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2015年 06月 09日 ( 2 )

日銀は反リフレ派が巻き返しか

 日銀が2013年4月に量的・質的緩和を導入して約束の2年がすでに経過した。日銀はこの緩和を異次元の緩和と称し、2年で2%の物価目標を達成するとした。しかし、それから2年目となる今年4月の消費者物価指数はコア指数が消費増税の影響を除いてゼロ%となり、物価目標の2%は達成どころか、異次元緩和以前の水準に戻ってしまっている。

 その結果、日銀は2年という期間を曖昧にして延長させた格好ではあるが、2年という期間で達成できなかったことは確かである。これはいわゆるリフレ政策が誤りであったことを示すものといえるのではなかろうか。1990年代初めに当時の岩田規久男上智大学教授と翁邦雄日本銀行調査統計局企画調査課長との間でのマネーサプライ論争があった。これはリフレ派と日銀の金融政策の主流派との論争であった。この際に日銀は結局、リフレ政策を退けた格好だが、2012年12月の安倍政権の誕生により、異端ともされたリフレ政策を導入せざるを得なかった。これについては日銀内部でも批判的な意見が多かったはずだが、安倍政権の勢いがそれを遠ざけた格好となったのではなかろうか。この際に、それでは約束の2年間だけは様子を見てやろうとリフレ政策の行く末を見守っていた関係者も多かったのではないかと推測される。

 その2年が経過した。結果は見ての通りとなる。結果が出た以上、リフレ政策はやはり誤りであり、その政策をさらに推し進めると出口政策が困難になるなどの弊害が起きかねない。現実にこれ以上量を増やすことも難しい。日銀執行部にとっても身動きできない状況下、リフレ政策そのものを見直そうとしているのではなかろうか。

 そのひとつの現れが、マネタリーベースとの言葉の封印ではなかろうか。『「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証』という企画局のレポート(日銀レビュー)で「マネタリーベース」との言葉を封印し、さらには先日の岩田副総裁の講演でも「マネタリーベース」との言葉を使わなかったことからも見受けられる。岩田副総裁への記者会見では「マネタリーベース」についての質問が出たが、岩田副総裁は量ではなく質であることを殊更強調していた。リフレ派筆頭であったはずの岩田副総裁としては、おかしな発言と言えよう。

 そして、岩田副総裁は講演の参考グラフからついに予想物価のグラフを使わなくなった。6月4日の国際会議の開会挨拶で、黒田日銀総裁は予想物価上昇率について、「中央銀行にとっては、予想物価上昇率をどのように計測するのか、予想物価上昇率が実際の企業の価格・賃金設定行動や家計の消費行動にどのように影響するのか、さらに、予想物価上昇率のアンカーの頑健さをどのように評価するのか、といった点は政策運営上の大きな関心事項です。この分野の研究が、今後さらに進展していくことを期待します。」とコメントしている。予想物価があってこその異次元緩和の波及経路であったはずが、まだ研究途中とはどういうことなのか。

 さらにピーターパンの物語の「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」という言葉を紹介している。大切なことは、前向きな姿勢と確信とはしているが、すでにリフレという魔法が解けてしまったことを暗に示しているのではないかと勘ぐりたくなる。

 この黒田総裁の講演では、非伝統的な金融政策との言葉が何度か出てくる。また日銀のレポート、「均衡イールドカーブの概念と計測」のなかで「イールドカーブ全体に働きかける非伝統的な金融政策」とあった。ややこちらも勘ぐり過ぎかもしれないが、量を中心とした異次元緩和、いわゆるリフレ政策から、本来の金融政策に舵を戻そうとしているのではなかろうか。2年経って結果が出なかったリフレ政策に対し日銀のなかでも、反リフレ派の勢力の巻き戻しが起きているのではなかろうか。

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by nihonkokusai | 2015-06-09 09:36 | 日銀 | Comments(0)

米利上げ時期は前議長を見習って12月?

