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ドイツのメルケル首相がECBの緩和策を遠回しに批判

ドイツのメルケル首相は22日、ベルリンの学校で開かれたイベントで学生たちに「ユーロは弱過ぎる。これは欧州中央銀行(ECB)の政策が理由だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている。従って、ドイツ製品はよく売れている」と語ったそうである(ブルームバーグ)。

また原油安も輸入価格の低下を通じてドイツ貿易黒字の一因になっているとして、原油価格が今の1.5倍ならドイツの輸入額は増えると指摘。「ではどうしたらよいのか。我々にできるのは国内で投資を増やすことだ」と語った。

中央銀行の金融緩和によって通貨安にし、通貨安によって国内製品の輸出を促進させて国内景気を回復させ、ついでに物価も上昇させるというのは、我が国ではアベノミクスと呼ばれている。ところが今回のメルケル首相の発言はメルケルミクスを意識した発言などではない。

むしろドイツの貿易黒字の拡大が米国などから批判されており、そのドイツの貿易黒字問題についてメルケル首相はユーロ相場と原油価格の2つが押し上げ要因となっており、これらはいずれも政府の管轄外だとも指摘したのである。

今週開催される主要7か国首脳会議(G7)で、米国政府がドイツの貿易黒字問題について一段の対処を求めることが予想され、それに対して予防線を張ったとも言えよう。また、こういった批判の矛先をECBに向けさせようとしているようにも見受けられる。今回のメルケル発言を受けて、市場ではドイツが欧州中央銀行(ECB)に対し緩和解除への圧力を強めるのではないかとの観測も広がっていた。

そもそもドイツ関係者はECBの緩和政策に対して批判的な見方をしてきた。ドイツの中央銀行(ブンデスバンク)は過去の教訓から金融緩和による国債買入等に対して反対の立場を取ってきた。それは下記のような歴史の教訓によるものである。

第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツはハイパーインフレに見舞われ、ライヒスバンクの後継者であるブンデスバンク(連邦銀行)は、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債買入に対して警戒感というか嫌悪感を強めることになる。


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by nihonkokusai | 2017-05-24 09:26 | Comments(0)

4月に地銀などが米国債やフランスの国債を過去最大規模で売り越しか

5月11日に公表された4月の対外対内証券投資売買契約の状況によると、居住者による対外債券(中長期債)投資は4兆2559億円の処分超となり、月次の売り越し額としては過去最大規模となったようである。

「4月の対外対内証券投資売買契約の状況」財務省

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/itn_transactions_in_securities/month.pdf

11日の発表には国別の状況は記載されておらず、これは6月に公表される国際収支の付表で確認するほかない。

国際収支の付表がアップされるサイト

http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

上記のサイトでは3月の数字まで確認できるが、対外証券投資(中長期債)に関しては、昨年11月までは全体での買い越しが続いていたのが、12月に2兆1136億円の売り越しとなり、今年1月も1兆2593億円の売り越し、2月が2兆1164億円の売り越しと大量の売り越しが続いていた。3月は3727億円の売り越しとなり、売り越し額は減少していた。

昨年12月からの売り越しの内訳を「主要国・地域ソブリン債への対外証券投資」で確認してみると12月は米債を2兆3894億円、フランスの債券を1483億円売り越していた。1月は米債を1兆6298億円、フランス国債を1894億円売り越し、2月は米債を1326億円、フランス国債を1兆5180億円売り越し。3月は米債は1兆398億円の買い越しとなっていたが、フランス国債を9428億円売り越していた。

フランスの10年債利回りの推移をみると、昨年11月の米大統領選挙を受けての米10年債利回りと連動するかのようにフランスの10年債利回りも上昇してきた。米大統領選挙前に0.5%割れとなっていたフランスの10年債利回りは、今年1月末に1%台に乗せてきた。米10年債利回りが12月のFOMCでの利上げ決定を受けていったんピークアウトしていたにもかかわらず、フランスの10年債利回りは3月半ばあたりまで上昇を続けた。この背景にあったのは今年4月、5月のフランス大統領選挙に向けた思惑であった。

国内投資家による12月以降の米国債の売却の要因のひとつとしては、米大統領選挙の結果を受けたトランプ政権の経済政策への思惑やFRBによる昨年12月と今年の3月の利上げにみられる正常化を睨んだものであったとみられる。

またフランス国債についてはフランスの大統領選挙を睨んだものであったとみられ、4月と5月の大統領選挙を前にして、4月もフランス国債を大量に売り越していた可能性はある。また売り越し規模からみても米国債も大量に売り越していた可能性がある。

さらに別の要因が影響していた可能性がある。5月16日の日経新聞の記事によると、昨年12月以降のフランス国債の売却は地銀などの売りではないかとの指摘があった。地銀などは日銀のマイナス金利政策の影響で日本国債などでは運用益が稼げず、外債投資を活発化させていた。しかし、上記のような米国債やフランス国債の利回りの上昇などもあり、金融庁が外債運用を拡大させている一部の地域金融機関を対象に米国債などの価格下落が経営に与える影響などの立ち入り検査を実施することになったと3月に報じられた。このため特に4月に地銀などが保有する米国債やフランス国債のポジションを大きく削減させていた可能性がある。いずれにしても来月発表される国際収支の付表にて確認してみたい。


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by nihonkokusai | 2017-05-16 09:41 | Comments(0)

個人向け国債の発行額が9年ぶりの高い水準となった理由

財務省は6日に3月15日発行分の個人向け国債の応募額を発表した。3月の個人向け国債の発行予定額は9315億円となり、2月の5727億円から大きく増加した。

3月発行分がわかったことで、2016年度の個人向け国債の発行予定額が算出できる。2016年度の個人向け国債の発行予定額は3種類合計で4兆5556億円となり、2015年の2兆1367億円から倍増し、2007年度の4兆6617億円以来、9年ぶりの高い水準となった。

2008年度以降、低迷し続けていた個人向け国債の発行額が何故、2016年度は大きく増加したのか。個人向け国債の発行額が低迷していた最大の理由が利率の低さにあった。利率の低い状態は2016年度も続いたが、日銀が2016年1月にマイナス金利政策を導入したあたりから状況が変わってきた。

さすがに預貯金金利はマイナスになることはなかったものの0.01%程度に低下したままとなっていた。周りの金利が下がったことで、個人向け国債の最低保証金利の0.05%が相対的に魅力的なものとなったのである。これが個人向け国債発行額増加の最大の理由となろう。

さらに今年3月の発行分の募集は2月であり、ボーナス月でもなんでもないときに大きく増加した理由については、販売する金融機関の事情もあったようである。

個人向け国債は金融機関を通じて販売される。米国では米財務省から直接購入できるが、日本では日銀に個人が口座を持てない等の理由もあって財務省ダイレクトといったものはない。このため証券会社やゆうちょ銀行を含む銀行などが販売している。その際に販売額に応じて、財務省は金融機関に募集発行事務取扱手数料を支払っている。それが2017年4月発行分(3月募集分)から下記のように引き下げられる。

固定3年額面100円あたり40銭が20銭に

固定5年額面100円あたり50銭が30銭に

変動10年額面100円あたり50銭が40銭に

このため金融機関は、個人向け国債が人気化しているタイミングで、しかも手数料が高いうちに積極的に大量に販売しようと、現金を贈呈するといったキャンペーンを強化したものとみられる(キャンペーンの原資は上記手数料となる)。

個人向け国債の販売額の増加は一時的なものとなるのか。それはこの手数料よりも、金利の動向にかかっていると思われる。日銀による長短金利付き量的・質的緩和政策を受け、特に10年変動タイプに影響する10年債利回りは当面、ゼロ%近辺に押さえ込まれることになる。預貯金金利も0.01%近辺のまま推移するとなれば、個人向け国債の最低保障利回りの0.05%の見直し等がない限りは、相対的な優位さは継続する。

しかし、本当に日銀は長短金利を現在の水準のまま、いつまでも押さえ込めるのかという疑問もある。米国はまもなく追加利上げを決定するとみられ、日本の物価もプラスに転じている。金利を取り巻く環境が変わると金利が動き出し、個人向け国債の優位性が薄れる可能性もないとは言えない。それでも安全性が高く、1年という売却できない期間はあれど元本が保証されるなど、個人向け国債は魅力的な金融商品であることに代わりはない。


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by nihonkokusai | 2017-03-09 10:08 | Comments(0)

利上げに前向きなイエレン議長

 FRBのイエレン議長は14日、米上院銀行委員会で証言し、「追加利上げの条件は、雇用と物価が想定通りに改善するかどうかだが、今後数回の会合で判断するつもりだ」と主張した。緩和措置の解除を待ち過ぎることは賢明ではないとも指摘。利上げするに当たってトランプ政権による財政刺激策の計画を待つ必要はないと指摘した。


 FOMCの今後のスケジュールは下記の通り。
3月14、15日(イエレン議長の会見有り)、5月2、3日(議長会見なし)
6月13、14日(イエレン議長の会見有り)、7月25、26日(議長会見なし)
9月19、20日(イエレン議長の会見有り)、10月31日、11月1日(議長会見なし)
12月12、13日(イエレン議長の会見有り)


 FRBは毎年3、6、9、12月にFOMCメンバーによる米国経済と政策金利の見通しを公表しており、政策金利の見通しは「ドット・チャート」と呼ばれている。これは今後の政策金利の予定を示すものではなく、あくまでFOMCメンバーの予想の集合体にすぎない。実際に2016年の利上げは年4回とドット・チャートで予想されていたが、現実には12月の1回だけであった。


 2017年のドット・チャートでの予想は年3回となっているが、これでFRBが3回利上げをしてくる予定だということではない。現実の利上げはかなり慎重に行ってくることが予想され、市場を取り巻く環境など次第の面がある。昨年は年末まで利上げを見送ったのは、年初からの新興国経済減速などによるリスクオフの動きや、英国のEU離脱などが影響していた。


 今年に関していえば、いまのところ利上げを躊躇させるようなリスク要因が表面化しているわけではない。トランプ政権の経済政策の行方が不透明材料ながら、これは景気や物価にはプラスに作用する可能性もあり、むしろFRBにとっては利上げを急ぐ要因ともなりかねない。また、15日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比で0.6%もの上昇となった。市場予想を上回り、2013年2月以来最大の伸び。1月の総合は前年比では2.5%上昇、コアCPIは前年比2.3%の上昇となっている。FRBの物価目標はCPIではないものの、物価が予想以上にしっかりしているとなれば、早期の利上げという可能性も排除はできない。


 しかし、それでも慎重姿勢に変わりはないとみられる。このため、多くても年2回程度の利上げを想定している可能性があるのではなかろうか。3月のFOMCでの利上げの可能性は排除していないようだが、市場の予想は3月よりも6月となっているようである。6月に追加利上げを行って様子を見た上で12月に再利上げの判断をするのではないかと、今回のイエレン議長の発言からは予想される。


 それでも今後、何が起きるのか予想することは難しい。オランダを皮切りにフランスやドイツの選挙次第では、ユーロというシステム崩壊の危機が訪れる可能性もある。ギリシャも引き続きリスク要因となる。中国やロシアの動きなども気になるところ。物価をみる上では原油価格の動向も注意する必要があろう。



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by nihonkokusai | 2017-02-16 09:18 | Comments(0)

日本初の鉄道と国債、あさの炭鉱との関わり

 江戸時代には江戸や大阪の商人から半ば強制的に御用金と呼ばれるものを徴収していていました。御用金とは幕府が慢性的な財源不足や臨時の支出を補填するために発令したもので、江戸や大阪の商人などから半ば強制的に金銀を徴収していたものです。利子付きであり、元金返済を前提としているので強制的な「公債」という性格を持っていました。その利子も年利2~3%という超低利であり、現在の国債と同様のものとなっていたのです。

 この御用金は1761年大坂の商人205名に対し170万両を命じたのが最初と言われます。当初は大坂や江戸の豪商に対して課せられたものでしたが、その後は堺、兵庫、西宮などの富裕町人、さらには一般町人や農村の富裕層にも命じられるようになりました。幕末に近づくほど頻繁に発令されたのです。特に1866年第2次幕長戦争の際には、大坂・兵庫・西宮の商人に700万両の御用金が指定されました。ただし、利子がしっかり支払われたのは最初の数年間のみで、幕末になるにつれ、利子はもちろん元金もほとんど償還されなくなっていったのです。あさの嫁ぎ先など、当時の大阪の両替商が苦労したのはこのようなことも要因にありました。

 明治政府も当初、財政確保のためしばしば御用金を課したのですが1869年に廃止され、国債制度に切り替えられていったのです。その国債が日本ではじめて発行されたのが1870年です。

 日本で最初に発行された国債は、鉄道敷設を目的とした九分利付外貨国債をロンドンにおいてポンド建てで発行されたものです。

 岩倉具視、大隈重信、伊藤博文などの明治政府の関係者は鉄道建設の必要性を提唱し、「日本人によって鉄道建設が可能である」としたイギリス駐日大使パークスの意見もあり、鉄道建設に向けての企画が進められました。

