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FRB議長人事レースの行方を占う

 米国のトランプ大統領は17日、FRB議長を既に名が挙がっている5人から選ぶつもりであり、近く発表すると述べた。トランプ大統領は11月3~14日に日本を筆頭にアジア各国を歴訪する予定で、この出発までに発表するようである。トランプ大統領はイエレン議長と19日前後に面談した後、人事案を正式に固めるとみられる。

 トランプ大統領が絞り込んだ5人の候補はパウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事、テイラー米スタンフォード大教授、コーン国家経済会議(NEC)委員長、そしてイエレン議長となる。

 パウエル氏は共和党のジョージ・ブッシュ政権で財務次官を務め、中立派とされる。これに対してスタンフォード大学経営大学院講師を務めるケビン・ウォーシュ元理事は同じ共和党ながらタカ派とされる。テイラー米スタンフォード大教授も共和党に近くタカ派の代表格ともいえる。テイラー氏は本命視はされていなかったが、ホワイトハウスでの面談でトランプ大統領に好印象を与えたとされ、市場では議長候補として脚光を浴びつつある。コーン国家経済会議(NEC)委員長に関してはトランプ大統領と距離も出来ているようで、議長レースから後退しつつあり、ウォーシュ元理事の可能性も後退しつつあるという。

 トランプ大統領に指名の選択権があるため、FRB議長候補の予想は難しい。しかし、5人もの候補から絞るということ自体、イエレン議長の再任の可能性は薄いということなのかもしれない。これはイエレン議長本人の意向も重要となるが、健康への不安もある。予定されるトランプ大統領とイエレン議長の会見では、イエレン氏本人の意向の確認とともに、自分以外の後継者のなかからの推薦者を確認するためのものとの見方もできなくはない。

 そうであれば、いまのところ本命は現役のFRB理事でイエレン議長を補佐してきたパウエルFRB理事といえるのではなかろうか。トランプ大統領も就任後はイエレン議長を「大いに尊敬している」と選挙期間中の批判的な態度を一変させ、いまのFRBの政策にも理解を示しているとみられ、政策の継続が念頭にあればパウエルFRB理事の議長昇格の可能性は高いように思われる。

 ダークホースがトランプ氏の好感度が上がったとされるテイラー教授ではあるが、正常化という実務がいま重視されているFRBにあっては外部採用はできれば避けたいところではなかろうか。ジョン・テイラー氏は70歳という年齢もネックとなるかもしれない。ちなみにパウエルFRB理事は64歳。年齢だけでみればウォーシュ元理事は47歳とまだ若い。イエレン議長は71歳と年齢にも不安が残るところではある(トランプ大統領も71歳ではあるが)。ちなみにコーン氏は57歳である。


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by nihonkokusai | 2017-10-19 09:57 | Comments(0)

世界最大の政府系ファンドが日本国債の保有額を削減か

 世界最大の政府系ファンド(SWF)であるノルウェー政府年金基金は債券投資を縮小したうえで、運用通貨を絞り込む方針を打ち出した。日本国債をはじめ流動性の低い債券は投資対象から外れる可能性が高い(9月20日の日経新聞より)。

 8兆クローネ(約112兆円)のSWF資産を運用する同基金は今月初旬、運用方針の大幅な見直しを財務省に提案した。資産の約三分の一を投資する債券運用で、通貨をドル、ユーロ、ポンドの3通貨に限定するようである。日本国債には債券運用の6%強にあたる1690億クローネ(約2兆3700億円)を投資してきたが、保有比率を引き下げる方針のようである。

 日銀が年間発行相当額の規模で日本国債を買い入れている状況が続いているなか、2兆円程度の国債が仮に売却されても問題はないとの見方もできなくはない。

 しかし、今回のノルウェー政府年金基金などの政府系ファンド(SWF)の動きは、ほかの運用者にも影響を与えかねない。海外投資家による日本国債投資はここにきてやや減少しつつあるが、それに拍車を掛ける可能性がある。そうなると日本国債の流動性がさらに低下してくる懸念もありうる。

 日銀は長短金利操作付き量的・質的緩和政策により、大量の国債買いとそれを使っての長期金利のコントロールを行っているが、それは国債市場の流動性を大きく低下させている。日本の債券市場の規模は米国に次ぐ世界第2位ではあるが、この流動性の低下によって海外の大手運用会社の運用に値しないとなれば、さらに流動性を低下させ、その魅力を低下させかねない。また、日銀による大量の国債買入で金利そのものが低すぎてパフォーマンスを上げられなくなっていることも撤退要因となっていよう。

 こういった動きは日銀の出口政策をますます困難にさせかねない。日本国債の買い手として日銀の存在感がさらに大きくなりかねず、それはつまり財政ファイナンスとも見なされかねない。

 日銀は2%の物価目標を達成するまで異次元緩和を続けるつもりのようだが、それは日本国債の流動性とその市場機能低下との引き換えに行うことになる。物価目標達成という着地点も見えないだけに、今後さらなる市場機能の低下も予想され、市場参加者もますます減少しかねない。思わぬリスクで市場が動いたときなど対処のしようがなくなる懸念もある。市場が市場として機能しなくなったとき何が起きるのか。あまり想像したくないのも確かである。


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by nihonkokusai | 2017-09-21 09:23 | Comments(0)

物価のコントロールは金融政策では難しい

 日銀の政井貴子審議委員は愛媛県での31日の講演で次のように述べていた(日銀のサイトにアップされた亜視察分より引用)

 「わが国では、1990年代の後半から15年以上にわたり消費者物価の前年比がゼロないし僅かなマイナスが続くデフレの状態が続いてきました。わが国において、所謂デフレ・マインドがなかなか払拭されない背景の1つには、わが国の家計および企業が、デフレ期の環境に順応してきたことがあると思います。これを踏まえると、「物価は毎年2%くらい上がってくるものだ」という物価観が人々の間にしっかりと根付いていくには、このようなコミットメントを通じて日本銀行の強い決意を示すことが重要だと考えています。」

 そもそも何故、1990年代の後半から、消費者物価の前年比がゼロないし僅かなマイナスが続くデフレの状態が続いてきたのか。日銀の異次元緩和の背景にあったリフレ的な発想からすれば、日銀の金融緩和が足りなかったからということになっていたが、大胆な金融緩和で消費者物価の前年比がゼロ近傍にある状況を変えることができないことを日銀は自ら証明するかたちとなってしまっている。

 これはつまり消費者物価の前年比がゼロ近傍にある状況が生み出された背景をしっかりと分析し、さらにその状況は本当に日本経済にとってマイナス要因となっているのかを含めた検証をする必要があるのではなかろうか。

 1990年台といえばバブルが弾けた時代であり、それに合わせて日本の雇用環境が大きく変わった。そして日本の債務残高が膨れあがっていく時代とも重なる。年功序列・終身雇用といったこれまでの体制が維持しづらくなり、それはつまり雇用環境を悪化させることになった。それは人々の将来を不安にさせることとなる。これは企業も同様であり、積極的に設備投資等を控えざるを得ない。これはつまり、資金は貯蓄から投資へではなく投資から貯蓄に向かうこととなる。

 物価の低迷は金利の低迷となり、安全資産として国債に資金が流入し、大量の国債が発行されてもそれは国内で消化可能となり、金利の低下で大量の債務を抱えた政府も利払い負担が軽減されることになる。これは財政リスクを覆い隠すことにもなっている。

 現在の日本における物価とそれに合わせた金利の環境は、このように日本の債務リスクを見えにくくさせるとともに、物価の安定がむしろ人々の満足度を高めるような状況ともなっている。

 中国などの新興国経済の成長が日本の景気を支える格好となった際も物価への影響は限定的となっていた。一時投機的な動きから原油価格が急騰し、日本の物価も2%を超える場面もあったが一時的なものであった。その後、今度は世界的な金融経済危機が度重なって景気も低迷したものの、危機の後退により欧米の景気も回復基調となり、日本も緩やかながら回復基調となっている。

