牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:中央銀行( 231 )

米利上げとバランスシート縮小に向けたスケジュールは維持か

5月24日に公表された5月2、3日に開催された米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、「メンバーは総じて、緩和策を一段と取り除く前に最近の経済指標の弱含みが一時的とのさらなる証拠を待つのが賢明と判断した」とした。つまり足元の米国の経済指標がやや弱いものが出ていることもあり、それが一時的なものであるのかどうかを見定めてから、緩和策の縮小、つまり追加利上げを判断するとしている。

ただし大半のメンバーは足元の弱含みのデータが、今後の経済物価見通しに対して変更を加えるものではなく、今後の緩やかな金融緩和程度の縮小が適切であるというのも変える必要が無いと概ね合意したとしていた。これはつまり景気判断を変えざるを得ないほどの余程悪い経済指標の発表でもない限りは、予定通りに6月のFOMCでの利上げを決定する可能性が依然として高いことを示唆した格好となった。

市場では経済指標の悪化と、それによる物価見通しの不確実性を危惧するメンバーが複数いたことで、今後の正常化に向けたFRBの歩みがより慎重になるのではないかと捉えた。これを歓迎した格好となり、米株高のひとつの要因となった。しかし、慎重な見方をするメンバーがいるのは確かながらも、市場が抱いている今後のFRBの正常化のスケジュールが後ずれするようなことは考えづらい。

市場の予想する正常化のスケジュールとしては年内3回(3月の利上げ実施込み)、つまりあと6月と9月のFOMCでの利上げと、年内にバランスシートの縮小を開始するであろうとの予想となっている。今回のFOMC議事要旨でこの予想が大きく修正されたとは思いづらい。

それを示すものとして、年内のバランスシートの縮小の開始を示していたことがあげられる。その手段として、満期を迎えた米国債などの再投資額を3か月ごとに縮小するとの事務方スタッフの提案について、参加者はおおむね賛同したとしている。12月のFOMCでこのバランスシートの縮小を決定すると年内開始が時間的に厳しくなる可能性がある。そうなると9月もしくは6月のFOMCでこのあたりを詰めてくる可能性がありうる。

また、今後の利上げスケジュールについて大きな修正がなさそうなことを、ブレイナード理事が議事要旨発表後というなかなか微妙なタイミングで指摘する格好となった。ブレイナード理事は利上げに慎重な「ハト派」の代表格であり、今回のFOMCで物価見通しの不確実性を危惧するメンバーの一人であったと予想される。

ところがそのブレイナード理事は25日、世界経済について「ここ数年で最も明るい」との認識を示した。「欧州経済の成長が堅調なうえ、日本は安定し、新興国も良好になりつつある」と説明。そのうえで「FRBの経済見通しに対する下振れリスクは軽減された」と述べていた(日経新聞)。

これは見方によれば、FOMC議事要旨で市場が今後の正常化のスケジュールについて、FRBがより慎重になることを期待し過ぎることに対し、少しブレーキを掛けてきたようにも思われる。今回の発言は議長など執行部の意向を反映した可能性もあり、今回のハト派のブレイナード理事の発言は注意しておく必要があろう。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-29 09:47 | 中央銀行 | Comments(0)

6月の米利上げの行方

5月2日と3日に開催されたFOMCでは金融政策の現状維持を決定した。声明文では、「第1四半期の経済成長の減速は一時的である可能性が高い」とし「経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増し」、その上で「インフレ率は中期的に2%近辺で安定すると予測している」としていた。

この声明文の内容からみて6月のFOMCでの利上げの確率は高いとみられる。利上げに向けた環境が整っているのであれば、何故5月のFOMCでは現状維持であったのか。これはFRBは公には認めてはいないものの、ある程度のルートマップが存在し、3月、6月そして9月のFOMCで利上げを行った上で12月のFOMCで保有資産の再投資を止めることで、膨らんだバランスシートの縮小に着手するのではとみられているためである。