 しかし、国内で資金調達をしようとしても、明治政府は財政的基盤が固まっていなかったのです。金銀貨による幣制の統一を目指していたものの、貨幣素材の不足や造幣能力の不十分さもあって、金銀貨の鋳造すらなかなか進まなかったぐらいです。明治政府は資金の調達のために金銀貨に代わる支払手段として、政府紙幣や国立銀行券といった不換紙幣の発行に依存せざるを得ない状態となっていました。

 商人への借入といった手段も考えられたのですが、あさの家の状況を見てもおわかりのように、当時の商人たちにも余裕はありませんでした。そこでパークスの紹介もあり、来日していた英国人資産家ハラチオ・ネルソン・レイを通じた私的な借入の契約を結ぶことにしたのです。しかし、レイによる資金調達が困難となったことから、ヘンリー・シュローダー商会を通じた「公募債」として調達されることになりました。

 公債収入金の取り扱いについての日本政府の代理店としてオリエンタル銀行という銀行が指定され、ロンドン証券取引所で公募されることとなり、1870年4月23日に九分利付きで外債100万ポンドの日本国債が発行されました。これが日本初の国債発行であり、最初は外貨建てで発行されたのです。現在では日本国債の発行はすべて円貨建てとなっており、外貨建ての国債発行はされておりません。

 この国債発行で得た資金を元に、必要な技術に加え、機関車や客車、線路、枕木、燃料の石炭などをイギリスから輸入し、1872年9月に新橋と横浜の間に日本初の鉄道が開通しました。1874年5月には日本で2番目の鉄道である神戸と大阪間が開通しています。

 広岡浅子が石炭事業で頑張っていたのがこの時代となるのです。まさに時代の流れを読んでいたものといえるでしょう。また、鉱山王とも呼ばれた五代友厚は炭鉱ではなく金山や銀山の開発をしていました。こちらは明治政府が新貨幣の発行のために大量の金、銀を必要とすることを見越してのものと言えるでしょう。

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by nihonkokusai | 2015-12-03 10:09 | Comments(0)

日銀が国債を買えば物価が上がる仕組みに迫る

 昨日は日銀の国債買入に関わる日銀券の発行の仕組みについて解説したが、今回は日銀が国債を大量に買い入れるとなぜ物価が上がるのか、その謎に迫ってみたい。

 日銀の国債買入と日銀券の発行の仕組みについておさらいしたい。日銀が市中、すなわち銀行などから1兆円の国債を買う時に、日銀券を刷る輪転機は動かない。日銀のバランスシート上では日銀の資産として1兆円の国債が増加するが、反対側の負債も1兆円増加する。この場合は日銀にある民間銀行の当座預金に1兆円計上され、このままでは日銀券は発行されていない。民間銀行が日銀の当座預金から必要に応じて、自分の預金を引き出してはじめて日銀券は発行される。その日銀券も日銀のバランスシート上では負債として計上される。

 日銀が市場から大量に国債を買うということは、日銀のバランスシートの資産として国債が増加し、反対側の負債として主に民間銀行の当座預金がその分増加する。これによってどうやら物価が上がる・・・らしい。長期金利を含む金利の引き下げ効果は、すでにここまで金利が下がっているなかで限定的と思われるが、果たしてそれ以外にどのような効果が存在しているのか。

 日銀にある民間銀行の当座預金が増えると、どうして物価が上がるのか。ちなみに2001年から2006年のときの日銀の量的緩和時には、資産側には短い期間の国債など短期で運用される金融商品が大量に計上されていた。今回はここの期間が長めで量が多いだけの違いである。短いものを長くすると、より物価への期待が強まると言っている人もいるが、日銀のバランスシート上ではあまり意味をなさない。

 民間銀行側からみてみると、大事に抱えていた国債を日銀に売却してしまったことで、日銀の当座預金の残高が増える。昔ならば利子のつかない日銀の当座預金に置くよりも、少しでも運用益が出るようにほかの資産、たとえば外国債券や株式などに資金を振り向けるか、本業であるところの貸し出しに回す。ただし、貸し出しは借りてくれる人がいなければ増加できないという事情もある。民間銀行側の主な行動パターンとしては、他のリスク資産への移行が想定され、これがポートフォリオのリバランス効果となる・・・はずであった。ところがいまならば、日銀の当座預金の法定準備金を超える部分(超過準備)には0.1%という利子が、もれなく付いていくるのである。

