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カテゴリ:中央銀行( 246 )

FRBの追加緩和で日銀も動くのか

 FRBは9月13日のFOMC後に発表した声明で、雇用の伸びは緩慢で、失業率は依然として高止まりしているとして追加の緩和策を発表した。まず、住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明した。

 6月に発表した通り保有証券の平均残存期間を長期化するプログラムは「今年末」まで継続し、政府機関債とMBSの元本償還資金をMBSに再投資する政策を維持することにより、長期証券保有は今年末まで毎月約850億ドル増加する。

 物価安定の下で労働市場の改善が実現できるまでMBSの購入を継続し、さらに追加の資産購入を実施するとともに、その他の政策手段を適宜活用する。つまり今回のMBSの買入はオープンエンド型となる(無期限)。

 さらに超低金利政策を据え置く時期を、2015年半ばまでとして時間軸を延長させた。これにより、およそ2年ぶりに量的緩和に踏み切るとともに、時間軸の強化を図ってきたことになる。

 今回の政策は市場ではすでにQE3と呼んでいるが、その買入は国債ではなくMBSとなった。直接的に長期金利の低下に働きかけるというよりも、住宅ローンを担保にした証券であるMBSを買い入れることで住宅市場に働きかけ、ここから雇用の拡大に影響を与えようとしたものと思われる。

 前回のFOMCでは米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念が示されたが、連銀スタッフは機能を阻害せずに買い入れる余地はまだあるとの分析を行っていた。 しかし、いずれFRBのバランスシートを正常化させる際に詐害要因になるとの懸念も示され、数人の参加者からは中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示された。

 それにもかかわらず今回、MBSの買入に踏み切ったのは、バーナンキFRB議長がジャクソンホールで雇用市場の停滞は特に深刻な懸念事項だと発言していように、雇用の回復が重視されたためとみられる。ただし、FRBが直接雇用に働きかける手段は持っておらず、そのため国債よりも直接住宅投資に働きかけやすいMBSの買入に踏み切ったものと考えられる。

 自ら追加緩和を臭わせて市場の期待を醸し出して、その期待は結果として裏切られなかったことで、これは米株式市場には好感された。しかし、12日の米国債券市場では短期債は買われたものの、30年債は売られた。米国債の買入期待もそれなりにあったものと思われる。

 米国債もしくはMBSの買入という切り札は、大統領選挙やその後の財政の崖問題もあり、切り札として温存しておくかと思われたが、バーナンキ議長は早めに手を打ってきた。それだけ中央銀行に向けられた期待感も大きかったこともあろうし、ECBによる国債買入とタイミングを合わせたことで、世界経済への回復まで意識した動きのように感じられる。早めに手を打ったのは、むしろ大統領選挙を見据えて、共和党のロムニー候補がFRB議長は再指名せずと発言し、ライアン副大統領候補も追加緩和策は悪い考えとの認識を示したことなどを意識した可能性も指摘されていた。

 今回のECBとFRBの追加緩和により、為替の動き次第にかかわらず、日銀も何らかの手を打った方が良いのかもしれない。民主党の代表選や自民党の総裁選も控えているが、総選挙を見据えて、日本の政治は当面機能停止に陥る懸念もあり、このためECBやFRBとともに、日銀も景気回復に向けての協調姿勢見せれば、市場はそれを好感しよう。また直接関係はないものの、10月にはIMFの年次総会が日本で開催されることで、日本の政策そのものにも注目が集まろう。そのための追加緩和というわけではないが、協調性も意識すれば、9月18日~19日の金融政策決定会合は良いタイミングとなるのかもしれない。これは実質的な効果はさておき、あくまでアナウンスメント効果を意識しての話ではあるが。ただし、日銀の白川総裁は円高是正のため「劇場型金融政策」を求める声に対し「サプライズは長続きしない」として否定的な姿勢を示しており、この意味では追加緩和の可能性はそれほど高いわけではない。

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by nihonkokusai | 2012-09-16 09:28 | 中央銀行 | Comments(0)

来年の日銀総裁人事にも影響するか、イングランド銀行総裁の公募制

 NHKの報道によると、イギリスのオズボーン財務相は11日、議会での演説の中で、来年6月で任期を終えるイングランド銀行のキング総裁の後任について、公募する方針を明らかにしたそうである。

 総裁の公募はイングランド銀行では初めてだそうだが、世界の中央銀行でも極めて異例となる。オズボーン財務相は「公正で開かれた手続きで行う」と述べ、選考過程の透明性を高めるためだと説明したとか(NHK)。

 選考にあたっては、中央銀行や同じような機関での職務経験か、民間の大手金融機関で経営トップを務めた経験を持っていることなどが条件となる見通し。イングランド銀行の理事には外国人もおり、今回の総裁人事でも外国人が要件を満たす可能性もあるようである。

 イングランド銀行総裁の人事については、副総裁含めて、首相の助言に基づいて女王が任命する形式となっている。任期は5年で再任できる。人選にあたっては財務省の影響が大きく、これまでは現役の総裁や財務次官などと検討し、財務相が首相に候補者を推薦する格好となっていた(このあたりは日銀総裁人事とも似ているか)。ちなみに現在のキング総裁は副総裁から総裁に就任している。

 実は次期総裁候補にはタッカー副総裁が最有力とされていたものの、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題で関与が疑われたことで流動化した。カナダ銀行のカーニー総裁を推す声もあるようだが(共同通信)、LIBORの不正操作問題もあり、公募という形式を取らざるを得なかったようにも思われる。公募は10月8日まで受け付け、年末までに決定する。

 ちなみにFRB議長は14年任期の7名の中から議長と副議長が選ばれる。議長と副議長の任期は4年。議長・副議長・理事は大統領が上院の助言と同意に基づいて任命する。その後、上院の公聴会を経て上院本会議で承認される。FRB議長は大統領に次ぐ影響力を持つと言われ、世界的にも注目される人事であり、今回も大統領選挙でのひとつの争点ともなっている。米共和党の大統領候補に内定しているロムニー氏は、自身が大統領に当選した場合、2014年1月に2期目の任期が切れるバーナンキ現議長を再指名する意思がないと言明している。  ECB総裁の人事については、欧州理事会が候補者を推薦し、欧州議会とECB政策理事会の承認後に欧州理事会が任命する形式となっている。国を跨ぐ異例の中央銀行であるだけに、その中核国であるドイツやフランスの意向が反映されやすくなるとともに、ドイツとフランスの対立がさらに人事をややっこしくさせている面もある。

 たとえば、ECBの初代総裁となったのが、オランダ銀行総裁やオランダ大蔵大臣を歴任したウィム・ドイセンベルク氏であった。本来であれば総裁の任期は8年であったが、総裁選出や本部所在地との兼ね合い等々があり、ドイセンベルク氏の任期半ばでの退任と、その後継にはフランス銀行総裁のトリシェ氏を任命することが、公然の密約として取り交わされていた。つまり、ドイツとフランスの対立などが反映され政治色が非常に強いものとなっていたのである。

 ECBのトリシェ総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行のウェーバー前総裁が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー前総裁が、個人的な理由(ECBの国債買入に反対)で2011年4月末にドイツ連邦銀行総裁を辞任したことで、トリシェ総裁の後任にはイタリア出身のマリオ・ドラギ氏が就任する結果となった。

 そして、日銀の総裁人事は国会同意人事となっている。政府から人事案が衆参両院の議院運営委員理事会に提示され、衆参両院の議院運営委員会で総裁候補者からの所信聴取のあと、衆参両院の本会議で採決されるという仕組みになっている。しかし、福井総裁の後任人事では、両院の同意が得られず一時、日銀総裁が戦後初めての不在となるなどの事態も発生したこともあり、人事案がどのような経緯で出されているのかはやや不透明なところがある。

 来年4月8日に白川総裁は任期満了となる。再任の可能性も残るが、新日銀法に基づく制度となってから速水氏、福井氏ともに1期のみであり、白川総裁も1期のみとなる可能性も高いと思われる。年内にも解散総選挙となれば、政権がどのような形になるのかも皆目見当がつかず、来年の日銀総裁人事も前回以上に厳しい状況となる可能性がある。この際、日本でも英国同様に公募制にしてしまったほうが透明度も強まり、良いのかもしれない。今度のイングランド銀行の総裁の公募制は、来年の日銀総裁人事にもかなり参考になるのではないかと思われる。


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by nihonkokusai | 2012-09-13 09:43 | 中央銀行 | Comments(0)

中央銀行による国債の無制限買入で果たして効果は出るのか

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ここでのキーワードは、対象となるイタリア、スペイン、ポルトガルなどの国債の「無制限買入」となっていた。確かに今回は目標や量をあらかじめ設定しないことが市場では注目された。

 ECBのアスムセン理事(ドイツ出身)は、ECBの新たな国債購入プログラムについて、上限を設定しなかったのはその効果を確実にするためだと説明した。ただし、ドイツ連邦銀行のバイトマン総裁の金融政策による政府財政ファイナンスと同義だとの批判に対して、「新プログラムは旧来のものよりはましだ」との発言もしている(ブルームバーグ)。

 市場では無制限介入という言葉の影響を与えながら、実際にはECBの購入には厳しい経済的条件が課され、期間も1~3年となるなど、現実にはかなりの制約もあり、その意味では前回の買入のように何ら制約条件がない買入に比べると効果がそれほど大きいものであるのかは疑問である。ただし、それでも市場はこの国債買入決定を好感し、スペインの10年債利回りが6%を下回るなどの効果がすでに出ている。市場での「無制限介入」への期待はそれだけ強かったと思われる。

 また、米国でも7日の米雇用統計を受けて、規模・期限定めないQE3を実施すべきとの、サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁が主張している。ほかにシカゴ連銀のエバンズ総裁、ボストン連銀のローゼングレン総裁も同様の主張をしている。また、アトランタ連銀のロックハート総裁も、これが選択肢に挙がっていると発言している。

