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2011年 09月 30日 ( 2 )

牛熊ゼミナール金融の歴史第4回 日本におけるお金の起源

 日本におけるお金と金利の起源について、歴史を探りながら見て行くことにしましょう。最近の中学生の社会の教科書などを読んでみると、昔の教科書とは、特に古代の記述が大きく変っていることに驚きます。たとえば青森県で発掘された三内丸山遺跡によって縄文時代の認識が大きく変わっています。縄文人は裸同然の格好をして主として狩猟で生計を立てていたと私たちは習った記憶がありますが、実際にはすでに縄文時代から貨幣を媒介とした財物の交換が広く行われていたことが明らかとなっているのです。

 当時は、矢じり、稲や布帛など交換価値が高いと認められた財物が物品貨幣として機能していました。ただし貨幣の役割のひとつ、価値の保蔵という観点からみると、稲や布などは耐久性の面で難点があり、貯蔵に際しては倉を建てる必要があるなど余分な費用負担も問題となります。富の蓄積が進むにつれて、日本の古代でも金銀といった貴金属のほか、瑠璃玉や紫水晶など耐久性に優れた奢侈品が富の蓄蔵手段として次第に使われていきました。

 金銀などの貴金属を貨幣として利用するに際には、地金などよりも一定の重量に鋳られた固まりのほうが便利です。飛鳥板蓋宮伝承地など7世紀後半の飛鳥時代を代表する遺跡のなかから「無文銀銭」と称される、小孔が穿たれただけの銀製の小円板が出土しています。この無文銀銭も和同開珎銀銭1枚と同等の価値を有する「貨幣」ではないかとする考え方が強まってきています。

 708年の和銅元年にわが国最初の「公鋳貨幣」として「和同開珎」が律令制府により鋳造されました。701年に「大宝律令」が完成し、平城京への遷都の準備中でもあった矢先に、現在の関東地方の武蔵国秩父郡で和銅が発見されました。遷都などで大量の資金が必要としていた政府は、中国などに習って貨幣発行の準備していたところでもあり、政府は年号まで「和銅」と改元して、わが国最初の公鋳貨幣を発行したのです。和同開珎は唐の時代に発行された「開元通宝」がモデルとされていますが、始皇帝が銭貨を統一する際から中国で用いられた円形方孔貨となっています。この和同銅銭には1個1文の価値が付され、江戸時代末までの約1200年間にわたってわが国貨幣制度のなかで重要な役割を果たした銭貨の基礎がこれによって構築されました。

 和同開珎以前に存在した貨幣として上記の「無文銀銭」と「富本銭」が知られていますが、「和同開珎」が広範囲に貨幣として流通した日本最古の貨幣として認識されています。結局この「和同開珎」は畿内とその周辺では貨幣として使われたようですが、地方では富と権力を象徴する宝物としてしか使われなかったようです。

 和同開珎が作られた後、奈良時代から平安中期にかけて12種類の銅銭が公式に鋳造されました。これが皇朝十二銭と呼ばれているものです。いずれも形は円形で中央に正方形の穴が開いている円形方孔貨です。また、銅銭以外に銀貨として和同開珎銀銭や金貨として開基勝宝も作られましたが、広く流通することはなく、通貨としての機能は発揮されませんでした。

 皇朝十二銭を発行順に並べると、和同開珎(708年)、万年通宝(760年)、神功開宝(765年)、隆平永宝(796年)、富寿神宝(818年)、承和昌宝(835年)、長年大宝(848年)、饒益神宝(859年)、貞観永宝(870年)、寛平大宝(890年)、延喜通宝(907年)、乾元大宝(958年)となります。

 皇朝十二銭が発行された目的は、唐の開元通宝を手本に、日本における貨幣制度を整えることでしたが、もうひとつ平城京遷都などに伴う公共事業費のための財源作りも大きな目的となっていました。貨幣1文は平城京造営などの使役に対する1日分の労賃に相当し、原料の銅素材に対して3~5倍に相当する高い価値が与えられたそうです。

 しかし、私鋳銭と呼ばれる偽金を造る者が多く現れたことや、飢饉による米価の高騰に加え、材料となる銅の不足などから銭貨が小型化し、粗悪な品質の銭が次々に発行されたことで、銭の価値はしだいに下落していきました。

 平安時代に編纂された歴史書「日本紀略」に、987年に15の寺院で80人の僧が7日間にわたり銭貨の流通を祈願したとの記述があるように、粗悪となった銭は次第に使われなくなり、また政府による大規模な公共事業もなくなってきたことで、次第に銭を発行する意義が薄れ、乾元大宝を最後に皇朝十二銭の鋳造が取りやめとなりました。 これ以後、豊臣秀吉が貨幣をつくるまでの約600年の間、日本では統一した貨幣は造られませんでした。


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by nihonkokusai | 2011-09-30 19:38 | 金融の歴史 | Comments(0)

IMFによる日本への警告

 IMFが9月20日に発表した「財政モニター(要旨)」をもとに、日本に関する指摘を確認してみたい。

 「ユーロ圏では、多数の国が、多額の赤字の削減と中期的計画の明確化において順調に前進し、財政機関の強化にコミットしている。それにもかかわらず、イタリアやスペインなど比較的大規模な国で、国債のスプレッドが大幅に上昇した。これは、市場心理が急変する可能性を示している。日本と米国は、財政調整計画の提示および実施においてさほど前進していないが、金利は歴史的な低水準にとどまっている。」

 「日本と米国は、金融市場の圧力がユーロ圏に拡大した速さやその影響力を戒めとすべきである。日本と米国の低金利は、国内および機関投資家の大規模な基盤など、急激には変化する可能性が低い構造的要因が一因である。さらに、赤字、債務比率、予測される年齢に関連した支出の伸び(米国)といった標準的な財政指標の多くが、大きな市場圧力下にある多くの欧州諸国と同水準となってはいるものの、両国政府が投資家から得た多大な信用を反映している。しかし、両国の信頼性は、十分に詳細かつ意欲的な、赤字および債務の削減計画が導入されなければ、突如弱まる可能性がある。」

 どうやらIMFは日本と米国について、非常に似たような状況にあるとみなしているようである。ここでは財政調整計画と約されているが、財政健全化策や財政再建が日本では一向に進められていないことは明らかである。もちろん、今回の東日本大震災の影響もあるが、それ以前に日本が財政健全化を進めようとするたびに、バブル崩壊とその後の不良債権問題、リーマン・ショック等々によりそれが頓挫してしまい、健全化の先送りが続いている状況にあることは確かであろう。

 「日本と米国は、金融市場の圧力がユーロ圏に拡大した速さやその影響力を戒めとすべきである」とのIMFの警告は、真摯に受け止める必要がある。日本では国内資金で政府債務のほとんどが賄われており、巨額の国内資金を運用する国内機関投資家の存在が日本国債の大きな受け皿となっている。この構図が急激に変化する可能性は当然ながら低い。

 さらに日本と米国の国債については、両国政府に対する投資家からの多大な信用(credibility)が反映されていることも、日米の長期金利が歴史的な低水準にとどまっている大きな要因となっている。

 しかし、IMFが警告しているように、両国の信頼性は、意欲的な財政再建をすすめることがなければ、突如弱まる可能性がある。信用や信頼性は築き上げるにはかなりの時間を要するが、それが崩れ去るのは、ギリシャの事例を見てもあきらかなように、瞬時である。

 「日本については、災害救援および復興が当面の主要優先課題だが、国が直面する課題を反映した目標を伴った、より詳細な中期的計画も必要である。当局は、10年後を目処に債務比率の引き下げを行うとした、重要な措置の実施を掲げている。しかし、税制改革をさらに進めるなど調整を早め、10年後ではなくその半ばを目処に、債務比率の引き下げを開始することが適切である。」

 日本政府は2015年度までに基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字幅を半減し、20年度までに黒字化するとの目標を掲げているが、たとえ消費税が10%に引き上げられたとしても、この目標を達成することはすでに困難な状況にある。

 現在、日本の長期金利の水準や国債の消化状況を見る限りにおいて、日本国債に対する信用は揺ぎ無いものとなっている。しかし、何かしらのきっかけでその信用が崩れ去る可能性が存在する。日本に対する信用を今後も強固なものにさせ続けるためには、何をすべきであるのかを、特に日本の政治を担う者は常に認識しておく必要があろう。


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by nihonkokusai | 2011-09-30 19:37 | 国債 | Comments(1)
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