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カテゴリ:投資( 63 )

騙されないための個人向け債券の基礎知識

 先日の日経新聞によると、東京都新宿区の82歳の男性医師が架空の社債購入を持ちかけられ、現金9360万円をだまし取られていたそうである。2011年4月に男性宅に「株式会社アドバンスエレメント」という架空会社の社債販売の案内パンフレットが届き、その後、関連会社の社員を名乗る男から「その社債は新宿区の個人しか買えない。1千万円で購入すれば1500万円で買い取る人がいる」と持ちかけられたそうである。また、以前には東京都江戸川区の17歳の男子高校生が、架空の社債購入を持ち掛けるなどして2千万円をだまし取るという詐欺事件も発生したが、こにきて未公開株などとともに個人向けの社債を巡る詐欺事件が結構発生している。

 ふたつの事件とも騙されたのは高齢者であり、オレオレ詐欺の社債版のようなものではあるが、特に後者の事件は高校生が犯人であったのに驚かされた。高校生が「社債」という存在そのものを知っていたのかと関心してしまったが、もちろん関心している場合ではない。

 私も一度、「病院債」を買わないかとの電話セールスを受けたことがある。さすがにすぐに危ないと思い電話を切ってしまったが、勉強のため(?)話ぐらい聞いておけば良かったとあとから反省した。このような文章を書くにも良い事例となったはず。この件についてはそういうわけで、具体的な詐欺の方法はわからないが、これは国民生活センターのサイトによると、勧誘時に「医療機関債」のほか「病院債」、「医療債」、「病院への投資」などという言葉が用いられている詐欺のようである。「医療機関債は国債と同じで、元本割れすることのない安全な商品である」「人工透析ができる医療機関にお金を出せば、高い利息が付く」などと、預貯金や国債と同じであるといった、事実と異なる説明や、高利率であることだけを強調するなどの問題勧誘が見受けられるそうである(国民生活センター、http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20110825_1.html)。

 このような詐欺被害を未然に防ぐには、少なくとも勝手に送られたパンフレットや、見ず知らずの人からの電話セールスについては詐欺であると思っていた方が良い。

 たしかに一般の人が債券を購入するというのは、それほどポピュラーではない。個人向け国債あたりであれば、テレビなどでも宣伝しており、それなりに認知度が高いかもしれないが、それでも購入経験のある人はそれほど多くはないと思われる。このため今回はこのような詐欺に遭わないためにも、債券について基礎的なものを知ってもらおうと、まとめてみた。

 債券は株式などと同様の有価証券である。株と違うところは、満期がありその間、半年ごとに利子が支払われ、額面金額が償還時に戻ってくるというものである。有価証券なので途中で売却もできるが、それには買い手が必要になる。また預貯金と違うところは、お金を銀行に貸すというか預けるのではなく、証券を買うことで買い付けの価格があり、購入金額と償還金額はかならずしも一致しない。利子については比較的預貯金よりも高めに設定されている。

 債券の中で最も多く発行されているのが国債である。国債には個人向けの国債があり、そのうち個人向け国債(復興国債)は財務省が一定期間過ぎれば買い取ってくれるため流動性リスクや価格変動リスクがない。3年固定、5年固定、10年変動の3タイプある。また、個人向けには新窓販国債という国債もあるが、こちらは利率は個人向け国債よりも高いが、途中売却の際には金融機関を通じ市場で売却し換金するため、価格変動リスクがある点に注意が必要となる。

 地方公共団体が当該地域に居住している個人や営業拠点等がある法人などを対象に発行する債券が、個人向け地方債で、正式には住民参加型市場公募地方債であるが、ミニ公募地方債とも呼ばれている。こちらは国債より比較的利子も高いことや地域貢献も意識されてか人気が高い。ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照してほしい。ただし、地域貢献などと称するミニ公募地方債らしき詐欺まがいの債券もあるため要注意。私も電話勧誘で勧められた病院債(医療機関債)も電話ではそのそのようなうたい文句であった。

 個人向け社債については、とにかく自分が知っている会社の債券であることがまず重要。見ず知らずの会社の社債投資は避けるべきか。もちろん格付け等を確認することも大事だが、国債と同様に安全などとアピールされていたとすればちょっと疑った方が良い。国債並に安全な社債は余程名のしれた大手企業が発行するようなものに限られる。また名の知れた大手企業だから絶対安全というわけでもないところにも注意は必要か。

 社債の中でも銀行の発行する個人向け劣後債については、どちらかといえば富裕層向けのものであり、しっかり証券会社などで説明を聞くことをお勧めする。もちろん他の個人向け債券もしっかりした証券会社で購入するものであれば、詐欺まがいのものはないはずである。劣後債については今回説明は省略する。