 この間にあって日銀の金融政策が果たした役割はいったい何であったのか。日銀に限らず欧米の中央銀行も非伝統的手段を講じたが、これは景気物価に働きかけるというよりも、金融市場の不安感を取り除くことが大きな目的となっていた。その意味ではしっかりとその効果はあったと思われる。

 しかし、金融政策であたかも簡単に物価をコントロールできるかのような発想のもとに出てきたアベノミクスとそれを受けた日銀の異次元緩和は、物価上昇そのものが目的と化してしまった。このため身動きが取れなくなりつつある。人々のデフレマインドも含め、金融政策では簡単にはコントロールができないことを前提にしての金融政策というものを考えることも必要ではなかろうかと思う。


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by nihonkokusai | 2017-09-01 10:11 | Comments(0)

北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空通過、金融市場はどう反応したのか

 29日の朝6時過ぎ、いつものようにNHKラジオのニュースを聞いていたところ、近くにあったスマートフォン2台が大きな警告音を発した。画面を確認したところ、下記のような表示が出ていた。

「緊急速報 政府からの発表 2017/08/29 06:02 ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に非難してください。(総務省消防庁)」

 そのあと6時14分にあらためて、この地域の上空をミサイルが通過した模様です。との緊急速報が流れた。

 6時2分の携帯電話へのJアラートに続いて、防災無線でも同様の放送が流れた。テレビで確認したところ、Jアラートが鳴ったのは北関東3県と東北、北海道であった。

 最初のアラートの表示では、日本の国土に向けてミサイルを撃ったようにも解釈できることで、さてどうしようとなったが、とりあえず家の外に出ないようにして続報を待つしかなかった。我が家には地下室もなければ防空壕もない。

 今回の北朝鮮のミサイル発射の分析は専門家が行うであろうが、その方角や時間帯から、日本の本土上空をなるべく避け、さらに航空機が密集している地域も避けたのではとの見方があった。やや方向が違うがハワイ方面を視野に入れて、飛距離を試した可能性がある。いずれにしても許されざる行為である。

 これを受けて29日の金融市場は反応した。26日に北朝鮮が日本海に向け短距離の飛翔体を発射した際には、28日の東京市場はこれを全く無視した格好となっていた。しかし、さすがに日本上空を通過となると、無視できず金融市場ではリスク回避の動きを強めた。

 日本が脅威に晒されているにもかかわらず、リスク回避によって何故、円が買われるのか。いろいろな解釈もあろうが、個人的にはこれまでの世界的リスクに反応した際に、円やスイスフランが買われていたことにより、条件反射的な動きとみている。これがリスクや懸念ではなく、日本が被害を直接受けるようなことになれば素直に円買いとはいかなくなるのではなかろうか。

 円高にも反応しての株安は素直に下げたものの、その下げ幅は限定的となった。日本国債も多少なり買われたが、これも円と同様にリスク回避と言えば安全資産としての国債買いの連想が働いたものであろう。日本そのものに対する危機が生じれば、この動きについても疑問符がともる。それ以前にマーケットが開いているのかという問題も生じよう。

 今回、当初のJアラートを聞いて、どこにミサイルが着弾するのかという情報がすぐには来なかったため、戦争への恐怖を覚えたことも確かである。防災無線の警告音は、昔の空襲警報がこうであったのかと連想してしまった。今回の北朝鮮によるミサイル発射は、日本に対して直接的な被害はなかったものの、有事が意外に迫っているのではとの恐怖感も覚えた。

 29日の金融市場もいつも通り開き、一部の電車は遅れていたものの、通勤もいつも通り。そのいつもどおりの生活が脅かされぬよう、何かあっても、円が買われ、日本国債も買われる程度のリスクに収まってもらうよう、祈るしかないのであろうか。


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by nihonkokusai | 2017-08-30 09:54 | Comments(0)

債券ディーラーの中期債の売買高が大幅減少

 8月20日に発表された7月の公社債投資家別売買高によると投資信託、個人、その他を除いて総じて債券を買い越していた。都銀は799億円の買い越し。6月は2兆2512億円と大幅買い越しと2年7か月ぶりの水準となっていたが、7月の買越額は大きく減少した。

