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カテゴリ:中央銀行( 257 )

世界的な株高の謎、日経平均も20年10か月ぶりの高値更新

 10月11日の東京株式市場で日経平均株価は前日比57円76銭高の20881円27銭で引けた。2015年6月に付けた第2次安倍政権の発足以降の高値を上回り、1996年12月5日以来、約20年10か月ぶりの高い水準となった(11日の日経新聞電子版より)。

 米国株式市場では、ここにきてダウ平均、ナスダック、S&P500の主要3指数が過去最高値を更新し続けていた。10月に入ってのロンドン株式市場でもFTSE100種総合株価指数は過去最高値を更新し、フランクフルト株式市場でドイツ株式指数(DAX)も過去最高値を更新している。

 日経平均株価の過去最高値は1989年の大納会(12月29日)に記録した38915円87銭となっている。ここからいわゆるバブルの崩壊によって日経平均は大きく崩れた。日経平均が約21年ぶりの水準に回復したとはいえ、欧米の株価指数が過去最高値を更新しているのに比べると日本の株価の上昇ピッチは緩やかなものとなっている。それだけバブル崩壊の後遺症が大きかったとも言えよう。

 日経平均のここ21年間の動きをみると、日経平均株価は2003年4月28日の7607円88銭がバブル崩壊後の安値となり、いったん底打ちした。2003年5月の、りそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり銀行株などが買われた。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めたのである。

 中国など新興国経済の回復により、日経平均は2007年7月9日に18261円98銭まで上昇した。しかし、サブプライム問題に端を発した世界的な金融経済ショックが日本も襲い、さらにそれが沈静化したかしないかのタイミングでギリシャを発端とした欧州の信用不安が襲ってきた。このため、日経平均は2009年3月10日に7054円98銭まで下落し、バブル崩壊後の最安値を更新。その後も2012年末あたりまで低迷が続くことになる。

 米国のダウ平均の推移をみてみると2009年3月あたりからじりじりと上昇基調となっていた。この流れに日経平均が乗れなかったのは、バブルの後遺症だけでなく、世界的な金融経済リスクに対するリスク回避の動きで、急激な円高が進行していたことも影響していよう。しかし、その世界的な危機が後退しつつあったタイミングでアベノミクスが登場し、リフレ政策を受けたヘッジファンドなどの仕掛けも手伝い、円高の急激な調整が入り、日経平均も回復基調となった。

 その後、日本経済は緩やかながら回復基調が継続した。これには米国経済の回復、懸念された中国など新興国経済の落ち込みが大きくなかったことなども上げられよう。それでも欧米の株式市場が過去最高値を更新していることについては謎ともいえる。もしその背景に日米欧による非伝統的な金融政策、特に異常な規模の量的緩和策の影響があったとすれば、FRBの正常化も進みつつあり、ECBも緩和縮小に舵をとりつつあり、日銀も実質的なステルス・テーパリングを行っていることで、いずれピークを迎えることも予想されるのである。


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by nihonkokusai | 2017-10-14 12:12 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの量的緩和は米長期金利を引き下げたのか

 中央銀行の金融政策は短期金利を操作し、長期金利に働きかけることで景気や物価を刺激するというのがひとつのセオリーとなっている。政策金利となっている短期金利がゼロ%近辺となった際には、国債などを買い入れて長期金利に働きかけようとした。それではこの金融政策が本当に長期金利に働きかけていたのか、米国の事例を元に検証してみたい。

 2008年11月25日のFOMCにおいて、総額8千億ドルのあらたな金融対策を発表した。内容は住宅ローン担保証券や、自動車ローン・学生ローンなどを担保にした証券化商品を買い取ることが柱となった。これによりFRBのバランスシートは大きく膨張することになる。これがFRBによるQE(Quantitative easing、量的緩和)と市場で呼ばれたものである。

 2008年11月末の米10年債利回り(以下、長期金利)は3.5%台にあったが、翌月12月末に2.4%台に下落しており、FRBの量的緩和は一時的にせよ米長期金利は低下した。しかし、2009年6月末には3.7%台まで戻しており、これだけみると効果が継続していたようには見えない。

