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カテゴリ:中央銀行( 235 )

イングランド銀行の利上げ派が増加、カーニー総裁は利上げは時期尚早と火消しに走る

15日に開催されたイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。今回もフォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、そこにマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。MPCの委員3人が利上げを支持したのは2011年以来となる。これを受けて市場では今後のイングランド銀行の利上げの可能性を意識し始めていた。

これを意識してか、イングランド銀行のカーニー総裁は20日、ロンドン市内で講演し「今はまだ金融政策の調整を開始するときではない」とし、利上げは時期尚早との認識を示し、火消しに走った。ところが、15日のMPCで据え置きに賛成していたハルデーン理事が21日の講演で、自身が近く利上げ支持に転じる公算が大きいと表明した。また、利上げ開始が後手に回るリスクが増えているとの認識を示した。さらにMPCメンバーでイングランド銀行のチーフエコノミスト、アンディ・ホールデン氏からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識を示すとともに、6月の利上げを支持することも検討したと明らかにした。

イングランド銀行のMPCは9名のメンバーより構成される。総裁1名、副総裁2名、理事2名と、財務大臣により任命された外部委員4名の合計9名となる。しかし、3月14日に利益相反の可能性を申告しなかったとして批判されていたホッグ副総裁(銀行・市場担当)が辞任したことで一人空席となっていた。

9名のメンバーがフルで揃っていても議長以外の政策委員の意見が仮に真二つに割れた場合などは、まさに4対4となる。MPCでは採決にあたって頻繁に反対票が見られ、そして過去には9名のうち4名までもが反対に回ることもあり、総裁自身が少数派となってしまったこともあった。つまりカーニー総裁が利上げに反対しても、多数決で覆される可能性がある。

ただし、利上げを主張し続けていたフォーブス委員は、今月末に退任し、米マサチューセッツ工科大学(MIT)に戻る予定となっている。ハモンド財務相は19日にフォーブス委員の後任としてロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のエコノミストであるシルバナ・テンレイロ氏をイングランド銀行金融政策委員会(MPC)の外部委員に指名した。

マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わったのは物価を意識して、フォーブス委員の意志を引き継ぐという意味合いがあったのかもしれないが、どうやら流れは利上げに傾いているようにも感じられる。今後はテンレイロ氏の動向次第でバランスがさらに変化してくる可能性もありうる。また、ホッグ副総裁の後任もいずれ指名されるとみられ、こちらの人事にも注意しておく必要がある。


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by nihonkokusai | 2017-06-22 10:00 | 中央銀行 | Comments(0)

カナダ銀行(中央銀行)も利上げを模索

カナダの中央銀行であるカナダ銀行(Bank of Canada)のウィルキンス上級副総裁は6月12日のマニトバ州ウィニペグでの講演で、国内の景気回復が各地域やセクターに広がっていると強調し、政策当局者に「勇気づけられる理由」を与えていると述べたそうである。経済が勢いを増しつつある中、利上げの準備が整っていると、これまでで最も強い調子で示唆した。また、ポロズ総裁も13日、CBCラジオに対し、利下げは経済をショックから守るという役割を果たしたとの認識を示し、「足元の経済は勢いを強めつつあり、それも特定の分野ではなく幅広い経済でそうした状況と見受けられる」と述べていた(以上、ブルームバーグの記事より引用)。

カナダ銀行は今年1月18日に「利下げ」を検討したことが明らかになっていた。1月20日にトランプ氏が次期米国大統領に就任したが、これによる影響なども考慮していた可能性がある。しかし4月にカナダ銀行が政策金利を据え置いた際、ポロズ総裁は記者会見で、今回は「利下げ」は議題に上らなかったと明言しており、ハト派的なトーンは後退し、「中立的な立場」であることを明らかにしていた。5月24日の会合でも金融政策の据え置きを発表し、カナダ銀行は2015年7月以来、約2年間、政策金利を0.5%に据え置いている。

今回のウィルキンス副総裁やポロズ総裁の発言からは、利下げによる効果が発揮されて、国内の景気回復が顕著となりつつあるなか、今後は中立的なスタンスからの変更を検討する可能性が示された。もしカナダ銀行の「利上げ」となれば2010年以来となる。ウィルキンス副総裁はトロント住宅市場のバブルを巡る懸念は一蹴したそうだが、このあたりの懸念も背景にあるのかもしれない。