 海外投資家は買い越しではあったものの、7394億円の買い越しに止まり、6月の7993億円の買い越しに続いて1兆円を割り込んだ。

 7月の全体の国債の売買高は174兆円程度と6月の212兆円程度から落ち込んだものの、5月の171兆円程度よりは多く、それなりに規模は保った格好ではあった。ところがこれを年限別で見てみると大きな変動が生じていた。

 6月から7月にかけて国債全体では38兆円程度、売買高が落ち込んでいたが、そのうち中期ゾーンが22兆円ほど売買高が落ち込んでいた。この結果、中期ゾーンの国債の売買高は35兆円程度となり、これは証券業協会で残しているデータで2004年4月以降、最低の水準となっていた。

 これを投資家別で確認したところ、都銀は6月から7月にかけて1兆円程度売買高が減少し、海外投資家も9000億円程度減少していたが、それほど大きな減少とはなっていなかった。今回、最も減少していたのは債券ディーラーとなっていた。

 債券ディーラーによる7月の中期ゾーンの売買高は21兆得程度と6月の39兆円程度から大きく減少させるとともに、7月の債券ディーラーによる中期ゾーンの売買高も2004年4月以降、最低水準となっていたのである。

 たしかに7月は日本相互証券などでの業者間売買で、中期ゾーンはカレントの出合いも限られていた。中期債の最大の買い手である海外勢がベーシススワップの縮小を背景に売買高を減少していたことも影響していようが、その海外投資家の売買高の減少はそれほど大きくない。

 むしろ証券会社などの債券ディーリングでは、顧客向けのポジションを保有してのディーリングなどを極力縮小させ、日銀の買入に向けた国債入札の応札に止めているのではないかとみられる。

 これが一時的な現象となるのかは8月の国債の売買高を確認する必要がある。しかし、日銀の異次元緩和による国債の大量買入が、債券市場で機能不全を招いていることは確かであり、またマイナスとなっている中期ゾーンの利回りが国内投資家との売買をやりにくくさせていることも確かであろう。今回の中期ゾーンに対する債券ディーラーの売買高の大きな減少は、日銀による異次元緩和の副作用を示すものではなかろうか。


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by nihonkokusai | 2017-08-28 09:44 | Comments(0)

物価が上がらないことで見えなくさせているリスク

 25日に発表された7月の全国消費者物価指数は総合で前年同月比プラス0.4%となり、日銀の物価目標である生鮮食品を除く総合は同プラス0.5%となり、6月のプラス0.4%からプラス幅を拡大させた。生鮮食品及びエネルギーを除く総合は同プラス0.1%に止まった。

 電気代,都市ガス代などの上昇幅が拡大し,エネルギーにより総合の上昇幅が拡大した格好となった。下押し要因としては携帯電話機があるが、25日の日経新聞によると2018年1月分からは格安スマホの料金も反映されるそうである。

 6月に比べて前年比のプラス幅は拡大したが、それでもプラス0.5%に止まる。日銀は物価目標に達成できなかった理由として原油価格の下落も挙げていたが、その原油価格を加味しなければ前年比プラス0.1%となってしまうことにもなる。

 民進党代表選に立候補した前原誠司元外相と枝野幸男前幹事長が日銀の2%の物価目標の見直しを提案しているそうである。「物価目標2%を中長期の目標に変えて、当面は1%を目指すことが現実的ではないか」と前原氏は23日のラジオ番組で述べたとか。

 日銀の物価目標は現在でも、あくまで中長期の目標であり、それを変えることに意味はあるのかとのご意見もあるかもしれない。1%が適切なのかどうかはさておき、いま必要なのは、2%に縛られ自由度を失っている日銀の金融政策に対し、その縛りを緩め、出口政策を取りやすくさせることだと思う。

 金融政策が能動的に物価を動かせるのかという根本的な疑問はあるものの、とりあえずそれは置いといて、金融政策が物価に働きかけるという前提でも、日銀に金融政策の裁量の自由を与える必要がある。それでなくても、物価目標が達成できないからとして、量をさらに拡大し、マイナス金利を導入し、長期金利までコントロール下に置こうとした。しかし、それらの手段でも物価が動くわけではなく、国債市場を機能不全にし、長期金利を押さえつけることで日本の債務リスクを見えなくさせるなどの弊害も生んでいる。