 ただし、FOMC内ではQE3について、現状ではそのプログラムの有効性について疑問視している見方や、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念、中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示されている。

 米国の雇用については不透明感も強いが、QE3を打ち出さなければならない水準かと言えば、それほど雇用が急激に悪化しているわけでもない。ここでたとえば規模・期限定めない無制限の米国債の買入をFOMCで決定したとしても、米長期金利に低下圧力、米株に上昇圧力は加わろうが、果たしてそれで雇用に影響が出るのかどうかも不透明である。インパクトは強いものの、のちのちにその副作用が出る懸念もある。

 日銀の国債買入については無制限ではない。しかし、これについてもやや不透明となってきてはいる。これまでの通常の国債買入(輪番オペ)については、日銀券ルールという制約がある。つまり、日銀の保有する国債残高を銀行券発行残高の範囲内とする運営ルールである。これに対して基金による国債買入は別枠としており、さらに買入残高を決めていることで無制限介入とはならない。ただし、この基金による国債残高を加えるとすでに日銀券残高を上回っていることも確かではあるが、とにかく歯止めがあることも確かである。

 ECBの国債の無制限買入も実際は前回ほど緩やかなものではない。FRBにとっても無制限買入まで行うにはその副作用も出ることが考えられるため、そう簡単には踏み切れないと思われる。どちらかといえば、追加緩和として基金による国債買入残高を増加させてきた日銀こそ、ある意味無制限買入に近いような格好であるが、それでも効果については限定的のように思われる。今回のECBの「無制限」という言葉はあくまで市場に向けたアナウンス効果も意識したものとみられ、それによる実質的な効果については、今後の動向で明らかになると思われる。


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by nihonkokusai | 2012-09-12 09:30 | 中央銀行 | Comments(0)

日米欧の金融政策を決める人達の男女比

 ロイターによると欧州議会は、ルクセンブルク中銀のメルシュ総裁の欧州中央銀行(ECB)専務理事就任に向けた公聴会開催を延期した。ECB内の人事に男性への「システミックな」偏りが見られることが理由だそうである。欧州議会では、ECBの運営組織が男性のみで構成されていることや、女性の候補者が検討さえされないことに懸念が示されていたそうである。

 日銀の政策委員も女性は白井委員一人だけであるが、審議委員の選定にあたっては男女の割合などより、デフレ脱却に向けて、というより政府の意向を反映した人事かどうかだけで判断された気配がある。まあ、それでも一人いるだけでも、まだましともいえる。

日銀の政策委員
http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/index.htm/


 ECBの定例理事会の議決権を持つメンバーは、ECBの役員6名(総裁、副総裁、理事4名)と域内17か国の中央銀行総裁も加えて23名。このうちECBの役員は、イタリア出身のドラギ総裁(前職はイタリア銀行総裁)、ポルトガル出身のコンスタンシオ副総裁(同ポルトガル銀行総裁)、専務理事としてベルギー出身のプラート氏(元IMFのエコノミスト)、ドイツ出身のアスムセン氏(同財務次官)、フランス出身のクーレ氏(同財務省のチーフエコノミスト)という顔ぶれ。

 理事が一堂に会した写真はこちら。男性ばかりである。写真には5月末に退任したゴンサレスパラモ氏も。
http://www.ecb.int/ecb/orga/decisions/eb/html/index.en.html

 イングランド銀行の金融政策委員会(MPC)は、総裁1名、副総裁2名、理事2名と、財務大臣により任命された外部委員4名の計9名で構成されている。キング総裁は大学教授、BOEのチーフエコノミスト・副総裁を経て現職。ビーン副総裁は財務省、大学教授、BOEのチーフエコノミスト・常任理事を経て現職。ダッカー副総裁はマーチャント・バンク、BOE理事を経て現職。常任理事はBOEの金融政策と金融調節担当者が選ばれ、現在はデール理事とフィッシャー理事。外部委員のブロードベント委員は財務省の経済顧問、ゴールドマン・サックスのエコノミスト。マイル委員はモルガン・スタンレーのチーフエコノミスト。ボーゼン委員はアメリカ人のエコノミスト、ウィール委員はケンブリッジ大学で経済学を教えていた。

 こちらも一堂に会した写真はこちら。男性ばかりである。
http://www.bankofengland.co.uk/monetarypolicy/Pages/overview.aspx


 ただし、FOMCのメンバーの7名の理事に関しては、女性の比率が高くなっている。バーナンキFRB議長はプリンストン大学の教授等の後FRB理事、CEA委員長などを経てFRB議長に就任。イエレン副総裁(女性)は元サンフランシスコ地区連銀総裁。デューク理事(女性)は銀行界出身、タルーロ理事は大学教授やクリントン政権時代に大統領補佐官を務めた。ラスキン理事(女性)の前職はメリーランド州金融規制局長、NY連銀でも働いていた経歴を持つ。パウエル理事はブッシュ大統領の下で財務次官を務め、スタイン理事はハーバード大学の経済学教授。