今後のカナダ銀行の金融政策を決める会合の予定は、6月はなく、7月12日、9月6日、10月25日、12月6日となっている。市場ではウィルキンス副総裁らの発言を受けて10月の会合で利上げを決定するのではとの見方が強まっているようであるが、そこまで待たずに決定する可能性もありそうである。

ちなみに現在のイングランド銀行のカーニー総裁は、元カナダ銀行の総裁である。そのイングランド銀行がFRBに続いて正常化に向けて舵を切るかとみていたが、EU離脱決定の影響もあり、ひとまず先送りされ、古巣のカナダ銀行が先に利上げを行う可能性が出てきた。ただし、15日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、フォーブス委員だけでなくマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていた。カナダ銀行とイングランド銀行の利上げ合戦の行方は、意外に良い勝負となるやもしれない。


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by nihonkokusai | 2017-06-19 09:33 | 中央銀行 | Comments(0)

イングランド銀行で利上げ派が3人に増加した理由とは

6月15日の欧米の国債は珍しく揃って下落していた。これは前日14日に発表された5月の米消費者物価指数が予想に反して前月から0.1%低下となり、今後のFRBの利上げペースについてやや懐疑的な見方となり、米10年債利回りが大きく低下した反動とも言えたが、別の要因も絡んでいた。

14日にはFOMCが開催されて予想通りの追加利上げが決定された。年内はさらに1回、2018年中にも3回の利上げを見込む政策シナリオは維持した。4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても年内着手と正式に表明した。さらにイエレン議長は最近のインフレ指標低下は一時的な事柄が要因と指摘していた。それにも関わらず、この日に米債が大きく買い進まれたのは、市場参加者は今後の利上げペースに疑心暗鬼になっていたためとみられる。

そこにまた別途材料が現れた。イングランド銀行である。15日のイングランド銀行の金融政策委員会では、政策金利を0.25%に据え置くことを決定した。ただし、これについては今回もフォーブス委員だけが利上げを主張するとみられていたのが、マカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わり、5対3の僅差での現状維持決定となっていたのである。

1~3月期の英国の実質GDP成長率は前期比0.2%増と低調となっていただけでなく、EU離脱そのものも不透明要因となっている。メイ首相が賭けに出た総選挙では、メイ首相の保守党が議席数を減らし過半数割れとなり、さらに不透明感が増している。そのような状況下、イングランド銀行が利上げを行うことはかなり困難とみられていた。

ただし、この不透明感の強まりはポンド安を招き、ポンド安の影響もあって英国の5月の消費者物価指数は前年同月比2.9%もの上昇、英中銀の物価目標の2%を大幅に上回っていた。今回のMPCでの利上げ派はこの物価を意識したものであろう。

これにより、今後イングランド銀行が利上げを決定する可能性が多少なり出てきた。これを受けて15日にはポンドが買われ、英国債が下落した。フランスの国債入札がやや低調となっていたことも材料視された。8日のECB理事会の政策に関する声明では、追加利下げに関する文言を削除し、追加緩和に前向きの姿勢から中立姿勢に修正したことも意識されたことで、ユーロ圏の国債も売り込まれ、それが15日の米国債の売りに繋がった面もあった。

すでにカーニー総裁の古巣であるカナダ銀行も、副総裁から利上げを示唆するような発言が出ていた。欧米の中央銀行ではFRBが先んじて正常化を開始し、それにカナダ銀行、さらにはイングランド銀行が追随してくる可能性が出てきた。方向性までは変えなかったものの、ECBも緩和に傾斜していた姿勢を中立に戻している。日銀はいつでも追加緩和は可能と主張するが、すでにステルステーパリングを行っており、追加緩和といってもマイナス金利の深掘りなど現実的に困難でもある。実質的に日銀も中立スタンスにいるようにみえる。

そもそも現在、非伝統的な金融政策とか、異次元緩和が必要とされるほどの危機的状況にいるわけではない。中央銀行の正常化への歩みは当然といえば当然ながら、あまりに金融緩和に傾きすぎて、なおかつ市場の反応を過度に気にするあまり、出口政策はなかなか難しい。英国を除き物価が目標を下回っていることも、正常化を納得させずらくしている。しかし、いずれにしても日銀以外は新たなリスクが発生するようなことがない限りは、正常化に向けた歩みをはじめる準備をしていることも確かではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-06-17 10:23 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBは予定通りの利上げペースが可能なのか、市場はやや懐疑的に

