこれを原資とする米ドル資金供給オペレーションの期限を、2013年2月1日まで6か月延長することとした。さらに、上記中央銀行との間で、2013年2月1日を期限とする為替スワップ取極を締結する。これにより、日銀は5つの中央銀行が必要とする場合に円資金を供給することが可能となるとともに、日銀が必要とする場合に現行の米ドルを含む5通貨の調達が可能となる(日銀、「国際短期金融市場の緊張への中央銀行の協調対応策」より)。

 欧州危機は深刻化し、ユーロ圏周縁国だけでなく中核国の長期金利も上昇しつつあった。これらユーロ圏国債を大量に保有する欧州系の銀行は、資金の取り入れに困難をきたし、ドル資金の調達コストがじわりじわりと上昇してきていた。

 そんな矢先、格付会社ムーディーズは29日、欧州15か国87銀の行の債務格付けを引き下げ方向で見直すと発表した。さらに30日にS&Pは主に欧米の銀行15行の格付けを引き下げた。これらにより欧州の銀行などのクレジット・クランチ(信用逼迫)も意識されつつある中、緊密に連絡を取り合っていたとみられる日米欧の中央銀行が、FRBを中心に協調策を緊急協議し、臨時のFOMCや決定会合などの開催を経て、それを発表したものとみられる。

 欧州の信用不安の強まりによる国債価格の下落は、ユーロ圏の金融機関の経営を悪化させ、新たな金融危機に発展するのではとの懸念もあった。もしそうなれば2008年のリーマン・ショックと同様にそれが米国や日本経済に多大な影響を与えかねず、リーマン・ショックの際と同様に、すばやく中央銀行が連携して動きを見せた格好である。

 しかし、これはあくまで対処療法であり時間稼ぎにすぎず、根本的な解決にはならない。これについては日銀の白川総裁も「時間を買う政策」とコメントしていた。一時的に欧州の金融機関はドルの資金繰りが楽になるかもしれないが、ユーロ圏の国債価格の下落が止まらない限り、危機は収まらない。その問題解決は中央銀行の仕事ではなく、政治家の仕事となる。

 ECBが無限大に国債を買い入れれば問題解決するという意見も出ているが、日銀による国債直接引き受け同様のリスクがあり、財政規律はさらに緩むことになりかねない。イタリアなどのユーロ圏の国債価格の下落を取り戻すためには、あらためてユーロ圏の財政規律を確立するとともに、危機に陥っているギリシャやイタリアなどへのしっかりした支援策を講ずるほかはない。つまりユーロ圏の国債の信用回復こそが、問題解決の糸口となるはずである。


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by nihonkokusai | 2011-12-02 10:08 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBによるイタリアへの対応

 今月1日にECB総裁に就任したのは、イタリア出身のマリオ・ドラギ氏である。その結果ECBの役員会は、イタリア出身のマリオ・ドラギ総裁、ポルトガル出身のヴィトル・コンスタンシオ副総裁に加え、スペイン出身のゴンザレス・パラモ氏、ドイツ出身のユルゲン・シュタルク氏、ベルギー出身のピーター・プラート氏、イタリア出身のビーニ・スマギ氏の6名の専務理事で構成されている。

 ちなみにECB役員会はECBの執行機関となっており、最高意思決定機関であるECB理事会が策定するガイドラインに従い金融政策を実施する(日銀のサイトより)。

 ECB理事会にはユーロ圏の17か国の中央銀行総裁も加わる。このため、マリオ・ドラギ総裁、ビーニ・スマギ専務理事、そしてイタリア中銀のイグナシオ・ビスコ氏総裁と、23人のECB理事会メンバーのうち3名のイタリア出身者が存在する。

 イタリアのベルルスコーニ首相は10月にビーニ・スマギ専務理事に対し、フランスとイタリアの関係がこれ以上冷え込むのを防ぐため、フランス出身のトリシェ前総裁が抜けることで役員会の席をフランス人に譲るとして、早期に辞任するよう求めていた。

 しかし、ビーニ・スマギ専務理事は任期が2013年までとなっており、辞任の強制はECBの独立性に対する攻撃であり、スマギ理事はECBの支持を得ているとしてそのまま専務理事にとどまっている。これには、理事会メンバーであるメルシュ・ルクセンブルク中銀総裁なども理解を示すような発言があったが、政治からの独立性を意識すれば妥当であろう。

 そして、そのメルシュ・ルクセンブルク中銀総裁は、もしイタリアが確約した改革を実行しないと判断した場合、ECBによるイタリア国債の買い入れを停止する可能性をECB内で、討議していたことを明らかにした。

 11月3日のECB理事会において、国債の買入増額などは行わず利下げを行った。ECBによる国債買入拡大にはドイツなどの反対があったためとみられるが、メルシュ総裁の発言を見る限り、そもそもイタリア国債の買入増額を議論できるような状況にはなかった可能性がある。

 メルシュ総裁を含めECB理事会メンバーからは、ユーロ圏債務危機解決に向けECBが最後の貸し手となることは望まないとの発言が繰り返されている。メルシュ総裁は責任を果たさない政府を救済するのがECBの仕事ではないとして、名指しはしていないものの、その政府は婉曲的にギリシャ、そしてイタリアを示していたものと思われる。

