牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

カテゴリ:中央銀行( 264 )

米追加利上げは確定的か

 米労働省が8日に発表した11月の米雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業雇用者数が前月比22万8千人増となった。これは事前の市場予想を上回った。

 失業率は4.1%と前月比横ばいと予想通り。ただしこの失業率の水準はFRBが完全雇用とみる水準よりも低い。

 インフレ率の動向を占ううえで注目される平均時給は前年同月比2.5%増と、前月の2.4%増から小幅に伸びが加速したものの、賃金上昇が強まらない状況が続いている。

 8日の米国市場では、平均時給の伸び鈍化で米債が買われる場面もあったが、非農業雇用者数の予想以上の増加を素直に景気の拡大基調と捉えて、株が買われ、米債は小幅ながら下落した。8日のダウ平均は117ドル高となり最高値を更新した。ドル円も113円台半ばまで上昇しており、11日の東京時間では113円台後半に上昇し、114円を伺うような動きとなっている。

 米議会上下両院は7日に、8日が期限となっていた連邦予算について22日までのつなぎ予算を可決した。トランプ大統領が署名し成立した。ひとまず政府機関の閉鎖を巡る懸念が後退したことも、米国市場でのリスクオンのような動きの背景にあった。ただし、今回はそれほど政府機関の閉鎖を巡る懸念が強まっていたわけではない。

 さらに英国の欧州連合(EU)離脱交渉を巡り、英国のメイ首相とユンケル欧州委員長が8日に離脱条件について大筋合意したことも、目先の懸念を払拭させた。メイ首相は、EU離脱後にアイルランドとの国境に「ハードボーダー」(厳格な国境管理)は導入されず、ベルファスト合意(1998年)と呼ばれる英国とアイルランドの和平合意の内容は維持されると述べた。これを受けて8日の欧州株式市場はロンドン株式市場を含めて上昇した(ただし、デービス英離脱担当相が8日の合意を英国が必ずしも順守しない可能性を示唆している)。

 このように8日にはいくつかの懸念材料が後退したことで、リスクオンの動きを強めた。外為市場では円が売られ、米国やドイツ、そして英国の国債が売られ、欧米の株式市場は上昇したことからも、それが伺える。そして今後は欧米の中銀の金融政策の行方も注目材料となる。

 11日の週は欧米中銀の金融政策を決める会合が相次いで開かれる。最大の注目は12日から13日にかけて開催されるFOMCか。米雇用統計もしっかりしていたことで、予定通り追加利上げが決定されよう。来年2月の退任が決まっているイエレン議長の会見内容にも注意したい。

 13日、14日にはイングランド銀行のMPCが開催される。11月のMPCで10年ぶりの利上げを決定したが、追加利上げにはかなり慎重のようで今回は現状維持と予想される。しかし、あらためて追加利上げの可能性を示唆する可能性もありうるか。金融政策を決定する際の賛否の行方についても注意したい。

 14日にはECB理事会が開催される。すでに2018年1月以降、月間の資産買入額を月600億ユーロから300億ユーロに縮小することを決定しているが、今後の正常化に向けた道筋を明らかにしてくるのかにも注目したい。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-12-12 09:41 | 中央銀行 | Comments(0)

ウルグアイで法定デジタル通貨の運用が開始

 11月13日付け日経新聞によると、南米ウルグアイの中央銀行はブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した「法定デジタル通貨」の試験運用を開始したそうである。携帯電話のネットワークを通じ、店舗での支払いや個人間送金が可能になる。

 ブロックチェーン技術を活用した電子通貨といえば価格が乱高下しているビットコインなどがあるが、法定デジタル通貨は民間ではなく中銀など当局が発行するものである。紙幣や硬貨は法定通貨と呼ばれるが、これに対し紙幣や硬貨を使わず、主にネット上でやりとりビットコインなどは「仮想通貨」と呼ばれている。そして中央銀行が発行する仮想通貨は「法定デジタル通貨」と呼ばれている。

