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カテゴリ:中央銀行( 264 )

FRBの資産買入縮小

 8月21日に公表された7月30、31日のFOMC議事要旨では、9月の資産買入の縮小の判断を巡って、具体的な手がかりは示されなかった。年内に縮小開始、14年半ばメドに証券新規購入を停止とするバーナンキ議長の方針はほぼ支持された。このうち数人のメンバーが、資産買入縮小の判断を巡り慎重論を唱え、数人のメンバーは近いうちに緩和縮小が適切になると主張した。そして、ほぼすべてのメンバーが証券購入額を縮小するのは、このタイミングでは時期尚早だとの判断で一致していた。

 年内に縮小開始とのバーナンキ議長の方針はほぼ支持されたことで、9月か12月の議長会見があるFOMCでの縮小決定の可能性は高く、次のFRB議長の人選が固まり新体制が意識される12月よりも、バーナンキ議長の影響力の残る9月での縮小決定が規定路線と言えよう。もちろんそれには経済指標を含めての外部要因を念入りにチェックした上でのものとなる。

 ちなみに7月の米FOMC前にニューヨーク連銀が実施したプライマリーディーラー調査によると、FRBの資産買い入れ縮小は9月に150億ドル(国債100億ドル減、MBS50億ドル減)の規模で始まるとの見方が中心。さらに12月に150億ドル(国債50億ドル減、MBS100億ドル減)との見方となっていた。

「Responses to Survey of Primary Dealers」http://www.newyorkfed.org/markets/survey/2013/July_result.pdf

 たとえば米長期金利の上昇は資産買入縮小決定に影響を与えるであろうか。FOMC議事要旨では、金利上昇による影響は限定的との見方が示されていた。量的緩和縮小が非常時からの脱却を意味するのであれば、長期金利が3%台に上昇したとしても、それは2011年7月の水準に戻るだけであり、極端に高いというわけではない。1%台にいたことがむしろ低すぎたとも言える。

 それでは資産買入縮小による新興国の通貨や株価の下落による影響をどうみるか。新興国バブルの原因は、百年に一度と言われるような世界的な危機が立て続けに発生したことに対処するための、日米欧の中央銀行による異次元緩和であった。これを意識すれば、ある程度のバブル崩壊の動きはいたしかたない。むしろ、異次元緩和に頼り切ってしまうことのほうがリスクが高くなりかねない。

 非常に大きな病気が併発し、それに対処するには直接患部を治癒させることに加え、大量の薬が投与された。特に精神的な苦痛(マーケット)に対しての効果も意識されての投与(もしくは必要なら劇薬投与との意思表示)であったが、それがある程度の効果が発揮され、少なくとも精神的な苦痛はかなり減ってきた。大量投与には当然ながら副作用も意識せねばならず、そこで薬の量を減らそうとしたところ、薬に依存しすぎてきた別の器官が今度は悲鳴を上げてきた格好である。

 最高レベルにあった警戒レベルを、一段階引き下げるだけの状況になりつつあることは確かである。ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなどの金利の状況がそれを示している。今回の危機はあくまで欧州の危機であったはずである。一段階下げたとしても警戒レベルは引き続き高い位置にある。非常時の対応を続けば続けるほど、その副作用が大きくなる。新興国のバブル崩壊の影響をなるべく抑えるためにも、それはむしろタイミングを遅らせないほうが良いと思われる。

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by nihonkokusai | 2013-08-23 08:46 | 中央銀行 | Comments(0)

FOMCでの量的緩和縮小決定が9月とされる理由

 2012年9月のFOMCで住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明したが(QE3)、物価安定の下で労働市場の改善が実現できるまでMBSの購入を継続するとして、このMBSの買入はオープンエンド型(無期限)となった

 2012年12月のFOMCで、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大することになる。これにより現在FRBは、400億ドルのMBSの買入を含めると月額850億ドルを買い入れている。国債の償還分の買入も行っている。この買入もオープンエンド型(無期限)となった。

 この際に少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面が声明文から削除され、その代わりに、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。これがフォワード・ガイダンス(時間軸政策)である。

