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2011年 10月 07日 ( 2 )

牛熊ゼミナール金融の歴史第7回 メディチ家

 世界最初の銀行が設立され、政府による本格的な政府による債務の調達が開始され、現在の金融システムに近いものが構築された金融取引が活発化した12世紀のベネチア、ジェノバなど北イタリア諸都市で、早くも金融危機が起こっていました。

 14世紀初頭になりトスカーナ地方で破産が多発し、当初の破産は限定的な地域に止まったものの、まもなくそれは広範囲な金融危機となっていったのです。フィレンツェ地方で銀行業務を営んでいたバルディ、ベルッツィなどの商会は、ヨーロッパ各地に支店を持ち、王侯や貴族に対して融資をしており、特にイギリス王との関係が深く、エドワード三世に対して巨額の資金を貸し付けていました。

 1339年、のちに英仏百年戦争と呼ばれたフランスとの戦争が勃発し、英国王室と関係の深い両銀行は戦費を引き受けざるを得なくなりました。戦争は莫大な出費を伴い、債務総額は王国の価値に匹敵する、とも言われたのです。さらにバルディ、ベルッツィなどの商会が英国の戦費を賄っていると知ったフランス王は、対抗手段としてフランス全域に有る両銀行の支店を閉鎖させ資産を没収しました。これを受けてバルディ、ベルッツィの両商会は、貸付先の英国に返済を求めたのですが、英国は莫大な債務を支払う能力は無く、その結果として債務不履行は避けられず、銀行業を営んでいた商会は一時支払停止をせざるを得なくなったのです。

 苦境に立たされたバルディ、ベルッツィは倒産し、フィレンツェの経済は大混乱を招いてしまいました。フィレンツェの政治も混乱を極め、一時的に民主自治の制度を放棄するという事態も招いたのです。さらに追い討ちを掛けるようにペストが猛威を振るったのです。

 地中海諸島に広がったペストは1348年にヨーロッパ全域に広がりました。フィレンツェの北で医薬業を営んでいたと思われるメディチ家は、ペストの治療薬により莫大な財を築いたとのではないかとの説もありますが、有力商人となったメディチ家は1397年に自身の銀行を設立し金融業に進出したのです。バルディ、ベルッツィなどの商会がイングランド王などを相手にした貸付で失敗し、倒産したことなどにより、メディチ銀行は大銀行に躍り出ます。

 メディチ銀行はローマやベネチアなどへ支店網を広げ、情報のネットワークを構築し、国際的な信用機構も作り上げました。また、ローマ教皇庁会計院の財務管理者ともなり、教皇庁の金融業務で優位な立場も得たことで、目覚しい発展を遂げることになります。当時の王室や教会などの支配階級にとり、金融のスペシャリストである銀行家はなくてはならない存在となっていたのです。

 ただし、当時のキリスト教は利子を取ることを禁じていました。このため利用されたのが外国為替取引です。利子はアジオと呼ばれた異なる通貨の換算率の中に含まれ、手数料という名目で利子を取っていたのです。

 メディチ家は銀行家として成功を収め、さらに政治にも進出しました。家門の中からローマ法王を二人輩出し、のちにはトスカーナ大公国の君主となりました。また、ルネサンス期の様々な芸術家たちのパトロンとなったことでも知られています。

 メディチ銀行はバルディ、ベルッツィの破綻を教訓に、事業の分権化を図るなど一部地域の破局の連鎖を食い止める策を講じたものの、フランスのイタリア進行によりメディチ家の全財産は没収され、メディチ銀行も倒産という憂き目にあうこととなります。




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by nihonkokusai | 2011-10-07 16:14 | 金融の歴史 | Comments(0)

来年度予算案の概算要求は過去最大の98.4兆円に

 5日に締め切られた2012年度予算案の一般会計概算要求は、98.4兆円に上ることになった。要求総額は3年連続で過去最高を更新した。

 国の予算編成の流れとしては財務省がそれぞれの省庁に対して、来年度予算として、どのくらいのお金が必要かを聞くところから始まる。これが翌年度予算において必要な金額を要求する概算要求と呼ばれるものである。