 個人向け外貨建て債券、たとえばブラジル、トルコ、ロシア、オーストラリアなどの通貨建ての債券については、高利回りで発行体が国際機関などなので格付けが高く人気となっているものもある。発行体の高格付けが必要条件だが、たぶんこれは満たされているはず。そして利率についても単純に日本の債券より高いからと納得するのではなく、現地の利率などもチェックして比較も必要となる。高利回りはそれだけリスクが高いとみておくことも大事である。そして問題は為替リスクであり、その通貨の動向をほとんどチェックできないような人は手を出すべきでない。まして円安・円高とは何か、そもそも為替は何で動くのかを理解してから望むべきである。私も90歳近い叔父に円高とは何だと聞かれたことがある。どうやら海外通貨建て商品に手を出してしまったようだが、知識なしにお金を投じるべきではない。高利率に惑わされず、その対象通貨が、今後余程のことがない限り下落はないとの自信があるのであれば、購入すべきものである。

 個人向けの仕組み債については、一般の社債に比べ、高格付け・高利回りであることが多く、大変魅力的に見える。この仕組み債は何かしらの条件付きで利子が高めに設定されているものである。しかし、極端に有利な金融商品というものはない。仕組み債がなぜ高格付け・高利回りを達成できるかというと、仕組み債に組み込まれたデリバティブにある。そのリスクを完全に理解することは個人には難しい上に、大きな損失を被る危険性があり、それを理解した上であるならば良いが、良くわからなければ手を出すべきではない。

 そしてこれは個人向け国債以外の個人向けの債券に言えることだが、途中売却には注意すべきである。債券なので途中売却は可能だが、売却した時の市場環境次第では買った値段よりも低い値段でしか売れないということも多々ある。販売した証券会社等で買い取ってくれるが、流動性のない小口の債券であるため証券会社の買い取る価格は低くなり、そこには手数料相当分も含まれる。個人向け債券は満期まで持つことが大前提となる。

 また、個人向けの債券はいつでも買えるわけではない。人気のある社債は一瞬で売切れてしまうこともあり、日ごろから情報を仕入れておくことが重要となる。個人向け国債については財務省のサイトで、ミニ公募地方債については総務省や自治体のサイトを参照。個人向け社債や外貨建て債券は各証券会社のサイトや窓口で確認する必要がある。

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by nihonkokusai | 2012-10-28 12:07 | 投資 | Comments(0)

マーケット・サバイバル術、確証バイアスを利用せよ

 以前に「マーケット・サバイバル」という本で以下のようなことを書いた(現在、「マーケット・サバイバル」の内容は同じパン・ローリング社の「日本国債先物入門 [改訂版] (現代の錬金術師シリーズ)」に収められている)。

 「相場に臨むにあたって、ポジションを持っている状態と持っていない状態でも相場に対する見方が異なることも注意しなければならない。いったんポジションを持つと自分のポジションを正当化する情報ばかりに目がいくようになってしまいがちである。これでは普段の冷静な見方ができなくなる恐れがある。」

 これは自分のディーラー時代の経験を元に書いたものであったが、このような現象は社会心理学や認知心理学で「確証バイアス」と呼ばれることをあとから知った。確証バイアスとは自分が聞きたくない情報を無視もしくは軽視し、自分の先入観を裏付ける情報を重要視してしまう現象を指す。確証バイアスによって人は信念を獲得し、その信念を確証するものを探そうとする一方、信念に反することがらを探すのではなく黙殺したり、あるいは低い価値しか与えなかったりもするとされる。

 相場にあたって、この確証バイアスによる弊害を取り除く必要もあり、その方法として、マーケット・サバイバルでは下記のような指摘をした。

 「自分の相場勘が当たり、評価益が膨らんでいる状態では、利食いゾーンを模索するため、ある程度の冷静さは保てる。だが、問題は評価損が膨らんでいる場合であろう。ここで必要なのは損切り、つまりロスカットルールを設けることである。」

 相場に関わる人にとり、当たり前のことであり目新しい方法ではないが、自分の信念により利益が出れば良いが、それにより損失が膨らむばかりとなる懸念もあり、それには機械的にポジションを切り、損失を確定してしまうとともに、冷静さを取り戻すことが重要となる。

 確証バイアスは個人の相場観では取り除かねばならないが、全体の相場に影響していることも多く、これはむしろ利用する必要もある。個々の市場参加者ばかりでなく、市場そのものが「確証バイアス」を持っている場合である。現在でいえば、FRBがQE3を行うであろう、といったバイアスである。これはもちろんバーナンキFRB議長の発言などを通じてマーケットが勝手に予想したものであるが、バーナンキ議長がそのようなバイアスを仕向けたとも言える。このため例えば、米雇用統計で非農業雇用者数が予想を下回ると、そのバイアスが強まることになる。