 2010年11月3日のFOMCでは一段の景気刺激に向けた措置として、2011年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという追加緩和策(QE2)を決定した。毎月の追加購入額は約750億ドル、MBSの償還元本の再投資分も含めると2011年6月末までの米国債購入は総額8500億~9000億ドルとなる。

 2010年10月末は2.5%台、11月末は2.7%台にあった米長期金利はむしろ上昇し、2011年2月末には3.5%台をつけている。結果から見る限り、QE2が米長期金利を押し下げたようにはみえない。

 2011年9月21日のFOMCで残存期間6~30年の財務省証券4000億ドルを買い入れ、残存期間3年以下の財務省証券を同額売却するというプログラムを決定した。1961年のケネディ政権下で行なわれたことがあるツイスト・オペもしくは、オペレーション・ツイストと同様の手段となった。

 2011年9月末の米長期金利は1.98%、その後も2.0%近辺で推移しており、ツイストオペが米長期金利を引き下げてはいなかった。

 2012年1月25日のFOMCで政策金利は据え置いたものの、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」と、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。さらにFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 2012年1月末の米長期金利は1.97%、その後の米長期金利も4月あたりまでは2%台で推移し、その後7月に1.5%台に低下した。

 2012年9月13日のFOMCでFRBは追加の緩和策を決定し、住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明した(QE3)。

 12月12日のFOMCでは、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大する。MBS含めると月額850億ドルを買い入れる。また、償還分の買入も行うとした。

 米長期金利は2012年9月末が1.72%、12月末が1.65%、2013年1月末が1.91%台と低下というより、むしろ上昇した。

 2013年5月22日にFRBのバーナンキFRB議長は、議会証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘した。

 これをきっかけとして米長期金利2013年5月末の1.9%台から、12月には3%近くまで上昇することとなる。しかし、これ以降の米長期金利はデーパリングが現実に実施され、利上げも行われているにも関わらず、2016年7月には1.3%台に低下した。

 もちろん金融政策だけが米長期金利を動かしているわけではない。しかし、FRBの量的緩和は米国債とMBSの大量の買入、いわゆるQEを通じて行われており、長期金利を押し下げることも大きな目的であったはずである。

 タイムラグもあり、結局、QEによって現在の米長期金利の低位安定があるとの見方もあるかもしれないが、QEで米長期金利は低下せず、むしろテーパリングなど正常化途中で低下傾向を示すなど、金融政策そのものと長期金利の連動性は低いとみたほうが素直か。

 日本の場合は日銀が強制的に長期金利を押さえ込んでいる。米国の例をみても少なくとも量的緩和が米長期金利低下を即、促しているわけでなく金利低下による効果は限定的ともいえる。これは日本にとっても同様ではなかろうか。



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by nihonkokusai | 2017-10-05 10:10 | 中央銀行 | Comments(0)

イエレン議長はあらためて年内利上げを示唆

 FRBのイエレン議長は26日の全米企業エコノミスト協会での講演で、「インフレ率が目標の2%に戻るまで金融政策を据え置くのは賢明ではない」と述べ、緩やかな利上げが現在のところ最も適切な政策スタンスだとの認識を示した上で、「ゆっくりし過ぎないよう注意するべきだ」と述べた(ブルームバーグ)。

 20日のFOMCでは政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を年1.00~1.25%のまま据え置いた。そして、2008年~14年に購入した米国債などの保有量を10月から段階的に減らすことを決定した。そして、 FOMC後に公表した政策金利見通し(ドットチャート)では、参加者16人のうち11人が年末までに追加利上げを予測していることを明らかにした。

 この日の会見でイエレン議長は物価動向について、今後数年で2%の近辺に回復し、安定するという見通しを変えなかった。物価の2%割れは多分にミステリーだとも表現していた。

 26日の講演後の質疑応答でも今年の物価停滞について「謎」と述べていたようであるが(日経新聞電子版)、基本姿勢としては緩やかながらも、ゆっくりしすぎない利上げを意識しているようである。

 これはつまり足元の物価データなどからFRBが予想している今年の年3回目の利上げは困難、との見方を修正させようとの意図があるようである。余程の事態が発生しない限り、FRBのシナリオは12月のFOMCでの利上げ決定とみて良いよう思われる。

 余程の事態としては北朝鮮リスクなども挙げられよう。こちらはすでに話し合いの余地もなくなりつつあり、何かしらのきっかけで軍事衝突を招く懸念がないわけではない。しかし、今のところは軍事衝突に進展する可能性は薄いとの見方も強い。