13日、14日に開催されたFOMCでは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を年0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げた。投票メンバー9人のうち8人の賛成多数での決定となり、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。

今後の利上げペースは、年内さらに1回を見込み、今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。2018年も3回、2019年も3回程度の追加利上げを見込み、政策金利を長期の中立金利見通しである3%に達成させるという利上げシナリオを維持した。

4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても年内着手と正式に表明し、その手段も示した。こちらも予想通り、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなる。開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。

これまでのイエレン議長などの発言から、これらの動きはほぼ予想されていたものとなった。ところがこの日の米10年債利回りは一時2.10%と前日の2.21%から大きく低下していたのである。これは噂が売って事実で買う、といった動きではなかったように思われる。

米債が買われたきっかけは、この日発表された5月の消費者物価指数(CPI)であった。CPIの総合指数は前月比0.1%の低下となり、予想外の低下となった。前年同月比では1.9%上昇となり、前月の2.2%の上昇から上昇幅は縮小した。

食品とエネルギーを除くコア指数も前月比0.1%上昇と予想を下回り、前年同月比では1.7%上昇と、2015年5月以来の低い伸びとなっていた。

日銀の物価目標はコアCPIであるが、FRBの物価目標はPCEデフレーターの総合指数である。しかし、物価をみる上ではCPIも当然意識せざるを得ない。

イエレン議長はFOMC後の会見で、最近のインフレ指標の低下は一時的な事柄が要因と指摘していたが、市場では日銀ほどではないにしろ、物価目標達成はなかなか難しいと読んでいるようである。ちなみにFRBは2018年には2%に達すると予測している。

FRBにとっては正常化に向けて、米長期金利が過剰反応して急騰するよりも、落ち着いた動きの方がやりやすい面もある。しかし、今回の米長期金利が2.6%あたりを目先天井として上がりづらい状況となっているなか、昨日は2.1%と直近の下限程度に低下したという事実の背景には、当局者と市場参加者の物価や今後の利上げペースに対する見方に乖離が生じているようにも伺える。

これがどのように修正されるのか。個人的にはひとまず政策金利は2%程度までの上昇に止め、保有証券縮小計画については淡々と実行することで、正常化はいったん終了させる。その後は物価、経済動向を睨んでの中立的なスタンスに望んでも良いような気もするが、どうしても政策金利は3%という長期の中立金利見通しにまで引き上げる必要性をFRBは意識しているのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-06-16 10:03 | 中央銀行 | Comments(0)

米利上げとバランスシート縮小に向けたスケジュールは維持か

5月24日に公表された5月2、3日に開催された米国の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、「メンバーは総じて、緩和策を一段と取り除く前に最近の経済指標の弱含みが一時的とのさらなる証拠を待つのが賢明と判断した」とした。つまり足元の米国の経済指標がやや弱いものが出ていることもあり、それが一時的なものであるのかどうかを見定めてから、緩和策の縮小、つまり追加利上げを判断するとしている。

ただし大半のメンバーは足元の弱含みのデータが、今後の経済物価見通しに対して変更を加えるものではなく、今後の緩やかな金融緩和程度の縮小が適切であるというのも変える必要が無いと概ね合意したとしていた。これはつまり景気判断を変えざるを得ないほどの余程悪い経済指標の発表でもない限りは、予定通りに6月のFOMCでの利上げを決定する可能性が依然として高いことを示唆した格好となった。

市場では経済指標の悪化と、それによる物価見通しの不確実性を危惧するメンバーが複数いたことで、今後の正常化に向けたFRBの歩みがより慎重になるのではないかと捉えた。これを歓迎した格好となり、米株高のひとつの要因となった。しかし、慎重な見方をするメンバーがいるのは確かながらも、市場が抱いている今後のFRBの正常化のスケジュールが後ずれするようなことは考えづらい。

市場の予想する正常化のスケジュールとしては年内3回(3月の利上げ実施込み)、つまりあと6月と9月のFOMCでの利上げと、年内にバランスシートの縮小を開始するであろうとの予想となっている。今回のFOMC議事要旨でこの予想が大きく修正されたとは思いづらい。