 FRBのバーナンキ議長は2013年6月19日のFOMC後の記者会見において、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示した。

 FRBはオープンエンド型としていた債券の買入については、無期限ではなく来年半ばにかけて終了する意向を示した。その後はデュアル・マンデートに目標値を置いた政策金利を超低位に維持するという量から金利に移行させようとしている。これまでは出口を見えにくくさせての効果を意識していたが、それはあくまで非常時の対応であり、世界的なリスク後退と景気の回復を確認し、危機対応レベルを一段階引き下げようというのが今回のFRBの意図とみられる。

 FOMCメンバーの多くは早期の量的緩和縮小については賛同しているように思われることに加え、バーナンキFRB議長の会見が予定されている9月に決定されるとの見方が市場関係者の間では強まっている。上記のように重要な政策変更があったのは昨年もFRB議長会見が予定されていたFOMCであったことからも、その可能性は高いと言える。今後のFOMC後の会見が予定されているのは、9月と12月であるが、12月では月日が経過してしまうことに加え、次期FRB総裁の人選もある程度進んでいると予想され、バーナンキ議長としては自らの影響力の残る9月に決定したいのではないかとの観測もある。

 FRBの債券買入縮小は、余程の外的ショックが発生したり、雇用関係の数値が大きく悪化しない限りは既定路線であり、9月のFOMC(17日、18日)で縮小が決定されよう。

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by nihonkokusai | 2013-08-21 09:32 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行のフォワード・ガイダンス

 7月1日にイングランド銀行のキング総裁の後任として就任したカナダ人のカーニー総裁は、新総裁就任に尽力した「オズボーン財務相の意向」もあり、フォワード・ガイダンスの導入に向けた動きを示していた。

 7月4日のカーニー総裁として初のMPCでは、全員一致で政策の現状維持を決めた。今年に入ってからのMPCでは、キング前総裁が量的緩和の枠拡大を提案するものの、多数派の委員がそれを退けるという状況が続いていたが、この際にはマイルズ委員とフィッシャー委員も前月まで続けた購入枠拡大の主張を取り下げた。さらに7月31日・8月1日に開催される次回会合では、インフレ・レポートと同時に、何らかのフォワード・ガイダンスを導入すると示唆した。

 8月7日のインフレ・レポートの公表の際に初めての記者会見に臨んだカーニー総裁は、7.8%(6月分)と高止まりしている失業率が7%になるまでは、過去最低の水準である年0.5%の政策金利を維持する方針を示した。イングランド銀行は失業率の見通しについて2016年の後半まで7%を上回ると予想していることから、この予想通りとなれば今回の方針は3年後まで現在の低金利政策を維持することを示唆した格好となる。つまりこれがフォワード・ガイダンス(時間軸政策)の具体的な数値目標となった。

 ただし、これにはいくつかの条件がある。そのひとつはインフレ率が18~24か月以内に2%の目標を0.5ポイント上回りそうだとMPCが判断した場合、ふたつ目は中期的なインフレ期待が「もはや十分に抑制されない」とMPCが見なした場合も三つ目は、現行の政策姿勢が「金融安定に著しい脅威」となるとの判断を英中銀の金融行政委員会(FPC)が下す場合である(ブルームバーグの記事を参考)。

 これによりイングランド銀行は軸足を量的緩和政策から時間軸政策に移した格好となり、非伝統的手段から伝統的手段に軸足戻すことで世界的なリスク後退を印象づけた格好となろう。ただし、非伝統的手段を完全に封じ込めたわけではない。カーニー総裁は必要となれば、資産購入プログラムの規模をさらに拡大する準備があると表明し、失業率が数値基準に達するまでMPCは資産購入の規模を縮小しない意向だとも語っている。新たなバズーカ砲はいったん武器庫にしまい、現状の武装のまま前線を長期間維持することを表明した格好か。

また、カーニー総裁は8日に、日本が過去に早すぎる緩和解除を行った誤りを英国が繰り返さないことが重要だ、と指摘した(ロイター)。これは2000年のゼロ金利政策の解除を示すのか、2006年の量的緩和政策の解除を示すのか、それとも両方を示すのかはわからないが、とりかく政策金利の引き上げは急がない姿勢を日銀のことを引き合いに出してアピールした。