 物価に対しては原油価格の動向も当然影響を与える。ここにきてWTIは50ドルの大台を回復するなどしており、少なくとも物価を抑制する要因とはなくなりつつある。今後、物価については上昇圧力を強めることも予想され、これは米国のみならず日本も同様であるかもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-09-28 15:51 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBは2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結

 9月19、20日に開催されたFOMCでは、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は年1.00~1.25%のまま据え置いた(全員一致)。そして、2008年~14年に購入した米国債などの保有量を10月から段階的に減らすことを決定した。2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結し、大幅に膨らんだ保有資産の縮小を始める(日経新聞)。

 2008年から14年10月までのQEと市場で呼ばれた量的緩和で、FRBは米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を大量に買い入れたことで、保有する資産量が9千億ドルから4.5兆ドルまで膨らんだ。10月以降は満期を迎えた債券や証券への再投資を取りやめる格好で資産圧縮に着手する。保有する米国債やMBSを10月から3か月の縮小幅は米国債が月60億ドル、MBSなどは40億ドル削減する。削減額の上限は段階的に増やし、いずれは月500億ドルまで引き上げる。

 FOMC後に公表した政策金利見通し(ドットチャート)では、参加者16人のうち11人が年末までに追加利上げを予測していることを明らかにした。利上げ回数の見通しは2018年が3回、2019年が2回、2020年は1回となった。長期の中立金利予測は前回の3%から2.75%に引き下げられた。

 10月からの資産縮小開始は事前にかなりアナウンスされていたことで予想通り。ただし、年内3回目の利上げについては市場参加者の間でも見方が分かれていたこともあり、20日の米国市場はこの利上げを織り込むような動きとなった。ただし、米10年債利回りの上昇はそれほど大きくはなく2.3%台には乗せてこなかった。

 FOMC後の会見でイエレン議長は、物価動向には「今後数年で2%の近辺に回復し、安定する」という見通しを変えなかった。しかし、数年前までの物価停滞は、労働市場のたるみやエネルギー価格の低迷といった「非常に納得できる理由があった」のに対し、「今年はこうした要素がなく、物価の2%割れは多分にミステリーだ」と発言していた。

 ドットチャートやイエレン議長の発言からは、12月のFOMCでの今年3回目の利上げの可能性は高いと見ざるを得ない。金融市場も落ち着いており、利上げ観測の再燃や資産圧縮に対する警戒感はそれほど強くはないことで、これもFRBの正常化をやりやすくさせよう。


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by nihonkokusai | 2017-09-22 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBのイエレン議長が会っていた意外な人物

 FRBのイエレン議長は、ドナルド・トランプ大統領の長女で大統領補佐官を務めるイバンカ・トランプ氏と7月に会談していた。公表された同議長の月間の動静で明らかになったとWSJが伝えた。

 FRB議長の任期は4年で、イエレン議長は来年2月3日で任期満了となる。その後任を巡ってはコーン国家経済会議(NEC)委員長が有力とされていたが、トランプ大統領はコーン氏を次期議長の候補としないと伝えられた。このため、FRB議長の後任については不透明感を強め、イエレン議長の再任の可能性も浮上している。

 イエレン議長とイバンカ氏の朝食を取りながらの会談は、次期FRB議長を巡ってのものではない、と思われるものの、なかなか興味深い。

 FRB議長の毎日のスケジュールは一定期間後に公開されている。公開されたイエレン議長の今年に入っての動向(1月から7月まで)を確認してみた。

February 6, Monday 11:20 AM- 11:50 AM Phone call with Governor Mark Carney, Bank of England

       12:00 PM- 1:00 PM 12:00 PM- 1:00 PMLunch with Gary Cohn, National Economic Council

February 16, Thursday9:45 AM- 10:00 AM Phone call with Secretary Mnuchin

February 23, Thursday 12:00 PM- 1:00 PM Lunch with Governor Mark Carney, Bank of England

February 27, Monday 9:00 AM- 10:00 AM Meeting with Governor Agustin Carstens, Bank of Mexico

           2:30 PM- 3:25 PM Meeting with Kiyohiko G. Nishimura, Former Deputy Governor, Bank of Japan