 0.1%といっても、いまではたいへん貴重な利子である。日銀がせっせと国債を買ってくれるので国債の利回りは低下し、一時は5年国債の利回りもマイナスになっていた。5年国債など買うよりも日銀の当座預金に置くだけで、なんと0.1%の利子が付いてくるのである。ただし、日銀の当座預金に置くだけは運用にはならない、としている銀行もあるそうだが、それはさておき0.1%もつくならここに置いとくに限る。ノーリンク、そこそこリターン。

 0.1%という超過準備に付く利子は日銀の当座預金口座を持つ銀行への補助金ではないかとの議論もあるが、日銀としては当座預金に残してほしいという事情も存在する。なぜならば、日銀の現在の政策目標がこの当座預金残高を含めたマネタリーベースとなっているためである。

 それはさておき、本題に戻り、どうして日銀が国債を大量に買うと物価が上がるのか。ひとつはポートフォリオのリバランス効果があり、株高や円安要因となること。また、外為取引において、どういうわけか、どこの中央銀行が積極的に金融緩和をしているのかで、円やドル、ユーロなどの相対的な弱さを意識している面がある。つまり大胆な緩和という結果となる大量の国債買いを日銀が決めると、条件反射のように円を売ってくれる人が増えるとの期待もある。

 日銀のバランスシートが大きくなると予想物価が上昇すると言う人もいるようだが、予想物価の計り方も良くわからないところに、現実の物価と日銀のバランスシートの増減に相関関係は見当たらない。

 ただし、日銀が期間の長い国債を買うことで、財政ファイナンスをしているとアピールすると、物価と長期金利は一気に跳ね上がる期待、いやこの場合は懸念がある。まさかそれを期待しているわけではないと思うが、日銀が思い切った国債を買えば物価が上がるとのカラクリは日銀のバランスシート上からは、その理由はあまり見えてはこないのである。

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by nihonkokusai | 2015-03-04 09:42 | Comments(0)

日本でマイナス金利が発生した理由

 7月10日に3か月物の国庫短期証券(TDB)465回の入札が実施されたが、その入札前の取引(WI)において、マイナス0.002%の出合いがあった。日本でもマイナス金利が発生したのである。

 国庫短期証券とは、昔は短期国債(TB)や政府短期証券(FB)と呼ばれたもので、現在はこの2つが統合されて国庫短期証券として発行されている。期間は2か月程度、3か月程度、6か月程度、1年程度に分かれている。国庫短期証券は割引形式で発行され、法人のみ購入ができ個人は買うことはできない。

 WIとも呼ばれる入札前取引とは、まだ入札もされず発行もされていない債券を取引するものである。10日に入札される465回が入札前の日本相互証券での取引において100円00銭0厘5毛という値が出合ったのである。TDBは割引債なので通常は額面の100円を上回ることはない。しかし、今回その額面を上回り、日本でもマイナス金利が発生したことになる。

 ただし、日本でのマイナス金利の発生は今回が初めてではない。2001年から2006年まで続いた量的緩和の時代にマイナス金利は発生していた。このときは日本の銀行が海外から資金調達する際にジャパンプレミアムが付いていた。つまり為替スワップ市場において、一部の外銀がマイナスの金利(円転コスト)で円資金の調達が可能となっていたため、為替スワップ市場で調達した円資金を、無担保コール市場をはじめとする短期金融市場にマイナス金利で放出したケースがあった(日銀の「短期金融市場におけるマイナス金利取引」などに詳しい)。

 さらに国債市場では業者は保有している国債の償還手数料が得られることで、償還が迫った国債を償還手数料の範囲内で投資家から購入し、その結果、マイナス金利が発生することもあった。ちなみに今回のTDBのマイナス金利発生時の価格は100円00銭0厘5毛だが、この償還手数料は6毛あり、これを購入した業者は結果として1毛儲かるかたちにはなる。1億円購入して100円となるとコストに見合うかどうかはさておき、表面上は損失にはならない 。

 何故、日本でもこのようなマイナス金利が発生してしまったのか。ECBはすでに政策金利の下限部分をマイナスとしたことでマイナス金利が発生した。しかし、日銀は政策金利の下限ともなる超過準備の付利はプラス0.1%のままであり、マネタリーベースを増やすためには、ここをマイナスにするなどもっての外という状況にある。

 しかし、今回の日本でのマイナス金利の発生の予兆はすでにあった。7月4日に新発3か月物TDBがゼロ%で出合い、8日に新発6か月物TDBが入札結果発表後の流通市場でゼロ%で出合っていたのである。これを受けて10日の3か月物TDBの入札では、マイナス金利もありうるとの観測とも流れていた。そのあたりも意識して、マイナス金利を付けてしまったということであろうか。

 この3か月物TDBの入札の結果は100円とか100円を上回るようなことはなく、最低落札価格99円99銭2厘0毛、平均落札価格99円99銭5厘4毛となって、TDBとしてはテール(最低落札価格と平均落札価格の差)が流れ(広がることを流れると表現する)、このため入札後の取引ではプラス0.025%が出合った。マイナス金利は一時的な弾みで付いてしまった格好である。

 それでは何故、これほどまでに短期債への需要が強いのか。大きな背景としては日銀の量的・質的緩和による国債買入があるが、それとともにECBのマイナス金利を含めたパッケージの緩和策も加わり、溢れた資金が日本国債にも広がったためとの解釈も可能となる。

 10日に発表された6月29日~7月5日の対外及び対内証券売買契約等の状況によると、海外勢は対内短期債投資を1兆6688億円の買い越しとなっていた。国内の銀行による期末のバランスシート調整や担保要因等による可能性とともに、ECBのマイナス金利海外からの需要があり、そこにベーシススワップなどが絡んだ需要が入り込み、一時的にマイナス金利の発生となったとみられる。

 しかし、入札ではさすがに国内の投資家はマイナス金利では、保有目的としての説明が難しくなる。そのため海外需要はあっても国内需要は引いてしまったことで、昨日の3か月物TDB入札の結果となったものと思われる。ただし、日銀の巨額買入の存在により、状況次第ではゼロ金利やマイナス金利での出合いは今後も発生しうると思われる。

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by nihonkokusai | 2014-07-14 08:12 | Comments(0)

JTによる減税分の社員還元の意味

 復興特別法人税は2013年度末に廃止されたが、予定よりも1年早く廃止されたことで、日本たばこ産業(JT)は、減税分の約20億円を社員に還元すると発表した。減税分を社員に還元するということは、あまり聞いたことがない。

 JTでは約9000人の社員を対象に、1人20万円(新入社員は4万円)を5月中旬に渡すそうである。JTは「社員の士気向上とともに、社員の支出増につなげ、消費財メーカーとしてデフレ脱却の一助になれば」と説明している(読売新聞)。

 社員の士気向上はさておき、JTの動きは政府の意向が強く反映されていると思われる。復興特別法人税は前倒しで廃止されたが、復興特別所得税の廃止は、復興事業の実施を困難にするとの理由で継続されている。

 復興特別法人税の前倒しの廃止理由として、政府のとりまとめ案では、「企業がデフレマインドを脱却し、継続的な賃金引き上げに向けて第一歩を踏み出すためには、そのきっかけが重要であることにかんがみ、検討することとした」と明記されている(ロイター)。今回のJTの動きは、賃上げそのものではないものの、減税分を株主等ではなく一時金として社員に渡す。

 これが悪いというわけではないが、政府の付焼刃的な政策に、政府に関わりのある企業が付焼刃的な手段で答えたようにしか見えなくもない。社員に支給される20万円がどのように使われるかは、受け取った社員の意向次第ではあるが、これでどれだけデフレ脱却に効果的なのかはっきりしない。そのまま将来のリスクに備えて預金に回す人も多いであろう。

 政府は企業の賃上げなどについても口を挟んできているが、企業側からすれば余計なお世話ということではなかろうか。日本の潜在成長率が上がり、将来に向けてのビジョンが開けるのであれば、企業は物だけでなく人にも投資する。政府は裏方としてその環境作りをしなければならないはずが、通貨や国債の信用を脅かしかねないリフレ政策により、円安株高を演出したものの、結局、ほとんどそれだけであった。この裏返しとして日本国債に対する潜在的なリスクを上昇させた。

 欧州の信用リスクの後退が円安株高の背景にあり、欧米の景気も回復しつつあるが、このような好環境下にあっても日本はそこに完全には乗り切れていない。貿易収支の赤字拡大がそれを物語っている。円安要因を除いて、どれだけ環境が好転したといえるのであろうか。

 現在のデフレ脱却とのイメージは官により半ば強引にもたらされたものであり、民によるものとは言えない。今回のJTの社員にむけた20万円の支給もまさにそれを示しているのではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2014-04-24 09:21 | Comments(0)

