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「白川新総裁への期待と不安」


 白川方明日銀新総裁が京都大学教授時代に書き下ろした著書「現代の金融政策」が売れている。その購入者の多くが金融市場関係者ではないかと推測されるが、私も御多分に漏れずアマゾンで購入した。アマゾンといえば15日現在、アマゾンで白川氏の「現代の金融政策」の紹介ページを見ると「この商品を買った人はこんな商品も買っています」になんと拙著「ネットで調べる経済指標」が並んでいる。たいへん光栄である。ぜひこの機会に「ネットで調べる経済指標をご購入いただければ、といった宣伝はさておき、今回は白川新総裁への期待と不安についてコメントしたい。

 白川総裁誕生までの経緯についてはマスコミ等で詳しく報じられており、この「若き知」でも何度か触れていたことで省略し、結果として白川氏が総裁に就任し、西村審議委員が副総裁に昇格したのである。もうひとりの副総裁は空席のままとなり、いつ決定されるのかも予想がつかない状況にある。

 新日銀法の下では執行部は総裁1人、副総裁2人で構成され、それぞれ役割分担があるが、それを当面2人で行なわなくてはならない。審議委員も西村氏の昇格で1人少なく、政策委員は現在定員9名のうちの7名だけで構成されている。

 白川氏の経歴から見て総裁としての能力に対し疑問を呈する人はいないと思う。京都大学に転じる際にも、のちの日銀総裁就任が意識されていたのではないかとも見られていた日銀のホープの一人である。企画担当の審議役や理事を歴任し金融政策の現場をある意味知り尽くした人物の一人であり、このため白川新総裁の政策運営には多いに期待したいところである。ただし、不安があるとすれば帝王学というかトップとしての学習期間がなかったことにあろうか。

 過去の日銀総裁を見ればわかるように、良し悪しはさておきタスキ掛け人事で財務省のトップである財務次官経験者とともに日銀出身者がほぼ交代で日銀総裁に就任してきた。しかも、総裁となった人物の多くが副総裁を経験しているのである。直近では前川総裁、澄田総裁、三重野総裁、福井総裁などがそうであり、例外としては松下総裁、速水総裁がいるが、松下氏は大蔵省事務次官出身であり、また速水氏は日商岩井会長や経済同友会代表幹事といったトップを務めている。

 日銀の総裁は金融政策による金融市場に対しての影響ばかりではなく、日銀券という信用そのものを維持させるという重要な役割があり、日本の金融システムを安定させ、さらに国際的な影響力も大きいものがある。日本のトップの中にあってもその責任といったものでは、文字通り国内トップクラスとなろう。そういったトップにいきなり身を置くよりも、本来ならば副総裁を経験しその期間に帝王学を学んだあとの方が、より力が発揮できたのではないかと思われるのである。

 さらに大きな問題が政治との折衝か。総裁人事のゴタゴタは今後も後を引くとみられ、大きな政策変更の際の政治との折り合いといったものをどのように持って行くのか。しかも「ねじれ国会」という複雑な要因も絡んで、与野党の折衝には非常にセンシティブな対応を迫られる可能性がある。これをどのように打破していくのかが、新総裁の腕の見せ所ともなろう。残る一人の副総裁にはこういった政治との折衝にも長けた人物が選ばれれば、白川総裁の負担もやや軽減すると思われるのだが。

 金融政策に関しては、日銀のトップとなった白川氏にはある意味柔軟な対応も迫られよう。福井前総裁の就任後の追加緩和策には反対したという白川氏ではあるが、政治や市場の信認を得るには論理的な整合性だけではなく、目に見えないマインドに働きかけるという必要性も出てくる。日銀は当面現状維持を続けるとみられるが、その後の米国経済の動向などを見極めて次ぎの手を打ってこよう。現状、先行きが不透明なだけに利下げ、利上げともに可能性があり、いずれにせよ政策変更の際には新総裁の手腕が問われよう。
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by nihonkokusai | 2008-04-15 13:58 | 日銀 | Comments(2)
Commented by 三成21 at 2008-04-17 03:15 x
こんな意見は如何ですか?

>福井前総裁の就任後の追加緩和策には反対したという白川氏ではあるが・・

この時、白川氏の反対の程度は?と思いました。

たとえば、
政策委員など決定会合において・・
出席者9人の賛否程度は・・
A氏賛成190ポイント 反対10ポイント
B氏賛成 45ポイント 反対55ポイント
C氏賛成 80ポイント 反対20ポイント
D氏賛成・・・
・・・
・・・

「賛成合計685p」「反対合計315P」で可決された。

しかし、ただ一人200Pの投票権を持つ○○総裁の賛否程度は
「賛成190P」「反対10P」で有ったことから
今回の政策決定には総裁の自信の程度が可也強かったことが窺える。と同時に(その割には)反対Pも315(平均35P、最大55P)と、多いことから今回の決定は「総裁主導型」とも言えるだろう・・(などのニュース解説)

少なくとも、「日銀の・・・において、賛成8反対1の賛成多数で可決された。なお、反対したのは○副総裁一人だけであった。」よりも国民および関係者にとっても有益と思うのですが・・
Commented by nihonkokusai at 2008-04-17 10:06
見方としては面白いですが、ポイントが推測となってしまうと、ちょっと根拠に乏しくなってしまうようにも。
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