牛さん熊さんブログ

bullbear.exblog.jp ブログトップ

2011年 02月 22日 ( 2 )

国債格下げリスクよりも地政学的リスク

 格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは22日に日本政府のAa2の債務格付けの見通しを安定的からネガティブに変更すると発表した。今後、ムーディーズによる日本国債の格下げ、それも複数段階の引下げの可能性も考慮に入れておく必要がある。

 1月27日にS&Pがすでに日本国債の格付けをムーディーズのAa3に相当する段階に引き下げていたこともあり、債券市場への影響限定的であった。むしろ、22日の債券相場は買いの動きを強めた結果、債券先物は2月3日から4日にかけて139円19銭から139円40銭にかけて空いていた窓を埋めてきた。

 22日に行われた20年国債の入札の結果は決して良くはなかったものの、それもあまり悪材料視されることはなかった。これは日本国債の格下げや入札結果よりも、中東における地政学的リスクが意識されたためと思われる。つまり「質への逃避」が意識されたと思われる。

 チュニジアのジャスミン革命の動きはエジプト、さらにリビアにも拡大した。41年間もトップに君臨したリビアの最高指導者カダフィ大佐がエジプトのムバラク大佐と同様に辞任に追い込まれる可能性も出てきている。

 さらに22日にはイラン海軍の艦艇2隻がスエズ運河に入ることが確認された。イラン軍艦のスエズ運河通過は1979年のイラン革命以来初めてとなり、特にイスラエルでは緊張を強めている。

 中東はかつて世界の火薬庫とも呼ばれ、紛争の絶えない地域であった。それがオイルショックのようなかたちで世界経済に影響し、イラク戦争を招いたりしたが、ここにきては比較的落ち着いていた。しかし、今回の民主化の動きはむしろ政権が数十年にも渡り安定していた国で起きている。しかも、エジプトも今後の政権の行方がはっきりしないなど、不安定な状況が続くとみられる中、またイランとイスラエルなどが衝突するようなことになると、原油価格などに大きな影響を及ぼしかねない。

 もし原油価格の上昇によりインフレリスクが意識され、それにより長い期間の米国債が売られるようなことになれば、今度は中東リスクが日本の債券市場にとり売り材料となる可能性もありうる。

 日本国内では特例公債法案が年度内に成立しない可能性も高まりつつあり、予算の財源そのものの裏付けがなくなることになり、事実上の債務不履行に陥る可能性すらある。しかし、そのようなリスクよりも海外でのリスクのほうが意識されやすく、それはムーディーズによる日本国債の格付け見通しの変更にも無反応であったことからもわかる。

 しかし、外ばかり気にしていると中のリスクが見えなくなってしまう危険性もある。日本の政局の不安定さは予算そのものにも影響するとともに、消費税増税なども先送りされ財政再建への道のりがさらに険しくなる可能性がある。相場はある程度市場のマインドで動いてしまうため、そのマインドに影響を与えやすいイベントに注目が集まってしまう。日本の債券市場では、もう少し日本の財政リスクを意識すべきであると思うが、どうやら債券市場参加者の視線は中東の地政学的リスクに傾きつつあるように思われる。


*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

「牛さん熊さんの本日の債券」をメルマガで配信しております。
登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。
価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。
http://www.mag2.com/m/0001185491.html
[PR]
by nihonkokusai | 2011-02-22 14:53 | 債券市場 | Comments(0)

中央銀行の金融政策は時代とともに大きく変化



 「金融政策の世界では、1970年代、多くの先進諸国において、マネーストックの一定の伸びをターゲットにした政策運営がなされた。しかしながら、急速な金融イノベーションを受けて、マネーサプライとインフレの関係は不安定になり、最終的には活用されなくなってしまった。1990年代には、インフレーション・ターゲティングが金融政策の新しい枠組みとして登場したが、今回の金融危機に至る過程でバブルが生成されたように、同政策を有効に実施していくことの難しさが浮き彫りになってきた。」

 これは日銀の白川総裁が、フランス銀行の「Financial Stability Review」に寄稿した論文の邦訳の一部である。ここにあるように、マネーサプライとインフレの関係は不安定となった結果、現在、マネーサプライを金融政策を実施する際の指標として利用している中央銀行は少なくなっている。米FRBも2006年3月からマネーサプライ指標でM3の発表を取り止めたことについて、バーナンキ議長は政策立案者にとって有効性が無くなったことが理由だと説明している。

 日銀の金融政策決定会合の議事要旨などを見ても、マネーサプライに関する議論はほとんど見かけなくなっている。また、債券市場でも、昔はマネーサプライ統計(現在はマネー・ストック統計)の発表は、重要な経済指標のひとつとして注目されていた。しかし、現在それをチェックしている市場関係者はほとんどおらず、市場への影響も少ない。

 日銀の政策を批判する際に、デフレの要因としてマネーサプライの伸びが抑制されていたためとの意見も耳にするが、マネーサプライとインフレの関係が不透明になっている状況では、あまり説得力を持たない。

 インフレーション・ターゲティングについても、それを有効に実施していくことは難しく、学者としてインフレ・ターゲティングを推奨していたバーナンキFRB議長もいまだそれを取り入れていない。また、インフレ・ターゲティングを採用している英国のイングランド銀行は、現在の物価高により利上げを余儀なくされるとの見方も強いが、財政緊縮などにより景気の先行きにも不透明であり、ジレンマを抱えている。

 ただし、現在の日銀が行なっている包括緩和策には時間軸政策が取り入れられているなど、日銀でもインフレーション・ターゲティングに近い政策が取られていることも確かである。しかし、これをはっきりとインフレーション・ターゲティング政策としてしまうと自らの政策の自由度を失いかねない。金融政策にはある程度フレキシブルな対応も求められる。その点、現在の金融政策のかたちのほうが対応しやすい面もある。

 さらに日欧米の中央銀行の政策には、国債に関する政策が大きな比重を占めるなど、国の財政面との関わりも強まっている。つまり物価や景気動向、さらに雇用などに加えて、財政問題も金融政策に大きく影響するようになっている。

 今後、日銀を含めて主要な中央銀行の政策がどのように変化してくるのか予想をすることは難しい。中央銀行の金融政策は時代とともに大きく変化している。過去に使われた指標を元にして現在の政策について検証しても、あまり意味はない。日銀批判についてもこのあたりを注意してみておく必要がある。

*** 「牛さん熊さんの本日の債券」メルマガ配信のお知らせ ***

「牛さん熊さんの本日の債券」をメルマガで配信しております。
登録申込当月分の1か月は無料でお読み頂けます。
価格は税込で月額1050円です。ご登録はこちらからお願いいたします。
http://www.mag2.com/m/0001185491.html
[PR]
by nihonkokusai | 2011-02-22 08:33 | 日銀 | Comments(0)
line

「債券ディーリングルーム」ブログ版


by nihonkokusai
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー