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日銀の総裁と副総裁人事で注目すべき点

 政府は16日、日本銀行の黒田東彦総裁を再任させる人事案を国会に提示した。日銀総裁を2期連続で務めるのは第20代の山際正道総裁以来54年ぶりとなる。副総裁には雨宮正佳日銀理事、若田部昌澄早稲田大学教授を充てる案も示された(ブルームバーグ)。

 黒田総裁は前任の白川総裁(当時)が、空白期間を埋めるために4月8日の任期を待たずに副総裁の任期に合わせるため退任したことで、黒田総裁は2013年3月20日に就任した。この際には翌月の4月8日でいったん任期満了となり、あらためて2013年4月9日に就任した格好となっており、これはどのようにカウントされるのかはわからないが、とりあえず2期連続と報じられている。

 そのような細かいところはさておき、総裁候補としては以前からスイス大使の本田悦朗氏の名前が挙がっていた。しかし、政府としては消費増税に反対している本田氏を総裁とする案は結果として飲めなかったと思われる。そうなると黒田総裁の続投が最有力となるが、同じ財務省出身の黒田総裁と本田氏の組み合わせも、考え方の違い等を含めて考えづらかった。雨宮理事の副総裁昇格は予定通りとなると、問題はもうひとりの副総裁人事となっていた。

 岩田副総裁は一応学者枠ともいえるが、財務省主審の総裁と日銀プロパーの副総裁、そして学者というかエコノミスト的な立場の副総裁がバランスが良い。しかし岩田副総裁はリフレ枠でもあったようで、官邸もリフレ積極論者を岩田副総裁の後任に据えたいとされている。ここに問題があった。リフレ派での学者枠となれば、実は若田部氏の可能性もないとは言えなかったが、個人的にその選択肢はどうかと思っていた。

 個人的な意見はさておき、リフレ派の意見をいまだ重視している官邸としてはこの選択肢を取らざるを得なかったのであろう。ただし、審議委員には同じリフレ派で若田部氏の先輩格である原田氏がいる。リフレ派も一枚岩ではないようで、今後はリフレ派同士で意見を戦わせる場面が出てくるかもしれない。

 もうひとつ注目すべきは、副総裁となる雨宮理事(企画局、金融市場局、金融研究所)の後任人事となる。これについては日銀が内田真一名古屋支店長を理事に昇格させる方向で検討していることが16日、分かったと時事が伝えていた。

 異次元緩和を雨宮理事と支えたのが内田企画局長(当時)であったことで、立場は変わるが雨宮氏と内田氏のコンビが復活となるようである。

 こうして日銀の総裁と副総裁さらに企画担当理事の人事が出そろうこととなる(正式には国会の承認等が必要だが)。これを見る限り日銀は現在の政策を進めていくことが予想される。いまのところ金融政策の微調整は考えづらいが、マイナス金利政策のマイナス面を長短金利操作付きに変更させて、金融機関からの反対論を封じ、さらに量の縛りをなくして異次元緩和の継続性を強めるなど、今後も状況に応じた修正はありうると思われる。ただし、あらたに世界的な危機的状況が起きない限りは、リフレ派の一部が主張する追加緩和も封印されるであろうと予想される。


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# by nihonkokusai | 2018-02-20 09:42 | 日銀 | Comments(0)

現金主義のドイツと日本におけるキャッシュレス化

 現金主義で知られるドイツで、決済に占める現金の割合が半分以下に下がったことが、ドイツ連銀が14日公表した調査結果で明らかになった。約2000人を対象にした調査によると、2017年の取引に占めた現金の割合は47.6%で、2014年の53.2%から低下した。(ロイター)。

 世界的にキャッシュレス化の動きが進んでいると言われるなかで、このドイツや日本ではそれほど進んでおらず、現金主義となっている。これはドイツや日本が遅れているというよりも、それだけ現金利用に障害がなく、どこでも安全に現金が使えるシステムが存在していることなども要因かと思われる。

 そうはいってもコンピュータでの決済が進み、電子マネーの利用が拡大していることで、日本とドイツも少しずつキャッシュレス化は進んでいる。日本でもすでに現金決済の割合は50%を割り込んでいる。

 ドイツではカードの中では特にデビットカードが人気となり、昨年の決済の4分の1余りを占めていた。クレジットカードもじわじわと普及しているそうである(ロイター)。

 日本ではカード決済のウエイトが相対的に小さく、支払手段として現金が幅広く使われているが、各種カードの一人当たり合計保有枚数をみると、日本では一人当たり平均で7.7枚とかなり多い。ただし、クレジットカードの利用は多くてもデビットカードの利用は少なく、このあたりドイツと対照的な面がある。

 日本におけるカード決済金額をみると次のような特徴がみられると日銀のレポートが指摘していた。

・電子マネーによる決済金額は、各国平均を大きく上回っている。

・クレジットカードは、概ね各国平均並みに利用されている。

・デビットカードによる決済金額は、各国平均を大きく下回っている。

 現金の利用ではどうしてもコストが掛かることで、いずれ電子マネーを主体とした決済が進むとみられるが、現金決済に何かしら支障があるわけでもなく、今後の日本やドイツのキャッシュレス化の進行度合いは緩やかなものとなると思われる。

 自分でもカードなどは保有しているものの、財布に現金がないと不安である。クレジットカードや電子マネーがどこでも使えるわけではなく、外出の際には、ある程度の現金を保有していないと何かしらのときに決済できないリスクも意識してしまう。

 東日本大震災などを経験し、携帯電話が通じず、電気が止まってしまった際には、やはり現金が決済手段として有効になることを身にしみて感じていたこともあり、もしもの決済リスクも意識して現金を保有している面もある。


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# by nihonkokusai | 2018-02-19 09:10 | 金融 | Comments(0)

黒田体制が継続することで金融政策の微調整すら難しくなった日銀

 日銀の鈴木人司審議委員は2月8日の和歌山市の講演において次のように発言していた。

 「金融機関は、大手および地域金融機関ともに収益の中心はやはり資金収益にあり、これが金利自体の低下および利ざやの縮小によって減少しているわけですが、現時点においては、金融機関は磐石な財務基盤を有し、流動性等についてもストレス耐性を有していますので、金融システムあるいは金融仲介機能に支障が出ていることはないと私どもは分析しています。金融緩和が非常に長期化する中では、そうした影響というのは累積的に溜まっていくということですから、先々それが問題になってくるという可能性はあるわけです。将来的には調整することは十分に有り得るだろうと考えていますが、ご案内の通りそうした意見はまだ一部に止まっているのではないかと思います。」

 鈴木委員は三菱東京UFJ銀行出身であり、金融機関に対する日銀の金融緩和による影響については審議委員のなかでもかなり注意を払っていると思われる。今回の鈴木委員の講演と会見で注目されたもののひとつが、現在の金融政策の微調整の可能性に関するものであり、その答えのひとつが上記となる。結論として、将来的な調整するとの意見はまだ一部に止まっているようである。

 今年1月の金融政策決定会合の主な意見では、「金利水準の調整を検討することが必要になる可能性もあるのではないか」、「ETFをはじめとする各種リスク資産の買入れについて、政策効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討すべきである」との指摘があった。鈴木委員を含めて複数の委員が、金融政策の微調整の可能性を指摘していた。

 これに対して黒田総裁は1月の記者会見で、展望レポートで予想物価上昇率の判断を「弱含み」から「横ばい」に引き上げられたことに関して、「予想物価上昇率が上がったから直ちに金利の調整が必要になるとは全く考えていません」と発言していた。これから伺えることは、足元物価の上昇や欧米の長期金利の上昇などにより、日本の長期金利に上昇圧力が掛かっても、0.11%で抑えつけると主張しているように思われる。現実に欧米の長期金利の上昇を受けて日本の長期金利が0.1%に接近したことで、2月2日に日銀は0.11%での指し値オペを実施した。