 概算要求の前に財務省から要求の基準が設定されるが、この基準が概算要求基準(シーリング)と呼ばれるものである。シーリングとは天井、つまりこの場合には要求の限度額の事である。

 2009年9月に自民党から民主党に政権が交代し、民主党は前内閣が決定したシーリングを廃止し、あらたな上限枠は設けずに、民主党のマニフェストの内容を反映した要求を求めた。ところが菅政権になってから概算要求基準が復活している。

 2012年度予算編成においては9月20日に概算要求基準が閣議決定された。概算要求基準では、政策経費を1割カットし、削減分の1.5倍まで再生枠に要求できるようにした。歳出の大枠を2011年度当初予算並みに抑える一方、復興費は別枠扱いで、要求に上限を設けないとした。一般会計予算全体では、国債費などを除いた政策経費の上限は今年度と同じ71兆円程度に、新規国債発行額を44兆円以下に抑えるとしている。

 概算要求基準に基づいて政府各省庁が財務省に提出する次年度の予算要求を行う。これが概算要求となる。各省要求額のうち、国債費や人件費などを除いた政策的経費はいずれも前年度当初予算を1割以上、下回り、概算要求基準を満たした。しかし、上限を設けずに受け付けた震災復興対策関連の要求額が3兆5051億円となったことで、全体が押し上げられた。

 国債費や復興関連経費を除いた歳出の大枠は72兆3635億円で、今後、中期財政フレームで定めた70兆9000億円以下の水準まで削り込むことになる。

 震災復興とデフレ脱却のための成長促進のためには、ある程度の規模の歳出も必要となろうが、いくら中期財政フレームで定めた経費を絞り込んでも、新規国債の発行規模は44兆円規模が予想される。

 2011年度予算では、歳出規模は92.4兆円、国債費を除いた基礎的財政収支対象経費は70.9兆円、そして新規国債の発行額は44兆円規模となっている。ただし、震災復興のための第三次補正予算によりあらたに復興債が発行される予定でもあり、国債の発行額は実質的に44兆円を上回ることになる。

 2011年度の税収は41兆円を見込んでいる。税収そのものは前年度に比べて増加しているようだが、それでも税収が国債発行額を下回るという異常な事態が続いている。

 巨額の借金を抱えながら、収入以上の借金をしているのが、現在の日本の姿であり、いまのところは資金の貸し手には困っていないとはいえ、このような状況がこのまま継続できるとは思えない。

 今年は東日本大震災と原発事後が重なり、復興のためには国の関与が必要となる。今後5年間の復興費は19兆円規模と政府は見積もっている。ただし、これまでの日本の財政を見てみても、財政再建をすすめようとするたびに、何かしらのショックや災害等により、その動きは抑えられ、結果的に歳出規模は膨らみ、税収は落ち込むというワニの口が形成され、それが一向に改善する見込みはない。

 本来、日本の国債の利回りが財政の健全化を示すモニターとして機能するはずであるが、モニターの針は10年以上、ひとつの基準ともみられる2%というラインを超えることなく低位で安定している。このモニターの数値を見ている限り、まだ借金を続けることは可能と見られる。

 ただし、ダムに溜まる水には当然限度がある。外から見て、そのダムの具体的な大きさや水の許容度はわからず、水が一杯になったのかどうかは、それが溢れ出すか、ダムそのものが崩壊してはじめて知ることになる。長期金利という財政モニターも水が溢れ出すのを確認するまでは、動かないのかもしれない。しかし、いったん溢れ出した水が確認されると、モニターの数値を一気に引き上げることになる。

 そのような状況に陥りさせないようにするにはどうしたら良いのか。とりあえずは、来年度の歳出規模をなるべく抑えることしかできないかもしれない。しかし、もう少し先を見据えての行動も起こしておかないと、いつか水は溢れ出すことも確かであろう。


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by nihonkokusai | 2011-10-07 09:28 | 財政 | Comments(0)
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