March 8, Wednesday 12:15 PM- 1:30 PM Lunch with Secretary Mnuchin

March 22, Wednesday 10:15 AM- 11:15 AM Meeting with Jamie Dimon, J P Morgan

April 19, Wednesday 9:00 AM- 10:00 AM Meeting with Chairman Thomas Jordan, Swiss National Bank

May 16, Tuesday 10:45 AM- 11:30 AM Meeting with Lord Mervyn King, former governor, Bank of England

          12:00 PM- 1:00 PM Lunch with Secretary Mnuchin

May 23, Tuesday 12:15 PM- 1:15 PM Lunch with Secretary Mnuchin

May 30, Tuesday 8:00 AM- 9:00 AM Breakfast with Secretary Mnuchin

June 21, Wednesday 8:00 AM- 9:00 AM Breakfast with Secretary Mnuchin

July 17, Monday 8:00 AM- 9:00 AM Breakfast with Ivanka Trump

July 18, Tuesday 4:00 PM- 5:00 PM Meeting with Chris Giancarlo, Acting Chairman, U.S. Commodity Futures Trading Commission

July 27, Thursday 8:00 AM- 9:00 AM Breakfast with Secretary Mnuchin

10:30 AM- 11:00 AM Phone call with Mr. Tharman Shanmugaratnam, Deputy Prime Minister of Singapore

12:30 PM- 1:30 PM Lunch with Gary Cohn, National Economic Council July 28, Friday

9:00 AM- 9:30 AM Meeting with Democratic Leader Nancy Pelosi

 朝食を挟んだり、電話で何度か会議をしていた相手として多かったのが、ムニューシン財務長官であった。財務長官と中央銀行のトップが相談し合うのは当然といえば当然に見えるが、果たして日本では麻生財務大臣と黒田日銀総裁は同様の会談を定期的に行っているのであろうか。

 他の中央銀行のトップとの会談で多かったのが、イングランド銀行のカーニー総裁であった。G7やG20などで会談する機会もあるとみられるが、それとは別に昼食を挟んだり、電話で会議をしていた。またキング前総裁とも会談していた。

 ほかの中央銀行のトップとの会談はメキシコとスイスの中銀トップとの会談であった。たまたまかもしれないが、ドラギECB総裁や黒田日銀総裁とのランチを挟んだり、電話での会談はなかった。ただし、日銀の元副総裁の西村氏とは2月に会談していた。どうやら距離感からみるとECBや日銀よりも、FRBはイングランド銀行に近いように思える。

 ほかにはコーンNEC委員長やJPモルガンのダイモンCEOとの会談もあった。次期FRB議長候補であったコーン委員長と、どのような話し合いがなされたのかも興味深い。トランプ大統領はコーン氏をFRB議長に指名しないようだが、コーン氏本人は意外にやる気であったのかもしれない。

 先日、ビットコインを巡る発言が注目されたダイモンCEOであるが、このところのワシントン詣でが多くなったそうであり、その一環としてイエレン議長と会ったようである。ダイモンCEOはどうやら大統領の座も狙っているのではとの観測もある。


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by nihonkokusai | 2017-09-18 11:36 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行も早期利上げが視野に

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は14日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利を過去最低の0.25%で据え置くことを決めた。7対2の賛成多数での決定となり、マカファティー氏とソーンダース氏が前回会合に続き、0.25ポイントの利上げを主張した。今回からホッグ委員の後任のラムズデン委員が加わり3月以降で初めて、フルメンバーとなる9人での採決となった。

 市場では今回のMPCで利上げ主張派がひとり増えて6対3とすることで将来の利上げの可能性を示唆するのではとの観測も出ていた。しかしそうはならなかった。そのような回りくどいやり方ではなく、同時に発表した議事要旨で「経済が継続的な緩みの縮小や基調インフレ圧力の段階的な上昇の見通しと一致する経路をたどるなら、今後数か月(over the coming months)での一定の金融刺激策縮小は適切となる可能性があると、過半数の委員は判断した」とした。

 カーニー総裁もあらためて、向こう数か月で緩和縮小が必要になるかもしれないと自らも判断していると発言していた。イングランド銀行は早ければ次回11月のMPCで利上げに踏み切る可能性を強く示唆した格好となった。