3月、6月そして9月のFOMCで利上げを行うとの予想の背景には、年3回の利上げとしてバランスを配慮した面もあるかもしれないが、いずれも議長会見が予定されたFOMCであるということも絡んでいよう。ちなみに2013年12月のテーパリングの決定、2015年12月の政策金利の0.25%~0.50%への引き上げ。2016年12月0.50%~0.75%への引き上げ、2017年3月の0.75~1.00%の引き上げのいずれも、議長会見の予定されていたFOMCで決定された。

6月の利上げについて懸念材料となっていたのが、欧州の政治リスクであった。フランス大統領選挙でマクロン氏が勝利したことでユーロ分裂の危機は後退し、これもFRBの利上げの阻害要因とはならなくなった。

5日に発表された4月の米雇用統計では非農業雇用者数が21.1万人増と予想を上回った上に失業率は4.4%と約10年ぶりの水準に低下した。平均時給が前年同月比で2.5%増と前月から減速したものの、これも利上げにはフォローの要因となろう。

米議会の与野党は連邦政府の9月末までの支出をまかなう暫定予算案の内容で合意しており、政府機関閉鎖リスクも後退している。

12日に発表された4月の米消費者物価指数は前月比0.2%の上昇となり予想を下回ったが、これも6月の利上げの阻害要因とはならないとみられる。ちなみに前年比では2.2%の上昇。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%上昇。前年比では1.9%上昇となっていた。

米10年債の利回りの推移を見る限り、6月の利上げをそれほど織り込んでいるようには見えない。これは今回に限らずではあるが、欧州の政治リスク等もあったことでリスク回避から利回り上昇が抑えられていた面もある。FRBの正常化に向けた政策に対し過度な反応は避けているようにも見える。

いずれにしても現在の環境に大きな変化がない限り、6月のFOMCでの利上げ決定の可能性は高いと見ている。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-15 10:00 | 中央銀行 | Comments(0)

異常な金融政策が異常に見えなくなる怖さ、なぜ正常化が必要なのか

フランス大統領選挙でのマクロン氏の勝利により、欧州の政治リスクが後退した。投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は20年超ぶりの低水準となったそうである(ロイター)。

米国の中央銀行にあたるFRBは2014年1月からテーパリング(毎月の米国債とMBSの買入額の縮小)を開始し、10月にテーパリングを終了させ(新規の買入停止)、2015年12月には利上げを決定した(政策金利の0.00%~0.25%から0.25%~0.50%へ引き上げ)。これらはいわゆる正常化に向けての動きとなる。2016年12月(0.50%~0.75%に)、2017年3月に追加利上げを決定し(0.75~1.00%に)、6月も利上げするとの予想となっている。その後、9月にも利上げを決定し、12月からは膨らんだバランスシートの縮小を償還分を再投資しないかたちで実施するのではとの観測となっている。

この正常化に向けた動きに対して、何故このタイミングで金融引き締めをしなければならないのか、バランスシートの縮小は必要なのかという声もある。北朝鮮などの地政学的リスクはまだまだ存在する。景気も雇用はさておき、それほど高い成長率ではなく、物価も日本はさておき欧米もFRBやECBの目標値に届いていないではないかとの理由によるものとみられる。

そもそも正常化をするということは、それまでの政策が「異常」であったと言う事実を忘れてはいけない。何故、異常な政策を行わなければならなかったのか。それは米国の金融機関を直撃したリーマン・ショックに代表される金融危機とギリシャの財政問題がきっかけとなったユーロシステム崩壊の懸念による世界的規模の金融危機への対処であったはずである。財政政策に限界が見えたことで金融政策に頼らざるを得なくなり、いわゆる非伝統的な政策を試すことになった。非常時の金融緩和による実質的な効果のほどはさておき、金融市場での不安感は後退したことは確かである。それが2012年の年末にかけてであった。

このタイミングで日本ではアベノミクスと呼ばれた政策が急浮上した。デフレ解消を旗印にリフレ政策というその効果への疑問があるとともに副作用が懸念された政策を日本の中央銀行は取らざるを得なくなった。

