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カテゴリ:中央銀行( 222 )

ECBの時間稼ぎの政策と日米欧の長期金利の行方

 12月8日のECB理事会では、政策金利は据え置いた。すでにこれ以上のマイナス金利の深掘りをしないことを表明しており、市場は資産買入の行方に注目していた。これまでの会合では買い入れ国債の不足についても時間をかけて討議されており、国債が不足した場合にどう対処すべきかといったことについても話し合われていた。しかし、ここで資産買入の3月末での終了を宣言するわけにもいかなかった。

 デフレ観測は後退しているものの、イタリアの政治情勢への不透明感やイタリアやドイツの銀行に対する不安、さらには欧州でのポピュリズムや極右の台頭への懸念等もあり、ECBとしてもなかなか異常な緩和策から簡単に出口を模索できる状況でもない。ECBとしては時間稼ぎの策を打って出ざるを得なかった。

 そのためのECBは国債の買い入れの範囲を拡げることを検討したようである。必要な範囲で中銀預金金利を下回る利回り水準の国債も買い入れることや、買入銘柄の残存期間を2年以上から1年以上にするなど、いわば日銀が昨年12月に行った補完措置のようなことを行った。

 これにより国債の買い入れ余地を拡げたが、問題はその期間と月ごとの買い入れる量となった。日銀と違ってECBは年間で買い入れる額ではなく、FRBのように月々に買い入れる額を目標値に置いている。ドラギ総裁は月額800億ユーロの買い入れを半年間継続するという選択肢もあったことを示した。800億円を6か月延長するか、600億円に減額して9か月延長するのかの二択となったのかと思ったが、実際にはそうではなかったようである。

 ロイターによるとECBのスタッフは月額800億ユーロの買い入れを半年間継続する案を出していたが、ドラギ総裁はこの案では過半数の賛同を得られないと認識していたようである。そのためスタッフは月額600億ユーロで1年延長を提案。だがドイツなどタカ派は600億ユーロで6か月延長を主張し、その中間となる9か月延長が決まったそうである。まるで売り手と買い手の値段交渉の結果の妥協点みたいなことが行われていたようである。

 買入対象を拡げたこともあり、ある程度の買入枠は確保でき、より時間を稼ぐことができる。さらに月ごとの買入は「減額」を行うことで反対派の主張を盛り込んだ上、全体の買入額は当初のスタッフ案も上回るという摩訶不思議な結果となった。

 欧州の債券市場はこの減額に反応し国債は売られたが、本来であれば追加緩和であるはずの今回のECBの措置に対して、材料出尽くしというよりも、金融緩和の限界も感じ取った動きとも言えまいか。今後、欧米の長期金利はFRBの利上げペースを見定めながらどこまで戻れるのか試してくることが予想される。

 この欧米の長期金利の上昇は日本にも波及し、9日の10年債利回りは0.060%、20年債利回りは0.555%、30年債利回りは0.700%に上昇した。日銀は10時10分に日銀の国債買入をオファーしたが通常の買入であり、一部に期待もあったようである指し値オペではなかった。

 10年債利回りを日銀はゼロ近傍に誘導するとしているが、下限がマイナス0.1%あたりであれば上限はプラス0.1%あたりと予想され、そこまでの上昇とはなっていない。日銀が警戒するのはひとまず10年債利回りでプラス0.1%以上ではなかろうか。超長期債の利回り上昇に対して、超長期債の指し値オペも行うことがあるのか。操作対象が短期金利と長期金利としているだけに、超長期の金利までも操作してくるのかはなかなか興味深いところでもある。いずれにしても日本の長期金利の上昇は欧米の長期金利の上昇と比較すれば、ゆっくりとしたものとならざるを得ない。この意味では日銀のイールドカーブコントロールは今のところ効いているという見方もできる。

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by nihonkokusai | 2016-12-11 11:04 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBは資産買入額を減らして延長、これはテーパリングに向けた布石か