それを示すものとして、年内のバランスシートの縮小の開始を示していたことがあげられる。その手段として、満期を迎えた米国債などの再投資額を3か月ごとに縮小するとの事務方スタッフの提案について、参加者はおおむね賛同したとしている。12月のFOMCでこのバランスシートの縮小を決定すると年内開始が時間的に厳しくなる可能性がある。そうなると9月もしくは6月のFOMCでこのあたりを詰めてくる可能性がありうる。

また、今後の利上げスケジュールについて大きな修正がなさそうなことを、ブレイナード理事が議事要旨発表後というなかなか微妙なタイミングで指摘する格好となった。ブレイナード理事は利上げに慎重な「ハト派」の代表格であり、今回のFOMCで物価見通しの不確実性を危惧するメンバーの一人であったと予想される。

ところがそのブレイナード理事は25日、世界経済について「ここ数年で最も明るい」との認識を示した。「欧州経済の成長が堅調なうえ、日本は安定し、新興国も良好になりつつある」と説明。そのうえで「FRBの経済見通しに対する下振れリスクは軽減された」と述べていた(日経新聞)。

これは見方によれば、FOMC議事要旨で市場が今後の正常化のスケジュールについて、FRBがより慎重になることを期待し過ぎることに対し、少しブレーキを掛けてきたようにも思われる。今回の発言は議長など執行部の意向を反映した可能性もあり、今回のハト派のブレイナード理事の発言は注意しておく必要があろう。


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by nihonkokusai | 2017-05-29 09:47 | 中央銀行 | Comments(0)

6月の米利上げの行方

5月2日と3日に開催されたFOMCでは金融政策の現状維持を決定した。声明文では、「第1四半期の経済成長の減速は一時的である可能性が高い」とし「経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の状況はさらにいくらか力強さを増し」、その上で「インフレ率は中期的に2%近辺で安定すると予測している」としていた。

この声明文の内容からみて6月のFOMCでの利上げの確率は高いとみられる。利上げに向けた環境が整っているのであれば、何故5月のFOMCでは現状維持であったのか。これはFRBは公には認めてはいないものの、ある程度のルートマップが存在し、3月、6月そして9月のFOMCで利上げを行った上で12月のFOMCで保有資産の再投資を止めることで、膨らんだバランスシートの縮小に着手するのではとみられているためである。

3月、6月そして9月のFOMCで利上げを行うとの予想の背景には、年3回の利上げとしてバランスを配慮した面もあるかもしれないが、いずれも議長会見が予定されたFOMCであるということも絡んでいよう。ちなみに2013年12月のテーパリングの決定、2015年12月の政策金利の0.25%~0.50%への引き上げ。2016年12月0.50%~0.75%への引き上げ、2017年3月の0.75~1.00%の引き上げのいずれも、議長会見の予定されていたFOMCで決定された。

6月の利上げについて懸念材料となっていたのが、欧州の政治リスクであった。フランス大統領選挙でマクロン氏が勝利したことでユーロ分裂の危機は後退し、これもFRBの利上げの阻害要因とはならなくなった。

5日に発表された4月の米雇用統計では非農業雇用者数が21.1万人増と予想を上回った上に失業率は4.4%と約10年ぶりの水準に低下した。平均時給が前年同月比で2.5%増と前月から減速したものの、これも利上げにはフォローの要因となろう。

米議会の与野党は連邦政府の9月末までの支出をまかなう暫定予算案の内容で合意しており、政府機関閉鎖リスクも後退している。

12日に発表された4月の米消費者物価指数は前月比0.2%の上昇となり予想を下回ったが、これも6月の利上げの阻害要因とはならないとみられる。ちなみに前年比では2.2%の上昇。食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%上昇。前年比では1.9%上昇となっていた。

米10年債の利回りの推移を見る限り、6月の利上げをそれほど織り込んでいるようには見えない。これは今回に限らずではあるが、欧州の政治リスク等もあったことでリスク回避から利回り上昇が抑えられていた面もある。FRBの正常化に向けた政策に対し過度な反応は避けているようにも見える。