 イングランド銀行がフォワード・ガイダンスの数値目標を失業率に置いたことで、その政策方針はデュアルマンデードを採用したFRBの政策に歩調を合わせた格好となる。FRBは米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、というフォワード・ガイダンスをすでに採用している。ECBもフォワード・ガイダンスに軸足を移しつつあり、これが欧米中銀のスタンダードとなってきている。指摘するまでもなく、日銀はこれらの動きからは完全に取り残されている。

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by nihonkokusai | 2013-08-09 09:48 | 中央銀行 | Comments(0)

テーパリングのタイミング

 金融市場関係者の間で最近流行っているカタカタ語に「テーパリング」というものがある。市場関係者などからは今頃、何を行っているのかと言われそうだが、テーパリング(tapering)とは、FRBのバーナンキ議長が発した用語で、量を減らすことを意味し、量的緩和の縮小を示す用語である。出口戦略(exit strategy)の一環ではあるが、あえて出口との用語は使わず、引き締め策に転じるのではないことを示しているとみられる。このあたり、出口戦略に向けてかなり神経をとがらせているように見受けられる。

 そのテーパリングの有無を見定めるための指標のひとつが雇用である。FRBの使命というか目標として定めているのは物価安定と雇用最大化を促すという「デュアル・マンデート(2つの目標)」のひとつである。

 8月2日に7月の米国の雇用統計が発表された。7月の非農業雇用者数は16.2万人増となり、事前予想の18万人程度(日経新聞)を下回った。同時に発表された5月と6月分もそれぞれ下方修正された。失業率は前月から0.2ポイント低下して7.4%と、2008年12月以来の水準まで改善した。この雇用統計を受けて、少なくとも9月での量的緩和縮小決定はないかもしれないとして、2日の米10年債利回りは前日の2.7%台から2.60%近辺に大きく低下していた。

 米債は2日に大きく戻したものの、その前日に下げた分を取り戻した格好となっており、いわゆるショートカバーが入ったようだ。この日、CMEグループは米雇用統計発表3秒前に、米10年債と30年債の先物取引を5秒間停止した。市場が過度に変動した場合に自動的に発動されるストップ・ロジック・イベントが発動したそうであるが、短期的な売買がかなり入っていたことをうかがわせるものであった。

 このような仕掛け的な動きが市場の値動きを大きくさせることも予想され、FRBとしては「バーナンキ・プット」という言葉が生まれるぐらいに特に株式市場には神経をとがらせており、出口戦略はかなり慎重に行っているように思われる。ちなみにバーナンキ・プットとは、米国の株価が下落すればバーナンキ議長が追加緩和策等で株価を支える動きをしてくれることを表現したカタカナ専用語である。

 セントルイス連銀のブラード総裁は、労働市場と経済が強さを増している確証を得た上で、債券購入のペースを減速させるべきだとの発言したようだが、ここにきての米国の経済指標のデータを見る限り、大きく悪化しているものは少なく、FRBが経済指標次第としているテーパリングの時期については、7月の雇用統計を受けてもさほど後退しているようには見えない。ダウ平均やS&P500種株価指数などは過去最高値を更新し続けている。

 今回の7月の数字も失業率はテーパリングの前提となる7%近辺への低下も見えてきつつある(ゼロ金利を続けるのは失業率が6.5%まで)。このため9月のFOMCでテーパリングが決定される可能性も十分にありうる。バーナンキ議長も自らの退任時期も睨み、9月あたりからのテーパリングの開始を意識しているのではないかと思われる。テーパリングの前提条件は、雇用を含めて米景気の回復、物価の安定を掲げてはいるものの、実際には世界的な金融経済リスクの後退が意識されているとみられるためである。

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by nihonkokusai | 2013-08-06 09:37 | 中央銀行 | Comments(0)

トップが変われば政策も変わる中央銀行

 2011年11月にトリシェ氏の後任として第3代欧州中央銀行総裁に就任したのが、マリオ・ドラギ氏。欧州の信用不安が強まるなか、ドラギ総裁は就任後、12月8日にECB定例理事会で政策金利を引き下げた上に、流動性を供給するため期間3年の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設するなど手を打ってきた。2012年7月にはユーロを守るために「必要なことは何でもする」と宣言し、これをきっかに市場は落ち着きを取り戻した。9月のECB理事会では市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定。あくまでその準備を整えただけで、実際に使用することはなかったが、これも欧州の信用不安を後退させる要因となった。トリシェ氏からドラギ氏に変わったことで、市場はその不安感を後退させてきたとも言えた。

 日本銀行は2013年3月20日に総裁と副総裁、いわゆる執行部が入れ替わった。昨年12月の安倍政権の登場で、アベノミクスを全面支援する格好となり、いわゆるリフレ派と呼ばれる人達の主張を取り入れた。異次元緩和と呼ばれた金融緩和策を、黒田総裁を中心に実行に移したのである。これまでの日銀からみれば180度異なる考え方でもあり、日銀の政策が総裁交代によって大きく変わったことになる。壮大な実験との見方もされるような金融政策が実施されている。

 イングランド銀行では、2013年7月1日に総裁がキング氏から、カナダ中銀総裁であったカーニー氏に交代した。初の外国人の総裁登用であった。カーニー総裁はどうやら、キング総裁の政策をそのまま受け継ぐのではなく、こちらも独自色を出してきつつある。キング総裁は量的緩和の拡大を目指していたが、カーニー氏はそれをいったん封印し、フォワード・ガイダンスを導入しようとしている。7月31日、8月1日のMPCではフォワード・ガイダンスの詳細が発表されるとみらる。このあたりからよりカーニー色が強まることが予想される。キング前総裁は英国のインフレターゲットの導入の際の中心人物でもあり、自ら総裁となってからもそれを進めてきた。カーニー総裁の古巣のカナダ中銀もインフレターゲットを導入しているが、どうも今後のイングランド銀行の金融政策の主軸はインフレターゲットというよりも、フォワード・ガイダンスに置かれる気配がある。

 このようにECB、日銀そしてイングランド銀行と、世界を代表する中央銀行はトップの交代とともに、その政策の舵取りを変えてきた。リーマン・ショックから欧州の信用不安という百年に一度とされるような世界的な金融危機のなか、財政政策には限度があり、その分、日米欧の中央銀行の政策に負担が掛かった。そんな状況下での中央銀行のトップの交代ではあったが、ドラギECB総裁はその不安払拭を成功させつつあり、イングランド銀行も市場の落ち着きから総裁交代をきっかけに、それぞれ非常時の対応から変化の兆しが見えてきた。

 そして、FRBもバーナンキ議長は来年1月にも退任するとみられ、こちらの後任も注目されている。報道によるとバーナンキFRB議長の後任にはイエレン副議長とサマーズ元財務長官の名前も挙がっているようである。イエレン副議長であれば問題はなさそうだが、市場はあまりサマーズ元財務長官は歓迎していないようで、このあたりオバマ大統領が誰を指名してくるのか注目される。バーナンキ議長はそのバトンタッチの前に、オープンエンドの債券買入を縮小させて、こちらも軸足をフォワード・ガイダンスに変更しようとしているように見える。

 FRBのトップが変われば、日米欧の中銀のトップがみな入れ替わることになる。それぞれのトップの手腕が試されることになるが、今後、どうやら求められるのは非常時の対応ではなく、非常時からの出口の対応となりそうである。ただし、これには日本銀行を除くが。




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by nihonkokusai | 2013-07-30 09:35 | 中央銀行 | Comments(0)

欧米3大中銀のフォワード・ガイダンスへの移行

 6月19日のFOMC後の記者会見において、バーナンキFRB議長は失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示した。

 FRBは昨年12月のFOMCで、少なくとも2015年半ばまで低金利を維持するとの文面を声明文から削除し、米失業率が6.5%を上回り、向こう1~2年のインフレ率が2.5%以下にとどまると予想される限り、政策金利を低水準にとどめる、という数値のガイダンスに変更された。いわゆるフォワード・ガイダンスである。

