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2011年 10月 08日 ( 2 )

牛熊ゼミナール金融の歴史第8回 大航海時代

 15世紀になるとオスマン朝トルコは、イタリア諸都市の海軍に勝利して地中海の制海権を握り、貿易により栄華を誇っていたイタリア商人の活動は次第に抑制されてきました。ポルトガルとスペインの両国は国王を中心とした中央集権制度を設立させており、強力な国家権力のもと、アジアから伝わった羅針盤などを使っての航海技術や造船技術の発展も加わり、新たな交易ルートの開拓が行われようになったのです。

 ポルトガルとスペイン両国は競い合って海に乗り出し、1488年ポルトガル人のバルトロメウ・ディアスは船団を率いて困難の末にアフリカ南端の喜望峰に錨を下ろしました。1492年にジェノバ商人のクリストファー・コロンブスはアジアへの西航路探索の過程でアメリカ大陸を発見しました。そして、1498年にポルトガル人のヴァスコ・ダ・ガマは喜望峰を回ってインドに達しました。そして、1522年にスペイン王の命を受けたポルトガル人のマゼランが世界一周を達成したのです。

 初期の航海は嵐による難破や、マゼランが航海途中で受けたような敵からの襲撃、さらに疫病などにより、乗組員の生還率は2割にも満たないともいわれ大変危険なものでした。しかし、遠征が成功すれば、新たな貿易路が開拓されることで交易に伴う莫大な利益が転がり込むとともに新たな領土も手にすることができたのです。航海に成功した冒険者はのちの世界史に残るほどの名声とともに、莫大な富が転がり込んだのです。

 ちなみに、すでに日本語化しているリスク(risk)の語源は、俗ラテン語の「risicare」に遡れるとされ、それは「絶壁の間を縫って航行する」ことを意味しています。リスクには危険に身をさらすという意味も含まれながらも、試してみることや冒険してみることと言った意味が含まれ、そこには冒険の愉しみという気持ちも込められています。投資の際にも使われるリスクとは、失敗の危険性はあるものの成功を目指して期待に胸膨らませながら果敢に試みることを意味しているのです。

 アメリカ大陸に進出したスペインは、アステカ・インカ両帝国を征服してその地を領有しました。1545年に発見されたボリビアのポトシ銀山で大量の銀が採掘され、ここで採掘された大量の銀はスペインに運び出されました。イギリスの女王エリザベス一世は、フランシス=ドレークやホーキンズらの率いる海賊に、これら銀船隊を襲わせてその富を奪った話は有名です。

 安価な大量の銀・金がヨーロッパに流入したために貨幣価値が大幅に下落し、物価を高騰させました。これがいわゆる「価格革命」です。アメリカ大陸からからヨーロッパへ流れた銀は、ヨーロッパがアジアから購入する香辛料などへの支払いに当てられました。さらにアメリカ大陸の需要などから、ヨーロッパのさまざまな産業が発展し、アジアを含めて新たな世界商業のネットワークが構築され、これによりヨーロッパの商工業はそれ以降、活況を呈することとなるのです。イギリス艦隊とスペインの無敵艦隊が戦った1588年のアルマダの海戦の敗北などによってスペインは次第に衰退し、その後、イギリスやオランダが制海権を得て台頭してくることになります。

 16世紀後半から17世紀前半にかけて日本も世界で有数の銀産出国でした。黄金の国ジパングの金銀の獲得を目指して、中国やポルトガル、オランダが日本との貿易に乗り出してきたのです。戦国時代になると、大規模な築城が行なわれるなど土木技術が発達し、それが鉱山開発に応用され、大量の採掘が可能となる坑道を掘って鉱石を採取するようになりました。さらに、銀の精錬技術である灰吹法が中国や朝鮮から伝えられ、この新技術により効率的に銀が抽出されるようになったのです。

 2007年に世界遺産に登録された現在の島根県にある石見銀山を中心に大量の銀が国内で採掘され、17世紀当時の日本の銀産出量は世界全体の三分の一に相当しました。ポルトガルは日本の銀を介在してのアジアでの三角貿易を行いました。中国で購入した生糸などを日本に持ち込み、それを銀と交換し、その銀をもとに中国産の絹織物や陶磁器、東南アジアの香辛料を買いつけました。それらを本国に持ち込んで利益を得ていたのです。金銀が交換手段として受け入れられたのは、それらが中国との交易に利用できたからです。