また、ECBやイングランド銀行は英国のユーロ圏離脱問題等も生じ、こちらもさらに深入りせざるをえなくなった。しかし、ユーロを巡る危機は今回のフランス大統領選挙の結果からみても後退するとみられ、ECBはあらためて緩和に向けた姿勢からのスタンスの変化を今後試してくる可能性が出ている。

それに対して日銀は2%という物価の絶対目標を掲げてしまった。しかしリフレ政策では効果が出ず、マイナス金利政策も取り入れたものの金融業界などの反発もあり、長短金利操作付き量的質的緩和という異質な政策となってしまった。すでに後戻りできず、物価目標の2%が見えるまで異常な政策を続けざるを得ない状況に陥ってしまっている。

これに対して米国では特に雇用面での回復が著しく、原油価格も回復したことで物価も上昇してきたことから、正常化を進めることができた。異常な政策はその対価として将来的なリスクが存在する。そのリスクを軽減させるためにも正常化は必要となる。しかし、金融市場は大きな危機が繰り返されてかなり過敏になっており、FRBの正常化も時間を掛けて行わざるを得なかった。金融緩和は簡単だが引き締めの格好となる正常化を、景気に加熱感のないタイミングで行うことはかなり神経を使わざるを得ない。しかし、将来的なリスクは摘み取っておく必要があることも確かである。

その将来的なリスクとは何か。たぶんそれはいずれ日本で試されることになるのではないかと思う。いまの日本の債券市場がいかに機能不全に陥っているのかは最近の債券市場の動きを見てもあきらかである。国債の買い手が日銀と海外投資家だけのような状況となっている。そして日銀はすでにGDP規模の国債を買い入れている。政府はGDPの2倍以上の債務を負っている。いままでそれで国債が急落することはなかったので、それを懸念するのはおかしいとの見方もある。しかし、ダムは水が溜まり続けても崩壊するまで危機とは認識されないように、見えないリスクが膨らんでいることも確かではなかろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-10 09:34 | 中央銀行 | Comments(0)

欧米の物価動向とFRBやECBの対応

28日に米商務省が発表した第1四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)速報値は前期比年率0.7%増となった。2014年の第1四半期以来3年ぶりの弱い伸びにとどまった。GDP全体の約7割を占める個人消費が成長鈍化の主因になったが、これは2016年10~12月期の個人消費の伸び率が3.5%となったことによる反動もあり、また暖冬による消費減少が主な背景ともされている。

28日に米労働省が発表した1~3月期の雇用コスト指数は、季節調整済みの前期比で0.8%上昇となった。これは2007年10~12月期以来の大きな伸びとなり、市場予想も上回った。賃金・給与は0.8%上昇(前期0.5%上昇)。諸手当は0.7%上昇(前期0.5%上昇)。通年(昨年4月~今年3月)では前年比2.4%の上昇となった。

1日に発表された3月のPCE物価指数は0.2%の下落となり、2016年2月以来のマイナスとなった。前年同月比では1.8%の上昇に。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%下落と2001年9月以来のマイナスとなった。前年比では1.6%の上昇。

GDPの弱い伸びが一時的な要因によるものかどうかは、今後の改定値等も確認する必要はあるが、雇用コスト指数を見る限りFRBの年内の3回程度の利上げの可能性は維持されよう。PCE物価指数は前月比でマイナスとなったものの、物価の基調に大きな変化はないとみられる。今週2日、3日にFOMCが開かれる。今回は利上げは見送られ、現状維持が予想されている。しかし、議長会見が予定されている6月のFOMCにおいて、利上げを決定する可能性は高い。その後の9月のFOMCでも利上げを決定した上で、12月のFOMCでは保有国債の償還分の再投資の停止を決定するのではと予想されている。

28日に欧州連合(EU)統計局が発表した4月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.9%の上昇となり、予想も上回った。エネルギー価格の上昇などが寄与した。欧州中央銀行(ECB)は中期的なインフレ率目標を2%をやや下回る水準に設定しており、ほぼその水準にある。また、食品とエネルギーを除くコアインフレ率は1.2%の上昇と2013年9月以来の高水準となった。3月の0.8%を上回り、こちらも市場予想を上回った。