 いまのところ市場はおとなしくしているが、何かのきっかけで暴れる懸念もないわけではない。もし今後物価が上がれば上がったで、それに連動し長期金利も上昇するとなれば、債券市場の現場にいる人達の多くにとっては金利が上昇するという未体験の事態が生じることになる。それ以上に過去の金利がつく世界を知っている我々世代でも、ここまで膨らんだ国債残高の上での金利上昇は未体験ゾーンである。つまり長期金利は上昇するとどのような事態が起きるのかはかなり不透明であり、この物価上昇力の鈍い環境はそのようなリスクを覆い隠していることになる。



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by nihonkokusai | 2017-08-26 10:35 | Comments(0)

スウェーデン中央銀行(リクスバンク)も緩和バイアスを解除

 7月4日のスウェーデン中央銀行(リクスバンク)は、政策金利のレポ金利をマイナス0.5%で据え置いた。また、当面の追加利下げの可能性を否定し、政策金利は2018年半ばまで現行水準にとどまるとの見通しを示した。

 声明では「インフレ率が最近、予想を若干上回る上昇を続けていることと、海外からの悪影響のリスクが低下したと考えられることから、政策金利のレポ金利をさらに引き下げる可能性は目先後退した」と説明した(ブルームバーグ)。

 リクスバンクのイングベス総裁は記者会見で「緩和政策の縮小や利上げは時期尚早」と発言したものの、ECBと同様に追加緩和に向けた前傾姿勢から普通の姿勢に戻したといえよう。

 カナダ銀行(中央銀行)は7月12日の政策決定会合で、政策金利である翌日物金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年0.75%とした。カナダ銀行の利上げは2010年9月以来、6年10か月ぶりとなる。

 6月27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための政策修正の可能性を指摘した。つまりECBが年内にも理事会で政策修正を検討する可能性が出てきた。

 また、ドラギ総裁は今年のジャクソンホール会合に3年ぶりに出席すると伝えられた。ECBは資産買い入れを段階的に縮小する方針を9月の政策理事会で示唆するのではとの観測が出ている。

 このように、ここにきて欧米の中央銀行は、FRBを筆頭に緩和政策を解除しての正常化、もしくは緩和バイアスを解除する方向で足並みを揃えてきているように見受けられる。これは6月27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムにおいて、為替に影響を与えることのないように、なんらかの密約があったのではとの観測も出ていた。

 BISによる直近の年次報告書によると、金融政策正常化の議論をしていたことが示されていたが、それが徐々に実行に移されているように見受けられる。報告書では「インフレ率が上がらなくとも、長期にわたり金利を低過ぎる水準に維持すれば、金融安定とマクロ経済のリスクを将来的に高めかねない。債務は引き続き累積し、金融市場のリスクテークは勢いを増すことになる」と指摘していた。

 ただし、この動きのなか、緩和バイアスの解除もできずにいるのが日銀となっている。それでもいまのところ円安の動きは緩やかなものとなっている。しかし、日銀と欧米中銀の金融政策の方向性の違いが、あらためて為替市場で材料視され、大きく円安が進むようなことになると、日本に対して海外から批判が出てくるようなこともありえよう。


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by nihonkokusai | 2017-07-24 09:56 | Comments(0)

日銀決定会合で反対者がいなくなる日

 7月19、20日の日銀金融政策決定会合では、今回も賛成多数で現状維持が決定された。今回も長短金利操作、資産買入れ方針ともに7対2の賛成多数となっていたが、反対したのはいずれも佐藤審議委員と木内審議委員である。

 長短金利操作について、佐藤委員は、短期政策金利をマイナス0.1%、10 年金利の目標をゼロ%程度とすることは期間10年までの金利をマイナス圏で固定することにつながりかねず、金融仲介機能に悪影響を及ぼすとして反対した。木内委員は、国債市場や金融仲介機能の安定の観点から、短期政策金利はプラス0.1%が妥当であり、長期金利操作目標は国債買入れペースの一段の拡大を強いられるリスクがあるとして反対した(日銀「当面の金融政策運営について」より)。