 当時の明では、マルコ・ポーロが見たという元で発行されていた紙幣(交鈔)にならって宝鈔と言う紙幣を発行していました。これは完全な不換紙幣であったことに加え、紙幣価値を保つための政策は何も行われておらず、このため価値は下がり続け、それに代わりこの時代に日本や南米から大量に流入された銀が通貨として使われるようになりました。

 これに対して何度か使用禁止令が出されたものの効果は無く、課税対象を土地に移し銀による納税とした「一条鞭法」の採用によって事実上、銀が明の通貨となり銀への需要が高まっていたのです。







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by nihonkokusai | 2011-10-08 15:19 | 金融の歴史 | Comments(0)

欧州危機囲い込みとウォール街のデモ

 欧州債務危機の深刻化を受けて、少しずつではあるがそれを封じ込めようとの動きが見え始めている。ドイツのメルケル首相は、必要性が明らかであれば金融機関へ資金を投入すべきだと発言したが、EUのバローゾ委員長も、銀行の資本増強の努力を各国が一致して支えていく、と述べるなど、EU各国が協調して域内銀行の資本増強を支えていく考えを示した。

 6日のECB理事会では、一部期待のあった利下げこそ見送られたが、1年物の資金供給オペを再開し、またカバード債の購入を11月から再開することを決定した。トリシェ総裁は記者会見で、据え置き決定に関しては意見が分かれ、総意によって据え置きを決めたとし、利下げに対する議論も行なわれたことを示した。

 6日のイングランド銀行の金融政策委員会では、資産買い入れプログラムの規模を750億ポンド上積みし2750億ポンドにすることを決定した。量的緩和策拡大の理由のひとつに、ユーロ圏の一部の国の債務危機や金融機関の債務問題がもたらす脆弱性が指摘されていた。

 これらの動きを受けてロンドン株式市場をはじめ欧州の株式市場は、銀行株などを中心に大幅高となった。また、ガイトナー米財務長官は、米国の銀行は強化され2008年のリーマン破綻のような事態は決して再発しない、と発言しこれも好感されたのか、米国株式市場でも銀行株などを含めて買いが入り、6日のダウ平均は3日続伸となり、前日比183ドル高で引けている。

 これらの一連の動きは、ギリシャを発端とする欧州の金融危機に対し、それがイタリアやスペインに波及し、さらに欧州の金融機関に影響を与え金融システム不安が拡大することを封じようとの行動であることは確かであり、実際に一定の効果はあったと思われる。

 しかし、これら一連の動きは中央銀行頼みの姿勢とも受け取れる。これはユーロ圏内各国が国内事情により動きが取り辛いためというのも大きな要因となっていよう。とは言うものの、動きが取りにくい中にあり、EU各国が協調して域内銀行の資本増強を支えていくといった姿勢は、危機囲い込みには有効な手段であると思う。

 ただし、ここで注意したいのは、ニューヨークのウォール街での大規模なデモの動きである。経済格差反対を訴えて、ニューヨーク・ウォール街で始まったデモは拡大の一途をたどっており、警察との衝突も発生している。マスコミが騒ぎすぎているとの指摘もあるかもしれないが、完全に無視してよいものとも思えない。

 日本でも不良債権処理に対しては公的資金の投入が最終的に決定されたことで、一時の危機は回避されたとの見方も強い。リーマン・ショック後の米国でも同様に金融機関を保護することより最終的に危機を封じ込めた。同様のことを現在、欧州でも行なわれようとしている。過去の例を見る限り、これは適切な手段といえそうだが、果たしてこれが欧州域内の国民に素直に受け入れられるのであろうか。

 特にウォール街でのデモがこのままエスカレートするようなことになれば、欧州での世論に対して微妙な影響を与える可能性もある。ウォール街でのデモに共感するような見方が欧州でも広がるようなことになれば、金融機関へ公的資金を投入すべきだとするメルケル首相などに対し、批判の声が上がることもありうる。

 昨日は9月の米雇用統計の発表があり失業率は9.1%と高止まりとなった。、ウォール街でのデモはこの失業問題が大きく影響しており、雇用情勢の動向に対しても注意する必要はある。それとともに金融経済危機に対する政府による金融機関への対応への問題点が、今後欧米であらためて問われる可能性もあり、これが欧州危機囲い込みのリスクになる可能性もある。


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by nihonkokusai | 2011-10-08 07:49 | 国際情勢 | Comments(0)
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