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2016年 02月 26日 ( 2 )

全く見えない日銀の出口政策

 あらためて日銀のマイナス金利導入後の出口政策について考えてみたところ、そもそも出口にたどり着けることがありうるのかという問題があった。この場合の出口というのは、日銀がマイナス金利付きの量的・質的緩和政策を解除することになるが、それには条件として物価目標であるところの消費者物価指数(総合)の前年比がプラス2%を安定的に上回る環境が必要となる。

 日銀は2013年4月の量的・質的緩和の導入に際して、2年程度の期間で2%の物価目標を達成できるとした。大胆な国債買入によりマネタリーベースを大きく膨らませることによって、レジームチェンジが意識されて人々のインフレ期待の高まりで、物価は上昇するとのシナリオであった。そこには国債買入による長期金利の低下、さらには大胆な緩和による円安の影響も意識された。

 ところが物価は一時的に前年比プラス1.5%まで上昇したところでピークアウトした。その後の物価下落について日銀は原油価格下落が要因と指摘し、リフレ派は消費増税による個人消費の低迷が要因とした。少なくともレジームチェンジが意識されて人々のインフレ期待の高まりによる物価上昇は起きなかったことは確かである。

 すでに追加緩和による通貨安誘導も困難となりつつあるなか、市場を通じた操作にも限度がある。このため日銀の金融政策で物価を上げることはほぼ困難と言える。物価が上昇するとなれば日銀の政策とは関係のないところで起きることが予想される。つまり原油価格の急騰などによる物価高となろう。しかし、このような外部要因での一時的な物価上昇により、日銀がマイナス金利付きの量的・質的緩和を解除するとは思えない。実際に2008年のリーマン・ショック前に原油価格の急騰でコアCPIが2%を超えた際も、日銀は動いていない。その際には、世界的なショックが起きていたことだけでなく、これが一時的なものとの判断も働いたと思われる。

 つまりは日銀がいくら頑張っても物価目標を達成することは難しく、このままでは永遠に異次元緩和を続けることになりかねない。日銀は量の政策が厳しくなったことで、量も増やしながらそれとなく金利に目標をシフトしたが、これはかなり矛盾した政策である。いずれ国債買入で札割れが発生する可能性も出てくる。それでも日銀はマイナス金利のマイナス幅を深くする追加緩和でカバーするようなことになるのかもしれない。しかし、マイナス金利政策の弊害がすでにクローズアップされており、これが安倍政権の支持率を低下させるような状況になると、政権から日銀の追加緩和にブレーキを掛けるような事態も起こりうる。

 このままでは日銀は次第に深みに入り抜け出せず、出口どころではなくなり、進むことも後退することも出来なくなる懸念がある。結局、日銀の出口政策は日銀の執行部が入れ替わるなどして、金融政策を異次元から通常次元に戻すことが必要となるのかもしれない。それには量を増やすことを止めて、金利もマイナスからプラスに戻して、あらためて金融政策の在り方を模索することが出口政策となるのかもしれない。しかし、市場を納得させてそれを行うことには、かなり困難を伴うことも確かである。

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by nihonkokusai | 2016-02-26 18:28 | 日銀 | Comments(0)

マイナス金利はある意味、恐怖

 25日付けの日経新聞によると、金融界で今春の労使交渉で従業員の基本給を底上げするベースアップ(ベア)を見送る動きが一段と広がってきたそうである。「みずほフィナンシャルグループ」の労働組合は今年の春闘で、基本給を引き上げるベースアップの要求を3年ぶりに見送る方針を固めたそうである。損保保険ジャパン日本興亜の労組も2年ブリに同要求を見送る方向のようで、すでに三井住友銀行や東京海上自動火災保険の労組もベア要求を見送る方針を固めているそうである。

 この背景には、日銀のマイナス金利政策の導入により、経営環境が厳しくなっていることがある。皮肉なことに、賃金の上昇などによる物価上昇を目指すはずのマイナス金利付き量的・質的緩和政策は、日銀のお膝元の金融機関への収益を圧迫し、ベースアップどころではない状況を作り上げている。まさに即効性のある政策ではあったが、結果は正反対の方向に出ている。

 もちろん金融機関の収益を多少なり圧迫することは百も承知のマイナス金利政策であったかもしれないが、これだけで簡単に貸し出しが伸びたり、ポートフォリオのリバランスが生じたりすることは考えづらい。むしろ弊害の方が危惧され、リスク資産への投資も手控えさせるような状況になりつつある。

 量的・質的緩和やマイナス金利は、レジームチェンジを図ることがひとつの目的であったのかもしれないが、それだけで人々の意識が簡単に変えられるものではない。バズーカ1と2については、円安株高の流れを維持もしくは加速させたことで、効果があったかのように見えたが、あくまで外部要因が味方した。しかし、マイナス金利の導入のタイミングでは外部要因はまさに逆風となっており、日銀の追加緩和程度ではその流れを変えることはできなかった。そもそも金融政策は流れを加速することはできても、押し返す能力はない。イングランド銀行がジョージ・ソロスに負けた事例を持ち出すまでもなくこれは為替介入などにも言えることである。

 つまりマイナス金利政策は目的であったであろう金融市場の流れを変化させることはできず、人々の不信感を強めさせることになってしまった。貯蓄好きとなっている日本人にとって金利がマイナスになることはある意味、恐怖でしかない。

 リスク資産に振り向けようとしても年初からの急激な株安があり、海外資産に振り向けようとしても急激な円高となり、むしろこれまでリスク資産に資金を投じていた人たちが大きな損失を抱える結果となっている。原油安とその原因であるところの新興国経済の減速は、新興国通貨も下落させており、右肩上がりの相場では見えなかったリスクが顕在化しているのがいまである。

 このような状況下、あまり金融に知識のない預貯金重視の個人投資家にリスク資産を勧めるべき状況にはない。逆張り的な発想もあるかもしれないが、ここがボトムという保証もない。しかし、安全資産とされる資産(国債や預貯金)の金利は日銀に奪われてしまった状況となってしまっている。そこまでして日銀はいったい何をしたいのか、そのあたりの説明も求められよう。

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by nihonkokusai | 2016-02-26 09:29 | 日銀 | Comments(0)
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