 法定デジタル通貨はスウェーデン中銀による「eクローナ」構想、中国人民銀行による「法定数字貨幣」の計画、オランダ「DNBcoin」の開発、カナダの「CAD-coin」など世界各国で研究が進むなか、実用化はウルグアイが初めてとされる。

 日経新聞によると、1万人を対象に、通貨ペソと同価値の法定デジタル通貨「eペソ」2000万ペソ(約7800万円)分を発行。利用希望者は専用サイトで登録し、携帯電話番号で管理するそうである。

「法定デジタル通貨」はどのような利点があるのか。これについては2016年11月に日銀が出していた「中央銀行発行デジタル通貨について」という日銀ビューに記載があった。

日銀ビュー「中央銀行発行デジタル通貨について」

 中央銀行がデジタル通貨を発行することのメリットとして主張される内容のひとつは、「紙の銀行券のハンドリング・コストや保管コストがますます強く意識されるようになっている中、中央銀行が最新の情報技術を活用してデジタル通貨を発行することは、ユーザーの利便性に資するとの主張である」

 ウルグアイが世界に先駆けて法定デジタル通貨の発行に踏み切った背景には、デジタル化による紙幣の維持コスト削減という目的があった。脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)の防止にも役立つとの指摘もある。

 「中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、紙のコスト故に銀行券が仮想通貨に凌駕されるといった事態を避けることができるとの主張」

 これについては特に金融政策の有効性を確保できるとの主張である。ただし、金融政策の有効性とは何かという課題も現在の異次元緩和を継続させている日銀は抱えているようにも思われるが。

 「さらに、中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、仮想通貨との競争を受けたシェア低下による通貨発行益(シニョレッジ)減少を防ぐことができるとの議論がある。」

 日銀は具体的に「法定デジタル通貨」の発行について言及はしていないものの、研究はしているとみられる。他国に比べて紙の通貨への信認が非常に厚い日本ではあるが、「法定」デジタル通貨であれば、それが開始されると一気に普及する可能性は秘めているのかもしれない。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-11-15 09:36 | 中央銀行 | Comments(0)

トランプ大統領がパウエル理事をFRB議長に指名した理由

 米国のトランプ大統領は11月2日に来年2月に任期満了を向かえるイエレンFRB議長の後任に、FRBのパウエル理事を指名した。

 トランプ大統領は5人の候補に絞り込んだとされ、その候補にパウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事、テイラー米スタンフォード大教授、コーン国家経済会議(NEC)委員長、そして現職のイエレン議長がいた。

 トランプ大統領は米国経済の回復や株価上昇の功労者とも言うべきイエレン議長の再任も考慮に入れていたようである。イエレン議長の前任のバーナンキ氏やその前のグリーンスパン氏は再任されており、イエレン議長の再任の可能性は十分にあった。

 しかし、ここにいくつかの壁が存在していたものとみられる。そのひとつが議会での承認の可能性である。イエレン議長は民主党政権下で米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めるなどリベラル色が強いとされている。それでなくても議会との衝突も多いトランプ大統領だけに、ここで議会ともめてしまうことは避けたいところであろう。

 そのあたりも考慮してか、ムニューシン財務長官が強くパウエル理事を推していたようである。トランプ大統領は最終的にムニューシン財務長官のアドバイスを受け入れた格好となった。

 イエレン議長とムニューシン財務長官は結構な頻度で会っており、特に反目し合っていたとは思えない。イエレン議長とパウエル理事の考え方も似ている。パウエル理事はイエレン議長の政策に対して表立って異を唱えることなく、むしろイエレン議長を支える立場にあった。ムニューシン財務長官は金融政策への考え方といったものではなく、政治上の理由なども配慮して大統領にアドバイスしたのではなかろうか。

