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「きさらぎ会における福井日銀総裁講演より」


 2月22日の「きさらぎ会」における福井日銀総裁講演の内容が日銀のホームページにアップされた。ちなみに「きさらぎ会」とは1950年に発足した共同通信社が主催する会合の講演会である。

 この中で福井日銀総裁は海外の金融経済情勢として「問題の発端である証券化商品市場はなお機能が低下した状態にあり、株式市場や為替市場は世界的に振れの大きな展開となっています」と指摘している。ただしもここにきての原油先物の上昇や、20日から21日の東京市場での先物の乱高下などはヘッジファンドによる投機的な動きも入っており、これが振れが大きい一因ともなっている。

 さらに総裁は「投資家のリスク回避姿勢は引き続き強く、米欧の金融機関の損失も当初の見通しよりも拡大しています。」としている。このため「(欧米の)金融機関は、エマージング諸国や産油国のソブリン・ウェルス・ファンドなどを増資引受け先とした資本増強策を相次いで公表していますが、市場は、金融機関の今後の損失認識とそれを補う資本調達の動向を注視する慎重な姿勢を崩していません。」と指摘しているが、ここにはモノラインといった問題もある。

 「米国経済は、減速傾向が一段と強まっています。住宅投資が大幅に減少しており、住宅販売の減少と在庫の積み上がり傾向にはまだ歯止めがかかっていません。住宅価格の下落も続いており、なお底が見えない状況です。」

 福井総裁はメーンシナリオとしては、米国経済はいずれ潜在成長率近傍の成長パスに戻っていくとしているものの、「資産効果や信用収縮、企業や家計のマインド悪化などを通じて、景気がさらに下振れるリスク」も指摘しており、総裁もかなり米経済に対しては慎重に見ている姿勢が伺える。

 さらに物価に対しては、「インフレ方向のリスクにも目を配っていかなければなりません。実際、米国や欧州では、エネルギー・食料品価格の上昇などを背景に消費者物価の高い伸びが続いている」点を指摘するとともに、「原油や金をはじめ、小麦、大豆といった穀物などが高値圏で推移している国際商品市況の動向も、その状況次第では、世界経済や物価の先行きに影響を与えることが考えられます。」としている。

 こういった状況下、日本経済については「海外経済や国際金融資本市場の動向、エネルギー・原材料価格の影響といったリスク要因については、十分注意を払っていく必要があると考えています」としており、米国経済の減速とそれによる世界経済への影響、欧米を主体とした世界の金融市場の混乱、 NY原油先物が最高値を更新するなど原油価格の上昇などにも目を光らせていく姿勢を示している。

 日本経済については「当面、景気が減速する一方で物価は上昇を続ける」とみているが「その後は、物価安定のもとで緩やかな拡大を続ける蓋然性が高いと判断」との姿勢は崩していないものとみられ、「先行きの金融政策運営についての基本的な考え方は、これまでと変わりません。」としている。

 こういった状況を踏まえた上で、福井総裁は「世界経済と日本経済にとっての中長期的な課題と、それに対応するための方向性について」も述べている。

 総裁は「現在世界経済で起こっている様々な問題、例えば、原油や食料の高騰、グローバル・インバランス、国際金融市場の動揺などの問題は、 90年代以降の急速なエマージング諸国の台頭とグローバル化の進展、金融の国際化・高度化という大きな流れの中で捉える必要があります。」としている。

 今回のサブプライム問題に端を発する金融市場の混乱は「良好な経済・金融環境が長く続いたこともあって、市場参加者のリスク評価に緩みが生じ、行き過ぎたポジションが造成され」てきたことも大きな要因ではあろうが、金融の高度化というよりも複雑化とグローバル化の進展が問題を大きくしより複雑化させてきたことも確かであろう。そして、それによる金融機関の損失に対して、急速に世界経済に頭角を現してきたエマージング諸国などが増資引き受けを行なうなど、金融世界の地図が大きく書き換えられようともしている。

こういった状況を踏まえ、総裁は「経済のグローバル化や金融の国際化、金融技術の高度化の流れは止められませんし、止めるべきでもありません。」としているが、金融技術の高度化というか複雑化の歪みについてはかなり修正の余地もあるのではないかと思われる。

 総裁も「住宅ローンの実行から、ローン債権の証券化、投資家への販売の各過程に、高い技術を有する金融機関や格付機関などが関与し、先端的な金融理論を応用していたにもかかわらず、結果として多額の損失が生じました。なぜ、市場メカニズムの中で、適切なリスクの評価やプライシングが行われなかったのか、を分析し、そうしたインセンティブが働くような枠組みを再構築していくことが必要です。」としている。

 ただし「先端的な金融理論の応用」というよりも、証券化といった新たな手法と、商品リスクを切り分けたり細分化するといった技術は、たとえば先端的な工学技術といったものとは異なるものであろう。今後、「適切なリスクの評価やプライシング」といったものが模索されようが、格付の問題も絡み、相場にはよくある理論と現実のギャップは簡単に埋められるものでもないのではなかろうか。
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by nihonkokusai | 2008-02-25 10:56 | 日銀 | Comments(0)
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