 イタリア政府は緊縮財政を確実に進めるため、IMFの監視を受けることで合意したと伝えられている。イタリアのベルルスコーニ首相は、2013年までに財政の均衡化を目指す一連の措置を提示したが、これが実行に移されるのかどうか他のユーロ加盟国、そしてECB内でもそれを危ぶむ見方も強いようである。

 欧州の信用不安がギリシャから直接、イタリアに向かいつつあり、これを回避するにはイタリアそのものが財政再建に積極的にならざるを得ず、だからこそ異例ともいえるIMFの監視も受け入れたとみられる。

 イタリア出身のマリオ・ドラギ総裁を含め、3名のイタリア出身のECB理事会メンバーは、かなり難しい立場に置かれているようにも見える。ドラギ総裁として最初のECB理事会では利下げという手段をとってきたが、そのカードは限られている。出身国を信用不安から救うためには国債買入増額とかではなく、財政再建を促すことが重要となる。しかし、それは国民の痛みを伴うものであり、また政権の実行能力にも問題が残る。イタリア国民の意識を変えられるものなのか、ECBによるイタリアへの今後の対応についても注意しておく必要がありそうである。


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by nihonkokusai | 2011-11-09 08:16 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBとECBのスタンスの変化

 ギリシャ問題で揺れ動く中、1日から2日にかけて米国ではFOMCが開かれ、3日にはECB理事会が開催された。

 2日のFOMCでは、金融政策については賛成多数で現状維持を決定した。ただし、最新の経済見通しで、経済成長率や失業率の見通しを大幅に下方修正し、バーナンキFRB議長の会見では、「景気回復の継続を確かなものにするために適切な行動を取る用意がある」と発言し、追加緩和に含みを持たせた。その追加緩和としては、住宅ローン担保証券(MBS)の追加購入は「現実的な選択肢」だと述べたそうである。

 今回反対票を投じたのは、シカゴ地区連銀のエバンズ総裁で、反対理由は追加緩和を求めてのものであった。エバンズ総裁はMBS購入拡大を主張しているとみられる。また、9月のFOMCで反対票を投じたフィッシャー、コチャラコタ、プロッサーの各委員は今回、賛成票を投じた。 

 FOMCの前にタルーロFRB理事が、「MBS購入は選択肢の上位に入れるべきだ」と発言したり、イエレンFRB副議長も経済状況が追加緩和を正当化するなら、量的緩和第3弾は適切な措置になるかもしれないとの認識を示すなど、FRBの執行部もQE3について前向きの姿勢を示していた。それが今回の金融政策の票決にも現れていた。ただし、追加緩和というカードそのものは今回温存された。欧州の信用不安の行方など非常に不透明感が強く、タイミングを見計らってそのカードを切るつもりであろうか。次回のFOMCは12月13日に開催される。

 そして、3日のECB理事会においては、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.25%引き下げ1.25%とした。

 10月31日に発表された10月のユーロ圏の消費者物価指数速報値が、前年同月比3.0%の上昇となり、今回は利下げは行わないとの見方が出ていた。このため、市場では今回の利下げには意外感も出て、3日の欧米の株式市場などではこれを好感し上昇した。

 11月1日に就任したばかりのマリオ・ドラギ新総裁は、理事会後の就任後初めてとなる会見で、景気の下振れリスクが増しており、そのため物価上昇率は2012年中に2%未満となるとの見通しを示し、消費者物価指数が上昇する中にあっての利下げの理由を説明した。

 今回の利下げは景気そのものへの配慮したこともあろうが、ギリシャの信用不安で市場心理が悪化している中、少しでもそれを改善することが意識された結果、追加緩和を決定した可能性がある。ただし、ドイツなどが反対していたECBによる国債買入拡大には踏み込まなかった。

 今回の決定は全会一致ともドラギ総裁は語ったようで、ドイツ出身者からの反対はなかった模様である。本来であればECBは採決の結果については明らかにしないが、あえて反対者がいなかったことを強調した格好と言える。また、ドラギ総裁からは、「私はドイツ連銀の伝統に敬服している」との発言もあったようである。ドラギ総裁はイタリア出身ではあるが、ブンデスバンクを中心とした欧州の中銀の伝統を受け継いでいるとみられている。

 このように今回のFOMCとECBでは、これまでと明らかに変化が出てきている。FOMCではフィッシャー、コチャラコタ、プロッサーのいわゆるタカ派が影を潜め、エバンズ総裁のようなハト派の意向が強く意識されるようになってきた。

 そしてECBでは深刻な問題となりつつあったドイツ出身者などとの意見の対立を回避し、その上で欧州の危機対応に向けた姿勢をとった。ドイツやフランスという大国の板挟みとなる中での、マリオ・ドラギ新総裁がどの程度の手腕を発揮できるか注目されていたが、ただのマリオではなく意外にもスーパーマリオであった可能性もある。もちろんそれが明らかとなるのは、今後のECBでの舵取り次第となるわけではあるが。


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by nihonkokusai | 2011-11-05 09:14 | 中央銀行 | Comments(1)
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