 パウエル理事は歴代のFRB議長と違ってエコノミストではない。しかし、必ずしもFRB議長がエコノミストである必要はなく、すでに5年間、FRB理事を務めており、むしろその実務経験が役立つ可能性も高いのではなかろうか。

 パウエル理事がFRB議長となっても現在のFRBの正常化に向けた路線は継承されよう。むしろ問題となるのは、理事の空席かもしれない。副議長は2人体制となり、クォールズ氏が指名され、上院で承認された。しかし、フィッシャー副議長の辞任によりもうひとつが空席となっている。

 パウエル理事が議長に昇格し、イエレン議長が来年2月で退任するとなれば、理事の空席が増えることで、大きな入れ替わりも想定される。また、ニューヨーク連銀のダドリー総裁も2018年半ばで退任すると発表しており、体制が大きく変わることになりそうである。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-11-13 09:35 | 中央銀行 | Comments(0)

英中銀が10年ぶりの利上げ、再利上げは慎重の構え

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は11月2日の金融政策委員会(MPC)で、10年ぶりとなる利上げを決定した。7対2の賛成多数で政策金利を過去最低の0.25%から0.50%に引き上げることを決めた。カンリフ副総裁とラムスデン副総裁が、賃金の伸びは低く現時点で利上げを正当化できないとして利上げに反対し、据え置きを主張した。

 利上げは2007年7月以来、10年4か月ぶりとなる。ただし、金利と並ぶ政策の柱のもうひとつ量については、英国債の保有枠を4350億ポンドで据え置いた。

 カーニー総裁は、10年ぶりに利上げを決めた理由について、「利上げをしなければ、物価の上昇率を目標とする2%に保つのが難しい。経済が堅調なことから、利上げすべきタイミングだと判断した」と説明した。ただし、イギリス経済にとってEUからの離脱を決めたことによる影響は大きいとして、「今後の利上げのペースは緩やかで限定的にとどまる」と述べた(NHK)。

 そして会合後に発表した声明から、「前回声明に盛り込まれていた市場が見込んでいるよりも大幅な利上げが必要となる可能性がある」との文言が削除された。

 今後の利上げに関してカーニー総裁は、2020年末までに25ベーシスポイントの追加利上げを2回行うという投資家らの見方と同じと説明した。つまりFRBに比べてかなり慎重な利上げペースになることを示した。

 これを受けて2日のロンドン市場ではポンドが下落し、英国債は買い進まれた。英国債に関しては観測で売って、実際の利上げを決定したことで買い戻すような動きにも見えるが、再利上げは予想以上に慎重との見方も英国債の買い戻しやポンド売りを誘ったものと思われる。

 今回、いわゆる執行部である総裁と副総裁の票が割れたが、これはイングランド銀行では珍しいことではない。また、金利ではなく量についてはイングランド銀行はあらかじめ保有枠の拡大幅と期間を設けて一定期間に買入を行っていたことで、FRBのように毎月の購入額を決めて購入し続けるというパターンではないため、テーパリングの必要はない。今後、イングランド銀行が国債等の保有枠の削減を行ってくるのかは、はっきりしないが、こちらもかなり慎重に行ってくるであろうと予想される。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-11-07 09:54 | 中央銀行 | Comments(0)

FOMCは現状維持、12月の利上げを示唆、なぜ今回ではなく12月なのか

 11月1日に開催されたFOMCでは、投票メンバー9人の全員一致で政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標値を年1.00~1.25%のまま据え置いた。9月の前回会合では量的緩和で膨らんだ保有資産の縮小開始を決めた。次のステップは再利上げとなったが、そのタイミングは12月となるようである。

 今回の会合後に公表した声明文のなかでは「緩やかな利上げのもとで、経済の改善が続く」との見通しを示したことで、12月の次回会合での追加利上げを示唆した格好となった。足元経済がしっかりしているのであれば今回の会合で利上げを決定してもおかしくはない。