米株変調の一因か、フラッシュ・ボーイズとHFT

 ここにきて米国株式市場の動きに変化が生じているように思われる。大きな流れが出てくる可能性もあり注意が必要になりそうである。そのひとつの兆候にナスダック指数がある。債券市場の動向を見る上でも、米国株式市場の動きも確認しているのだが、ダウ平均と比べて値動きが荒くなってきている。

 4日の米国市場では発表された3月の米雇用統計がほぼ予想通りの数字となったことで、天候が悪化していた割に雇用は安定しているとの見方から、S&P総合500種やダウ平均は昨年末に付けた過去最高値を上回った。ところがその後、米国株式市場は大きく下落し、ダウ平均も前日比159ドル安、ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は、前日比110ポイントもの下落となった。昨日もハイテク株を主体に続落となり、ダウ平均は166ドル安、ナスダックは47ポイントの下落となった。

 S&P総合500種やダウ平均が一時最高値をつけるなど、まさに高値波乱の様相となっているわけだが、特にグーグルやヤフーなどIT関連やバイオテクノロジー関連の株がかなり乱高下しており、それがナスダック指数の大きな変動に繋がっている。これらの値動きの荒い銘柄は、モメンタム銘柄と呼ばれているようで、コンピュータを使った超高速取引(HFT)が影響している可能性がある。

 4月6日の日経新聞によるとHFTを手掛ける投資会社「バーチュ・ファイナンス」は4月初めに見込んでいた上場を延期した。同社が上場に向けて3月に開示した資料のなかに、「過去5年間で負けたのはたった1日」と掲載されていたそうで、これが問題視された。

 ブルームバーグによると、取引所が23兆ドル規模の米株式市場を操作していると主張するマイケル・ルイス氏の新著「フラッシュ・ボーイズ (原題)」が3月31日に発売され、高頻度取引にかつてない厳しい目が注がれる中で、バーチュはIPO計画の延期を決めたそうである。

 「バーチュ・ファイナンス」は2009年から2013年まで取引を行った1238日のうち損失が出たのはたった1日だけだったとしている。コンピュータを使ってのシステム売買と呼ばれるもので、利益をあげることはかなり困難であることをまず知って頂きたい。過去の値動きを元に、たとえば移動平均線の組み合わせなどを使って、売り買いの基準を作りそれを自動発注させて儲けを継続させる確率はかなり低い。過去のシミュレーションが未来の値動きを当てることはまずないためである。これは債券ディーラーとして先物主体に短期売買を14年間やってきた経験から断言できる。

 ところがバーチュ・ファイナンスは月間や年間ベースではなく、デイリーで1238日のうち1日しか損失が出なかったというのは、ありえないとされたシステム売買の錬金術を完成してしまったのかと思わせるようなものである。当然、ここにはカラクリが存在するはずである。

 債券先物取引が始まってまもなくのころ、債券取引で大きな利益を出していた外資系金融会社があった。のちに聞いた話からは、どうやら当時、国内金融機関は現物債の空売りが制度上できなかったことを利用し、現物の空売りを組み合わせた裁定取引で利益をあげていたとされる。制度上の隙間をうまくついて利益を出していたのである。

 HFTとは「ハイ・フリークエンシー・トレーディング」のことであり、コンピュータ・システムを使って価格や注文情報を「いち早く」取引に生かせる。マイクロ秒単位のようなわずかな時間差を利用して人間が行っている売買の隙を捉えて、細かく稼ぎ、それが積み上がって利益を得ていた可能性がある。取引所はHFTがかなりの売買高の割合を占めてきたことで、積極的に売買システムを更新し、HFTを引き込もうとしていた。東証の売買代金に占める割合は今年1~3月の1日平均で4割超に達している。

 HFTは相場を乱高下させ攪乱する要因ともなるが、流動性を高める役割も結果として担っている。しかし、コンマ秒の世界での取引には当然、人間の目はついていけない。何かしらのタイムラグをみつけて、そこにつけ込んで利益をあげることもひとつの手段であろうが、そのような取引が増加すると、2010年におきた米国株の急落といった事態も招きかねない。債券先物の初期にあった裁定取引のように見つけたもの勝ちというのもあろうが、これらはシステムや制度上の隙を突いたに過ぎない。