 さらにハト派(緩和派)と見なされていたブリハ委員も講演で「経済指標の動きは中銀が利上げをしなければならない瞬間に近づいていることをますます強く示唆するようになっている」と述べた(ロイター)。

 英政府統計局が12日に発表した8月の消費者物価指数は前年同月比2.9%上昇と7月の2.6%上昇から加速し、4年ぶり高水準となっていた。この物価上昇が継続すれば、それを理由に利上げつまりFRBと同様に正常化に向けた動きを強めることになる。

 ECBも10月の理事会で国債買入の縮小などを決定するとみられている。ECBは今年12月末までは月600億ユーロペースで国債などの資産を買い入れていくことが決まっているが、来年以降はこのペースを徐々に落としていくことが予想される。利上げについては簡単には踏み込みそうにもないが、まずはテーパリングを視野に入れている。

 FRBは今月のFOMCで保有資産の縮小を決定するとみられている。年内あと一回とみられる利上げについてはやや不透明感を強めたが、14日に発表された8月の米消費者物価指数は前年同月比で1.9%の上昇と予想を上回っており、2%に届かなくてもこのあたりの水準であれば、利上げに支障は出ない可能性がある。ちなみに変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は同1.7%の上昇となっていた。


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by nihonkokusai | 2017-09-17 13:12 | 中央銀行 | Comments(0)

中央銀行による国債大量買いの時代は終焉

 いわゆるリーマン・ショックとギリシャ・ショックと呼ばれた百年に一度のショックが続けておきたことによる世界的な金融経済危機は後退した。リーマン・ショックとはあくまでリーマンの破綻によるショックが大きかったことで象徴的なものとなっているが、米国のサブプライム問題と複雑化した金融商品が原因となっていた。住宅バブルや金余りによる金融資産バブルが崩壊し、欧米の金融機関を直撃したことによる金融不安である。

 ギリシャ・ショックもギリシャの財政に対する懸念が発端ながら、財政に不安を抱えた国をユーロ圏に止められるのかといった問題から、欧州の信用不安が強まり、ギリシャやポルトガル、イタリアなどの国債が急落し、これによって金融経済リスクを強めた。

 これらの金融経済危機に対する財政面からの救済措置には限界もあった。金融危機は金融市場を通じて顕在化していたこともあり、市場参加者の不安を除去する必要もあった。そこで動いたのが中央銀行となる。政策金利の低下余地は限られたことで、日米欧の中央銀行が採用したのが、非伝統的な金融政策となった。その手段として取られたのがマイナス金利政策や、以前に日銀が世界の中央銀行で初めて実施した量的緩和政策であった。

 米国のFRBやイングランド銀行はこの量的緩和を主眼に置いた。ECBは市場の正常化という目的のもとに国債の買入を行った。日銀も国債の買入を増額させていったが、このリスクに対しては長期国債の買入などには手をつけなかった。それでも長期金利は低位で推移していた。

 日米欧の非伝統的な金融緩和策、特にECBの政策が功を奏して、市場はリスク回避の動きを後退させつつあったのが、日本でアベノミクスと呼ばれたものが登場したタイミングとなった。特段、世界的なリスクが強まっていたわけでなく、むしろリスクが後退していたところに、日銀が異次元の金融緩和を行ったことになる。アベノミクスの登場で円安株高が進んだが、あくまでそんなタイミングだからこその動きであり、巻き戻しの動きが一巡すれば落ち着いてしまうことも当然といえる。

 大きなリスクが後退したことで、今度は非常時の金融緩和から正常に戻る動きは当然といえる。英国のEU離脱や新興国の経済への不安等もあり、さらに正常化はつまり金融引き締めにも映ることで市場への影響も警戒され、なかなか踏み出せなかった。日銀はなぜか一層の金融緩和をせざるを得ない状況に追い込まれていった。

 しかし、中央銀行が大量に国債を買い続けるにも限界があり、いつまでも緊急時の対応を続けるわけにもいかない。いち早くそこから脱してきたのは雇用がしっかりしていた米国である。それでもテーパリングとその後の利上げはかなり慎重に行った。ここにきてやっと資産の縮小に手を付けることが予想される。