 相場そのものに、このようなバイアスが掛かることは多い。これはマスコミも影響していると思うが、ある特定の材料にバイアスが掛かるとそれに関する関係者の発言や、それに関わる経済指標の動向ばかり重視され、これが短期的な相場変動の要因になり、本来、他の要因にも影響を受けるはずのものが無視されるなり、軽視される。これも人間が形成する相場である以上、致し方ない部分はあるが、確証バイアスが掛かっているであろうことは常に認識すべきかと思う。確証バイアスゆえに相場がおかしい、と見えるときがあろうが、これも相場であり、そこで儲けを得るには、そのバイアスをうまく理由することも重要になってくると思われる。


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by nihonkokusai | 2012-09-08 09:53 | 投資 | Comments(0)

情報漏洩を防ぐには

 市場が注目している経済指標の内容を事前に知ることができれば、それが大きな利益を得られる可能性がある。ただ、たとえ数字を掴んでいても市場がどのように反応するのかをかなり正確に予測できないと、数字を知っていても儲けられるとは限らないが。特にアルゴリズム取引と呼ばれるコンピューターを用いた取引に携わるトレーダーなどにとり、発表時間より一瞬でも前に知れば、それを元にトレードも可能となろう。

 このような情報漏洩があれば、それは違法な行為であることに間違いはない。11日付けのロイターによると、データ漏えいの可能性に関する連邦捜査局(FBI)や米証券取引委員会(SEC)からの警告を受けた米労働省が、経済指標の発表に関するセキュリティーを強化したことが、米政府のウェブサイトに掲載されたリポートで明らかになったそうである。

 一部の金融機関が指標の発表前に労働省のプレスルームにアクセスしてデータを見た上で、金融取引を通じ利益を得ているとの懸念が強まったという。

 米国の多くの省庁でも、当然ながら経済指標を発表する際、解禁時間前のデータ発表を禁じる厳しいルールを策定している。プレスルームに集まるメディアの記者に対し、発表時間までコンピューターや電話回線の遮断を義務付ける「ロックアップ」と呼ばれる手続きを採用している(ロイター)。

 サンディア国立研究所のリポートによると、当局者らは一部のメディアとアルゴリズム取引を行うトレーダーとの関係が近過ぎることを懸念しているという。

 情報漏洩は結局は人が行うものである。もちろん雇用統計の数字を米労働省のコンピューターにハッキングして盗み出すことも絶対に不可能ではないかもしれないが、それにはかなり高度な技術も要求される。そこまでしなくても、発表時間前に見られる者から情報を得た方が簡単ではある。

 このリポートは、実際に経済指標が事前にリークされたことを裏づける証拠は示していないが、プレスルームのロックアップのプロセスにアルゴリズム取引を行うトレーダーが存在していることにあると指摘しているそうである。

 メディアは、プレスルームに入る前にポケットを空にし、持ち物をロッカーにしまうよう命じられているそうであるが、スパイ映画ではないが情報を外部に伝達するハイテク手段はいろいろと存在する。プレスルームの記者を疑うわけではないものの、情報漏洩への懸念が存在する以上は、セキュリティーをより強化することも重要となろう。

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by nihonkokusai | 2012-07-13 09:42 | 投資 | Comments(0)

ディーラーは逆張りで何故、損をするのか

 AIJ投資顧問の損失が発生した様子が少しずつ明らかになりつつある。当初は株式オプションでの売りを行っていたようだが、最初は儲かったもののその後祖損失を発生させ、その損を取り返そうと、営業畑出身の浅川和彦社長自ら相場に手を出したようである。その際に、ディーリングのような格好で債券先物を使った取引も行ったようで、逆張りにより損失を発生させたとの記事もあった。このあたり、相場で一番やってはいけないことをしていたものと予想される。

 「彼らはたぶんに当初は程度儲けを出したのではないかと思われる。たまたま、勝ったにもかかわらず自分の実力と過信してしまった可能性が強い。まわりでもちやほやされ、一時的に損を被ってもいずれ取り戻せると思い込み、ポジションを次第に膨らませて、結局、多額の損失を被ってしまう。」

 上記は私が1999年に書いた「マーケット・サバイバル」の一節である(この内容は「日本国債先物入門」にも収録)。この「彼ら」というのは、ベアリングのシンガポール支店のニック・リーソン、大和銀行ニューヨーク支店の井口俊英、住友商事の浜中泰男などを指している。また、「マーケット・サバイバル」ではデイトレーダーの陥りやすいものとして、次のようなことも指摘した。

 「必要なのは日中の値動きに如何にうまく飛び乗って飛び降りるかである。このため、必然的に相場に入るのは順張り型とならざるを得ない。つまり上昇相場に勢いがついたときに飛び乗って、ある程度上昇したところで利食い売りをして手仕舞う。特に下げ相場は上昇相場に比べてピッチが早いことが多く、急落の展開とはデイトレーダーにとっては大きな収益チャンスである。相場が大きく乱高下していれば、順張り型のデイトレーダーにとっては大きな収益チャンスである。」