 12月8日にECBの金融政策を決定する政策理事会が開かれた。市場の注目はどちらかといえば、12月13、14日に開かれるFOMCに向けられているものの、ECBの動向にも注意が必要となる。今回、ECBは何月間800億ユーロの資産買入を2017年3月まで続けるとした資産買い入れプログラムの期間を延長し2017年末まで延長し、毎月の債券購入額は来年4月以降、600億ユーロに減らすと発表した。さらに必要な範囲で中銀預金金利を下回る利回り水準の国債も買い入れることも発表された。

 これまでの会合では買い入れ国債の不足についても時間をかけて討議されており、国債が不足した場合にどう対処すべきかといったことについても話し合われていた。すぐに買入れる国債が枯渇するわけではないが、大規模な買入を継続している限り、いずれその買入に限界がやってくることも確かである。そもそもその買入が本当に必要なものなのか、さらにはそれでどのような効果があるのかといった疑問もある。

 これについては日銀も検証を行っており、その結果として9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定した。これは国債の買い入れについて減額を含めての調整の余地を残したものである。

 表だっての指摘はないものの、この日欧の異常な金融緩和策については、その買い入れる量の限界だけでなく効果そのものも疑問視されている。ただし、為替市場などへの影響を考慮すると効果がないようなので止めますとも言えない。このためECBとしても資産買い入れプログラムの期間を延長した格好となった。

 しかし、米国ではトランプ氏の登場もあって経済への回復期待とともに物価の上昇への期待も強まっている。また原油価格も底を打ったような格好となり、これも物価には上昇要因となる。欧州でも一時あったデフレ懸念がやや後退しつつある。

 イタリアの政治情勢への不透明感やイタリアやドイツの銀行に対する不安、さらには欧州でのポピュリズムや極右の台頭への懸念等もあり、ECBとしてもなかなか異常な緩和策から簡単に出口を模索できる状況でもないようにみえる。それでも金融市場は極度の金融緩和依存症からは少しずつではあるが回復しつつある。

 日銀は前を向いた格好ながら歩みを止めた格好となった。ECBも今回は時間稼ぎの政策に出た。今後の景気や物価の予想次第では、今後の資産買入の調整もありうる(今回、あくまで増額の方向での修正の可能性も示唆された)。つまり日銀のように増加の可能性を強調しながらも、いずれはテーパリングの余地を探ることも予想される。

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by nihonkokusai | 2016-12-09 10:02 | 中央銀行 | Comments(0)

トランプ相場をきっかけに、異常な低金利からの脱却はありうるのか

 米大統領選挙におけるトランプ氏の予想外の勝利によって、ドルが買われ、米国株式市場ではダウ平均などが過去最高値を更新するなど、いわゆるトランプ・ラリーが起きた(ラリーとは株価などが上昇しやすい現象のこと)。このトランプ・ラリーの象徴するのが米長期金利の上昇となる。

 米国の長期金利は今年7月に1.3%台まで低下後、英国のEU離脱によるショックが一時的に止まったことなどからじりじりと上昇してきた。それがトランプ氏が次期大統領に選出されたことによって、上昇ピッチが加速して、米10年債利回りは節目とされた2.35%もあっさり抜けてきた。2.5%が次の節目となるが、このまま3%に向けて上昇してくる可能性もありうる。

 この米長期金利の上昇要因としては、トランプ氏の打ち出す減税や規制緩和などによる米経済回復への期待、原油価格の上昇も相まっての物価上昇予想がある。また財政赤字拡大の懸念も米国債の売り(長期金利の上昇)要因となっている。

