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2011年 12月 12日 ( 2 )

国債急落の際の国内金融機関による国内の資金シフト

 欧州の信用不安において、ユーロ域内での国債の資金シフトが起きた際に、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアさらにベルギーやフランスの国債が売られ安全資産としてドイツ連邦債が買われる構図となっていた。統一通貨であり、為替リスクなしに資金シフトが可能であり、それがイタリアやスペインの国債下落を促した面はある。

 それでは、日本国内ではどうであろうか。もしも、日本国債への信用不安が起きた際に何が起きるのか、少し頭の体操をしてみたい。

 すぐに資金がドルやユーロ等に流れることは想定しづらい。ましてや金などに向かうことも考えられない。国債への投資資金の規模が大きすぎるためである。本当に日本がヤバイとなれば、海外資産への逃避は起きるかもしれないものの、その前に起きることが予想されるのは、デュレーションの短期化である。つまり保有する国債の平均残存年数の短期化である。

 国債は長い期間のものほど、同じ利回りに対する価格変動幅が大きい。つまり、日本国債への信用不安が生じた際には、まずは長い期間の国債が売られる可能性が高い。ただし、生保・年金などはその運用期間にマッチさせるべく長い期間の国債に投資しており、これらの投資家がいきなり売却を急ぐことは考えづらい。それよりも動きが速い大手銀行などが、保有する債券の期間をより短期に修正してくる可能性がある。国内投資家による売りが入れば、債券先物はヘッジファンドなどの売りから下げを加速させよう。

 つまり国内の銀行などは長期金利上昇による損失をなるべく回避するため、10年債などを売って、その資金をより安全とされる日銀の当座預金に残すなり、1年以下の期間の国庫短期証券などより短期の国債に振り向けて来る可能性がある。これは国内での資金シフトであり、債券相場全体に影響はないように見えるが、これにより短期金利は低位で張り付くのに対し、長期金利は大きく上昇してくることになる。

 長期金利が上昇すれば、本来であれば投資家により絶好の収益を向上させるチャンスとなるが、その背景が経済・物価動向ではなく、財政プレミアムがオンされてしまっている状況であれば、残念ながら投資家は利回りだけを見て国債を購入することはない。日本の信用不安が解消されるまでは、手は出せないであろう。これについては、これだけ利回りが上昇しても見向きもされない現在のギリシャ国債を見れば明らかである。


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by nihonkokusai | 2011-12-12 15:49 | 国債 | Comments(0)

若さとスピードが売りの英国の財政再建

 欧州連合(EU)首脳会議はユーロ圏の財政規律強化で基本合意した。ただし、EUに加盟している27か国による基本条約改正では合意できず、条約改正を通じた財政規律の強化については英国が反対した。英国のキャメロン首相は、首脳会議に提案された内容は英国の国益に沿わなかったと発言しており、国際金融街ロンドン・シティを抱えることで、金融取引税の導入に対する強い反対が背景にあったと藻指摘されている。ただし、これで英国が財政再建に後ろ向きと捉えるべきではない。むしろ、英国は積極的に財政再建に取り組んでいる。

 1997年5月に英国ではブレア政権が誕生し、ブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し、独立性を高めるという大胆な改革に踏み切った。

 ブレア政権によるイングランド銀行の改革により、イングランド銀行総裁、副総裁、理事、外部らの委員で構成される金融政策委員会へ政策運営権限が委譲され、外国為替市場介入権限を部分的にイングランド銀行へ委譲され、準備預金制度の法制化、銀行監督権限をイングランド銀行から分離し、新設された金融サービス機構(FSA)へ移管し、そして国債管理業務は財務省へ移管されたのである。

 金融政策に関しては、インフレーション目標の土台が築かれた。インフレーション目標は政府が設定し、イングランド銀行はこれを達成するために必要な政策手段を決定するという役割となった。また、量的緩和策の導入やその拡大にあたっても財務相の了承が必要となっている。

 しかし、この改革の際には「財政安定化規律」がセットとして設けられていることに注意したい。1980年代後半から90年代前半にかけての英国では財政赤字の拡大、公的債務の累増が生じた。こうした状況に陥った最大の要因は、明確で透明性の高い財政政策の目標がなかったことにあった。このためブレア政権下において、1998年に財政安定化規律(The Code for Fiscal Stability)が議会の承認を経て制定されたのである。

 また、1998年4月に英国の国債管理政策に関する権限と責任は、イングランド銀行から「債務管理庁」に移されている。国債の年間発行額、固定利付債と物価連動債の発行額、入札回数、入札予定日等は、年度開始直前(3月)に財務省から債務管理庁(DMO)に通達されるが、債務管理庁はこの通達に基づき、債務管理庁は各回の発行毎に具体的な年限、利率、発行額を決定している。

 参考までに、2009年3月末に英国の国債入札による発行予定額に応札が届かない未達が7年ぶりに発生した際、DMOは金融機関によるシンジケート団の提示した買い入れ額に応じて発行する仕組みも再導入した(朝日新聞の特集記事より引用)。

キャメロン政権による財政再建

 2010年5月の総選挙により政権についたキャメロン首相は財政再建を最優先課題とした。その5年間という任期在任中に財政再建を果たすために、6月に財政再建に向けた緊急予算案を発表した。オズボーン英財務相が発表した緊急予算案によると、第二次大戦後で最悪規模に膨らんだ公的債務を減らすため、2011年1月4日から付加価値税の基礎税率を現在の17.5%から20%に引き上げた。

 オズボーン財務相は2010年度の公的債務が1490億ポンドに上るとの見通しを示した。このため、年間20億ポンド規模の銀行新税を2011年から導入するとともに子供手当てや福祉給付カットなどの歳出削減を組み合わせ、財政赤字のGDP比を2015年度までに1%まで引き下げるとした。

 財政再建には大きな痛みを伴う。これは財政再建に向けた動きに対して、デモが発生したギリシャなどの例を見ても明らかである。しかし、ギリシャなどは外部からの財政再建の圧力に屈したものであり、内部からその声が強まったわけではない。

 これに対して英国では、選挙で財政再建を最優先課題とした保守党を国民は支持したことになり、内なる声に耳を傾けた結果の財政再建であり、国民は自らの責任において財政再建を推し進めるべきとしたものである。ちなみに、1990年代でのカナダのクレティエン政権による財政再建も同様に国民の声に答えたものである。

 英国の政治を見ると、スピード感が日本などとまったく異なる。キャメロン政権の財政再建もそうであるが、1997年5月に誕生したブレア政権もやはりそうであった。当時のブラウン財務相は就任わずか4日目に金融政策の大転換を行い、財務省から中央銀行であるイングランド銀行に金融政策の決定権を移し独立性を高めるという大胆な改革を進めている。

 キャメロン首相もブレア元首相も非常に若いときに首相に就任しており、若さ故のスピード感もあった。また、高い支持率がある政権交代時にすぐに行動に移すことにより、時間をかけることによって生じかねない反対意見を抑えこんで、とにかく既成事実化する必要もあったと思われる。


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by nihonkokusai | 2011-12-12 09:55 | 財政 | Comments(0)
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