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「7月24日の水野日銀審議委員の講演より」


 7月24日に青森で開催された金融経済懇談会における水野日銀審議委員の講演から特に国内経済と金融政策に関する部分を確認してみたい。

 国内景気動向に関しては、「エネルギー・原材料価格高が、企業収益、個人消費でダウンサイドに、CPIコアでアップサイドにもたらしたインパクトは、展望レポートをまとめた4月末時点では想定できなかったほど厳しいものになっています」と総括。

 短観では、「販売価格の引き上げの動きが若干とはいえ広がり始めた可能性を示唆している」点を指摘。ただし「販売価格を引き上げても、企業が期待するほど業績が改善しないリスク」も指摘している。

 設備投資に関して「環境は今後悪化する可能性は否定できず、2008年度も設備投資計画が翌年度に先送りされる可能性」があると。さらに「足許の雇用者数の上昇率の鈍化は、労働市場の潮目の変化を示唆している可能性」も指摘している。

 輸出に関して鈍化傾向にあるのは、「米国向けの自動車輸出がこのところ減少に転じたこと、東アジア経済の成長鈍化の兆しがみえてきたこと」を指摘。ただし、ロシア・中東産油国向けの輸出増加が対米輸出の減少を相殺する構図は続くとも。

 また物価動向について、6月の国内企業物価指数がここ20年ほどでみると例がないスピードで上昇し、国内企業物価が前年同月比+6%を超えるのは時間の問題と見込まれ、消費者物価に先行するとみられる国内最終消費財価格の大幅増などから、「コアCPIは、小売段階での値上げの広がりから、秋には同+2.5%程度まで上昇すると私は予想しています。」と水野委員は発言した。加えて、ピークアウト後もなかなか物価が下がりにくいとの指摘も会見であった。

 ただし「企業向けサービス価格をみると、サービスについてはあまり進んでいません。CPIはサービスの占めるウエイトが高いので、賃金上昇率の弱さを考えると、やはり米国型のコアCPIの前年比上昇率の上昇テンポは緩やかにとどまると予想」との発言も。

 講演で「金融政策を考えるうえでのポイント」の部分で、水野委員は「エネルギー・原材料価格高騰による交易条件の悪化を受けて、民間内需の下振れ懸念が強い状況」にある点を指摘。

 そして一般論としながら「エネルギー・原材料価格の高騰という相対価格の変化による物価上昇圧力は、金融政策で止めることはできません。一方、エネルギー・原材料価格の高騰が、企業や家計のインフレ予想を押し上げることによって賃金・物価がさらに上昇する二次的効果(second- round effect)が発生した場合、金融引き締めによって歯止めをかける必要があります。現在のわが国をみると、賃金の伸び率は前年比+1%前後と落ち着いており、二次的効果が発生しているわけではありません。」とし、現在の日本における物価上昇については利上げで対応していく必要はない点を指摘している。

 水野委員は会見において「個人的には、今は景気の下振れの方をやや意識しながら政策運営を行っていくのが適切ではないかなと思っています」と発言している。

 そして景気については「2002年1月にスタートした今回の景気拡大局面は昨年10-12月にピークを付け、緩やかな景気後退局面に入ったと判断される可能性」があることも指摘している。GDPベースの個人消費が4-6月期は前期比マイナスとなる可能性についてもコメントしている。しかし、企業部門では在庫、設備、雇用という面で3つ過剰を抱えていないことで景気に粘りはある点も指摘している。

 以上のことから、「日本銀行としては、現在、エネルギー・原材料価格高を背景とした民間内需の下振れリスクと物価の上振れリスク、及び、国際金融市場の動向、について予断を持つことなく、丹念にウォッチするべき局面と思います。」としている。

 また水野委員は個人的な見方としながら、新興成長国の景気・物価の先行きを懸念している、とも。東アジアを中心とした新興成長国の景気が失速した場合、わが国の景気見通しを下方修正する必要が出てくる点を指摘している。さらに会見では、「東アジア経済がインフレを上手く抑制して、ソフトランディングできるかどうかについてはやや懐疑的である」との発言もあった。

 そして水野委員は、日本経済の潜在成長率の水準からみて「いつまでも0.5%という政策金利を継続することの副作用についても、常に念頭におきながら、適切な金融政策運営を毎回毎回の金融政策決定会合で議論している」ことについても言及した。
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by nihonkokusai | 2008-07-29 09:58 | 日銀 | Comments(0)
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