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日本でマイナス金利が発生した理由

 7月10日に3か月物の国庫短期証券(TDB)465回の入札が実施されたが、その入札前の取引(WI)において、マイナス0.002%の出合いがあった。日本でもマイナス金利が発生したのである。

 国庫短期証券とは、昔は短期国債(TB)や政府短期証券(FB)と呼ばれたもので、現在はこの2つが統合されて国庫短期証券として発行されている。期間は2か月程度、3か月程度、6か月程度、1年程度に分かれている。国庫短期証券は割引形式で発行され、法人のみ購入ができ個人は買うことはできない。

 WIとも呼ばれる入札前取引とは、まだ入札もされず発行もされていない債券を取引するものである。10日に入札される465回が入札前の日本相互証券での取引において100円00銭0厘5毛という値が出合ったのである。TDBは割引債なので通常は額面の100円を上回ることはない。しかし、今回その額面を上回り、日本でもマイナス金利が発生したことになる。

 ただし、日本でのマイナス金利の発生は今回が初めてではない。2001年から2006年まで続いた量的緩和の時代にマイナス金利は発生していた。このときは日本の銀行が海外から資金調達する際にジャパンプレミアムが付いていた。つまり為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金を、無担保コール市場をはじめとする短期金融市場にマイナス金利で放出したケースがあった(日銀の「短期金融市場におけるマイナス金利取引」などに詳しい)。

 さらに国債市場では業者は保有している国債の償還手数料が得られることで、償還が迫った国債を償還手数料の範囲内で投資家から購入し、その結果、マイナス金利が発生することもあった。ちなみに今回のTDBのマイナス金利発生時の価格は100円00銭0厘5毛だが、この償還手数料は6毛あり、これを購入した業者は結果として1毛儲かるかたちにはなる。1億円購入して100円となるとコストに見合うかどうかはさておき、表面上は損失にはならない 。

 何故、日本でもこのようなマイナス金利が発生してしまったのか。ECBはすでに政策金利の下限部分をマイナスとしたことでマイナス金利が発生した。しかし、日銀は政策金利の下限ともなる超過準備の付利はプラス0.1%のままであり、マネタリーベースを増やすためには、ここをマイナスにするなどもっての外という状況にある。

 しかし、今回の日本でのマイナス金利の発生の予兆はすでにあった。7月4日に新発3か月物TDBがゼロ%で出合い、8日に新発6か月物TDBが入札結果発表後の流通市場でゼロ%で出合っていたのである。これを受けて10日の3か月物TDBの入札では、マイナス金利もありうるとの観測とも流れていた。そのあたりも意識して、マイナス金利を付けてしまったということであろうか。

 この3か月物TDBの入札の結果は100円とか100円を上回るようなことはなく、最低落札価格99円99銭2厘0毛、平均落札価格99円99銭5厘4毛となって、TDBとしてはテール(最低落札価格と平均落札価格の差)が流れ(広がることを流れると表現する)、このため入札後の取引ではプラス0.025%が出合った。マイナス金利は一時的な弾みで付いてしまった格好である。

 それでは何故、これほどまでに短期債への需要が強いのか。大きな背景としては日銀の量的・質的緩和による国債買入があるが、それとともにECBのマイナス金利を含めたパッケージの緩和策も加わり、溢れた資金が日本国債にも広がったためとの解釈も可能となる。

 10日に発表された6月29日~7月5日の対外及び対内証券売買契約等の状況によると、海外勢は対内短期債投資を1兆6688億円の買い越しとなっていた。国内の銀行による期末のバランスシート調整や担保要因等による可能性とともに、ECBのマイナス金利海外からの需要があり、そこにベーシススワップなどが絡んだ需要が入り込み、一時的にマイナス金利の発生となったとみられる。

 しかし、入札ではさすがに国内の投資家はマイナス金利では、保有目的としての説明が難しくなる。そのため海外需要はあっても国内需要は引いてしまったことで、昨日の3か月物TDB入札の結果となったものと思われる。ただし、日銀の巨額買入の存在により、状況次第ではゼロ金利やマイナス金利での出合いは今後も発生しうると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-07-14 08:12 | Comments(0)

JTによる減税分の社員還元の意味

 復興特別法人税は2013年度末に廃止されたが、予定よりも1年早く廃止されたことで、日本たばこ産業(JT)は、減税分の約20億円を社員に還元すると発表した。減税分を社員に還元するということは、あまり聞いたことがない。

 JTでは約9000人の社員を対象に、1人20万円(新入社員は4万円)を5月中旬に渡すそうである。JTは「社員の士気向上とともに、社員の支出増につなげ、消費財メーカーとしてデフレ脱却の一助になれば」と説明している(読売新聞)。

 社員の士気向上はさておき、JTの動きは政府の意向が強く反映されていると思われる。復興特別法人税は前倒しで廃止されたが、復興特別所得税の廃止は、復興事業の実施を困難にするとの理由で継続されている。