4月27日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定した。会見でドラギ総裁は景気の下振れリスクは一段と後退したとの認識を示したが、インフレに関しては慎重な姿勢を崩さなかった。しかし、4月のCPIを見る限り、それほど懸念する必要はなさそうである。ECBは6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していると報じられていた。5月7日のフランス大統領選の決選投票の結果次第の面もあるものの、今回のCPIを見る限りにおいて、その可能性もないとは言えない。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-05-02 09:50 | 中央銀行 | Comments(0)

フランス大統領選挙の結果を確認し、緩和政策にブレーキを掛けようとしている欧州中央銀行

 欧州中央銀行(ECB)が6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していることが、関係筋の話で分かったとロイターが伝えた。見通しに対する下方リスク、追加利下げや資産買い入れ拡大の可能性に関する文言の一部、またはすべてを削除することが検討されているという。


 先日のフランス大統領選挙の結果、EU懐疑派の2人が決選投票に残るという最悪のシナリオは回避された。5月の決選投票でもマクロン氏有利とみられており、マクロン氏がフランス大統領となればユーロにとって大きなリスクが後退することになる。ECBは5月のフランス大統領選挙の結果を確認した上で、これまでの緩和に傾斜していた政策にブレーキを掛ける可能性が出てきた。


 これで緩和政策からの方向転換をするわけではない。緩和政策のスピードを緩め、ブレーキを掛けて止まった上で、方向転換の可能性を探ることになろう。それにはファンダメンタルの裏付けも必要となる。英国のEU離脱に伴う影響なども考える必要はあろう。それでも今後も景気の改善がみられ、物価もECBの想定する目標値近辺にあるならば、非常時の金融緩和を続ける必要はない。むしろそれによる副作用を心配する必要がある。


 ECBの緩和政策にいきなり急ブレーキを掛けるとなれば、市場に大きな影響を与える懸念がある。このため文言変更ですらもかなり神経を使っていることが伺える。


 この修正そのものは間違ってはいないと思うが、ひとつ問題がある。果たして文言の変更を検討していると示唆した関係者が誰かということである。ドラギ総裁に近い人物であれば問題はないが、ドイツ関係者となるとやや懐疑的な見方も必要になる。


 ドイツのショイブレ独財務相は4月20日に、ECBがFRBに倣い、金融緩和策の解除に着手することは悪い考えではないとの見解を示していた(ブルームバーグ)。これに対しドラギ総裁は金融緩和策の解除にはかなり慎重とみられている。


 それでもECBが緩和政策にブレーキを掛けることは可能性としてはありうる。今月27日の政策理事会で出口議論を行ってくる可能性も指摘されている。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-04-27 09:59 | 中央銀行 | Comments(0)

イエレンFRB議長の去就に対するトランプ大統領の発言修正の背景

トランプ氏は大統領就任前に、自分が大統領に就任すれば、イエレン議長が共和党員でないというだけの理由で、自身のテレビ番組「アプレンティス」の決め台詞「おまえはクビだ」をイエレン氏に言い放つと主張していた(ロイターの記事より)。

FRBは大統領が任命し上院の承認を受けた7名の理事から構成されている。理事の任期は14年。この7名の中から議長と副議長が選ばれる。議長と副議長の任期は4年で再任も可。イエレン氏の議長としての任期は2018年2月3日まで。前任のグリーンスパン議長やボルカー議長はそれぞれ再任されていた。

FRBと政府との関係をみる上で、少し歴史をおさらいしておく必要がある。第二次大戦後、今度はインフレ懸念の台頭により、FRBは国債価格を維持する政策の副作用に直面することになった。インフレリスクを防ぐために、1951年に財務省とFRBは「アコード」を取り交わし、国債価格維持を撤廃した。これによりFRBの判断で金融政策が行えるようになり、中央銀行による金融調節が重要性を増した。

