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「2008年の金融危機」

100年に一度とも言われた2008年の金融危機を振り返るにあたり、12月25日の香川県金融経済懇談会における日銀の亀崎審議委員の挨拶要旨(http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0812e.htm)で簡潔にまとめられており、それを元にして今回の金融危機を振り返ってみたい。

米国における住宅ローンにおいて信用度の低い借り手向けの「サブプライム住宅ローン」の問題が2006年頃に発生した。これによる金融市場の混乱は昨年夏以降本格化することになる。

金融機関は自ら設立した投資ヴィークル(SIV)に住宅ローン債権を移し、そこが証券化商品を発行・販売することで、リスクとリターンとを投資家に移転する一方、その手数料を得ていた。このモデルならば自らの財務の健全性を保ち、自己資本比率規制などを回避しながら安定的な収益が得られる。しかし、手数料だけではそれほど利益が出ないことから融資の規模を拡大し、さらに多数の証券化を手掛けているうちに貸出基準に緩みが生じ、過剰な住宅ローン融資が行われるようになった。

金融機関は証券化の手法を用いて投資家にリスクを移転したことで、融資先のリスク管理が甘くなり、投資家も証券化を通じ原資産であるローンに対して関心が薄れ、またあまりに複雑すぎてそのリスクを確認できない状態にあった(これには格付会社の問題も加わる)。

2006年半ばに高騰していた米住宅価格が下落に転じ、一部の住宅ローンが担保割れとなった。米国の住宅ローンは個人の信用ではなく住宅の価値と紐付いているものが多いことから、担保割れすると融資の回収不能リスクが高まる。それを担保とした証券化商品の損失リスクが高まり、証券化商品そのものの価格が下がる結果となり、実際の損失発生の有無にかかわらず時価評価を行っている投資家に損失が発生し、損失処理のための売りが売りを呼んで価格は大きく下落した。

最初の危機はSIVから発生した。欧州のあるSIVが保有する住宅関連資産の時価を評価できなくなったことから経営不安となり、資金繰りが逼迫して活動停止に追い込まれた。これを契機に他のSIVや、その資金調達を支援していた金融機関の資金繰りが困難となり金融市場の混乱に広がった。これにより昨年8月9日のパリバ・ショックが発生し、米国をはじめ世界中の金融機関に問題が拡がった。

危機は資金繰りの困難化の問題から始まったことから、各国中央銀行は大量に資金供給を実施し市場の鎮静化を図った。昨年12月にFRBが欧州中央銀行(ECB)、スイス国民銀行(SNB)とスワップ取極を結んで欧州でのドル資金供給を始めた。

流動性危機は収まっても、米国の住宅価格と関連する証券化商品の価格の下落が止まらない限り金融機関の資産は劣化するため、問題の根本解決にはならない。このため次に金融機関の不良債権と資本不足の問題に焦点が当たることとなった。

当初は中東をはじめとする各国の政府系ファンド(SWF)などが出資に応じたが、株価の下落もあり次第に出資の引き受け手が減ってきた。今年1月18日には、証券化商品を保証していたモノライン会社が資本調達難から格下げされ、証券化商品全体の価格下落に拍車をかけることとなる。

3月14日には証券化商品を大量保有していた投資銀行のベア・スターンズが資本調達の失敗から資金繰りに行き詰まりFRBの資金支援のもと、JPモルガン・チェースに買収された。

7月13日にはGSEsと呼ばれる政府の住宅政策の一翼を担っていた政府系金融機関が経営危機に陥り、政府の資本注入などで経営再建を図ることになった。

9月15日に、証券化商品により大きな損失を抱えていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが、資本調達にも身売りにも失敗し、経営不安に陥り破綻したことで、これによりリーマンショックが発生した。リーマン・ブラザーズのような大規模金融機関が破綻し、世界の金融市場は極度の不安に陥ったのである。これを受けて金融市場では資金余剰の先はリスクがあれば運用しない、資金不足の先は担保があっても資金が得られないという状態(カウンター・パーティーリスクの強まり)となった。

これを受けて、各国の中央銀行は大量の資金供給を開始した。この時点では、ほぼ中央銀行のみが資金供給に応じるという状況となった。日銀も連日数兆円の資金供給を実施。特にドル資金の不足は世界に広がったため、FRBは9月18日から24日にかけて、日銀のほか、イングランド銀行、カナダ銀行、オーストラリア準備銀行など、合計9か国にスワップ網を広げ、各国同時にドル資金供給を行う仕組みを開始した。日銀とBOE、ECB、SNBは、その後、事前に決めた金利で、担保の範囲内で必要なだけドルを供給する方式に変更している。10月29日にはFRBはメキシコや韓国の中央銀行などともスワップ取極を結んだ。

一方、リーマン・ショックを受けて、巨大金融機関の破綻がもたらす影響を懸念した米国政府は、その後は金融機関を破綻させない方向に舵を切り、FRBは9月16日に米国の大手保険会社AIGに対して緊急融資を行うことを表明した。

金融機関の不良債権と資本不足の問題に対し米国財務省は最大7千億ドルを投入して、幅広く金融機関の不良債権を買い取る「緊急経済安定化法案」を議会に提出した。が個別企業を税金で救済することの是非が問われ、9月29日に下院で否決された。これは金融市場に再び大きなショックを与え、29日のダウ平均株価は終値で777ドル安と史上最大の下げ幅を記録した。

議会は10月3日にこの法案を多少修正した上で認めた。議会通過後、財務省は法案が採り得る施策の自由度が高いことを利用し、この資金を不良債権の購入ではなく金融機関への資本注入に充てることとした。このほか預金保険公社のFDICは金融機関の発行する社債の保証や、預金保護の上限引き上げ策、FRBは短期の企業債務であるCPの買入、SECは空売り禁止策など、様々な施策を打ち出した。

欧州各国も預金の全額保護や金融機関の国有化・資本注入、短期債務保証など、様々な施策を迅速に打ち出した。また金融グローバル化のもとで、問題解決に向けた国際協調も行われ、10月8日には各国中銀が一斉に利下げを行ったほか(この際に日銀は利下げは見送り)、同10日のG7財務大臣・中央銀行総裁会議が金融市場安定化に向けた「行動計画」を発表した後に、各国の金融機関救済策が相次いで発表された。また11月15日の金融サミットや22日のAPEC首脳会議など、ことあるごとに協調姿勢を示す声明文が公表された。

実体経済への影響も深刻化し、特にアイスランド、ハンガリー、南アフリカなど、経済が米欧金融機関からの借入に過度に依存していた国では経済危機に陥り、IMFなどからの緊急融資を頼ることとなった。その他の国でも金融機関がリスクのある融資に慎重となったことから、景気を冷やしそれが金融機関の不良債権の増加に繋がり、また融資姿勢の慎重化に繋がるという悪循環に陥った。

金融と実体経済の負の連鎖が世界で最も懸念された問題となり、日欧米が景気後退となるなどの事態に。大規模な景気刺激策が中国のほか、欧州各国も打ち出したが、米国では自動車大手メーカーの救済方法が不透明となったことに加え、大統領の交代期で有効な政策がなかなか打ち出しにくい状況となっていたことにより、オバマ新大統領就任後の施策が注目されることとなった。

日銀は10月31日と12月19日にそれぞれ政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標値を0.2%ずつ引き下げた。12月19日の決定会合ではCPの買い入れや、国債買入の増額なども決定した。
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by nihonkokusai | 2008-12-29 10:01 | 日銀 | Comments(0)
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