 復興特別法人税の前倒しの廃止理由として、政府のとりまとめ案では、「企業がデフレマインドを脱却し、継続的な賃金引き上げに向けて第一歩を踏み出すためには、そのきっかけが重要であることにかんがみ、検討することとした」と明記されている(ロイター)。今回のJTの動きは、賃上げそのものではないものの、減税分を株主等ではなく一時金として社員に渡す。

 これが悪いというわけではないが、政府の付焼刃的な政策に、政府に関わりのある企業が付焼刃的な手段で答えたようにしか見えなくもない。社員に支給される20万円がどのように使われるかは、受け取った社員の意向次第ではあるが、これでどれだけデフレ脱却に効果的なのかはっきりしない。そのまま将来のリスクに備えて預金に回す人も多いであろう。

 政府は企業の賃上げなどについても口を挟んできているが、企業側からすれば余計なお世話ということではなかろうか。日本の潜在成長率が上がり、将来に向けてのビジョンが開けるのであれば、企業は物だけでなく人にも投資する。政府は裏方としてその環境作りをしなければならないはずが、通貨や国債の信用を脅かしかねないリフレ政策により、円安株高を演出したものの、結局、ほとんどそれだけであった。この裏返しとして日本国債に対する潜在的なリスクを上昇させた。

 欧州の信用リスクの後退が円安株高の背景にあり、欧米の景気も回復しつつあるが、このような好環境下にあっても日本はそこに完全には乗り切れていない。貿易収支の赤字拡大がそれを物語っている。円安要因を除いて、どれだけ環境が好転したといえるのであろうか。

 現在のデフレ脱却とのイメージは官により半ば強引にもたらされたものであり、民によるものとは言えない。今回のJTの社員にむけた20万円の支給もまさにそれを示しているのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2014-04-24 09:21 | Comments(0)

米株変調の一因か、フラッシュ・ボーイズとHFT

 ここにきて米国株式市場の動きに変化が生じているように思われる。大きな流れが出てくる可能性もあり注意が必要になりそうである。そのひとつの兆候にナスダック指数がある。債券市場の動向を見る上でも、米国株式市場の動きも確認しているのだが、ダウ平均と比べて値動きが荒くなってきている。

 4日の米国市場では発表された3月の米雇用統計がほぼ予想通りの数字となったことで、天候が悪化していた割に雇用は安定しているとの見方から、S&P総合500種やダウ平均は昨年末に付けた過去最高値を上回った。ところがその後、米国株式市場は大きく下落し、ダウ平均も前日比159ドル安、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は、前日比110ポイントもの下落となった。昨日もハイテク株を主体に続落となり、ダウ平均は166ドル安、ナスダックは47ポイントの下落となった。

 S&P総合500種やダウ平均が一時最高値をつけるなど、まさに高値波乱の様相となっているわけだが、特にグーグルやヤフーなどIT関連やバイオテクノロジー関連の株がかなり乱高下しており、それがナスダック指数の大きな変動に繋がっている。これらの値動きの荒い銘柄は、モメンタム銘柄と呼ばれているようで、コンピュータを使った超高速取引(HFT)が影響している可能性がある。

 4月6日の日経新聞によるとHFTを手掛ける投資会社「バーチュ・ファイナンス」は4月初めに見込んでいた上場を延期した。同社が上場に向けて3月に開示した資料のなかに、「過去5年間で負けたのはたった1日」と掲載されていたそうで、これが問題視された。

 ブルームバーグによると、取引所が23兆ドル規模の米株式市場を操作していると主張するマイケル・ルイス氏の新著「フラッシュ・ボーイズ (原題)」が3月31日に発売され、高頻度取引にかつてない厳しい目が注がれる中で、バーチュはIPO計画の延期を決めたそうである。

 「バーチュ・ファイナンス」は2009年から2013年まで取引を行った1238日のうち損失が出たのはたった1日だけだったとしている。コンピュータを使ってのシステム売買と呼ばれるもので、利益をあげることはかなり困難であることをまず知って頂きたい。過去の値動きを元に、たとえば移動平均線の組み合わせなどを使って、売り買いの基準を作りそれを自動発注させて儲けを継続させる確率はかなり低い。過去のシミュレーションが未来の値動きを当てることはまずないためである。これは債券ディーラーとして先物主体に短期売買を14年間やってきた経験から断言できる。

 ところがバーチュ・ファイナンスは月間や年間ベースではなく、デイリーで1238日のうち1日しか損失が出なかったというのは、ありえないとされたシステム売買の錬金術を完成してしまったのかと思わせるようなものである。当然、ここにはカラクリが存在するはずである。

 債券先物取引が始まってまもなくのころ、債券取引で大きな利益を出していた外資系金融会社があった。のちに聞いた話からは、どうやら当時、国内金融機関は現物債の空売りが制度上できなかったことを利用し、現物の空売りを組み合わせた裁定取引で利益をあげていたとされる。制度上の隙間をうまくついて利益を出していたのである。