いずれにしても現在の環境に大きな変化がない限り、6月のFOMCでの利上げ決定の可能性は高いと見ている。


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by nihonkokusai | 2017-05-15 10:00 | 中央銀行 | Comments(0)

異常な金融政策が異常に見えなくなる怖さ、なぜ正常化が必要なのか

フランス大統領選挙でのマクロン氏の勝利により、欧州の政治リスクが後退した。投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は20年超ぶりの低水準となったそうである(ロイター)。

米国の中央銀行にあたるFRBは2014年1月からテーパリング(毎月の米国債とMBSの買入額の縮小)を開始し、10月にテーパリングを終了させ(新規の買入停止)、2015年12月には利上げを決定した(政策金利の0.00%~0.25%から0.25%~0.50%へ引き上げ)。これらはいわゆる正常化に向けての動きとなる。2016年12月(0.50%~0.75%に)、2017年3月に追加利上げを決定し(0.75~1.00%に)、6月も利上げするとの予想となっている。その後、9月にも利上げを決定し、12月からは膨らんだバランスシートの縮小を償還分を再投資しないかたちで実施するのではとの観測となっている。

この正常化に向けた動きに対して、何故このタイミングで金融引き締めをしなければならないのか、バランスシートの縮小は必要なのかという声もある。北朝鮮などの地政学的リスクはまだまだ存在する。景気も雇用はさておき、それほど高い成長率ではなく、物価も日本はさておき欧米もFRBやECBの目標値に届いていないではないかとの理由によるものとみられる。

そもそも正常化をするということは、それまでの政策が「異常」であったと言う事実を忘れてはいけない。何故、異常な政策を行わなければならなかったのか。それは米国の金融機関を直撃したリーマン・ショックに代表される金融危機とギリシャの財政問題がきっかけとなったユーロシステム崩壊の懸念による世界的規模の金融危機への対処であったはずである。財政政策に限界が見えたことで金融政策に頼らざるを得なくなり、いわゆる非伝統的な政策を試すことになった。非常時の金融緩和による実質的な効果のほどはさておき、金融市場での不安感は後退したことは確かである。それが2012年の年末にかけてであった。

このタイミングで日本ではアベノミクスと呼ばれた政策が急浮上した。デフレ解消を旗印にリフレ政策というその効果への疑問があるとともに副作用が懸念された政策を日本の中央銀行は取らざるを得なくなった。

また、ECBやイングランド銀行は英国のユーロ圏離脱問題等も生じ、こちらもさらに深入りせざるをえなくなった。しかし、ユーロを巡る危機は今回のフランス大統領選挙の結果からみても後退するとみられ、ECBはあらためて緩和に向けた姿勢からのスタンスの変化を今後試してくる可能性が出ている。

それに対して日銀は2%という物価の絶対目標を掲げてしまった。しかしリフレ政策では効果が出ず、マイナス金利政策も取り入れたものの金融業界などの反発もあり、長短金利操作付き量的質的緩和という異質な政策となってしまった。すでに後戻りできず、物価目標の2%が見えるまで異常な政策を続けざるを得ない状況に陥ってしまっている。

これに対して米国では特に雇用面での回復が著しく、原油価格も回復したことで物価も上昇してきたことから、正常化を進めることができた。異常な政策はその対価として将来的なリスクが存在する。そのリスクを軽減させるためにも正常化は必要となる。しかし、金融市場は大きな危機が繰り返されてかなり過敏になっており、FRBの正常化も時間を掛けて行わざるを得なかった。金融緩和は簡単だが引き締めの格好となる正常化を、景気に加熱感のないタイミングで行うことはかなり神経を使わざるを得ない。しかし、将来的なリスクは摘み取っておく必要があることも確かである。

その将来的なリスクとは何か。たぶんそれはいずれ日本で試されることになるのではないかと思う。いまの日本の債券市場がいかに機能不全に陥っているのかは最近の債券市場の動きを見てもあきらかである。国債の買い手が日銀と海外投資家だけのような状況となっている。そして日銀はすでにGDP規模の国債を買い入れている。政府はGDPの2倍以上の債務を負っている。いままでそれで国債が急落することはなかったので、それを懸念するのはおかしいとの見方もある。しかし、ダムは水が溜まり続けても崩壊するまで危機とは認識されないように、見えないリスクが膨らんでいることも確かではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-05-10 09:34 | 中央銀行 | Comments(0)

欧米の物価動向とFRBやECBの対応

28日に米商務省が発表した第1四半期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み、年率)速報値は前期比年率0.7%増となった。2014年の第1四半期以来3年ぶりの弱い伸びにとどまった。GDP全体の約7割を占める個人消費が成長鈍化の主因になったが、これは2016年10~12月期の個人消費の伸び率が3.5%となったことによる反動もあり、また暖冬による消費減少が主な背景ともされている。

28日に米労働省が発表した1~3月期の雇用コスト指数は、季節調整済みの前期比で0.8%上昇となった。これは2007年10~12月期以来の大きな伸びとなり、市場予想も上回った。賃金・給与は0.8%上昇(前期0.5%上昇)。諸手当は0.7%上昇(前期0.5%上昇)。通年(昨年4月~今年3月)では前年比2.4%の上昇となった。

1日に発表された3月のPCE物価指数は0.2%の下落となり、2016年2月以来のマイナスとなった。前年同月比では1.8%の上昇に。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比0.1%下落と2001年9月以来のマイナスとなった。前年比では1.6%の上昇。

GDPの弱い伸びが一時的な要因によるものかどうかは、今後の改定値等も確認する必要はあるが、雇用コスト指数を見る限りFRBの年内の3回程度の利上げの可能性は維持されよう。PCE物価指数は前月比でマイナスとなったものの、物価の基調に大きな変化はないとみられる。今週2日、3日にFOMCが開かれる。今回は利上げは見送られ、現状維持が予想されている。しかし、議長会見が予定されている6月のFOMCにおいて、利上げを決定する可能性は高い。その後の9月のFOMCでも利上げを決定した上で、12月のFOMCでは保有国債の償還分の再投資の停止を決定するのではと予想されている。

28日に欧州連合(EU)統計局が発表した4月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年同月比1.9%の上昇となり、予想も上回った。エネルギー価格の上昇などが寄与した。欧州中央銀行(ECB)は中期的なインフレ率目標を2%をやや下回る水準に設定しており、ほぼその水準にある。また、食品とエネルギーを除くコアインフレ率は1.2%の上昇と2013年9月以来の高水準となった。3月の0.8%を上回り、こちらも市場予想を上回った。

4月27日のECB政策理事会では金融政策の現状維持を決定した。会見でドラギ総裁は景気の下振れリスクは一段と後退したとの認識を示したが、インフレに関しては慎重な姿勢を崩さなかった。しかし、4月のCPIを見る限り、それほど懸念する必要はなさそうである。ECBは6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していると報じられていた。5月7日のフランス大統領選の決選投票の結果次第の面もあるものの、今回のCPIを見る限りにおいて、その可能性もないとは言えない。


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by nihonkokusai | 2017-05-02 09:50 | 中央銀行 | Comments(0)

フランス大統領選挙の結果を確認し、緩和政策にブレーキを掛けようとしている欧州中央銀行

 欧州中央銀行(ECB)が6月の政策理事会で、金融緩和策の解除に向け文言の変更を検討していることが、関係筋の話で分かったとロイターが伝えた。見通しに対する下方リスク、追加利下げや資産買い入れ拡大の可能性に関する文言の一部、またはすべてを削除することが検討されているという。


 先日のフランス大統領選挙の結果、EU懐疑派の2人が決選投票に残るという最悪のシナリオは回避された。5月の決選投票でもマクロン氏有利とみられており、マクロン氏がフランス大統領となればユーロにとって大きなリスクが後退することになる。ECBは5月のフランス大統領選挙の結果を確認した上で、これまでの緩和に傾斜していた政策にブレーキを掛ける可能性が出てきた。


 これで緩和政策からの方向転換をするわけではない。緩和政策のスピードを緩め、ブレーキを掛けて止まった上で、方向転換の可能性を探ることになろう。それにはファンダメンタルの裏付けも必要となる。英国のEU離脱に伴う影響なども考える必要はあろう。それでも今後も景気の改善がみられ、物価もECBの想定する目標値近辺にあるならば、非常時の金融緩和を続ける必要はない。むしろそれによる副作用を心配する必要がある。