 ECBも10月にも資産買入の縮小を検討するとみられる。イングランド銀行は新たな国債買入は行っておらず、まずは利上げを視野に入れている。日銀は物価目標を達成するとしてしまったため、出口政策は取れないながらも、政策目標を量から金利に置き換えた上で、国債の買入額を縮小しつつある。

 中央銀行による国債大量買いの時代は終焉しつつある。これは物価が上がってきているからではなく、あくまで大きな危機が去ったからであることを認識する必要があろう。


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by nihonkokusai | 2017-09-15 09:58 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBのフィッシャー副議長が辞める理由

 FRBは6日、フィッシャー副議長が辞表を提出したと発表した。「個人的な理由」という。FRB理事からも退くそうで、完全にFRBの職を辞することになる。

 スタンレー・フィッシャー氏は、米国とイスラエルの両国籍を持ち、前職はイスラエル銀行の総裁だった。バーナンキFRB議長やドラギECB総裁などを教えた大学教授だけでなく、世界銀行チーフエコノミスト、IMF筆頭副専務理事、民間銀行などで実務も経験している。指名した当時のオバマ大統領は、世界で最も優秀で経験豊かな経済政策の専門家のひとりとして広く認められていると語ったが、それに嘘偽りはないであろう。

 バーナンキ元FRB議長やドラギECB総裁が一目置く存在であるフィッシャー氏の存在は、イエレン次期議長を補佐するだけの立場には止まらなかったと思われる。

 FRBの舵取りはイエレン氏とフィッシャー氏が二人三脚で行ってきたとみられ、特に正常化の道筋をつけたのもフィッシャー副議長の働きが大きかったと予想される。そのフィッシャー氏が何故、任期を残してこのタイミングで退任するのであろうか。ちなみに任期は副議長としては2018年6月12日まで、理事としては2020年1月末となっていた。

 フィッシャー副議長は8月に英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙のインタビューに応じ、米国政府が銀行規制の緩和に取り組んでいることについて「危険であり、極めて近視眼的だ」と述べていた。

 FRBではタルーロ理事が今年4月に2022年1月まで5年の任期を残して途中辞任した。金融危機後に銀行規制担当の副議長を設置することが決定したもののオバマ政権は与野党対立のあおりで同ポストの任命を見送っていた。このため実質的にタルーロ氏が理事ポストのままで金融規制担当を担ってきた。ところがトランプ政権となり、同氏に対し共和党から反発も広がっていた。このため早期辞任となってしまったのである。

 トランプ政権は7月10日にFRB副議長に元財務次官のランダル・クオールズ氏を指名すると正式発表した。クオールズ氏は2005~2006年のブッシュ政権下で国内金融担当の財務次官を務め、金融規制に精通しているとされる。しかし、タルーロ理事の辞任からもわかるように、クオールズ氏が就任すれば規制緩和へ路線転向を図ることになる。

 フッシャー氏とクオールズ氏が金融規制に関して意見の食い違いが生じることが予想された。しかし、それ以前にフィッシャー氏としてはトランプ政権による銀行規制の緩和そのものに反対であり、結果としてタルーロ理事と同様の早期辞任というかたち取らざるを得なくなったものとみられる。

 フッシャー氏が辞任となれば、まだクオールズ氏が議会の承認待ち状態となっていることもあり、7名の理事のうち空席が4名という事態となる。イエレン議長にとっても強力な支持者を失うことになる。FRBの部屋はイエレン議長のとなりとされるブレイナード理事は正常化に向けた特に利上げに関しては極めて慎重である。ニューヨーク連銀のダドリー総裁もイエレン議長を支えてきた人物であるが、それでもフィッシャー氏の抜けた穴は大きすぎる。さらにはトランプ政権との対応に今後いっそう苦慮しかねない。イエレン議長が続投する可能性はこれでむしろ薄れた可能性もあるのではないか。


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by nihonkokusai | 2017-09-12 09:44 | 中央銀行 | Comments(0)

量的緩和政策の縮小にも慎重なECB

 9月7日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定したが、市場が注目していたのは、量的緩和縮小に関するドラギ総裁の会見内容となっていた。

 7日の欧州市場では株式市場は上昇し、ユーロ圏の国債もイタリアやポルトガルなどを中心に買い進まれた。外為市場ではユーロがドルに対して買われユーロドルは1.2ドルを超えてきた。この動きをどう説明したら良いのか、ドラギ総裁の発言内容などから追ってみたい。