 HFTとは「ハイ・フリークエンシー・トレーディング」のことであり、コンピュータ・システムを使って価格や注文情報を「いち早く」取引に生かせる。マイクロ秒単位のようなわずかな時間差を利用して人間が行っている売買の隙を捉えて、細かく稼ぎ、それが積み上がって利益を得ていた可能性がある。取引所はHFTがかなりの売買高の割合を占めてきたことで、積極的に売買システムを更新し、HFTを引き込もうとしていた。東証の売買代金に占める割合は今年1~3月の1日平均で4割超に達している。

 HFTは相場を乱高下させ攪乱する要因ともなるが、流動性を高める役割も結果として担っている。しかし、コンマ秒の世界での取引には当然、人間の目はついていけない。何かしらのタイムラグをみつけて、そこにつけ込んで利益をあげることもひとつの手段であろうが、そのような取引が増加すると、2010年におきた米国株の急落といった事態も招きかねない。債券先物の初期にあった裁定取引のように見つけたもの勝ちというのもあろうが、これらはシステムや制度上の隙を突いたに過ぎない。

 4月2日のWSJの「高頻度取引描いたマイケル・ルイス氏の「フラッシュ・ボーイズ」」という記事によると、マイケル・ルイス氏は新著「フラッシュ・ボーイズ」で、高頻度取引業者は、高度なコンピュータ技術や光ファイバー、マイクロ波の電波塔を悪用して数千分の1秒単位で他の投資家に先がけて取引を執行し、大手の投資家も悩ませる今日的な市場の無法者だと語ったそうである。彼らは証券取引所を過去に例のない大きな変動を繰り返すコンピュータの化け物にしてしまったと。

 今回、「バーチュ・ファイナンス」の取引については米司法省やFBI、SEC、CFTCなども調査に乗り出しているようだが、大口売買より先に仕掛けるというのは、何らかの違法な手段が絡んでいた可能性もありうる。HFTにはそろそろ何かしらの規制も必要になってくるのではないか。相場を本来形成するのは市場参加者による思惑という原点に立てば、むしろ排除してほしいと考える。このあたりのHFTの動向も睨んで、最近の米国株の動きにやや異変が起きている可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-04-08 08:05 | Comments(0)

新年度入り後の国債市場の変化点

 まもなく新年度入りするが、消費増税などを含めていろいろと変化も出てくることで、今回は国債に関しての変化についてまとめてみた。

 すでに長期国債先物は3月24日に大阪取引所のシステムに統合された。これにより長期国債先物の取引にも変更があり、これまで誤発注予防のため呼値可能値幅が設定されていたが(例えば長期国債先物はザラ場中は20銭等)、これが即時約定可能値幅となり、上下10銭を飛んで動くような場合にはいったん板寄せのような格好となり、昔のスタイルに戻った。さらに成り行き注文は出せなかったが、引け成り行きの注文も可能となる。取引時間帯についてはイブニング・セッションが午前3時まで延長された。

 さらに4月7日からは超長期国債先物の取引が再開される。超長期国債先物取引は2002年の12月限月以降は新たな限月取引を休止していた。再開される超長期国債先物については、標準物のクーポンは6%(長期も6%)、取引単位1億円(同1億円)、呼び値の刻みは100円につき5銭(同1銭)、即時約定可能値幅は30銭(同10銭)、受け渡し適格銘柄は残存18年以上21年未満の20年利付国債(同残存7年以上11年未満の10年利付国債)となっている。値幅制限に関しては9.0円(同3.0円)となっている。

 国債発行についても4月から一部の年限の国債の発行額が変わる。2年国債は毎月2.9兆円の発行額が2.7兆円に減額される。5年国債は毎月2.7兆円、10年国債も毎月2.4兆円、20年国債も毎月1.2兆円とこれらは毎月の発行額に変更はない。30年債は5千億円が4回、6千億円が8回から、6千億円が4回、7千億円が8回に変更される。5月・8月・11月・2月に6千億円、その他の月に7千億円の発行を予定している。40年債は3千億円4回と前年度と同じ。

 10年物価連動国債は今年度は3千億円で2回発行されたが、来年度は4千億円の4回発行が予定されている。流動性供給入札については、今年度の毎月6千億円の発行から来年度は毎月7千億円の発行となる。

 この流動性供給入札については、これまで国債市場特別参加者の指定基準のなかでの応札義務が課せられていなかったが、4月1日以降は他の国債入札と同様に、発行予定額の3%以上の応札義務が課せられる。ただし、落札義務はこれまで同様に課せられない。流動性供給入札は国債市場の流動性の維持および向上等を目的として実施するものであり、財政上の理由から発行しなければならないものではない。この意味で落札義務までは必要はないとされたものと思われる。

 10年国債の発行条件については、昨年7月以降、新発債の表面利率と入札日の市場実勢利回りの乖離が概ね15bpである場合にはリオープン発行とし、1月以降はこれを20bpに拡大してリオープン発行としてきたが、今年4月及び5月の10年債のリオープン方式については、現行の方式を継続するとしている。