 ECBの緩和政策にいきなり急ブレーキを掛けるとなれば、市場に大きな影響を与える懸念がある。このため文言変更ですらもかなり神経を使っていることが伺える。


 この修正そのものは間違ってはいないと思うが、ひとつ問題がある。果たして文言の変更を検討していると示唆した関係者が誰かということである。ドラギ総裁に近い人物であれば問題はないが、ドイツ関係者となるとやや懐疑的な見方も必要になる。


 ドイツのショイブレ独財務相は4月20日に、ECBがFRBに倣い、金融緩和策の解除に着手することは悪い考えではないとの見解を示していた(ブルームバーグ)。これに対しドラギ総裁は金融緩和策の解除にはかなり慎重とみられている。


 それでもECBが緩和政策にブレーキを掛けることは可能性としてはありうる。今月27日の政策理事会で出口議論を行ってくる可能性も指摘されている。


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by nihonkokusai | 2017-04-27 09:59 | 中央銀行 | Comments(0)

イエレンFRB議長の去就に対するトランプ大統領の発言修正の背景

トランプ氏は大統領就任前に、自分が大統領に就任すれば、イエレン議長が共和党員でないというだけの理由で、自身のテレビ番組「アプレンティス」の決め台詞「おまえはクビだ」をイエレン氏に言い放つと主張していた(ロイターの記事より)。

FRBは大統領が任命し上院の承認を受けた7名の理事から構成されている。理事の任期は14年。この7名の中から議長と副議長が選ばれる。議長と副議長の任期は4年で再任も可。イエレン氏の議長としての任期は2018年2月3日まで。前任のグリーンスパン議長やボルカー議長はそれぞれ再任されていた。

FRBと政府との関係をみる上で、少し歴史をおさらいしておく必要がある。第二次大戦後、今度はインフレ懸念の台頭により、FRBは国債価格を維持する政策の副作用に直面することになった。インフレリスクを防ぐために、1951年に財務省とFRBは「アコード」を取り交わし、国債価格維持を撤廃した。これによりFRBの判断で金融政策が行えるようになり、中央銀行による金融調節が重要性を増した。

しかし、政府とFRBの対立はその後さらに激化することになる。特にマーチン議長は強い指導力を発揮し、ホワイトハウスから圧力に屈せずにFRBの独立性を守り抜いたとされる。強い影響力を保持したとされるポルカー議長時代も、レーガン大統領の息の掛かった理事が送りこまれ反乱が起きかけたケースもあった。政府がFRBに対して圧力を掛けないようにさせたのはクリントン時代のルービン財務長官の影響が大きかったとされている。

その後のFRBは政府からの独立性を維持させてきたといえる。しかし、トランプ大統領はFRBのイエレン議長に対してクビ宣言をし、イエレン議長の再任はないと言い切っていた。

ところがトランプ大統領は今月12日に、ホワイトハウスでのウォールストリート・ジャーナルとのインタビューで、イエレン議長に対し尊敬していると指摘した。現行の任期を迎える2018年で「おしまいになる訳ではない」とし、続投に含みを残したのである。つまりイエレン議長の意向次第ではあるが、再任の可能性が出てきた。これにはトランプ政権内部の変化が影響しているようである。

トランプ氏の従来の過激路線を推進するバノン氏と、穏健路線を重視するクシュナー氏やコーン国家経済会議(NEC)委員長の対立が激化している。シリアへのミサイル攻撃は「穏健派」の主張を取り入れたものとなったことから、どうやら穏健派の影響力が強くなってきた。トランプ大統領はバノン大統領上級顧問・首席戦略官を更迭するのではないかとの観測も出ている。

その穏健派の一人であるコーン米国家経済会議委員長は、3月12日にFOXニュースのインタビューで、FRBについて「独立性」を認めた上で権限を「尊重する」と述べていた。この際は3月15日の利上げを容認する姿勢を示した格好ながら、FRBの独立性についても触れている点にも注意が必要となる。つまりトランプ政権の穏健派は、ルービン時代から意識されたFRBの独立性を尊重する姿勢を示した。コーン委員長はゴールドマン・サックスの前社長だったこともあり、中央銀行が政府からの独立性を維持することで信用力を保てることが金融市場にとって非常に重要との認識を持っているものと思われる。


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by nihonkokusai | 2017-04-15 10:01 | 中央銀行 | Comments(0)
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