「インフレーション・ターゲティングについての白川総裁の見解」
6月13日の記者会見において、インフレーション・ターゲティングについての質問を受けた白川総裁は次のように答えている
「その人によってインフレーション・ターゲティングという言葉でイメージしている内容がかなり違っているということです。ですから、インフレーション・ターゲティングの是非を議論しても、実はその議論している対象自体が違っていることもあるわけです。そういう意味で、多少誤解を招きやすい議論であると思っています。」
欧州の中央銀行が採用しているインフレーション・ターゲティングなどに対しては次のように説明している。
「本来のインフレーション・ターゲティングというのは、中央銀行の金融政策の目的が物価安定のもとでの持続的な成長であるということを意識した上で、金融政策を説明していくための透明性を高めていく枠組みの1つだと思います。」(白川総裁)
それに対して、以前の日本でも騒がれたインフレーション・ターゲットを採用すべきとの主張は、デフレ時など手段はかまわず何が何でもでも物価を上昇させるべきといったものであったかと思う。
現在は、「供給ショックで物価が上がる、しかし消費国にとってそれは景気の下押し圧力に働くという状況」にあり、こういった状況下にあって金融政策を説明するには、インフレーション・ターゲットという枠組みの中での説明も難しくなると白川総裁は指摘した。
さらに白川総裁は「こうした景気・物価についての複雑な動きがある中で、インフレーション・ターゲティングという枠組みの中で金融政策を説明することはもちろん可能ですが、その説明が時として難しいことがあります。」としており、米国の学者がこの問題を提起している点を指摘している。
そして白川総裁はインフレーション・ターゲティングの問題について次のように結論付けている。
「インフレーション・ターゲティングを採用する場合でも、しない場合でも、供給ショックのもとでは、金融政策の判断それ自体が難しいわけですし、説明も難しいものになります。しかし、最後は判断する必要がありますし、説明しなければなりません。そのために、各国は、各国の置かれた枠組みの中で説明の努力をしているということだと思います。」
このように白川総裁は、金融政策の枠組みは違えども、FRBやECB、さらにイングランド銀行や日銀の金融政策が、現在かなり難しい局面に置かれている状況を説明している。