 こちらのメンバーの写真はこちら。4対3の割合。
http://www.federalreserve.gov/aboutthefed/default.htm

 これを見る限り、欧州では金融政策は男性の仕事と意識されているようで、米国では女性の割合が高い。日本ではこれまで政策委員の9人中1人。これを見ても日本の金融政策は米国より欧州の影響を強く受けているようにも思えるような。たしかに日銀のモデルになったのはベルギーの中央銀行ではあったが。


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by nihonkokusai | 2012-09-10 16:54 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBの金融政策のよる新国債買い切りプログラム(OMTs)の是非

 9月6日のECB理事会で、市場から国債を買い取る新たな対策を正式に決定した。ECBが発表したプレスリリースによると、それは「Outright Monetary Transactions」と呼ぶようである。アウトライト取引とは単純に売りもしくは買いを行うことであり、今回のECBの場合は、国債の単純な買い切りを示すことになろう。

 これまでのECBが行っていた流通市場における国債買入はSMP(証券市場プログラム、Securities Markets Program)と呼ばれていたが、これとは別な国債買入であることを示すため呼び名も変えたものと思われる。

 これまでのSMPは2010年5月のギリシャなど欧米諸国の財政不安にともなう市場の動揺に対する欧州連合(EU)による最大7500億ユーロ規模のユーロ圏支援基金と証券買い取りプログラムと呼応して取られた措置である。

 これにより、ECBが国債の流通市場に介入することになったが、1999年のユーロ発足以来、欧州の中央銀行が国債の買入を実施するのは初めてであった。この際のECBによる国債の買入目的は、日銀のように市場への資金供給が目的ではなく、あくまで国債市場の安定化、市場機能の正常化が目的とされた。金融政策への影響を避けるために、国債買入で放出した資金を回収する手段を講じた。

 SMPは2010年5月に実施されたあと一時中断し、2011年8月に再開されたが、2012年3月を最後に再び中断されていた。2010年5月はギリシャ国債を購入し、2011年からはスペインとイタリア国債を購入したとみられるが、ECBはこの国債買入について規模やその対象について明らかにしていない。2012年4月以降、購入を見送ったのはドイツ連銀による猛反発が要因とされた。

 今回のECBによる新国債買い切りプログラム(OMTs)には、SMPと異なり明確な条件が付けられている。国債買入の対象となる国は、まずユーロ圏諸国に対しEFSF・ESMによる支援を要請し、その支援を受けるための財政再建等に取り組む必要がある。つまりECBによる国債買入を実施するには、対象となる国がEFSF・ESMによる支援を受けることが前提となる。SMPにより買入が開始されても、条件が巡視されなければ一時的に停止もありうる。

 買入の対象は期間1~3年の国債が中心となる。買い入れ規模に上限は設けない。つまり無制限の買入となるが、買入には条件が付いている点にも注意する必要がある。

 買い入れた債券については、民間債権者を含むその他債権者と同等の扱いとなる(優先債権者待遇を適用しない)。国債買入で放出した資金は回収される(不胎化)。

 買い取った債券の保有残高と時価は毎週公表し、保有債券の平均償還期間と国別内訳も毎月公表される。これもSMPと大きく異なる点である。

 OMTsの導入によりSMPは中止する。ただし、購入済みの証券の非不胎化措置は継続され、またSMPにより買い入れた債券については満期まで保有する。

 今回のOMTsの決定によりECBは新たな領域に踏み込んだとの見方がある。ドラギ総裁は、「今回の対策は、ユーロの将来に対する投資家の根拠のない懸念からくる債券市場のゆがみに対処することができる」と述べた。

 これに対して今回の決定に一人反対したドイツ連銀のバイトマン総裁は、ECBの国債買入は金融政策が財政政策に隷属する恐れがあり、ECBが最終的に多大なリスクを各国の国民に再分配するという危険性もはらんでいるとしている。

 ECBによる国債買い入れは紙幣増刷による政府への財政ファイナンスに等しいと懸念を示すバイトマン総裁の意見も正論であろう。しかし、ユーロ危機の封じ込めには、かなり思い切った手段が必要となる。マーケットの不安をまず払拭させない限り、危機が繰り返し訪れる。つまりマーケットでの南欧国債の売りに歯止めを掛けることで、危機を緩和しうる。ただし、この政策はバイトマン総裁の主張するように副作用も伴うものであり、また対象国の財政健全化がせなされなければ一時的な時間稼ぎとしかならない。

 今回の新国債買い切りプログラムの是非については、すぐには解答は出ないと思う。今後もドイツ連銀総裁はこの買入については反対の立場を貫こう。米国のQEを含め、中央銀行による国債買入に対する評価については、もう少し時間も必要になりそうである。

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by nihonkokusai | 2012-09-09 11:36 | 中央銀行 | Comments(0)

ECB総裁とドイツ連銀総裁の決戦は木曜日

 「ドラギ対バイトマン」というと、まるで怪獣映画のようなタイトルになってしまうが、この映画(?)には前作があり、そのタイトルは「トリシェ対ウェーバー」であった。

 ECBのトリシェ前総裁の後任には当初、ドイツ出身者が就任するであろうことが暗黙の了解のようになっており、ドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)のウェーバー総裁(当時)が最有力視されていた。しかし、そのウェーバー総裁は、「個人的な理由」で2011年4月末にドイツ連銀総裁を辞任した。

 ウェーバー総裁は、ECB理事会において、インフレを加速し中央銀行の政治的独立性を損なうとして加盟国の国債買い入れに強硬に反対しており、それがドイツ連銀総裁を辞任し、つまりは次期ECB総裁候補から降りた要因となった。歴史にもしもは無いが、ウェーバー総裁が辞任せずに、ECB総裁となっていたならば、ECBの政策は大きく変わっていた可能性がある。

 今年8月2日のECB政策理事会後のドラギ総裁の会見で、イタリアやスペイン国債の買い入れの準備を進めていることは表明したが、国債の買い支えの時期等や新たな政策の詳しい内容は明らかにされなかった。さらにドラギ総裁は、ドイツ連銀のバイトマン総裁一人が国債買入に反対したことを明らかにした。

 ドラギ総裁はワイオミング州ジャクソンホールに参加予定で、講演も予定されていたにも関わらず直前になってシンポジウムへの参加を取りやめた。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。

 ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。ECBとEFSFとの役割分担、さらにEFSFが銀行免許を得て国債を購入するとの方式等もあるが、このあたりの対策を協議するためなのか、ドラギ総裁だけでなくECB理事もジャクソンホールには出席しなかった。

 ブンデスバンクのバイトマン総裁は、引き続き国債買入再開に反対の姿勢を示していることも影響し、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性もある。このバイトマン総裁はジャクソンホールのシンポジウムに参加するようであるが、予定されていた3日の滞在を1日に短縮するようである。

 ECBが2011年8月に国債買い入れを再開した際には、バイトマン総裁やシュタルク専務理事ら4人が、債券買い入れに反対したとも伝わった。今回はいまのところバイトマン総裁のみが反対を表明している。ドイツのメルケル首相はECBの国債買入に対しては賛成しているようで、ドイツの元財務次官であったアスムセンECB理事も賛成に回るであろうとの見方が強い。ただし、アスムセン氏は、ウェーバー前ドイツ連銀総裁の影響を強く受けているとも言われている。

 さらに、9月12日のドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を確認しないことには国債買入を再開することはできず、もしECBが短期債の非公表の利回りターゲット設定による買入を行うにしても、9月6日には具体的な発表はできず指針を示すのみではないかとみられている。

 ウェーバー前ドイツ連銀総裁が加盟国の国債買い入れに強硬に反対し辞任していたことで、ECBの国債買い入れは薬物に似ており、政府が依存症に陥るリスクがあるとの認識を示したバイトマン総裁も辞任するのではないかとの観測も出ていた。実際にバイトマン総裁はECBの国債買入への反対を理由に何度か辞任を検討との報道もあった。しかし、反対を貫くために辞任せずにいるとの見方もある。

 これについては、9月6日の木曜日に開催されるECB政策理事会でいったいどのような決着が付くのか。イタリア出身のドラギ総裁もドイツ出身者以上にブンデスバンクの流れを引き継いでいる総裁とみられ、バイトマン総裁の指摘も理解しているはずである。中央銀行がそこまで首を突っ込むことには大きなリスクを伴うが、現在、ユーロ圏の危機を救えるのはECBとの認識もあろう。ドラギ対バイトマンという映画は、まさに現在のセントラルバンカーが抱える大きな矛盾を示す戦いであるようにも思われるのである。

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by nihonkokusai | 2012-09-03 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)

ドイツのESMの違憲判決とECBの新たな国債買入策の関係

 報道によると、ECBのドラギ総裁は、9月12日にドイツの憲法裁判所が恒久的な救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を下した後に、ECBによる国債買い入れ計画の詳細を発表する見込みだと伝えられた(ブルームバーグ)。

 欧州金融安定ファシリティー(EFSF)に代わるESMはドイツで違憲性が問われたことから、7月に予定されていた本格稼働が遅れている。

 EFSFとは「European Financial Stability Facility」の略で、日本語では「欧州金融安定基金」とも呼ばれているものである。この欧州金融安定基金は、2010年5月のギリシャ危機を踏まえて、EU(欧州連合)の加盟国によって合意されたユーロ圏諸国の資金支援を目的とした基金である。ルクセンブルクに本部を置き、株式会社として登録されている。ただし、2013年6月までという期限が設けられ、その後は恒久的な危機対応の機関として、2013年に欧州版のIMFともいえるESM(欧州安定メカニズム、European Stability Mechanism)がEFSFの業務を引き継ぐ予定となっていた。

 ESMの発足には出資比率で9割の国の批准が必要となり、6月29日にドイツ連邦議会はEFSFの機能拡充案を賛成523票、反対85票で可決した。ところが、野党議員や学識経験者などが、他国を救うために税金を投入する権限は議会に与えられていないとして提訴した。ESMについて国内法に反するとして訴訟を起こしたのである。このため大統領の署名は見送られ、憲法裁判所が合憲か否か審議する事態となり、その発表は9月12日に持ち越されたのである。