しかし、政府とFRBの対立はその後さらに激化することになる。特にマーチン議長は強い指導力を発揮し、ホワイトハウスから圧力に屈せずにFRBの独立性を守り抜いたとされる。強い影響力を保持したとされるポルカー議長時代も、レーガン大統領の息の掛かった理事が送りこまれ反乱が起きかけたケースもあった。政府がFRBに対して圧力を掛けないようにさせたのはクリントン時代のルービン財務長官の影響が大きかったとされている。

その後のFRBは政府からの独立性を維持させてきたといえる。しかし、トランプ大統領はFRBのイエレン議長に対してクビ宣言をし、イエレン議長の再任はないと言い切っていた。

ところがトランプ大統領は今月12日に、ホワイトハウスでのウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、イエレン議長に対し尊敬していると指摘した。現行の任期を迎える2018年で「おしまいになる訳ではない」とし、続投に含みを残したのである。つまりイエレン議長の意向次第ではあるが、再任の可能性が出てきた。これにはトランプ政権内部の変化が影響しているようである。

トランプ氏の従来の過激路線を推進するバノン氏と、穏健路線を重視するクシュナー氏やコーン国家経済会議(NEC)委員長の対立が激化している。シリアへのミサイル攻撃は「穏健派」の主張を取り入れたものとなったことから、どうやら穏健派の影響力が強くなってきた。トランプ大統領はバノン大統領上級顧問・首席戦略官を更迭するのではないかとの観測も出ている。

その穏健派の一人であるコーン米国家経済会議委員長は、3月12日にFOXニュースのインタビューで、FRBについて「独立性」を認めた上で権限を「尊重する」と述べていた。この際は3月15日の利上げを容認する姿勢を示した格好ながら、FRBの独立性についても触れている点にも注意が必要となる。つまりトランプ政権の穏健派は、ルービン時代から意識されたFRBの独立性を尊重する姿勢を示した。コーン委員長はゴールドマン・サックスの前社長だったこともあり、中央銀行が政府からの独立性を維持することで信用力を保てることが金融市場にとって非常に重要との認識を持っているものと思われる。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-04-15 10:01 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの情報漏洩問題、中央銀行の情報漏洩は何故起きるのか

リッチモンド連銀のラッカー総裁は4日、2012年の機密情報漏洩事件に関わったとして、即日辞任すると発表した。

ラッカー総裁は声明で2012年10月2日に調査会社メドレー・グローバル・アドバイザーズのアナリストと話した際、その後のFRB内の会合で話し合われる予定の政策選択肢についてアナリストが詳細な情報を握っていることが分かったとした。だがアナリストとの会話でコメントを拒否しなかったため、その情報を確認もしくは事実と承認しているかのような印象を与えた可能性があると述べた(WSJ)。

問題となったのはメドレー・グローバル・アドバイザーズの2012年10月の顧客向けリポートで、FRB内部の政策協議に関して市場を動かしかねない情報が含まれていたとされる。この問題を巡り下院共和党や連邦当局が調査を行っていた(WSJ)。

メドレー・グローバル・アドバイザーの有料レポートはメドレー・レポートと呼ばれ、真偽のほどはとにかくも金融に関する特ダネが掲載されることがあり、それが市場を動かすということがあった。最近ではあまり聞かなくなったものの、私が債券ティーラーの現役時代はこのレポートの記事がよく話題となっていた。

2012年10月当時の自分で書いたものを確認してみたが、メドレー・レポートに触れたものはなかった。しかし、それを探しているときに面白いものを見つけた。2012年10月31日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和が決定されていたが、それについては私は下記のような事を書いていた。

「日銀は31日の金融政策決定会合で、追加緩和策を決定した。事前に資産買入等基金の10兆円程度プラスリスク資産の増額は報じられていた。今回は政府による経済対策と歩調を合わせた格好となっており、この報道は日銀関係者というよりも政府関係者から漏れた可能性が高いと思われる。」

憶測で書くなと言われそうではあるが、この際には決定会合の内容が事前に漏れていたことは確かであった。これはこの会合に限らずで、以前には決定会合の最中に決定内容が速報といった格好で報じられることもあった。かなり大昔となるが、日銀短観そのものが1週間前に漏洩して債券ディーラー間で回し読みされていたということもあったそうである。

