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カテゴリ:中央銀行( 236 )

ブンデスバンクがECBの国債買入に反対する理由

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。

 ドイツ連銀でウェーバー総裁のあとを継いだバイトマン総裁も、メルケル首相の経済顧問を退いて以降は、国債買い入れに強く反対するようになった。

 また、2011年9月には、ユルゲン・シュタルクECB専任理事が「個人的な事情」を理由に辞意を表明した。辞意の理由についてはユーロ圏諸国の国債買い入れに反対したものではないかとの観測が流れた。

 シュタルク氏はドイツの財務次官やドイツ連銀副総裁を経て、2006年6月からECB理事に就任した。ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際に、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。

 シュタルク専任理事の辞意を受けて、ドイツ政府は後任にヨルグ・アスムセン財務次官を指名した。アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の教え子だそうである。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。

 そもそも何故これほどまでに、ドイツ連銀がECBによる国債買入に反対するのか。それは言うまでもなく、ライヒスバンク(ドイツ帝国銀行)の亡霊がつきまとっているためであろう。

 第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われ、ライヒスバンクの後継者であるブンデスバンク(連邦銀行)は、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債買入に対して警戒感というか嫌悪感を強めたのは、この歴史が背景にある。

 7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明した。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は19日、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた。さらにイギリスのデーリー・テレグラフ紙もこのシュピーゲル誌の記事の内容を確認することができると報じている。

 これに対しECB報道官は、未決定の計画やまだ理事会で協議されていない特定の見解について報道することは誤解を招く恐れがあると発言した。これは、当然の発言である。さらにドイツ財務省の報道官も、そうした計画は認識していない、聞いたこともないと発言したそうである。

 ただし、火のないところに煙は立たぬ。今回のシュピーゲルやデーリー・テレグラフの報道は意図的なリークではなかったかとの観測すら出ていた。ドラギ総裁のこれまでの発言内容からは、9月6日の政策理事会でECBが利回りスプレッド目標を設定して国債を買い上げるという手段をとってくる可能性はまだ完全に否定もできない。

 しかし、単純な国債買入に対してもドイツ連銀は反対の意向を示し、過去にはドイツ連銀総裁や専任理事の辞任まで招いている。今回、もし報じられたような方式での国債買入が検討されるようなことになれば、ドイツ連銀は国債買入に対してはさらに強行に反対姿勢を示すことが考えられる。これにより再びECB内に大きな亀裂が生じる懸念がある。

 それでもイタリア出身のマリオ・ドラギ総裁は強行突破をはかってくるのかもしれない。その際には、ドイツ出身のアスムセン理事の対応も気になるが、アスムセン理事はインタビューで、ドイツ連銀がECBの国債購入への反対で孤立しているとの観測を否定していた。

 ECBはブンデスバンクの影響を強く受けていると言われていたが、その影響下からむしろ脱しようとしているかに思える。ブンデスバンクが神経質すぎるのか、それともドラギ総裁一派が足下の危機回避を優先するあまり、国債買入の弊害を甘く見過ぎているのか。その結果が出るのはまだ先のことである。

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by nihonkokusai | 2012-08-23 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBによる一定利回りでの国債買い支えは劇薬

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は19日、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた(時事通信)。

 8月2日のECB政策理事会で、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いたが、記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにし、数週間以内に、非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとも発言、そしてイタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることも表明した。

 7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要な、いかなる措置をも取る用意があると表明していた。

 戦後、日米欧の中央銀行が自国の国債の利回りに上限を設け、それを越えてきた際に買入を行い利回り低下をはかるといった措置が講じられたケースはたぶんないはずである。

 シュピーゲル誌によると、今回ECB内で検討されているのは、各国の国債利回りとドイツ国債利回りスプレッドに目標を設定し、このスプレッドが目標に収まるようECBは随時、国債を買い上げるそうである。

 2011年11月にスイス中銀は、スイスフラン高を抑制するため、スイスフランの対ユーロレートの下限を1ユーロ1.20スイスフランに設定すると発表し、この水準を守るために無制限に外貨を購入する、つまりスイスフランを売る用意があると表明した。今回のECBが行うかもしれない政策は、このスイス中銀が行ったものの国債版となり、まさに国債市場への介入となる。

 これに対しECB報道官は、未決定の計画やまだ理事会で協議されていない特定の見解について報道することは誤解を招く恐れがあると発言し、この報道内容については否定した。さらにドイツ財務省の報道官も、そうした計画は認識していない、聞いたこともないと発言したそうである。

 たしかに中央銀行による国債市場への介入となれば、様々な弊害も生じよう。そもそも国債市場がそのターゲットを意識した動きとなってしまいかねず、正常な利回り水準を探る動きを阻害する可能性がある。ある意味、投機筋の動きを牽制する機能もあろうが、むしろ為替介入の際などの時のようにヘッジファンドなど投機筋の仕掛けの標的にされる可能性もある。1992年にジョージ・ソロス氏の標的にされたイングランド銀行の二の舞になりかねない。

 さらに中央銀行は無尽蔵に紙幣を発行できるため、国債の介入も可能との見方も非常にリスクがある。そもそもドイツ連銀(ブンデスバンク)がタカ派的なイメージを強めたのは、中銀の国債引受により、第一次大戦後にハイパーインフレを招いてしまった歴史の教訓による。

 8月2日にドラギECB総裁は会見で、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例であった。また、ドイツ連銀は最新の月報でもユーロ圏ソブリン債の買い入れには引き続き批判的だとの見方を示した

 8月2日の政策理事会で反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際にドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの前財務次官)もドイツ連銀側には付かなかった。ただし、アスムセン理事はその後のインタビューで、ドイツ連銀がECBの国債購入への反対で孤立しているとの観測を否定している。

 9月6日のECB政策理事会では、ドイツ連銀の反対を押し切って、して何らかのかたちでの国債買入を決定するものと予想される。ただし、今回報じられたような国債利回りスプレッドに目標を設定するようなことになると、ECBは無制限にリスクが高い国債が資産に積み上がり、状況次第ではインフレ圧力を強めさせかねない。ECBの信認への懸念が出れば、ユーロそのものが売られ欧州危機をさらに深刻化させかねない。これはかなりリスクの伴う手段であり、ここまで踏み込む必要はないであろう。

 もちろんあまり中途半端な政策では、投機筋の動きが牽制できないとの意識もあろうが、劇薬を使うならばその副作用も意識しなくてはいけない。ちなみに、スペインのデギンドス経済相は、スペインの借り換えコストを圧縮し、ユーロ圏の今後に関する懸念を払しょくするため、ECBが効果的で無制限の国債買い入れに踏み切るべきと発言していたようである(ロイター)。

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by nihonkokusai | 2012-08-21 10:09 | 中央銀行 | Comments(0)

ドラギ対バイトマン

 8月2日のECB政策理事会では、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。これは予想通り。下限金利の中銀預金金利もゼロ%に、上限金利の限界貸出金利も1.50%に据え置いたが、これについては下限金利をデンマーク中銀のようにマイナスにするのではないかとの期待が一部にあったようである。

 記者会見でドラギ総裁は、利下げの可能性について討議したことも明らかにした。このため9月に主要政策金利を0.25%引き下げ0.5%にするとの見方が強まっている。ECBはこれまで政策金利を動かす際には、前回の会合でそれを示唆するようなことが多い。ちなみにマイナス金利については、「未知の領域だ」との答えがあったそうである。

 市場が期待していたのは、利回りが大きく上昇していたスペインやイタリアの国債への対策であった。7月26日にECBのドラギ総裁はロンドンでの講演で、(ソブリン債の)高利回りの問題はECBの責務の範囲内にあるとし、ECBは責務の範囲内で、ユーロ存続のために必要ないかなる措置をも取る用意があると表明していた。このため、何かしらの対策が講じられ発表されると期待されたが、結果として具体策の発表はなかった。

 ドラギ総裁の会見では、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。国債買入は9月以降となりそうで、さらに新たな債券買い入れに際しては、これまでのプログラムと異なり、厳格な条件が付くようである。短期債が主体で、債券が不胎化されるかどうかもはっきりしていない。