 しかし、それ以前に世界的に金利は上昇局面に変化しつつあることの見方もできる。米国の長期金利上昇の背景には、12月のFOMCの利上げ観測も当然ある(市場の予想はなぜか100%を超えている)。FRBは昨年12月に利上げを行い正常化に向けて一歩進めた。ところが今年の年初からの原油価格の下落や、その要因ともなった新興国経済への不安感により、金融市場のリスク回避の動きによって、米長期金利は上昇どころか低下した。さらに今度は英国の国民投票によるEU離脱決定という事態が起きて、ここでリスク回避の動きがピークアウトする。

 英国のEU離脱による金融市場でのリスク回避の動きが一過性のものとなったことで、米長期金利の反発がスタートした。これは原油価格の上昇ともリンクしていた。しかし、この原油価格はWTI先物で節目の50ドルがいったんの上限となった。OPECでの減産合意に不透明感が強まり、原油先物は下落したのである。ところが30日のOPEC総会での最終的な減産合意となったことで、米長期金利の重しとなっていた原油先物も上昇し、米長期金利もあらためて上昇した。

 長期金利の上昇は米国にとどまらず、英国やドイツの長期金利も同様に上昇してきている。英国債は米国債の動きに連動しやすい面もあるが、この欧米の長期金利の上昇は、これまで次々に襲ってきた世界的な経済金融のリスクからの脱却を意味するものではないかと思われる。異常ともされた日米欧の金融緩和に対して、すでに市場も違和感を覚えつつある。いつまでこのような政策を中央銀行は続けるつもりなのかと。

 米国はあらためて正常化に向けた道筋を歩むとみられ、イングランド銀行もいずれ方向を変えてくることも予想される。しかし、日銀とECBは向きを変えることすら困難なところに自ら追い込んでしまっている。見えないかたちで国債の買い入れ額を縮小するというステルス・テーパリングがせいぜいではないかとみられる。日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和はそれを可能とさせた。ECBも国債買入期間を延長する変わりに買入額を減少させるのではとの観測もある。いずれにしても国債買入にはすでに限界が近いことも確かである。

 日本の長期金利もさすがに上昇したといっても、やっとプラスになった程度である。この日米の長期金利の上昇ピッチの違いも円安ドル高の要因とされており、これは日銀の意図したところかもしれない。しかし、原油価格の上昇は日本の物価にも跳ね返ってくる。果たして日銀はいつまで長期金利を抑えるつもりなのか。日銀はそのような技術的な操作などよりも、出口を意識した政策にそろそろ頭を切り換える必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-12-04 12:27 | 中央銀行 | Comments(0)

12月の米利上げの観測強まるが大統領選の結果次第とも

 11月1日、2日に開催されたFOMCでは賛成多数で現在の金融政策の維持を決定した。カンザスシティー連銀のジョージ総裁と クリーブランド連銀のメスター総裁が利上げを主張し反対票を投じたが、前回反対票を投じたボストン連銀のローゼングレン総裁は賛成に回った。

 今回の声明文では「委員会はFF金利を引き上げる根拠は引き続き強まったと判断するが、当面は目標に向けて続く進展に関するさらにいくらかの証拠を待つことに決めた」とした。また、「インフレ率は今年の初めからやや上昇した」としたほか、目先はインフレ率が低い水準にとどまるとした従来の文言を削除した(ロイター)。

 これにより12月のFOMCで利上げの可能性が高まった。4日に発表された10月の米雇用統計で非農業雇用者数は前月比16.1万人増と予想の17万人程度を下回った。しかし、前月の数字がは19.1人増と速報値の15.6万人増から上方修正されたこともあり、市場のコンセンサスは12月の利上げとなっている。

 ただし、ここにきて米大統領選挙の行方に不透明感が強まった。クリントン候補のメール問題が再燃し、トランプ候補との支持率が接近している。万が一にもトランプ候補が勝つようなことになると金融市場は波乱含みの展開となろう。その際にはいったん利上げ観測が後退するとみられる。

 ただしクリントン候補が勝てば、不透明要因はいったん後退し市場は歓迎するとみられる。FRBにとっても利上げできる環境が整うことになる。しかしひとつ気になる点は、クリントン氏が大統領となった際の財務長官候補とされるブレイナードFRB理事の存在か。利上げにむけて慎重派とされるブレイナード理事が、12月のFOMCで利上げに賛成してくるのかどうかも焦点となりそうである。

 11月2日、3日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)も開催された。こちらも予想通りの現状維持となったが、2017年のインフレ率見通しを大きく引き上げるなど、ポンド安による物価上昇をかなり意識したものとなった。8月には国民投票でのEU離脱選択の影響を懸念し利下げを決定したが、その際に示した追加利下げの公算に関するガイダンスを無効とした。

 カーニー総裁は決定発表後の記者会見で「インフレ目標への持続的な回復を確保するため、金融政策は景気見通しの変化に応じいずれの方向にも動き得る」とし、「今後の政策に関するバイアスは中立だ」と述べた(ブルームバーグ)。

 一時大きく売られた英国の通貨のポンドではあったが、ここにきて底打ち感も出ている。3日に英国のEU離脱手続き開始に議会承認が必要との司法判断等を受けて、外為市場でポンドは上昇した。ポンド・ドルのチャートからはいったん戻りを試すような動きにもみえる。それでも水準自体はかなり低いところにある。

 イングランド銀行はEU離脱による金融経済への影響よりも、物価動向を見据えた金融政策に舵を取った。日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」も実質的には追加緩和に向けたバイアスを修正したともいえる。日米欧の中央銀行の金融政策のバイアスは緩和方向から中立もしくは引き締めにむけて方向が変わりつつあることも確かである。

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by nihonkokusai | 2016-11-05 10:52 | 中央銀行 | Comments(0)

今週、日欧米の中央銀行はどう動くのか

 「今週、日欧米の中央銀行はどう動くか」というタイトルにはしたものの、31日から11月1日にかけて開催される日銀金融政策決定会合、1日から2日のFOMC、2日から3日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、金融政策はそれぞれ現状維持が予想されている。つまり動く気配はいまのところない。

 31日から11月1日の日銀金融政策決定会合では、9月の会合で決定した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の新しい枠組みの導入の効果を見定めたいとして、現状維持を決定するとみられる。

 ただし、同時に公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、物価の見通しの下方修正が予想されている。このため、物価目標の達成時期について「2017年度中」から「2018年度以降」に先送りされるとみられている。それでも追加緩和期待が強まるようなことは考えづらい。日銀と市場との対話がうまくいっているというよりも、追加緩和の意味やその効果について市場参加者も疑問を抱くようになっているためと思われる。

 1日から2日にかけてのFOMCも金融政策は現状維持が予想されている。市場では9月のFOMC時に比べて追加緩和期待が強まっている。しかし大統領選挙前でもあり、議長会見もない今回のFOMCでの利上げ決定の可能性は薄い。市場参加者の多くは12月のFOMCでの利上げを予想している。

 ところが、ここにきて大統領選挙のクリントン候補が、国務長官時代に私的な電子メール・サーバーを使っていた問題が再燃するなど、あと一週間ちょっとに迫った大統領選挙に不透明要素が加わってきた。それでもクリントン氏優位に変わりはないと思われるが、FRBとしても大統領選挙の結果を確認してから利上げを検討したいのではなかろうか。

 そして、2日から3日にかけて開催されるイングランド銀行のMPCであるが、こちらも金融政策の現状維持が予想されている。英国のEU離脱による影響も危惧されていたが、先日発表された英国の7~9月GDPは前期比プラス0.5%と予想を上回る伸びとなるなど、景気への影響は限定的であった。これに加えてポンド安に伴う物価の上昇もあり、イングランド銀行の追加緩和観測は急速に後退した。

 むしろイングランド銀行で注目されつつあるのが、カーニー総裁の去就となっていた。カーニー総裁はこれまで、就任当初の計画である2018年に退任するか、総裁として通常の8年間の任期を全うして2021年まで在任するか、年末までに決定すると述べてきた。

 そして31日、カーニー総裁がイギリスのハモンド財務相に宛てた書簡の中で、再来年6月までとなっていたみずからの任期を1年延長して、2019年6月まで総裁を務める考えを明らかにし、財務相もこれを了承したと、イングランド銀行が発表した(NHK)。

 カーニー総裁は同氏をカナダから招聘したオズボーン前財務相との関係が緊密で、メイ現政権とは距離がある。そのメイ首相は低金利など金融緩和策には「悪い副作用がある」と批判するなど、現在のイングランド銀行の金融政策に不満を抱いている。このためカーニー氏が2018年に退任するのではとの観測もあった。それはなかったものの、総裁として通常の8年間の任期を全うして2021年まで在任するかどうかまでははっきりしてはいない。

 今後イングランド銀行が物価の動向など考慮して、金融政策の舵取りの方向を変える可能性はないわけではない。その意味ではメイ首相の意向に沿った方向に向かうこともありうる。なかなか難しい立場にあるカーニー総裁が、今週のMPC後の会見で今後の金融政策に対して、どのような認識を示すのかも注目したい。

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by nihonkokusai | 2016-11-01 09:59 | 中央銀行 | Comments(0)

金融緩和依存から脱しつつある金融市場

 日銀は10月31日、11月1日に金融政策決定会合を開く。この会合では展望レポートも出されるが、ここで日銀の物価目標の達成時期が、これまでの「2017年度中」から2018年度以降に先送りされる見込みとなっている。それで追加緩和をする気配はなく、黒田総裁は21日の衆院財務金融委員会で、追加緩和には慎重な姿勢を示した。

 日銀は9月の会合で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という政策に変更し、操作目標を「量」から再び「金利」に戻し、フレームワークの変更を行った。昨年12月の補完措置、今年1月のマイナス金利政策の導入、そして今回の枠組み変更の意味するところは緩和措置の限界を示すものである。このため余程の事態が発生しない限りは、追加緩和は実施してこないとみている。

 11月1日、2日にはFOMCが開催される。米大統領選挙前ともなり、この会合での利上げの可能性は薄いとみられる。しかし、ここにきての米経済指標は経済の改善を示すものも多くなっており、市場は年内利上げ観測を強めている。このため12月のFOMCでの利上げ決定の可能性が強まっている。

 2日から3日にかけてはイングランド銀行のMPCが開催される。EU離脱の影響も意識されて追加緩和への期待もあったが、ポンド安などによる物価上昇も意識されていることで追加緩和観測は急速に後退しており、今回は現状維持が予想される。

 ECBは12月の理事会で、量的緩和の時期を延長するなどの対策が講じられる可能性がある。ただし、こちらもマイナス金利の深掘りの可能性はなくなりつつあり、量についても日銀同様に限界が意識されており、いずれ何らかのかたちでテーパリングを検討せざるを得なくなったとみている。

 原油価格の上昇もあり、物価はこれまでに比べ上がりやすい環境となっている。これはFRBにとっての利上げに向けた要因ともなる上に、日銀とECBにとっての環境改善ともなる。物価が少しでも上昇基調を見せると、少なくとも金融市場から追加緩和圧力にさらされることはなくなる。さらに技術的なものとしてテーパリングを行ったとしても、市場への影響は限定的となる可能性がある。

 もちろん原油価格がこのまま上がり続けるという保証はない。しかし、市場は以前に比べると中央銀行の金融政策を最大の材料として動くことがなくなりつつある。金融政策ですべての物事がうまく行くわけではないことを、さすがに理解してきたのかもしれない。米大統領選もクリントン候補の勝利となれば、こちらも大きなリスクは後退する。市場はよほどのテールリスクが発生、つまりブラックスワンが出てこない限りにおいては、次第に金融緩和依存体質から脱しつつあるのかもしれない。