 この動きをみても、ターゲットとしている長期金利の調整は、現状はありえない。そして黒田総裁が再任され黒田体制が続く限りは、よほどの事態が起きない限り、今の政策を継続させていかざるを得ない。異次元緩和を裏で支えていた雨宮理事の副総裁への昇格が、どのような変化をもたらすのかも読みづらいが、政府としても現在の金融政策の維持を念頭に置いた今回の総裁・副総裁人事ともなる。もうひとりの副総裁はさておいて。


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# by nihonkokusai | 2018-02-17 10:14 | 日銀 | Comments(0)

米長期金利が上昇しても米株が買われた理由

 2月14日に発表された1月の米消費者物価指数は前月比0.5%の上昇となり、市場予想を上回った。前年同月比では2.1%の上昇となる。これを受けて14日の米債は売られ、10年債利回り(米長期金利)は一時2.92%まで上昇した。

 14日の米国株式市場は、この金利上昇を嫌気した売りが先行したものの、金利上昇を受けた金融株の買い、原油先物の上昇を受けた石油関連株の買い、さらにはアップルなどハイテク株にも買いが入ったことなどから、ダウ平均は253ドル高となり、ナスダックも130ポイントの上昇となった。

 15日に米長期金利は一時2.94%まで上昇していたが、この日のダウ平均は306ドル高となり25000ドル台を回復している。

 2月5日に米国株式市場で、ダウ平均は一時1597ドル安となり、取引時間中として過去最大の下げ幅となり、引け値も1175ドル安となって引け値の前日比でも過去最大の下げ幅を記録した。

 5日のダウ平均の大きな下落のきっかけは米国の長期金利とされた。2月2日に発表された米雇用統計で平均時給が高い伸びとなったことから、FRBの利上げペースの加速観測が強まり、2日の米10年債利回りは一時2.85%と2014年1月以来の水準に上昇した。しかし、5日の米長期金利はダウ平均の急落で2.70%に低下しており、あくまで米長期金利はひとつのきっかけに過ぎなかったようにも思われる。

 14日には消費者物価指数の上昇によって、米長期金利が5日の2.85%も大きく上回り、2.92%に上昇したにもかかわらず、米株は上昇していた。この背景のひとつとして米株の変動性指数(VIX)指数が不安心理が高い状態とされる20を下回ったことなども指摘されていた。このときの株価の急落はゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていた相場の反動が一時的に起きたとみることができよう。

 米長期金利は次の節目とされる3%に接近してきた。3%あたりであれば、ゴルディロックス経済(適温経済)やFRBの金融政策の正常化により利上げに即した金利上昇ともいえる。しかし、ここからさらに金利上昇が加速されるとなれば、米国債の需給悪化や米国の財政悪化なども意識されたものとなる可能性があり、注意したい。

 そして米長期金利の上昇と米株の上昇が相まっていたにもかかわらず、ドル円が107円を大きく割り込んできている。この理由の説明はなかなか難しいが、金利や景気などとは別な要因によって動いている可能性がある。そのひとつが日銀総裁・副総裁人事の不透明感ではなかったかと個人的には思っている。


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# by nihonkokusai | 2018-02-16 09:55 | 債券市場 | Comments(0)

GDPは8四半期連続のプラスに、日本の景気拡大は続く

 14日に発表された2017年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は実質で前期比0.1%増、年率換算で0.5%増となった。事前予想は下回り、前回7~9月期の2.2%増に比べると小幅な伸びに止まったものの、プラスは8四半期連続となり、1980年以降では約28年ぶりの長さとなった。

 自動車の売れ行きや外食が好調だったことなどから個人消費は0.5%増と2四半期ぶりのプラスに。また設備投資も0.7%増と5四半期連続でプラスとなった。それに対して住宅投資は2.7%減。公共投資は0.5%減となっていた。

 物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比0.0%の上昇。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%の上昇となった。

 GDPは過去の数字でもあり市場への影響は限定的となっていた。しかし、日本の景気拡大が継続していることを確認できた格好となっている。ただし、物価は引き続き抑えられている。