 ただし、ユーロ危機が渦巻く中にあり、その影響の大きさから見て、違憲判決が下される可能性は低いとされる。しかし、ECBによる国債買い入れについては、この判決を確認したのちに正式に発表されるとみられる。

 これは前回のECBによる流通市場における国債買入(証券市場プログラム、SMP)と異なり、今回のECBによる新たな国債買入計画には明確な条件が付けられているためである。国債買入の対象となる国は、まずユーロ圏諸国に対しEFSF・ESMによる支援を要請し、その支援を受けるための財政再建等に取り組む必要がある。つまりECBによる国債買入を実施するには、対象となる国がEFSF・ESMによる支援を受けることが前提となる。

 このため9月6日のECB政策理事会では、国債買い入れ計画の詳細までは明らかにされないのではなかろうか。ESMが仮にドイツで違憲となれば、最大の出資国であるドイツによる出資が不透明となりかねず、このためECBは判決を確認した上で、もちろん合憲判決が前提だが、新たな国債買入策の詳細を発表するものと思われる。

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by nihonkokusai | 2012-08-30 09:16 | 中央銀行 | Comments(0)

ドラギ総裁はジャクソンホールに急遽欠席、その理由とは

 8月31日に米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムが市場参加者にとり大きな注目材料となっている。まず、注目されているのがバーナンキFRB議長の講演内容である。これは2010年の同シンポジウムの講演で、バーナンキ議長がQE2を示唆したため、今回も何らかの追加緩和を示唆するのではないかとの期待があるためである。

 実際に7月31日・8月1日に開催されたFOMCの議事要旨では、経済が大幅に改善しないかぎり、かなり早期に追加緩和を行うとの姿勢が示された。また、バーナンキFRB議長が8月22日付で下院委員会に出した書簡で、追加措置をとる余地があるとの姿勢を示していたようであり、9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待は強まっており、可能性はさておき、QE3を期待する声もある。

 過去の歴史を見ても、ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムでは興味深い出来事が多かったため、市場関係者からの注目度が高い。このシンポジウムは、ある程度マスコミ等から遮断されての意見交換の場もあるとみられている。これには著名学者などとともに、日銀の白川総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものになっているためである。

 なぜこのようなシンポジウムが、ワイオミング州ジャクソンホールという小さな町で行なわれるかといえば、FRB議長だったポール・ボルカー氏がフライ・フィッシングの趣味があり、この街を良く訪れていたお気に入りの場所であったからという説がある。

 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間に FRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったと言われた。また、1999年には日銀の山口副総裁(当時)と、バーナンキ・プリンストン大学教授(現FRB議長)が、日本のバブルに対する日銀の金融政策の評価をめぐり、論争を行ったことでも知られる。

 今回は、FRBが次の一手として行う緩和の内容も気になるところではあるが、それとともにドラギECB総裁の言動も注目されていた。

 ドイツ週刊誌シュピーゲル(電子版)は8月19日に、欧州中央銀行(ECB)がスペインなど債務危機に陥ったユーロ圏諸国の国債利回りに目標水準を設定し、この水準を下回るまで流通市場で国債を買い上げることを検討していると報じた。さらにイギリスのデーリー・テレグラフ紙もこのシュピーゲル誌の記事の内容を確認することができると報じている。

 その後もECBが債券買い入れ計画で、利回り幅の目標設定を検討しているとあらためて報じられるなど、どうやら実際に検討していることは確かなようである。ただし、ここで問題となるのは、国債買入に反対しているドイツ連銀総裁の動向ともなる。ECBの政策理事会が9月6日に迫っているだけに、ジャクソンホール内での関係者達の動向にもかなり関心が高まっていた。

 ドラギ総裁は9月1日に講演をする予定であり、さすがにドラギ総裁は具体的な国債買入等の示唆はないと思われるが、その講演内容は良く吟味して9月6日のECBの動向を確認したいという投資家も多かったのではなかろうか。

 ところが、そのドラギ総裁は直前になってシンポジウムへの参加を取りやめたと発表された。その理由として、向こう数日に多忙を極めると予想されるためとECB報道官は語っていた。確かにドラギ総裁は9月3日に欧州議会の経済金融委員会で銀行同盟について証言する予定だそうで、9月6日には定例理事会も控えている。しかし、今回のジャクソンホールで開催されるシンポジウムやECB定例理事会の日程はかなり以前から決められていたものであり、9月1日にはドラギ総裁のパネルディスカッションの出席も予定されているなど、ある程度スケジュールは詰められていたはずなのに、今回の直前の欠席はやや不可解であり、何かしら別の理由があったとみられる。