 このように債券買入について具体的な発表がなかったのは、ドイツ連銀(ブンデスバンク)のバイトマン総裁が国債買い入れプログラムに疑念を抱いていることが大きな要因になっている可能性がある。実際にドラギ総裁はバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにしている。ECBが採決の内容を外部に公表するのは日銀やFRB、ECBなどと異なり、極めて異例と言える。ただし、反対したのはバイトマン総裁だけで、過去に同様なことがあった際、ドイツ連銀に組みしたルクセンブルグやオランダの中銀総裁、さらにドイツ出身のアスムセン理事(ドイツの元財務次官)も今回ドイツ連銀側には付かなかったことは興味深い。

 ECBによるイタリアやスペイン国債の買い入れはいずれ実施される可能性はあるが、その内容はドイツ連銀の反対も影響し、これまでに比べて消極的なものになる可能性がある。またドラギ総裁は、数週間以内に、これまで行ってこなかった非伝統的な金融政策の追加の枠組みを準備するとの発言もあった。これはやや気になるところでもあるが、こちらもどれだけ踏み込んだ政策になるのかはわからない。

 今回のECBの対応については、事前のドラギ総裁発言を受けてもう少し踏み込んだ内容を市場では期待していた。このため、外為市場でのユーロや欧米の株式市場、そしてスペインやイタリア国債などへの失望売りを招き、ドラギ・ショックともいえるような動きとなった。

 マリオ・ドラギ総裁はイタリア出身ではあるが、ドイツ連銀の伝統を受け継いだ総裁とも見なされており、欧州危機に対しては積極的な対策を講じる必要性は認識していながらも、それに対して慎重なドイツ連銀のバイトマン総裁の考え方も十分理解しているとみられ、それが会見内容にもところどころ現れている。

 8月1日の米FOMCでは追加緩和については次回の可能性を示唆するような格好となり期待感は残したが、昨日コメントしたように実際に追加緩和が実施される可能性はむしろ低いようにも思われる。それよりもスペインやイタリア国債が再度売られてきたことでの、ECBへの対応の方が期待されたが、これも簡単には踏み込めず、何かと言えば中銀頼みとなっている状況で、その中央銀行による対応にも自ずと限界があることが見えてきつつある。

 外為市場ではECBは追加緩和をしなかったことで、ユーロが下落しているように、金利差などよりもリスクが大きな注目材料ともなっている。もしユーロに対しての円高を阻止しようとするならば、現状ではユーロへのリスクを後退させるか、円のリスクを増加させるしかない。もし為替介入により阻止しようとしても、市場の大きな流れを逆流させることはかなり困難である。

 同様にECBによる国債市場への介入も、スペインやイタリアのリスクそのものを後退させるわけではない。さらに、中銀のポートフォリオそのものへの警戒とともに、先々のインフレリスクも意識されよう。市場などではECBによる積極的な対策を望んでいようが、積極的に踏み出せないというのがECBの現状であり、それが今回市場で見透かされた格好となったものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-08-04 11:31 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの次の手とそのタイミング

 7月31日から8月1日に開催したFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を0~0.25%に据え置いた。QE3とか超過準備の付利の引き下げもなく、超低金利政策の継続期間についても2014年の後半までとの表現を据え置いた。  FOMC後に発表された声明文では、景気認識について、前回の「今年の景気は緩やかに拡大する」から「今年の前半を経過した時点で経済活動がやや減速している」と下方修正している。

 さらに声明文では、「必要な時に適切な追加の緩和策を行う」として、前回の「さらなる措置を適切な時に行う用意がある」との表現からやや踏み込んだ格好となった。

 これにより9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待も強まったようである。果たして9月の追加緩和の可能性はどの程度あるのか、またその手段はどのようなものがあるのか。

 その手段としては、7月17日のバーナンキ議長の議会証言の内容からある程度推測が可能となる。

 議会証言でバーナンキ議長が示唆した追加緩和として、米国債やモーゲージ担保証券(MBS)などの追加債券買い入れ、つまりQE3。そして、連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げ。さらに時間軸の強化、つまり超低金利政策の継続期間についていつまで続けるかの予想期間の先延ばしがある。

 このうち市場が最も期待しているのはQE3であろうが、この手段はFRBとしては最後の有力カードとして温存していたいものと考えられること以上に、いくつか実現を難しくさせる理由が存在する。

 そもそもQEの目的は長期金利を低下させ、住宅投資を活発化させるものであろうが、すでに米国長期金利は歴史的低位水準にあるとともに、住宅市場に関してはやや回復基調ともなっており、ここで無理にQEを行う必要性はない。アナウンスメント効果を意識しても、すでに国債市場にかなり踏み込んでしまっており、余程の事態とならぬ限りは、QE3については実現性はかなり低いのではないかと思われる。技術的な問題としてツイスト・オペを実施している中での、追加債券の買入も難しい面がある。

 次に連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げであるが、7月5日に開催されたECB政策理事会で、預金ファシリティ金利をゼロ%としたことで、FRBが超過準備の付利引き下げを行うのではとの思惑もある。しかし、日銀は市場機能を維持させるため、付利を引き下げることはしないとみられるのと同様に、バーナンキ議長としても付利の引き下げ効果と付利を維持することでの市場機能維持を秤にかければ、付利の維持を選択するのではないかと思われる。

 このため、予想される緩和策としては9月のFOMCでは、経済物価情勢見通しも発表されることで超低金利政策の継続期間の予想をさらに引き延ばす、いわゆる時間軸強化あたりにしておくのではないかと考えられる。これもあくまでアナウンスメント効果でしかないが、市場からの追加緩和期待に応えなければならないとすれば、このあたりの選択となる。ただし、これにしてもあくまで約束ではなく予想である。しかも、先に延ばすほど、現在行っている緩和策の効果はないことを自ら明らかにしてしまいかねない。この選択肢もなかなか難しい面がある。

 11月には米国では大統領選挙が予定されていることで、現政権に有利とされるような政策はその直前には行いづらい。つまり、10月23日から24日にかけてのFOMCでは、余程のことがない限り政策変更が行いづらい。このため、早期に市場の期待に応えておくのであれば、9月のFOMCでしかない。ただ、9月のFOMCで時間軸強化あたりでお茶を濁すのであれば、むしろ何もせず先々の追加緩和の期待をつなぎ止めておくだけという手段もありうるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2012-08-03 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

今年上半期の日米欧の金融政策の動向

 2012年1月25日のFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導レンジを0-0.25%に据え置くことを決定し、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」とした。つまり、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を、これまで公表してきた来年の半ばから1年余り先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。

 さらにFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%としたのである。これは実質的なインフレ目標値の設定とも言えるものである。

 2月9日のイングランド銀行のMPCでは、資産買い取りプログラムの規模を500億ポンド拡大することを決めた。その際に購入対象となる償還期限を変更し、従来よりも3~7年物の購入を増やすことにした。

 2月9日のECB政策理事会では政策金利は据え置かれたが、今月の3年物資金供給オペで、7か国の中銀が受け入れ担保の基準を引き下げることを明らかにした。これら一連の動き、なかでもFRBによる物価目標の設定と時間軸の長期化は日銀にも大きな影響を与えた。

 2月14日の日銀の金融政策決定会合では、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として「中長期的な物価安定の目途」を示すことを決定した。「中長期的な物価安定の目処」とは、消費者物価指数の前年比上昇率で2%以下のプラス領域にあるとある程度幅を持って示すこととした。その上で、「当面は1%を目途(Goal)」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

 当面、消費氏や物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じないことを条件とするとした。

 また、資産買入等の基金をこれまでの55兆円程度から65兆円程度に10兆円増額することも決定した。この買入の対象は長期国債とするとしたが、日銀はデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日銀の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定したのである。

 3月13日の日銀金融政策決定会合では、政策金利や資産買い入れ基金の規模の変更はなく現状維持としたが、成長基盤強化を支援するための資金供給(成長支援資金供給)を拡充することを決定した。

 2010年6月に日銀は成長支援資金供給を導入した。これは成長分野への投資促進に向け、民間金融機関に政策金利の0.1%で貸し出すものである。この貸付総額の残高上限は3兆円としていたが、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長するとともに、貸付枠も3.5兆円に5千億円増額することとした。

 昨年6月に出資や動産・債権担保融資など、不動産担保や人的保証に依存しないABLと呼ばれる融資を対象に、5000億円を上限として、年0.1%の金利で原則2年とし1回の借り換えを可能とした最長4年の貸し付けを行う新しい枠組みを導入していたが、これについても、5000億円の貸付枠のもとで、新規貸付の受付期限を 2014年3月末まで2年延長することとした。

 さらに成長支援資金供給では対象としていない小口の投融資を対象に、新たに5000億円の貸付枠(小口特則)を導入することも決定した。対象となるのは、日本経済の成長に資すると認められる1件当たり100万円以上1000万円未満の投融資。対象先金融機関は成長支援資金供給の対象先金融機関。有担保貸し付けで、貸付期間は1年とし3回の借り換えを可能とする(最長4年)。貸付利率は貸付実行日における誘導目標金利、つまり現行では年0.1%となる。

 そして、成長に資する外貨建て投融資を対象に、日銀が保有する米ドル資金を使い、新たに1兆円の貸付枠(米ドル特則)を導入することも決定した。対象先金融機関は、成長支援資金供給の対象先金融機関のうち、ニューヨーク連邦準備銀行に米ドル口座を保有する先および同行に口座を保有する先へ米ドル決済を委託している金融機関。米ドル資金の有担保貸し付けとなり、貸付期間は1年、こちらも3回の借り換えを可能とする(最長4年)。貸付利率は市場金利となる。

 4月27日の金融政策決定会合では、資産買入基金の増額というかたちで追加緩和を決定した。資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。内訳としては、長期国債(残存1年以上3年以下)を10兆円程度増額し、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペは応札額が未達となるケースが発生しているため、これを5兆円程度減額する。そしてETFの買入を2千億円、J-REITの買入を百億円程度増額する。

 買入対象となる長期国債の残存期間は、多額の買入を円滑にすすめ、長め金利に効果的に働きかける観点から、これまでの「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長する。社債についても、国債と同様に、買入対象の残存期間を延長する。

 基金の70兆円程度への増額は2013年6月末を目途に完了する予定。今年末までの基金の規模は65兆円とする。つまり、今年末までの国債買入は5兆円程度増額するが、期間6か月の固定金利式・共通担保供給オペの残高は今年末に15兆円規模であったものを10兆円に減額した。さらに2013年6月までに基金による国債の残高をあらたに5兆円積み増すことになった。

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by nihonkokusai | 2012-07-03 10:51 | 中央銀行 | Comments(1)

またまた少数派となったイングランド銀行のキング総裁

 イングランド銀行は20日に、6月6~7日の金融政策委員会(MPC)の議事要旨を発表しており、これによりこのMPCの際、資産買い入れ枠を3250億ポンドに据え置いたのは5対4の賛成多数による決定であったことが明らかとなった。しかも、キング総裁は、マイルズ委員、ポーゼン委員がとともに500億ポンドの増額を主張しており、フィッシャー委員の250億ポンドの増額の主張と合わせ、現状維持に対しての反対票を投じていたのである。キング総裁が少数派になるのは2009年8月以来だとか。

 2009年8月のMPCでは6対3で資産買取枠の500億ポンド増額が決定されたが、反対票(750億ポンドの増額主張)を投じた3名にキング総裁が含まれていた。 結果として少数派となっていたのである。

 2007年6月のMPCではキング総裁は0.25%の利上げに一票入れたものの、結局5対4で利上げは見送りとなった。2005年8月のMPCでも、5対4とこのときもキング総裁は少数派となっていた。

 このように現在のイングランド銀行の金融政策の決め方では、総裁が少数派となることがある。これについては1997年のイングランド銀行の改革の際、当時のジョージ総裁が次のような発言をしていた。

 「(新設されたMPCでは)学識のある9人の個人がそれぞれ結論を出す。そのプロセスが重要なのであって、たまたま(委員会)の議長(総裁)だからといって、1人が「こうでなければいけない」と仕切るのはプロセスの意図に逆らうこと。原則として、議長が考えを通そうとするのは間違いだと思ったからだ」(2005年5/3・10週刊エコノミスト「ロンドンで見たイングランド銀行 華麗なる改革史」より)

 まさに委員会制度をとるのであれば、このような決め方はたいへん透明性がある。ただし、日銀ではこのように議長である総裁が少数派に回ることは考えづらい。確かに2008年10月の0.5%から0.3%への利下げに際しては、利下げ幅を巡り水野委員、中村委員、亀崎委員そして須田委員が議長案に反対した。票決は4対4と真っ二つに別れ可否同数となったため議長が決するという異例の事態となったことはある。それでも議長案を出す際には、ある程度それが通るという見通しのもとで行われているようで、議長が少数派になりにくい決め方となっている。

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by nihonkokusai | 2012-06-25 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行はいつどうして、インフレ・ターゲッティングを導入したのか

 2012年は米国と日本の中央銀行が揃って、実質的なインフレ目標値を採用したとして歴史に刻まれるのかもしれない。そこに至る経緯については、リーマン・ショックや欧州の信用不安により、中央銀行への期待がかつてないほど高まり、そのひとつの結果としてFRBも日銀も中長期的な物価目標を設定することになったと言えるのではなかろうか。

 インフレ目標とインフレ・ターゲッティングでは、言葉の上では目標達成への強制力の違いを感じるものの、実際には同じような意味の用語である。これは元々、ニュージーランドが導入したものを参考に、そののちイギリスでも導入したものである。

ここには現イングランド銀行総裁のマービン・キング氏も大きく関わっている。そして、その背景にはブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)とも呼ばれたポンド危機があったのである。

 今回も2005年5/3・10週刊エコノミスト「ロンドンで見たイングランド銀行 華麗なる改革史」を元に、そのあたり探ってみたい。

 ブラック・ウェンズデーとは、英国ポンドがジョージ・ソロスらの投機筋により売り叩かれ、この結果、イギリスは1992年9月16日にEMRから離脱させられることになったまさに不名誉な日である。ジョージ・ソロスはこれにより「イングランド銀行を破産させた男」とも呼ばれた。

 しかし、この日をきっかけに英国は長期にわたる経済成長や低失業率とともに、歴史的にも低いインフレ率を享受するようになる。さらにこれをきっかけとして、イギリスはインフレ・ターゲッティングを導入することになる。

 ERM離脱により英国ポンドは変動相場制に移行し、ドイツマルクという大きなアンカーを失うことになる。さらに金融政策面ではインフレファイターとも呼ばれたブンデスバンクに追随することで間接的に得ていた物価安定の道標を失うこととなった。これはブンデスバンクからの楔から解き放たれたという見方もできるかもしれない。このため新しいよりどころを探る動きが英国財務省とイングランド銀行に出てきたのである。

 当時、イングランド銀行のチーフエコノミストとなっていたのが、マービン・キング氏であり、キング氏はもともとインフレ・ターゲッティングに意欲的で、ニュージーランドの事例を研究していた。

 ブラック・ウェンズデーから一週間もたたないうちに、導入の基本路線が固まり、時間を置かずに新政策が生まれた。1992年10月29日に当時のラモント財務相がインフレ・ターゲッティング導入に伴う新政策の内容を発表したのである。この際のインフレ目標は年率1~4%とした。

 1997年5月に英国ではブレア政権が誕生し、ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切ったが、あらためてこの際にインフレ・ターゲッティングの土台も築かれた。インフレーション目標は政府が設定し、イングランド銀行はこれを達成するために必要な政策手段を決定するという役割となったのである。


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by nihonkokusai | 2012-06-24 12:18 | 中央銀行 | Comments(0)

1997年のイングランド銀行改革の背景

 これまで本やコラムを書くために中央銀行の歴史を調べてきたが、ひとつ気になっていたことがあった。それは1997年のイングランド銀行の改革に関してである。これについては以下のように私は本の原稿でまとめていた。

 「1997年5月にブレア政権が誕生し、ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切ったのです。この改革とは、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会へ政策運営権限を委譲すること、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲すること、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し新設された金融監督庁へ移管すること、そして国債管理業務の財務省への移管などでした。」(「金融」のことがスラスラわかる本、秀和システム)

 しかし、実際になぜ、このときにイングランド銀行の改革が進められ、それは誰がどのようなことを背景に企画していたのか。もう少し具体的なことが知りたかった。これについて、毎日新聞の福本容子論説委員が、以前、週刊エコノミストに投稿された記事に詳しくまとめられていたことをご本人から教えていただいた。今回はその記事を元に、当時何が起きたのかを振り返ってみたい。

 1997年5月6日、18年ぶりに労働党が勝利した総選挙から6日目に開かれたゴードン・ブラウン新財務相(のちに首相)の初会見では、記者が皆、利上げの発表と予想していたようであるが(当時の金融政策の決定権は財務相)、実際に利上げも発表されたが、それと同時に発表されたのが、上記にもあるように金融政策決定権を財務相からイングランド銀行に移譲するというものであった。これは記者達も度肝を抜かれたそうである。

 この世紀の大改革のシナリオはすでに5年前に書かれていたそうで、その著者は当時25歳の若さでブラウン氏から顧問に起用された「フィナンシャル・タイムズ」の記者、エド・ボールズであった。「万年野党に甘んじていた労働党が政権党として信頼を得るには、経済界、特に金融市場の信用が不可欠だとボールズ氏は考えていた・・・金融政策を政治から切り離し、イングランド銀行に任せることで、労働党は独自の経済政策に専念できると訴えていた。訴えは、そのままブラウン氏の政策方針となった。」(2005年5/3・10週刊エコノミスト「ロンドンで見たイングランド銀行 華麗なる改革史」より)

 これが1997年のイングランド銀行における改革が行われたそもそもの背景であった。しかし、この改革のシナリオを若干25歳の若者が作り上げたのは驚きであった(エド・ボールズ氏はのち議員となり、影の財務相となっている)。

 金融市場の信任を得るために中央銀行の独立性をはかるということは、長らく市場を見てきたものとしても正しい認識であると考える。これに対し日本では、長らく野党に甘んじていた民主党が政権を担ったあと、その民主党内から日銀の独立性を縛りかねない日銀法改正のような動きが出るというのは何事であろうか。ましてや自民党からも同様の動きが出ている。この動きは市場からの信任をも失いかねないことを、果たして日本の国会議員達は理解しているのであろうか。


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by nihonkokusai | 2012-06-20 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

来年までのFOMCはすべて2日間の日程にする理由

 FRBは16日に今年の6月以降と来年のFOMCの開催予定を発表した。それによると議論のための十分な時間を確保するため、この間の会合はすべて2日間の日程で行うことが明らかとなった。

 FOMCは、毎年8回開催されている。これまでは主に1月、3月、4月、6月、8月、9月、10月、12月の開催となっていた。このうち3月、8月、9月、12月の開催については1日開催の場合が多かったが、これが2日間の開催予定となる。

 2009年には金融危機の影響などから、すべてのFOMCを2日間にするという異例の措置をとった。ただし、2010年にはこれまで通りの2日開催と1日開催の組み合わせに戻していた(日経新聞ネット版ネット)、しかし、2011年9月のFOMCについては、より十分な議論を可能にするためとの理由で、1日開催の予定が2日間に変更されていた。

 また、FRB議長の記者会見のスケジュールについても今回あらためて発表された。2011年4月から開始されたFRB議長による記者会見は、これまで最新の経済見通しを示す年4回の会合後に行われる予定となっていたが、今後は四半期末の会合、つまり3月、6月、9月、12月の会合後に行われることとなった。

 ちなみに日銀の金融政策決定会合は、原則として2日間の開催となる。ただし、4月と10月は月2回の開催となることで、それぞれ2回目の会合は1日開催となっている。日銀総裁の会見は毎回行われている。

 今後のFOMCと日銀の金融政策決定会合のスケジュールを確認してみたい。

5月は22日から23日が日銀、FOMCはなし。
6月は14日から15日が日銀、19日から20日がFOMC。
7月は11日から12日が日銀、7月31日から8月1日がFOMC。
8月は8日から9日が日銀、FOMCはなし。
9月は18日から19日が日銀、12日から13日がFOMC。
10月は4日から5日と30日が日銀、23日から24日がFOMC。
11月は19日から20日が日銀、FOMCはなし。
12月は19日から20日が日銀、11日から12日がFOMCとなっている。

 この間に果たして日米の中央銀行はどのような金融政策を決定してくるのか。FOMCの日程がすべて2日としたのは、2009年に金融危機に備えていたように、今後の世界的な金融危機の可能性を意識したものかどうかは不明ではあるが、そのリスクに備えた動きであろうとも推測される。これにより日銀が決定会合のスケジュール等をすぐに変更するような可能性は少ないと思われるが、危機対応として何らかのかたちで今後、スケジュールを含め見直される可能性もありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-05-18 09:27 | 中央銀行 | Comments(0)

英国のインタゲとは

 以前から1997年にブレア政権が誕生した直後のイングランド銀行の改革に関心があったのだが、あらためてネットで調べたところ1999年に立脇和夫氏が書かれたレポートがアップされており、このレポートも参考に、イングランド銀行の改革を振り返ってみたい。

 1997年5月にブレア政権が誕生し、それからわずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、「独立性」を高めるという大胆な改革に踏み切った。

 この改革とは、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会(MPC)へ政策運営権限を委譲すること、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲すること、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し新設された金融監督庁へ移管すること、そして国債管理業務の財務省への移管などである。

 なぜブレア政権は誕生直後にこのような大胆な改革に踏み切ったのか。それは、中央銀行の独立を強化する目的で中央銀行法を改正する国が相次いでいたこともあるが(参考までに改正日本銀行法施行は1998年4月)、将来、英国が欧州通貨統合に参加する場合に必要とされる中央銀行の独立性確保を念頭においたもの、との見方もあった。

 第二次大戦後イングランド銀行は,アトリー政権下に制定された「1946年イングランド銀行法」によって国有化され、同時に政策運営の独立性を失った。同法はイングランド銀行に対する大蔵大臣の指示命令権を規定し、実質的に大蔵省の付属機関と位置付けていたのである。ちなみに1988年4月のニュージーランドが初めてインフレーション・ターゲティングを導入後、1992年10月に英国も導入した。

 新設された金融政策委員会は「政策運営上の独立性」(Operational Independence)を与えられた。ただし、ここでいう政策運営上の独立性とは政府が定めるインフレーション目標を達成するための政策手段の決定を行う権限を意味しており、政策方針そのものの決定は政府の手に留保されている点を見落してはならないと、立脇氏は指摘している。

 イングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC) は、毎月上旬の水曜日の午後と木曜日の午前中に開かれる。MPCのメンバーは総裁1名、副総裁2名、理事2名と、財務大臣により任命された外部委員4名の合計9名である。イングランド銀行総裁及び財務大臣の任命する委員(任命委員)6名の任期は3年で毎年2名ずつ交替する。財務省代表は政策委員会へ出席し発言はできるが議決権は有していない。

 イギリスにおける金融政策の目標は、物価の安定を維持すること及び、成長及び雇用目的を含む政府の政策を支持することと規定されている(改正法第11条)。そして財務省が「物価の安定」の内容を決定し、政府の経済政策を具体化する責任を負っている。量的緩和策の導入やその拡大にあたっても財務相の了承が必要とされる。

 インフレ目標値から1ポイント以上乖離した際にイングランド銀行総裁は、金融政策委員会の議長として財務相あて公開書簡を作成しなければならない。改正法にはインフレーション目標に関する詳細な規定が設けられ、それによれば財務省は一年に1回、物価安定目標値及び政府の経済政策に関するステートメントを公表しなければならない。具体的にはインフレーション目標は毎年の予算教書で明示されている。それは、2004年1月以降は消費者物価指数(CPI)で2%とされている。

 財務省は金融政策に関し、イングランド銀行に対して指示を行う権限を留保しているが、これはそれが公共の利益に照らし、かつ「異常な経済情勢」の下でそれが必要であると財務大臣が判断した場合に限られる、と改正法では規定されている。いわば緊急時の対応ということになろう。

 以上がイングランド銀行の改革に伴った動きとともに、英国でのインフレ目標の状況である。これを見る限り、FRBによる物価に対するゴールとイングランド銀行の物価目標には違いがあることがわかる。1月25日のFOMCの終了後に発表された「長期目標と政策戦略」という声明文において、FRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。しかし、その目標から乖離しても何ら罰則等が設けられているわけではない。ただし、イングランド銀行もあくまで書簡を作成すれば良いだけとも言えるし、キング総裁は何通も書簡をすでに送っている状態にある。このあたりあまり厳格化してしまうと、金融政策の舵取りが難しくなる面もあろう。ちなみに9日、イングランド銀行のMPCでは、資産買い取りプログラムの規模を500億ポンド拡大することを決めた


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by nihonkokusai | 2012-02-10 09:45 | 中央銀行 | Comments(0)
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