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「何故、4対4だったのか」

31日の日銀の金融政策決定会合では、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標値を0.5%から0.3%に0.2%に引き下げたが、票決は4対4と真っ二つに別れ、可否同数となったため議長が決するという異例の事態となった。賛成は白川総裁、山口副総裁、西村副総裁、野田審議委員。反対は須田審議委員、水野審議委員、亀崎審議委員、中村審議委員。

また、基準貸付金利も0.25%引き下げられ0.5%に、11月積み期から来年3月積み期までの間、超過準備預金等に0.1%を付利することが、こちらは両方ともに全員一致で決定した。

以前の日銀の金融政策決定会合では議長提案が出される前に、それぞれの委員の意見がある程度集約されていた。その結果、4対4(政策委員が定員の9人の場合)に意見が分かれているとみた際には、最終的に議長である総裁が議長提案をどちらで出すのかによって決定されるかたちになっていた。

しかし、今回の金融政策決定会合では議長提案が0.2%で出され、それに対し議長である総裁含めて4人が賛成した。さらに0.25%の利下げ提案に賛成した委員が3人、現状維持が1人に分かれる結果となった。

それでは何故、3人の審議委員は0.2%ではなく0.25%の利下げを主張し、結果として議長提案に反対をしたのか。これがひとつの大きな謎である。31日の決定会合は異例づくめであった。そのひとつが会合の開始時間が30分早められたことである。この理由については「付利」について議論するためと言われていた。しかし、付利自体は全員一致で決定しており、むしろ利下げを巡っての意見の集約ができなかったことが要因ではなかったのか。

0.20%を主張した総裁含めての4人は、なるべく利下げ幅を留めて今後の引き下げ余地を残したともみられるが、超過準備預金への付利が0.1%であるため、政策金利との金利差を意識したのではないかとも思われる。

0.25%を主張した3人は、すでに市場では0.25%の利下げを意識して動いていたことで、素直に0.25%にすべきとしたとの見方もあるが、市場の思惑などに政策を委ねることもむしろ考えづらい。これが0.5%と0.25%ならばわかるが、今回の差はわずかに0.05%であり、現実問題として今回の差はあまりに小さい。

それにも関わらず議長提案に対し、0.25%を主張した委員が3人もいたということは、単純に 技術的な問題以外に対立点が存在していたのではなかろうか。同じ利下げという方向で一致していながら、わずかな下げ幅の違いで長時間も議論していたとなれば、何かしらの意見の食い違いが存在していた可能性がある。

今回の日銀の利下げは、日経新聞が観測記事としながらも事前に報じていた。24日の円急騰にそれによる27日のG7の緊急声明では国際協調を意識するものとなっており、その際すでに白川総裁は超過準備預金への付利だけでなく、利下げそのものを意識していた可能性がある。しかも28日には、日銀に理解を示しているといわれる与謝野馨経済財政担当相が、「0.5%の政策金利を0.25%に下げても経済に対する効果は全くない」と述べながらも、「日本も利下げするのは国際協調の重要な証しの意味がある」とも発言しており、利下げの可能性を滲ませていた。この発言からすでに政府側も日銀の利下げの可能性を強く認識していた可能性がある。

今回4対4で執行部案を通したのは総裁に近いとみられる山口理事が副総裁に就任していたということも大きかったはずである。白川総裁が強く推して首相が了承した山口副総裁が就任したのが27日。31日の政府による追加の経済対策に合わせての日銀の利下げを政府側が強く望んでいたことも考えられる。G7の緊急声明を行なうための協議や、副総裁の任命といったかたちで、白川総裁や山口副総裁が、首相や中川財務相と直接協議する場が存在していたこととも確か。11月1日の日経新聞では、ともに福岡県出身である麻生太郎首相と白川総裁の信頼関係にも触れている。

審議委員との調整はブラックアウト期間に入ってからとの日経報道もあったが、執行部が事前に利下げを意識して動いていたとしても、多数決で決まる決定会合では審議委員の票の行方が当然ながら大きく結果を左右することとなる。政府が31日の決定会合に対して、議決延期請求権の発動も視野に入れていたとの日経の報道は、事前には日銀の政策委員が利下げで意見が集約されていなかったためではなかったのではなかろうか。

実際にどのようなことが会合で話し合われていたのかは、11月27日の議事要旨の発表、さらに具体的なことは10年後の議事録の発表まではわからないかもしれないが、今回の4対4という票割れは、今後の日銀の政策運営にも微妙な影響を与える可能性もありそうである。

そして、もうひとつ市場で期待していたCPや銀行保有の株式の買い入れなどのプルーデンス政策は盛り込まれていない。発行市場が事実上機能していないCP市場で、流通市場を通じてCPを買い入れるということは現状やや無理がある。このためCP市場の機能が回復してからでなければ効果がない。さらに日銀による金融機関保有の株式については、損失が確定しまうことで金融機関が売却を敬遠してくることも考えづらく、タイミングとしては3月末の決算のタイミングなどの方が望ましい。このため、これらは残り少ないカードとして温存されたものとも思われる。
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by nihonkokusai | 2008-11-04 12:47 | 日銀 | Comments(0)
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