 資産買入れ方針については、佐藤委員は約6兆円のETF買入れは、市場の価格形成や日本銀行の財務健全性に及ぼす悪影響などを踏まえると過大であるとして反対した。なお、木内委員より、資産買入れ額を操作目標とする枠組みとしたうえで、長期国債保有残高が年間約45兆円、ETFが約1兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行うなどの議案が提出された(日銀「当面の金融政策運営について」より)。

 佐藤健裕審議委員と木内登英審議委員の任期は7月23日までとなり、今回の会合が最後となる。

 上記の反対理由については、至極もっともであるが、反対理由はあくまで、金融仲介機能に悪影響、国債買入れペースの一段の拡大懸念、日本銀行の財務健全性に及ぼす悪影響などとなっている。それ以前に異次元緩和が効果を及ぼしていないという事実が含まれていない。これを含めて本来であれば、長短金利操作付き量的・質的緩和というタイトルだけが長くなっている緩和策を再検証すべきものではなかろうか。

 すでに欧米の中央銀行は正常化に向けて舵を取りつつある。そんななか、日銀だけが取り残されそうな雰囲気にある。この状況下で正論ともいえる意見を言い続けた二人の委員がいなくなってしまうと、日銀はますます異質な政策を一丸となって続けるような印象も与えかねない。

 政府との共同文書や物価目標、さらにはリフレ政策を日銀に押しつけた政権にそもそも問題があり、日銀審議委員の人事も官邸が行っている以上、このようなことになってしまうのは当然ではあるが、それが日銀の異質さをさらに際立てしまう懸念がある。

 佐藤委員と木内委員の後任は三菱UFJ&コンサルティングの片岡剛士上席主任研究員と三菱東京UFJ銀行の鈴木人司取締役となる。リフレ派である片岡氏はさておき、鈴木氏にはあらためてこの現状をしっかり認識していただき、的確な意見を述べていただきたい。これはほかの政策委員にも希望したい。もしこのまま全員一致で現状維持を続けることになれば、その政策についてますます疑問符が付いてしまうことになりかねないのではなかろうか。



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by nihonkokusai | 2017-07-21 10:05 | Comments(0)

欧米の中央銀行による金融政策の正常化に向けた動きのひとつの背景

ここにきて欧米の中央銀行のトップから相次いで正常化に向けた動きを進めるような発言が相次いでいる。そのひとつのきっかけがBISの年次報告書にあった。

国際決済銀行(BIS)とは、1930年に設立された中央銀行をメンバーとする組織で、スイスのバーゼルに本部がある。ドイツの第1次大戦賠償支払に関する事務を取り扱っていたことが行名の由来だが、それ以外にも当初から中央銀行間の協力促進のための場を提供しているほか、中央銀行からの預金の受入れ等の銀行業務も行っている(日銀のサイトより引用)。

そのBISによる直近の年次報告書のなかで、金融政策正常化の議論をしていたことが示されている。「インフレ率が上がらなくとも、長期にわたり金利を低過ぎる水準に維持すれば、金融安定とマクロ経済のリスクを将来的に高めかねない。債務は引き続き累積し、金融市場のリスクテークは勢いを増すことになる」と指摘していた。

すでに正常化に向けて歩みをはじめているFRBは利上げとともにバランスシート縮小も進めることが予想されている。保有証券縮小計画については9月のFOMCで決定される可能性が高い。そして年内あと一回の利上げは12月のFOMCで決定されるとの予想になっている。

27日にポルトガルで開催されたECBの年次政策フォーラムで、ECBのドラギ総裁は景気回復に即した緩和策の調整、つまり景気が順調に回復するのであれば、緩和効果を一定に保つための利上げの可能性を指摘した。つまりECBが年内にも理事会で利上げを検討する可能性が出てきた。ただし、いまのところ具体的な日程が示されているわけではない。