 4月以降で国債市場に関わる変化点をピックアップしてみたが、特に大きな変更点があるわけではなく、市場への影響もほとんどないものと思われる。ただし、日銀の大規模な国債買入が依然として日本の債券市場に影響を及ぼしていることに変わりはなく、国債の発行や先物を含めての市場の変化よりも、日銀の今後の動向のほうが影響力は大きいように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-03-31 08:07 | Comments(0)

債券先物は世界のデリバティブ発祥の地に引っ越し

 2014年3月24日より、大阪証券取引所と東京証券取引所のデリバティブ市場が統合され、これまで両取引所で取引されていた商品は大阪取引所(デリバティブ市場統合日より、大阪証券取引所は「大阪取引所」へ社名を変更)で取引されることになる。つまり、東証と大証のデリバティブ売買システムが大阪取引所のシステムであるJ-GATEに一本化される。(以上、大阪取引所のサイトを参照)

 債券先物取引と呼ばれる長期国債先物取引は、1985年に日本で最初に上昇された金融先物取引であるが、こちらもTOPIX先物などと一緒に24日から大阪取引所で取引される。ただし、債券先物取引はすでに電子取引となっており、東証の立会場から大証の立会場に取引する人が移るといったことではなく、処理するコンピュータが東証のものから大証に切り替わることになる。

 デリバティブ市場の統合で何か社会に影響があるのかといえば、たぶんない。債券先物でいえば、先物の端末を操作している現場の担当者やシステムの関係者などは忙しかったと思うが、過去の債券先物のシステム変更に近いものであったのではないかと推測される。つまり、取引する人にとっても特に大きな変更ではない。

 ちなみに変更点としては、夜間取引の取引終了時刻が翌3:00に統一されたり、板寄せの際のマッチング・ルールがあったり、即時約定可能値幅(DCB値幅)制度があったりするが、このあたりはかなり専門的となるので、ご興味のある方は大阪取引所のサイトの「デリバティブ市場統合、商号変更及び新商品関連情報」に説明があるので参照してほしい。

 デリバティブ市場が大阪取引所に統合されることについては、債券先物にほぼ上場当初から関わってきた私にとっては個人的に寂しい気もするが、歴史的に見て実は大阪こそが世界のデリバティブ取引の発祥の地でもあり、ある意味ふさわしいものと言える。

 現在のかたちでのデリバティブ、つまり金融派生商品が登場したのは、米国のシカゴにおいてである。米国では19世紀に中西部の開拓が進み、穀物の取引が盛んになる。ミシガン湖畔で海上交通上の主要地であったシカゴに穀物は集められ、この穀の季節的な価格変動リスクを避けるために、収穫前に値段を決め収穫時に現物を受け渡すといった取引が盛んになる。1848年に世界初の先物取引所といわれるシカゴ商品取引所(CBT)が設立され、ここではまず穀物に対する先物取引が行われ始められた。この先物取引のモデルとされたのが、大坂堂島の米の先物取引なのである。

 江戸時代の大坂には諸藩が設けた蔵屋敷に年貢米が送られる。米の売却は蔵屋敷での競争入札で行う。落札した業者は代金の一分を支払い、蔵屋敷発行の米切手(米手形)を受け取り、一定期日以内に米切手と残銀を持参して蔵屋敷から米を受け取る仕組みとなっていた。この取引が時代とともに少しずつ変わり、米切手が転売されていくようになり、米切手そのものが米現物の需給に関係なく売買の対象となっていった。

 江戸時代の堂島米市場では着地取引として米の廻着を待たずに米切手が先売りされるようになる。米切手の保有している商人は米の価格変動リスクにさらされることとなり、この米価の価格変動リスクのヘッジを目的として「売買つなぎ商い」という先物取引が考案された。この「つなぎ商い」が1730年に徳川幕府により公認され、堂島米会所が成立したのである。

 すでに金融取引のデリバティブの隆盛時代は過ぎ去ってしまったかもしれないが、現在の金融取引にはなくてはならないものとなっている。そのデリバティブの聖地がシカゴであるとするならば、デリバティブの発祥の地は大阪であるともいえる。その大阪で24日から日本初の金融デリバティブ商品である債券先物も取引されることになるのは、ある意味感慨深いものがある。

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by nihonkokusai | 2014-03-25 10:02 | Comments(0)

債券先物が13日に一時急落した理由

 3月13日の10時10分過ぎに、東証(24日から大証)に上場している長期国債先物(債券先物)の6月限が一時急落し、前日比1円安の143円75銭まで下落した。債券市場をウォッチしている人でなければ1円安といってもピンとこないかもしれないが、日経平均がいきなり1000円下がったイメージである。

 その売りのタイミングからみて、10時10分の日銀による日銀の国債買入が原因とみられる。日銀が13日に実施した長期国債買い入れオペののうち、残存期間10年超の国債買い入れ額は1700億円となった。2月26日実施分から従来の2000億円から1800億円に減額され、今回はさらに100億円減額となったのである。