 今回の会合で利上げを見送ったのは保有資産の縮小による影響を見定めたいとの要因もあったのかもしれないが、ある程度のタイムスケジュールを意識したものとも言えなくもない。

 特に緩和策ではなく結果として引き締め策となる正常化は市場の動揺を抑え、できるだけ事前にそれを織り込ませる必要がある。これに対して緩和策は市場がそれを期待しているタイミングで行う方が効果が出る。ただし、この効果とは実態経済への直接効果というよりも市場の動揺を抑えることが主目的となる。

 利上げのタイミングを12月としているのは、12月のFOMCでは議長会見が予定されていることも影響している。正常化のステップの際の政策変更は、これまでも議長会見が予定されているFOMCで行われていた。政策変更について会合直後に市場に議長自ら説明することで、市場への理解を求めることも意識されているとみられる。

 米国大統領による次期FRB議長の指名は予想通りパウエルFRB理事となった。パウエル理事であれば、イエレン議長の路線を継承するとみられ、正常化に向けたステップも維持され、政策変更のタイミングも同じようなものになると予想される。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-11-03 09:17 | 中央銀行 | Comments(0)

ECBは緩和ペースを緩める政策を決定

 ECBは26日の理事会で量的緩和政策の縮小を決めた。2017年12月末としていた国債などの資産購入の終了時期を2018年9月末まで延ばした上で、2018年1月以降の資産購入量を現在の月600億ユーロから月300億ユーロに減額する。

 今回の決定は大規模な緩和政策のペースを緩めるものであり、正常化に向けた一歩との見方ができなくはないが、FRBなどに比べると極めて慎重となっている。ドラギ総裁は今回の決定について、FRBが行ったようなテーパリングではなく、ダウンサイジングとしている。

 買入の終了時期を固定しないことには大多数が賛成したようで、必要に応じ来年9月末以降の延長も検討する考えを示した。経済環境次第では増額の可能性も残している。さらに資産買い取りが終了するまで政策金利を動かさないとも改めて表明しており、利上げというかマイナス金利政策の調整は、早くても2018年9月末以降になることになる。

 ユーロ圏の物価上昇率は目標の「2%近く」には届いておらず、あくまで緩和ペースをやや緩める程度の認識であることを市場参加者に認識させて、ユーロ高といった動きを牽制しようとの意図も垣間見える。実際に26日の外為市場では、ユーロがドルに対して売られ、約1年4か月ぶりの大きな下落を記録した。そして、ユーロ圏の国債もむしろ買い進まれていた。

 FRBはすでに正常化に向けてテーパリングを完了させ、利上げも行っている。イングランド銀行は資産買入の方法が日銀やイングランド銀行と異なるため、毎月の資産買入額を減額するといったテーパリングが必要なく、11月2日のMPCで10年ぶりに利上げを模索する。これに対してECBは大胆な緩和策のペースをやや緩めるだけで、緩和効果は残そうとしている。

 そして今年9月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品)が前年比プラス0.7%と、いまだ2%の物価目標に距離のある日銀も異次元緩和を継続させてはいるが、すでに調節目標を量かに金利に移したことで現実的にはテーパリングを行っている。しかし、これもECB同様にテーパリングとの認識ではなく、国債市場の状況に合わせた調節との立場を取っている。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-10-28 13:03 | 中央銀行 | Comments(0)

FRB議長選出に向けたトランプ大統領のパフォーマンス

 米国のトランプ大統領は24日、上院共和党の昼食会に出席し、次期FRB議長候補を巡り、上院議員に挙手投票を求めたと複数の議員が明らかにしたそうである。スコット議員は、トランプ大統領から「勝者の発表はなかったが、私はテイラー氏が勝利したと考えている」と述べた(ブルームバーグ)。