 ここにきての東京株式市場は米国株式市場の調整を受けて、下落トレンドとなっているが、今回のGDPをみてもわかるように、景気の落ち込みや新たなリスクの顕在化などが調整要因となっているわけではない。むしろ、世界的な景気拡大により、物価への上昇圧力も強まり、米長期金利の上昇などが調整のきっかけとなっている。しかし、いまのところはファンダメンタルに基づいた金利上昇ともいえることで、これが景気に水を差すことは考えづらい。もちろん米国債の発行増などによる需給悪化懸念はあるものの、それでもいまのところ米長期金利は3%にも届いていない(14日に2.92%まで上昇)。

 米国株はひとまず下げ止まりともなりつつあり、ここからはあらためて世界的な景気拡大を材料に戻りを試すことも予想される。為替の動きなど気になるところではあるものの、ゴルディロックス(適温)経済は継続していることがあらためて意識されて、次第に底堅い動きとなってくるのではなかろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-02-15 09:59 | 景気物価動向 | Comments(0)

日銀総裁・副総裁人事の行方は不透明

 安倍首相は4月8日に任期満了となる日銀の黒田総裁を続投させる人事案を月内にも国会に提示する。複数の政府関係者が明らかにしたと9日に日経新聞が報じた。

 黒田総裁の任期は今年の4月8日だが、その前に岩田規久男副総裁と中曽宏副総裁が今年の3月19日に任期を迎えるため、首相は執行部と呼ばれる総裁と副総裁2名の人事をまとめて国会に提示するとみられる。

 これまで次期日銀総裁人事として黒田総裁の続投との予想が多かったことや、政府や市場にとっても最も安全策であるようにみえることで、市場は特にこのニュースには反応薄となっていた。しかし、本当に黒田総裁が続投となるのかもまだ予断が許さない。

 黒田総裁は仮に続投となっても、任期途中で交代するであろうとの観測も出ていたように、本人としてはそれほど積極的に再任は望んではいないのではなかろうか。しかし、選択肢としては黒田総裁の続投以外では考えづらい面もある。官邸や財務省、日銀そしてマーケットにとっても最も無難な線となるのが黒田総裁の続投となる。個人的には中曽副総裁の昇格という選択肢もあると思うが、その可能性は薄いように思われる。

 本当に黒田総裁が続投となるのかはまだ予断が許さないと見ている理由は、黒田総裁本人の意志がどうなのかという点とともに、副総裁人事も絡んでくる。黒田総裁続投となれば、副総裁のうちの一人は日銀プロパーとなることが予想される。そうなると報じられているように異次元緩和の功労者ともいうべき雨宮理事の副総裁昇格の可能性が高い。

 2013年3月19日に日銀の白川方明総裁(当時)は4月8日の任期を待たず退任した。これは正副総裁が同時に3月20日から就任できるようにするためのものであった。黒田総裁は2013年3月20日に就任したが、この際には翌月の4月8日でいったん任期満了となり、あらためて2013年4月9日に就任した格好となっており、このため総裁の任期は5年後の今年の4月8日となっている。

 2013年3月19日に日銀総裁に黒田氏が就任したわけだが、日銀は金融政策ばかりしているところではない。金融政策は日銀業務のほんの一部にしか過ぎない。そのトップに日銀外から就任したわけであるから業務の把握、挨拶回り等々を考慮すれば、4月4日にあらたな金融政策を決定するのは時間的に無理があると個人的にみていた。しかし、結果的にこの短期間で量的・質的緩和政策を決定することになる。これは雨宮理事がかなり貢献していたであろうと推測される。その雨宮理事が副総裁の有力候補となっている。

 問題はもうひとつの副総裁の椅子となる。現在の岩田副総裁は一応学者枠ともいえるが、財務省主審の総裁と日銀プロパーの副総裁、そして学者というかエコノミスト的な立場の副総裁がバランスが良い。しかし岩田副総裁はリフレ枠でもあったようで、官邸もリフレ積極論者を岩田副総裁の後任に据えたいとされている。ここに問題がある。スイス大使の本田悦朗氏の名前も挙がっているが、黒田氏と反りが合うとは到底思えない。かといってリフレ派でほかに適当な人材も見当たらない。そもそもリフレ派に絞ること自体がおおいに疑問が残る。

