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2016年 05月 29日 ( 2 )

プライマリーバランスを均衡化させる必要性

 これだけ大量に発行されている国債が円滑に消化されているのは日銀が大量に購入していることもありますが、国債への信認が維持されているという点が重要です。

 国債の信用を維持するために必要とみられる政策のひとつが、基礎的財政収支の均衡、さらにその黒字化に向けての政府の姿勢です。基礎的財政収支とはプライマリーバランスとも呼ばれます。プライマリーバランスとは、国債費関連を除いた基礎的財政収支のことで、国債の利払いと償還費(国債費)を除いた歳出と、国債発行収入を除いた歳入についての財政収支です。プライマリーバランスがプラス(またはマイナス)の場合には、プライマリーバランスの黒字(または赤字)と表現します。

 プライマリーバランスが均衡すれば、毎年度の税収等によって、過去の借入に対する元利払いを除いた毎年度の歳出を賄うこととなります。プライマリーバランスが均衡し、その上で金利と名目成長率がほぼ同じとなればあらたな借金は増えないことになります。つまり税収以内で一般歳出を補うということになります。しかし、現在のように一般歳出が税収より大きくなると税収に加えて国債の発行による収入を充てることになるため、プライマリーバランスが赤字の状態が続きます。

 今後は少子高齢化が進むと予想されており、税収の伸びもそれほど期待できないため、さらに財政赤字幅が増加する懸念もあります。プライマリーバランスを保つためには大幅な歳出カットとともに、消費税などの増税による歳出歳入改革が必要とされます。しかし、それでもプライマリーバランスを均衡化するのは並大抵のことではありません。

 そこまでしても、何故プライマリーバランスを均衡させる必要があるのでしょうか。膨大な日本の国債残高はいずれ国民の税金で返していかなければいけません。しかし、現在の国債残高をすべて短期間に返済することは現実的に不可能です。

 ただし、日本政府に対する信認が続く限りは国債を最終的に償還せずに借り換えの繰り返しである程度赤字財政を維持していくことは可能です。この持続可能性のことを「サステナビリティ」と呼びます。

 国の財政赤字を維持可能とさせるためにはプライマリーバランスを黒字化させ、国債残高そのものを減少させていく必要があるのです。政府は2020年度の基礎的財政収支の黒字化を目指すこととしています。この目標の達成は難しいとの指摘もありますが目標に向けての政策を維持することにより、日本国債への信認は維持されていくものと思われます。そのためにも妙な理屈をこねて延期するのではなく、消費増税は予定通りに実施するべきです。国債の信任は積み上げるのはたいへんですが、崩れ出すと速いことも認識する必要があります。

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by nihonkokusai | 2016-05-29 16:29 | 国債 | Comments(0)

リーマン・ショック並みのリスクとは何か

 2007年の2月あたりから米国住宅市場が減速し、2005年から2006年に証券化されたサブプライムローンについて、金利が跳ね上がる2年を過ぎたものが出てきました。これらのローンについては、借り手に返済能力があるかという審査も不十分で、支払い遅延やデフォルトが相次ぐようになりました。これによりサブプライムローンを組み込んだ債務担保証券(CDO)の価格が大きく下落しました。さらに資産担保CPを購入することで、様々な証券化商品プログラムに資金を供給していた投資家が、担保にサブプライムローンが含まれていることを嫌気し、購入を手控えてしまったのです。これにより欧米の金融機関が資金繰りの問題に直面し、その後、巨額の損失見込みを計上するなどしたことで、金融市場を大きく混乱させる原因となりました。

 金融市場の動揺の背景には、高度化というよりも複雑化した金融商品に隠れていたリスクが表面化したことも大きいと言えます。サブプライムローンについてはそういった層に融資していた金融機関が直接被害を受けるものの、本来なら世界的な影響を及ぼすことは考えづらいはずです。しかし金融機関一社が、こういったローンのリスクをすべて一人で背負うことには無理があり、そのローンを担保にした証券を発行し、数多くの投資家に転売してしまうという仕組みが考え出されました。つまり一社では背負い切れないほどの信用リスクを、細分化して広範囲にばら撒いてしまう手法です。もちろんトータルのリスクが軽減するわけではありません。しかしこの仕組みならば、従来では不可能であったようなローンも提供することが可能となったのです。このような住宅ローンを裏付けにした証券が、住宅ローン担保証券(RMBS)と呼ばれるものでした。さらに合成債務担保証券、CDOの一部には、ローンや住宅ローン担保証券を組み入れたものがあったのです。

 米住宅バブルの崩壊により、サブプライムローンの焦げ付きが増加し、格付会社がそれを組み入れた証券化商品を格下げしたことで巨額の評価損が発生しました。その結果、それらを大量に保有していた欧米の金融機関で、数十兆円とも言われる天文学的な損失が表面化したのです。2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに、カウンターパーティ・リスクに対する市場参加者の警戒感が高まりました。

 たとえばリーマン・ブラザーズ証券の破綻の際に、「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する」旨を発表したことで、約定済みの日本国債の取引が一切履行されないという非常事態が発生しました。この結果、リーマンが国債取引について引き起こしたデフォルトの規模は、2008年9月の予定分だけでも約7兆円規模に上ったのです。これによりリーマンと決済を予定していた相手先では、ポジション再構築、リーマンから引渡しを受けられなかった国債の調達及びリーマンに引き渡す予定であった国債の売却処分を余儀なくされたのです。また、リーマンから引渡しを受けなかったものについては、即日にその国債を調達することもできずフェイルを余儀なくされました。リーマン・ショックのあった2008年9月において、累計で6兆円弱のフェイルが市場で発生しました。リーマン破綻の経験を通じて、市場では、「破綻等のストレス時にモノ・金を予定通りに受け取れないリスク」(デフォルト・フェイルに伴う流動性リスク)が、概念上の存在に止まらない現実的なリスクとして、改めて強く認識されたのです(「リーマン・ブラザーズ証券の破綻がわが国決済システムにもたらした教訓」日本銀行資料より)。

 「リーマン並みのショック」は米国住宅市場のバブルが崩壊し、そこに複雑に高度化した金融商品のリスク分散手法の欠点が顕在化し、そのようなリスクが顕在化すると前提せずに投資していた金融商品に大きな損失が発生し、グローバルな大手金融機関を直撃したのです。大手金融機関の破綻により市場における流動性リスクが顕在化し、カウンターパーティ・リスクに対する市場参加者の警戒感が世界の金融市場を直撃しました。そこで世界的な金融経済危機が発生したのです。それが日本の国債市場も揺るがしたのです。ではいま、このような潜在的なリスクはどこに存在していると言えるのでしょうか。中国、産油国などにもないわけではないものの、むしろその潜在的なリスクは債務残高の異常な大きさと中央銀行が財政ファイナンスのような行動をしている日本にこそ潜んでいるとも言えるのではないでしょうか。

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by nihonkokusai | 2016-05-29 10:48 | アベノミクス | Comments(0)
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