中央銀行の金融政策、大昔では公定歩合の上げ下げとかは報道関係者にとり、そのスクープを抜くことが大きな勲章のようなものになっていたとされている。これもあってか、やや金融政策に関する事前報道が加熱していた時期もあった。ところが、こと日銀に関しては黒田総裁が就任してからは、そういったことがほとんどなくなった。だからこそ黒田日銀の追加緩和がサプライズと称されたのである。黒田総裁の異次元緩和そのものについては個人的には批判的ながらも、この情報漏洩を完全に遮断している姿勢に対しては評価している。

ただし、中央銀行が作為的に金融政策の情報を流すケースもあることにも注意する必要がある。いまのFRBがまさにそうである。年内複数回の利上げをするぞと関係者がコメントしている。これは当然ながら情報漏洩ではない。特に金融緩和ではなく、その反対方向に向かう際にはそれを市場に浸透させ、市場の動揺を押さえ込む必要があるためである。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-04-06 09:48 | 中央銀行 | Comments(0)

強力な緩和政策のブレーキにも苦慮するECB

3月9日のECB理事会で、主要金利と資産買い入れ策を据え置きを決定した。これは予想通りであり、市場へのインパクトも限定的かとみられていたが、市場はドラギ総裁の会見内容などから、ECBのスタンスの微妙な変化を感じ取った。

ドラギ総裁は理事会後の会見で、ECBは今回の声明から「目標達成に向け正当化されるなら理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」との文言を削除したと表明した。削除理由について「デフレリスクに促された一段の措置の導入に向けた緊急性がもはや存在しないことを示唆するために削除された」と説明した。

さらにドラギ総裁はデフレリスクはおおむね無くなったと言えるとし、市場ベースのインフレ期待は目に見えて高まったと指摘した。また、景気に対するリスクバランスの改善を指摘したほか、利下げを示唆する言及を削除するかどうか協議したことも明らかにした。この発言等を受けて9日の欧州市場ではユーロが買われ、欧州の国債は売られた。

3月17日にECB理事会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁が、ECBは下限金利である中銀預金金利を主要政策金利であるリファイナンス金利より先に引き上げる可能性があるとの認識を示した。これを受けて市場ではECBの利上げも意識した。

ところが市場でECBが金融引き締めを視野に入れ始めたとの思惑が広がっていることを受けて、政策メッセージの変更に消極姿勢を強めていると関係筋6人が明らかにしたそうである。理事会の事情に詳しい関係筋の1人は「われわれはテールリスクの低減を伝えたかったが、市場は出口への一歩だと受け取った」とし、「ECBは拡大解釈された」と話した(ロイター)。

ドラギ総裁の会見は強力な緩和政策を打ち切って出口を探るとまでは解釈はできないが、緩和に前傾姿勢であったものを物価の上昇などを背景に少しブレーキを掛けたものともいえる。その意味ではたしかに利上げまで想定していたものではなかったのかもしれない。

ECB内にはかなり慎重な関係者もおり、金融緩和策の終了はかなり先だと投資家を安心させたい考えを持つ人もいることは確かである。

ECB内では、ドイツなど早期に金融緩和策の解除が必要とするメンバーと、強力な金融緩和が引き続き必要とするメンバーが再び火花を散らせているとの見方がある。

ドイツ出身のラウテンシュレーガー専務理事は27日に、ECBが政策スタンスの変更について協議するのは時期尚早としながらも、異例の金融刺激からの最終的な出口に向け備える必要があるとの認識を示した。

ワイトマン独連銀総裁はユーロ圏では拡張的な金融政策がなお適切との認識を示した上で、拡張的なスタンスが後退することを望むとも発言している。また、ECB理事会は、非常に緩和的な政策の出口政策をゆっくりと検討し始め、発信を幾分均衡の取れたものにすべきと考える人もいるかもしれないと語っていた。