 縮小緩和時期については、予断を与えないようにしているが、早ければ9月あたりから開始かとの見方が強まりつつある。つまりFRBはその金融政策の軸足を中央銀行のバランスシートの拡大から、インフレ率の見通しが2.5%を超えない範囲において、米失業率が6.5%程度で安定するまで事実上のゼロ金利を継続するというフォワード・ガイダンスに移してくることが予想される。

 ECBのドラギ総裁は7月4日の定例理事会後の記者会見で、「理事会はECBの主要金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する」と発言した。これまでECBは、金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、その方針を変更してきた。つまりこちらもフォワード・ガイダンスを取り入れた政策に移行しつつある。

 7月4日のイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)では、全員一致で政策の現状維持を決めた。7月31日・8月1日に開催される次回会合では、インフレ・レポートと同時に、何らかのフォワード・ガイダンスを導入するとしている。

 FRBは債券買入という量的緩和政策に加えて、フォワード・ガイダンス(時間軸政策)を持ってきたが、これは2本柱を設置したというよりも、柱を量的緩和からフォワード・ガイダンスに移行させることを念頭に置いたものともみられ、それにECBやBOEも追随した格好となった。

 WSJによると、FRBは7月30日、31日のFOMCで、金融政策の先行き見通しを示す指針であるフォワード・ガイダンスをより詳細にするか、修正することを検討する可能性があると報じた。これは量的緩和という柱を後退させる上での市場の動揺に配慮したものではないかと推測される。

 FOMCは7月30、31日の日程であるが、7月31日、8月1日の日程でイングランド銀行のMPCが開催される。また、8月1日にはECB政策理事会が開催される。FRBの動向を確認して、イングランド銀行とECBは、フォワード・ガイダンスに対する詰めを急ぐのではないかと推測させる。欧米の3大中央銀行が、有事の対策としての国債買入を中心とした異次元緩和から、平時の政策に戻ろうとしている。それだけ世界的なリスクが後退したためとみられるが、市場に配慮してあまり目立たないように進めようとしているとも思われる。それでも大きな政策変更であることに違いはなく、来週のFRB、BOE、ECBの動きにはかなり注目する必要がありそうである。

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by nihonkokusai | 2013-07-27 11:45 | 中央銀行 | Comments(0)

カーニー総裁登場で変化したイングランド銀行の金融政策

 7月4日のイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)では、全員一致で政策の現状維持を決めていたことが17日に公表された議事録で明らかになった。今年に入ってからのMPCでは、キング前総裁が量的緩和の枠拡大を提案するものの、多数派の委員がそれを退けるという状況が続いていた。今回はマイルズ委員とフィッシャー委員も前月まで続けた購入枠拡大の主張を取り下げている。

 7月31日・8月1日に開催される次回会合では、インフレ・レポートと同時に、何らかのフォワード・ガイダンスを導入するとしている。フォワード・ガイダンスとは時間軸政策とも呼ばれ、将来の政策金利などについて事前に示唆することにより、市場の期待に働きかけようとする、中央銀行の市場とのコミュニケーション手段である。

 日銀は1999年2月の最初のゼロ金利政策を導入した際には「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで」ゼロ金利を継続し、2001年3月に量的緩和策を導入した際には、「コアCPIの前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで」量的緩和政策を継続するとしていた。このようにフォワード・ガイダンスとは、何かしらの指標等を目安に現在の緩和策を維持するとし、より長い金利の低下に働きかけようとする手段である。FRBもインフレ率の見通しが2.5%を超えない範囲において、米失業率が6.5%程度で安定するまで事実上のゼロ金利を継続する方針を表明しており、これもフォワード・ガイダンスとなる。

 7月4日にはECBも政策の軸足をフォワード・ガイダンスに移すことを表明していた。これまでECBは、金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、BOEも同様であった。

