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2016年 10月 17日 ( 2 )

日銀の国債利回り操作はスラスターに過ぎない

 日銀の黒田総裁はブルッキングス研究所における講演で、イールドカーブコントロールに関して次のような発言をしている。

 「日本銀行は既に、きわめて多額の国債買入れを行っていること、そして、これとマイナス金利政策の組み合わせによって、ある程度、長期金利を操作することができているということです。」

 日銀の国債保有額は全体の4割に及ぶ。国債の利回り形成には需給バランスの影響が大きいことはたしかである。ただし、それは400兆円というストックによる影響ではなく、毎月10兆円近い国債を買い入れているフローの面が大きい。

 年度の国債発行額のほとんどを日銀が買い入れることで、日銀の国債買入そのものが国債市場の流動性を低下させ、国債買入の金額を多少増減することで、国債の利回り形成に影響を与える。現状、日本国債は日銀の金融政策と国債買入動向を見ながら形成されていると言えることは確かである。

 しかしながらこれは日本国債に対し他の変動要因がさほど大きく関わっていないことも影響している。国債は景気や物価の体温計とされており、その機能が日銀の買入により失われたとの見方もある。しかし景気回復が緩やかな上、物価は前年比マイナスとなっているなどしており、これが長期金利の上昇を抑制している面がある。FRBが出口政策を取っているにも関わらず米長期金利が1%台で推移するなど、海外要因も円債にはフォローとなっている。

 さらに中国など新興国への懸念、原油安、英国のEU離脱問題等々、大きなイベントが起きるたび、それらは金利にとっては低下圧力になるものがほとんどとなっていた。つまり日銀が押さえつけなくても、金利は上がりづらい環境となっており、年限別の国債の買い入れを少し減少するだけで、その年限の国債が売られるなどの微調整があたかも可能な状況となっている。

 これはあくまで金利のバイアスが下方に掛かりやすいことが影響しており、このため日銀の買入の微調整で金利が少し修正されるという、人工衛星のスラスターのような軌道の微調整は可能となっている。

 この債券市場を取り巻く地合がこのまま半永久的に低下圧力のみということは考えづらい。金利が低下するイベントばかり起きる保証もない。スラスターでは修正できないイベントが起きたときに日銀はどうするのか。

 残念ながら相場の世界には無限の力は存在しない。日銀が仮にその力を利用するとなれば、当然ながら等価交換で大きなものを失う可能性がある。それは信用という日本国債にとっての最後の拠り所となるものとなることも意識しておく必要があるのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2016-10-17 18:37 | 日銀 | Comments(0)

日銀の原田審議委員は何故、新政策に賛成票を投じたのか

 日銀の原田審議委員は10月13日に松本市で講演を行った。リフレ派の代表格ともされる原田氏であっただけに、政策目標を量から金利に変えてしまった9月21日の金融政策決定会合での「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の議長案に賛成票を投じたのかという点が注目された。

 日銀の政策委員にはリフレ派とされる委員が少なくとも3名存在する。岩田副総裁と原田審議委員、そして櫻井審議委員である。岩田副総裁は執行部であり、立場上反対票を投じることは難しい(過去に執行部内で反対票が投じられた事例は存在するが)。そして櫻井委員は自らこの新しいフレームワークの変更をインタビューではじめて示唆した立場となっており、反対票は投じずらい状況にあった。しかし何故、残りの原田委員も賛成していたのかが注目されたのである。

 原田委員の講演と会見の内容が日銀のサイトにアップされているが、そこから量を見限って金利の政策に賛成票を投じた本当の理由を探ることは難しい。しかし、会見の内容からはある程度推測できる部分も存在した。

 「ポジティブなショックがあった時に、例えば10年物金利について考えると、当然金利が上がるわけです。金利が上がるようなショックがあった時に金利をゼロに止めようとすることは、良いことがあった時にそれを更に拡大するような金融政策を行うことになりますので、これは金融緩和の強化です」

 「良いことがあった時」とは景気や物価にとってプラスの材料が出て長期金利が上がっても、イールドカーブコントロールによって長期金利はゼロ%に維持されることで、緩和効果が強まるとの説明である。それでは「悪いことがあった時」に長期金利が上昇したらどうするのか。それが本当にコントロールできるのかは指摘されていない。

 「ネガティブなショックで金利が下がるケースを考えてみます。仮に日本の輸出を急減させるようなショックがあれば、何もしなければ金利は下がります。金利が下がる時にこれをゼロに止めようとすれば、買入額を減らすことになりますが、これは金融を引き締めることになります。そうではなく、ネガティブなショックがあった時には、技術的にちょうど80兆円のペースになるかは分かりませんが、80兆円をめどに買入れを進め、その結果、金利が下がってもそのままにするということです。」

 何かしら世界的なリスクが強まり長期金利がさらに低下してしまう際には、相応の買入額の減額はせずに「概ね」80兆円を維持させることで金利低下を食い止めることはせず、それを放置する。いずれにしても善し悪しにかかわらず何らかのショックがあっても、金融緩和はむしろ深掘りされることになり、それを原田委員は納得したために、賛成票を投じたとも言えるのか。どうやら日銀の実務面での執行部の説得が功を奏したといったように感じられる。さらに原田委員は次のような名言も残していた。

 「リフレ派は量を重視するのだから量を重視しないような政策には反対すべきだ、というご質問についてです。まず、リフレ派という言葉ですが、デフレから脱却して、日本経済を成長軌道に乗せるために、2%の「物価安定の目標」を設定し、その達成を目指すのがリフレ派であると私は考えています。その意味では日本銀行は皆リフレ派ですし、政府において経済政策に関係している方々も、全てリフレ派です。」

 「2%の「物価安定の目標」を達成する必要がないというご意見の方は、ごく少数であり、敢えて言えば、異端の経済政策を標榜している方々ではないかと思います。」

 ここで注意すべき言葉は「日本銀行は皆リフレ派」というところではなかろうか。量とかに関わらずインフレターゲット目標を達成するのがリフレ派というのであれば、日銀だけでなく欧米の中央銀行も政府も皆、確かにリフレ派といえる。

 しかし、問題はそのインフレターゲットをどのように達成するのかという「手段」であったはず。私も原田委員の言うところの異端の経済政策を標榜している者に含まれてしまうかも知れないが、少なくともフリーランチ政策で物価を上げることはできない。そのフリーランチ政策(減税含めた財政拡大と債務拡大対処のための日銀の国債引き受け等のミックス政策)の効果とともに、それによる国債や円の信用の毀損の可能性を危惧しているのが、原田委員の言うところの「異端者」となるのであろうか。

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by nihonkokusai | 2016-10-17 09:29 | 日銀 | Comments(0)
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