 欧州の株式市場はユーロ高などよりも、ECBが2017年の成長率見通しを2.2%と、6月時点の1.9%から上方修正したことを素直に好感したようである。

 ユーロ圏の国債が大きく買われたのは、量的緩和政策の縮小に着手することに関してのドラギ総裁の会見での発言によるものとみられる。結論としては2018年以降の資産買い入れの縮小について予備的な議論を始めたものの、これに関しての発言は極めて慎重となっていた。

 ドラギ総裁は「決定事項は多く、複雑で、向こう数週間、もしくは数か月で現実化する可能性のあるリスクを考慮するため、特定の期日の指定を巡り慎重さが出ている。大方、こうした決定の多くは10月になされる」と発言していた(ロイター)。

 10月に量的緩和政策の縮小に関して議論がスタートされることは市場はかなり織り込んでいたが、積極的に量的緩和縮小に向かって動いているというよりも、極めて緩和的な環境を維持することが重視されている。このあたりFRBの正常化に向けた動きに比べて、かなり慎重になっている。これを受けてユーロ圏の国債が買い進まれたということになろうか。

 ユーロに関してドラギ総裁は、このところの為替相場のボラティリティーは不透明性の要因となっている、といったようにユーロを巡る懸念を繰り返し表明したものの、何かしらの対策を打つことは表明しなかった。そして予定通り10月にも量的緩和政策の縮小に関して議論がスタートするであろうとの見方が、ユーロ買いを誘ったのではないかとみられる。

 量的緩和政策の縮小に関しては正常化に向けた意味合いよりも、ECBにとっては日銀と同様に大規模な買入継続に対する限界が見えてきたことや、各国の財政規律を緩めてしまうとの懸念などがその大きな要因となっている可能性がある。

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by nihonkokusai | 2017-09-09 09:52 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの年内利上げに黄色信号

 FRBのブレイナード理事は5日のニューヨークでの講演で、「物価上昇率が(2%の)目標達成に向けて軌道に乗っていると確信が持てるまで、追加利上げには慎重になるべきだ」と発言した。

 これを受けてFRBによる年内の利上げ観測が後退し、地政学的リスクやハリケーンのイルマが勢力を強めていることも意識され、5日に米債は買い進まれて、10年債利回りは2.06%と1日の2.16%から大きく低下した。

 格付け会社ムーディーズは米国がデフォルトに陥れば最上級の格付けを下げると表明したことも、リスク回避要因となっていた。米国債の格下げ観測で米債が買われるというのも興味深い。実際に2011年8月6日にS&Pが米国の長期格付けを最上位のAAAからAA+に1段階引き下げた際に米国債は売られるのではなくリスク回避の動きから買い進まれていた。

 それはさておき、ブレイナード理事は市場を動揺させるほどのサプライズなものではない。7月10日にもブレイナード理事は、バランスシート縮小について早期に進めることを支持した上で、追加利上げについては慎重な姿勢を示していた。

 元々ブレイナード理事はハト派とされ、利上げには慎重な姿勢を示すとみられていたことで違和感はない。ただし、このタイミングでの同じような発言が市場に多少なりインパクトを与えたのは、イエレン議長のこれまでの発言内容と足元物価の動向が影響していた。

 イエレン議長は、ここ数か月の物価指標が著しく低水準にとどまっていることは、FRBも確認しているものの、それは一時的要因が物価昇を抑制しているとの認識であった。ところが、米商務省が8月31日発表した7月の個人消費支出(PCE)統計によると、FRBが利上げ判断で重視するPCEデフレーターは前年同月比1.4%上昇にとどまり、目標の2%に届いていなかった。

 市場ではここにきての物価の低迷が一時的なものではないかもしれないとの見方も強めている。ジャクソンホールの講演でイエレン議長が金融政策に触れなかったことも、利上げについては慎重になっていたためではないかとの見方もできなくはない。

 9月のFOMCでのバランスシート縮小の決定については、むしろない方がサプライズとなっている。しかし、12月の利上げについてはFRB内部でも、また市場の観測でもかなり不透明感が強まっていることは事実なのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-09-07 09:58 | 中央銀行 | Comments(0)
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