 BOEの現在の金融政策を確認してみると、政策金利であるオフィシャル・バンク・レート(準備預金金利)は0.5%と史上最低水準が維持されている。2009年3月以降は資産購入プログラムと呼ばれる量的緩和策を実施し、その枠は3750億ポンドまで拡大されたが、現在はそれを使い切っており、このため追加緩和策としてキング前総裁などはその枠の拡大を提案していたのである。

 日本では白川総裁から黒田総裁に代わり、リフレ政策に転じたがその際も金融政策については全員一致となっていた。キング総裁からカーニー総裁に代わったBOEも政策のスタイル変更があったが、こちらも全員一致となった。

 カーニー総裁は就任前に名目GDPターゲットの可能性を示唆していたが、それを採用する可能性は後退している。あくまで独自案のひとつであったものとみられる。

 BOEはインフレ・ターゲットを採用しているが、それは現在の日銀が採用しているものよりも柔軟性があり、中期的に物価をターゲットに納めることを目標としている「フレキシブル・インフレ・ターゲット」である。カーニー総裁は、いわゆるリフレ派とは一線を置いており、以前に公聴会のなかで、ヘリコプター・マネーに関して、それをサポートするような戦略には否定的な発言をしていた。日銀で言えば黒田総裁よりも白川前総裁のスタイルに近いとも言えるが、これが欧米の中銀のスタンダードとも言えるものではある。

 いずれにしても、イングランド銀行も総裁が代わり、その政策スタイルが変化した。偶然か、何らかの示し合わせがあったのかはわからないが、ECBも同様の政策を取り、欧州の金融政策は歩調を合わせる格好となった。8月のMPCでフォワード・ガイダンスについては、何で縛りをかけてくるのか。このあたりにも今後は注目されそうである。

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by nihonkokusai | 2013-07-19 09:23 | 中央銀行 | Comments(2)

試行錯誤しているFRBの出口政策

 中央銀行による超緩和政策からの出口政策は非常に難しい。市場がその緩和策に慣れてしまい、それに依存してしまっている状況となると尚更である。昨日発表された6月18・19日分のFOMC議事要旨の内容や、その後のバーナンキFRB議長の講演後の会見内容からもその困難さが垣間見られる。

 FOMCの議事要旨では、複数のメンバーが資産買い入れの縮小が近く正当化される可能性があると判断していたが、多くのメンバーが、資産買い入れのペースの減速が適切となる前に、労働市場の見通しの一段の改善が必要と指摘していた。

 バーナンキ議長は会見で、インフレ率は依然低水準で失業率は雇用情勢を誇張している可能性があり、当面は金融緩和策を継続する、との方針を示した。運が良ければ、より高い成長や労働市場の継続的改善を生むようなプラス要因もあると発言したようで、これまでの出口に向けた前向きの姿勢を少し改めた格好となった。

 市場では5月と6月のバーナンキ議長の発言から、早ければ9月のFOMCで量的緩和政策の縮小を開始するのではとの見方が強まり、米国の長期金利は7月7日に2.7%台に上昇した。5月22日に2%台に乗せてから上昇基調を強めており、このままの上昇ピッチが続くと3%台に乗せるのは時間の問題となる。10日のバーナンキ議長の発言で、出口に向けた政策に関してトーンダウンしたのは、この米長期金利の上昇も意識されていたものとみられる。

 それでも7月5日に発表された6月の雇用統計でも雇用の改善は確認されており、FRBのスタンスとしては出口に向けた政策を今後は淡々と打ってくると予想される。これに対して市場はかなり敏感に反応していたが、米国政府からは特にそれを非難するような声は飛んできていない。

 日銀が最初のゼロ金利政策を2000年8月に解除した際に、政府は議決延期請求権を行使し、反対の姿勢を明確にしていた。2006年3月の量的緩和政策と7月のゼロ金利政策の解除に際しては、表だっての反対はなかった。しかし、当時の安倍晋三官房長官は、金融面から経済を十分支えてほしいとの観点で、当面ゼロ金利政策の継続が望ましいとの考えを示していた(ロイター)。実際のところはかなり反対していたらしいが、政府はあくまで日銀が独立性をもってやる判断だとの認識を示していたことで、表だっての反対姿勢は示さなかった。そのときの反省も踏まえ、リフレ政策を中心としたアベノミクスが生まれたとも言える。

