「投資から貯蓄へ」
世界的な金融危機の影響で、株の時価総額や商品価格、高金利通貨など軒並みピークの半分に落ち込んでいる。欧米の金融機関も公的資金を仰ぐなど危機的状況となり、この金融機関を含め機関投資家に加え、さらに個人投資家もリスク資産を売却し、現金化の動きを強めている。その結果さらに投資商品の価格が下落するなど現金化スパイラルの様相ともなっている。質への逃避や景気後退観測から買われるはずの債券にも投資家による現金化の売りも入ってきている。
「貯蓄から投資へ」という掛け声もむなしく、国内の個人も今回の金融危機では、よりリスクの高い投資を行なっていた人ほど大きな痛手を受けてしまった。このため投資商品を売却し、その資金は預貯金に向かうなど現在の動きは「投資から貯蓄へ」となっている。10月発行の個人向け国債の発行額が7月から大きく減少したが、初期利子の低下といった要因などもあろうが、資金の受け皿として個人向け国債がそれほど認識されていないようにも思われる。
「貯蓄から投資へ」の動きは完全に逆回転してしまい、個人投資家は今回の金融危機により、投資リスクを過剰に認識してしまった可能性もある。こつこつと積み上げてきた信用は崩れ出すと速い。その信用を取り戻すにはかなりの時間も必要となりそうである。個人向けの投資商品はなるべく内在するリスクが見えやすくわかりやすいものに絞り、より高い収益性を追求するのではなく、投資の面白さが理解できる商品開発を行なって行く必要がありそうである。