 「逆張り型のデイトレーダーが果たして存在しているかどうかわからないが、急落するような相場では逆張りしていればまず収益は得られず、それ以上に大幅に損失を蒙ってしまうはずである。ただし、うまいデイトレーダーは大きな流れの変化にも機敏に対応できるようで、順張りで望んでいたのが、あるタイミングで反対のポジションで仕掛け、そこでも収益を得ている。値動きなどで価格の流れをある程度読み切っていると思われるが、残念ながら私はここまで器用にはできなかった、これが可能なのはディーラーの中でも100人に一人の天才型のディーラーである。」

 このように相場では流れに逆らわずにそれに乗るほうが儲けやすい。しかし、相場の格言として「安いところで買って高いところで売る」というものがある。これはまさに逆張りと呼ばれる手法であるが、問題なのはどこが高くて、どこが安いのかを見分けることができないとお話にならない点である。つまり、天才的な相場観でも持っていない限り高値や安値を正確に見分けることなどできはしない。逆張り型が陥りやすいのは、自分の相場観を信じるあまり、下値で買ったものの、相場がそこから下げてしまっても損切りせずに、さらに買い乗せしてしまう、いわゆるナンピン買いをしてリスクを倍加させ、損失をさらに膨らませることになってしまうことである。

 逆張りは、天才型のディーラーでなければかなり難しい。このあたりの鉄則すら、AIJの浅川和彦社長は知らなかったようである。実はこのような大きな損失を発生させやすいディーラーは現実にかなり存在していた。ただし、社内ディーラーであればチェック機能が働き、このようなディーラーは配置転換等させられていた。しかし、AIJの場合には社長自ら手を染めていたことで、その損失については隠蔽してしまった結果、大きな問題に発展してしまったものと思われる。相場を張るのであれば、基本的な鉄則程度は学ぶべきであり、また向き不向きも存在し、自分には向いてないと思ったら、手を出すべきではない。相場の世界はそんなに甘いものではなく、非常に恐い世界でもあるのである。


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by nihonkokusai | 2012-04-02 09:33 | 投資 | Comments(0)

自分の金融資産を守るには

 AIJ投資顧問の年金資産消失問題を見ても、金融市場に資金を預けることには常にリスクを伴うことは確かである。AIJ投資顧問は損失を巧みに隠蔽するなどしており、この問題で一概に金融市場は危険であると決めつけるわけにはいかない。むしろ、年金基金や生命保険金、さらに我々の預貯金などを運用している金融機関の多くは信頼のおけるものであることも確かである。

 それでも金融市場での資金運用にはリスクが伴う。自分の金融資産を守るためには、そのリスクを少しでも軽減させる必要がある。そのためにはいくつか必要なことがある。

 ひとつはコアとなる資金については極力、安全資産で運用すべきということである。将来の備えなどに必要な資金については元本が毀損する恐れのある物への投資は控えるべきである。そのためには預金保険制度が適用される範囲内での預金などが候補となろう。しかし、それを大きく超える資産を持っている方には、個人向け国債が良い。途中売却できない期間があるため、そこに注意する必要があるが、その期間を超えれば国債でありながら、価格変動リスクも流動リスクもない。いつでも財務省が額面で買い取ってくれる。

 しかし、国債は危ないのではないかと信用リスクを気にする人がいるかもしれない。しかし、日本の金融商品の中核にあるのが国債であり、仮に日本国債の信用リスクが毀損すれば、それは日本の金融資産全体に影響を与えるばかりか、国債を保有している金融機関にも影響を与える。日本の信用リスクに関する将来像については見方も分かれるが、その影響を完全に排除するには国外での生活を考える他に手段はない。このあたり、日本国債は暴落するかという問題ではなく、国民としては暴落させてはいけないものであろう。

 そしてコアとなり、絶対に元本を失ってはならない資金以外での余裕資金があれば、預貯金や個人向け国債以外の金融商品が数多く存在し、それらに資金を振り向けることも候補に挙がろう。多少のリスクは覚悟の上で、預貯金や国債の利子以上の収益を確保したいという方も多いであろう。その際にまず心がけるべきことは、なるべく原商品を購入するという機会を設けることであろう。つまりは、株式なり債券なりであり、為替投資の機会としては外貨預金などもある。

 株や債券などの原商品を購入することにより、実際に価格変動リスクや流動性リスク、そして信用リスクといった基本的なリスクを経験として学ぶことができる。もちろん株や債券を購入する前に、必要最低限度の知識を得ておく必要もある。ただし、投資の際には他人の意見に惑わされることなく、自ら判断する必要がある。証券を発行する企業の財務内容などをチェックするとともに、少なくともチャートの読み方程度はできるようにしておくことも必要であろう。

 そして、損失が発生したとしてもこれは貴重な経験と認識することも大事である。大きな損失を発生させたディーラーはちょっとした成功体験を自分の相場観の良さによるものと勘違いし、のちに大きな損失を発生させることが多い。それよりも最初に損失を発生させると、なぜ損をしたのかをしっかりと考えることで、のちの投資に生かせることにもなる。

 そのような経験を経た上で、運用をプロが行っている投資信託などに資金を振り向けることも必要か。大手証券出身のAIJの資金運用がどのようなものであったのかを見るまでもなく、金融市場での資金運用は非常に難しい。私のディーラー時代の経験からも確かなのは、安定的に収益を出すことは大変難しいということである。そのことすら、経験がないとわからない。もちろんある程度の安定した収益が出せるようなプロ達も存在するのも確かである。それをどのようにして見分けるのかも重要であるが、それにはある程度、金融市場に関する経験や知識、情報が必要になる。そのためには自らまず原資産の運用をしてみることが、一番良い手段になると思われるのである。


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by nihonkokusai | 2012-03-31 16:41 | 投資 | Comments(0)

消えたフレーズ、貯蓄から投資へ

 拙著「図解入門ビジネス 最新金融の基本とカラクリがよ~くわかる本[第2版]」がまもなく発売される。これは2006年12月に出した「最新金融の基本とカラクリがよーくわかる本」の改訂版となる。

 この本の改訂にあたり、古くなった部分を最新のものに修正する作業を行ったのだが、その中で「貯蓄から投資へ」というフレーズをどうしたら良いものかと悩んだ。2006年当時は、個人の貯蓄中心となっていた金融資産の一部を投資に振り向けようとの動きが続いていたのである。

 このような動きは過去にも例があった。高度成長により証券市場も成長した結果、1961年に投資信託の残高が4年前のおよそ10倍の1兆円を突破した。このとき流行ったフレーズが、「銀行よさようなら、証券よこんにちは」というものであった。しかし、1964年、つまり昭和39年に東京オリンピックが終了したあと、40年不況を迎え、1965年5月には山一證券への日銀特融も実施されたのである。

 2006年当時はまだ「貯蓄から投資へ」というフレーズは残っていたのだが、その後「銀行よさようなら、証券よこんにちは」というフレーズが流行したあと起きたような金融ショックが日本を覆うことになる。しかし、これは40年不況のように内生的なものではなく、海外で発生しそれが日本にも波及したものである。

 サブプライム問題やリーマン・ショックにより、証券化などを含めて複雑な金融商品への問題点が浮き彫りになり、その後の欧州の信用不安により、リスク回避の動きがさらに強まった。国内では歴史的な円高進行もあり、株の低迷に加え、投資信託などにも大きく影響した結果、個人による投資意欲は後退し、むしろ安全資産として貯蓄に回避するような事態になったのである。

 しかし、この動きも2012年に入り流れが変わってきた。急激な円高と、それも影響しての株安の流れが変わり、円高調整と株価の反発が生じた結果、日経平均は1万円台を回復してきたのである。

 これにより再び「貯蓄から投資へ」のキャッチフレーズが登場することは考えづらいが、過度に安全資産に資金が集中してしまった反動は起こりうる。昭和40年不況のあとで証券市場が再度活況を呈したように、日経平均が上昇圧力を強め投資信託などに資金が向かうことも十分に考えられる。今度は別にあらたなキャッチフレーズが登場するのかもしれない。

 「銀行よさようなら、証券よこんにちは」というフレーズが過去のものとなったように「貯蓄から投資へ」というフレーズも過去のものとなろう。金融の本質は変わらないものの、このような歴史が何度も繰り返されるのが金融の世界でもある。証券投資をする際の基本は安いところで買って高いところで売るということである。つまりはこのようなキャッチフレーズが忘れ去られたようなとき、つまり証券投資が下火になったときに買い、「証券よこんにちは」とか「貯蓄から投資へ」といった新たフレーズが出てきたころにはそろそろ手放すことを考えるのが必要なのかもしれない。


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by nihonkokusai | 2012-03-21 11:43 | 投資 | Comments(0)

金融機関発行の個人向け劣後債を購入する際の注意点

 銀行が発行する個人向けの劣後債に関するマスコミの取材を過去に何度か受けたことがあり、今回も同様の取材があった。このため、ここで銀行などの金融機関が発行する個人向けの劣後債とはそもそも何であるのか。そして、購入する際に何を注意すべきであるのかをまとめてみた。