 2月26日に2000億円から1800億円に減額された際にも債券先物は売られたものの、前日比では17銭安までであり、このときは日経平均がマイナスからプラスに転じたこともあって、オペの減額だけで売られたわけではなかった。不意を食らった面はあったが、この程度の減額はある程度想定されていたこともあり、タイミングはさておきサプライズとなるようなものではなかった。

 日銀は昨年4月に量的・質的緩和策を導入し、金融政策のターゲットをマネタリーベースに変更し、年間約60~70兆円に相当するペースで増加させるとしている。そのための資産の買入れについては、長期国債は保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加し、平均残存期間が7年程度となるよう買入れを行うとしている。 これにより当初の毎月の長期国債のグロスの予定買入れ額は7兆円としていた。

 ところが日銀保有の国債の残存期間も延びてきており、国債の保有残高と残存年数の目標を維持するとなれば、毎月償還されるものが相対的に少なくなることで毎月の買入額は縮小するなどの調整の必要が出てくる。

 FRBの量的緩和政策は債券の残存ではなく、毎月の購入額がターゲットとなっている。このため、この購入額を減らす政策(テーパリング)が現在取られている。日銀とFRBはやっていることは国債を主体とする債券の大規模買入だが、ターゲットの違いがあり、日銀が毎月の国債購入額を減少させてもテーパリングということではなく、あくまで目標に対しての残高と平均残存期間の微調整に過ぎない。

 このあたりのことは債券市場関係者は熟知していると思われ、昨日の100億円程度の減額で動揺を見せることは考えづらい。このため、昨日の債券先物の売りは、日銀の買入減額をみて、短期的な仕掛売りを入れたが、板が薄く思いのほか一気に下げてしまった可能性などが考えられる。ただし、現在のシステム上では成り行きでも20銭しか下げない。20銭下げてからまた売りを入れる必要があることを考えると、その売りに乗っかったか、ここにきて相場が膠着状態となっていたことで、ある程度の値幅の動きでストップロス、つまり自動的にロスカットしなければいけない投資家の売りが継続して入った可能性がある。

 このあたり現物債と比較すればわかるが、債券先物は1円下げても10年債の利回りは0.02%程度しか上昇していない(債券の利回りと価格は反対に動く)。10年債は価格に引き直すと20銭程度の下げである。これをみても先物だけが何かしらの要因で急落したとみるのが普通であろう。先物の下落をみて現物も少し連れ安した程度となっていた。

 昨日の動きに対し、日本取引所の高橋直也広報課長は、「特にシステム面や取引面では問題はないようだ。通常の取引。誤発注という報告は来ていない」と説明したそうである(ブルームバーグ)。たしかに現在は誤発注を防ぐような仕組みにもなっており、当初売った(仕掛けた?)発注者が数量を少し間違えた可能性は残るが、その後の売りは久しぶりに動いたことで乗っかった売りやストップロスによるものではなかろうか。

 現物債などの動きを冷静にみていれば、売った向きもおかしいと感じたはずで、1円安をつけたところでショートした参加者が今度は買い戻しに一斉に走ったとみられる。しかし、元にまで戻らなかったのは、システムの売りなどテクニカルによるものの売りが残った為ではないかと思われる。

 いずれにしても6月10日に中心限月が3月限から6月限に変わり、動かなかった3月限とは違い少しは動きがでるかと6月限には期待した。10日と11日の前後場の値幅はそれぞれ10銭と11銭となり、6月限よおまえもか、と思ったが昨日の動きでどうやら6月限は動いてくれそうな気配が出てきた。やはり相場は動いてくれないと相場らしくないし、市場は低迷してしまうばかりである。

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by nihonkokusai | 2014-03-15 13:33 | Comments(0)

アベノミクスこれくしょん

 「艦隊これくしょん」というゲームをご存じであろうか。一部のゲーム好きの間で評判になり、すでにユーザー数が150万人を突破した。このゲームは2400万のダウンロードを記録したバズドラのようなスマホのゲームではない。Windowsなどのパソコン上で遊ぶゲームである。ただし、現在ではユーザー希望者が殺到しているため、ゲームの登録に制限が掛けられている状況にある。また、関連書籍やグッズなどの売れ行きも好調であり、密かなブームになりつつある。

 私もあまりの評判の良さに、登録をしてゲームをしてみたのだが、非常に良くできている。「艦これ」は、第二次世界大戦期の旧日本海軍の艦艇を題材にしたゲームで、プレーヤーは提督となり、艦艇を美少女に擬人化した艦娘を集め(コレクション)、それを強化しながら謎の敵と戦う。船は母船という言葉もあるように女性に例えられる。それを旧日本海軍の各艦艇毎に擬人化したのである。イラストやボイスは現在のアニメの要素が強く含まれ、我々の年代とはほど遠いものと思われるかもしれないが、実はこのゲーム、年配者のほうがハマる要素が存在する。