 これを受けて米債はさらに売り込まれ、ドルは買われたようだが、こういったやり方はあまり好ましいと思えない。ラウンズ議員は大半の議員が挙手しなかったため誰が有望か判断は難しいと語ったそうだが、それは当然であろう。いくら議会の承認かせ必要といえど、FRB議長の指名も議会が行うのであれば挙手する必要があろうが、今回については大統領のパフォーマンスとしか思えない。ただし、FRB議長の承認は議会が行うことで、ニュアンスを探ろうとしたのかもしれないが。

 コーカー議員も手を挙げなかったそうで、その理由として「FRB議長を選ぶ極めて優れた方法だとは思わないため、私は参加を断った」と話した。もしもトランプ大統領がいまだFRB議長を決めきれず、承認に必要となる共和党議員の反応を聞きたかったのであれば、このような妙な手段ではなく、共和党の有力者に直接ヒアリングすべきであろう。

 まもなく大統領による次期FRB議長の指名が行われると思われる。今回の昼食会でのアトラクションは、共和党議員がイエレン議長の再任は望んでいないことを確認したかったのであったとしても、これに対し米国で大統領に次いで影響力のあるといわれるFRB議長の指名人事を控えて、大きな権限を持っている大統領がすべき行為ではないのではなかろうか。もしかするとそれだけ大統領も悩んでいるということなのかもしれないが。

 ちなみに来年4月に黒田日銀総裁は任期を迎える。こちらの指名人事は最終的には首相官邸が握っている。もちろん議会での承認が必要ではあるが、いまの日本では与党が過半数を握っており、さらに官邸が出した人事案を反対する与党議員はいないと思われる。もし安倍首相が与党議員に誰が適任かと昼食を取りながら挙手投票を求めても、与党議員はただ困惑するだけとなるのではなかろうか。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-10-26 09:55 | 中央銀行 | Comments(0)

世界的な株高の謎、日経平均も20年10か月ぶりの高値更新

 10月11日の東京株式市場で日経平均株価は前日比57円76銭高の20881円27銭で引けた。2015年6月に付けた第2次安倍政権の発足以降の高値を上回り、1996年12月5日以来、約20年10か月ぶりの高い水準となった(11日の日経新聞電子版より)。

 米国株式市場では、ここにきてダウ平均、ナスダック、S&P500の主要3指数が過去最高値を更新し続けていた。10月に入ってのロンドン株式市場でもFTSE100種総合株価指数は過去最高値を更新し、フランクフルト株式市場でドイツ株式指数(DAX)も過去最高値を更新している。

 日経平均株価の過去最高値は1989年の大納会(12月29日)に記録した38915円87銭となっている。ここからいわゆるバブルの崩壊によって日経平均は大きく崩れた。日経平均が約21年ぶりの水準に回復したとはいえ、欧米の株価指数が過去最高値を更新しているのに比べると日本の株価の上昇ピッチは緩やかなものとなっている。それだけバブル崩壊の後遺症が大きかったとも言えよう。

 日経平均のここ21年間の動きをみると、日経平均株価は2003年4月28日の7607円88銭がバブル崩壊後の安値となり、いったん底打ちした。2003年5月の、りそな銀行に対する資本注入によって、大手銀行は潰さないといった意識が強まり銀行株などが買われた。米国や中国などの経済成長などを背景に、日本の景気も徐々に回復し始め、その後上昇基調を強めたのである。

 中国など新興国経済の回復により、日経平均は2007年7月9日に18261円98銭まで上昇した。しかし、サブプライム問題に端を発した世界的な金融経済ショックが日本も襲い、さらにそれが沈静化したかしないかのタイミングでギリシャを発端とした欧州の信用不安が襲ってきた。このため、日経平均は2009年3月10日に7054円98銭まで下落し、バブル崩壊後の最安値を更新。その後も2012年末あたりまで低迷が続くことになる。