 6月5日に発表された5月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比28万人増となり、市場予想の22万人台を大きく上回った。失業率は労働人口の増加を受けて5.5%と4月の5.4%に小幅上昇し、平均時給は前月比0.3%上昇となり、時給の前年同月比上昇率は2.3%と2013年8月以来の高い水準となった。

 単月の数値だけで金融政策が決められるわけではない。しかし、ここにきての経済指標がやや悪化しているものが多く、市場ではFRBの利上げ予想時期が後退し、この雇用統計の数字によりそれが再び引き寄せた格好となった。

 FRBのブレイナード理事は、このところ続く弱いデータが経済の力強さに疑問を生じさせていると指摘し、年内利上げの予定を遅らせることにオープンな姿勢を示唆したとされる。さらにIMFは4日の報告書で、FOMCは初回利上げを2016年前半まで先送りするべきだと指摘していた。

 しかし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁からは「労働市場の改善が続き、インフレ期待が今後もしっかり抑えられた場合は、成長見通しをめぐり暗雲が垂れ込めない限り、金融政策正常化の年内開始決定を支持するだろう」との発言があり、あらためて年内利上げの可能性を指摘した。イエレン議長のできれば年内に利上げを行いたいとの意向には変化はないと思われる。

 5日の米国債券市場では、米10年債利回りは2.43%まで上昇した。4日にも一時2.42%まで上昇しており、節目のひとつ2.5%に接近しつつある。ここを抜けるといよいよ3.0%が見えてくる。3%は2013年12月にFRBがテーパリングを開始した際の水準であり、その前は2013年9月に3%台をつけていた。

 2013年9月に3%台をつけていたのは9月のFOMCでのテーパリング開始の決定が予想されていたためである。実際には9月のテーパリング開始は見送られ、12月となったが、いったん予行練習をした効果があったのか、米10年債利回りの12月の上昇は3%近辺で止まった。

 2013年9月に米10年債利回りが3%台に乗せるきっかけとなったのが、5月22日のバーナンキ議長(当時)の発言である。バーナンキ議長は上下両院合同経済委員会の証言を行ったあとの会見で、「状況改善の継続を確認し、持続可能と確信できれば、今後数回の会合で資産買い入れを縮小することは可能だ」と発言した。このテーパリングの発言を受けて市場が揺れた。これをかんしゃく(tantrum)を起こしたと表見され、テーパー・タントラム(taper tantrum)との言葉が生まれた。

 面白いことに、FRBの年内利上げがあらためて意識されたのは今年5月22日のイエレン議長の講演で、FRBの利上げについて、年内のある時点でと発言したこともきっかけとされる。この発言はこれまでも何度か繰り返されていたものではあるものの、まさかとは思うが2年前の同じ日にバーナンキ前議長がテーパリングを示唆していたことも意識していたのであろうか。

 今回もその前任者が引き起こしたとされる市場のかんしゃくが起き始めているとの観測もある。ただし、今回の米長期金利の上昇の背景には、FRBの利上げ観測とともにドイツの長期金利の反発も要因となっていることにも注意したい。いずれにしても米長期金利が上がりやすい環境にあることは確かであろう。

 2013年9月頃の様子をあらためて確認したところ、この年のワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムには、バーナンキ議長は出席していなかった。イエレン議長も今年8月27日~29日にジャクソンホールで開催される年次経済シンポジウムへの参加を見送る方針だと伝えられている。どうやらこれもまた先代議長を見習っているのかもしれない。

 そうだとすると意外に2013年と同様に、9月のFOMCで利上げは見送って12月ということも考えられるかもしれない。イエレン議長の「年後半」とはいったいどのタイミングを示すのか。それを巡っての市場のかんしゃくはどの程度まで起きるのか。いずれにしても米長期金利の3.0%が大きな目安になることは確かである。

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by nihonkokusai | 2015-06-09 09:25 | 中央銀行 | Comments(0)
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