 我々の年代、40代から60代あたりの男性の多くは子供の頃に戦艦大和などのプラモデルを作ったと思う。私もそのひとりであった。戦艦武蔵や戦艦長門、空母赤城などは当然のように知っているはずである。それらが戦史に基づいて、ある程度忠実に表現されているのがゲーム「艦これ」なのである。戦艦や空母だけでなく、むしろ駆逐艦や巡洋艦などもそれぞれ一隻ごとに歴史を持っている。「艦これ」で有名なのは大和や武蔵などよりも雪風や島風、五十鈴や大井、北上といった艦船なのだが、ある程度、太平洋戦争の戦史に詳しい人であればピンとくると思う。昔の昭和の男の子だった人も興味をそそられるゲームと言える。

 このようなゲームが流行っていることは、日本の右翼化の現れといった見方も出てくるかもしれない。安倍政権も日中との領土問題から首相の靖国参拝が国際問題化しつつあり、どうも危ない方向に向かっているのではないか。艦これブームもその影響なのではないかと思われてしまうかもしれない。このようなゲームが流行る世相となっているといえば、実はそうなのかもしれない。

 それを象徴するような出来事が発生した。米紙ウォールストリート・ジャーナルは2月19日付の電子版で、安倍晋三首相の経済ブレーン・本田悦朗内閣官房参与のインタビューを掲載した。そのなかで本田氏は「日本の首相が靖国参拝を避けている限り、国際社会での日本の立場は非常に弱い」として、「われわれは重荷を背負った日本を見たくはない。自立した国としての日本を見たい」と語ったという。

 また同紙は「本田氏はアベノミクスの背後にナショナリスト的な目標があることを隠そうとしない。日本が力強い経済を必要としているのは、賃金上昇と生活向上のほかに、より強力な軍隊を持って中国に対峙できるようにするためだと語った」とも伝えた(以上、朝日新聞の報道より)。

 これに対して本田悦朗内閣官房参与は菅義偉官房長官に「記事を読んで驚いている。発言の趣旨を違えて報じている」と連絡したそうである。ただし、「私の見解ではなく、靖国神社とはそういうものだということをオフレコでざっくばらんに説明しようと思った」とも述べたそうで、個人的な意見として報じられた内容に近い発言をしていた可能性がある。

 本田参与はリフレ政策を掲げてアベノミクスを主導した張本人の一人であるが、そこからこのような発言がもし出ていたとなれば、非常に危険なことのように思われる。アベノミクスのリフレ政策のモデルとなっていたのは高橋是清による高橋財政である。そこで用いた日銀による国債引受は、財政出動を可能とするための政策であったが、軍事拡張のための財政拡大のための打ち出の小槌として使われることになってしまう。現在、日銀がデフレ脱却のためとして国債を大量に購入しているのは、軍備拡張のためであったということになってしまうのか。

 もちろんそういう意図はなかったのかもしれない。しかし、本田参与を筆頭にいわゆるリフレ派と呼ばれる人達は日銀による国債買入(引受も含む)を財政拡大とセットとして主張している。何故、巨額の国債を日銀が買い入れる必要があったり、財政を拡大する必要があるのか。本田参与からの発言とされるものからは非常に危険な臭いがする。アベノミクスはいずれコレクション(訂正)され、それが軍備拡張に使われることになってしまうのか。そんなことはあり得ないと思うが、そのリスクはゼロではない。

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by nihonkokusai | 2014-02-24 09:47 | Comments(0)

トルコが利上げして日本株が買われた理由

 2014年1月29日、日本時間の朝7時にトルコ中央銀行は臨時会合の結果を発表した。主要政策金利となる1週間物レポ金利を4.5%から10%に引き上げ、翌日物貸出金利は7.75%から12%に、翌日物借入金利は3.5%から8%に引き上げられた。これを受けて29日の東京株式市場は寄り付きから大きく上昇し、東京株式市場はほぼ全面高となった。

 このコメントを見て違和感を覚えることがない人は、金融市場に関わっている人がそれに関心を持っている人であろうか。ここにきての金融市場を取り巻く情勢に関する情報が入っていなければ、何故、トルコの中央銀行が利上げして、日本株が買われるのか、その理由について皆目見当が付かないのではなかろうか。

 かなり昔の話ではあるが、米国のミシシッピー川の水位が低下しているというだけで、日本国債が売られたことがあった。この理由について想像が付くであろうか。当時の日本の債券市場は米国債の動向と非常に連動性が高かった。その米国債はインフレに敏感になっており、インフレを示す代表的な指標としてCRBという指標が注目されていた。そのCRBインデックスは穀物相場に比重が大きくかけられていた。穀物相場は天候等に左右されやすい。アメリカの穀倉地帯はミシシッピー沿岸であり、そのミシシッピー川の水位が低下しているということは、雨が降らずに水不足ということを意味している。そのために穀物の収穫量が落ちる、そしてCRBインデックスが上昇し、米国債が売られ、日本の債券も売られるといった、まさに風が吹けば桶屋が儲かる的な発想だったのである。