 日銀の場合には市場よりも政府の反応、FRBの場合には政府よりも市場の反応をかなり意識せざるを得ない。これは世界経済に与える影響度の違いとともに、中央銀行の存在そのものに対する政府による認識の違いが現れているためと思われる。

 日銀の場合、出口政策は2年後にコアCPIが2%になりそうな際に考えるべきものとなっているようであり、いま考えるものではないとの雰囲気であるが、FRBはできれば早めに、巨額の債券買入はブレーキを掛けたいというのが本音であろう。過去にこのような出口政策はあまり経験はないはずであり、試行錯誤し、市場との対話を進めながら、そのタイミングを計っているようである。

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by nihonkokusai | 2013-07-12 09:38 | 中央銀行 | Comments(0)

フォワード・ガイダンスが欧米の金融政策の柱に

 ECBのドラギ総裁は4日、定例理事会後の記者会見で、「理事会はECBの主要金利が長期間にわたり、現行水準もしくはそれを下回る水準になると予想する」と発言した。これまでECBは、金利に関して予断を持たず、形式上は事前に将来の金融政策についてコミットしないという方針を貫いてきたが、その方針を変更してきたようである。

 ECBのクーレ専務理事は仏紙ルモンドのインタビューで「これはコミュニケーション上の変化であって、金融政策の戦略変更ではない」と発言していた。また、ECB理事会メンバーであるフランス銀行のノワイエ総裁は6日に、「フォワード・ガイダンスはわれわれの責務に完全に付随しており、われわれの戦略の2本柱とも一致している」と記者団に述べたそうである(以上、ロイター)。

 イングランド銀行でも、7月1日に就任したばかりのカーニー新総裁が早速動きを見せた。7月4日のMPCにおいて、金融政策そのものは据え置いたが、政策金利を市場が想定したよりも長期にわたって過去最低に据え置くことを示唆し、こちらも封印していた将来の金融政策見通しを示すガイダンスをはじめた。8月のMPCでは「インフレ・レポートと同時に、何らかのフォワード・ガイダンスを導入する」としている。カーニー総裁は前カナダ中銀総裁であり、そのカナダ中銀はフォワード・ガイダンスをすでに導入していたことで、イングランド銀行でもそれを採用するのではとの観測も流れていたようである。

 フォワード・ガイダンスとは、将来の政策金利などについて事前に示唆することにより、市場の期待に働きかけようとする、中央銀行の市場とのコミュニケーション手段である。それを最初に取り入れたのが日本銀行である。1999年2月の最初のゼロ金利政策を導入した日銀はその2か月後の4月に「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで」ゼロ金利政策にコミットすることを公表した。2001年3月に量的緩和策を導入した際には、「コアCPIの前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで、量的緩和政策を継続する」とし、量的緩和政策の継続に関するコミットメントの条件を明確化した。

 ドラギ総裁は、ECBがフォワード・ガイダンスを取るのは初めてと強調したそうだが、なぜこのタイミングでそれを表明したのか。FRBの量的緩和の縮小に向けた動きで市場が動揺したのを鎮めるためとの見方もできるが、超低金利政策の効果を持続させるために、イングランド銀行の動きも気にしながら、それを検討した可能性もありそうである。

 FRBの債券買入の縮小は9月にも決定されるとの見方が強まっている。そうなると実際に大量の国債を買い入れるような政策を行っている主要な中央銀行は日銀だけとなる。FRBも量的緩和策は縮小しても、超低金利政策は当面継続してくるとみられ、欧米の金融政策はフォワード・ガイダンスを意識したものに主軸が置かれるものと予想される。

 これに対して日銀は2年後にコアCPIを2%にするとの物価目標を主軸にしており、それがもし達成可能であれば、フォワード・ガイダンスについてはかなり不透明なものとなる。これが中期ゾーンの金利を不安定にさせたひとつの要因でもあった。このあたりの日銀と、欧米の中銀のスタイルの違いからも、日銀の現在の政策が現在の世界の金融政策の流れのなかで、極めて異質に見える。現在の政策には柔軟さはなく、その波及経路もはっきりしないにも関わらず、闇雲に目標に向けて邁進しているだけの政策のような見えてしまうのは私だけであろうか。