これに対して、ドラギ総裁に近いとされるプラート専務理事からは、ユーロ圏はなお著しい金融刺激が必要との発言があった。タカ派的なドイツやオーストリアなどのグループと、ハト派的なグループがECBの強力な緩和姿勢の今後について、再び火花を散らしはじめているのかもしれない。

注目すべきはドラギ総裁の意志とも言える。ECB理事会後の会見はどうみてもハト派に組みしているようにも見える。ワイトマン独連銀総裁の「発信を幾分均衡の取れたものにすべきと考える人」とはドラギ総裁を示しているのではないとも思えてしまう。

ただし、マーケットは先を読んで動くことで、今回のECB内にはかなり慎重な関係者もいることを示したことで、特にイタリアやスペイン、ポルトガルなどの長期金利が予想以上に上昇してしまうリスクを先に摘んでおこうとしたのかもしれない。

いずれにしても正常化というのはECBにとってもなかなか困難なものであるのも確かで、表だってのブレーキも踏めない日銀はどうするのだろうと思わざるを得ない。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-03-31 09:53 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBのフィッシャー副議長の発言で市場のセンチメントが変化

FRBのフィッシャー副議長は28日に米経済専門局CNBCのインタビューにおいて、FOMC参加者の予測中央値で示された今年あと2回の利上げは「おおむね適切なようだ」と述べ、「それは私自身の予測でもある」と語った(ブルームバーグ)。

この発言を受けて、28日の米国市場ではFRBの年内複数回の利上げが再認識され、ドルが買われ、米長期金利が上昇した。米金利上昇を好感して銀行株が買われ、ダウ平均は150ドル高と9日ぶりの反発となった。3月の米消費者信頼感指数が市場予想を上回ったことや、iPhoneの新モデルへの期待からアップル株が上場来高値を更新するなどしたことも要因ながら、米国市場のセンチメントがフィッシャー副議長の発言によってやや変わったことも確かではなかろうか。

スタンレー・フィッシャー氏については以前にも紹介したが、米国とイスラエルの両国籍を持ち、2013年6月まではイスラエル銀行の総裁だった。バーナンキ前FRB議長やドラギECB総裁などを教えた大学教授であっただけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行などで実務も経験している。オバマ大統領(当時)は、世界で最も優秀で経験豊かな経済政策の専門家のひとりとして広く認められていると語ったが、それに嘘偽りはないであろう。

現在のFRBの金融政策の方向性はイエレン議長とともにフィッシャー副議長が中心となって決定していると思われる。もちろん金融政策の決定は委員会制度を取っており、合議制ではあるが、舵を握っているのはこの2人が中心とみられる。

フィッシャー氏の副議長としての任期は2018年6月まで満了となる。その前にイエレン議長の任期は2018年2月となっている。トランプ大統領はイエレン議長の再任はないと言っており、トランプ氏が任期満了時にも大統領の席にいるのであれば、イエレン議長とそれを支えたフィッシャー副議長の再任はないとみられる。

ただし、理事としての任期は14年となっており、理事としてFRBに残る可能性はゼロではない。しかし、こういった例は過去に一度しかなく、特段残らなければならない理由がない限りはフィッシャー氏は74歳という高齢でもあり、可能性は低いとみられる。

フィッシャー副議長の発言によって、今年はあと2回の利上げが予想されるが、問題はそのタイミングとなろう。今後FOMCの日程は以下の通り。

May 2-3 (Tuesday-Wednesday)

June 13-14 (Tuesday-Wednesday)

July 25-26 (Tuesday-Wednesday)

September 19-20 (Tuesday-Wednesday)

October 31-November 1 (Tuesday-Wednesday)

December 12-13 (Tuesday-Wednesday)

6月、9月、12月のFOMC後に議長会見が予定されている。これまでの3回の利上げ(2015年12月、2016年12月、2017年3月)はいずれも議長会見が予定されているFOMCで決定されている。このため、6月、9月、12月のうちのいずれか2回がターゲットとなろう。4、5月のフランス大統領選挙の結果を受けてユーロに対するリスクが高まらなければ、6月のFOMCでの利上げの可能性も意外に高いのかもしれない。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-03-30 09:56 | 中央銀行 | Comments(0)