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by nihonkokusai | 2016-10-30 16:19 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBやイングランド銀行は追加緩和に躊躇か

 ECBのドラギ総裁は25日のベルリンでの講演で、「時間とともに厄介な副作用が蓄積する可能性があり、金利をこのような低い水準に極めて長い期間維持せずに済むことをもちろん望む」と述べた。さらに「異例の金融支援がなくても物価安定が持続可能な形で達成できれば、緩和措置を解除する」とも述べていた。(ロイター)。

 ドラギ総裁は金融緩和政策の正当性を主張した上で、上記のような発言を行っていた。これはドイツの銀行を中心とする低金利による業績圧迫への不満にも配慮する姿勢を示した格好ともいえるが、追加緩和一辺倒の政策が微妙に変化しつつあることをうかがわせる。

 10月のECB理事会ではQEの期間延長もテーパリングも議題に乗らなかったとされ、市場では米大統領選挙を含めたイベントを確認したのち12月の理事会で、QEの期間延長を決定するとの見方が強まった。

 ただし、この際にドラギ総裁は「QEをテーパリングすることなく、唐突に停止することはない」と発言している。QEの期間延長についても買入国債が不足してくることも予想され、何らかの技術的な配慮(補完措置?)がある可能性もあるが、その間に買い入れる国債の額を徐々に減らし、つまりテーパリングを決定してくる可能性もありうる。ECBも量的緩和のフローからストックの面を市場に意識させれば出口政策ではないとの主張も可能となるかもしれない。

 そしてイングランド銀行のカーニー総裁も25日に英上院委員会で証言し、「金融政策委員会がインフレのオーバーシュートを静観するにも限界がある」とし、11月3日の金融政策会合では、最近のポンド安を「間違いなく」考慮すると述べた(ロイター)。市場では英国のEU離脱の影響もあり、追加緩和への期待もあったようだが、この発言で追加緩和観測は後退した。

 メイ英国首相が低金利など金融緩和策には「悪い副作用がある」と批判したことについては、首相は金融政策運営の変更を提案したわけではないと考えていると、カーニー総裁は述べていた。英国政府も大胆な金融緩和を行ってきた中央銀行から距離を置こうとしているかに思えるが、これは日本や米国なども同様か。

 ただし、カーニー総裁は政治的な圧力よりも素直に通貨安に伴う物価の上昇を意識していることも明らかであり、物価の動向次第では緩和策から引締策に転じてくる可能性もある。もともとイングランド銀行は英国のEU離脱がなければ、FRBに続いて出口政策を模索していたはずである。

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by nihonkokusai | 2016-10-27 09:47 | 中央銀行 | Comments(0)

イエレン議長による「高圧経済」発言の意図とは

 FRBのイエレン議長は10月14日の講演で、経済危機による損失の修復を図るには「高圧経済(high-pressure economy)」政策が唯一の方策となり得る、との考えを示した。力強い総需要と労働市場のひっ迫を伴う高圧経済が一時的に続くことで、経済損失を埋め合わせるための様々な手段が見い出せると語ったそうである(ロイター)。

 中央銀行の金融緩和策を継続させることで、強い需要と雇用の改善により、景気のさらなる改善を図るのが、ハイプレッシャーエコノミーということになろう。ただし、これを続けることによりインフレへの懸念が強まることも確かである。

 これについてフィッシャー副議長は17日に、失業率を押し下げ続ける戦略の追求には限界があると指摘し、「高圧経済」のリスクを警告した。フィッシャー副議長は「われわれの誤りがインフレ率によってはっきりするまで続けるべきだと主張すれば、変更は手遅れになろう」と指摘した(ブルームバーグ)。