 米国のダウ平均の推移をみてみると2009年3月あたりからじりじりと上昇基調となっていた。この流れに日経平均が乗れなかったのは、バブルの後遺症だけでなく、世界的な金融経済リスクに対するリスク回避の動きで、急激な円高が進行していたことも影響していよう。しかし、その世界的な危機が後退しつつあったタイミングでアベノミクスが登場し、リフレ政策を受けたヘッジファンドなどの仕掛けも手伝い、円高の急激な調整が入り、日経平均も回復基調となった。

 その後、日本経済は緩やかながら回復基調が継続した。これには米国経済の回復、懸念された中国など新興国経済の落ち込みが大きくなかったことなども上げられよう。それでも欧米の株式市場が過去最高値を更新していることについては謎ともいえる。もしその背景に日米欧による非伝統的な金融政策、特に異常な規模の量的緩和策の影響があったとすれば、FRBの正常化も進みつつあり、ECBも緩和縮小に舵をとりつつあり、日銀も実質的なステルス・テーパリングを行っていることで、いずれピークを迎えることも予想されるのである。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-10-14 12:12 | 中央銀行 | Comments(0)

FRBの量的緩和は米長期金利を引き下げたのか

 中央銀行の金融政策は短期金利を操作し、長期金利に働きかけることで景気や物価を刺激するというのがひとつのセオリーとなっている。政策金利となっている短期金利がゼロ%近辺となった際には、国債などを買い入れて長期金利に働きかけようとした。それではこの金融政策が本当に長期金利に働きかけていたのか、米国の事例を元に検証してみたい。

 2008年11月25日のFOMCにおいて、総額8千億ドルのあらたな金融対策を発表した。内容は住宅ローン担保証券や、自動車ローン・学生ローンなどを担保にした証券化商品を買い取ることが柱となった。これによりFRBのバランスシートは大きく膨張することになる。これがFRBによるQE(Quantitative easing、量的緩和)と市場で呼ばれたものである。

 2008年11月末の米10年債利回り(以下、長期金利)は3.5%台にあったが、翌月12月末に2.4%台に下落しており、FRBの量的緩和は一時的にせよ米長期金利は低下した。しかし、2009年6月末には3.7%台まで戻しており、これだけみると効果が継続していたようには見えない。

 2010年11月3日のFOMCでは一段の景気刺激に向けた措置として、2011年6月末まで米国債を6000億ドル追加購入するという追加緩和策(QE2)を決定した。毎月の追加購入額は約750億ドル、MBSの償還元本の再投資分も含めると2011年6月末までの米国債購入は総額8500億~9000億ドルとなる。

 2010年10月末は2.5%台、11月末は2.7%台にあった米長期金利はむしろ上昇し、2011年2月末には3.5%台をつけている。結果から見る限り、QE2が米長期金利を押し下げたようにはみえない。

 2011年9月21日のFOMCで残存期間6~30年の財務省証券4000億ドルを買い入れ、残存期間3年以下の財務省証券を同額売却するというプログラムを決定した。1961年のケネディ政権下で行なわれたことがあるツイスト・オペもしくは、オペレーション・ツイストと同様の手段となった。

 2011年9月末の米長期金利は1.98%、その後も2.0%近辺で推移しており、ツイストオペが米長期金利を引き下げてはいなかった。

 2012年1月25日のFOMCで政策金利は据え置いたものの、「異例に低いFF誘導水準の維持が2014年後半まで続く事が正当化されるとFOMCは予想している」と、事実上のゼロ金利政策を解除する時期を先延ばしし、少なくとも2014年の遅い時期まで続ける方針を示した。さらにFRBは物価に対して特定の長期的な目標(ゴール)を置くこととし、それをPCEの物価指数(PCEデフレーター)の2%とした。