 まず劣後債とは、劣後特約のついた社債のことである。劣後特約とは社債に付けられた特約条項のことである。その特約条項の内容は通常、劣後債を発行した企業が倒産した場合、劣後特約のついた社債の返済は一般債権者への支払いが全て完了した後に行うという内容となっている。デフォルト時の元利金の支払い順位が一般債務よりも低くなっており、もし発行した企業が経営破たんした場合には、株式と同じく紙切れ同然になるリスクがある。劣後債のリスクは、一般に普通社債と株式の間くらいとの認識のようであるが、その分、普通社債よりも利率は高く設定されている債券である。

 そして劣後債の発行体をみると、金融機関が非常に多い。金融機関は法律で一定以上の自己資本比率の維持を義務付けられている。劣後債は、会計上は負債に分類されるものの、銀行経営の健全性を維持するための国際ルールであるBIS規制では、自己資本の補完的項目(Tier2)への算入が一定限度まで認められている。このため、株主の権利を希薄化させずに、金融機関は自己資本を高められるというメリットがあるため、金融機関は劣後債を発行しているのである。以前は、劣後債の大半は機関投資家向けとなっていたが、リーマン・ショック以降は一時、機関投資家向けの社債の発行ができなくなるなどしたことで、個人向け劣後債の発行も多くなった。個人投資家にしても、金融市場の混乱と円高進行などから、円建てでより安全とみられる商品へのニーズが強まったことで人気化したのである。

 金融機関の発行する劣後債には、満期前に繰上償還される「期限前償還(コーラブル)条項」が付いているものが比較的多い。劣後債の期限前償還条項とは、発行体が債券の繰上償還をするかどうかは決めることができるもので、いつ償還となるか事前には確定していない。しかし、劣後債を自己資本とみなすルールには、劣後債の償還まであと5年以上残っていなければならない、というルールが存在する。残存期間が5年を切ると年率20%で累積的に減価しなければならないのである。このため、実際には残存5年のタイミングで繰上償還となるケースが大半となっている。劣後債は、BIS規制において自己資本に算入可能であるため、金融機関には残存5年のタイミングで繰上償還し、再度劣後調達を行うインセンティブが働くのである。

 ただし、絶対にコールがかかるというわけではない。これまで大手金融機関が発行した劣後債で、繰上償還が見送られた事例は少ない。しかし、発行体の財務内容が大幅に悪化し繰上償還するだけの余裕がなかったり、金利の上昇などにより再調達コストが大幅に上昇した場合などでは、期限前償還が見送られる可能性があることにも注意が必要である。

 参考までにバーゼル3では劣後債を自己資本に算入するには、実質破綻に陥った際、元本の返済免除か普通株に転換することを条件としている点とともに、従来型は2013年以降、毎年残高の10%が自己資本から差し引かれていくことになるという。バーゼル3とは、国際的に業務を展開している銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制のことであり、バーゼル2(新BIS規制)をさらに規制強化したものであり、2012年から2019年にかけて段階的に適用されていくとされている。バーゼル3準拠の劣後債はこのあたりに注意する必要がある。

 そして、個人投資家にとって劣後債を買い付ける際には、上記の劣後債そのものの性質とともに、買付金額の大きさ、そのタイミングの難しさ、さらに途中売却の難しさも意識する必要がある。

 金融機関の発行する劣後債の最低単位は100万円とか250万円と通常の個人向け債券よりも大きくなっている(ちなみに個人向け国債は1万円単位で購入が可能)。さらに利率が比較的高いことなどもあって人気化しているものなどは、なかなか入手が難しく、ある程度取引やつきあいのある証券会社などからの情報が得られないと購入そのものも難しいケースも多い。

 さらに、劣後債は売りたい時に必ず売れるとは限らず、その流動性の低さに注意が必要である。個人向け国債は途中売却の際に財務省が買い取るが、劣後債は発行する銀行側が買い戻す義務はない。ただし、販売した証券会社が買い取ることは考えられるが、流動性がない分、購入価格よりもかなり安い値段で買い取ることも考えられるため、できる限り途中売却は避け、基本的には購入したら償還まで持ちきることを前提に購入する必要がある。


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by nihonkokusai | 2012-03-05 09:24 | 投資 | Comments(0)

この5年間で金融は何が変わったのか

 2006年12月に出した「最新金融の基本とカラクリがよーくわかる本」の改訂版を出させていただくことになり、当時の原稿をあらためてチェックする作業を続けていた。

 当時の原稿の「まえがき」を読むと、「これから投資の勉強もしたいと言っている中学3年、中学1年、そして小学校6年の三人の娘たちにもこの本を捧げたいと思います」とあったが、その長女は今年4月に大学3年生となる。

 2006年12月から約5年経過したわけだが、その間、世界の金融市場は大きく揺れ動いた。2007年には米国でサブプライム問題が発生し、それをきっかけに2008年9月にリーマン・ショックが起きた。2009年10月の政権交代によりギリシャの粉飾財政が表面化し、2010年初頭からギリシャの債務悪化が問題視され、それがユーロ圏の信用不安を招くことになった。