正常化に舵を取る欧米の中央銀行とそれが出来ない日銀

15日に開催された米国の金融政策を決めるFOMCでは、追加利上げを賛成多数で決定した。政策金利であるフェデラル・ファンド金利の誘導目標を年0.50~0.75%から0.75~1.00%に引き上げた。ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁が金利据え置きを主張して反対票を投じた。イエレン議長は「利上げが遅れればリスクになる」と強調し、ドットチャートによる年内利上げの見通しは今回含めて3回という数字が示された。市場では年4回の可能性もあるのではと懸念していたことで、この結果をみてむしろ安堵した。

昨日のイングランド銀行のMPCでは、賛成多数で金融政策の現状維持を決定したが、フォーブス委員が利上げを主張して反対票を投じた。他のメンバーも早期の景気支援策縮小が正当化される可能性を示唆し、イングランド銀行の次の選択肢は利上げとなる可能性が出てきた。ちなみにフォーブス委員は6月に退任する予定となっている。

9日のECB理事会後の会見でドラギ総裁は、ユーロ圏にはデフレリスクはもはや見られないとの認識を示した。デフレリスクへの対応として一段の行動を必要とする切迫性がもはや存在しないことを主に示唆しているとも述べ、デフレ脱却宣言とも取れる発言となった。

16日の日銀の金融政策決定会合では、金融政策の維持を決定した。景気の総括判断も据え置かれた。黒田総裁は会見で、米国の利上げは国内金利の引き上げに直接的な影響はないとの認識を示した。

FRBの利上げペースは2015年、2016年の年一回から今年はすでに複数回の利上げの可能性が高くなっている。正常化に向けて慎重なスタンスからここにきてペースを早めた格好である。それだけ経済環境が好転していることになるとともに、世界的なリスクの後退も当然影響しているとみられる。

いわゆるリーマン・ショックに代表される米国の金融機関を中心に発生した世界的な金融経済危機、その後、ギリシャを発端とした欧州でのユーロ危機は、とりあえず収束した。しかし、なかなかリスクへの警戒を緩めることはできなかった。

それでもいち早く正常化路線を歩んだFRBがそのペースを速めつつある。EU離脱という選択をした英国も混乱は一時的となり、むしろポンド安で物価は上昇し、株価も上昇した。イングランド銀行も中立姿勢に戻しつつあり、正常化にむけたタイミングを計っている。日銀と同様に緩和政策に前傾姿勢をとっていたECBも、ここにきてやっと中立姿勢に戻そうとしつつある。そのなかにあって日銀だけがいつまでも非常時の体制を維持し、かなり無理な緩和策を継続し、緩和に前向きな姿勢を崩そうとしていない。

中央銀行の金融政策で物価を能動的に動かすことはかなり困難であることは、日銀の異次元緩和の進み方と物価の動向を重ねれば明らかで、それならば今度は財政でというような妙な意見まで出ている。それほど無理を重ねて物価を上げようとする前に、なぜ日本の物価は上がりづらいのか。日銀が目標としている消費者物価をあらためて分析する必要もあるのではなかろうか。といってもこれは日銀が実は一番良くわかっている問題でもあり釈迦に説法か。日銀自体、大量に長い期間の国債を買うことで物価が上がるというロジックは通用しないことはわかっていたはずである。

ここにきての欧米の物価上昇も中央銀行の金融緩和が効いているというよりも、世界的なリスクの後退により景気そのものが回復し、心配された新興国経済も思いの外しっかりしていること、そこに原油価格の上昇も影響して生じたものと言えよう。

世界的な潜在リスクは当然、いつも存在する。しかし、現実のリスクそのものは金融市場を見る限り後退しているなかで、中央銀行の金融政策だけが異次元のまま非常時の対応が続けられることに違和感はないのか。違和感だけで済めば良いが、それがいずれマーケットの歪みを生む懸念もありうるのではないか。日銀にはリスクを警戒するあまり、自ら別なリスクを高めているようにも見えてしまう。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-03-19 11:52 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー