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2014年 10月 23日 ( 2 )

国債の入札でマイナス金利が発生した理由

 10月23日の国庫短期証券(3か月物)の入札において、最低落札価格が100円00銭0厘0毛、平均落札価格は100円00銭1厘0毛となった。国庫短期証券は割引形式で発行されるため、額面価格の100円を上回るとマイナス金利となる。平均落札利回りはマイナス0.0037%となり、国債の入札として初めてのマイナス金利が発生した。

 国庫短期証券とは、昔は短期国債(TB)や政府短期証券(FB)と呼ばれたもので、現在はこの2つが統合されて国庫短期証券として発行されている。期間は2か月程度、3か月程度、6か月程度、1年程度に分かれている。国庫短期証券は割引形式で発行され、法人のみ購入ができ、個人は買うことはできない。

 すでに既発債の売買で国庫短期証券はマイナス金利で取引されていた。このため、国債の入札におけるマイナス金利も時間の問題とみられていた。たとえば7月10日の3か月物の国庫短期証券の入札前の取引において、すでにマイナス0.002%の出合いがあったのである。

 なぜマイナス金利が発生したのかといえば、日銀が量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和によって国債を市場から大量に買い付けているためである。供給よりも需要が大きく、このため金利を払ってまで買う投資家が出てきたのである。

 それはおかしいだろう、金利を払うくらいなら、国債など買わずに現金で持っていれば良いではないかと思う人もいるかもしれない。確かに個人であれば、そうするかもしれない。しかし、個人でも大金を家の金庫に置くには、そもそも金庫が必要であるとともに、盗難の恐れもある。

 これは大きなお金を動かす銀行や生命保険会社、公的年金なども同じであり、しかも金額が数千億円とか数兆円となると現金を保管する場所もない。このため、機関投資家と呼ばれる銀行などはより現金に近い、売り買いのしやすい短期の国債に資金を置いておくのである。

 それでも金利を払ってまでして国債を買わなくても、日銀の当座預金に預ければ超過準備の部分には0.1%の金利を日銀は払ってくれる。日銀の口座に預ければ済むことではないかとの指摘もあろう。しかし、銀行などは担保としてある程度の量の国債を買っておかねばならないし、機関投資家も海外投資家などのように日銀の当座預金口座を持っていないところもあり、このようなニーズがあるため、マイナス金利でも国債を購入する投資家が存在するのである。

 ただし、マイナス金利といっても割引形式の債券なので満期日に100円で償還されるものを100円以上で買い付ける格好となる。投資家が利子を別に払うわけではない。

 この短い期間の国債のマイナス金利は個人の生活には直接影響を与えることもない。日銀の政策金利がマイナスとかにならない限りは、預貯金金利がマイナスとなることは考えられない。参考までに、ユーロ圏の中央銀行であるECBのマイナス金利は、政策金利というよりその下限となる部分がマイナスに掛かったものであり、こちらも政策金利そのものはマイナスではない。

 このため、我々の日常生活に直接影響は出ないものの、短い期間の金利が超がつくくらい低い状態となっており、これは預貯金金利も超がつくくらい低い状態にあることを示す。さらにこれは長めの金利にも少しずつ影響を与えることも考えられる。すでに10年債利回りは0.5%割れとなっており、国債で資金を運用しようにも利子が低い状態が当面続き、その分、住宅ローンなどの金利については低い状態にあるといえる。

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by nihonkokusai | 2014-10-23 16:34 | 国債 | Comments(0)

ECBが国債買入れに踏み切れない理由 --ドイツのハイパーインフレの亡霊--

 第一次世界大戦の敗戦により、ドイツは天文学的な賠償金を背負わされ、財政支出の切り札になったのが、国債を大量発行しドイツの中央銀行であるライヒスバンクに買い取らせるという手法であった。その結果、ドイツは1923年にかけてハイパーインフレに見舞われた。

 そのハイパーインフレはヒャルマル・シャハトが設立したドイツ・レンテン銀行によるレンテンマルクの発行などにより終息することになる。レンテンマルクとそれまでの通貨であるパピエルマルクの交換レートは「1対1兆」と決定された。大規模なデノミとともに政府が財政健全化を発表したことにより、いったんインフレは終息する。このインフレの収束はレンテンマルクの奇跡と呼ばれた。さらにシャハトの指導によるアウトバーンを初めとする大規模な公共事業などによって失業率は改善し、ドイツは1937年にほぼ完全雇用を達成したのである。

 レンテンマルクは法定通貨ではなく不換紙幣であり金との交換はできなかった。しかし1924年8月30日には、レンテンマルクに、新法定通貨であるライヒスマルクが追加された。レンテンマルクとライヒスマルクの交換比率は1:1となった。

 シャハトなどの支援もあり、1933年1月30日にはヒトラー内閣が成立。しかし、ヒトラーがシャハトを解任したあたりから再び状況が変わる。シャハトが帝国銀行の総裁を兼務していた際は国債の発行にも歯止めがかけられていたが、その歯止めがなくなった。ヒトラーは帝国銀行を国有化して大量の国債を引き受けさせ、戦争に向けて軍需産業への莫大な投資を行った。ただし、日本と同様に価格統制によりハイパーインフレそのものは発生しなかったが、戦後にハイパーインフレが発生することになる。敗戦によりヒトラー政権の発行したライヒスマルクは紙切れ同然となった。

 戦後設立されたブンデスバンクは、インフレに対して極度に神経質となり、その要因となった中央銀行による国債引受に対して警戒感というか嫌悪感を強めたのは、この歴史が背景にある。ブンデスバンクは政府からの独立も保障され、ECB発足以前は世界でも最も高い独立性を有する中央銀行の一つであると評価されていた。

 1993年に発効した「マーストリヒト条約」およびこれに基づく「欧州中央銀行法」により、当該国が中央銀行による対政府与信を禁止する規定を置くことが、単一通貨制度と欧州中央銀行への加盟条件の一つとなった。つまり、ドイツやフランスなどユーロ加盟国もマーストリヒト条約により、中央銀行による国債の直接引受を行うことは禁止されている。当然ながら欧州中央銀行(ECB)も国債の直接引受は禁じられている。

 2010年5月、ECBによる国債買入れが実施されたが、これはあくまでユーロの信用危機による国債市場の安定化そのものが目的となっており、例外的なものとなっていた。しかし、もしECBが今後追加緩和策、量的緩和として国債を買入れるとなれば、財政規律の重要性等が明記された「成長安定協定」に違反することになりかねない。

 特にドイツ出身の委員がECBの国債買入れに反対しているのはこの歴史のためである。ただし、ドイツ国内にあっても景気の低迷や物価下落もあり、ECBの国債買入れに関しては意見が分かれつつある。

 10月21日にはECBによる社債の買入れ観測が出たことで、これが欧米の株式市場の反発要因のひとつとされた。国債の買入れについてはハードルが高いことで、まずはカバードボンドと呼ばれる銀行などの金融機関が保有する債権を担保として発行する債券の買入れなどから始め、次のステップとして国債ではなく社債が出てきたのも上記の理由によるものと推測される。

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by nihonkokusai | 2014-10-23 08:17 | 国債 | Comments(2)
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