「日銀総裁に白川副総裁が昇格」
混迷した日銀総裁人事は、政府が7日に白川方明副総裁を総裁に昇格させ、後任の渡辺博史一橋大学教授を充てる人事案を国会に提出した。
手続きとしては、政府から日銀総裁・副総裁の人事案が、議院運営委員会両院合同代表者会議に事前提示され、その後に衆参両院の議院運営委員理事会に正式提示される。8日に衆参両院の議院運営委員会で総裁候補者らからそれぞれ所信を聴取したあと、9日の衆参両院の本会議で採決される。その結果、両院ともに可決となれば新総裁と副総裁が就任となる。
白川総裁については民主党も賛成する意向を示しているものの、渡辺副総裁については民主党内での意見も分かれており、8日時点ではまだ微妙な状況となっている。新日銀法第23条に「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」とあるように国会同意人事となっている。
この国会同意人事は制度創設当初、予算案や法案と同様に衆院の議決が参院より優先される規定を明記した例があったものの衆院との対等関係を求める参院「自民党」の要請で順次削除されたそうである(4月8日付日経新聞より)。
2003年の前回総裁人事の際は、与党が衆参両院で多数を占めていたことで、総裁人事はすんなりと両議院での同意を得られた。しかし、現在、衆院は与党が過半数を占めているものの、参院は野党が過半数を占める「ねじれ」状態となっていることで、この修正によって衆参いずれかの不同意によって人事案は白紙に戻ってしまうことになったのである。
このため衆院で賛成されても参院で反対されれば、内閣つまり政府が任命することはできない。それによって日銀総裁が不在となる空白の期間が生じるという最悪の事態が発生してしまった。
民主党では財政と金融の分離を主張する向きが存在しており、その考え方にも民主党内で微妙に異なっているとみられることも問題を複雑化した。
日銀券の表に赤い印章があるが、これは「日本銀行総裁」の印章で、「総裁之印」と篆書という字体で書かれているものである。日銀券というお札は安心して使えるように日銀総裁がその価値を保証していることとなる。それだけみても日銀総裁に課せられている責任は重いものがある。
その重要な日銀総裁人事が政局に翻弄されたものになってしまったということ事態、日本の政治の機能不全ぶりを示しているといわざるを得ない。