 2012年1月末の米長期金利は1.97%、その後の米長期金利も4月あたりまでは2%台で推移し、その後7月に1.5%台に低下した。

 2012年9月13日のFOMCでFRBは追加の緩和策を決定し、住宅ローンを担保にした証券であるMBSを毎月400億ドル追加購入することを表明した(QE3)。

 12月12日のFOMCでは、年末に終了するツイストオペの代わりに毎月450億ドル規模の米国債購入を決定した。これまでのツイストオペでは、450億ドルの短期債を売って長期債を購入していたが、短期債を売却しない分、FRBのバランスシートは拡大する。MBS含めると月額850億ドルを買い入れる。また、償還分の買入も行うとした。

 米長期金利は2012年9月末が1.72%、12月末が1.65%、2013年1月末が1.91%台と低下というより、むしろ上昇した。

 2013年5月22日にFRBのバーナンキFRB議長は、議会証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘した。

 これをきっかけとして米長期金利2013年5月末の1.9%台から、12月には3%近くまで上昇することとなる。しかし、これ以降の米長期金利はデーパリングが現実に実施され、利上げも行われているにも関わらず、2016年7月には1.3%台に低下した。

 もちろん金融政策だけが米長期金利を動かしているわけではない。しかし、FRBの量的緩和は米国債とMBSの大量の買入、いわゆるQEを通じて行われており、長期金利を押し下げることも大きな目的であったはずである。

 タイムラグもあり、結局、QEによって現在の米長期金利の低位安定があるとの見方もあるかもしれないが、QEで米長期金利は低下せず、むしろテーパリングなど正常化途中で低下傾向を示すなど、金融政策そのものと長期金利の連動性は低いとみたほうが素直か。

 日本の場合は日銀が強制的に長期金利を押さえ込んでいる。米国の例をみても少なくとも量的緩和が米長期金利低下を即、促しているわけでなく金利低下による効果は限定的ともいえる。これは日本にとっても同様ではなかろうか。



[PR]
by nihonkokusai | 2017-10-05 10:10 | 中央銀行 | Comments(0)

イエレン議長はあらためて年内利上げを示唆

 FRBのイエレン議長は26日の全米企業エコノミスト協会での講演で、「インフレ率が目標の2%に戻るまで金融政策を据え置くのは賢明ではない」と述べ、緩やかな利上げが現在のところ最も適切な政策スタンスだとの認識を示した上で、「ゆっくりし過ぎないよう注意するべきだ」と述べた(ブルームバーグ)。

 20日のFOMCでは政策金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標を年1.00~1.25%のまま据え置いた。そして、2008年~14年に購入した米国債などの保有量を10月から段階的に減らすことを決定した。そして、 FOMC後に公表した政策金利見通し(ドットチャート)では、参加者16人のうち11人が年末までに追加利上げを予測していることを明らかにした。

 この日の会見でイエレン議長は物価動向について、今後数年で2%の近辺に回復し、安定するという見通しを変えなかった。物価の2%割れは多分にミステリーだとも表現していた。

 26日の講演後の質疑応答でも今年の物価停滞について「謎」と述べていたようであるが(日経新聞電子版)、基本姿勢としては緩やかながらも、ゆっくりしすぎない利上げを意識しているようである。

 これはつまり足元の物価データなどからFRBが予想している今年の年3回目の利上げは困難、との見方を修正させようとの意図があるようである。余程の事態が発生しない限り、FRBのシナリオは12月のFOMCでの利上げ決定とみて良いよう思われる。

 余程の事態としては北朝鮮リスクなども挙げられよう。こちらはすでに話し合いの余地もなくなりつつあり、何かしらのきっかけで軍事衝突を招く懸念がないわけではない。しかし、今のところは軍事衝突に進展する可能性は薄いとの見方も強い。

 物価に対しては原油価格の動向も当然影響を与える。ここにきてWTIは50ドルの大台を回復するなどしており、少なくとも物価を抑制する要因とはなくなりつつある。今後、物価については上昇圧力を強めることも予想され、これは米国のみならず日本も同様であるかもしれない。


[PR]
by nihonkokusai | 2017-09-28 15:51 | 中央銀行 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31