イングランド銀行のカーニー総裁も同フォーラムで、中銀は利上げを実施する必要が出てくる可能性があり、金融政策委員会(MPC)はこの件について向こう数か月以内に討議すると述べていた。MPCでフォーブス委員だけが利上げを主張していたが、前回からマカファーティー、ソーンダーズ両委員が利上げ派に加わった。さらにチーフエコノミストのアンディ・ホールデン理事からも政策引き締めを遅らせ過ぎることのリスクが高まっているとの認識が示された。年内のMPCは8月、9月、11月、12月に予定されている。やはり9月と12月のMPCに特に注意したい。

イングランド銀行にとっては英国のEU離脱による影響も危惧されようが、それによるポンド安と物価高も無視できなくなりつつある。ユーロ圏については金融機関等への問題やギリシャの財政問題等も残るが、少なくとも金融危機のリスクは後退というか沈静化したというのが、共通認識となっているのではなかろうか。

いわゆるBISビューで正常化に向けた議論が行われていた意味は大きいように思われる。6月29日~7月2日の日程でスイスのバーゼルで開かれた国際決済銀行(BIS)国際会議には日銀からは中曽宏副総裁が出席していた。正常化向けた動きに取り残されている日銀が今後、どのような動きをみせてくるのかも注目したい。


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by nihonkokusai | 2017-07-10 10:04 | Comments(0)

日銀 vs 債券市場参加者

日銀で行われた第5回「債券市場参加者会合」の議事要旨が5日、日銀のサイトにアップされた。この中から市場参加者による「債券市場の機能度・流動性についての見方」を見てみたい。

「イールドカーブ・コントロールの導入以降、長期ゾーンを中心にボラティリティが低下し、価格変動に対する安心感が広がっている。」

最初はひとまず日銀の政策の効果について好意的な意見が載せられているが、

「ボラティリティの低下は、一見機能度改善にも見えるが、実際には取引量の減少や既存の市場参加者の退出という形で機能度の低下に繋がっている。」

こちらが本音の部分といえよう。取引量の減少も無視できないが、既存の市場参加者の退出は、今後の市場の大きな不安要因となりかねない。

「現在の市場は、日本銀行のコントロールの下で安定しているが、金利水準もボラティリティも極端に低い市場環境の下で、これまでの日本国債のプレーヤーが市場から退出するなど、参加者層が薄くなっている。」

金融市場への直接参加者は金融業界全体からみるとそれほど多くはない。しかもここでは経験が重要な要素となる。日銀の異次元緩和は債券市場の参加者を減らすばかりか、金利が動くという経験もさせなくさせている。このため下記のような意見も出ている。

「中長期的に金利を市場に委ねるとなった際に、市場参加者の厚みが足りないが故にボラティリティが急に上昇することを懸念。参加者層の厚みや多様性も市場機能の一つだと思うので、引き続き留意して欲しい」

今の日銀にとって金融政策の正常化の動きは「他人事」かもしれないが、政権の行方等次第で状況も変わりうる。また、何かのきっかけで金利が大きく動く懸念は現在の日銀のコントロール下であっても存在する。

「良くコントロールされていると思うが、一方で債券市場の価格発見機能は失われている。株価は上昇し、日本経済の状況も良くなっているなかで、長期金利が殆ど反応しないという状況は健全ではない。」

このあたりの歪みも知らず知らずに蓄積されている可能性がある。価格発見機能は失われているのではなく、日銀が力尽くで見せなくさせているだけである。

「現状、市場機能が低下しているとすると、調節運営のなかでもう少し変動幅を許容するようにしないと、実際にマーケットで金利が動き始めた際に市場が対応できないのではないかと危惧している。」

少しでも市場参加者の経験を積み上げることも大事であり、日銀もある程度、長期金利の変動幅を許容したほうが、マーケットの機能は多少なり回復しよう。日銀はマイナス金利を残したいのであれば、長期金利の目標値をもう少しフレキシブルにしてプラス0.5%あたりまで許容するなりすれば、債券市場の機能がある程度改善してくるのではなかろうか。本来市場に委ねていたはずの長期金利である以上、変動幅の許容範囲をある程度大きく持っても問題はないのではなかろうか。それが今日の日銀の国債買入等で試される。


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by nihonkokusai | 2017-07-07 09:39 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
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