 9月6日のECB政策理事会や9月12日・13日のFOMCを前にして、日銀を含め他の中央銀行も、その動向を探ろうしていたと思われる。今回のジャクソンホールはこの情報収集のための絶好の場とも言える。ECBとFRBが追加緩和を実施し、それにより円高圧力が強まるような事態となった際には、9月18日・19日の金融政策決定会合で日銀も動かざるを得なくなる。しかし、どうやらECBの動向については、探りが入れられない状況となってしまうようである。

 ちなみに、2010年8月27日にバーナンキFRB議長はQE2を示唆するカンザスシティ連銀主催のジャクソンホールでの講演を行った際、このシンポジウムに出席のため米国出張中であった白川総裁は予定を1日に早めて急遽帰国し、8月30日の9時から臨時の金融政策決定会合を開催し、新型オペの拡充策を決定した。すでに外為市場ではQE2を期待して円高圧力が強まっていたが、民主党の代表選に小沢氏が出馬を決定したことで、当時の菅総理が円高と景気への対策をアピールする必要もあり、日銀も急遽動かざるを得なかったものとみられる。

 今回はドラギ総裁が、2010年のジャクソンホールでの白川総裁のように仲間の集まる集会にのんびりと出席できる状況ではなくなってしまったようである。これはつまり現在、ECBが検討しているとされる短期国債主体としたスペインやイタリアの国債を買い上げるための非公表の利回りターゲット設定が完全に詰められていない可能性がある。特にブンデスバンクのバイトマン総裁が国債買入再開に反対の姿勢を示しており、最終的な落としどころをいまだ探っている可能性がある。 さらにドイツの憲法裁判所が欧州安定化メカニズム(ESM)の合憲性をめぐる判断を9月12日に行うことなども影響している可能性がある。

 今回のジャクソンホールでのシンポジウムにはドラギ総裁とともにECBの理事は出席しないそうであるが、バイトマン総裁は出席するそうである。こうなるとシンポジウムにおけるバイトマン総裁の言動にも注目が集まりそうである。

 毎年のジャクソンホールでは何かが起こりうる。今年はバーナンキ議長の発言内容に注目が集まっているが、個人的にはECBの動向に関心がある。しかし、肝心のドラギ総裁は参加しない。これは何かと注目が集まり過ぎているシンポジウムで、まだ固まり切れていない次の手について、自らのコメント等により市場に期待感や失望感を生むことを避けるためではないかとも思われるのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-29 09:49 | 中央銀行 | Comments(0)

QE3という最終兵器は温存したほうが賢明か

 「宇宙戦艦ヤマト2199」というタイトルのアニメがある。我々の年代にとって「宇宙戦艦ヤマト」というアニメは強烈なインパクトを残している。次々と続編が生まれ、実写版が映画化されるなどしたが、あまり評判は良くなかった。しかし、今回の「宇宙戦艦ヤマト2199」については昔からのファンもそれなりに満足したものとなっているようである。元になっている「宇宙戦艦ヤマト」に忠実に、さらに現在のアニメの技術等も生かして、リアリティのある内容となっている。

 「宇宙戦艦ヤマト2199」の最新作では冥王星にあるガミラス基地を破壊し、いよいよ太陽系を脱するところまで描かれている。その冥王星のガミラス基地を攻撃する際、ヤマトの最大の武器である波動砲を打つかどうかでもめるシーンがあった。結局、波動砲は使わずに通常兵器で攻撃することになるが、波動砲はあまりに攻撃力が強く、冥王星そのものを破壊しかねないためというのが理由であった。

 米FRBは追加緩和策として、「a new large-scale asset purchase program」(新たな大規模資産購入プログラム)という名の最終兵器を用意している。これを市場ではQE3と呼んでいる。

 果たしてこの武器が市場に向けて使われるかどうかが、ひとつの焦点となっている。7月31日から8月1日にかけて開催されたFOMCの議事要旨をみると、現場スタッフは使用は可能との認識を示してはいたが、決定するメンバー達からはそれによる弊害を意識した発言が出ていた。

 現在の日欧米の中央銀行は、短期金利がゼロ水準となっているため、すでに通常兵器では市場に対する有効な手段を持ち得ていない。このため、非通常兵器が用いられることになったが、そこには数々の弊害もある。特に気にすべきは日銀が量的緩和を行った際に問題となった市場機能の低下である。

 QE3は市場にとり、破壊力のある兵器となりうるが、それによって債券市場での価格発見機能の喪失等が懸念される。連銀という大きな買い手の存在に市場が依存してしまいかねず、市場機能そのものを破壊しかねない。

 それ以前に、本当に市場に大きな影響を及ぼせるのかという問題もある。すでに市場では2回のQEを経験している。3度目ではさほどインパクトがなくなる可能性もある。

 そもそも米国の長期金利は一時よりも上昇したとはいえ歴史的低水準にいることで、ここからの金利低下を促すといっても限界はあろう。また、それにより影響を及ぼそうとしている住宅市場そのものも回復基調にある。

 さらにまたQE3が使いづらい要因がほかにもある。米大統領選挙と財政の崖の問題である。米大統領選挙中はよほどのことがない限り、金融政策は変更しづらい。このため、予防的な意味で9月6日のFOMCで何らかの追加緩和策を決定してくるかもしれないが、そこでQE3は使いづらい。