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by nihonkokusai | 2013-07-10 09:25 | 中央銀行 | Comments(0)

ドラギ・マジックは健在

 どうやらドラギ・マジックは健在のようである。ドラギ・マジックとは欧州の信用不安が強まると、ドラギECB総裁が何かしらの手段を講じてそれを抑えに掛かること、との解釈も可能かも知れないが、私はそれよりも何ら具体的な手段を講じなくても、言葉だけで市場を安定化させてしまうことがマジックだと思っている。

 2011年11月にはトリシェ総裁の任期満了に伴いドラギ氏がECB総裁に就任したが、11月から12月にかけて連続利下げを実施し、政策金利は1.0%に戻した。さらに非標準的手法として、流動性を供給するため期間36か月の長期リファイナンス・オペ(LTRO)を新設した。ドラギ総裁はユーロ圏の信用不安払拭のためには、とにかく行動するということをまず印象づけた。

 そして、欧州の信用不安後退の大きなきっかけとなったのが、ドラギ総裁が2012年7月に、ユーロ存続のために必要な、いかなる措置を取る用意があると表明したことであった。これに加え2012年9月のECB理事会では、市場から国債を買い取る新たな対策を打ち出した。これにより市場に安心感を与えたものの、実はここでは何ら具体的な手段は講じていない。言葉だけで市場心理を好転させていた。これがマジックであったと思う。もちろんそれにはドラギ総裁への絶大なる信認が背景にあったと言える。

 7月4日のECB政策理事会では、主要な政策金利を0.5%のまま据え置いている。ただし、追加利下げの可能性も強く示唆しており、今後、0.25%程度の引き下げの可能性はある。それよりも、今回はとっておきのカードを使ってきた。ただし、今回も言葉だけで。

 理事会後の記者会見でドラギ総裁は、政策金利は長期にわたって今と同じか、より低い水準にとどまることが見込まれると発言した。これは一見、あたりまえのことを言っているように思われる。FRBや日銀は時間軸政策をとっており、それに慣れているとこの発言は何らサプライズとは思えない。

 ところが、これまでのECBは将来の政策をコミットメントしないというのが原則だったのである。今回はその原則を放棄して、いわゆる時間軸政策に踏み切った格好となった。今回もドラギ総裁は何か具体的な手を打たずして、期待に働きかけて市場を動かした。

 FRBの出口政策が意識されて市場が不安定となっていたことに加え、ポルトガルの政情不安もあり、ポルトガルだけてなく周辺国の国債利回りがここにきて上昇していた。まさに、うまいタイミングで切り札を出し、動揺を抑えに掛かった格好になった。

 さらにイングランド銀行でも、7月1日に就任したばかりのカーニー新総裁が早速動きを見せた。金融政策そのものは据え置いたが、政策金利を市場が想定したよりも長期にわたって過去最低に据え置くことを示唆し、こちらも封印していた将来の金融政策見通しを示すガイダンスをはじめたのである。ECBとイングランド銀行は共に、時間軸効果を意識した政策に軸足を起き始めた、というよりもFRBの出口政策に対して、あらたなカードを出してきて、ECBとBOEは超緩和策の出口をあえて遠ざけて、市場心理を好転させた。

 これに対して、日銀が異次元緩和で行ったのは異常ともいえる大量の国債買入であり、そう簡単に達成できるものではない2年以内で2%の物価目標の設置であった。これらは国債市場の流動性を不安定化させたばかりか、先行きの金利観も不安定化させている。円安・株高を招いたアベノミクスではあるが、これはアベ・マジックもしくはクロダ・マジックであったのか。少なくとも債券市場から見る限り、市場との対話に成功しているわけではなく、マジックと評されるかは疑問である。

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by nihonkokusai | 2013-07-06 09:51 | 中央銀行 | Comments(0)
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