 それを言ってしまえば結果としてリフレ派の主張を取り入れて大胆で異次元な、本来は非常時の金融緩和をおこなってきたにも関わらず、物価目標は達成できず、異次元の緩和を拡大したり、いろいろと付け加えた金融政策を作り上げた方々が続投すること自体にも問題があったように思う。

 それはさておき、もうひとりの副総裁人事が今後ネックとなってくる懸念もある。リフレ派などに絞り込まず、金融政策には中立的な学者あたりから選出してもらうのが一番良いはずだが、いまの官邸はそんな意見には耳を貸さないのであろうか。


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# by nihonkokusai | 2018-02-14 10:06 | 日銀 | Comments(0)

イングランド銀行の追加利上げ観測強まる

 英国の中央銀行であるイングランド銀行は8日の金融政策委員会(MPC)で政策金利を年0.50%に維持すること、買入資産の保有額を4330億ポンドに維持することを全員一致で決定した。これは事前の予想通り。

 イングランド銀行は昨年11月2日のMPCで2007年7月以来、10年4か月ぶりとなる利上げを決定した。7対2の賛成多数で政策金利を過去最低の0.25%から0.50%に引き上げた。今回はこれによる効果を見極めたいとして現状維持を決定したとみられる。ちなみにこのときは全員一致ではなく、カンリフ副総裁とラムスデン副総裁が、賃金の伸びは低く現時点で利上げを正当化できないとして利上げに反対し、据え置きを主張した。

 今回、同時に発表されたインフレレポートによる経済成長見通しは、2018年が1.8%、2019年は1.8%、2020年も1.8%とした。11月時点では2018年が1.6%、2019年は1.7%、2020年は1.71%となっていたことで、それぞれ引き上げられた。

 インフレ見通しについては、1年後が2.28%、2年後が2.16%、3年後が2.11%。11月時点では1年後が2.37%、2年後が2.21%、3年後が2.15%となっていた。

 ただし足元の物価は昨年12月の消費者物価指数が前年同月比3.0%と政策目標の2%を大きく上回る状況が続いている。

 今回の声明文では、「2月のインフレレポートに沿って英国の景気が底堅く推移すれば、金融政策を11月時点の予想よりも幾分早く、かつ一段と引き締める必要があるだろう」と明記されていた。

 これを受けて市場では次回のインフレレポートが発表される5月のMPCでの追加利上げ観測を強めた。MPCの今後の日程は3月22日、5月10日(四半期インフレレポート)、6月21日、8月2日(四半期インフレレポート)、9月13日、11月1日(四半期インフレレポート)、12月20日となっている。

 ここにきて米国株式市場が大きく下落し調整局面を迎えている。ファンダメンタルズは良好であり、今回の調整は一時的との見方も強いが、これまでのゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていた状況に変化が生じる可能性はある。しかし、景気が大きく悪化するようなことがない限りは、イングランド銀行の再利上げの可能性は高いと思われる。


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# by nihonkokusai | 2018-02-12 10:14 | 中央銀行 | Comments(0)

今回の株安の要因ともなった米長期金利、悪い金利上昇が起きている可能性も

 米上院の与野党指導部は7日、国防費などを積み増すため、2018会計年度(2017年10月~2018年9月)と2019会計年度の歳出上限を合計3千億ドル程度引き上げることで合意した。同案が議会で成立すれば、18年度の歳出上限は前年度比1割強も高まることになる(日経新聞電子版の記事より引用)。

 これによって政府機関の閉鎖の懸念は後退するものの、あらためて大型減税と歳出増で政府債務がさらに膨らむことになり、米長期金利の上昇要因となりうる。

 米長期金利は2013年末のFRBによるテーパリングの開始決定をきっかけに一時3%台に乗せてきたが、それ以降は3%以内での推移が続いていた。テーパリングは2014年10月に終了し、2015年12月にはFRBは利上げを開始し慎重に正常化を進めることになる。

