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2013年 08月 05日 ( 2 )

『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』

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 このたび「聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓」という本を書かせていただきました。まもなく発売されます。

 この本の表紙カバーの安倍首相と高橋是清が並ぶ写真を見て、本の内容についてピンときた方もいらっしゃるかもしれません。

 安倍首相は2013年6月のロンドンでの講演で、「ワンス・アポン・ア・タイム。日本に、高橋是清という、財政家がおりました。」と話をはじめ、深刻なデフレから日本を、世界に先駆けて救い出すことに成功した人物として高橋是清を紹介しました。

 高橋是清が深刻なデフレからの脱却のために打ち出した政策が高橋財政です。それがスタートしたのは1931年12月です。安倍首相はむかし、むかしと言いましたが、この年に生まれた方でご存命の方も多いはずです。高橋財政は過去の歴史の物語などではなく、少し前の出来事でもあったのです。

 高橋是清は当時の日本の財政や金融を知り尽くした人物でもありました。その高橋是清が打ち出した政策とはどのようなもので、それがアベノミクスとどう関わりを持っているのか。そして何故、高橋財政は結果として失敗したのか。ぜひこの本でそれを確認してみてください。

 アベノミクスは高橋財政と同様に悲劇的な結末を迎える危険性が存在します。消費増税を含めた財政再建策を先送りし、既得権者へのバラマキを許し、その結果、異次元緩和で見えにくくさせた財政悪化が表面化、長期金利の急激な上昇を招いて世界経済のリスクとなる懸念が存在します。私たちは高橋是清からの警告をしっかり受け止め、アベノミクスの行く末を見守って行く必要があるのです。

 アマゾンでのご予約は下記の画像をクリックしていただけると御購入ページに移ります。アマゾンでは書店より少し早く入手が可能となるようです。



目次

はじめに

第1章 アベノミクスと高橋財政、共通する時代背景

○アベノミクスが模範とした高橋財政
リフレ政策への決意と期待のスパイラル
高橋是清を取り上げた麻生財務相の発言

○高橋是清とその時代の状況
楽観主義者だった是清
騙されて奴隷、騙されて無一文、そして日銀へ
日露戦争の戦費調達で活躍し、貴族院議員に
第一次世界大戦による好況、終戦後のバブル崩壊
短期間だった高橋是清内閣
関東大震災による被害と補償
不況に追い打ちをかけた金融恐慌
日銀特融と裏白日銀券の発行
日本経済をさらに冷え込ませた世界大恐慌

○震災、金融危機……酷似する時代状況
バブル崩壊後の不良債権処理に苦しむ日本経済
アジア発の通貨危機が世界に波及
債券相場の混乱とゼロ金利政策
デフレに拍車をかけたゼロ金利解除
量的緩和政策の解除に意欲的だった安倍官房長官
デフレを深刻化させた世界的な金融危機
ギリシャ問題で表面化した欧州の信用不安
未曾有の被害を出した東日本大震災
時々刻々、矢継ぎ早の対応
アベノミクスと高橋財政が生まれた共通の背景
首相がコロコロ代わるところもウリ二つ

コラム 高橋財政とアベノミクスの時代

第2章 高橋財政の成功と挫折

○高橋財政の背景にあった金本位制
円安・低金利・積極財政を柱とした高橋財政
国際協調の流れに沿った金本位制への移行
世界大戦による金輸出禁止と、戦後の再解禁
昭和恐慌の発生

○高橋財政とはどのような政策だったのか
政権交代と高橋財政のスタートで市場のムードが一変
政権交代による期待
円安放置とその後の為替安定策
金融緩和による低金利政策
財政拡大策と裏腹に発行が決まった初の赤字国債
膨らむ国債、国債依存度の上昇
高橋財政前に景気回復の下地はできていた

○高橋財政で成功したこととは
世界最速でのデフレ脱却! その一方での摩擦と孤立
一石三鳥の妙手とされた日銀の国債引受
日本財政「ちぐはぐさ」の淵源
市中銀行・日銀・大蔵省の相互不信が招いた財政ガバナンス危機

○財政規律が失われるリスク
日銀国債引受が招いた悲劇
高橋財政の出口戦略
高橋財政後に起きたこと

○高橋財政とアベノミクスはどこが同じか
高橋財政とアベノミクスの共通点
高橋財政とアベノミクスの相違点

コラム 日銀法改正の動き

第3章 高橋財政はアベノミクスでも通用するのか

○動きだしたら止められないアベノミクスの金融政策
高橋財政は今も通用すると主張するリフレ派
市場に期待を引き込む
結果としての財政ファイナンスと狙っての財政ファイナンス
多くの国々が中央銀行による対政府与信を禁止している理由

○日銀の異次元緩和の問題点
異次元緩和のキーナンバーは「2」
政策の中心が金利からお金の量へ
撤廃される暗黙のルール、制限なしの買入が可能に

○国債の動きがアベノミクスのキモになる
アベノミクスのセンターは日本国債
異次元緩和の効果、その3つの経路
異次元緩和を受けての国債の動き 急騰から一転急落
リスクを見た大手銀行が利益確定売りに走った
長期金利が1%に上昇! ついに調整局面へ
期待と不安が交錯した長期金利の変動リスク

○日銀は出口戦略を示すことができるのか
FRBの出口政策で取り残される日銀
自らを追い込んでしまった日銀
高橋財政とアベノミクスの共通の悩み
入口はどこか、出口はあったのか
            
○海外は日本の経済政策を懸念? ある程度黙認?
円安政策についての海外の懸念
異次元緩和についてはむしろ好意的?
壮大なる実験を注視する世界
異なるドイツ・イタリア、両首相の反応
IMFはアベノミクスを警戒

コラム 実質金利と名目金利

第4章 高橋財政からアベノミクスが学ぶべき教訓

○規律を失った財政の暴走は止められない
歳出増加、しかし増税は先送り
消費税の引き上げが目指すもの
フィスカル・ドミナンスへの懸念
GDP比2倍超! 天文学的な額の借金をどうする

○アベノミクスに求められる成長戦略
アベノミクスの成長戦略は今のところ期待はずれ
必要なのは金融政策よりも成長戦略
生産性の低い部門に資金をつぎ込むことの怖さ
グローバル化に向けた新たな成長分野を創ることがカギ

○出口戦略の有無が成否をわける
求められるのは、高橋財政の上を行くこと
あらためてリフレ政策の危険性を説く
高橋財政に学ぶべき出口の難しさ
大胆さを補完する繊細な注意こそ必要
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by nihonkokusai | 2013-08-05 18:03 | 本の紹介 | Comments(0)

10年前の異次元緩和に関する議論

 日銀の金融政策決定会合議事録等(2003年1月~6月開催分)が公開された。2003年3月25日に開催された臨時の金融政策決定会合では、インフレターゲットに関する意見のやり取りがあった。

 量的緩和策のなかでの、透明性向上と流動性強化の波及メカニズムに関する議論のなかで、まず福間委員からはリスクマネージメントなしにバランスシートを膨張させることは私企業では考えられないし、中央銀行としても考えられないとの指摘があった。また、インフレターゲットは、リスク・マネージメントとは完全に相反するわけで、両者の整合性を取りながらやっていかなければならないとの指摘があった。黒田日銀の異次元緩和によるバランスシート膨張には、果たしてリスク・マネージメントはどれだけ存在しているのか。

 福間委員はイグジット・ポリシーについても言及し、将来、今の量的緩和を脱する時に、幸いにも経済が良くなったという時に、非常に矛盾に満ちた政策をとらざるを得ない。我々の持っている資産を値下がりさせるような手段を取らなくてはならないと指摘している。

 「このイグジット・ポリシーは今直ちに考える必要はないが、頭の片隅に置いてやっていかねばならない」と言及している。これはそのまま現在の黒田日銀に向けられた発言とも言えるべきものである。参考までに当時の量的緩和策は福井総裁が国債買入の増額は行わなかったこともあり、当座預金の残高引き下げだけであれば比較的簡単に行えたのである。このあたり福井総裁は出口のことをかなり意識していたことは確かであろう。

 中原委員は、量的緩和の副作用として、短期市場の流動性が偏在してすること、それが中長期のマーケットにも波及していることを指摘。相場観が一方的でボラティリティが非常に低下していることについても触れている。これがVaRショックと呼ばれる、数か月後の債券の急落を招くことになった。そして市場では「デフレというのは単なる貨幣的な現象ではなく、グローバルな供給過剰とかその他色々な要因が複雑に絡みあっているものであり、マネタリーな分野だけでの対応で、デフレ脱却はできない」という認識が生まれているとしている。現在も債券市場関係を中心に、同様の考え方を抱いている人は多いはずである。

 須田委員は、企業、家計部門にとりマクロ的に見た支出の制約要因は流動性ではなくて、マネタリーベース供給が貸出等へ拡張的に作用しにくい点を指摘、ベースマネーが増えれば、マネーサプライは増加し、やがてデフレは止まる、という単純な貨幣数量説に基づいて、人々はインフレ予想を形成しているわけではないという当たり前のことが確認されたとしている。

 この当たり前のことは10年経過すると、当たり前ではなくなったのであろうか。日銀総裁が黒田総裁に代わってからは、このような当たり前の意見が審議委員からはほとんど聞けなくなっている。考え方が変わったというより、すでに10年前にその効果が疑問視されていたことを、黒田日銀は異次元緩和と称して行っているだけであると言える。

 ただし、田谷委員はマネタリーベースと為替相場の関係が経験的にも全くないとまでは言い切れないと指摘しており、同様の発想というか思惑により、からアベノミクスによる円安が生まれたことが考えられる。

 植田委員からは、「量について、これまで効果は小さいが、もっとやれば効くのではないかという議論は絶対負けない議論だと思うが、ある種、負け惜しみという感じもしないでもない」との発言もあった。的を射た表現と思う。

 これらの意見に対して、岩田副総裁はインフレターゲットというかダイナミックターゲットを導入すべきとの主張であり、波及メカニズムについては根幹は実質金利だと指摘している。このあたり、黒田総裁の主張に近い。さらに出口政策に関しては、物価連動債のようなものをいつでも国債に取り替えるというような政策も提案していた。


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by nihonkokusai | 2013-08-05 13:42 | 日銀 | Comments(1)
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