 4月2日のWSJの「高頻度取引描いたマイケル・ルイス氏の「フラッシュ・ボーイズ」」という記事によると、マイケル・ルイス氏は新著「フラッシュ・ボーイズ」で、高頻度取引業者は、高度なコンピュータ技術や光ファイバー、マイクロ波の電波塔を悪用して数千分の1秒単位で他の投資家に先がけて取引を執行し、大手の投資家も悩ませる今日的な市場の無法者だと語ったそうである。彼らは証券取引所を過去に例のない大きな変動を繰り返すコンピュータの化け物にしてしまったと。

 今回、「バーチュ・ファイナンス」の取引については米司法省やFBI、SEC、CFTCなども調査に乗り出しているようだが、大口売買より先に仕掛けるというのは、何らかの違法な手段が絡んでいた可能性もありうる。HFTにはそろそろ何かしらの規制も必要になってくるのではないか。相場を本来形成するのは市場参加者による思惑という原点に立てば、むしろ排除してほしいと考える。このあたりのHFTの動向も睨んで、最近の米国株の動きにやや異変が起きている可能性がある。

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by nihonkokusai | 2014-04-08 08:05 | Comments(0)

新年度入り後の国債市場の変化点

 まもなく新年度入りするが、消費増税などを含めていろいろと変化も出てくることで、今回は国債に関しての変化についてまとめてみた。

 すでに長期国債先物は3月24日に大阪取引所のシステムに統合された。これにより長期国債先物の取引にも変更があり、これまで誤発注予防のため呼値可能値幅が設定されていたが(例えば長期国債先物はザラ場中は20銭等)、これが即時約定可能値幅となり、上下10銭を飛んで動くような場合にはいったん板寄せのような格好となり、昔のスタイルに戻った。さらに成り行き注文は出せなかったが、引け成り行きの注文も可能となる。取引時間帯についてはイブニング・セッションが午前3時まで延長された。

 さらに4月7日からは超長期国債先物の取引が再開される。超長期国債先物取引は2002年の12月限月以降は新たな限月取引を休止していた。再開される超長期国債先物については、標準物のクーポンは6%(長期も6%)、取引単位1億円(同1億円)、呼び値の刻みは100円につき5銭(同1銭)、即時約定可能値幅は30銭(同10銭)、受け渡し適格銘柄は残存18年以上21年未満の20年利付国債(同残存7年以上11年未満の10年利付国債)となっている。値幅制限に関しては9.0円(同3.0円)となっている。

 国債発行についても4月から一部の年限の国債の発行額が変わる。2年国債は毎月2.9兆円の発行額が2.7兆円に減額される。5年国債は毎月2.7兆円、10年国債も毎月2.4兆円、20年国債も毎月1.2兆円とこれらは毎月の発行額に変更はない。30年債は5千億円が4回、6千億円が8回から、6千億円が4回、7千億円が8回に変更される。5月・8月・11月・2月に6千億円、その他の月に7千億円の発行を予定している。40年債は3千億円4回と前年度と同じ。

 10年物価連動国債は今年度は3千億円で2回発行されたが、来年度は4千億円の4回発行が予定されている。流動性供給入札については、今年度の毎月6千億円の発行から来年度は毎月7千億円の発行となる。

 この流動性供給入札については、これまで国債市場特別参加者の指定基準のなかでの応札義務が課せられていなかったが、4月1日以降は他の国債入札と同様に、発行予定額の3%以上の応札義務が課せられる。ただし、落札義務はこれまで同様に課せられない。流動性供給入札は国債市場の流動性の維持および向上等を目的として実施するものであり、財政上の理由から発行しなければならないものではない。この意味で落札義務までは必要はないとされたものと思われる。

 10年国債の発行条件については、昨年7月以降、新発債の表面利率と入札日の市場実勢利回りの乖離が概ね15bpである場合にはリオープン発行とし、1月以降はこれを20bpに拡大してリオープン発行としてきたが、今年4月及び5月の10年債のリオープン方式については、現行の方式を継続するとしている。

 4月以降で国債市場に関わる変化点をピックアップしてみたが、特に大きな変更点があるわけではなく、市場への影響もほとんどないものと思われる。ただし、日銀の大規模な国債買入が依然として日本の債券市場に影響を及ぼしていることに変わりはなく、国債の発行や先物を含めての市場の変化よりも、日銀の今後の動向のほうが影響力は大きいように思われる。

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by nihonkokusai | 2014-03-31 08:07 | Comments(0)
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