 2016年に入り、世界の金融市場は急速にリスク回避の動きを強め、外為市場では人民元とともに資源国を中心に新興国の通貨が下落、円高が進行し、株は下落し原油先物は30ドル割れとなった。これらを受けて1月に日銀はマイナス金利付き量的・質的緩和を決定し、3月にECBは包括的な金融緩和政策を決定した。また6月に英国がEU離脱を決定するなどしたことで、リスク回避により米国債は買い進まれ、10年債利回りは1.3%台まで低下して過去最低を更新した。8月にイングランド銀行が利下げや量的緩和を含む包括緩和を決定し、9月に日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定するものの、FRBの正常化路線に変更はなく2016年12月に2度目の利上げを決定している。

 2016年11月にトランプ政権が誕生したが、一時下落していた米株はむしろ上昇ピッチを速めることになる。米国の雇用がタイト化し、景気の拡大傾向が明らかとなり、2017年には3月、6月、12月にFRBは追加利上げを決定している。しかし、それでも米長期金利の上昇は抑制されており、2.6%以内での動きとなっていた。

 2018年1月19日に米長期金利は2.63%あたりにあった節目を抜けた。そこからはテクニカル的な動きも加わり、上昇ピッチを速め、2月5日には一時2.88%まで上昇した。今年も昨年と同様に年3回程度の利上げが予想されていることに加え、物価はFRBの目標には届いていないものの、景気拡大にともない物価上昇の可能性も意識されての米長期金利の上昇となったものとみられる。

 ここまではいわゆる良い金利上昇といえるが、そこに政府債務増とそれによる国債発行増という需給要因と債務悪化という悪い金利上昇が加わりつつある。米長期金利は次の節目は3%ではあるが、果たしてそこで止まるかどうかはわからない。さらに悪い金利上昇となれば、これが株式市場などにとっても悪材料視される。このため、今後の動向には注意が必要となる。米国は軍事パレードなどやっている場合ではないとも思うのだが。


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# by nihonkokusai | 2018-02-09 09:33 | 債券市場 | Comments(0)

世界的な株価急落となった今回のVIXショックはリーマン・ショックなどとは異なる

 2月5日のニューヨーク株式市場でダウ平均は取引時間中に1597ドル安と過去最大の下げ幅となり、引け値でも1175ドル安となって過去最大の下げ幅を記録した。これを受けた6日の東京株式市場では一時1600円を超す下げとなり、1071円安で引けた。

 このニューヨーク株式市場の急落の要因としては、2日の米雇用統計を受けた米長期金利の上昇とされるが、その米長期金利は2.88%あたりまで上昇したあと、5日には株安によるリスク回避という理由で2.70%に低下した。しかし、この長期金利の低下そのものは5日の米国株式市場は好材料視していない。6日のダウ平均は567ドル高と反発したが、この日の米長期金利は2.80%に上昇していた。これを見る限り、米長期金利の動向が米株に影響を与えたというのはむしろ考えづらい。

 そもそも2日の米長期金利の上昇は、1月の米雇用統計で非農業雇用者数は20万人増と予想を上回り、平均時給も前年比2.9%の上昇と高い伸びとなったことにより、FRBの利上げペースの加速観測が背景にあったとされる。FRBはすでに慎重に利上げを継続させているが、この日に就任したパウエル議長が米雇用統計を受けて、利上げベースを速めると指摘していたわけではない。あくまで市場の思惑であったが、その思惑が出た理由は米景気の拡大という、米株にとってはプラス要因であった。

 今回の米株の大きな調整はあくまでテクニカル的な動きとみておいた方が良いと思われる。2009年あたりを起点とし、2016年初当たりからやや上昇ピッチを加速させていたダウ平均であったが調整らしい調整が入っていなかった。このため、今回の米国株式市場の大幅調整の要因のひとつとして、ボラティリティインデックス(VIX)の空売りの解消などが指摘されている。米株はボラティリティが低い状態で長らく上昇基調が継続していたことも確かで、これはゴルディロックス相場(適温相場)とも呼ばれていた。その反動が一時的に起きた可能性がある。VIXという要因もひとつの象徴的なものであり、VIXショックが起きたともいえる。ここにアルゴリズムも絡んでフラッシュ・クラッシュを起こし、予想以上の下げを記録した。