 FRBは9月のFOMCで金融政策は賛成多数で現状維持とし、利上げを先送りした。事前にイエレン議長、フィッシャー副議長、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁からは早期利上げを示唆するような発言もあったが、発表された経済指標が予想を下回るなどしたことで市場での利上げ観測は強まらなかった。結果としては市場の予想通りに、利上げは見送られた格好となった。

 ところがその後発表された経済指標は景気の改善を示すものも出ており、少なくとも年内の利上げの可能性はありうるとして、市場では12月のFOMCでの利上げ観測が強まりはじめた。その矢先に今回のイエレン議長の発言があった。

 イエレン議長の「高圧経済」発言の背景として、12月の利上げ観測を後退させる意図があったのではとの見方も出ていたようである。しかし、これはむしろ9月に利上げをしなかったことの理由を説明したとの見方もできるのではなかろうか。利上げの先送りで景気の圧力鍋をさらに沸騰させても、そう簡単にはインフレとはならない。むしろ雇用環境もさらに改善させることも可能との認識を伝えたかったのかもしれない。

 しかし、市場はこれで12月の利上げも困難かと取ってしまったことで、あらためてフッシャー副議長が「高圧経済」のリスクを警告することで、12月の利上げの可能性を維持させようとしたのかもしれない。

 いずれにしても突然出てきた「高圧経済」という用語を使った背景には、何かしらのFRBの意図が隠されているように思われる。それが12月のFOMCでの金融政策の変更の可能性を意識したものなのかどうか。今後のイエレン議長やフィッシャー副議長の発言内容にも注意したい。

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by nihonkokusai | 2016-10-23 11:11 | 中央銀行 | Comments(0)

そもそも金融政策で為替や物価を動かせるのか

 18日に発表された今年9月の英国の消費者物価指数は前年同月比1.0%の上昇となった。伸び率は8月の0.6%を上回り、2014年11月以来の高い水準となった。コア指数は前年比プラス1.5%となり、これも2年ぶりの高水準。英政府統計局はポンド安が消費者物価に大きく作用した明らかな兆候はみられないが、生産者物価に影響していると指摘したそうである。

 しかし、この物価の上昇は英国のEU離脱に伴うポンド安が影響したであろうことも確かではなかろうか。さらに原油価格の反発による影響もあったものとみられる。ここで注意したいのは、8月4日のイングランド銀行による包括緩和がどれだけ影響していたかとの点である。

 8月4日のイングランド銀行の金融政策委員会(Monetary Policy Committee; MPC)では、年0.5%と過去最低の水準となっている政策金利をさらに引き下げて年0.25%とするとともに、英国債を対象とする資産買入プログラムの規模を600億ポンド増額し4350億ポンドとし、さらに100億ポンド規模の投資適格級社債購入プログラムを決定した。利下げの効果を強固なものとするための金融機関向け低利融資制度を含めてパッケージされた、いわゆる包括緩和政策を決定した。

 金融政策と通貨安、そして通貨安による物価への波及効果については、日本にも事例がある。いわゆるアベノミクスである。これは日銀の金融政策が円安を招き、物価にも波及したとの見方もできなくはないが、円安は自民党が政権を奪え返すとの見方の強まりのなかでの安倍自民党総裁の輪転機発言がきっかけとなっている。

 大胆な金融緩和効果よりも、欧州信用不安によるリスク回避の反動が、ヘッジファンドの仕掛け的な動きにともなって急激な円安が起き、その円安で一時的な物価上昇が起きたといえる。この間、原油価格が高止まりしていたことも物価を押し上げた要因となっていた。さらに消費増税前の駆け込み需要も影響した。金融政策というよりも、円安と原油高などが物価を押し上げていたと言えよう。

 これは今回の英国も同様であろう。イングランド銀行の金融緩和でポンドが売られたというよりも、ポンド安の主因は英国のEU離脱であることは明らかである。

 18日には米国の9月の消費者物価指数も発表された。前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比は1.5%の上昇と、2014年10月以来の上昇率になった。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.1%上昇、前年比では2.2%の上昇となっている。