 その間に金融の世界が様変わりしたのかといえば、金融のシステムそのものにはさほど大きな変化はなかったと思う。あらたな金融商品が生み出されたりするようなことはなく、このあたりは元の原稿に手を入れるところはあまりなかった。

 原稿を大きく修正する必要があったのは、特に「日本銀行の役割」とか「政府の役割」の部分であった。リーマン・ショックと欧州の信用不安に対しては、日米欧の中央銀行が積極的に対応策を講じたが、それはこれまでの伝統的手段ではなく、非伝統的な手段となった。そして、政府は積極的に財政政策を打ったことで、その反動として財政悪化を招くことにもなった。

 また、リーマン・ショックやギリシャ・ショックが直接影響したわけではないが、取引所のグローバル化が進み、また国内においても東証と大証が経営統合を発表するなど規模の拡大が進んだ。株価そのものは低迷していたが、その処理速度は速まるばかりであった。

 また、市場参加者である銀行や証券会社そのものもリーマン・ショックにより変化があった。さらにサブプライム問題やリーマン・ショックにより、証券化などを含めて複雑な金融商品への問題点が浮き彫りになり、その後の欧州の信用不安により、リスク回避の動きがさらに強まった。国内では歴史的な円高進行もあり、株の低迷に加え、投資信託などにも大きく影響した結果、「貯蓄から投資へ」という表現は修正しなければならなかった。

 この5年間で何が変わったかといえば、金融というシステムそのものに変化はあまりなく、むしろ金融がある程度成熟化してしまい、そこに内在された問題があらためてリスクとして浮き彫りになったということではなかったろうか。


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by nihonkokusai | 2012-03-01 09:52 | 投資 | Comments(0)

プロの投資家とは

 28日の日経新聞によると、AIJ投資顧問が運用を受託した企業年金資産の大半が消失した問題を受け、金融庁は多くの企業年金を「プロ投資家」と扱う現行の仕組みを見直す検討に入るそうである。資産規模が小さく運用体制が不自由分な場合は「一般投資家(アマ)」と見なし、金融商品を提案する際にはきめ細かい説明を金融機関に求める方向であるとか。

 2007年施行の金融取引法では、リスクのある金融商品の販売方法を厳しく規制する一方で、投資家を資産規模などに応じて一般投資家(アマチュア)と特定投資家(プロ)に分類している。

 法人投資家の場合、地方公共団体、政府系機関、上場会社、資本金の額が5億円以上の株式会社等、個人投資家の場合、取引の状況等から合理的に判断して純資産額及び投資性のある金融資産が3億円以上と見込まれ、かつ、最初の契約を締結してから1年を経過している者が特定投資家、つまりプロの投資家と認定される。

 相手がプロであるならば、複雑な書類を使った説明を受ける手間が省ける上に、プロ限定の私募投資信託に投資できるなどの「利点」があるそうである。つまり、AIJの問題に対して金融庁は、規制強化ではなく現行の規制の対象を見直すことで対応するとしている。

 AIJ投資顧問の問題については、運用益が出たのは最初の1年だけで、その後は損失を出し続けていたとの同社幹部による証言もあったようだが、これではそもそも資金運用者がプロとは言えまい。損失を隠していたことはプロとかアマという以前の問題であり、これも金融機関のプロとは決して言えない。

 投資家のプロとアマの線引きをすることそのものが、たいへん難しい問題であり、アマチュアだから詳しく説明をすれば良いという問題でもそもそもなかろう。

 投資家のプロというのは、投資のリスクを理解した上で、自らの判断で資金運用ができるものであろうが、そこにひとつ重要な要素がある。それは経験と知識である。だから、個人については「1年を経過している者」という条件が付いていると思うが、これはあくまで自ら相場に直接関わった経験でなければならないはず。他人に運用を任せていては、現場での相場感覚は身につかず、投資のプロとは言えまい。

 さらにもうひとつ必要なのが金融知識である。ある程度の金融知識と相場経験があれば、いくら巧妙に隠していたとはいえ、AIJの投資手法に疑問を感じる部分があったのではなかろうか。投資のプロであれば投資先の運用手法についても、ある程度は把握していなければならないはずである。それがわからなければ運用は任せるべきではない。結果の数字だけで判断するのでは、プロの投資家とは言えまい。

 投資家のプロの理想像を追い求めるわけではないが、会社の規模や資産額などでプロとアマを区別することには、やはり疑問を感じる。少額の個人投資家でも、投資のプロはいるとみられ、AIJのように本来はプロ中のプロのような法人投資家でも、アマチュアのような投資家が存在する。自分のディーラー経験からも、いろいろなプロの投資家が存在するのを見てきた。中には、今回のAIJのように犯罪に手を染めた者もいた。もちろん、安定的に利益を出せるディーラーもわずかながら存在していたことも確かではある。