 ボラティリティが低い状態で上昇相場が続き、何かしらのきっかけで急激な変動が起き、この場合は急落というケースが多いが、その後はボラタイルな相場、つまりボラティリティが高く値動きが荒くなることがある。1987年のブラックマンデーや2006年の日本の債券市場でのVaRショックなども類似している。このため、今後の値動きにも注意する必要はある。

 ただし、今回の下げをリーマン・ショックと比較してみると、市場の地合いは正反対である。リーマン・ショックの際には市場で不安が渦巻いており、これから特に金融機関で何が起きるのか先が見通せないという、最悪の環境下にあった。

 今回は景気が予想以上に拡大している状況であり、金融機関に対する不安視などが出てきているわけではない。むしろ、順調な景気回復で利上げ加速の心配をするぐらいである。米長期金利が上昇したと騒いでも3%にすら届いていない。参考までにリーマン・ショック時の米長期金利は3.4%近辺となっていた。


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# by nihonkokusai | 2018-02-08 10:03 | 金融 | Comments(0)

パウエル新体制となったFRB、株安で前途多難な船出なのか

 FRBのジェローム・パウエル理事は5日にFRB本部内で宣誓式を行い、第16代議長に正式就任した。任期は4年となる。2018年の理事ポストは正副議長を含めて7名となるが、イエレン前議長の退任により、現在4つが空席という事態となった。

 議長はパウエル氏となり、副議長は昨年10月に就任したクオールズ氏(銀行監督担当副議長)。もうひとりの副議長についてはエコノミストを登用するとされ、トランプ政権による人選が行われているようだが現時点では未定となっている。

 理事としてはブレイナード理事だけとなっており、グッドフレンド氏は議会の承認待ち。これにより理事ポスト7名のうち3席しか埋まっていない。また、常任理事となるとニューヨーク連銀総裁も加えて8名となるが、ニューヨーク連銀のダドリー総裁も2019年1月の任期を前倒しして2018年半ばに退任すると発表している。このため、こちらも入れ替わる可能性が高い。このように今年は中核メンバーがかなり入れ替わる。

 2018年に投票権を持つ地区連銀総裁は、メスター・クリーブランド連銀総裁、ボスティック・アトランタ連銀総裁、ウイリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁となる。もうひとつのリッチモンド連銀の総裁は昨年までラッカー氏が務めていたが、2017年4月に辞任した。その後、コンサルティング会社マッキンゼーのトーマス・バーキン氏が同連銀により指名され、今年1月に総裁に就任している。

 パウエル議長就任のタイミングで、ニューヨーク株式市場は記録的な下げとなり、前途多難な船出のように見えるが、そもそも記録的な下げを生み出すほどに株価が記録的な上昇をしていたともいえる。それにはFRBの功績というか、大胆な金融緩和による過剰流動性相場と、その大胆な緩和策も奏功して世界的な金融経済リスクの後退による景気拡大による業績相場によるところも大きい。

 FRBは先んじて出口戦略を講じてきたが、そのペースは極めて慎重となり、物価の上昇も抑制されていたことも相まって長期金利も低位での推移が続いていた。これも株価にとっては安心材料となっていたが、ここにきてやや長期金利が上昇ピッチを早めたこともあり、株価は調整局面を迎えたといえる。しかし、これが実態経済に大きく影響するとは、いまのところは考えにくい。そもそも景気の悪化などが株価下落の要因となっていたわけでもない。今回の調整がどの程度の深さとなるのかはいまのところ予測が難しいものの、FRBの利上げペースがこれでブレーキが掛かることも考えづらい。パウエル議長率いるFRBも淡々と正常化路線を歩むのではないかと予想される。


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# by nihonkokusai | 2018-02-07 09:56 | 中央銀行 | Comments(0)
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「債券ディーリングルーム」ブログ版


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