 このような背景を理解できないと、今回のトルコの利上げによる日本株上昇の理由がわからなくなる。先週23日に発表された1月の中国製造業PMI速報値が前月から低下したことをきっかけに、東京市場で円高株安が進んだ。昨年末あたりまで欧州の信用不安の後退をひとつのきっかけとしての欧米の景気回復やFRBのテーパリング開始の決定などに市場参加者の目が向いていた。しかし、今年に入り市場はあらたな材料を模索するようになり、そこで目をつけられたのが新興国の動向となった。テーパリング開始で新興国からの資金が引き揚げられるとの連想も働き、財政に問題を抱えるアルゼンチン、政情不安などの問題を抱えるトルコが狙われ、さらに中国のシャドーバンキングの問題も浮上した。これらを受けてリスクオフの動きが仕掛けられた。外為市場では円やスイスフランが買われ、日米欧の株式市場は大幅に下落、米債やドイツの国債などは買われたが、ギリシャやスペインなどの国債は売られた。

 このリスクオフの動きを加速させたものとして、トルコ中央銀行の動向が材料視された。トルコは政府の汚職スキャンダルなどもあり、政情不安が市場に不安を与えるなか、トルコ・リアが急落。トルコ中央銀行は23日に為替市場で2年ぶりの直接介入を実施したものの下げ止まらず、むしろトルコ中央銀行の先週の会合での金利据え置き決定がひとつの要因となり、27日の外為市場でトルコ・リラは最安値を更新した。その後、トルコ中央銀行が緊急の金融政策決定会合を28日に開催すると発表し、この発表を受けて利上げ観測が強まり、リラは急反発した。

 そのトルコ中銀の利上げが発表されたのが、29日の朝7時となり、利上げ幅は市場の予想を大きく超えており、大胆な異次元利上げとなった。これを受けて、すでに買い戻されていたトルコ・リラがさらに上昇し、リスクオフのムードが一変し、円やスイスフランは下落し、すでに米国株式市場も反発していたことも手伝い、29日の東京株式市場は買いが先行して始まったというわけである。

 市場の動きを理解するためには、このようにそれまでの流れを掴んでおくことが重要であるとともに、市場参加者は何に注目しているのか、その感応度も意識しておかないと、このような動きは理解できなくなる。だからマーケットは面白い。

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by nihonkokusai | 2014-01-30 09:50 | Comments(0)

ルー財務長官の円安牽制発言は要注意

 アメリカのケネディ駐日大使が、和歌山県太地町で行われているイルカの追い込み漁について「非人道性を深く懸念している」として反対する立場を表明し、ツイッター上で大騒ぎになっていたようだが、16日のルー米財務長官の発言も要注意である。

 米国のルー財務長官は16日の講演において、日本経済に関し「為替に過度に依存すれば長期的な成長はない」とし、日本の為替政策を「注視し続ける」と述べた。

 ドル円の動きを確認してみると、アベノミクスが登場前の2012年10月あたりまでは、80円割れとなっていたが、そこから急速に円高調整が入り、2013年5月に103円台をつけたあと、いったんドル売りが入りドル円は6月に95円を割り込む。その後は三角持ち合いとなり、それが頂点に達した昨年11月あたりから再び円安の動きを強め、2014年に入り年初に105円台に乗せた。しかし、次第にドルの上値が重くなり、1月20日に104円を割り込んでいる。

 16日のルー財務長官の円安牽制は唐突のように受け取られたようではあるが、急に米国政府の意向が変化したわけではない。

 昨年2月のG7の共同声明を巡る解釈を巡り、明らかに日本政府からの為替に関する発言に変化が生じていたことに注目したい。このときのG7には、ルー次期財務長官は議会での承認を待っている段階であり、代わりにブレイナード財務次官が出席していた。ブレイナード氏は次期FRB理事の指名を受けている。

 この際に、匿名のG7関係筋が「G7声明は誤って解釈された。同声明は、円の過度な動きに対する懸念を示すものだった。G7は円の一方的なガイダンスを懸念している。」としていたが、この匿名のG7関係筋はブレイナード財務次官ではないかとみられている。

 本来であれば、財務長官が出席すべきG7であったが、ルー氏が財務長官として出席できない状況にあり、その意向がブレイナード財務次官に伝えられていた可能性もありうる。そもそもブレイナード氏個人の意見が出されたことも考えづらい。ブレイナード財務次官はこの際に「為替相場は市場が決めるというのは先進国間のルールだ」と述べていたが、これは明らかに日本政府への牽制と言えた。

 先日のルー財務長官の発言は、ある意味、公式に日本に対して円安政策に釘を刺した格好となる。12月のFOMCでテーパリングが決定されたが、日銀には追加緩和期待すら出ている。このため、金融政策の観点から見れば円売りドル買いの動きが強まりやすい。だからこそ、今年始めにドル円は105円台まで上昇したといえる。