 投資にはリスクが伴うというよりも、投資により利益を生み出すことそのものが容易ではない。プロの投資家であれば、まず知っておかなければいけないのは、この部分ではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2012-02-29 09:28 | 投資 | Comments(0)

「フラッシュ・クラッシュ再考」

今年もあと1か月あまりを残すこととなったが、今年のマーケットを振り返るにあたり、5月6日の「フラッシュ・クラッシュ」も今年注目すべきマーケットの出来事のひとつであった。本日、都内での西村日銀副総裁の講演「電子取引と金融市場」において、フラッシュ・クラッシュについて触れているが、その前にフラッシュ・クラッシュとは何であったのかを再確認してみたい。

今年5月6日、米国株式市場はダウで一時前日比1000ドル近くまで下落し、ザラ場中での過去最大の下げ幅となった。しかし、この下げは一時的なものであり、その後、急回復した。もう少し具体的に見ると、この日の午後2時40分過ぎ頃、ダウ平均は5分間程度で600ドル近く下落し、一時前日比で995.55ドルも下げた。しかし、その後わずか1分間程度で下げ分のほとんどを取り返すなど、過去に例のみない乱高下が起こったのである。これは、フラッシュのように一瞬で株価が急落したことで「フラッシュ・クラッシュ」と呼ばれた。

ニューヨーク証券取引所などでは、結局、2時40分以降で最新の価格から60%以上下げた約定を全て取り消すと発表した。その数は2万件以上となったようである。

これは当初、システム取引による誤発注とみられたが、米国の商品先物取引委員会と証券取引委員会による調査によると、アルゴリズムによる1つの大口売り注文の自動執行が他のアルゴリズムを混乱させたと指摘された。つまり、市場参加者の多くが、買い注文の執行を見合わせた結果、市場流動性が急減するとともに、異例なほどの価格の乱高下を引き起こしたと分析されたのである。また、アルゴリズムによる裁定取引がその影響を拡大させ、幅広い銘柄で価格の瞬落を招いたとされている(西村日銀副総裁講演より)。

西村日銀副総裁は、「アルゴリズム取引が平時に市場の安定に寄与する可能性があるといっても、それは想定外の出来事や未知の不確実性が顕在化していない状況に限られます。機械的なアルゴリズムは、想定外で前例のない出来事に対して、良識を持った人間のように適切に対応できるわけではないでしょう。」と指摘している。

ただし、こういった事故を防ぐにはアルゴリズム取引で想定外の動きの兆候が出た際に機械的に探知し取引を中断させ、人間の手で想定外の動きの原因を探る必要がある。そのためには高速なアルゴリズム取引を前提としたサーキット・ブレーカーなどの制度化をより進める必要がある。

西村日銀副総裁はまた、フラッシュ・クラッシュの共同報告書の背後にある研究論文で、興味深い事実を発見したことを指摘している。

「同論文は、価格急落の終盤にかけて流動性が急減する中で、一部の高頻度取引業者が売買を活発化したと指摘しています。これは、流動性が急減した市場、すなわち平時に高頻度取引業者の取引相手となる市場参加者が不在となった市場において、こうした高頻度取引業者の間でアルゴリズムによる機械的な高速売買が繰り返されたことを示唆しています。こうした状況は、ごく短い時間に価格のボラティリティを高めたと考えられます。」

つまりこれはコンピュータによるプログラム取引の暴走とも言えるものであったとの指摘であろう。

高頻度取引業者以外の市場参加者の需給が大きく偏る中では、高頻度取引によって供給される短時間の流動性だけでその偏りを均すことは非常に困難となり、高頻度取引業者は、市場のファンダメンタルズではなく、むしろ微小な価格変化の方向性に応じて売買するため、仮に需給の不均衡がある中で、そうした機械的なトレーダーが市場の大勢を占めた場合には、市場価格がファンダメンタルズから急速に乖離していく可能性があり、フラッシュ・クラッシュは、これを示す顕著な例といえると西村副総裁は指摘している。

流動性供給という意味では、短時間で売り買いを繰り返す投機的な動きをする参加者はある意味不可欠である。必要悪とも言えるかもしれない。私も債券ディーラー時代は先物を主体に頻度の高い売買を行ってきた経験があるため、その存在は必要であるとの認識である。ただし、これをいま機械が行っているという事実には、多少なり不安も覚える。しかも、取引所のシステムはまさにこういったアルゴリズムによる取引を円滑に行える方向に整備が進んでいることも、個人的には憂慮すべきことではないかと思っている。相場は機械ではなく人が作るものであるという基本的なことが忘れ去られつつあるように思われるためである。
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by nihonkokusai | 2010-11-30 08:37 | 投資 | Comments(0)
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