 その理由のひとつが、米大統領選候補となるロムニー前マサチューセッツ州知事による発言である。ロムニー氏は、FRBはQE3の実施を回避すべきだとテレビで語っていた。QE1はプラスの効果があったかもしれないが、新たな量的緩和は米経済の役に立たないだろうとの認識を示したのである。ここで無理にQE3を使い、共和党とFRBの対立を深めさせる必要もないはずである。

 さらに財政の崖の問題もある。これについては、さすがに米経済を大きく悪化させるようなことは避けられると期待したいが、何が起きるかは予測できない面もある。例え実質的な効果は少なくても、市場での期待度が高いということは、心理的なインパクトはそれなりにあるとみられるQE3は、もしものときの切り札として温存しておいた方が賢明ではないかと思われるのである。


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by nihonkokusai | 2012-08-25 10:39 | 中央銀行 | Comments(1)

FOMC議事要旨に見るQE3の可能性

 8月22日に公表された7月31日から8月1日にかけて開催された、連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨から、特にQE3の可能性について探ってみたい。

 ちなみに「minutes」は議事録と訳されることが多いが、FOMCの約3週間後に発表されるものは日銀が会合の約1か月後に発表する議事要旨に内容が近い。日銀は10年後に精細な内容が記された議事録を発表するが、米国も議事中のジョークまでも含めた議事録(Transcript)を5年後に公表しているため、ここでは日銀に合わせる格好で議事録ではなく「議事要旨」としたい。

 そしてQE3という表現についてだが、市場ではFRBによる大規模資産購入を量的緩和(Quantitative Easing)として、その頭文字をとってQEと呼んでいる。しかし、バーナンキ議長などは自らの政策を「量的緩和(QE)」とは呼んでいない。今回の議事要旨内でも、QE3という用語を見つけようとしても出ていない。それに該当するのは「a new large-scale asset purchase program」、つまり「新たな大規模資産購入プログラム」である。

 この大規模資産購入プログラムについては、多くの参加者(投票権を持つメンバー以外の参加者含む)が、長期金利に低下圧力を加え、金融環境を緩和する効果を持つことで、景気回復へのサポートになることは明らかであるとした。

 加えて、何人かの参加者からは新たなプログラムが、企業や家計の信頼を得ることで、デュアル・マンデート達成に向けの委員会の姿勢が強化される効果もあるとの指摘もあった。

 しかし、他の参加者からは、現状ではそのプログラムの有効性について疑問視しており、さらに、経済活動への影響は一時的なものかもしれないと指摘する参加者もいた。

 さらに何人かの参加者から、米国債やMBSの市場機能を阻害するのではとの懸念が示されたが、連銀スタッフは機能を阻害せずに買い入れる余地はまだあるとの分析を行っていたようである。

 しかし、いずれFRBのバランスシートを正常化させる際に詐害要因になるとの懸念も示され、数人の参加者からは中期的なインフレ期待を引き上げてしまうのではないかとの懸念も示された。

 今回の議事要旨では、経済が大幅に改善しないかぎり、かなり早期に追加緩和を行うとの姿勢が示されたと受け止められた。しかし8月1日の声明文で、「必要な時に適切な追加の緩和策を行う」として、前回の「さらなる措置を適切な時に行う用意がある」との表現からやや踏み込んだ格好となっていた。このため、9月12日から13日にかけて開催されるFOMCでの追加緩和期待は、すでに出ていたが、それをあらためて今回の議事要旨で裏付ける格好となった。ただし、問題はその手段である。

 以前、議会証言でバーナンキ議長が示唆した追加緩和として、米国債やモーゲージ担保証券(MBS)などの追加債券買い入れ、つまりQE3。そして、連銀窓口貸出や超過準備金利引き下げ。さらに超低金利政策の継続期間についていつまで続けるかの予想期間の先延ばしなど時間軸の強化を指摘していた。

 このうち市場ではQE3を最も期待していると思われる。また、連銀スタッフもゴーサインを出しているかのように思われる。しかし、今回の議事要旨の内容をみると、FOMCの参加者の間からはその効果に疑問を呈し、さらにはそれによる弊害も意識した発言が出ていた。この参加者の発言内容を見る限り、かなり米経済もしくは金融システムに危機的な状況にでも陥らない限りは、QE3の可能性はさほど高くはないのではないかとも考えられる。

 今回は、経済が大幅に改善しない限り、という条件がついたが、会合後に発表された米雇用統計などでは改善が示されていることで、少なくともQE3の可能性はさほど高くはないのではなかろうか。加えて、年末に向けては財政の崖への懸念もあり、これに備えてむしろQE3という切り札は温存しておく可能性が高いと思われる。

 ただし、米大統領選挙も意識すると今回手を打たなければ、年末まで動きづらくなる。このため、QE3ではなく他の手段、特に「時間軸の強化」あたりが実施される可能性がありそうである。


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by nihonkokusai | 2012-08-24 09:30 | 中央銀行 | Comments(0)
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