 日本政府は昨年のG7以降、為替に関する発言にはかなり慎重になっており、ルー財務長官に釘を刺されるような日本政府関係者からの発言等はほとんどみられない。しかし、ここにきての日本の景気回復や物価の上昇には円安による影響がかなり大きいことも確かである。安倍首相は「景気回復を全国に届ける」と述べるなど、デフレ脱却に向けた姿勢をあらためて見せたが、それには円安以外に効果的な政策が現状は見当たらない。そのあたりも意識されてのルー財務長官による発言であったようにも思われる。

 16日のルー財務長官の円安牽制発言はすぐには影響を与えなかったものの、これをきっかけにいったん円安のトレンドが変わる可能性がある。まもなくFRBもトップが入れ替わる。為替市場ではこのFRBと日銀の金融政策を重視していることもあり、今後のドル円の動きは要注目となりそうである。

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by nihonkokusai | 2014-01-21 09:41 | Comments(0)

2014年の債券市場のテーマは需給からファンダメンタルズに

 新年あけましておめでとうございます。2014年最初のコラムは今年の債券相場を占ってみたいと思います。

 2013年の日本の長期金利は結果からみれば、1%以下で推移していたこともあり、低位安定と言えるでしょう。しかし、実際にはかなり波乱含みの展開となっていました。その大きな要因となったのが、4月の日銀による量的・質的金融緩和でした。これが債券市場の需給バランスを崩すことになり、債券市場での流動性を歪めることになりました。日本の長期金利は4月5日に一日で0.315%から0.620%まで上昇し、債券先物はサーキット・ブレーカーの発動が多発しました。5月にはFRBのテーパリングが意識されて、日本の長期金利は23日に1%まで上昇しましたが、そこが2013年の長期金利の最高値となったのです。

 5月に1%をつけた日本の長期金利はその後低下傾向となり、11月には0.6%割れとなりました。その間の東京株式市場や外為市場での円の動きについては、ほぼ横ばいで推移しており、米国やドイツの長期金利はじりじりと上昇していました。この間の日本のCPIは上昇傾向にあり、国内景気も回復しつつあったのは日銀短観などからも確認できます。

 5月から11月にかけての日本の長期金利の低下には、日銀による大量の国債購入による需給への影響が大きかったと思われます。ただし、需給以外の要因を全く無視できないことは、昨年11月以降の日本の長期金利の反転にも現れています。

 10月にあった米国の一部政府機関による景気への影響は限定的となり、むしろ米国の雇用などは思った以上に回復し、FRBのテーパリング開始が現実味を帯びてきました。テーパリングによる資産価格等への悪影響よりも、テーパリングが可能になるだけの世界的なリスクの後退と、世界経済の回復が意識されたと言えます。

 東京株式市場も11月あたりから上昇基調となり、その背景には日米の金融政策の温度差を意識した円安も影響しました。12月のFOMCでテーパリング開始が決定され、米国の長期金利は3%台に乗せました。ただし、極端な金利上昇というわけではなく、比較的緩やかな上昇となりました。

 このような環境下で2014年を迎えたわけですが、今年の日本の長期金利の動向を占う上で注目すべき大きなポイントは、やはり中央銀行の金融政策となりそうです。4月からの消費増税実施による景気と物価への影響。それを睨んで日銀の量的緩和を中心とした政策にどのような変化が起きるのか。それに対して米国FRBのテーパリングのピッチ次第では、為替市場にも微妙な影響を与えることが予想されます。

 現在の環境を見る限り、日本の長期金利が低下する要因よりも上昇する要因のほうが多いように見えます。2013年は日銀の異次元緩和もあり、国債需給が大きなテーマとなり、それが日本の長期金利の抑制要因となりました。

 しかし、2013年4月と同様な大胆な国債買入を主体とする追加緩和策は今後はかなり困難となるでしょう。やりすぎると日銀は財政ファイナンスを行っているとの認識が広まりかねません。黒田日銀の追加緩和策は、見かけ上は量より質を重視したものとならざるを得ないと思われ、その結果、市場への心理的な効果はあっても一時的なものとなると予想されます。

 2014年の債券市場のテーマは、国債需給からファンダメンタルズに移行してくるのではないかと見ています。いまのところコアCPIの1%台乗せも完全に無視された格好となっており、米国やドイツ、英国の長期金利上昇に比べて日本の長期金利の戻りもさほど大きくありません。しかし、2012年まで吹き荒れていた世界的なリスクはすでに後退しており、世界的なリスク後の世界を意識する必要があります。そのなかにあり、脱リスクではなく脱デフレを旗印に抱えた日銀が異次元の緩和策を実施していることが、むしろ日本のリスクを高めることが予想されます。

 2014年の日本の長期金利がそのようなリスクを意識し始めると、かなりの変動を起こす可能性があります。市場は需給だけで動いているわけではありません。そのあたりも今年の相場を占う上では意識する必要があります。日本の長期金利がもし1%を超えることがあると、あらたな展開を迎える可能性が出てくると予想されます。

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by nihonkokusai | 2014-01-07 09:44 | Comments(0)
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