 言うまでもなくFRBはすでに昨年12月に利上げを行っている。米国の物価上昇の背景にあるのはFRBの金融政策ではない。たしかにFRBのバランスシートは高水準に維持されており、追加利上げは行っていない。緩和的な環境が物価を押し上げたとする説明には無理がある。むしろ原油価格の反発による影響が大きかったとみるべきではなかろうか。

 金融政策がどの程度、通貨安に影響し、それが物価にどう波及してくるのかについては、具体的な検証も必要ではなかろうか。むしろ物価に対しては、いまのファンダメンタル等の外部環境と政策金利がほぼゼロ近辺となっているという状況下では、金融政策の効果よりも、通貨安や原油価格の動向に影響を受けやすいとの見方もできるのではなかろうか。さらに通貨安は、果たして中央銀行の金融政策でもたらすことが可能なのかという点についても疑問が残る。このあたり良い事例を日銀が残してくれたようにも思われる。

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by nihonkokusai | 2016-10-20 09:50 | 中央銀行 | Comments(0)

バングラデシュ中央銀行からの過去最大規模の不正送金事件

 広報誌「にちぎん」47号に、黒田日銀総裁と小説家の宮部みゆき氏の対談記事が掲載され、その内容が日銀のサイトにもアップされている。このなかで黒田総裁が、ニューヨーク連銀にあったバングラデシュの中央銀行の預金が不正に送金された事件について語っていた。

 この事件が起きたのは今年2月。バングラデシュ銀行(中央銀行)が米ニューヨーク連邦準備銀行に持つ口座から、9億5100万ドルの不正送金が試みられた。送金の大半は阻止されたものの、8100万ドルはフィリピンの口座への送金されてしまい、そこから様々な銀行に送金され、雲散霧消してしまった事件である。銀行単一の被害金額としては過去最大とされるが、日本ではあまり報じられることはなかった。

 結果からみるとバングラデシュの中央銀行のお金が盗まれてしまったわけであるが、それがニューヨーク連銀にあった口座というところに注目する必要がある。ニューヨーク連銀は米国の中央銀行のひとつの支店のようなものではない。むしろ世界の中央銀行のなかでの基幹を成すような銀行となっている。たとえば世界の国々の保有する金について、そのかなりの部分が、このニューヨーク連銀に預けられているとされる。これは日本も例外ではない。

 もちろんニューヨーク連銀には日銀の口座もあるし、日銀にはニューヨーク連銀の口座もある。今回の事件では、バングラデシュの中央銀行のシステム経由で、国際銀行間通信協会(SWIFT)と呼ばれるシステムに侵入されて、ニューヨーク連銀に送金指示が出されてしまった。

 国際銀行間通信協会(SWIFT)とはベルギーのブリュッセルに本部を置き、多数の金融機関が所有する協同組合という形態を取っているもので、世界最大のネットワークを運営している組織である。

 ニューヨーク連銀は送金を実行する前に、正式なフォーマットではなかったことから送金指示を拒否していたそうであるが、その後ハッカーはさらに連銀に送金を指示し、その内容が適切な送金依頼のフォーマットになっており、一部実行されてしまった。

 まるで映画のような事件が今年実際に起きていた。黒田総裁は日銀については、これまで日本ではこのような事件は起きておらず、日銀ネットには外部から侵入されたことがないと対談で述べていた。日銀ネットは新日銀ネットという新システムに移行したことでさらに強固になっている。

 日銀ネットは日本の金融システムという重要なインフラを支えているシステムであり、このような不正なアクセスに対して厳重に警戒することが重要となる。しかし、絶対はない。今回はある意味世界の金融インフラの中核を成すニューヨーク連銀も絡んでいただけに、警戒は怠れない。

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by nihonkokusai | 2016-10-19 09:32 | 中央銀行 | Comments(0)
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